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密教文化 Vol. 1978 No. 124 003八田 幸雄「『金剛界法』の問題 PL104-L78」

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密 教 文 化 『金剛界法」の問題

1.『 金 剛 界 法 』 の 問 題 点 現 在 東 密 で 行 わ れ て い る 『金 剛 界 法 』 は元 果(914-995)の 次 第 が基 礎 で あ る (1) と い わ れ て い る。 こ の 次 第 は も と、 弘 法 大 師 空 海(774-835)請 来 の 『金 剛 頂 蓮 華 部 心 念 諦 儀 軌 』(大 正18.No.873)を も と に、 空 海 か ら実 恵(786-847)、 益 信(862 -906)、 寛 平(867-931)、 元 果 へ と発 展 整 備 さ れ た も の で あ る。 そ の 内 容 は 『十 八 道 』 を も と に し た 供 養 法 に、 上 記 『心 念 諦 儀 軌 』 の 印 言 を組 み 入 れ た も の で あ っ て、 そ の 主 な 内 容 は 供 養 法、 五 相 成 身 と そ の 内 容 を増 広 し た 成 身 会、 掲 磨 会、 三 昧 耶 会、 供 養 会 等 で あ る。 こ の 中 に は200を 越 す 印 言 が 説 か れ て い て 複 雑 で あ る か ら、 そ れ を整 理 す る た め に 古 来 い くつ か の 分 類 が な さ れ て い た。 安 然(841-915)の 『金 剛 界 対 授 記 』(大 正75.No.2391)に よ れ ば 次 第 の 印 言 を(1) 行 願、(2)三 昧 耶、(3)成 身、(4)道 場、(5)奉 請、(6)供 養、(7)念 諦 に 分 類 し、 元 果 は (2) この後 に後 供 方 便 を加 え て八 つ に分 け て い る。 こ の分 け方 は伝 統 的 に重 ん じ ら れ て来 た が、 『金 剛 界 法 』 の 内容 を精 査 す るな らば、(3)成 身 の 中 に あ る、(54)五 相 成 身 観 とそ の内 容 を豊 か に した(55)諸仏 加 持、(56)四仏加 持、(57)五仏 潅 頂、(58)四 仏 繋 婁等 と、(6)供養 の項 に あ る(83)掲磨 会、(84)三昧 耶 会、(85)供養 会 で あ る と言 え よ う。 『金 剛 界 法 』 の 目的 は、 そ の 次 第 に示 され た 観 想 の 印 言 を如 実 に実 修 す る こ とに よ り、金 剛 界 曼 茶 羅 に示 され た金 剛 英 智 の主 体 とな る こ とで あ る。 そ の た めに 図絵 の金 剛 界 曼 茶 羅 を観 想 の対 象 とす る ので あ るが、 主 と して東 密 に伝 え られ た金 剛 界 曼 茶 羅 は 九会 の組 織 に な っ て い て、 『金 剛 界 法 』 の 一 会 の 組 織 と は異 な っ て い るの で あ る。 そ の た め に 『金 剛 界 法 』 を九会 の組 織 の 金 剛 界 曼 茶 羅 に対 応 させ よ う と して、 様 々 な問 題 を生 じて い るの で あ る。 例 え ば元 果 の次 第 番 号(43)極喜 三 昧 耶 か ら、(66)道場 観 に至 る まで の五 相 成 身 を 主 と した印 言 を成 身 会 と呼 び、 次 に(83)掲磨 会、(84)三昧 耶 会、(85)供養 会 の 三会 を

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合 せ た 四会 を 『金 剛界 法 』 の主 要 部 分 と して い る。 この こ とが 後 に九 会 曼 茶 羅 の各 会 と混 同 され る よ うに もな っ て くる。 ま た 『金 剛界 法 』 は 九会 曼茶 羅 の世 界 を体 得 し、実 践 して い く事 相 で あ る と す る立 場 か ら、上 転、 下 転 の教 学 を立 て る。 元 果 作?と 伝 え られ る 『金 剛 界 九 会 密 記 』(大 正78.No.2471)で は次 の よ うに配 分 され て い る。 降 三世 三 昧 耶会(43)極 喜 三 昧 耶 降 三世 掲 磨 会(44)降 三世、(45)蓮華 部 三 昧 耶、(46)法輪 理 趣 会(47)大 欲、(48)大楽 不 空 身、(49)召罪、(50)擢罪、(51)業障 除、(52)成 菩提心 一 印 会(54)五相成身、(55)諸仏加持 四 印 会(56)四 仏 加 持 供 養 会(57)五 仏 潅 頂、(58)四仏 繋 糞、(59)如来 甲、(60)結冑 微 細 会(61)現 智 身、(62)見智 身、(63)四明、(64)成仏 三 昧 耶 会(64)曼 茶 羅総 観 の三 昧 耶 身 と な る ま で (3) 掲 磨 会 変 じて掲 磨 身 とな る 以 上 の 説 は上 転 門 の立 場 に立 っ て印 言 を配 当 した もの で あ る が、 下 転 門 の立 場 に立 って み る と、 元 果 の次 第(85)供養 会 の 次 に、 金 剛 薩塊、 虚 空 蔵、 観 自在、 虚 空 庫 の 四 印言 を出 し、 これ 等 を(86)四印会 と称 し てい る。 四 印 会 の 印 言 の根 拠 は 宗 祖 の 『黄 紙 次 第 』 に基 づ く もの とされ、 神 楽 岡 貞 慶(866-900)の 次 第 に見 え、 (4) 元 果 は それ を受 け継 い だ もの と され て い る。 尚 こ の他 に 口伝 と称 して、 四 印 会 の 次 に寛平 法 皇 や、 神 楽 岡 次 第 で は一 印 会 を説 くと い う。 これ 等 は下 転 門 の立 場 で 印言 を配 当 した もの で あ る。 こ れ をみ る と九会 曼 茶 羅全 体 を成 身 会 と観 て、 そ の根 本 にな る も の を掲 磨 会 と観 る。 次 に三 昧 耶 会 を説 き、微 細 会 を省 略 して供 養 会、 四 印会、 一 印 会 とい うよ うに な る。 微 細 会 の省 略 につ い て 『九 会 密 記 』 で は 「問 う、何故 重 ね て微 (5) 細 会 等 余 会 の諸 尊 の印 言 を説 か ざ るや。 答 う是 れ 繁 を省 き て要 を取 る也 」 と あ る。 これ は 九 会 曼 茶 羅 の主 要 部 分 が 四 会 で あ るの に対 して 『金 剛 界 法 』 の 主要 部 と辻 妻 を分 わ せ た 苦 肉 の 策 で あ る。 金 剛 界 九 会 曼 茶 羅 の 上 記 の 名 称 は 宗 叡(809-884)が 教 理 上 の 立 場 か ら 名 づ け た も の で、 そ れ 相 当 の 意 義 を有 す る も、 『初 会 金 剛 頂 経 』(大 正18.No.882)の 名 称 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 とは 一 致 しな い。 そ れ に 『略 出経 』 と 『不 空 訳 三 巻 本 』 の 二 系 統 の金 剛 界 法 が あ っ た の に、 それ が別 系 統 で あ る こ との明 確 な 認識 が な か った た め、 九 会 曼 茶 (6) 羅 の 名 称 は元 果 以 前 に お い て も混 乱 が あ った の で あ る。本 研 究 は 従 前 の 伝 統 的 飾 釈 を離 れ て 『金 剛 界 法 』 の基 本 構 造 は何 か を問 い、 併 せ て 九会 曼 茶 羅 の 示 す 世 界 との相 違 を明 らか に して い くこ と を 目的 とす る。 そ の た め に は基 本 経 軌 に 帰 っ て 『金 剛 界 法 』 と九 会 曼 茶 羅 の構 造 を明 か に して い か な け れ ば な らな い。 2.『 金 剛 界 法 』 の 基 本 経 軌 囚 現 行 『金 剛 界 法 』 の基 礎 とな る もの (1)『金剛頂愉伽中略出念踊経』四巻金剛智(671-741)訳大正18.No.866。 こ の 中 の 『金 剛 界 法 』 の部 分、 以 下 『略 出経 』 と略 す。 金 剛 界37尊、 賢 劫 16尊、 外 金 剛 部20天 を中心 と した一 会 の金 剛 界 曼茶 羅 を示 し、そ の観 法 の 印言 と して掲 磨 印、 三 昧 耶 印、 供 養 契 を説 く。但 し これ 等 三 印 は37尊 全 部 に亘 っ て説 かれ て い る の で は な い。 詳細 は 後 に論 及 す るが、 基 本 的 に は一 会 三 印 の組 織 に な っ て い る。 (2)『金剛頂蓮華部心念講儀軌』一巻不空(705-774)訳大正18.No.873。以 下 『心 軌 』 と略 す。 『略 出 経 』 に比 べ て若 干 の 印言 の増 広 が 認 め られ る。 (3)『金剛頂一一切如来真実摂大乗現証大教王経』二巻不空訳大正18.No.874。 以 下 『二 巻 本 』 と略 す。 概 ね 『心 軌 』 と異 な るこ とは な い が、 五 仏 に は五 仏 独 自 の真 言 を出 して 『心 軌 』 の よ うに五相 成 身 の真 言 を用 いな い。 金 剛 界37尊 の他 に賢劫16尊、20天 の 各真 言 を増 広 して出 す。 (B)九 会 曼 茶 羅 の 系 統 の基 礎 にな る もの。 (4)『金剛頂一切如来真実摂大現証大教王経』三巻不空訳大正18.No.865。 以 下 『三巻 本 』 と略 す。 初 会 金 剛 頂経 の 中の 金 剛 界 品 の 而 も金 剛 界 大 曼 茶 羅 の部 分 の み の部 分 訳。 次 に示 すr施 護 本 』 三 十巻 本 の 金 剛 界 大 曼 肇 羅 の 部 分 に相 当す る の で 同一 本 と見 倣 され る。 (5)『仏説一切如来真実摂大乗現証三昧大教王経』三十巻施護訳(生没年 不詳、A.D.980入 宋)以 下 『施 護 本 』 と略 す。 初 会 金 剛 頂経 の 完 訳。 梵、 蔵 の テ キス ト完 備。 (6)『五部心観』善無畏(637-735)撰?智証大師円珍が師法全より付嘱さ

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れ る。(A.D.855)『 施 護 本 』 の梵 本 よ り訳 し、 更 に 印言 等 を整 備 し増 広 し て い る。 (c)(A)、(B)両 系 の も とに な る もの で、 原 金 剛 界 法 と も呼 ば れ る もの。(筆 者 の推 定)金 剛 界37尊 の構 想 は あ っ た が、 観 法 の印 言 にお い て は16菩 薩 と八 供 四摂 に留 る。 (D)曼 茶 羅 (7) (a)A系 の 儀 軌 を 基 礎 とす る も の。 (イ)『 請来 録 』 に あ る 『八 十 一 尊 曼 茶 羅 』 弘 法 大 師請 来。 但 し 『請来 録 』 に名 称 が 残 るの み で どの よ うな 円容 か は不 明。 (口)慈 覚 大 師 請来 の 『八 十 一一尊 曼 茶 羅 』妙 法 院版 と して 出 る。金 剛 界37尊、 賢劫16尊 二、四 大 明 王4尊、 外 金 剛 部20天、 四天 王4天 の計81尊。 の 『百八 尊 曼 茶 羅 』 金 剛界37尊、 賢劫16尊、 外 金 剛部20天 の73尊 に五 頂 輪 王、16執 金 剛、 十 波 羅 蜜、 地 水 火 風 の 四天 の35尊 を加 え た総 計108尊。 (b)B系 の儀 軌 を基 礎 とす る も の。 (イ)『 五 部 心 観 』 巻 子 本 で 儀 軌 次 第 が明 か で あ り、 また 曼 茶 羅 の構 成 も 明 か で あ る。 (口)『 金 剛界 九会 曼茶 羅 』 以 上 の儀 軌、 曼 茶 羅 等 を通 覧 して み る と、A系 は金 剛界37尊 を中心 に、 賢 劫 16尊、 天 部20尊 等 をま とめ て一 会 と した曼 茶 羅 が、 観 想 の対 象 とな っ て い る。 そ して こ の金 剛 界 一 会 の世 界 を体 得 し、実 現 す るた め の観 法 と して翔 磨 印、 三 昧 耶 印、 供 養 契 の三 種 の印 言 が説 かれ て い る。 そ れ に対 してB系 は金 剛 界 品 につ い て い うな らば、(1)金剛 界 大 曼 茶 羅、(2)金 剛秘 密 曼 茶 羅、(3)金剛 智 法曼 茶 羅、(4)金 剛 事 業掲 磨 曼 茶 羅 の 四 会 に展 開 し、更 に 四 印、 一 印 の 二会 を加 えた 六会 を一組 とす る。 そ して そ れ等 の各 曼 茶 羅 を観 想 す るた め大 印、 三 昧 耶 印、 法 印、 掲 磨 印 の 四種 印 が各 会 に説 か れ てい る。 金 剛 界 九 金 曼 茶 羅 は以 上 の 六会 を も とに理 趣 会、 並 に 降 三世 会 を併 せ て ま とめ た もの で あ る。 端 的 に両 系 の相 異 を示 す な ら、A系 は一 会 三 印、 B系 の主 要 部 分 は 四 会 四 印 とな っ て い る の で あ る。 今 これ らの こ とを も う少 し詳 し く述 べ て い こ う。 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 ◎A系 の儀 軌 〔掲 磨 印 〕 諸 尊 の形 態 を観 想 の対 象 と し、諸 尊 の 外形 を通 して、 諸 尊 の 示 す 世 界 を体 得 させ よ う とす る。 掲 磨 の総 印 は二 手外 縛 して掌 を開 き、 両 大 指 と小 指 の先 を合 わ せ て掌 面 を腹 に 当 て る。 これ は掲 磨 金 剛 杵 を模 した も ので、 腹 に 掌 を当 て る こ とは、 行 者 の全 身 体 が金 剛 杵 の主 体 で あ る と観 想 す る ので あ る。 次 に掲 磨 の 印母 で あ る二 手 金 剛拳 を説 く。 こ の二 拳 を様 々 に 変 え て金 剛 界37尊 の各 尊 の 特性 を示 し、 そ こか ら諸 尊 の理 想 とす る精 神 を観想 す る。 例 え ば五 仏 につ い て い うと次 の通 りで あ る。 二手拳→智拳印大目 二手拳→左手腰に拳、右手触地………阿閾 〃→〃右手施願………宝生 〃→両手下に定印 無 量 寿 〃→左手腰に 拳、右 手施 無畏……不空成就 上述 の印 を結 ぶ とと も に真 言 を唱 えて観 想 す る。 『略 出経 』、『二 巻 本 』 は次 の通 りで あ る。(大 正18-242、 大 正18-317)

大 目om vajra-dhatu barm(略107)(不79)

阿 悶om aksobhya hum (略108)(不80)

宝 生om ratna-sambhava trah(略109)(不81)

無 量 寿om lokesvara-raja hrlh(略110)(不82) 不 空 成 就om amogha-siddhi ah(略111)(不83)

『心 軌 』 に あ っ て は 五 相 成 身 の 真 言、 即 ち"om prativedham karomi"(No.72) を 唱 え る。 金 剛界16菩 薩 に つ い て も同様 で あ る。例 え ば金 剛 薩 垣 で は、 印 は二 手 金 剛 拳 か ら左 手 は拳 に して腰 に、 右 手 は金 剛杵 を持 つ印 を示 し、 真 言 は"om vajra-satvaah"を 唱 え る。 こ の よ うに謁 磨 の 印言 は37尊 の形 態 を、 行 者 が手 印 を結 ん で模 し、諸 尊 の 世界 に入 ろ うとす るの で あ る。 〔三 昧 耶 印 〕諸 尊 の 内証 本 誓 に観 想 の主 眼点 を置 く。三 昧 耶 印 の 印母 は 十指 交 えた 金 剛 合 掌 か ら金 剛縛 印 を結 ん だ もの で あ る。金 剛 合 掌 は帰 命 の心 を表 わ す。 そ れ は清 浄 心 に導 き菩 提心 を顕 わ に す る。金 剛縛 印 は月 輪 の形 を して お り、 堅 固 な 内 容 か ら菩 提心 を示 し てい るの で あ る。金 剛 縛 印 を印 母 と し て諸 尊 の 印

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を結 ぶ と い うの は、 堅 固 な菩 提 心 が基 礎 とな っ て諸 尊 の世 界 が 開 か れ るこ と を 示 そ う と して い る の で あ る。 例 え ば金 剛 薩 唾 に つ い てみ てみ る と、二 手 外 縛 し、二 中指 を竪 て て針 の よ う に し、 二 小 指、 二 大 指 を開 き外 五股 の形 に す る。 そ して"samayas tvam"の 真 言 を唱 え る。 これ は清 純 な心 か ら堅 実 な 菩 提 心 を生 じ、そ こか ら五 智 を生 じ、 わ れ は 三 昧 耶(仏 の真髄)な りと観 想 す るの で あ る。 この よ うに 三 昧耶 印 の観 法 は、 諸 尊 出生 の根 本 精 神 が菩 提 心 の働 き に あ りと し、 菩提 心 の働 き を種 々 に観 想 して諸 尊 の真 髄 に 肉 迫 して い こ うとす るに あ る。先 の掲 磨 印 は外 形 か ら、今 の三 昧 耶 印 は 内的 本 質 面 の観 法 を通 して行 者 の宗 教 体 験 を深 め て い こ う とす る ので あ る。 した が っ て こ の二 印 は 自受 法 楽 の面、 即 ち 自 己 の 向上 完 成 の面 を強 調 した観 法 と い え る の で あ る。 〔供 養 契 〕 金 剛 の諸 徳 が 身 に備 わ る こ と を確 認 す る と と も に、外 に 向 っ て金 剛 の事 業 が実 現 され てい くこ と を教 え る。供 養 契 の 印 契 は全 て二 手 外 縛 を基 本 と して い る。金 剛 薩垣 の観 想 を例 に と る と、二 手 外 縛 して胸 上 に置 ぎ"om sarva-tathagata sarvatma-nillyatana-puja-spharapa-karma-vajri ah"(略No.173)の

真 言 を唱 え る。 こ れ は行 者 の身 心 が金 剛堅 固 な菩 提 心 の主 体 で あ っ て、 「一 切 如 来 に 自 己 のす べ て を奉 献 す る供 養 の働 きが 行 動 のす べ て に顕 わ れ て、 金 剛 の 事 業 を産 み 出 して い くも ので あ れ か し」 と誓 うの で あ る。karma-vajri事 業 金 剛 女 と訳 され る語 は、 女 尊 を もっ て金 剛 の事 業 を産 み 出す 根 源 の生 命 を示 した も ので、 前 の褐 磨 印、 三 昧 耶 印 が、 行 者 の内 面 を深 め て い くの に対 して、 こ の 供 養 契 は 外 に向 っ て金 剛 の働 き を実 践 してい くこ とを強 調 して い る の で あ る。 ◎B系 の儀 軌 B系 の儀 軌 は金 剛 界 大曼 茶 羅 を開 い て 四会 を結 論 づ け るた めに 四 印、 一 印 の 二 会 を加 え た六 会 を一 つ の セ ッ トに して い る。金 剛 界 大 曼 茶 羅 を四会 に 開 い た の は次 の よ うに考 え られ る。 五 相 成 身 観 に よ っ て得 られ た諸 仏 の世 界、 即 ち金 剛界 の世 界 は菩 提 心 の諸 徳 が生 き る世 界 で あ る か ら、特 に菩 提 心 の諸 徳 が生 き る 内証 本 誓 を強 調 す るた めに第2の 金剛 秘 密 曼 茶 羅 を設定 す る。 ま た金 剛 界 の 世 界 は深 い 内面 的 な 自覚 智 の働 く世 界 で もあ るか ら、 そ の こ と を強 調 す るた め に 第3の 金 剛 智 法 曼 茶 羅 を設 定 す る。 そ して金 剛 界 の世 界 は菩 提 心 が顕 わ にな り、深 い 自覚 智 が 身 に備 わ れ ば、 自 らそ の徳 は外 に顕 われ て金 剛 の事 業 を実 現 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 して い く。 こ の こ とを強 調 す るた めに 第4の 金 剛 事 業 曼 茶 羅 を設 定 す る。 これ 等 の各 曼 茶 羅 に示 され た世 界 は混 然 一 如 の も ので あ って、 そ れ は第1の 金 剛 界 大曼 茶 羅 に 統轄 され るの で あ る。 〔四種 印 〕各 会 に は 大 印、 三 昧耶 印、法 印、掲 磨 印 の四 種 印 が 示 され て い る。 これ をA系 の儀 軌 と比 較 して み よ う。金 剛 界 大 曼 茶 羅 の 場 合 に つ い てみ る と次 の よ うに な る。 先 づ 三 昧耶 印 と法 印 は、A本 の三 昧 耶 印 の 記述 の 中 の手 印 と真 言 を分 け て二 印 と して い る の で あ る。 掲 磨 印 はA本 の掲 磨 印 の 内 容 に 等 しい。 大 印 は三 昧 耶 印、 法 印、 掲 磨 印 を統 合 した もの を観 想 す るの で あ る。 した が っ てB本 の大 三 法 掲 の四 種 印 は、A本 の三掲 の 二 印 を開 い た もの に等 しい とい う こ とが 出来 る。 この こ とは 『五部 心観 』 を見 るこ とに よ り明 らか とな る。 『五 部心 観 』で は初 めに掲 磨 の総 印 と隅 磨 拳、 そ れ に 三 昧耶 印 の 金 剛 合 掌 と 金 剛 縛 印 を 示 して い る。 そ して各 尊 の下 に それ ぞれ の尊 の掲 磨 印、 三 昧 耶 印、 標 幟 印cihna-mudra (三昧耶 印ともい う。三 昧耶 印の手印はこの標幟印を手 の形で示 した もの)を 示 し、三 昧 耶 印(手 印)の 上 に大 印maha-mudraと 悉 曇 文 字 が書 かれ て い る。 これA系 の 掲磨 印、 三 昧 耶 印 を も と に四種 印 を示 そ うと した もの で、 菩 提 心 の諸 相 を示 す 三 昧 耶 印 に 焦 点 を当 て て、 各 尊 の大 印 を観 察 しよ う とす る も の で あ る。 大 三法 掲 の 四種 印 は第2の 金 剛 秘 密 曼 茶 羅 以 下、 第3の 金 剛 智 法 曼 茶 羅二、第 4の 金 剛 事 業 曼 茶 羅 の章 に も、 それ ぞれ の曼 茶 羅 の世 界 を体 得 す る観 法 と して 説 かれ て い る。 しか し何 れ も金 剛 界 大 曼 茶 羅 に 準 ず る もの と し て詳 しい記 述 は な され て い な い。 『五 部 心 観 』 で は 第2の 金 剛秘 密 曼 茶 羅 の各 尊 の下 に標 幟 印 cihna-mudraと 三 昧 耶 印samaya-mudra(手 印)の 印母 を記 して い る。但 し掲 磨 印 の記 載 は な い。 第3の 金 剛 智法 曼 茶 羅 と、第4の 金 剛 事 業 曼 茶 羅 の各 尊 の下 に は、 掲 磨 拳 と三 昧 耶 印 の印 母 で あ る金 剛 縛 印 のみ が示 され て い る。 但 しこ の 金剛 縛 印 は、 手 の 甲 が長 く画 かれ 両 掌 の先 の方 で 縛 印 を結 ん だ よ うに画 か れ て い る。 これ は金 剛 合 掌 と金 剛 縛 の所 作 を併 せ示 した もの とみ られ る。 以 上B系 の儀 軌 の大 綱 を述 べ た ので あ るが、 各 会 に 四種 印 が あ る こ とは説 い て い るが、 内 容 につ い て は金 剛 界 大 曼 茶 羅 の 章 が主 で あ る。 こ こに説 く掲 磨 印 が 諸 尊 の 外 形 を端 的 に示 す こ とか ら、 この 会 を掲 磨 会 と呼 ぶ の は正 しい の で あ る。 三 昧耶 印 は、B系 で は第2の 金 剛秘 密 曼 茶 羅 の章 の標 幟 印cihna-mudraに

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準 拠 して い るの で あ る。 で はA系 の供 養 契 はB系 で は ど うな っ た か と言 え ぼ、16尊 の印 言 はB系 の第 4の 金 剛 事 業 曼 茶 羅 の16尊 の印 言 とな り、そ れ を も とに こ の第 四 の曼 茶 羅 が 組 織 され る ので あ る。 3.原 金 剛 界 法 と してのC本 の 問 題 AB両 系 の儀 軌 は一 会 三 印 と四 会 四 印 の組 織 の 違 い は あ るが、 両 系 に はそ れ ぞ れ に共 通 の部 分 も多 くあ った。 そ こで 『金 剛 界 法 』 の成 立 の問 題 に眼 を向 け な けれ ば な らな い。 漢 訳 の経 軌 を見 る限 り 『略 出 経 』 が最 も古 く、 『施 護本 』 が 最 も新 しい ので、A本 か らB本 が 発展 した と即 断 され や す い。 ま た 『略 出経 』 は 金 剛 智 三 蔵 が 金 剛 頂 経 の 大本 か ら略 出 した と伝 え られ る と こ ろか ら一 大本 は何 を指 す か定 か で はな い が一B系 の儀 軌 か らの略 出 と も推定 され るか も知 れ な い。 しか しこ の観 方 は何 れ も誤 りで あ る。 『略 出経 』 の 内容 を通 覧 す る と金 剛 界 法 の他 に潅 頂、 護 摩 を説 き、潅 頂 に つ (9) い て は 『大 日経 』 と関 わ る記 述 もあ る。 真 言 文 に つ い て は 「論 じて 日く……」 とあ って、 梵 文真 言 を解 説 して い る とこ ろ もあ る。 ま た 金 剛 界 の観 想 法 は 重視 した と こ ろ もあ り、充 分 に整 理 され て い な い部 分 もあ る。 そ れ 等 の こ とか らみ るに、 この 『略 出経 』 は梵 本 の忠 実 な訳 とい う よ りは、 部 分 訳 を含 め て金 剛 智 三蔵 の在 唐 時 の 金 剛 界 系 の 儀軌 の主 要 な も の を 集 め た もの とみ る こ とが 出 来 る。 B系 の 『施 護 本 』 は 宋 訳 で あ るが、 梵 蔵 の テ キ ス トと対 応 し、 不 空 の 『三 巻 本 』 は、 同 一 本 で あ る と見 倣 し得 る。 ま た善 無 畏 撰 は 問題 と して も 『五 部 心 (10) 観 』 は 『施 護 本 』 の梵 本 に基 づ き、 そ れ を増 広 した も ので あ っ て、円 珍 が855年 法 全 よ り付 属 され た もの で あ るか ら、B系 の儀 軌 もA系 の 『略 出 経 』 と同 じよ (11) うに古 い もの で あ っ た と見 られ るの で あ る。 そ こ でABそ れ ぞ れ の儀 軌 に つ い て真 言 文 や 手 印 を精 査 し、 異 同 の部 分 を明 らか に して み た。 そ の結(1)AB両 系 に亘 っ て一 致 す る部 分、(2)A系 に あ っ てB (12) 系 に な い部 分、(3)B系 に あ っ てA系 に な い部 分 の 三 つ が あ る こ とが分 っ た。 こ の こ とは単 純 にAか らBに 発 展 した の で もな く、 ま たBか ら略 出 してAが 出来 た もの で もな い。AB共 通 の部 分 が早 く成 立 し、 そ の部 分 を も とに独 自に教 義 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 を発 展 させ てA系、B系 の儀軌 を組 織 した も の と見 な けれ ば な らな い。 今 この AB両 系 に分 か れ る前 の 『原 金 剛 界法 』 をC本 と名 づ け る。 こ のC本 の内 容 はAB両 系 に共 通 す る部 分 で、 それ は(a)五相 成 身 観、(b)金剛 界 十 六 菩 薩、(c)八供 四摂 等 の 印言 で あ る。共 通 部 分 を図 示 す る と次 の通 りで あ る。 (A系) (B系) (a)五 相成 身観 五 相 成 身観b若 干の異同あり) (b)十 六菩 薩 十 六菩 薩 金 剛 界曼 茶 羅(1)金 剛界 大曼 茶 羅 品 -掲 磨 印(手 印 ・真 言)-掲 磨 印(手 印 ・真 言) -三 昧 耶 印b手 印 ・真 言)- 三 昧 耶 印(手 印) 法 印(真 言) (4)金 剛 事業 曼 茶 羅 品 -供 養 契(手 印 ・真 言)-十 六 尊(手 印 ・真言) (c)八 供 四 摂 掲 磨 印(手 印 ・真言) 三 昧 耶 印(手 印 ・真言) (1)金剛 界 大 曼 茶 羅 品 の 掲磨印 三昧耶印 五相 成 身観 は行 者 が仏 陀 の精 神 を体 得 す るこ とを願 う観 法 で あ るが、 金 剛 頂 経 の立 場 で は仏 陀 の精 神 の体 得 者 を金 剛 薩 唾vajra-satvaと い う人 格 で象 徴 す る。 そ して そ こに開 かれ る世 界 は金 剛 界 曼 茶 羅37尊 で 象徴 的 に示 され る が、 こ の世 界 は金 剛 界 十 六 菩 薩 の観 想 法 をも っ て証 得 出 来 る と し、 この証 得 した 世 界 が ま た五 相 成 身 の主 体 で あ る とす る の で あ る。 で は こ の金 剛 界 十 六 菩 薩 の観 想 は どの よ うな世 界 を開 くか を 『施 護 本 』 に よ っ てみ てみ た い。薩 王愛 喜 の四 菩 薩 は 大 三 昧 の 大 士 と呼 ばれ、薩唾 加 持 三 摩 地 出 (13) 生 を示す。宝光憧笑 の四菩薩 は潅 頂の大 士 と呼ばれ、宝加持金剛三摩地出生 を示 (14)(15) す。法利因語 の四菩薩 は大智大士 と呼 ばれ、法加持金剛三摩地出生 を示す。 そ (16) して業 護 牙 拳 の四 菩 薩 は大 潟 磨 大 士 と呼 ばれ、 掲 磨 加 持 金 剛 三摩 地 出 生 を示 す とい う。 そ して こ の四 つ の三 摩 地 は金 剛 部、 宝 部、 法 部、 賜 磨 部 を生 じ、 それ は そ の ま ま阿 閾、 宝 生、 無 量 寿、 不 空 成 就 の世 界 を開 き、 それ は また これ 等 諸 徳 を統 合 す る大 毘 盧 遮 那 の世 界 を開 くこ とに な る か ら、十 六 菩 薩 の世 界 を観 想

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す る こ とは そ の ま ま五 仏 の世 界 を開 き、 そ れ が また五 相 成 身 を体 得 す る こ とに な る の で あ る。 した が って 十 六 菩 薩 の観 想 は 『金 剛 界 法 』 の最 も根 本 に な る も の で あ っ て、 観 想 法 と して は一 番 早 く成 立 して い な けれ ばな らな い の で あ る。 で は こ の 金 剛 界 十 六菩 薩 は、 も とは どの よ うな 諸 尊 で あ っ た の か をr施 護 (17) 本 』 を通 してで は あ るが み てみ た い。 skt 漢 訳 名 特 色 標 幟 印 1.samanta-bhadra 普 賢 大 二菩 提 心 金 剛 杵(薩) 2.amogha-raja 不 空 王 鈎 召 鈎(王) 3.mara 摩 羅 愛 染 弓(愛) 4.pramodya-raja 歓 喜 王 大 歓 喜 拳(喜) 5.akasa-garbha 虚 空 蔵 大 潅 頂 宝(宝) 6.maha-teja 大 光 尋 光 輪 日 光(光) 7.ratna-ketu 宝 憧 大 利 有 情 宝 憧(瞳) 8.nitya-priti- 常 歓 喜 根 金 剛 大 笑 笑 歯(笑) -pramllditelldriya 9.avalokitesvara 観 自 在 大 法 性 智 蓮(法) 10.manjusri 文 殊 如 来 転 剣(利) 11.sahacittotpadata-縷 発 心 転 転 大 輪 輪(因) dharma-cakra-pravartin 法 輪 12.avaea 無 言 随 転 語 輪 舌(語) 戯 論 智 13.sarva-tathagata-一 切 如 来 種 々 事 業 供 養 広 大 掲 磨 儀 軌 掲 磨 杵(業) visva-karma 14.duryodhana-vlrya 極 難 敵 精 進 堅 固 甲 冑 甲 冑(護) 15.sarva-mara-Pramardin 催 諸 魔 大 方 便 牙(牙) 16.sarva-tathagata-musti 一 切 如 来 拳 一 切 印 智 二 手 拳(拳) 以 上 普 賢 等 の16尊 は 『金 剛界 法 』 の儀 軌 を組 織 す るに あ た っ て、 そ の 当時 信 仰 され て い た諸 尊 の 中 で 金 剛 界 の観 法 を行 うに ふ さわ しい 尊 が 選 ばれ た も ので (18) あ っ て、 諸 尊 の外 形 か ら掲 磨 印 を想 定 し、 ま た 諸 尊 が 示 す 器 物 は それ ぞ れ の 尊 の理 想、 即 ち内 証 本 誓 を端 的 に示 す も の とし て標 幟 印cihna-mlldra(三 昧耶 形 と (19)(20) もい う)を 確 定 し、 これ を手 印 で示 す 三 昧 耶 印 を考 案 す る。 また こ の 標 幟 印 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 cihlla-mudraは 諸 尊 の真 髄 を示 す重 要 な もの と して、 B系 で は こ の 標幟 印 を も とに第2の 金 剛秘 密 曼 茶 羅 を組 織 す る。 次 に入 供 四摂 に つ い てみ た い。 嬉 量 歌 舞、 香 華 燈 塗、 鈎 索 鎖 鈴 の12尊 は金 剛 界 曼 茶 羅 の 教義 の上 か ら組 織 され た尊 で あ るが、 これ等 の尊 も も とは地 上 の歓 (21) 喜 を示 す 尊 で あ った の で あ る。 それ を示 す と次 の通 りとな る。 (skt)(漢 訳)(特 色) rati-puja 悦 楽 供 養 悦 楽 (嬉) ratna-malabhiseka 宝 髭 潅 頂 如 来 量 (糞) samgitl 歌 歌 詠(歌) nrtya-puja 舞 供 養 無 上 事 業 (舞) prahladanl-samayodbhava(gapika)大 笑 遍 入 智 (香) ratnabharana(pratihari) 宝 荘 厳 大 菩 提 分 (華) aloka-puja(duti) 燈 供 養 法 光 明 (燈) gandha-puja(cetl) 香 供 養 勝 妙 音 (塗) ganapati⇒samayankusa 鈎 鈎 召(鈎) pratihara⇒samayapravesa 引 入 引 入 (索) duta⇒samaya-bandha 縛 妙 縛 (鎖) ceta⇒samaya-sambhava 生 敬 愛(鈴) 以 上 『金 剛 界 法 』 は五 相 成 身 観 を普 賢等 の16尊 で受 け て金 剛 部、 宝 部、 法 部、 掲 磨 部 の 四 部 の世 界 を体 得 させ る と と もに、 こ の四 部 の勝 れ た世 界 を、 世 俗 の 歓 喜 を示 す 尊 で も っ て法 界 の真 理 を讃 嘆 荘厳 して、 宗 教 体 験 の奥 行 き を深 めて い るの で あ る。 た だ 五 仏、 四 波 羅 蜜 の観 想 印言 は ま だC本 に は な く、 そ の後 の 教 義 の 発 展 をま た な け れ ば な らな い の で あ る。 さて掲 磨 印、 三 昧 耶 印 は 諸 尊 の外 形 を通 して、 ま た本 質 内 容 を観 想 し て行 者 の内 面 を開 い てい く手 だ てで あ った。 そ れ は完 成 へ の 自利 向上 の観 法 で あ る と い っ て よい。 しか しこの 内 面 の 深 化 と、深 い体 験 は 当然 に外 に 向 っ て の 利 他 向 下 の 宗教 実 践 を伴 うの で あ る。 ま た この実 践 あ っ て こ そ金 剛 界 の世 界 は 行 者 自 身 の もの とな る。 こ こ に供 養 契 の 働 きが 前 の掲 磨 印や 三 昧 耶 印 と表 裏 の 関 係 と な って 生 き るの で あ る。 この 観 法 を組 織 す るた め に は普 賢 等 の16尊 とは 別 に新 な16尊 を組 織 し、 実 践 の 手 だ て とす るの で あ る。 それ 等 の尊 名 は 次 の 通 りで あ

(12)

(22) る。 一 切 如 来 大 供 養 1.surata-suklla 極 妙 楽 2.akarsapi 鈎 召 3.alluttara-ragapi 随 愛 楽 4.samtosapi 遍 観 喜 一 切 如 来 大 供 養 5.mahadhipatilli 大 主 宰 6.mahodyota 大 光 明 7.maha-ratnavarsa 大 宝 雨 8.maha-pritipraharsa 大 喜 悦 一 切 如 来 法 供 養 9.malla-jnanagita 大 智 歌 10.maha-ghosanuga 大 音 声 11.sarva-mapdara-pravesa 遍 入 一 切 曼 肇 羅 12.mantra-carya 密 句 行 一 切 如 来 掲 磨 供 養 13.satva-vati 大 勇 猛 14.maha-bodhyangavati 大 覚 分 15.caksus-mati 大 明 照 16.gandhavati 大 塗 香 極 妙 楽 の16尊 は世 俗 の喜 び を示 す尊 で あ るが、 この 喜 び を も って供 養 の 喜 び を示 して い るの で あ る。 『五 部 心 観 』 で は こ の供 養 の尊 は優 し く親 しみ の あ る 尊 で 示 され て い る。 背 後 に は草 花 が画 かれ 暖 か い雰 囲 気 を醸 し出 して い る。 こ れ 供 養 は金 剛 の世 界 の体 得 を喜 び讃 美 す る と と もに、 人 々 を金 剛 の世 界 に 自 ら 引 き入 れ る実 践 の徳 を示 した もの ど解 され る。 4.A・B両 系 の 発 展 (a)A系 の 発展 増 広bA本 にあ ってB本 にない部分) A系 は五 相 成 身 観 を重 視 し、 こ の観 法 か ら体 得 され る内容 を豊 か に示 し、諸 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 仏 加 持、 四仏 加 持、 四 仏潅 頂(『心軌』、『二巻本』 は五仏灌頂)、 四 仏 繋 量 等 の印 言 を増 広 し、 百 八 名 讃 を も って 金剛 界16尊 の諸 徳 を讃 嘆 し、 四 智 を得 て成 身 の (23) 立 場 を 強 調 す る。 諸 仏 加 持 等 の 印 言 を 示 す と 次 の 通 り で あ る。 諸 仏 加 持 om sarva-tathagata-abhlsalllbodhi-(dridlla-vajra tistha/定 印 四仏加持

om vajra-sattva adhisthasva mam hum/外 縛 二 中 指 立 て る、 心 に あ て る

om vajra-ratna adhistasva mam trah/外 縛 二 中 指 宝 形 額 に あ て る

om vajra-dharma adhisthasva mam hrih/外 縛 二 中 指 蓮 葉 喉 に あ て る

om vajra-karma adhisthasva mam ab/外 縛 二 中 指 掌 に 入 れ 頂 に お く

二 小 指、 二 大 指 立 て 合 わ す

五仏潅頂

om sarva-tathagata-aisvarya-abhiseka hum/金 剛 界 自 在 印

om vajra-sattva abhisiica mam hum/四 叩 仏 加 持 と 同 じ

om vajra-ratna abhisinca mam trah/〃

om vajra-padma abhisifiea mam hrih///

om vajra-karma abhiSifiea marm ah/〃

四仏繋糞

om vajra-sattva-mala abhisinca mam bam/四 仏 加 持 に 同 じ

om vajra-ratna-mala abhisinca mam bam〃

om vajra-padma-mala abhisinea mambam/〃

om vajra-karma-mala abhisinca mam bam/〃

五 相 成 身 の 内 容 は以 上 の よ うに増 広 され、 それ は五 仏 の世 界 の証 得 にな る。 した が って 『略 出経 』 並 に『二 巻 本 』の五 仏 の真 言 は、<om+(尊 名)+(種 子)> の形 の もの を出 す。(但 し 『心 軌 』 で は、 五 相成 身 は そ の ま ま五 仏 で あ る との 立 場 を と り、特 に五 仏 の真 言 を説 かな い。 この 点 はB系 の 金 剛 界 大 曼 茶 羅 の五 (24) 仏 の 場 合 と 同 じ で あ る)今 五 仏 の 真 言 を 下 に 示 す。 大 日 om vajra-dhatu bam/ 阿 閥 om aksobhya hum/ 宝 生 om ratlla-sambhava trah/

(14)

無 量 寿 om lokesvara-raja hrih/ 不 空 成 就 om amogha-siddhi ah/ 五 仏 の 教 義 が確 立 され て くる と と も に、 四 波 羅 蜜 の 尊 が 重 要 とな っ て くる。 『略 出 経 』 に は ま だ見 られ な いが、 『心 軌 』 『二 巻 本 』 で は 四 波 羅 蜜 は 五 仏 の 次 に示 され る重 要 な尊 とな る。 この 点B系 はA系 ほ ど に重 視 され てい な い。 次 に 供 養 の 働 きが 善 く行 われ る こ と を示 す た め に、 一A系三本 は16尊 の供 養 の 印言 の 外 に17雑 供 養 の 印 言 が 増 広 され る。 これ は供 養 の働 き が香 華 燈 塗 の実 践 を もっ て金 剛 界 の世 界 を実 現 す るに留 らず、 広 く大 乗 仏 教 の六 波 羅 蜜 の実 践 に も連 な る こ と を示 そ うと した もの で あ る。 こ の よ うに してA系 の儀 軌 の基 本 が 出来 上 る。 そ の後B系 の 教義 に刺 戟 され て三 昧 耶 印 や 供 養 契 に五 仏 の印 言 が付 され、 それ ぞれ が一 会 の曼 茶羅 を示 す よ うに な っ て くる。 そ の こ とは ま た後 述 す る。 (b)B系 の 増 広 発 展(B本 にあってA本 にない部分) B系 で は、 五 相 成 身 の世 界 の 内容 は マ ンダ ラの形 で 四 会 に開 い て い く。基 礎 にな るの は 第1の 金 剛 界 大 曼 茶 羅 で あ る。 そ し て大 三 法掲 の四 種 印 を説 くが、 これ はG本 の 三 昧 耶、 掲磨 の 二 印 を開 い た もの に等 しい こ と は既 に述 べ た。 次 にA系 で は各 尊 の 示 す器 物 は そ れ ぞ れ の尊 の 内 証本 誓 を明 か にす る もの と し て 標 幟 印 が確 立 され た が、B系 は標 幟 印 を もっ て 第 二 の金 剛 秘 密 曼 茶 羅 を組 織 す (25) る。B系 で は この 標 幟 印 を も と に三 昧 耶 の手 印 を考 え、 そ れ を四 会 そ れ ぞ れ の 三 昧耶 印 の基 礎 に し てい る。 ま た金 剛 秘 密 曼 茶 羅 の16尊 の真 言 は次 の 一般 式 に よ る。

om vajra-(尊 名)-guhya-samayc hum/

(26)

例(薩)om vajra-satva-guhya-salnaye hum/

次 に金 剛 界 は金 剛 微 細 智vajra-saksmaの 働 く世 界 で あ る こ と を強 調 し、新 に 第3の 金 剛 智 法 曼 茶 羅 を組 織 す る。 諸 尊 はす べ て金 剛 の働 き にあ る と して、 金

剛 杵 の 主 体 と な る諸 尊 を観 想 し、新 し く真 言 を考 案 して、 こ の微 細 会 の観 法 を 説 く。そ の真 言 は十 六 尊 の 尊 名 にatmak, hrdaya, tlstha等 の語 を附 した もの

で あ る。 薩 vajratmaka/ 王 hrd-vajrankusa/ 愛 tistharaga-vajra-pravesa hrdayam/ 金 剛 界 法 の 問 題

(15)

密 教 文 化 喜 aho vajra-tusti 宝 vajra-ratnatmaka/ 光 hrdaya vajra-surya/

童 tistha vajra-dhvajagra vam/

笑 hrdaya vajra-hasa/ (28) 次 に供 養 契16尊 の 印言 を も とに第4の 金 剛 事 業 曼 茶 羅 を組 織 し、 こ こ に五 相 成 身観 の体 得 は 四会 に よっ て示 され、B系 の儀 軌 の基 本 が 確 立 す る ので あ る。 5.AB両 系 の五 仏、 四 波 羅 蜜 の教 義 の確 立 上 述 の よ うにC本 か らA系、B系 の儀 軌 が展 開 してい った こ と を説 明 した が、 そ れ は五 相 成 身 と十 六 菩 薩、 八 供 四摂 の観 想 の印 言 に限 っ てい わ れ る こ とで あ る。若 し五 仏、 四波 羅 蜜 につ い て い うな らば、 これ 等 の 印 言 はA系B系 相 互 に 関 わ り、異 同 が あ って 単純 にA系、B系 と分 け る こ とは 出来 な い よ うに見 え る。 しか し五 仏、 四 波 羅 蜜 はr原 金 剛 界 法 』 即 ちC本 が、A系B系 に分 か れ た 後 に 教 義 が 確 立 され、AB相 互 の関 わ りの 中 で印 言 が 考 察 され た と見 る と氷 解 す る 』 の で あ る。 今A系、B系 に あ る五 仏、 四 波 羅 蜜 の 真 言 の異 同 を示 す と次 の通 り (29) と な る。 〔五 仏 〕 (1)A系 『心 軌 』 の 掲 磨 会、B系 『施 護 本 』 の 金 剛 界 大 曼 茶 羅

大 日 om citta prativedhalm karomi/ 阿 閾om bodhicittalm utpadayami/ 宝 生 om tistha vajra/ 無 量 寿 om vajratmako'ham/ 不 空 成 就 om yatha sarva-tathagatastatha'ham/ (2) A系 『略 出 経 』、と 『二 巻 本 』 の 掲 磨 会 om vajra-dhatu bam/ om aksobhya hum/ om ratna-sambhava trah/ om loliesvara-raja hrih/ om amoghasidclhi ah/

(16)

(3)A系 『略 出 経 』 の三 昧 会、13系 『施 護本 』 の金 剛秘 密曼 茶 羅

om vajra-dliatvisvari*hum/(*hrili vajrini)

om vajra-vajrini hum/

X ratna-Vajrini hum/

0m *dIlLrma-vajrini hum/(*vajra-dharmani tii)

om *karma-vajrini hum/(*vajra-karma-vajrini hn) (4)A系 『心 軌 』 と 『二巻 本 』 の 三 昧 耶会 om vajra-jnana ah/ om vajra-jnana hum/ om vajra-jnana trah/ om vajra-jnana hrih/ om vajra-jnana ah/ (5)B系 『施 護 本 』 の金 剛 智 法 曼 茶 羅(A系 に は な い)

om Suksma-vajra-jn na-samaya hum/

om vajra-satya-suksma-samaya hum/ om vajra-ratna-sukslna-samaya hum/ om vajra-dharma-suksma-samaya hum/ om vajra-karma-suksma-samaya hum/ (6)A系 『心 軌 』 『二巻 本 』 供 養 会、B系 『施 護本 』 金 剛 事 業 曼 茶 羅? om sarva-tatlagata-vajra-dhatyisyari-anuttara-puja-spharana-samaye hum/ om sarva-tathagata-vajra-sarva-anuttara-puja-spharana-samaye hulls/ om sarva-tathagata-vajra-ratna-anuttara-puja-spharana-samaye hum/ om sarva-tathagata-vajra-dharma-anuttara-puja-spharana-samaye hum/ om sarva-tathagata-vajra-karma-anuttara-puja-spharana-samaye hum/ 〔四波 羅 蜜 〕 (7)A系 『心 軌 』 『二 巻 本 』(種 子 あ り)掲磨 会、B系 『施 護 本 』 金 剛 界 大 曼 茶 羅

*om satva-yajr i hum/

*om ratna-vajri trdh/

*om dharma-vajri hrih/

金 剛 界 法 の 問 題

(17)

*om karma-vajri ah/

(8)B系 『施 護 本 』 の金 剛 秘 密曼 茶羅

om guhya-satva-vajri hum/

uin gullya-ratlla-vajri Lup/

om gullya-dharzna-vajri hum/ om guhya-karma-vajri hum/ (9)A系 『心 軌 』 と 『二 巻 本 』 の 三 昧耶 会 vajra-srih hum/ vajra-gauri i trah/ vajra-tarah hrih/ kha-vajrini hoh/ ◎B系 の 五仏 の 真 言 の確 立 B系 の究 極 の もの は五 相 成 身観 に よ って、 行 者 が五 相 成 身 を体 得 す る こ と に あ り、そ れ を仮 りに何 か で 示 す とな れ ば五 仏 とい うこ と にな る。 そ れ故 根 本 に な る第1の 金 剛 界 大 曼 茶 羅 の五 仏 には五 相 成 身 の真 言 を充 当す れ ば よい こ と に な る。 『五 部 心 観 』 は多 少 の真 言 の増 広 が認 め られ る も、 こ の立 場 を如 実 に示 した も ので あ る。 しか し第2以 下 の曼 茶 羅 の五 仏 につ い て は そ れ ぞ れ の曼 茶 羅 を締 め く く り、 そ の特 性 を示 す の にふ さわ しい 五 仏 の 真 言 が 必 要 とな っ て く る。 そ の点 第4の 金 剛 事 業 曼 茶 羅 の 五仏 の真 言 は最 も簡 単 に考 え られ るの で あ る。 そ れ は十 六 菩 薩 の 真 言 は既 にC本 に あっ た と見 られ る か ら、 この 真 言 の基 本 形 式 に尊 名 を入 れ れ ば直 ち に出来 るか らで あ る。 例 え ば金 剛 薩 埋b普 賢)の 真 言 を見 る と

ozn sarva-tathabata-sarv'atlna-niryatana-puja-spharana-karma-vajri ah/

(30) (施184) と あ り、(6)の 五 仏 真 言 文 を 見 る とsarva'atma-niryatanaに(五 仏 の 尊 名)を 入 れ、karma-vajrl(尊 名 掲 磨 金 剛 女)にbsamaye)を 入 れ た も の と な っ て い る。こ の よ うな 真 言 文 の 示 し方 は 『五 部 心 観 』 の 内 外 の 八 供 四 摂 の 真 言(No.126-No.137)の 増 広、 ま た 『略 出 経 』 等A系 の 十 七 雑 供 養 の 真 言 の 増 広 も 同 様 で あ る。 次 に第2の 金 剛 秘 密 曼 茶 羅 は諸 尊 の内 証 本誓 を明 か にす るた め に示 した曼 茶

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羅 で あ る か ら、諸 尊 の徳 は菩 提 心 か ら産 み 出 され る もの で あ る。 この 諸 徳 を出 生 させ る力 を金 剛 界 自在、 金 剛 金 剛 女、 宝金 剛 女、 法金 剛 女、 事業 金 剛 女 の 女 尊 で示 す。(3)の真 言 は この 立場 で 考 え られ た もの で あ る。 これ 等 の真 言 はA系 『略 出経 』 三 昧 耶 印 の 五 仏 の真 言 に も生 か され て く る。 第3の 金 剛 智 法曼 茶 羅 は 金 剛 微 細 智 の 働 く 立 揚 を示 す た め(suksma-vajra-jnana-samaya)又 は、bsuksma-samaya)の 語 を付 した真 言 を も とに して い る。 (5)はこ の立 場 を示 した真 言 で あ る。 こ の よ うに してB系 の儀 軌 は五 仏 の真 言 を 明 か に して い く。 ◎A系 三 印 の五 仏 の確 掌 B系 の儀 軌 は金 剛 界 曼 茶 羅 を四会 に展 開 し、 それ ぞれ に五 仏 の教 義 を確 立 し た こ とはA系 の儀 軌 の 内容 に大 き な変 革 を もた らす。A系 は本 来 一 会 三 印 の組 織 で あ り、三 印 は金 剛 界 の世 界 を観 想 実 習 す る方 法 を示 した もの で あ っ た。 し か し三 印 の実 習 は それ ぞれ に金 剛 界 曼 茶 羅 の世 界 を開 い てい くと い うこ とか ら 掲 磨 印、 三 昧 耶 印、 供 養 契 の三 印(実 習 法)は 謁 磨 会、 三 昧 耶 会、 供 養 会 の三 会(曼 茶 羅)を 示 す よ うに な る。 そ の た め に三 印 に それ ぞれ 五 仏 の印 言 が付 加 され る よ うに な る。 掲 磨 印 は五 相 成 身観 を受 けて、 五 相 成 身 の 内容 は五 仏 の世 界 の体 得 に他 な ら ぬ と して、 『略 出経 』『二 巻 本 』 は五 仏 に は金 剛 界、 阿 閾、 宝 生、 世 自在、 不 空 成 就 の尊 名 を主 と した真 言 を示 す。(2)の真 言 は こ の立 場 で あ る。 ま たB系 と同 様 五 相 成 身 を表 に出 せ ば 『心 軌 』 の よ うに な る。(1)真言 は この 立 場 を示 す。 三 昧 耶 印 は 諸尊 の 内 証 本 誓、 即 ち菩 提 心 よ り生 ず る本 質 的 生 命 を観 想 す る立 揚 で あ る か ら、 そ れ に ふ さわ しい観 法 が 求 め られ る。 『略 出経 』 はB系 の 第2 の金 剛 秘 密 曼 茶 羅 の五 仏 の真 言 を充 当 し((3)の 真 言)、 『心 軌 』 『二 巻 本 』 で は 菩 提 心 の働 き は金 剛 の智 恵vajra-jianaに よっ て 開 か れ る と し、各 尊 の種 子 を 示 し てそ の 特 性 を明 か に し よ うと し てい る。真 言 文 の 一般 式 は<vajra-jnalla+ 種 子 >であ る。((4)の真 言) A系 供 養 契 の十 六 尊 はB系 の第 四 金 剛 事 業 曼 茶 羅 の16尊 と同 じで あ る た め、 五 仏 の真 言 もB系 か ら採 った もの とみ て よい。 但 し 『略 出 経 』 に は五 仏 の真 言 は 無 くて、 『心軌 』 『二 巻 本 』 に共 通 して 出 るの で あ る。 ◎四波羅蜜の確立 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 四波 羅 蜜 は 『金 剛 界 法』 成 立 当初 に あ っ て は 重 要 な尊 で は な か っ た。B系 『施 護 本 』 に あ っ て は金 剛 界37尊 の組織 の 中 に は 四波 羅 蜜 の 四尊 は 考 え られ て い た が、 真 言 文 が 明確 に出 るの は 第1の 金 剛 界 大 曼 茶 羅 と、 第2の 金 剛 秘 密 曼 茶 羅 の二 つ で あ る。 四 波 羅 蜜 が示 され る順 序 は十 六 菩 薩 の 次 で あ る。 しか し他 の諸 尊 に は大 三 法 掲 の 四種 印 が示 され て い る が、 四波 羅 蜜 に は こ の 四種 印 は説 かれ て いな い。 第3、 第4の 曼 茶 羅 に は全 く説 か れ て い な い。 この こ とはA系 に お い て も当 初 は あ ま り重 視 され て はい な か った と見 られ る。 『略 出 経 』 で はB系 と同様 金 剛 界37尊 の 中 に四 波 羅 蜜 は示 され、 而 も十 六菩 薩 の後 に示 され て い るの は 同様 (31) で あ る。 しか し掲磨 印、三 昧 耶 印、 供 養契 の 印 は示 され てい な い。 それ が五 仏 の教 義 の確 立 と相侯 っ てA系 の 『心軌 』、『二巻 本 』 で は極 め て重 要 な尊 とな る の で あ る。 そ れ はA系 は 五 相成 身 の 内容 を四仏 加 持、 五 仏 潅 頂、 四仏 繋 量 とい うよ うに四 仏、 又 は五 仏 の 内容 を豊 か に示 す方 向 に教 義 が確 立 され て く る と、 四波 羅 蜜 は四 仏 又 は 五 仏 の 実践 面 を示 す尊 と して扱 わ れ る よ うに な る か らで あ る。 特 に三 印 にす べ て 五 仏 の真 言 が完 備 され る ま で に発展 す る と、 四波 羅 蜜 は 観 法 の 中心 とな るの で あ る。 そ れ 故 『心軌 』、『二 巻 本 』 は 三 印 の五 仏 の真 言 の確 立 と相 侯 っ て、 四波 羅 蜜 は五 仏 の次 に説 か れ る よ うにな る。 そ して16尊、 内 外 入 供 と な る の で あ る。今 こ の二 本 に見 られ る掲 磨 印 の 四 波 羅 蜜 の真 言 は <om+(B系 の 四 波 羅 蜜 尊 名) +(種 子)>とな る((7)真 言)。 そ して五 仏 の直 後 に説 か れ るの で あ る。 三昧 耶

印 に見 られ る四 波 羅 蜜 の真 言 は 忌ri, gauri, tara kha等 の尊 名 が見 られ る((9) 真 言)。 こ こ には 四波 羅 蜜 の尊 と して組 み入 れ る以 前 の 尊 名 が 分 る。 そ の点B 系 は進 ん だ 教 義上 の命 名 と見 られ る((8)真 言)。 さ て この よ うにA系 は掲 磨 印、 三 昧 耶 印、 供 養 契 にお い て五 仏、 四波 羅 蜜、 十 六 二尊、 内 外 八供 、 四摂 の 印 言 を完 成 させ るこ とに よ り、B系 の 四会 の曼 茶 羅 と対 応 させ、 三 印(実 習 法)は 三 会(曼 茶 羅)と 見 倣 され、 や が て元 果 の次 等 な どの よ うに掲磨 会、 三 昧 耶 会、 供 養 会 と呼 ば れ る よ うに な っ た の で あ る。 6.む す び 以 上 明 らか に して来 た よ うに、 東 密 の 『金 剛界 法 』 はA系 の 一 会 三 印 の構 造

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を基 本 とす る も、B系 の四 会 四 印 の 系 統 と関 係 しな が ら複 雑 に増広 発展 した も の で あ る。 しか し元 果 の 時代 には この い き さつ は 明 らか で は な か っ た。 それ は 当時 の資 料 と しては、B系 で は そ の部 分 訳 で しか な い不 空 の 『三 巻 本 』 だ け で あ っ た か らで あ る。 『五 部 心 観 』 は 円珍 に よ っ て請 来 され て も、 これ は園 城 寺 の秘 蔵 本 で厳 秘 に付 せ られ た もの で あ る。 よ しそれ が公 開 され た と して も、対 応 す る経 典 が無 けれ ば解 読 す る こ とは不 可 能 で あ ろ う。 当時 手 に し得 る もの と し て は 『略 出経 』、『心 軌 』、『二 巻 本 』(A系)と 不 空 の 『三巻 本 』(B系 の 部分 訳)で あ るか らで あ る。 これ等 の儀 軌 を比較 対 照 し て も、 到 底 一会 三 印 と四会 四 印 の組 織 の相 違 を見抜 くこ とは 出来 な か った で あ ろ う。 さて 『金 剛 界 法 』 は 一会 三 印 と四会 四 印 の二 つ の 系統 が あ るこ とが 明 らか に なれ ば、 一 会 三 印 の立 場 に立 っ 『金 剛 界 法 』 の解 釈 は 自 ら明瞭 とな っ て くる。 教 義 の発 展 の上 か らの解 釈 は兎 も角 と して、 元 呆 の次 第 で成 身 会 とい うの は直 ち に現 図 金 剛 界 九 会 曼 茶 羅 の根 本 成 身 会 を指 して い る の で は な く、五 相 成 身 の 修 法 の 諸 々 の印 言 を指 してい る ので あ る。 勿 論 そ の 結 果 の 体 験 は(五 相成 身 の 体 験)根 本 成 身会 で 示 され る こ とは い うま で もな い。 ま た 三 昧 耶 会 とい うの も掲 磨 印 の示 す外 的形 態 を通 して の観 想 に対 して、 内 面 的 本 質(内 証 本 誓)を 観 想 す る三 昧 耶 印 の立 場 を示 した もの で、 それ が直 に 金 剛 界 九 会 曼 茶 羅 の三 昧耶 会 を指 して い る の で は な い。 勿 論 九会 曼 茶 羅 の基 本 原 典 で あ るB系 『施 護 本 』(梵 本 を含 む)はA系 の三 昧 耶 印 の も とに な る標 幟 印cihna-mudraを 中心 に し て、金 剛 秘 密曼 茶 羅(宗 叡 の い う三 昧 耶会)が 組 織 され た の で あ る こ とは既 に述 べ た 通 りで、A系 の 三 昧 耶 は九 会曼 茶 羅 の 三 昧 耶 会 に相 当 す る とい う こ とは誤 りで あ る と即 断 す る こ とは 出来 な い が、 組 織 の 違 い の あ る こ とを銘 記 す べ き で あ る。 そ うす る とA系 の 『金 剛 界 法 』 に微 細 会 に相 当 す る記 述 が 無 か った こ とは 自 ら氷 解 す る で あ ろ う し、A系 の供 養 会 に17雑 供 養 の 印言 が あ るの に対 し、B系 には そ れ が な い こ と、 またB系 の立 場 で発 展 した 『五 部 心 観 』 に は入 供 四摂 の 印言 が一A系 雑 供 養 と は異 な っ て-B系16尊 の 印 言 を も とに増 広 した こ と も氷 解 され る で あ ろ う。 B系 の儀 軌 を発 展 して示 した もの に は金 剛 界 九会 曼 茶 羅 が あ った こ と は既 に 述 べ た。 こ の曼 茶 羅 は 『施 護 本 』 の原 典 を も と に四 会 を開 き、 更 に この 四 会 を 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 統 合 す る 四 印 会、 一一印 会 の二 会 を加 えた 六 会 を一 つ の セ ッ トと し、 この 他 に理 趣 会 と降 三 世 の掲 磨 会 と三 昧 耶 会 の 三 会 を加 えた もの を一 軸 に ま とめ てい るの で あ る。 したが っ て こ の曼 茶 羅 をA系 の儀 軌 と比 べ る と き、 か な り隔 っ た もの に な っ て い る ので あ る。 そ こでB系 の儀 軌 に忠実 に 印言 を示 し、曼 茶 羅 の図 を 示 した金 剛 界 法 は 『五 部 心 観 』 で あ る。 しか しこ の金 剛 界 法 は東 密 に は伝 承 さ れ なか った の で あ る。 最 後 にA系 の儀 軌 の 五仏 の 内容 増 広 と四波 羅 蜜 を重 視 す る立 場 が新 な教 義 を 展 開 し てい る こ とに注 目 した い。 そ の一 っ は東 密 教 学 にお い て金 剛 界 曼 茶 羅 の 相 互 供 養 の 教 説 の違 い で あ る。 そ れ は 四波 羅 蜜 は阿 閾 等 の 四仏 か ら出 生 す るの か、 は た ま た大 日の定 徳 か ら四 波 羅 蜜 は出 生 し、 そ こか ら阿 閤 等 の 四 仏 が 生 ず る の か とい う説 で あ る。 四 波 羅 蜜 が あ ま り重 視 され な い 立場 の 『施 護 本 』、『略 出経 』 に よる と、 中央 の大 日が 四 仏 と16尊 を示 す と と もに、 四仏 は 四波 羅 蜜 を捧 げ て 大 日を 供 養 す る。大 目は 四 仏 に答 え る た め に 内 の 四供 養 で あ る嬉 婁 歌 舞 の四 尊 を現 わ して四 仏 を供 養 す る。 これ に対 して 四仏 は外 の四 供 養 で あ る香 華 燈 塗 の四 尊 を捧 げ て 大 目を供 養 す。 大 日は これ に答 え て四方 の 四 門 に四 摂 の菩 薩、 鈎 索 鎖 鈴 の 四尊 (32) を示 現 してす べ て を曼 茶 羅 の 世 界 に引 き入 れ る とい うの で あ る。 次 に 『心 軌 』、『二 巻 本 』 の説 を注 目 して み た い。 両 者 と もA系 で あ っ て、五 相 成 身 の内 容 を豊 か に し、 五 仏 の立 場 を確 立 す る と と もに、 四波 羅 蜜 は重 要 な 尊 と して そ の 印言 を五 仏 の直 後 に 出す の で あ る。 この 点 は前 の 『施 護 本 』、『略 出経 』 と異 な る。 こ の立 場 につ い て 『秘 蔵 記 』 は四波 羅 蜜 は大 日の 定 徳 で あ る と説 明 す る。 四波 羅 蜜 は 四仏 能 生 の母 の 故 に 中台 に あ り、そ こ よ り阿 閾 等 の 四 仏 を 出す。 四仏 は大 目に答 え るた め に内 の 四供 で あ る嬉 婁 歌 舞 の 四尊 を も って 供 養 す る。 大 日は これ に対 し、 香 華 燈 塗 の外 の 四供 養 を もっ て 四 仏 を供養 す る。 この 供 養 を受 け て 四 仏 は鈎 索 鎖 鈴 の 四摂 を もっ て、 す べ て を曼 茶 羅 に 引 き (33) 入 れ て 大 日 に答 え よ うとす る。丁 度 前 の説 と反 対 に な っ て い る の で あ る が、 こ れ は 四波 羅 蜜 を四仏 と一 体 とす るA系 儀 軌 の教 義 の 展 開 に よ る も の で あ る。 (1)栂 尾 祥 雲 著 『秘 密 事 相 の研 究 』54頁 高 野 山 大 学 昭和10年、 昭 和34年 再 版、 元 果 の 次 第を も とに 金 剛界 法 の 印言 を 詳細 に説 く。

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(2)栂 尾 氏 上 掲 書54頁 (3)大 正 蔵78-72頁a-c (4)大 山公 淳 著 『中 院 流 の研 究 』142頁、 高 野 山 大 学、 昭 和31年、 高 井 観 海 著 「秘 密 事 相大 系 』278-279頁。 山城 屋 文政 堂、 昭 和28年。 (5)大 正 蔵78-73b。 この 問題 につ いて 高 井 氏 は前 掲 書278頁 に金 剛 頂 蓮 華 部心 念 調 次 第 沙 汰(大 正蔵79-31頁)の 記述 を紹 介 され て お られ る。 (6)吉 祥 真 雄 著 『曼 奈羅 図説 』74-75頁、 山 城屋 文政 堂、 昭和10年、 高 井 観海 氏 前 掲 書275頁 参 照。 (7)栂 尾 詳 雲 著 「曼 茶 羅 の研 究 』198-203頁 参 照。 高野 山大 学、 昭 和2年、 昭 和33年 再 版。 (8)大 正 蔵18-341頁 以 下、 施 護 訳 で は マ ンダ ラを 曼 摯羅 と音 写 して い る。 不空 訳 は 曼 奈 羅 とす る。 (9)灌 頂 法 に つ い て は胎 蔵 の 伝 法灌 頂 と共 通 の部 分 が あ る。 八 田幸 雄 「修 験 恵 印法 流 の儀 軌 と密 教(1)」(『日本 仏教 研 究 』40号、36頁、56頁、1977) (10)八 田幸 雄 「五 部 心 観 の構 想 につ い て 」(『密 教 文 化 』112号 参 照、1975) (11)八 田幸 雄 「五 部 心 観 の構 想 につ い て 」(『印仏 研 』42号、278頁、 昭 和48年) (12)八 田幸 雄 「五 部 心 観 の構 想 につ い て 」(『密 教 文 化 』112号、60-63頁 参 照。 (13)大 正 蔵18-342c6-344b9 (14)大 正 蔵18-344blo-345c15 (15)大 正 蔵18-345c16-347b11 (16)大 正 蔵18-347b14-348c25 (17)大 正 蔵18-342c-348G堀 内 本 §35-§126参 照。 標 幟 印 は現 図 曼奈 羅 及 び 五 部 心 観 参 照 (18)大 正 蔵18-357c-358a (19)大 正 蔵18-360c-361a「 略 出 経 』 は大 正 蔵18-240b-c (20)大 正 蔵18-356c-357a (21)大 正 蔵18-349c-351b堀 内 本 §152-187参 照。 (22)大 正 蔵18-366a-c堀 内本 §506-516参 照。 (23)栂 尾 祥 雲 「秘 密 事 相 の研 究 」340頁-344頁。 『略出経』大正蔵18-237c-238c(No.84・No.79-90真言番号) 『心軌』大正蔵18-302c-303abNo.36-No.49) 『二 巻 本 』 大 正 蔵18-314b-bbNo.38-No.52) (24)大 正 蔵18-242b(略No.107-Nq111) (25)大 正 蔵18-360c-351b(略 出 経18-240b-c参 照) (26)大 正 蔵18-18-359c24(施No.114) (27)大 正 蔵18-363b-363c(施No.156-M71) (28)大 正 蔵18-366a-c(施No.84-199) (29)(1)『 心 軌 』 大 正18-305ab心No.72-76)『 施 護 本 』 大 正18-342a(施No.1-5) (2)『 略 出 経 」 大 正18-242bb略No.107-111)『 二 巻 本 』 大 正18-317b(不 二No.79 金 剛 界 法 の 問 題

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密 教 文 化 -83) (3)『 略 出 経 』 大 正18-244a(略No.140-144)『 施 護 本 』 大 正18-359c(施No.109-113) (4)『心 軌 』 大 正18-306b(心No.110-114)『 二 巻 本 』 大 正18-318c(不 二No.118-121) (5)『 施 護 本 』 大 正18-362c(施No.149-153)

(6)『 心 軌 』 大 正18-306b(心No.147-151)『 二 巻 本 』 大 正18-319a(不 二No.154-158)『 施 護 本 』 大 正18-365b(施No.179-183) (7)「 心 軌 』 大 正18-305b(心No.77-80)『 二 巻 本 』 大 正18-317bb不 二No.84-87) 『施 護 本 』 大 正18-349a(施No.22-25) (8)『施 護 本 』 大 正18-360b(施No.130-133) (9)『 心 軌 』 大 正18-306a(心No.115-118)「 二 巻 本 』 大 正18-318cb不 二No.122-125) (30)大 正 蔵18-366a(施No.184) (31)八 田 幸 雄 「五 部 心 観 の 構 想 」(「 密 教 文 化 』112号60-63頁 参 照 。 (32)栂 尾 祥 雲 「曼 奈 羅 の 研 究 』225頁 。 (33)権 田 雷 斧 著 『曼 茶 羅 通 解 』114頁 。

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参照

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