第1章 美術館における幼児期の鑑賞体験に関する 諸問題と研究の課題
概 要
本論文は、生涯学習社会において人々が美術館を有効に活用しながら学び続けるために、
幼児期に美術館で鑑賞する意義と、幼児期の子どもが美術館で鑑賞する際の望ましい援助に ついて論述するものである。幼児が環境としての美術館と相互に関わり合うための介在者と して、保育者と美術館職員が、共に幼児期の美術館での鑑賞体験の意義を理解し、望ましい 援助方法を実践することが、生涯にわたり美術館を活用しながら学ぶことのできる大人の育 成につながると考える。
第1節では、研究の背景として、生涯学習社会における美術館を含む博物館の重要性と、
幼児の美術館利用に関わる諸問題を、文献やデータをもとに検討する。生涯学習社会の中で、
地域の学びの拠点として、美術館などの社会教育機関に期待が寄せられているが、必ずしも 有効に活用されているとは言い難い。幼児期の学びの重要性から、幼児期に美術館で鑑賞体 験を持つことが、生涯にわたり美術館を有効に活用しながら学び続けることにつながるので はないかという問題提起をする。
第2節では、幼児期の美術鑑賞に関わる先行研究を概観する。倉橋惣三以来、幼児のため の芸術教育には関心が持たれているが、幼児期の美術鑑賞について十分な研究や実践がなさ れていないのが現状である。現在確認できる先行研究の中から、美術館での鑑賞に言及する など、本論文と関連あるものを概観した。
第3節では、研究の目的と方法について述べると共に、本論文の構成を示し、用語を整理 する。研究の目的は、幼児期の美術館での鑑賞体験の意義と、幼児が美術館で鑑賞する際の 望ましい援助を明らかにすることである。方法は事例研究とし、第2章において、岡山県倉 敷市の大原美術館で行われている幼児対象鑑賞プログラムを事例に検討する。第3章では、
第2章を踏まえ、幼児期の美術館での鑑賞体験の意義と望ましい援助について、総合的考察 する。