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油脂類の加工に係わる分析ならびに 反応解析・制御に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 丸 銭 詔 司

学 位 論 文 題 名

油脂類の加工に係わる分析ならびに 反応解析・制御に関する研究

学位論文内容の要旨

  油脂は 主にトリ アシル グリセリ ンの混 合物である。天然油脂は複雑な混合物であり、存在可能 なトリ アシルグ リセリ ン分子種 が全て分 析されている例はない。天然油脂のトリアシルグリセリ ン組成 を近似的 に求め る確率的 手法(各 種random構造)が、脂肪酸分布の分析方法の開発と共に 提案さ れてきて いる。 これらは 必ずしも 天然油脂の正確な組成を与えるものではないが、その概 要を知 る手掛か りとな り、原料 油の評価 手法のひとっとして有用である。また、ランダムェステ ル交換油は1,2,3‑random構造で、1,3 ̄位置選択的リパーゼによる1,3.位置選択的エステル交換 油は1,3‑random‑2‑random構造で トリア シルグリ セリン 組成を求 めるこ とができ 、今後、 これ らの系 は組成と 物性の より高度 な関連付 けがなされる可能性がある。加工油脂製品の最も主要な 配合原 料として 使われ ている水 素添加油 は、水素添加反応系で生じるアシル基の二重結合の位置 異性化 、および 、幾何 異性化の ため、非 常に多くのアシルグリセリン分子種で構成されることに なり、 これによ り多く の有用な 機能が付 与される。特に魚油の水素添加油は極めて多くのアシル グリセリン分子種で構成されている。魚油の水素添加油は他の水素添加油に比べ安定型(ロ型)結 晶への転移速度が極めて小さく、準安定型(ロ 型)結晶で安定化する傾向がある。それゆえ、微細 な結晶 状態を保 持し、 これによ り多くの 有用な特性を示す。油脂の組成の複雑性はそれが有する 物性 、 機 能 と密 接 に 関連 し て おり 、 油 脂の 複 雑 性の 評 価は極 めて重要 な課題 と考えら れる。

  孤立traロ8異性体の定量は、希釈法による赤外スペクトル(IR冫法で行なわれている。この方法 は試料(トリアシルグリセリン)をメチルエステルに変換すること、メチルエステルの秤量、溶媒 での希 釈、固定 セルヘ の注入等 々の前操 作が多いぱかりではなく、溶剤には有害な二硫化炭素を 使う必 要があり 、より 簡易で環 境衛生上 支障の ない方法 が求め られていた。そこで、2枚のNaCl 板状セ ルに試料 を挟む という操 作の後、 直ちにIRを測定す ること ができる 液膜法 による同 異性 体の定量の検討を行い、実用に供し得る手法を提示した。

  共役ジ エン酸の 定量は 一般に紫 外線吸 収スペクトルくUv)法で行われている。この方法は所定 波長のUVスペクト ルを測 定すると いう簡 易な方法 である。 しかし 、この方 法で得 られた共 役ジ エン含量(C2(%))は物質収支上、整合性のないものであった。これは分析手法上の問題に起因し ている と想定し 、ガス クロマト グラフイ ー(GC)法との対比で検討した。GC法は既知組成物の分 析値 、 お よ び、 改 良R08enmund.Kuhnhenn法 に よ るヨ ウ 素 価と の 対 比で 信 頼 し得 る分 析手法 である ことが確 認でき た。現行 の公的UV法は、最 大吸収を 示す波 長(A…)に於ける補正吸光係

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数k2を測定し、C2(%)=0.91k2で算出するというも のである。これは実際の濃度に比べ明らか に低い値を与える。この計算式は、共役cis ‑trans(以下み)と共役trans‑ trans(以下甜)の比吸 光係数をそれぞれ94、および、119とし、かつ、ヨウ素処理の平衡組成比(カ:tt=0.32: 0.68) を基 準と して 設定 した もの であ る。 本研 究で 求め ら れた 甜とttの 比吸 光係 数は それ ぞれ88、 およ び、100とな り、ctとttの比 がp:qの場合、C2(%) 〓(0.88p十qi k2と表せる。従って、

上記平衡組成物を基準とすると、C2(%)=l.04k2となり、現行の公的方法とは明らかに異なる。

こ れ ら の 変 更 に よ りUV法 に て よ り 正 し い 分 析 値 が 得 ら れ る よ う に な っ た 。   触 媒 毒 の 量pと 反 応速 度定 数七 の関 係に つ いて は、Maxtedの 式え =ko (l‑ap) がよ く知 ら れて いる 。た だし 、koは被 毒作 用のない場合の反応速度 定数で触媒量イに比例する(ko=卿、

yは 比例 定数 )。 ロは 毒 性係 数で ある 。こ の式 はpに 対し てイ が比 較的 多い 系に 対し てのみ有 効で ある 。触 媒は 高価 であ り、 化学工場の現場では必要 最低限の触媒を用いるのが常であり、

pに 対 し て イ が 比 較 的 少 な い 範 囲 で 行 な わ れ て い る 。 こ の よ う な 現 場 の 系 にはMaxtedの 式 は全 く適 用で きず 、著 者は 触媒 毒による触媒の不活性化 が単なる活性点の減少と見倣し得る場 合にどのような関数になるか検討し、次式を導いた。

ん ≦〔‥″。を〕

た だ し 、Kは 触 媒 と 触 媒 毒 と の 吸 着 平 衡 定 数 、 ん ap4で ある 。こ の 式は イ→ ∞の とき 、 七= バイ ー イァ )と なり 、Maxtedの式 と一致することが示され、Maxtedの式の一般化された ものであることが明らかにされた 。化学工場の接触反応系には何ちかの形で触媒毒が含まれて いる場合が多く、導かれた式は反応速度の制御等に有用である。

  オレイルオレアートを含むワッ クスエステルをパラジウム・カーボン触媒で水素添加したと ころ、酸価の異常に高い反応混合物を得た。長鎖脂肪酸と長鎖一価アンレコールのエステルの水 素添加で酸価が上昇することは知 られておらず、この反応の詳細について検討した。反応混合 物の分析により、アルコキシル基の炭素ー酸素(C−O)結合の水素化分解反応が起こっているこ と、さらに、アルコキシル基に二 重結合がある場合にのみ生起していることが判明した。一般 的に 知ら れ てい るC一O結 合の 水素 化分 解は 、aB‐、 ある いは 、Bッ ・不飽和酸素化合物のそ れである。また、この反応系の触 媒金属の活性序列は、Pd>〉Rh〉Pt〉Ru〜Niとなり、二重結 合の位置異性化能と全く同じ序列 が得られ、二重結合の位置異性化と密接に関係していること が判明した。さらに、この水素化 分解の反応速度は水素大過剰の条件下で基質の一次に比例す ることが示された。これらの結果 より、この反応はアルコキシル基の二重結合が半水素化状態 機構でaロ‐、あるいは、ロッ.位置まで移動し、さらに求核置換(S〃2)機構にて水素化分解さ れるとう複合過程で進むものと推察された。

  ニッケルアセチルアセトナート(Ni(acac冫2冫、および、トリエチルアルミニウムくEt凵蚰から成 るZiegler型均 一系 触媒 によ る綿 実油 の 低温 水素 添加 につ いて 検討 した。綿実油に対する溶 媒(ロ・ヘキサン)量の設定、予備還元操作の導入、Ni(acac冫2:Et3mのmol比の調整等々の反応 条件の工夫により、ー20℃という 低温でも比較的速やかに水素添加反応を進め得ることができ た。低温条件下、溶媒中で油脂を 水素添加することにより、水素添加反応と晶析を同時に進め る、 いわ ゆ る水素添加反応晶析を行うこ とができた。この水素添加反応晶析では2.飽和トリ

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アシルグリセリン(S2U)のような即融性の良好なトリアシルグリセリンを結晶として蓄積する ことを意図したが、―20℃のような低温での反応晶析でも得られた結晶部には口溶けの悪い高 融点の三飽和トリアシルグリセリン(S3)が含まれていた。水素添加反応晶析のみで即融性の良 好な油脂を得ることは極めて困難と思われ、この結晶部に含まれるS3を通常のアセトン溶剤 分別により除去した。低温条件下の水素添加反応晶析で得た結晶部を通常のアセトン溶剤分別 で分別するとぃう組み合わせ工程により、ハードバターに相当する即融性の良好な油脂を高収 率で得ることができた。

    

以上

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   吉 原 照 彦 副 査   教 授   田 原 哲 士 副 査   教 授   松 田 從 三

副査  助教 授  氏平 増 之 (北 海 道 大学 大 学 院工学研 究科)

学 位 論 文 題 名

油脂類の加工に係わる分析ならびに 反応解析・制御に関する研究

  本 論 文 は111頁か ら な る和 文 論 文で あ り 、 図29と 表25を 含む 。 別 に、 参 考 論文6編 が添 え ら れ て い る 。

  天然 油脂は主 に多くの トリア シルグリ セリン 分子種か ら成る 複雑な混 合物であ る。加工油 脂製品 の最も 主要な配 合原料 である水 素添加 油は、水 素添加反 応で二 重結合の 位置・幾何異 性化が 生じる ため、さ らに多 くのアシルグリセルン分子種で構成される混合物である。特に、

魚油の 水素添 加油は極 めて複 雑である 。魚油 の水素添 加油は安 定型結 晶への転 移速度が極め て小さ く、準 安定型結 晶で安 定化する 傾向が あり、そ れゆえ、 微細な 結晶状態 を保持し、こ れによ り多く の有用な 機能特 性を示す 。油脂 の組成の 複雑性は それが 有する物 性、機能と密 接 に 関 連 し て お り 、 そ の 複 雑 性 の 評 価 は 重 要 な 課 題 と 考 え ら れ た 。 1. 油脂類の 孤立trans異性体 の定量は、一般に希釈法による赤外スベクトル(IR)法で行なわれ ている 。この方 法は試 料の調製 および測 定操作 が多いば かりで はなく、 有害な 二硫化炭素を 使う 必 要 が あり 、よ り簡易で 環境衛 生上支障 のない 方法が求 められて いた。 そこで、2枚 の NaCI板 状セ ル に 試料 を 挟 むと い う 操作 の 後、 直ちにIRを測定し 得る液 膜法につ いて検 討し た。Lambert‑Beerの法則を 基にtrans構造の 吸収をェ ステルの吸収と対比させる手法で定量を 試みた 。この手 法は充 分実用に供し得ることが確認され、特に水素添加油に含まれるtr ans異 性体の定量の簡易化、迅速化に寄与した。

  共役ジ ェン酸の 定量は 一般に紫外線スペクトル(UV)法で行われている。この方法は最大吸 収を示 す波長で の補正 吸光係数k2を測定 し、C2(% )=O.91k2で 算出する というものである が、その値は明らかに低い。これは、共役cis‑trans(以下ct)と共役tr ansーtrans(以下tt)の比吸 光係数 をそれぞ れ94、119とし、かつ、ヨウ素処理の平衡組成比(ct:甜=32:68)を基準として 設定 さ れ た こと に 起 因す る 。 本研 究 で 求め ら れ たctとttの 比 吸 光係 数 はそれぞ れ88、100 となり 、上記平 衡組成 物を基準とすると、C2(%)=1.04k2となる。これらの変更により共役 ジェン 酸のより 正しい 分析値が 得られる ように なり、共 役ジェ ン酸に係 わる種 々の試験デ一 夕一の整合性を高めた。

2. 触 媒 毒 量pと 反 応速 度 定数えの 関係に ついてはMaxtedの式が よく知ら れてい が、この 式は   pに 対して触 媒量イ が比較的 多い系に 対してのみ成立するものである。触媒は高価である故、

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化学 工場 では 必要 最低 限の 触媒 を用 いる のが 常で あ り、pに 対し てイが比較的少ない範囲で 行な われ てい るた めMaxtedの式 は適 用できない。本研究で は、触媒と触媒毒との吸着平衡反 応の 定量 的な解析により、たと イ、pとの、より一般化され た関係式を導くことに成功した。

これ はMaxtedの式 をも 包含 する もの であった。この関係式 は触媒毒を含む系の反応速度の要 因解 析を 容易 にし 、か つ、 工場 での 反応の速度制御や生産 管理等に有効に適用し得るもので ある。

  オレイルオレアートを.パラジウム‐力一ボン触媒で水素添加したところ、酸価の異常に高い 反応 混合 物を 得た 。当 該反 応系 で酸 価が上昇することは一 般に知られておらず、この反応の 詳細 につ いて 検討 した とこ ろ、 アル コキシル基に二重結合 がある場合にのみアルコキシル基 の炭素ー酸素結合の水素化分解反応が起こっているこ と、さらに、この水素化分解の触媒活性 序列 がPd>>Rh>Pt>Ru〜Niと なり 、二 重結 合の 位置 異 性化 のそ れと 全く 同一 とな るこ とが 判 明し た。 また 、こ の水 素化 分解 速度 は水素大過剰の条件下 で基質の一次に比例することも示 された。これらの結果より、この反応はアルコキシル 基の二重結合がaロ‐、あるいは、ロァ‐

位 置 ま で 移 動 し 、 求 核 置 換 (SN2) 機 構 に て 水 素 化 分 解 さ れ る も の と 推 察 さ れ た 。 3. Ziegler型均一系触媒による綿実 油の水素添加条件を種々調整し‑20℃という低温でも速やか に反 応を 進め 得 るこ とを 見出 し、 世界 で始 めて 水素 添加 反応 と晶 析を 同 時に進める、いわゆ る水 素添 加反 応 晶析 を可 能に した 。水 素添 加反 応晶 析で 得た 結晶 部を 通 常のアセトン溶剤分 別で 分別 する こ とに より・、ハードパ夕一に相 当する即融性(常温で硬く体温近傍の温度で急 激に融解する性質)の良好な油脂を 高収率で得ることができた。

本研 究で は油 脂の 分析 、加 工プ ロセ スの解析と制御、水素添加反応晶析について基礎的 ・応 用的 解析 を行 って いる 。こ れら は、 水素添加油の製造において重要なものであり、その 成果 は高く評価出来る。よって審査員一同は丸銭詔司が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格 を有するものと認めた。  .

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