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東芝グループにおける環境経営の構築と企業経営上の意義

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東芝グループにおける

環境経営の構築と企業経営上の意義

実 平  喜 好

Summary  本稿は,2015 年度産学連携コストフォーラ ムでの講演内容をもとに原稿に起こしたもので ある。2050 年のあるべき姿を描いた「環境ビ ジョン 2050」,その実現に向けた行動計画「環 境アクションプラン」など,株式会社東芝環境 推進室の取り組みの一部を概説し,今後に向け た東芝グループの環境経営の目指すべき姿とと もに,環境経営の定義と意義について論じてい る。 Key Words ① 環境経営 ② 環境ビジョン ③ 環境効率 ④ アクションプラン(行動計画) ⑤ 環境羅針盤

Ⅰ はじめに

 本稿は,2015 年度産学連携コストフォーラ ムでの講演内容をもとに原稿に起こしたもので ある。講演にあたっては,4 つのカンパニーを 含む株式会社東芝およびグループ会社(以下, 東芝グループ)における環境経営の定義と,企 業経営上環境経営を行う意義について語ること を依頼された。当日の講演では,東芝グループ の環境活動を体系的に幅広く紹介し,最後に環 境経営の定義と意義を述べた。本稿では,講演 に比べて少し焦点を絞り,環境推進室の取り組 みの一部を概説し,今後の 10 年に向けた東芝 グループの環境経営の目指すべき姿とともに, 環境経営の定義と意義を論じることとする。

Ⅱ 環境ビジョン 2050

 東芝グループは,2007 年に「環境ビジョン 2050」を策定した。環境ビジョン 2050 の概念 図が,以下に示す図表 1 である。  2007 年,筆者は東芝の環境推進部長に就任 した。東芝グループの環境の仕事を進めるため には,環境に関する従業員の理解を促進し,環 境の仕事により積極的に取り組んでもらう必要 がある。そこで,当時の社長に社外での環境に 関する講演をお願いすることとし,「私が話す 2016 年 5 月 10 日受付 《産学連携コストフォーラム》

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境ビジョン 2050 を策定することとした。  環境ビジョン 2050 の策定にあたって考えた メトリックが 3 つある。以下の図表 2 は,地球 環境問題の背景と 3 つのメトリックとともに 2050 年への課題を示したものである。  メトリックの1つ目は人口である。2000 年 の世界人口が 60 億人であった。2000 年を起点 として考えると,いろいろな推計があるが, 2050 年には約 90 億人,およそ 1.5 倍になるこ とがわかった。メトリックの2つ目は1人当た りの GDP である。世の中には,その日,食べ るのにも困っているような人々がおり,当然こ のままでいいとは思っていない。日本が一定水 準の豊かさが得られた一方で,世界にいる貧し い人々のために,もっと全世界が豊かでなけれ ばいけないとするならば,GDP が平均で 3.4 倍 ぐらいになるべきだと考えた。メトリックの 3 つ目は,二酸化炭素の排出量である。2007 年 は第 1 次安倍政権の頃であり,美しい日本,美 しい星 50(クールアース 50(1))といった方針・ (出所)東芝ホームページ「環境ビジョン2050」 (http://www.toshiba.co.jp/env/jp/vision/vision2050_0_  j.htm 最終閲覧日2016年3月1日) 図表2 地球環境問題の背景と 2050 年への課題 3 2 1 0 1800 (UN,OECD,CDIAC,ITUの資料から作成) 2000年を1として表示 1900 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2025 2050 インターネット人口 CO2排出量 GDP 人口 産業革命 世界大戦 インターネット の急激な普及 パソコンの普及 地球環境問題 が深刻化 全世界が 経済発展を ×5.2 ×1.5 ×1/2 一人あたり:×3.4 人口増加に伴う 環境影響を抑制 オイルショック 人口増加の加速 (出所)講演資料より

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東芝グループにおける環境経営の構築と企業経営上の意義 提案が出されていた。これらの方針・提案にお いて,懸案事項のひとつとして二酸化炭素の排 出量削減が挙げられていた。そこで,2050 年 には現在の半分,0.5 倍の二酸化炭素排出量に すべきとした。これらの 3 つのメトリックをも とに考え合わせたのが,環境ビジョン 2050 の 始まりであった。  次に,これらの 3 つのメトリックをもとに数 値目標を設定する。ここでは,数値化するため の概念として用いた,環境効率(Eco Efficien-cy)を概説する。環境効率とは,価値を環境影 響で割ったものであり,1990 年初頭にドイツ のブッパタール研究所(Wuppertal Institute for Climate, Environment and Energy)が提唱 した概念である。  この概念は,環境ビジョン 2050 の策定にあ たってはじめて東芝グループ内で用いられたの ではなく,筆者が 2003 年に製品の環境を担当 したときに用いた概念であった。当時,製品の 価値を環境の側面から示すために,環境効率の 概念を実用化したのである。  環境効率の概念では,例えば,価値をGDP とし,環境への影響を二酸化炭素で代表させて 単純化すると,「環境効率」は,「GDP」÷「二 酸化炭素」と示される。この数値を最大化する ためには,経済的便益(GDP)である分子は 高く,環境負荷を示す分母(二酸化炭素)は低 いほうが良いことになる。製品の環境効率を示 すにあたって,分子を製品の価値,分母を製品 ライフサイクルにおける環境影響,とすること にした。ここで製品価値は,QFD(Quality Function Deployment)をもとに算出した。また, 製品ライフサイクルにおける環境影響は,LCA

(Life Cycle Assessment)(2)

LIME(Life-cy-cle Impact assessment Method based on End-point modeling)(3)を用いて環境被害金額とし て算出した。製品の環境効率を指標化したこと で,白物家電やデジタル家電,情報通信機器, 半導体・電子部品など幅広い製品群での環境効 率が算定可能となった。また,製品だけでなく, 事業プロセスの環境効率も,分子を売上高,分 母を事業プロセス全体での環境影響として定式 化した。東芝グループでは,このように環境効 率を,「製品の環境効率」と「事業プロセスの 環境効率」とに分けて算出し,最終的に「総合 環境効率」として統合してその値を導く手法を 開発した。  環境ビジョン 2050 においても,この手法に 従い,目標値としてのファクターを算出するこ ととした。これはつまり,環境と経済を両立さ せ,二律背反に挑戦するということを意味する。   フ ァ ク タ ー は , 先 に 挙 げ た 一 人 あ た り GDP3.4 倍,人口 1.5 倍,二酸化炭素排出量 0.5 倍をもとに,茅恒等式の価値を次の通り変形さ せて算出した。  その結果,2000 年の環境効率を1とした場合, 2050 年の環境効率は,その 10 倍なければいけ ないことが分かった。ファクターは,環境効率 の改善度の指標である。2050 年の環境効率を 環境効率 = ファクター = 成果(売上あるいは製品価値) 環境効率の改善度 環境影響 茅恒等式:人類の活動とCO2排出量の関係を表した式 価値=GDP,環境影響=CO2排出量と単純化すると CO2 CO2 P = = = × × × P × × × Co2 E Co2 G P G Co2 1 Co2 E E G E E ×3.4 ×1.5 ×2 ×10 ファクター 10 ⇒Green by Technology ⇒ G G G :活動に伴うCO2排出量 :1 次エネルギー消費量 :GDP 一人当たりの経済水準 経済活動のエネルギー効率 エネルギー消費当たりのCO2排出量 環境効率 エネルギー供給側 ⇒Green of Product エネルギー使用側 P :人口 P

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効率を上げるためには,エネルギーの供給側と 使用側の両方で対策が必要となる。 2050 年に「ファクター 10」の世界を目指すと 決めて逆算すると,2025 年にはファクター5, 2015 年にはファクター3が求められる。この 目標を達成するために,次節で述べるアクショ ンプラン(行動計画)を作成して進めている。

Ⅲ 第 5 次環境アクションプ

ランの展開

 第 5 次環境アクションプランは,2012 年度 から 2015 年度までの細かな数値目標を含む行 動計画である。ここでは,2015 年度には環境 効率のファクター 3 を達成することを所与とし, 各施策・数値目標は,2011 年に策定した「環 境グランドデザイン」に基づいて設定した。環 境グランドデザインとは,事業と環境経営を一 体化させる概念である。環境グランドデザイン では,環境を事業のネガティブな要因として捉 えられないよう,事業として一体感を目指すと いうのが重要なコンセプトであった。具体的に は,Green of Product,Green by Technology, Green of Process,Green Management の 4 分 野に関して環境戦略を展開した。  第 5 次環境アクションプランでは,これら 4 つの Green をもとに,それぞれの数値目標を 設定している。図表 3 は,第 5 次環境アクショ ンプランで設定する数値目標の一覧である。  図表 3 にあるように,たとえば,Green of Product と Green by Technology では環境性能 ナンバー1の製品群「エクセレント ECP(4) の売上高などを達成すべき目標値として顧客・ 市場と約束している。次の図表 4 は,最近のエ クセレント ECP の事例である。原子燃料,空調, ストレージ,ラップトップ PC など,ほとんど の製品分野で出てきたという状況になっている。  また,「グリーン・オブ・プロセス」では温 暖化,資源,化学物質という環境3要素それぞ れで環境負荷総量と原単位の両方の目標値を約 束している。基本的には投入するものを極小化 することと,排出するものを極小化することで, 低環境負荷を提言することを意図している。環 境負荷を下げることは,製造現場のコストダウ ンにつながるようにするという理解で進めてい る。図表 5 は,東芝グループの温室効果ガス (GHG)総排出量と原単位を示すグラフである。 ビジネスを伸ばすことを考えれば,残念ながら GHG 総排出量の絶対量は増えざるを得ない。 ただし,原単位での管理も同時に行うことで, 絶対量は増えるが,その量をどれくらい下げる か,努力による「下げ量」を約束しているとい うつくりになっている。  Green Management については,これまで, 定性的な記述はあったけれど,定量的な約束を してこなかった。「そのままではいけない」と いうことで,数値目標をつくったのが今回のポ イントである。例えば,グローバルの 64 拠点で,  ①  Green of Product:環境性能が最も高い 製品を生み出すことで,製品そのものをグ リーン化する。  ②  Green by Technology:東芝グループが 保有するメガソーラー事業などの低炭素化 技術をグローバル展開する。  ③  Green of Process:環境負荷の少ないも のづくりを行うことで,ものづくりをグ リーン化する。 教養を教育し,人財育成することで,全員 参加で次の環境活動を展開する力を溜める。

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東芝グループにおける環境経営の構築と企業経営上の意義

図表3 第 5 次環境アクションプランの概要

総合環境効率(2000年度基準) 製品の環境効率(2000年度基準) 事業プロセスの環境効率(2000年度基準)

Green of Product/Green by Technology

総合 地球温暖化防止 資源有効活用 地球温暖化防止 資源有効活用 化学物質管理 生物多様性の保全 環境教育・人財育成 環境コミュニケーション 事務所を拠点とした地域連携による 生態系ネットワークの構築推進 東芝ecoスタイルリーダーの育成 「つながる」環境コミュニケーションのグローバル展開 化学物質管理 Green of Process Green Management 環境効率 東芝グループ 第5次環境アクションプラン 2015年度計画 2015年度計画 2015年度計画 2015年度計画 エクセレントECP売上高 Green by Technology 売上高 CO2排出抑制量(Green of Product) CO2排出抑制量(Green by Technology) 省資源化率 再生プラスチック利用率 特定化学物質の削減(PVC※1/BFR※2削減) 3.0倍 3.4倍 1.5倍 1.8兆円 1.9兆円 1,500万t 4.9億t 50% 3.0% 全80製品群 439万t〈65%〉 90% 95% 11.7万t〈62%〉 90% 0.5% 90% 1,967t〈78%〉 95% 測定実施率100% 2,000人 世界の環境問題に取り組む 「環境一斉アクション」の展開 温室効果ガス総排出量(1990年度基準) エネ起源CO2総排出量原単位(2010年度基準) 製品物流CO2総排出量原単位(2010年度基準) 廃棄物量(2000年度基準) 廃棄物総発生量原単位(2010年度基準) 最終処分率(グループ総発生量比) 水受入量原単位(2010年度基準) 総排出量(2000年度基準) 取扱量原単位(2010年度基準)

©2015 Toshiba Corporation ※1 塩化ビニル樹脂(Polyvinyl Chloride) ※2 臭素系難燃剤(Brominated Flame Retardants) (出所)東芝ホームページ「第5次アクションプランの進捗」(http://www.toshiba.co.jp/env/jp/vision/plan5_j.htm 最終閲覧日2016年3月1日)

図表4 代表的なエクセレント ECP

1

Copyright © 2016 Toshiba Corporation, All rights reserved.

崐崵嵓崖嵤଎ા஍૨岝 ম৬ઍ஋峑঵ੀ崰崫崿崗嵑崡پ 崝嵤崸嵣পૠெ崡崰嵔嵤崠਱岻 +'' $/6;%([崟嵒嵤崢 崻嵓嵣ੵৃ৷嵆嵓崩૬৹ 崡嵤崹嵤嵊崠嵍嵤嵓嵆嵓崩 6006H崟嵒嵤崢 ௎ପ੄崐崵੐ఏ岣(6((5岤峑 ৸ਃர崰崫崿崗嵑崡پ ਉ৕೤મ ೤મ୊௤૨岶 ঵ੀ崰崫崿崗嵑崡پ峑岬峴岝 ੄崐崵嵣੄ৱ౺ 崓嵑嵤0)3 H678',2 $&崟嵒嵤崢 '\崽嵒嵤6P&R჌લ 嵔崊崊嵤崡峘র峑峬ൌ૘峔 '\ق崠崡崿嵕崟崎嵈ك峼 ঳જઞ৷峁峔岮჌લ峑 ੄ৱ౺৲峼ৰਠ پ ଲષ嵒嵒嵤崡ৎਡ岞ਠ૔峘崡崮崌崧崡峼৳઒峃峵峬峘峑峙岬峴峨峅峽岞 ফ২峘岴峬峔崐崗崣嵔嵛崰(&3ੳ৒ଲષ ัအ崮嵔崻 *;崟嵒嵤崢 ফ৑଎ાਗ਼ৡ୤岶 ঵ੀ崰崫崿崗嵑崡پ ٲ਴ਛফ২ ੄崐崵পೖਭೖ রசਃ峑৿੿ਗ਼ৡپڮ岝ଲષ੎୤岝 ગে崿嵑崡崩崫崗ઞ৷૨岶崰崫崿崗嵑崡پ پ ੄崐崵ਙચ峼ં峃੐ఏ岣7(&க岤峕峲峵 崶嵤崰3& G\QDERRN 7嵣7 ଼়峃峵৊஑ਃர峘র峑 ਈೄ୤ 峘崡崧嵛崨嵤崱崶嵤崰3& (出所)筆者作成

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そのサイト(工場などの立地)にどのような動 植物がいるかという調査をした。地域ごとのレ ッドデータブック(5)と見比べながら希少種の 有無を確認したり,行政の助けを借りながら地 歴全般を調査したりする。調査後は,この工場 で守るべき動植物の種を決めた。国内では,例 えば,三浦半島に咲くハマカンゾウという黄色 い美しい花を保護している。売り物になるため 盗掘の対象となり減ってしまうということで, 横須賀に工場がある東芝ライテックが,工場の 敷地内に 28 株のハマカンゾウを植えた。生物 多様性条約にある「域外保全」という考え方で ある。工場は守衛がいるので,夜でも外の人は 入れない。そこで育てたハマカンゾウは,2 年 ほどで約 100 株まで増えた。それを三浦半島の 小網代に戻すイベントを開催した。その場所は いま,一般にも公開している。  さらに,2014 年 4 月1日から 2 カ月間にわ たり,世界 20 カ国 140 拠点にそれぞれ協力し てもらって,環境活動をグローバルにやった。 例えば,日本は先ほどのハマカンゾウ,中国は 植林,シンガポールは川の清掃,米国は省エネ コンペ,欧州は廃電化製品の回収と,回収重量 に応じたアフリカへの寄付,アフリカではその 寄付金を使って井戸を掘るなどの活動を行った。 そのフィナーレセレモニーを,2014 年 6 月 5 日の「世界環境デー」に,川崎のスマートコミ ュニティセンターで開催した。こういったグ ループ全体での活動を通じて環境活動への従業 員の理解を促進している。  以上の 4 つの Green のほかに,第 5 次環境 アクションプランでは,製品の環境効率ともの づくり(事業プロセス)の環境効率そして総合 環境効率を数値目標に据え,毎年のファクター 値としてそれぞれ具体的に計測している。

Ⅳ   環 境 羅 針 盤 「 T - C O M

PASS」で潮流を

 2013 年に最新のツールとして「T-COM-1990 (基準年) 2000 2010 2011 2012 年度 (出所)講演資料より 2013 2014 2015 目標値 G H G 総 排 出 量︵ 万 ト ン ︶ エ ネ 起 源 C O 2 原 単 位 ︵ 2 0 1 0 年 度 比 % ︶ 250 300 350 400 450 500 550 600 650 55% 60% 65% 70% 75% 80% 85% 90% 95% 第5次環境アクションプラン目標値 実績 実績値 CO2原単位 2014年度実績 302万トン

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東芝グループにおける環境経営の構築と企業経営上の意義 PASS」を開発した。これは,東芝グループの 環境羅針盤である(図表 6)。  T-COMPASS を用いて,環境負荷をどうい う切り口で料理して,対策をどう見ていくかを 検討する。これは単一の統合指標ではなく,環 境側面を 4 領域に区分して,北のNをナチュラ ル・リソース(天然資源),東のEをエネルギー, 西のWをウォーター(水資源),南のSをサブ スタンス(化学物質)に見立て,それぞれの環 境影響を見ていこうというものである。これら 4 つの各領域の重要な指標で進捗管理を行う。 また,ライフサイクル影響評価の知見を活用し て,製品・サービスだけでなく組織までもライ フサイクル単位で評価することを図っている。 さらに,地域ごとの環境影響の違いを反映して, 地域別コンパスを策定し,戦略立案ツールとし て用いることも検討している。  このコンパスの目的の一つは,図表 7 で示す ように,環境経営の深化である。今までは二酸 化炭素なら二酸化炭素というところにフォーカ スし過ぎていた面もあるため,もう少し広い視 野で物事を見て,それぞれを深掘りしていきた い。次いで,もう一つの目的は,環境経営の広 がりである。対象範囲の広がりとともに,環境 に取り組む人たちの広がりを求めていきたい。 このコンパスで,みんなが参加できる枠組みを 提供できればと思っている。方位磁石なので, 北と東のあいだには北東があるように,N・ E・S・Wだけではなく中間域のものについて 図表7 T-COMPASS の目的 世界の新たな潮流への対応 深化 −環境側面の網羅性(カーボン⇒環境) 環境指針の共有 −「エコ・リーディングカンパニー」としてあらゆる環境課題に   貢献する姿勢を社内外に示す −LCA・ファクターTの知見を有効利用 −対象範囲の拡大(製品⇒サプライチェーン・組織) 環境経営の 拡がり × 環境経営の わかりやすさ −グローバル全従業員の参画を促す −視覚的に理解できる 独自性 (出所)講演資料より 図表6 T-COMPASS (出所)東芝ホームページ「環境経営コンセプト 『T-COMPASS』」(http://www.toshiba.co.jp/env/jp/vision/ tcompass_j.htm 最終閲覧日 2016 年 3 月 1 日)

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ントという概念につながるし,E(エネルギー) の GHG だけを取り上げれば,カーボンフット プリントという概念にも持っていける。このコ ンパス一つで,総合化が可能である。いろいろ なニーズを捕まえるとともに,既存のニーズに 対しても対応できるというわけである。

Ⅴ 次の 10 年に向けて:環

境経営の定義と企業経営

上の意義

 東芝グループでは,10 年ごとに環境経営の イノベーションを起こしてきた。1993 年に LCA を導入し,2003 年に環境効率「ファク ター T」という概念を打ち立て,さらに 10 年 経った 2013 年に「T-COMPASS」を開発した。 こういった取り組みによって,次の 10 年に向 けて「エコ ・ リーディングカンパニー」として 環境を通じた価値創造に貢献したいと考えてい る。  ここで,あらためて環境経営を定義すると 「環境経営とは,環境の視点が企業経営のあら ゆるステージごとにビルトインされ,事業活動 が目指す姿は,持続可能な社会の実現に向けて 先導的な役割を果たすことで社会から認知され ることである。つまり,企業が環境経営を推進 する企業経営上の意義は,環境負荷を低減し, 持続可能な社会の実現に向けて継続的に努力す る姿を社会に示し,認知されることで価値創造 に貢献するところにある。  図表 8 は,これからの東芝グループが目指す 環境経営の姿を示した概念図である。ここで示 す三角形のうち,土台である環境経営の基盤強 化と,続くライフサイクルでの環境貢献は,こ れまでも実施してきた4つの Green を別の表 現にしたものである。一番上にある持続可能性 への挑戦は,これまでの取り組みにはなかった 新規のものであり,東芝グループが目指すべき 方向だと考える。持続可能性は,140 年の歴史 の中で最大の危機を迎えている東芝グループの 企業としての持続可能性が前提ではあるが,モ ノに加えてコトを生み出し続けることで,持続 可能な社会の実現に貢献したいとの思いでもあ る。そういった企業活動を通して世の中で必要 な企業として認められることが重要なことでは ないかと考えている。 図表8 東芝グループの目指す環境経営の概念図 ◆持続可能な社会実現のための貢献(新規) ◆世の中で必要な企業として認知される(新規) ◆総合的な環境性能向上(継続) ◆モノづくりの環境負荷削減(継続) ◆環境リスクコンプライアンス徹底(強化) ◆環境意識の向上、環境人財の育成(継続) C 持続可能性への挑戦 Sustainability A 環境経営の基盤強化 Management B ライフサイクルでの環境貢献 Business 持続可能 性への挑戦持続可能 性への挑戦 ライフサイクル での環境貢献 環境経営の基盤強化 (出所)講演資料より

(9)

東芝グループにおける環境経営の構築と企業経営上の意義 (注) ⑴クールアース 50 とは,2007 年 5 月に安倍総理 が発表した,地球温暖化防止のための提案をい う。世界全体の温室効果ガス排出量を 2050 年 までに現状と比べて半減するとの長期目標を掲 げ,そのために革新的技術の開発と低炭素社会 づくりを目指すとした。また,2013 年以降の温 暖化対策の枠組み構築に向けて,主要排出国す べての参加,柔軟かつ多様性のある枠組み,技 術活用による環境保全と経済発展の両立,の3 原則も提示した。

⑵ LCA(Life Cycle Assessment)とは,材料調 達から廃棄処分やリサイクルまで,製品の一生 を全て包括した視点から,その環境影響を評価 する手法をいう。

⑶ LIME(Life-cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)とは,さまざま な環境影響の統合化手法として,(国研)産業 技術総合研究所 LCA 研究センターが開発した 日本版被害算定型影響評価手法をいう。 ⑷東芝グループでは,「地球温暖化の防止」「資源 の有効活用」「化学物質の管理」の3つの観点で, 製品リリース時点で業界トップの主要環境性能 を持ち,社内認定された製品を「エクセレント ECP」と名付け,その普及拡大をめざしている。 ECP とは,Environmentally Conscious Prod-ucts の略称であり,環境調和型製品を意味する。 ⑸レッドデータブックとは,絶滅のおそれのある 野生生物について記載したデータブックをいう。 IUCN(国際自然保護連合)によるもののほか, 日本の環境省や地方自治体なども独自のレッド データブックを作成しており,それぞれ必要に 応じて内容の改定・見直しが行われている。   【参考文献】 実平喜好.2015. 「第 6 講 企業の環境経営最前  線〜エコ・リーディングカンパニーを目指して 〜」(東京都市大学環境学部『Blue Earth Col-lege ようこそ,「地球経済大学」へ。』東急エー ジェンシー.) 東芝 . 2015. 『東芝グループ 環境レポート 2015』 東芝 . 日刊工業新聞社 . 2015.『エコ・リーディングカン パニー東芝の挑戦〜環境戦略が経営を強くす る』日刊工業新聞社 . (株式会社東芝 環境推進室長)

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