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立位における一側上肢での身体側面に沿った下方リーチ肢位保持についての運動学的検討

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Academic year: 2021

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立位における一側上肢での身体側面に沿った

下方リーチ肢位保持についての運動学的検討

小島 佑太

1)

  伊藤 陸

1)

  藤本 将志

1)

赤松 圭介

1)

  鈴木 俊明

2)

Kinematic study of downward reach from the standing position

while holding one limb along the side of the body

Yuta KOJIMA, RPT

1)

, Riku ITO, RPT, MS

1)

, Masashi FUJIMOTO, RPT

1)

,

Keisuke AKAMATSU, RPT

1)

, Toshiaki SUZUKI, RPT, DMSc

2)

Abstract

We examined the joint angles of the trunk, hips, and feet of 16 healthy adult male subjects while they performed downward reach position from the standing position while holding one arm along the side of the body. The postural change at the time of reach was recorded from the rear with a digital video camera. ImageJ was then used to process the captured images. The thoracic spine lateral flexion angle, thoracolumbar transitional lateral flexion angle, lumbar spine lateral flexion angle, hip adduction/abduction angle, foot pronation/supination angle, pelvic lateral tilt angle, crus tilt angle, and calcaneal tilt angle were used to determine the change in posture. In the downward reach, lateral flexion mainly occurred on the reach side of the trunk. The images revealed that hip abduction on the reach side and reach inclination of the pelvis occurred at the beginning and at the end of the movement. Therefore, downward reach mainly involves lateral flexion of the trunk. Furthermore, the reach-side inclination of the trunk due to the lateral flexion of the trunk and hip abduction on the reach side is a movement in which the center of gravity of the body tends to deviate to the reach side. Therefore, we consider that the center of gravity of the body is kept on the base of support by the non-reach side movement of the pelvis and the non-reach side inclination of the lower limbs using hip abduction on the reach side and hip adduction on the non-reach side.

Key words: downward reach, posture change, standing position

J. Kansai Phys. Ther. 20: 59–68, 2020

1) 六地蔵総合病院 リハビリテーション科 2) 関西医療大学大学院 保健医療学研究科

受付日 令和2 年 6 月 9 日  受理日 令和 2 年 9 月 18 日

Department of Rehabilitation, Rokujizo General Hospital Graduate School of Health Sciences, Graduate School of Kansai

University of Health Sciences

はじめに リーチ動作は日常生活で非常に多く観察される基本動 作であり、物品を取るときや触れるときにおこなわれる 動作である。リーチ動作では上肢運動の制御だけでなく、 上肢運動を適切におこなうために、体幹や下肢を含めた 姿勢制御の重要性について報告1–3)されている。リーチ動 作に関する先行研究1, 4, 5)では、座位や立位での側方、前 方、上方などの多方向への上肢のリーチ動作についての 運動学的検討、筋電図学的検討がおこなわれている。ま た、健常者を対象とした立位での両上肢の下方リーチ動 作、立位での両上肢を用いた下衣の着脱動作について、 矢状面上の姿勢変化および筋活動(中殿筋、大殿筋、大 腿四頭筋、腓腹筋、前脛骨筋)に着目した研究5, 6)が報告 されている。しかし、一側上肢での下方リーチ動作にお ける前額面上の姿勢変化ついて、詳細に検討した報告は

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見当たらない。 臨床上、脳血管障害片麻痺患者のトイレ動作では、非 麻痺側上肢のみで下衣を脱衣する際に、胸腰部の非麻痺 側側屈が生じず、下衣を充分に下げることができない場 面がある。さらに、足底接地した状態で麻痺側足部回内 に伴う麻痺側下腿の外側傾斜と麻痺側股関節内転が生じ、 体幹が非麻痺側へ傾斜しない状態で骨盤が麻痺側へ過 剰に移動することで、麻痺側方向へ転倒の危険性を認め、 動作の遂行が困難となることがある。非麻痺側上肢のみ で下衣を脱衣する場面では、ウエスト部分の端を掴みな がら非麻痺側上肢を身体側面に沿って下方へリーチして いく必要がある。このとき、立位における一側上肢での 身体側面に沿った下方リーチ(以下、下方リーチ)の獲 得にはどのような姿勢制御および関節運動を必要とする のか、明確な指標がない。 そこで本研究では、脳血管障害片麻痺患者の一側上肢 での下衣着脱動作を想定し、健常者の下方リーチ肢位保 持における、胸椎部、胸腰椎移行部、腰椎部、股関節、足 部の関節角度変化について検討した。 対象と方法 1.対象 対象は整形外科的・神経学的に問題のない健常成人男 性16名(平均年齢27 ± 5.3歳、平均身長170.8 ± 4.67 cm) とした。なお、本研究はヘルシンキ宣言の助言 ・ 基本原 則および追加原則を鑑み、あらかじめ説明された実験の 概要と侵襲、公表の有無と形式、個人情報の取り扱いに ついて対象者より同意を得たうえで実施した。 2.方法 1)測定課題 本研究ではトイレ動作における立位での一側上肢で おこなう下衣着脱を想定した下方リーチを観察するため、 立位にて一側上肢を身体側面に沿って下方へリーチした 肢位保持を測定課題とした。なお、トイレ動作では下衣 を殿部から膝関節の位置まで下げる必要があると考え、 本研究では膝関節外側裂隙部までのリーチ(以下、膝外 側部リーチ)と規定し、膝関節外側裂隙部へ下方リーチ するまでの姿勢変化の過程を観察した。この際、リーチ 距離を決定するうえで身長の影響を除外するため、被験 者ごとに上肢を下垂させた立位における中指先端から膝 関節外側裂隙部までの距離を計測し、その1/3、2/3下方 の位置となる大腿外側部までリーチした肢位をそれぞれ 1/3リーチ、2/3リーチと規定し、それぞれリーチ保持課 題をランダムにおこなった際の姿勢変化を観察した。 なお、本研究は前額面上の姿勢変化を観察するため、 胸腰部屈曲、股関節屈曲による体幹の前傾、体幹の回旋、 股関節内旋外旋による骨盤の回旋が生じないように規定 した。口頭指示として「体を前へ曲げたり、捻ったりせず に体の側面に沿って手を下に伸ばして下さい」と説明を おこなったうえでリーチ保持課題を実施した。また、2 台の体重計を用いて左右下肢の各リーチ保持課題におけ る荷重変化量を確認した。この際、被験者にはリーチ保 持課題遂行中に足底が離地しないように規定し、足幅 ・ 足角は体重計上で数回ジャンプした際の足幅・足角とし、 各被験者によって大きな差がないことを確認した。 2)使用機器 Canon社製のデジタルビデオカメラを用いて前額面上 の各リーチ保持課題における姿勢変化を確認するために 後方から撮影した。撮影には対馬7)の方法を参考に、被 験者とデジタルビデオカメラの距離は12 mと設定し、三 脚を用いてデジタルビデオカメラが動かないよう固定し た。体幹および両下肢の肢位変化を測定するため、脊柱・ 骨盤帯および下肢全体が画面中央に写るように上下左右 の位置を調整、約1 mの高さでデジタルビデオカメラを 配置し、後方から前額面上の姿勢変化を撮影した。 3)測定項目と分析方法 リーチ保持課題中の胸腰部、股関節、足部の関節角度 を算出するため、対象者の脊椎棘突起(第1・6・12胸椎 棘突起、第1・3・5腰椎棘突起)、腸骨稜頂点、上後腸骨棘、 下肢(大転子、膝窩部中央、踵骨上端・下端)にそれぞれ 直径1.5 cmの球状のマーカーを貼付した(図1)。 検討する姿勢変化の項目は、胸椎部側屈角度、胸腰椎 移行部側屈角度、腰椎部側屈角度、両側の股関節内転外 転角度、両側の足部回内回外角度、および前額面上の骨 盤傾斜角度、両側の下腿傾斜角度、両側の踵骨傾斜角度 とした。各関節角度の規定として胸椎部側屈角度は「第1 胸椎 ・ 第6胸椎を結んだ線と、第6胸椎 ・ 第12胸椎を結 んだ線がなす角度」、胸腰椎移行部側屈角度は「第6胸椎・ 第12胸椎を結んだ線と、第12胸椎・第3腰椎を結んだ線 がなす角度」、腰椎部側屈角度は「第1腰椎 ・ 第3腰椎を 結んだ線と、第3腰椎 ・ 第5腰椎を結んだ線がなす角度」 とした。また、骨盤の傾斜角度は「床面に平行な線と、両 側の上後腸骨棘を結んだ線がなす角度」、股関節内転外転 角度は「両側の上後腸骨棘を結ぶ線と、大転子と膝窩部 中央を結んだ線がなす角度」、足部回内回外角度は「膝窩 部中央・踵骨上端と、踵骨上端・下端を結んだ線がなす 角度」、下腿傾斜角度は「膝窩部中央と踵骨下端を結んだ 線と、踵骨下端を通る床からの垂線がなす角度」、踵骨傾 斜角度は「踵骨上端 ・ 下端を結んだ線と、水平線がなす 角度」とした。そして、デジタルビデオカメラで撮影し た画像データ上にて、マーカーをプロットし、各マーカー を結ぶ線のなす角度を関節角度として画像解析フリーソ

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フトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて分析 した(図2)。 統計処理では各リーチ距離における各関節角度の正規 性の検定をおこなった結果、正規性を認めないデータ群 があったため、Steel-Dwass法を用いて多重比較検定を実 施した。いずれも有意水準は5%とした。 結 果 体幹部の肢位変化について、胸椎部側屈角度、胸腰椎 移行部側屈角度、腰椎部側屈角度はリーチ距離の増大に 伴いリーチ側へ側屈角度が漸増し、立位と比較して1/3 リーチ・2/3リーチ・膝外側部リーチ、1/3リーチと比較 して2/3リーチ・膝外側部リーチで、2/3リーチと比較し て膝外側部リーチで有意な増大を認めた(p<0.05)(図3、 4、5)。 リーチ側股関節内転外転角度はリーチ距離の増大に 伴い、股関節外転角度の増大を認め、立位と比較して1/3 リーチ・2/3リーチ・膝外側部リーチで、1/3リーチ・2/3 リーチと比較して膝外側部リーチで有意な増大を認めた (p<0.05)(図6)。非リーチ側股関節内転外転角度はリー チ距離の増大に伴い内転角度が漸増し、立位と比較して 1/3リーチ・2/3リーチ・膝外側部リーチで、1/3リーチと 図 1 マーカー貼付部位 脊椎棘突起(第1・6・12胸椎棘突起、第1・3・5腰椎棘突起)、 腸骨稜頂点、上後腸骨棘、下肢(大転子、膝窩部中央、踵骨 上端・下端)にそれぞれ直径1.5 cmのマーカーを貼付した。 図 2 各関節角度の規定 各骨指標に貼付したマーカーを基準とし、胸椎部側屈角度、胸腰椎移行部側屈角度、腰椎部側屈角度、骨盤 傾斜角度、股関節内転外転角度、足部回内回外角度、下腿傾斜角度、踵骨傾斜角度を上記のように規定した。

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図 3 胸椎部側屈角度 縦軸は第1胸椎 ・ 第6胸椎を結んだ線と第6胸椎 ・ 第12胸椎を 結んだ線がなす角度を胸椎部側屈角度として示しており、180° を側屈中間位とする。また、胸椎部側屈角度の縦軸は上側をリー チ側方向、下側を非リーチ側方向とし、角度の増大に伴いリー チ側への側屈を示し、角度の減少に伴い非リーチ側への側屈を 示す。胸椎部側屈角度は立位と比較して1/3リーチ・2/3リーチ・ 膝外側部リーチで、1/3リーチと比較して2/3リーチ ・ 膝外側部 リーチで、2/3 リーチと比較して膝外側部リーチでリーチ側へ 側屈角度の有意な増大を認めた。 図 4 胸腰椎移行部側屈角度 縦軸は第6胸椎・第12胸椎を結んだ線と第12胸椎・第3腰椎を 結んだ線がなす角度を胸腰椎移行部側屈角度として示してお り、180°を側屈中間位とする。また、胸腰椎移行部側屈角度の縦 軸は上側をリーチ側方向、下側を非リーチ側方向とし、角度の 増大に伴いリーチ側への側屈を示し、角度の減少に伴い非リー チ側への側屈を示す。胸腰椎移行部側屈角度は立位と比較して 1/3リーチ・2/3リーチ・膝外側部リーチで、1/3リーチと比較し て2/3リーチ ・ 膝外側部リーチで、2/3リーチと比較して膝外側 部リーチでリーチ側へ側屈角度の有意な増大を認めた。 図 5 腰椎部側屈角度 縦軸は第1腰椎・第3腰椎を結んだ線と第3腰椎・第5腰椎を結 んだ線がなす角度を腰椎部側屈角度として示しており、180°を 側屈中間位とする。また、腰椎部側屈角度の縦軸は上側をリー チ側方向、下側を非リーチ側方向とし、角度の増大に伴いリー チ側への側屈を示し、角度の減少に伴い非リーチ側への側屈を 示す。腰椎部側屈角度は立位と比較して1/3リーチ・2/3リーチ・ 膝外側部リーチで、1/3リーチと比較して2/3リーチ ・ 膝外側部 リーチで、2/3 リーチと比較して膝外側部リーチでリーチ側へ 側屈角度の有意な増大を認めた。 比較して2/3リーチ・膝外側部リーチで、2/3リーチと比 較して膝外側部リーチで有意な増大を認めた(p<0.05) (図6)。 骨盤傾斜角度はリーチ距離の増大に伴い、骨盤のリー チ側への傾斜角度の増大を認め、立位と比較して1/3リー チ・2/3リーチ・膝外側部リーチで、1/3リーチ・2/3リー チと比較して膝外側部リーチで有意な増大を認めた(p <0.05)(図7)。 下腿傾斜角度は両側ともに非リーチ側への傾斜を認め、 リーチ側下腿傾斜角度は立位と比較して2/3リーチ ・ 膝 外側部リーチで、1/3リーチ ・ 2/3リーチと比較して膝外 側部リーチで有意な増大を認めた(p < 0.05)(図8)。非 リーチ側下腿傾斜角度は立位と比較して2/3リーチ ・ 膝 外側部リーチで、1/3 リーチと比較して膝外側部リーチ で有意な増大を認めた(p<0.05)(図8)。 両側の足部回内回外角度とリーチ側踵骨傾斜角度は各 リーチ保持課題間で変化を認めなかった(図9、10)。非 リーチ側踵骨傾斜角度は非リーチ側への傾斜角度増大を 認め、立位と比較して2/3リーチ・膝外側部リーチ、1/3リー チと比較して膝外側部リーチで、2/3リーチと比較して膝 外側部リーチで有意な増大を認めた(p<0.05)(図10)。 また、リーチ距離の増大に伴いリーチ側下肢への荷 重量増大を認め、立位と比較して1/3リーチ、2/3リーチ、

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図 6 股関節内転外転角度 左図の縦軸は両側の上後腸骨棘を結ぶ線とリーチ側の大転子と膝窩部中央を結んだ線がなす角度を示し、右図の縦軸は両側の上後腸骨 棘を結ぶ線と非リーチ側の大転子と膝窩部中央を結んだ線がなす角度を示す。リーチ側と非リーチ側の股関節内転外転角度の縦軸は上側 を外転方向、下側を内転方向とし、角度の増大に伴い股関節外転を示し、角度の減少に伴い股関節内転を示す。リーチ側股関節内転外 転角度は立位と比較して1/3リーチ・2/3リーチ・膝外側部リーチで、1/3リーチと比較して膝外側部リーチで、2/3リーチと比較して膝外側部リー チで股関節外転角度の有意な増大を認めた。非リーチ側股関節内転外転角度は立位と比較して1/3リーチ・2/3リーチ・膝外側部リーチで、 1/3リーチと比較して2/3リーチ・膝外側部リーチ、2/3リーチと比較して膝外側部リーチで股関節内転角度の有意な増大を認めた。 図 7 骨盤傾斜角度 縦軸は床面に平行な線と、両側の上後腸骨棘を結んだ線がなす 角度を骨盤傾斜角度として示し、骨盤傾斜角度の縦軸の上側を リーチ方向、下側を非リーチ方向とし、角度の増大に伴いリー チ側への傾斜を示し、角度の減少に伴い非リーチ側への傾斜を 示す。骨盤傾斜角度は立位と比較して1/3リーチ ・ 2/3リーチ ・ 膝外側部リーチで、1/3 リーチと比較して膝外側部リーチで、 2/3 リーチと比較して膝外側部リーチでリーチ側へ骨盤傾斜角 度の有意な増大を認めた。 膝外側部リーチで有意に増大を認めた(p<0.05)(図11)。 以上の各関節角度変化における結果の一覧を表1に示 す。Microsoft Office Excelの散布図(直線マーカー)を用 いて描出した各リーチ課題でのスティックピクチャーを 図12に示す。 考 察 本研究は、脳血管障害片麻痺患者が非麻痺側上肢のみ で下衣を膝関節の位置まで下げることを想定し、膝外側 部へ下方リーチするまでの姿勢変化の過程について健常 者を対象に検討した。リーチ距離を3 つのリーチ保持課 題(1/3 リーチ、2/3 リーチ、膝外側部リーチ)に分けて 観察し、リーチ距離の変化に伴う胸椎部、胸腰椎移行部、 腰椎部の側屈角度、骨盤傾斜角度、股関節内転外転角度、 足部回内回外角度、下腿傾斜角度、踵骨傾斜角度につい て検討した。 まず、下方リーチ距離と胸腰部 ・ 股関節 ・ 骨盤運動 の関係性について述べる。胸椎部、胸腰椎移行部、腰椎 部はリーチ距離の増大に伴い、全てのリーチ保持課題間 でリーチ側への側屈角度増大を認めたことから、胸椎部、 胸腰椎移行部、腰椎部の側屈は下方リーチをおこなうた

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図 8 下腿傾斜角度 縦軸は膝窩部中央から踵骨下端を結ぶ線と踵骨下端を通る床からの垂線がなす角度を下腿傾斜角度として示し、 下腿傾斜角度の縦軸の上側をリーチ方向、下側を非リーチ方向とし、角度の増大に伴いリーチ側への傾斜を示し、 角度の減少に伴い非リーチ側への傾斜を示す。リーチ側の下腿は立位と比較して2/3リーチ・膝外側部リーチで、 1/3リーチと比較して膝外側部リーチで、2/3リーチと比較して膝外側部リーチで、非リーチ側へ傾斜角度の有意 な増大を認めた。非リーチ側下腿傾斜角度は立位と比較して2/3リーチ ・ 膝外側部リーチ、1/3リーチと比較し て膝外側部リーチで非リーチ側へ傾斜角度の有意な増大を認めた。 図 9 足部回内回外角度 縦軸は膝窩部中央・踵骨上端と、踵骨上端・下端を結んだ線がなす角度を足部回内回外角度として示し、縦軸は 上側を回外方向、下側を足部回内方向とし、角度の増大に伴い足部回外を示し、角度の減少に伴い足部回内を示 す。リーチ側と非リーチ側の足部回内外角度は変化を認めなかった。

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めの主動作として関与したと考える。これに対し、リー チ側股関節外転と骨盤のリーチ側傾斜は立位と比較し て1/3リーチで、2/3リーチと比較して膝外側部リーチで 増大を認めたが、1/3リーチと2/3リーチの間では差を認 めなかったことから、リーチ側股関節外転と骨盤のリー チ側傾斜は下方リーチにおける動作初期と動作最終域で 関与したと考える。そのため、1/3リーチから2/3リーチ における中間距離の下方リーチには胸腰部の側屈が主 な動きになると考えた。また、本研究では上肢を下垂し た状態の立位姿勢から、さらに手を下方へリーチしてい く課題であるため、上肢の運動ではなく胸腰部および股 関節の運動が主として関与したと考える。以上のことか ら、本研究における下方リーチでは一側上肢を身体側面 に沿って下方へリーチするため、胸椎部・胸腰椎移行部・ 腰椎部のリーチ側への側屈、リーチ側股関節の外転を伴 う骨盤のリーチ側傾斜が必要であったと考える。そして、 今回のリーチ保持課題では両側の足底が接地した状態で あることからリーチ側股関節外転による骨盤のリーチ側 傾斜とともに、リーチ側股関節外転角度と非リーチ側股 関節内転角度の増大により骨盤は非リーチ側へ側方移動 したと考える。実際に、下方リーチに伴い前額面上で第 5腰椎棘突起マーカーは非リーチ側へ平均4.31 ± 2.52 cm の移動を認めた。Tojimaら8)は、立位で一側上肢での腓 図 10 踵骨傾斜角度 縦軸は踵骨上端 ・ 下端を結んだ線と水平線がなす角度を踵骨傾斜角度として示し、縦軸は上側をリーチ側方向、 下側を非リーチ側方向とし、角度の増大に伴いリーチ側への傾斜を示し、角度の減少に伴い非リーチ側への傾斜 を示す。リーチ側踵骨傾斜角度は変化を認めなかった。非リーチ側踵骨傾斜角度は立位と比較して2/3リーチ ・ 膝外側部リーチ、1/3リーチと比較して膝外側部リーチ、2/3リーチと比較して膝外側部リーチで非リーチ側へ 傾斜角度の有意な増大を認めた。 図 11 リーチ側下肢の荷重変化量 リーチ側下肢の荷重量は立位と比較して1/3リーチ・2/3リーチ・ 膝外側部リーチでリーチ側へ荷重量の有意な増大を認めた。

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表 1 下方リーチ保持課題における各関節角度変化 関節・部位 運動・傾斜方向 立位 1/3 リーチ 2/3 リーチ 膝外側部リーチ 胸椎部 リーチ側側屈 180.00 (180.96–176.87) (189.43–182.53)**185.50 (192.96–186.84)**188.54 (196.45–190.52)**192.25 胸腰椎移行部 リーチ側側屈 180.00 (180.76–176.23) (190.50–183.07)**187.00 (194.38–187.62)**190.57 (196.86–191.14)**193.78 腰椎部 リーチ側側屈 180.00 (180.00–180.00)(186.34–182.23)**183.83 (191.17–186.17)**188.77 (195.64–190.40)**192.78 リーチ側股関節 外転 80.29 (81.54–78.84) (85.33–81.48)**82.83 (86.67–83.12)*85.14 (91.21–86.31)**88.85 非リーチ側股関節 内転 99.41 (98.20–101.30) (101.11–103.12)**102.09 (102.48–104.80)**103.68 (104.59–109.29)**106.57 骨盤 リーチ側傾斜 0.00 (0.93– –0.86) (3.27–0.68)**1.76 (3.98–1.97)*3.13 (6.91–3.91)**5.63 リーチ側下腿 非リーチ側傾斜 –3.28 (–5.62– –1.45) (–4.58– –0.88)–2.92 (–3.21–0.00)*–1.47 (–1.36– –2.03)**0.00 非リーチ側下腿 非リーチ側傾斜 3.30 (1.62–4.91) (2.12–5.44)4.06 (3.29–6.81)*4.94 (4.61–8.18)*6.72 リーチ側足部 回内回外 169.40 (171.96–167.31) (172.99–167.27)168.71 (174.30–166.09)170.58 (176.27–166.95)171.27 非リーチ側足部 回内回外 169.98 (173.96–167.15) (174.38–168.53)171.33 (173.71–167.26)170.14 (175.45–166.64)170.40 リーチ側踵骨 非リーチ側傾斜 93.33 (95.56–91.59) (96.71–90.79)93.37 (96.52–90.72)93.44 (97.52–90.98)94.63 非リーチ側踵骨 非リーチ側傾斜 86.86 (88.63–84.23) (89.26–85.76)88.45 (90.00–87.21)*89.26 (92.98–89.35)**90.74 単位:°.中央値(第 1 四分位 - 第 3 四分位). ** : 有意な増大を示す。* : 1 つ前のリーチ距離との比較では変化を認めないが、その他のリーチ距離では有意な増大を認 めたことを示す。※ 表中の数値については本研究の規定に基づいた方法で測定した角度を示す。足部の回内回外角度につ いては値の増大を回外、値の減少を回内とする。 図 12 各リーチ距離での下方リーチ肢位保持課題における姿勢変化 スティックピクチャーは、ImageJを用いて画像上の各マーカーの座標を同定し、散布図に線グラフを挿入することで作成した図であ り、立位姿勢からの各マーカー移動を表す。〇を立位、▲を1/3リーチ、◆を2/3リーチ、■を膝外側部リーチとした。リーチ距離の増 大に伴い胸椎部(Th1、Th6、Th12)のマーカーが大きく右側方および下方へ移動する様子を認めた。腰椎部(L1、L3、L5)と骨盤、 下肢のマーカーはわずかに非リーチ側へ移動する様子を認めた。

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骨外果までの下方リーチに伴う胸腰部側屈運動における 前額面上の腰椎骨盤リズムについて、三次元動作解析を 用いて検討している。その結果、第10胸椎以下の体幹側 屈最大角度は平均29.5° で、体幹側屈角度の増大に伴い 前額面でのバランスを維持するために同側の股関節外転 角度と対側の股関節内転角度が増大したと報告している。 これに対して、本研究での膝外側部リーチにおける胸腰 椎移行部側屈角度が14.10°、腰椎部側屈角度が12.56°で あり、合わせて26.66°と先行研究の体幹側屈最大角度の 29.5°と近い数値を示している。このことから、本研究に おける下方リーチでも胸腰部の側屈が主として関与し たと考える。また、望月9)は身体重心と支持基底面の関 連について、支持基底面内に物体の重心線が入っている ことが、物体が倒れないための物理的な絶対条件であり、 バランスを保つための立ち直り反応や平衡反応も、身体 重心を支持基底面内に留めるための運動であると述べて いる。本研究では、下方リーチ距離の増大とともに胸腰 部のリーチ側への側屈角度とリーチ側股関節外転に伴う 胸腰部と骨盤のリーチ側傾斜の増大は、頭部、体幹、上 肢の重みが支持基底面である足部に対し、リーチ側へ逸 脱しようとする動きとなる。そこで支持基底面内に身体 重心を留め、安定して下方リーチ肢位を保持するために リーチ側股関節外転角度、非リーチ側股関節内転角度が 増大するとともに、両側の下腿は非リーチ側方向へ傾斜 角度が増大し、骨盤の非リーチ側への側方移動に関与し たと考える。 つぎに、下方リーチ距離と骨盤 ・ 下肢の運動の関係性 について述べる。下方リーチ距離の増大とともにリーチ 側股関節外転角度、非リーチ側股関節内転角度が増大し、 骨盤の非リーチ側移動を認めた。しかしながら、両側の 足部回内回外角度、リーチ側の踵骨傾斜角度は被験者間 で異なる運動パターンを示し、変化を認めなかったこと から、下方リーチに伴う骨盤の非リーチ側移動は足部で はなく、股関節の動きによるものが主であると考える。 このことについて、立位での側方体重移動に関する先行 研究10, 11)では、移動側、非移動側下肢ともに健常者にお いても異なる足部の運動、筋活動を認めると報告されて いる。さらに、本研究では足角や足幅に対する厳密な規 定がなかったことで、両側の足部回内回外角度、リーチ 側踵骨の傾斜角度に変化を認めなかったと考える。また、 足部回内回外角度に変化がなく、非リーチ側の踵骨と下 腿の非リーチ側傾斜を認めたことから、非リーチ側下肢 は骨盤の非リーチ側移動に伴い踵骨、下腿を含む下肢全 体が非リーチ側へ傾斜したと考える。 つぎに、下方リーチ距離とリーチ側下肢の荷重変化量 の関係性について述べる。今回のリーチ保持課題は胸腰 部のリーチ側への側屈、リーチ側股関節外転による骨盤 のリーチ側傾斜を伴いリーチ側下肢への荷重量増大を認 めている。しかし、胸腰部のリーチ側への側屈角度はリー チ距離の増大に伴い漸増していくものの、1/3 リーチ以 上のリーチ距離間では荷重量に変化を認めなかった。一 方で、両側の下腿傾斜角度は立位と1/3 リーチでは変化 を認めないものの、1/3リーチ以上のリーチ課題で非リー チ側への傾斜を認めた。本研究における下方リーチでは、 1/3 リーチ以上のリーチでは股関節の動きを主として生 じる骨盤の非リーチ側移動と両側下腿の非リーチ側傾斜 により、胸腰部のリーチ側側屈と骨盤のリーチ側傾斜に 対して、身体重心を支持基底面内に留めるような姿勢制 御が必要になると考える。またリーチ側下腿の傾斜に関 与すると考えられるリーチ側足部の運動は、本研究にお いて、足底接地した状態でリーチ側足部回外に伴うリー チ側下腿の非リーチ側傾斜、リーチ側踵骨内側傾斜に伴 うリーチ側下腿の非リーチ側傾斜、足底接地した状態で リーチ側足部回内 ・ リーチ側踵骨内側傾斜と大きく3つ のパターンを認めた。健常者においても足部の運動には 多様性を認めるが、本研究でリーチ側下腿の傾斜角度は 1/3リーチ以上で非リーチ側へ傾斜を認めた。このことか ら、リーチ側足部の多様な運動はリーチ側下腿の非リー チ側傾斜に関与するものであると考える。そして、リー チ側下腿の非リーチ側傾斜は胸腰部のリーチ側への側屈 と骨盤傾斜のリーチ側傾斜に伴うリーチ側下肢への荷重 変化量増大に対して、身体重心を支持基底面内に留める 運動として、1/3 リーチ以上の下方リーチで必要となる 動きであると考える。 本研究の限界として、若年層の健常成人男性のみを 対象としたものであり、被験者数は16名と少ない。また、 関節角度の測定には体表面上に貼付したマーカーをラン ドマークとしており、解析にはImageJを使用しているこ とから、X線画像や三次元動作解析装置を用いて関節角 度変化を検討している研究と比較すると、結果に誤差が 生じている可能性を考慮するべきである。しかしながら、 本研究においても運動と現象の変化の傾向は確認できる と考え、下方リーチにおける一定の知見が得られたと考 える。 加えて、本研究の結果では体幹、骨盤、股関節の角度 変化において一定の傾向を認めたものの、足部と踵骨の 変化については足角や足幅に対する厳密な規定がなかっ たことで、ばらつきを認めた。そのため、本研究では下 方リーチにおける足部、踵骨の運動と胸腰部、骨盤、股 関節の肢位変化の関係性を明確にすることは困難であっ た。また、今後の課題としては足部の角度や位置を規定 すること、被験者を増やし動作パターンや下肢荷重量の 違いでデータを比較することで、リーチ保持課題におけ る足部の肢位変化に及ぼす影響について検討していきた いと考える。

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おわりに 脳血管障害片麻痺患者における下衣着脱のような一 側上肢での下方リーチではリーチ側への胸椎部・胸腰椎 移行部 ・ 腰椎部の側屈が主動作として関与し、動作初期 と動作最終域ではリーチ側股関節外転、骨盤のリーチ側 傾斜が必要となる。また下方リーチに伴う胸腰部側屈と リーチ側股関節外転による骨盤のリーチ側傾斜は、身体 重心がリーチ側へ逸脱しようとする動きとなる。そこで、 リーチ側股関節外転、非リーチ側股関節内転の動きを主 とする骨盤の非リーチ側移動と両側の下腿非リーチ側傾 斜が生じ、支持基底面内に身体重心を留めていると考え る。そのため、下方リーチ肢位保持の獲得にはリーチ側 股関節外転と非リーチ側股関節内転による非リーチへの 骨盤側方移動を評価する必要があると考える。また、非 リーチ側への骨盤側方移動に伴い生じる非リーチ側の踵 骨と両側の下腿傾斜の非リーチ側傾斜についても確認が 必要と考える。さらに今回の研究で観察された関節運動 に対する体幹筋、下肢筋の筋活動について筋電図学的検 討をおこなっていくことで、下方リーチに関する理解を 深めていきたい。 文 献 1) 池田幸司・他:座位側方移動の運動学的検討.関西理学 16: 37–42, 2016. 2) 楠 貴光・他:両側および一側上肢前方挙上保持角度変化 が体幹背面筋の活動と脊柱運動に及ぼす影響.理学療法科 学 33: 101–107, 2018. 3) 渡邊裕文・他:座位での側方への体重移動における腹斜筋 群の筋活動の特徴.理学療法科学 29: 561–564, 2014. 4) 木津彰斗・他:端座位での前方リーチ肢位保持における大 殿筋および内側・外側ハムストリングスの筋活動.関西理 学 16: 43–47, 2016. 5) 池田 匠・他:立位下方リーチ肢位保持における体幹・骨盤・ 股関節のアラインメント変化について.関西理学 19: 63–68, 2019. 6) 熊崎大輔・他:下衣着脱における身体機能について.関西 理学 8: 17–23, 2008. 7) 対馬栄輝:ビデオカメラ撮影による姿勢・動作分析への 応用— 画像特性とその問題について —.理学療法学 36: 187–191, 2009.

8) Tojima M, et al.: Three-dimensional motion analysis of lumbopelvic rhythm during lateral trunk bending. J Phys Ther Sci 28: 2342–2346, 2016. 9) 望月 久:理学療法におけるバランスの捉え方 — 概念・評 価・改善へのアプローチ—.理学療法学 32: 192–196, 2005. 10) 野口翔平・他:立位での一側下肢への側方体重移動が腰背 筋群・足部周囲筋の筋活動パターンに与える影響.リハビ リテーション医学 54: 618–626, 2017. 11) 清水貴史・他:立位での一側下肢への側方体重移動が非移 動側下肢筋の筋活動パターンに与える影響.理学療法科学 33: 295–300, 2018.

表 1 下方リーチ保持課題における各関節角度変化 関節・部位 運動・傾斜方向 立位 1/3リーチ 2/3 リーチ 膝外側部リーチ 胸椎部 リーチ側側屈 180.00  (180.96–176.87) 185.50  (189.43–182.53) ** 188.54  (192.96–186.84) ** 192.25  (196.45–190.52) ** 胸腰椎移行部 リーチ側側屈 180.00  (180.76–176.23) 187.00  (190.50–183.07) ** 190.57  (1

参照

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