原価計算 システムの 目的適合性 , 写像性 ,お よび コンテクス ト
‑ 原価計算 システム変化論の視座‑
渡
辺
岳 夫ト
.問題意識 と分析視角J ohns onandKapl an[1 98
7]に よって指摘 された管理会計 ・原価計算 シス テムの 日的適合性喪失問題は,欧米のみな らずわが国の原価計算研究お よび 実践に非常に大 きなイ ンパ ク トを与え ,伝統 的原価 計算陳腐化論 の端緒 と な った。 この間題は,要約す ると,経営環境の変化に よって伝統的な原価計 算 システムが正確な原価を測定す ることができな くな って きているとい うことと,それに伴い製品関連の意思決定が ミス リー ドされ る危険性が高 くな っ た ことの二点に絞 ることができる。
現代の経営環境において伝統的な原価計算 システムの算出す る情報が ,管 理者の意思決定のために適切ではないとす る問題意識は,必然的に,よ り目 的適合的な新 しいシステムが必要 であるとい う認識に直結 した。そ して,そ の具体 的 な展 開 の一 つ と して
,Coope randKapl an [1988
a′,1988b]
,Cooper[1988
a,1988b,1989a,1989b]に お い て 主 張 さ れ るAct i vi t y‑ Ba s edCos t i ng
(以下ABC
と略称)を位置づけ る ことが で きる。ABC
は上記の伝統的原価計算 システムの問題点を克服す るこ とを 目的 と し て構築 され ,米国では広 く普及 しつつあるシステムである。‑267‑
しか し,ここで重要な ことは,原価計算 の本質 をいか に理解す るか であ るO詳細は次章において言及す るが ,本稿では,これを原価計算の利用主体 が措定す る目的に対す る手段 として理解す る(1)。 この ような本質理解 に基づ くな らば,あらゆる企業において伝統的原価計算が陳腐化
LABC
が必要 と されている,とい うような普遍主義的な視点は排除 され ることになる。加登[ 1 9 8 9
]が指摘す るように,
「原価計算実務は,各企業の置かれたタスク環境 と特定の コンテクス トの下で原価計算の役割期待を最大限に実現す る厘価計 算 システムを構築す ることを 目指 している」(2)のであ り,あ らゆ る企業 にお いて精度の高いシステムは必要 とされない し,逆にあらゆ る企業において精 度の低いシステムが問題 となるわけではない。つ ま り,普遍的に適合的ある いは不適合的な原価計算 システムは存在 しない とい うことである。適合的な 原価計算 システムとは,それが存立す る環境お よび特定 の コンテクス トにお いて規定 され るのである(3)0この ような相対主義的視点に基づ くな らば ,いかなる原価計算 システムが いかなる環境あるいは コンテクス トにおいて適合的なのか とい うことが問題 となるoLか し,それは必ず しも自明ではないoこのため
,ABC
システムあ るいは伝統的な原価計算 システムがいかなる状況において適合的なのか ,普 た,いかなる要因に よってその状況変化 が生 じ, よ り精度 の高 い ,例 えばABC
の ようなシステムが必要 とされ るようになるのか ,とい った疑 問に対 して明確な答えを用意できないでいる。その ような疑問に答えるためには, 環境 ,コンテクス 1㌧ お よび原価計算 システムに関す る理論的かつ包括的な(1)例えば
,Mo r s e[ 1 9 7 8
,p.5
]は,この ような理解を ,原価計算の思考形式の前提 と している。(2)
加重[ 1 9 8 9
,p.17](3)Pu g he ta
l.[ 1 9 6 3,1 9 6 9
]は,コンテクス T・を ,阻織 の構造 と関連を有す る阻織 内外 の諸安国 と定義 している。本稿 の研究対象は原価計算であるか ら,この定義中の 「組織 の構造」 とい う部分を 「原価計算の構造お よび 目的」 と置 き換 えて ,コンテクス トとい う用語を用 いることにす る。‑2 6 8
‑フ レームワークが必要 とされ る。
そ こで本稿は,まず ,原価計算の本質を検討 し,伝統的原価計算が陳腐化 す るとい う問題 の意味を明らかにす る。次いで,伝統的原価計算 とは何か , とい う従来軽視 されてきた問題を検討 し,あわせて
ABC
システムの構造に ついても言及す る。そ して,実証的な先行研究を整理 ・分析 し,伝統的原価 計算の陳腐化あるいはABC
の必要性に影響を及ぼす コンテクス ト要因を, 写像性 とい う概念を軸に して明確化す ると共に,それ ら諸要因間の関係お よ びそれ らと原価計算 システムの 目的 ,構造 ,お よび写像性 との関係を明示す る因果 モデルを構築す る。 これに より,いかなるコンテクス トの変化が,原 価計算 システムの利用 日的 ,構造 ,お よび写像性にいかなる影響を及ぼすの か ,また,それに よ り目的適合性が失われた場合 ,いかなる原価計算 システ ムの改善 あるいはシステム変更が必要 とされ るのかを理論的に解釈できるこ とになる。2.
原価計算の本質 と陳腐化問題原価計算は原価を測定す る行為である。そ して,原価 の測定基礎は価値犠 牲 であ り,これが原価 の一般概念 を形成する。犠牲 とい う現象があっては じ めて原価 は認識 され ,測定行為の対象 とな りうるのである。 しか し,この価 値犠牲現象 とい う認識対象は,行為 (利用)主体の 目的達成動機に基づ き限 定 されなければ,測定対象 としての実質的な意味は付与 されない。「犠牲」あ るいは 「原価」 とい うだけでは漠然 としす ぎてお り,特に企業原価 の場合 , 常に利用主体の 目的に適合す る 「何かの犠牲」すなわち 「何かの原価」 でな ければな らないのである。つ ま り,原価計算は,合 目的的原価を測定す るた めに,利用主体の 目的に対す る手段 としての性質を常に内在 していなければ ならないのである(4)。 したが って,原価計算の本質かつ存在意義は 目的適 合 性を満足す ることであるといえる。そ して,これを満足す る場合 ,当該原価
‑269一
計算は有用であるとい うことができるのである。
上記の思考形式か ら導かれ るのは, 目的が異なれば,原価 したが ってそれ を測定す る原価計算 も異なる(5),とい う手段 としての多様性である。 刃物 と い う手段
( t o o
l)が,紙を切 る,木を切 る,あるいは肉を切 るといった 目的に 応 じて,鉄 ,鋸 ,包丁 と多様なの と同様に,原価計算 とい う手段 も目的に応 じて,その内容は多様なのである。つ ま り,そ こでは,原価計算の利用主体 は 目的に適合す る手段を弾力的に適用す るとい う予定調和が肯定 され るので ある。通常 ,原価 あるいは原価計算の多様性は,時制 ,収益 との対応関係 ,原価 対象‑の帰属可能性等の規準に よって認識 され る。 しか し,本稿 では写像性 とい う概念を用いて原価計算の多様性お よび 目的適合性を考察す る。なぜな ら,伝統的な原価計算陳腐化の最大の原因が ,この写像性 の低下にあるとさ れているか らである。
ここで原価計算の写像性 とは,関連す る環境お よび コンテクス トとの相対 において,一定の原価計算 システム構造か らアウ トプ ッ トされ る原価情報の 正確性を評価す る尺度の ことである。そ して,それは要請写像性 と実際写像 性 とに分類 され るo前者は原価計算の利用主体が主にその利用 目的を通 じて 原価計算 システムに対 して要請す る写像性であ り,後者は企業が現在保有 し ている原価計算 システムの構造に関す る実際の写像性である。
なお,ここで注意を要す るのは,実際写像性 とは,既存 の原価計算 システ ムの構造上の精度に関連す る評価尺度ではあるが,システム構造そのものに
(4)
木島[ 1 9 9 2
,p,3
]もまた ,原価計算を 目的に対す る手段 として措定 した うえで,原 価計算はその利用 目的に よって基本形式が規定 され ,常に 目的適合 を条 件 とす る有用 性を規準 とした経験的検証 を受け ることに よ り,それが客観 的 に東 認 され る限 りにお いて存在事 由を得 るとしているD(5)Cl a r k[ 1 9 2 3
]では,
「異なる 目的には異なる原価を」 とい うテーゼが既に導 出されて お り,後 の管理会計 ・原価計算研究者に大 きな彫響を及ぼ している。‑2 7 0
‑対す る評価尺度ではない とい うことであるo システム構造そのものに対す る 評価は,単に精度が高いあるいは低い と表現 され ,複数のシステム間の相対 において行われ る。 しか し,実際写像性は,上述 した ように,環境 ,コンテ クス トとの相対において一定のシステム構造か らアウ トプ ッ トされ る原価情 報を評価す る場合に用いられ る概念である。 したが って,構造それ 自体は, 想定 され る幾つかの他のシステムとの相対では,比較的精度が高 くて も,そ れに関す るコンテクス ト要因に よっては,実際写像性は低い と評価 され る場 合 もあ り得 るし,精度が比較的低 くて も,実際写像性はそれほ ど低 くないあ るいは逆に高い と評価 され ることもあ り得 るのである。 また ,ある企業で採 用 している原価計算 システムが不変のままで, したが って,構造上の精度が 変化 しな くても,実際写像性は コンテ クス ト要 因 との相対 で決定 され るの で,その水準は コンテクス ト要因の変化に よって,低下 (あるいは理論的に は向上)す ることもあ り得 るのである。換言すれば,構造精度 の高低では, システムのアウ トプ ッ トす る原価情報の正確性は判断で きない とい うことで ある。その正確性 の判断は写像性 とい う尺度に よってなされ るべ きであ り, 実際写像性の水準が高ければ原価情報の正確性 も高 く,水準が低ければ正確 性 も低い とい うことができる。
図 1は実際写像性 と構造上 の精度の相違を例示 している。A社 ,B社
,C
社の三者間で構造上の精度を比較 した場合
,
C社が最 も高 く,次いでB社 ,A
社 の順 となっている。 しか し,各社固有の コンテクス ト要因 との相対でシ ステム構造を評価 した実際写像性 の水準は,逆にA社が最 も高 く,次いでB 社,
C社 の順 となることも考 えられ るのである。それでは,次に 目的適合性 と写像性 との関係において,原価計算の陳腐化 問題について考察す ることにす る。上述 した ように,原価計算の本質を 目的 適合性 と考えるな らば,既存の原価計算に関す る実際写像性の水準低下それ 自体は問題 ではない。問題なのは,目的適合性を喪失す ることである。つま り,実際写像性の水準は, 目的適合性を満足す る範囲内,換言すれば要請写
‑2
71‑図1 実 際写像性 と構 造上 の精 度 の相違
像性の水準に適合す る範囲内であれば,い くら低下 しても問題ではな く,そ れをもって当該原価計算は陳腐化 した とはいわない とい うことである。 しか し,逆に,実際写像性 の水準が低下 していな くても,要請写像性 の水準が上 昇すれば,当該原価計算は陳腐化することもあ り得 る。
要約すれば,原価計算の陳腐化すなわち有用性 の喪失 とは,原価計算の写 像性が 目的 との関わ りで必要な水準を維持 し得な くなった時に認識 され るべ きなのであ り,その水準を維持 している限 りは,当該原価計算は 目的適合性 を満足 していると認識 され るべ きなのである。
図2は これ らの関係を示 している。原価計算の利用 目的を通 じて要請 され る写像性水準 と,既存 の原価計算構造に関す る実際の写像性水準が ,一定の 範囲内で適合 していれば,当該原価計算は 目的適合性を満足 しているといえ る。 しか し,要語写像性 の水準を実際写像性 の水準が下回っているな らば, 当該原価計算は 目的適合性を喪失 し陳腐化 しているといえる。 この場令 ,原 価計算構造を改革す ることで ,写像性 の向上を図 らなければな らない。 も
ー2 7 2‑
図2 原価計算の利用日的,写像性,および目的適合性の関係
i ㌫ 串 壷 l
原 軒 計 井 の 利 用 E l 的ロ ( コ原 価 計 井 f t 造
l t T i ̲ ‑ i l 盲 I F ̲ I . 垂
lL,要請写像性の水準を実際写像性水準が上回 っているな らば,測定 の コス トと便益 の関係を検討 し直す ことが必要である.
3.
伝統的原価計算 システムの測定構造上の精度(り 焦点 とすべき測定構造
原価計算 システムの実際写像性水準の低下は,主に製造間接費配賦 システ ムが コンテ クス ト要因の変化を受け ることに よって生ず る。 したが って,普 ず ,その配賦 システムの構造に考察の焦点を当てなければな らない。
もともと製造間接費は,「その内容において多様な性質 の費 目を含 み ,そ の上発生の形態を異に し,かつ原価態様が一様ではない とい った性格」(6)を 有 し,直接費以外の原価要素群 とい う概念でグループ化 されたにす ぎない。
伝統的な配賦 システムでは,原価態様が一様ではない コス ト・グループを製 品等の原価対象‑配分するために,特定 の配賦 基準 を選択 す る ことに よ り 個 々の原価態様 の一部分あるいは大部分を無視 し,その コス ト・グル ープ全 体が配賦基準数値の ど‑イ ビアに連動するもの と計算構造上仮定す る(7)。 も ちろん,伝統的 システムの中で も,製造間接費の集計単位を細分 し,その単
(6)坂本 [1991,p.3]
‑2 7 3‑
位別に適当な配賦基準を選択す ることに よ り,複雑な原価態様をある程度正 確に描捉す るものもある。伝統的システムといって も,いかに製造間接費の 発生態様を正確に捕捉す るかに よって,その構造お よび精度は多様なのであ り,それは実際写像性 の水準に も影響を及ぼす。そ こで,次に配賦 システム を幾つかのタイプに分類 し,それ らの構造お よび精度について考察す ること にす る。
( 2 )
伝統的原価計算 システムの構造および精度伝統的原価計算 とい う場合 ,欧米の
ABC
に関す る文献では,非常に精度 の低 い配賦 システ ムの ことを指 してい る こ とが多 い。 た とえば,Co o pe r
l 1 9 8 8
a,p. 4 5
],Tur ne yl 1 9 8 9,p. 2 6
,],He nkea ndSpo e del1 99
1,p.
8 6
1],He i t gere ta
l.[ 1 9 9 2,p. 8 8 8
],Os t r engaa ndPr o bs t[ 1 9 9 2,p.7
],Co o pere ta
l.[ 1 9 9 2a,p.9],Fo r r e s t[ 1 9 9 5,p. 334
],Dr ur y[1 996,p.
2 9 7
],な どである。 これ らで示 されているケースは,いずれ も日本でい う総 括配賦法である。総括配賦法には二つのタイプがあ り,図3と図4はその概図3 システ ムA
(7) 岡本
[ 1 9 9 4
,p1 8 2
]が指摘す るように ,製造間接費の配賦基準には,製造間接費の発 生 とできるだけ比例関係にあるものが選択 され るべ きである。 しか し,実際にはその ような操業度関連の基準を見 出すのは多 くの場合において困難である0
‑2 7 4一
図4 システムB
略を示 している。
システムAは,工場で発生す る全製造間接費を一つの コス ト・プールに集 計 し,それを単一の配賦基準で各製品に配賦す るとい う方法である。 システ ム
B
は製造間接費を幾つか (通常2,3
個) の同質的な コス ト・プールに集 計 し,それ らを各 コス ト ・プール毎に選択 された適当な配賦基準で各製品に 配賦す る方法である。 この二つのシステムの相対でいえば,システムBは, コス ト・プールを同質性を基準 として細分 し,測定単位を細か くしているた め,システムA よ り構造上の精度は高いが,部門別配賦法な どに比べ ると, その精度はかな り下が るといえる。しか し,日本の実践では,上記の ような精度の低いシステムの採用率はそ れほ ど高 くない。実感調査 の結果を見てみると
,1 9 9 5
年に中央大学 の企業研 究所が行 った実態調査では,製造間接費の各種配賦方法の採用割合は,総括 配賦法が1 8. 8 %
,部門別配賦法が6 2. 3 %
,作業区分別配賦法が1 6. 5 %
,その 他が2, 4 %
となっている。 また,日本大学会計学研究所[1 996
, p.1 43
] で は,各種配賦率の算定範囲は,工場全体の一括配賦率が1 6. 23%
(総括配賦 汰),部門グル ープ別配賦率 と各部門Bll配賦率がそれぞれ2 0. 1 8%
と48. 68%
(合算す ると
6 8. 8 %
,部門別配賦法),戟械 グループ別配賦率 と各機械別配賦 率がそれぞれ7. 4 6 %
と3. 0 7 %
(合算す ると1 0. 5 3 %
,作業区分別配賦法),そ‑ 275‑
の他が
4. 3 9 %
とな っている。 これ らは調査の 目的 も範囲 も異なるため,単純 な比較はできないが,調査結果がほぼ対応 していることか ら,日本企業にお ける製造間接費配賦方法の採用憤向を解釈 できると思われ る。すなわち,総 括配賦法の採用率はかな り低 く,部門別配賦法のそれが圧倒的に高い とい うことである。
また,理論的にいって も,精度の優れて高い
ABC
と比較す る対象 として システムAやBのみを取 り上げ ることは不適当である。その ように して,意 図的にABC
の優秀性を過度に強調す ることに よって,逆に部門別原価計算 との相違が暖味にな り,それがABC
の評価 を下 げ る要 因 ともな りかね な い。ABC
論においてそれ と比較 される対象には,伝統的原価計算 の中 で も 精度 の比較的高い部門BTJ原価計算 も含め られ るべ きなのである(8)a Lか し, 部門別原価計算におけ る配賦 システムも多様である。 ここではそれを幾つか のタイプに類型化す ることにす る。図
5
のシステムCでは,まず製造間接費を,関連す る職能的区分別 ,場所 的区分別 ,作業区分別に設定 された製造部門お よび補助部門に,直課ないし図5 システ ムC
(8)
木島[ 1 9 9 6,p p .8‑ 1 0
]では,部門別原価計算 とABC
の計算例が示 され ,比較 され ている。‑2 7 6 ‑
は配賦す る。次いで,用役提供関係をで きるだけ反映す るように補助部門費 を製造部門‑配賦す る。そ して,最後に,製造部門費を各製造部門毎に選択 された適当な配賦基準に よって各製品に配賦す る。 これが システム
C
の内容 であ り,部門別配賦 の最 もオーソ ドックスなタイプである。 しか し,このシ ステムCに関 して,二つの問題がある。第‑に ,補助部門が製品に対 して直 接的に用役を提供す る関係が存在す る場合 ,それを計算阻織的に無視す るこ とであるC第二に,製造部門内に発生態様を異にす る原価が複数存在す る場 令 ,それを個別に認識せず ,一つの配賦基準で発生態様を措捉す ることである。
図
6
のシステムD
はシステムC
の二つの問題 を部分的に補完す る。すなわ ち,補助部門の うち,製品 との直接的な用役淀供関係が認め られ る場合は, これを認識 し,当該補助部門費を製品に対 して直接的に配賦す る。そ して, この場合には,操業度 とは無関連の配賦基準が選択 され ることもあ る(9)C ま た,製造部門を コス ト・センターに細分 し,できるだけ同質的な発生態様を 有す る原価をプール し,それを適当な操業度 関連配賦 基準 で製 品 に配賦 する。
図6 システムI)
間
接費日 間接費目
‑2 7 7‑
図
7
のシステムEは,補助部門もまた コス ト・セ ンターに細分 し,各 コス ト・セ ンター毎に,製品 との直接的な用役提供関係が認め られ る場合は,過 当な配賦基準を選択 し (システムI)と同様に操業度 と無関連の基準が選択 さ れ る場合 もある),それに よって製品に対す る直接的な配賦を行 う。 これは, システムCお よびI)の問題点をほ とん ど補完す る,伝統的な原価計算の中で 最 も構造上の精度の高いシステムである。なお,ここで伝統的な配賦 システムにおいて利用 され る配賦基準について も言及 しなければな らない。配賦基準 とは,すなわち製造間接費の発生態様 を説明す るものであ り,システム構造の精度に大 きな影響を及ぼす ものであ
図7 システムE
▲ ▲ ▲ 十 † †
(9)
日本の原価計算基準(
18
・二)では,一部の補助部門費を製造部門‑配賦 しないで, 直接的に製品に配賦す ることが認め られている。 この基準は,製造部門や製品いずれに 対 しても原価発生原因主義に基づ く賦課ない しは配賦 のた め の基準 が得 られ ない一般 費や工場事務部門費等を負担能力主義に基づいて選択 された配賦 基 準 を用 いて ,製 品 に対 して直接的に配賦す るケースを想定 している。システムDお よびEち,この ような 処理を含む こともあることを留意 されたい。‑278‑
るか らである。
伝統的配賦 システムにおいては,システムA とBにおけ るコス ト・プール の製品‑の配賦 ,お よびシステムC,D,Eにおける製造部門費 の製品への 配賦 の際に,表 1の実態調査結果か らも分 か る よ うに ,そ の配賦 基 準 と し て,主に直接作業時間,機械作業時間,直接労務費 ,直接材料費 ,生産量な どの操業度関連基準を利用す るO 「その他」 の一部お よび 日本大学会計学研 究所の 「アクテ ィビテ ィ」を除いて,全て操業度関連基準である。つ ま り, 製造間接費の発生態様を操業度 とい う尺度に よって措捉 しようとしているの である。
なお,システムDとEについては ,補助部門費 の製品‑の直接的な配賦が 行われ るが,その際の配賦基準には,操業度関連基準以外の,原価発生原因 主義に基づ き原価態様を正確に描捉す る基準が用いられ ることもある。 しか し
,1 9 9 5
年の中央大学企業研究所 で行 った実態調査 に よれ ば ,表2
の よ う に ,原価発生原困主義に基づ く配賦基 準 の採用 は あ ま り多 くない。 おお よ そ ,操業度関連基準 と負担能力主義に基づ く基準 と同程度である。表1 配賦基準に関す る実態調査結果 (単位 ;
%)
Schwarzbach[1985,p.47】 中央大学1995牛鍋企業研究所査 日本大学会計[1996,pー14学研究所3] 直接作業時間 31 直接作業時間 36.3 直接作業時間 26.73 直接労務費 31 機械作業時間 16.1 生産量 12.91 機械作業時間 12 直接材料費 ll.9̲ 直接労務費 9.62 生産量 5 直接労務費 10.5 機械作業時間 9.07 直接材料費 4 生産量 9.8 直接材料費 8.79 直接材料消費量 4 素価 5.6 直接加工費 6.87
売上高 3 重量 2.1 材料消費量 6.32
その他 10 その他 7.7 アクティビティ 5.49 加工費 3.02
‑ 279‑
表2 直接的配賦の行われ る補助部門の種類 とその配賦基準に関する調査結果 補 助 部 門 の 種 類 配 賦 基 準 配賦基準の性質軸
1設計部門 製品別従事割合 A
2設計部門 設計時間 A
3研究開発部門 .生産管理部 設計時間 A
4 補助部門 .設計部門 間接員の製品別時間貢献度 A
5不 明 間接作業時間 A
6技術部門 製品別用役比 A
7購買部門 製品の出荷高比 B
8生産管理部門 .品質保証部門生産企画部門 .環境施設部門 素価基準 B
9原価計算課 .総務部門情報 システム部門 .資材部門技術開発本部 .生産技術本部 人員比 .売上高比 .用役比 A,B
10 生産技術部門 .品質保証部門企画部門 .生産管理部門 直接原価 B
ll 購買副費部門 購入高比 B
12資材部門 直接材料費 B
(注)
A
‑原価発生原因主義に基づ く配賦基準B
‑操業度関連の配賦基準 ・負担能力基準に基づ く配賦基準4.Act i vi t y‑ Bas edCos t i ng
の構造 と精度ABC 論は
,Co o p e ra n dKa p l a n [ 1 9 8 8
a]に よって火蓋 をきられ ,その後 多 くの論者に よって展開されて きている。当初 ,ABCは,伝統的原価計算に 代わ る,より精度の高い製品関連意思決定用の原価計算 システムとして議論 されたが ,その後 ,ABCの主要概念であるアクテ ィビテ ィ( a c t i v i t y )
お よび コス ト・ドライバ ー( c o s td r i v e r )
概念 を機軸 として, コス ト・マネ ジメ ン トのための観織成員に対す る影響 システム,継続的改善 のツール等に展開 さ‑2 8 0
‑れてきた(10)Oいわゆる
Act i vi t y‑ Bas edManagement
あるいはAct i v it y‑ Ba ‑ s edCos tManagement(
以下ABM ,ABCM
と略称)への展開であ り,未だ にその外延を拡張 し続けている。 しか し,その経緯お よび詳細 については別 稿 に譲 り,本稿では,写像性 向上のツール としてのABC
について,伝統的 原価計算 ,特に部門別原価計算 と比較す る形で,考察を進めることにす る。ABC
は,企業実践において,その採用企業 の環境お よび コンテ クス トに 応 じて,非常に多様な構造を有 している。 また,実際写像性水準向上のため のABC
とABM
的要素を阻み合わせた導入形態 も多い。 しか し,製品原価 の測定構造は概ね図8
の ように要約 され うる。図8 ABCシステム
ABCは,まず ,製造間接費をアクテ ィビテ ィに集計す るOこの 「
アクテ ィ ビテ ィ」は,実際写像性 の水準を向上 させ る,あるいはABM
の展開を可能 す る鍵概念の一つである。その意味は論者に よって若干相違す るが,概ね魁( 1 0 )
例 えば,Co o p e ra n dTu r ° e y[1 990],Co o p e re ta
l.[1 992b],Os t r e n g aa n d Pr o b s t[ 1 9 9 2 ]
,岩淵[ 1 9 9 3
]を参照 されたい。‑2 81 ‑
織で行われ る同質的な財 .用役をアウ トプ ッ トす る作業行為 の集合体 とい う ことができる。そ して,この集合体は,必ず しも原価部門の ように管理責任 区分別 あるいは既存の職制上の部門に拘束 されない(ll)。 したが って,た とえ 管理責任区分上あるいは職制上の部門上 ,二つ以上の部門に分離 されている 作業行為 であって も,それ らがアウ トプ ッ トに関 して同質的な らば,同一の アクテ ィビテ ィに包含 され ることになる。 アウ トプ ッ トの同質性は,資源消 費の態様すなわち原価 の発生態様 と概ね対応す るため,精度 の向上を図るた めには,アクテ ィビテ ィは原価部門 よ り優れているといえる。
次いで,必要ある場合は,アクテ ィビテ ィに集計 された コス ト (アクテ ィ ビテ ィ ・コス ト)を よ り上位のアクテ ィビテ ィ ・センターに統合す る。具体 的には,原価発生態様 の同質性が保証 され る場合 ,あるいは金額的に重要性 が低いアクテ ィビテ ィ ・コス トが存在す る場合 ,統合は行われ る。
最後に,アクテ ィビテ ィ ・コス トお よびアクテ ィビテ ィ ・センターに統合 された コス トを,それぞれについて適当に選択 された コス ト・ドライバ ‑を 基準 として,各製品に配分す る。ここで コス ト・ドライバ ーとは
,ABC
の も う一つの鍵概念であるO これは原価発生原因の代理変数であ り,原価の発生 態様を より適切に説 明す ることができる. コス ト・ドライバ ーには,操業度 が選択 され ることもあるが,大部分は操業度 とは無関連で,製品の多様性お よび生産 プロセスの複雑性に起因 して増加す る取 引関連 の変数 が選択 され るoABC
は,理論的には,アクテ ィビテ ィお よび コス ト・ドライバ イ ーに基 づ き資源消費態様 ・原価発生態様を よ り適切に描捉す るため ,伝統的原価計 算 よりも測定構造上の精度は高い といえる(12)a(ll)Brimson[1991,p.47]
(12)しか し,伊藤 [1993.p.20]が指摘す る よ うに,「製造補助部 門の多 くは アクテ ィ ビ テ ィに概ね対応 した組織 単位 と見 ることがで きる」 と考 えるな らば ,システ ムDとEは
ABCシステムと近似す ることにな るO
‑282‑
5
.
実際写像性水準に関す るコンテクス ト原価計算は 目的に対す る手段 である。手段は技術性を基本的な属性 とし, それが存立す る環境 と密接な関連性を有 している。原価計算の場合 ,特にそ の主な要請源た る生産 システムの変化に よって大 きな影響を受け るC先行研 究において も,生産 システムお よびそれに付随す るコンテクス トの変化が, 写像性の実際水準を低下 させていると してい る。 つ ま り,実 際写像性 水準 は,幾つかの コンテクス ト要因お よび原価計算 システ ムの構 造上 の精度 に よって決定 され ると考えることがで きる。 ここでは,実証的な先行研究の レ ビューを通 じて,原価構造 ,製品の多様性 ,お よび生産 プロセスの複雑性の 三つの コンテクス ト要因について検討する。
伝統的原価計算の写像性実際水準の低下は,第
3
章で言及 した製造間接費 配賦 システムの測定構造に関連 している。そ こでは,製造間接費は特定の配 賦基準数値 の ど‑イ ビアと連動す ると仮定 している。そ して,その配賦基準 として,システムA,B,C
は操業度関連基準のみを利用す る。そ こでは, 製造間接費は操業度 のみ と強い相関を有 していると計算構造上仮定 している のである. システムDとEは,製造部門費 の製品に対す る配賦基準は全て操 業度関連基準であ り,補助部門費 の製品に対す る直接的配賦 の際には,部分 的に原価発生原因主義に基づ く配賦基準が用い られ る。 しか し,いずれのシ ステムにおいて も,操業度が非常に重視 されているとい うことには変わ りが ないoFo s t e ra ndGupt a[ 1 990a,1 990b],Banke ra ndJ o hns t on[1 993
],Dat a re ta
l.[ 1 9 9 3
],Bankere ta
l.[ 1 9 9 5
]におけ る実証分析 の結果は,製造 間接費が操業度 と相関を有 していることを示 している。 しか し,他方 で,い ずれの実証分析 も,製造間接費の内の一定 の部分は操業度では説 明できず , 生産す る製品の多様性 あるいは生産 プ ロセスの複雑性に起因す る諸種 の取引 に よって こそ ,それは説明できると指摘 している。 これ らに先行す る多数の‑2 8 3‑
文献においても,1980年代以降の生産 システムの劇的な変化 ,すなわち,そ の自動化 ,多品種生産化 ,お よび変量生産化に よって,製品の多様性お よび 生産 プロセスの複雑性が高 ま り,これに よって製造間接費は増大す ると示唆 され ていたが(13),上記 の文献 は ,それ らの間 の関連性 を実証 した ので あ る(14)0
第一に,FosterandGupta [1990a]は,あるエ レク トロニクス製造業か らデータを収集 ・分析 し,製造間接費は,操業度のみではな く,複雑性変数 (部品ナンバ ー数等),能率変数 (スループ ッ ト タイム,段取時間等),請 場変数 (貢献利益の割合等) と有意な相関があることを実証 した。第二に, BankerandJohnston[1993]は,1981年か ら1985年 の間 ,米国の航空産業の
2 8
社か らデータを収集 し,操業度変数は確かに製造間接費 と強い相関がある が ,製品の多様性お よび生産 プ ロセスの複雑性に関す る変数 もまた ,それ と 有意な相関があることを発見 した。第三に,Dataretal.[1993]は ,自動車 お よび トラ ックのランプ製造業 の工場か ら,監督 コス ト,ツール ・メイ ンテ ナ ンス .コス 1㌧ 品質の管理 ・検査 コス ト,スクラ ップ ・コス トとい った四 領域の製造間接費に関す るデータを収集 し,それ らが非操業度関連 の変数 と 相関を有 していることを実証 した。第四に,Bankeretal.[1995]は,米国の エ レク トロニクス,機械 ,自動車部品の各産業に属す る3 2
ヶ所の工場のデー タを利用 して,製造間接費 と操業度お よび生産 プロセスの複雑性に起因す る 諸取引 (エンジニア リングの変更通知回数 ,購入お よび生産計画職員数 ,部 品当た りの工場面積 ,品質 の管理 ・改善職員数) との間の関連性 を分析 し(13)た とえば,MillerandVollmann[1985]では ,製造間接費の発生原因は,操業度では な く,ロジステ ィクス,調整 ,品質 ,お よび変更 といった業務取引であると指摘す る。
また,JohnsonandKaplan[1987]では,原価 を発生 させ る多 くの取引は ,業務 の複 雑性に よって決定 され ると示唆 している。
(14)ただ し,FosterandGupta[1990b]は,あるエ レク トロニクス製造業 の37ヶ所 のプ ラン トか らデータを収集 し,製造間接費は操業度 とは強い相関があるが,複雑性変数 と はあま り強い相関はなか った と指摘 している。
‑2 8 4‑
た。その結果 ,製造間接費は,操業度だけではな く,それ らの諸取引 と強い 相関があることを実証 した。
上記の実証分析結果を鑑みれば,製品の多様性お よび生産 プロセスの複雑 性の程度が低 く,したが ってそれを発生原因 とす る製造間接費の発生割合 も 低い状況では,その程度に もよるが ,システム
A,B,C
クラスの精度で も 実際写像性水準はそれほ ど低 くないC また,多様性 ・複雑性が高 く,それに よって製造間接費が多 く発生す る状況では,システムD,E
クラスで も実際 写像性水準はそれほ ど高 くない といえる。いずれ も,実際写像性水準は基準 的水準エ リアに含 まれ るであろ う。 ここで,実際写像性 の基準的水準 とは, 構造精度 とコンテクス ト要因 との関係において理論的に合理的 と判断 され る 水準の ことである。例えば ,非常に精度 の高いABC
システムに関 していえ ば,製品の多様性お よび生産 プ ロセスの複雑性が非常に低 く,製造間接費 の 発生割合 も少ない状況では,その実際写像性の水準は高いであろ うが ,この ようなケースにおけるABC
の採用を理論的に想定す ることはで きない。や は り,ABCシステムは,ある程度複雑性が高 く,製造間接費の発生割合 も高 い状況における採用が一般的であろ う。実際にABC
システムを導入 した企 業に対す るケース ・スタデ ィに よれば,その導入背景 として,製品の多様性 お よび生産 プ ロセスの複雑性が高い水準にあった とされている(15)0図
9
は,構造精度 ,コンテクス t要因,お よび実際写像性水準の関係を示 している。構造精度の高いシステムの実際写像性水準は,製品の多様性お よ び生産 プ ロセスの複雑性が高 く,製造間接費 の発生割合 も高い コンテクス ト(15)例えば,次の文献を参照 されたい。SchraderBellows社 (Cooper[1985],Cooper [1989b]),JohnDeereComponentWorks社 (KaplanandMarch[1987]), MonarchMills社 (Shank andGovindarajan[1988]),Siemens社 (Cooperand Wruck[1989],Cooper[1989b]),Evans社 (BhimaniandPigott[1992]),Farrall 社 (Cooperetal.[1992a]),MonarchMirrorDoorCompany社 (Cooperetal. [1992a]),SladeManufacturing,Inc.IHudsonAutomotivePartsCompanya (C ooperetaLl1992a])0
‑2 8 5‑
図9 構 造精 度 , コンテ クス ト要 田 ,お よび実 際写像 性水 準 の関係
低 製造間接糞の発生割合 高
低 製品の多様性・生産プロセスの複雑性 高
において,精度の低 いシステムのそれは,逆 の コンテクス トにおいて,基準 的水準エ リアに含 まれ るo Lか し,コンテクス ト要因が変化すれば,システ ムCお よびDの実際写像性水準は,例 えば,それぞれ図中のポイ ン ト2の地 点 まで,前者は低下 ,後者は向上す ることになる。 システムCお よびDの実 際写像性水準が国中のポイ ン ト2にある場合 ,前者は低い,後者は高い とい うことができる。そ して,特にシステム
A,B,C
(補助部門費の直接的配 賦を操業度関連基準で配賦す る場合は,DとEも含 まれ る)の実際写像性水 準が低 い場合 ,大量 生産 品 と小量生産 品 との間 で原価相互扶助 問題 が 生じ(16),個別製品の原価が歪んで測定 され ることになる。
しか し,ここで注意すべ きことは,実 際写像性水準 が基 準的 エ リアにあ る,あるいは高いか らといって,必ず しも目的適合性を満足す るとは限 らな い とい うことである。逆に ,その水準が低 いか らといって,目的適合性を喪
‑286
‑失 しているとは限 らない。 目的適合性を満足 しているか否かは,要請写像性 と実際写像性 との関係において決定 されるのであるOすなわち,要請写像性 の水準の範囲内であれば,実際写像性は低 くて も目的適合性は満足 され るで あろ うし,その範囲外であれば,実際写像性 の水準は高 くて も目的適合性は 喪失 されているであろ うO
以上を要約す ると,製品の多様性お よび生産 プロセスの複雑性は原価構造 の変化 ,特に製造間接費 の発生割合に影響を及ぼ し,その変化 した原価構造 は写像性の実際水準に影響 を及ぼす ,とい う関係を導出す ることができる。
6.
写像性要請水準に関す るコンテクス ト第2章で言及 した ように,原価計算 の本質 は 目的適合性 で あ る。 す なわ ち,原価情報は常に,その利用 目的に適合 していなけれ ば な らな いのであ る。写像性に関 していえば ,利用 目的を通 じて要請 され る水準に実際水準は 合致 していなければな らないo Lか し,その要請水準は,原価計算の利用 目 的に関す る幾つかの コンテクス ト要因によって一様 ではない。 ここでは,そ の コンテクス t要田 として,戦略お よび外部環境の不確実性を検討す ること にす る。
原価計算の利用 目的は多様 であるが ,ここで考察対象 とす るのは戦略支援 目的であるD具体的には,価格決定 ,プロダク ト・ミックス,顧客 ミックス 等の役割期待に応 える原価情報を提供することである。 しか し,その原価情 報 は,利用主体がそれを どの程度重視す るかに よって,求め られ る正確性に ば らつ きがあると考え られ る。つ ま り,情報の利用主体が ,戦略支援情報の
(16)CooperandKaplan [1988a,p.24]ほ,操業度関連の基準のみで製造間接費配賦を 行えば,大量生産品は小量生産品が本来負担すべ き製造間接費を負担す ることにな り, 結果 として,前者の原価は過大に測定 され ,後者のそれは過少に測定 され ることになる と指摘 している。 これは多 くの
ABC
論者によって指摘 され る問題である。‑2 8 7 ‑
中で ,どれだけ原価情報 に役割期待を有 しているかに よって ,原価計算 の写 像性 の要語水準 も相違す るとい うことである。そ して ,原価情報 に対す る役 割期待 は幾つかの コンテ クス ト要 因に よって影響を受け ると考 え られ る. 普 ず ,その企業が選択 している戦略について考察す る。
(1) 戦時
「戦略」 は ,様 々な観点か ら分類 され ,その内容は多様 である。例 えば ,
Mi nt z be r g[ 1 9 7 3
]の企業 家 モ ー ド( e nt r epr e ne ur i almo de )
とプ ラ ンニ ン グ ・モー ド( pl a nni ngmo de ),Mi l l e ra ndFr i e s e n[ 1 9 7 8
] の イ ノベ イ クー(i nno va t o r )
と ド ミナ ン ト(do mi na n
t),Mi l e sa nd Sno w [1978
],[1 994
] の プ ロスペ クター (pr o s p e c t o r )
とデ フ ェ ン ダ ー(de f ende r )
,Po r t er[ 1 9 8 0
]の差BrJ化( di f f er e nt i a t i o n)
とコス ト・リーダーシ ップ( c o s t l e a de r s hi p)等である. ここでは ,Mi l e sandSno w [1 9 7 8
],[ 1 9 9 4
]におい て分類 され る戦略 タイ プにつ いて検討す る。その理 由は ,寡‑ に ,当該分類 法が ,戦略 に関す る コンテ クス トに よって写像性 の要請水準がいかに相違す るかを認識す るための理論的 フ レーム ワークを構築す るにあた って,最 も適 切な基準を提供す ることである。第二に ,それは,上記 の他 の戦略分類 と異 質 ではな く,かつ矛盾 しない とい うことである。第三 に ,それは管理会計に 関す る実証的分析 で広範 に利用 されていることであるDMi l e sa ndSnow [ 1 97 8
],[ 1 9 94
] の分類 に よれ ば ,戦 略 は プ ロスペ ク ター,デ フ ェンダー,お よびその中間的な性質を有す るアナ ライザ ー( a na ‑ 1 yz e r )に分類 され るが ,ここでは ,それ らの両極 に位置す る前二者 を特 に考
察す る。 これ らの各戦略 の特徴 は表3
の ように要約す ることがで きるoMi l e sa ndSnow [ 1 97 8
]に よれば,プ ロスペ クターは ,広範囲に及ぶ環境 状況 と事象のモニタ リングを通 じて,製 品 ・市場機会 を発見 し展 開す る。そ の製品 ドメイ ンは広 くかつ変動的 であ り,それに応 じて生産工程 は フ レキシ ブルである。 これに対 して ,デ フ ェンダーの ドメイ ンは狭 く安定的であ り,‑2 8 8‑
表3 経営戦略と取殺上の特質
戦略 範 織 上 の
性
質 デ ィ フ ェ ン ダ ー プ ロス ペ ク タ ー 製品一市場戦略 限定され,安定的な製品ライ 広範で,変動的な製品ラインン′ 製品のイノベーションと市場
親模の経済を通じた原価能率 に対する迅速な反応 市場浸透率 新市場への最も早い参入
R良D プロセス .スキルと製品改善 製品設計 とマーケット.リサーチ 生産 大量生産,低コス一㌧ 専門工 フレキシブルで適用範囲の広
程 い設備および工程
顔̲織構造 壊能的阻織 事業部制観織
コントロール.プロセス 集権的,計画による管理 分権的,業績による管理
それ に応 じて生産工程 も専 門化 され る。 したが って ,前者 におけ るプ ランニ ング ・プ ロセスは広範 囲に及 び ,後者 に お け るそれ は集 約 的 で あ る と され る。 そ して
,Cho nga ndCho ng[ 1 9 9 7
]は ,これ らの戦略 タイ プに よって適 切 とされ る管理会計情報 の性質 が異 な る ことを実証 したO それ に よれ ば ,デ フ ェンダー ・タイ プの戦略 を実践す る企業 においては ,焦点 を絞 った管理会 計 シス テ ム( na r r o w s c opemana ge me nta c c o unt i ngs ys t e m)
に よる 内部 的 ,財務的 ,歴史 的 な管理会計情報 が適切 であ り,プ ロスペ クター ・タイ プ で は , 焦 点 を 広 げ た 管 理 会 計 シ ス テ ム(br o a d s c ope ma na ge me nt a c c ount i n gs ys t e m)
に よる外部的 ,非財務 的 ,将来 的な管理会計情報 が適切 である とされ る。 なお,Che nha l la ndMo r r i s[ 1 9 8 6
]に よれ ば ,内部的情報 とは企業 内で生起 す る事象 に焦点 を当てた情報 の ことをいい ,これ を貨幣 的 に評価 した情報 が財務 的情報 ,貨幣的に評価 しない情報 が非財務 的情報 とさ れ る。外部的情報 とは ,外部環境 に関連す る経 済 的情報( GNP
,市場全体 の 売上高 ,市場 シ ェア等) お よび非経 済的情報 (消費者 の好 み ,労使 関係 ,読 争者行動等) の ことをいい ,貨幣的 に評価 された情報 が財務 的情報 ,貨幣的‑2 8 9‑
に評価 されていない情報が非財務的情報 とされ ,多 くは非財務的情報である とされ る。 また ,蓋然的な将来事象に対す る評価情報を将来的情報 ,過去に 生起 した事象に対す る評価情報を歴史的情報 とい う。
大部分の原価情報は
,Ch e n h a l la n dMo r r i s[ 1 9 8 6
]における管理会計情報 分類 に よれ ば ,内部 的 ,財務 的情報 であ る。 そ して,Ch o n ga n dCh o n g
[ 1 9 9
7]における実証分析結果に従えば,原価情報はデフェンダー ・タイプ の企業において こそ適切であるとい うことになる。 しか し,ここで注意 しな ければな らないのは,デフェンダーにおいて適切 で あ る とされ る原価情報 は,原価管理情報であ り,戦略支援情報ではない とい うことである。デフェ ンダーは,規模の経済を通 じた原価能率に戦略の重点を置 き,資源の能率的 利用を図 り(17),市場 シェアの維持を志向す るため, ドメイ ンは安定 し,生産 工程 もルーテ ィン化 している。そのような状況では,原価計算に求め られ る 情報は原価維持情報や原価改善情報なのであ り, ドメイ ンの変動を伴 う製品ミックスや顧客 ミックスな ど戦略支援情報 ではないと考え られ る。
また,プロスペ クターにおいては外部的 ,非財務的情報が適切であるとさ れ るが,このことは内部的 ・財務的情報が必要 とされない とい うことを意味 す るのではない
。Co r d o na n dNa r a y a n a n[ 1 9 8 4,p3 9
]は,焦点を広げた管 理会計 システムとは,内部的 ・財務的情報 を排他的に除外 し,外部的 弓 巨財 務的情報のみをアウ トプ ッ トす るシステムではな く,前者に加えて後者を追 加的にアウ トプ ッTlす るシステムであると理解すべ きであるとしているo こ の ように考えると,製品原価情報はデフェンダーにおいて重視 され ,プ ロス ペ クターにおいては重視 され な い , とい うこ とは で きな い. む しろ ,Ch e n h a l la n dMo r r i s[ 1 9 8 6,p . 2 0
]において指摘 され るように,焦点を広げ た管理会計 システムは,マーケテ ィングや労使交渉な どのための外部的 ・非 財務的情報に加えて,価格決定な どのための財務的情報 (ここにおいては当(17)
Mi l e sa n dS n o w
[1978,p.41]‑2 9 0
‑然製品原価情報が重視 され る) もまた,管理者の意思決定を支援す るために 必要 とされ るのである。
さらに,プロスペ クターの ように ドメイ ンが広 く,かつその変動性 も高い とい うことは,頻繁に新製品の市場投入 と既存製品の市場撤退が繰 り返 され るとい うことであ り,そ こにおいては,問題発見情報 ,すなわち管理者の注 意を喚起す る意思決定情報が必要 とされる(18)。そ して,製品原価情報はまさ にその注意喚起情報であるQデフェンダーの ように ドメイ ンの範囲 も狭 く安 定的で,大 きな外部的脅威 も存在 しない状況では,問題発見情報 よ り,企業 内部に関す る問題解決情報が重視 され るのである(19)。以上の関係は図
1 0
の よ うに要約できる。戦略 タイプ別 の特性 と製品原価情報の必要性の関係を考慮 すれば,相対的にいえば,デフェンダーよ りプロスペ クターにおいて,戦略 支援 とい う原価計算 目的に対す る役割期待が高 く,したが って要請写像性 も 高い水準が必要 とされ るとい うことができる(20)。図10製品原価の必要性とドメイソの広狭 ・変動性
狭い ドメインの広狭 広い 低い ドメインの変動性 高い (18)Ibid,p.61
(19)Ibid,p.42.
‑2 9 1
‑なお ,ここで付言 しなければな らないのは ,戦略 は製品の多様性 お よび生 産 プ ロセスの複雑性 とい うコンテ クス トに も関連 して い る とい うこ とで あ る。すなわち,戦略上 の コンテ クス トである製品 ドメイ ンの広狭 は ,生産す る製品の多様性に関連 し, したが って生産 プ ロセスの複雑性 に も関連す ると い うことである。製 品 ドメイ ンの広 いプ ロスペ クターにおいては,多様性 お よび複雑性 は高 く, ドメイ ンの狭 いデフ ェンダーにおいては ,それは低い と い うことがで きる。
( 2 )
環境の不確実性コンテ ィンジェンシー理論 に基づ く多 くの実証 的な先行研究では ,ブ ロス ベ クタ‑ ・タイプの戦略を実践す る企業 においては ,管理者に よって認知 さ れ る外部環境 の不確実性
( per cei vedenvi r onment alunc er t ai nt y;PEU)
の水 準が高 く (例 えば,Si mons [ 1 98
7],Govi ndar a j an [1986,1 988
],Gupt a
[ 1 9 8 7 ] )
,逆に ,デ フ ェンダー ・タイプの戦略 を実践す る企業においては , それは低 い (例 えば,Mi l l er [ 1 9 8 8
],Mi l l ereta
l.[ ・ 1 9 8 8 ] )
とい うことが指摘 されてい る。 ここでPEU
とは,Cor donandNar a yanan [ 1 9 8 4 ,p 3 8
]に よ れば ,その企業 の属す る産業 ,経済的環境 ,技術 的環乳 競争環境 ,お よび 顧客環境 の様 々な局面 におけ る予測可能性 お よび安定性 に対 して管理者が認 知す るところに よ り測 定 され る。Chenhal landMor r i s [1 986 ,p. 1 8
] は ,「 PEU
は,それが管理上 のプランニングとコン トロールを よ り困難 にす るこ とか ら,重要な コンテ クス ト変数 として認識 されて きた」 と指摘 してい る。(20)
Go s s e l i n
[1995,p .
115]における実態調査結果によれば,ABCを実施する意思決定 をした企業77社のうち,プロスペクター.タイプの企業が35社,アナライザ‑が27社, デフェンダーが1 5
社であり,実際に実施した企業4 9
社のうち,プロスペクターが22社, アナライザーが16社,デフェンダーが11社であった。このことは,プロスペクターが, より正確な製品原価情報を欲し,要請写像性水準の高さと関連していることを示して いる。‑2 9 2‑
そ して,この ように,戦略 タイプに よってそ の水 準 の高低 が左右 され る PEU は,意思決定において必要 とされ る管理会計情報の質 に関連す る こと が,多 くの実証的研究に よって明 らかにされている。PEU の水準 が高 けれ ば,管理者は環境の複雑性に対処す るために追加的な情報を必要 とし,した が って,管理会計 システムは よ り洗練 された正確な情報を提供 しなければら ない。そ うす ることに よって,PEU は低減 され ,管理的意思決定は改善 され うるのである.逆に,PEU が低ければ,管理者はマ‑ケ ッ トに対 して相対的 に正確な予測をす ることがで き,したがって,それほ ど洗練 された情報を必 要 としないのである(21)。図11はそれ らの関係を示 している。
図11 洗練 された情報の必要性 とPEUの水準
低
PEUの水準
さらに,前節での考察結果 と一致 して,プロスペ クター ・タイプの戦略を 実践す ることでPEU が高い水準にある場合 ,そ こにおいては焦点を広げた 管理会計 システムに よる外部的 ,非財務的 ,将来的情報 が適切 であ り,デ フェンダー ・タイプの戦略を実践す ることで PEU が低 い水準にある場合 , そ こにおいてほ焦点を絞 った管理会計 システムに よる内部的 ,財務的,歴史
( 2 1 )Gu la n dCh i
乱[ 1 9 9 4
,p4 2 3 ]
‑2 9 3‑
的情報が適切であることが
,Cor do na ndNar a y a na n[1 9 8 4
],Che nha l la nd Mor r i s [ 1 9 8 6
]において指摘 されている。 しか し,この ことは製品原価情報 の必要性を排除す るものではない ことは,前節で考察 した とお りである。以上を要約す ると,要請写像性水準が相対的に高いのは
,PEU
が高 く,し たがって よ り洗練 された意思決定情報を必要 とす るプ ロスペ クター ・タイプ の戦略を行 う企業であるとい うことができる。最後に,プロスペ クターお よびデフ ェンダーの各戦略特性
,PEU
の水準 , お よび管理会計情報の質 との関係か ら,要請写像性水準の高低は図1 2
の よう に示す ことができる。図12戦略特性.PEU水準 ,管理会計情報 の質 ,お よび要請写像性水準
洗練された 製品原価情 報の必要性
デフェンダー特性 プロスペクター特性
低 pEUの水準 高
7. 結 論
以上の考察結果を総合す ると,図
1 3
の ような環境 ,原価計算上の コンテク ス ト,お よび原価計算の写像性に関す る因果 モデル を構 築す る ことがで き る。この因果モデルは戦略を起点にす る。企業が実践す る戦略に よって,製品
‑2 9 4‑
図13環境,原価計算上のコンテクスト,および原価計算の写像性に関する因果モデル
E 的 壬 合 性 を 満 足
卓晶の多様性・
生産プE)セスの書雄性
の多様性お よび生産 プ ロセスの複雑性は規定 され ,これに よって原価構造は 影響を及ぼされ る。そ して ,原価構造 と原価計算の構造精度の相対に よって 実際写像性水準は規定 され る。他方で,戦略は,直接的に,かつ環境の不確 実性を通 じて間接的に,原価計算の利用 目的の内,特に戦略支援 目的に対す る役割期待に影響を及ぼ し,もって要請写像性水準を規定す るOそ して,実 際写像性水準 と要請写像性水準が適合 している場合に,原価計算の 目的適合 性は満足 され るのである。
この点を よ り詳細に図
1 4
の仮説例に よって検討す る。ある企業がシステム Bを実施 しているとす る。その構造精度は相対的に低い範晴にはいるが ,製 造間接費の発生割合( Co n t e x t1;C1
)と製品の多様性お よび生産 プ ロセス の複雑性 (C 2)の低い状況を考慮す ると,実際写像性水準は,基準的水準 エ リア内のポイ ン ト1
にあ り,低 くはない。 また ,その場合の要請写像性水 準は, ドメインの範囲 (C 3)の狭 さ, ドメインの変動性 (C 4)の低 さ, お よび PEU の水準( C5)
の低 さと洗練 された製品原価情報の必要性 (C6)の低 さとの関係か ら,比較的低 く規定 され ,許容エ リア 1
に位置 してい る。結果 として,ポイン ト1にあるシステムBの実際写像性水準は,許容エ リ7 1の範噂に含 まれているため,当該 システムは 目的適合性を満足 してい るとい うことができる。一2 9 5‑
図14実際写像性水準と要請写像性水準の適合 ・不適合に関する仮説例
製造間接井の発生割合 (Cl)
低 製品の多様性 ・生産プロセスの複雑性の程度 (C2) 高
狭 ドメインの範囲 (C3) 広
低 ドメインの変動性 (C4) 高
低 PEUの水準 (C5) 高
しか し
,C1
お よびC2
が高 ま り,システ ムB
の実 際写像性水準 が ポイ ン ト2まで低下 した とす る。 C1, C 2が 高 ま った とい うこ とは , C 3, C4,C5
あ るいはC 6
とい った戦略関連 の コンテ クス トが変動 した とい うこ とで あ り,それ らの変動 は要請写像性水準 の変化 を導 くことにな るO仮 に , それが許容 エ リア 2の位置 まで変化 した とす るC ポイ ン ト2にあ る実 際写像 性水準 は許容 エ リア2
の範噂 に含 まれ るため ,実際水準 が低下 したに も関わらず ,依然 と して システ ムBは 目的適合性 を満足 してい る。
次 に ,要請写像性水準が許容 エ リア 3あ るいは 4に変化 した とす る(22)。い
(22)国中には,許容エリア5も示されている。しかし,実際写像性水準をポイント1から 2への低下させたコンテクス ト要因に関連して,要請写像性水準の許容エ リアがエ リ ア1から左上方に変化することは,Cl,C2,C3,C4,C5がそれぞれ比例関係 にあることから,理論的にはあり得ない。
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ずれの場合 も,ポイ ン ト2の実際写像性水準 は許容 エ リア外 にあ る。 つ ま り,各種 コンテクス ト要因の変化に よる実際写像性水準の低下に伴い,シス テムBの 目的適合性が失われたのである。 したがって ,エ リア
3
の場合はシ ステムCに,エ リア4
の場合はABC
システムに改善あるいはシステム変更 して,構造精度を上げ ,実際写像性水準を向上 させ ることに よ り,目的適合 性 の回復を図 らなければな らないo以上 ,原価計算の 目的,構造 ,お よび写像性 と原価計算上の コンテクス ト 要因に関す る因果 モデルを構築 し,さらに,コンテクス ト要因が変化 した場 合の理論的展開について考察 した。 これに よ り,原価計算 システム変化論を 構築す るための一つの手がか りが獲得 しえた と考 える。 しか し,幾つかの残 された課題があるb第一に ,コンテ クス ト要因のさらなる追求である.本稿 で考察対象 とした要因以外に,例えば,観織構造 ,阻織文化等が原価計算上 の コンテクス ト要因た りうるかを,さらに検討 しなけれ ば な らない。第二 に ,本稿 では原価計算の利用 目的 として戦略支援 目的のみを考察 したが ,コ ス ト・マネジメン ト目的が写像性概念 といか な る関連性 を有 してい るのか を,理論的に考察 しなければな らない。最後 に,当該因果モデルについて実 証的な分析を試みなければな らない。 そのため には ,実 際 の企業 に関す る データを収集 しなければな らないが,近 い将来 , これ を実 施す る予定 であ る。
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