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特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法 : 高松高裁平成16年12月7日判決の検討を中心に

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(1)特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法     一高松高裁平成16年12月7日判決の検討を中心に一. 鈴木 悠哉. はじめに  租税特別措置法1)66条の6及びその関連条項は,概して,一定の要件の下で, 外国法人の留保所得を内国法人の益金の額に算入する旨,定めている2)。.  本稿の目的は,本税制の下で,外国法人たる特定外国子会社等3>に生じた欠. 損の金額を,その株主等たる内国法人の損金の額に算入することの可否を検討. することである。かかる検討を行う上で,高松高等裁判所平成16年12月7日 判決4)(本判決),及び,その原審である松山地方裁判所平成16年2月10日判決5). を素材とする。後で見る通り6),ここでの当事者の一方は,内国法人たる海運. 会社であった。当該海運会社は,1983年に外国法人を設立して以来,当該外 国法人の資産,負債及び損益のすべてを自身に帰属させた上で,確定申告を行 ってきたのである。もっとも,原審及び本判決は,かかる事情を全て捨象の上,. 本税制関連条項の純然たる解釈を通じて争点に対する判断を行っている。故に そこでの結論は,本税制の下,特定外国子会社等の欠損の金額を,その株主等 たる内国法人の損金の額に算入することの可否に関する判断として,一般化が 可能である7>。.                                  47.

(2)  横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月).  本稿の意義・背景として,これ以外にも,以下の三点を指摘することができ る。.  1)本税制導入当時の解説8)も,その後の諸見解9)も,本税制の下では,上   記の損金算入はできない,としていた。.  2)このような状況下で,本判決及びその原審において,かかる損金算入の   可否が,本税制関連条項の解釈を巡って争点となった10)。.  3)原審は,本税制関連条項が,かかる損金算入を禁止していないとの判断   を示した。この判断は,上記の従来の見解と反する。.  このように,制度設立以来,人々がさしたる疑問を抱くことがなかった本税 制の一側面が,法的紛争の場において争いの対象となっているのが現状である。. 後に示すように,本判決が原審の判断を覆していることは,かかる混沌とした 現状を如実に物語っていると言えよう11}。.  本稿では,以下の順序で検討を行う。.  1)まず,本判決に至る迄の概要を,必要な範囲内で紹介した後,本稿の主   題との関連で本税制関連条項の解釈を通じ,私見を仮提示する。.  2)次に,周辺の諸説を整理の上,かかる仮の私見を検証する。ここでは,   本税制の性質論に関する議論の一端も,検討する。  その上で,次の結論を導き出したい。. 「本税制の下では,特定外国子会社等の欠損の金額を,その株主等たる内国法 人の損金の額に算入することはできない。」. 第1章 本判決の紹介と私見の仮提示. 第1節 本税制の概要  まず,本税制導入に至る迄の経緯及び本税制の構造を整理しておこう。.  かつて我が国は,いわゆる軽課税国・地域(タックス・ヘイブン)の利用に. よる税負担の不当な軽減に対し,法人税法11条で対処可能な範囲で規制を行 48.

(3)                  特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法. っていた。ただ,同規定の適用に当たっての具体的判断基準が分明でなく,課. 税執行面での安定性に問題があるとの指摘があった。このため,明文規定を整 備すべしとの要請が強まっていた12)。.  OECD13)理事会は,1977年9月21日,加盟国政府に対し,租税回避防止 のための法令上の規定を強化することを勧告した14)。同年12月20日の税制調. 査会答申には,「近年,我が国経済の国際化に伴い,いわゆるタックスヘイブ ンに子会社等を設立し,これを利用して税負担の不当な軽減を図る事例が見受 けられる。…  我が国においても…  所要の立法措置を講ずることが適当 である。」15)との記述がある。.  このような流れの中で,1978年,我が国は本税制を導入した16)。  本税制の構造は,概ね,以下の通りである17)。.  1)内国法人に係る外国法人が,その所在地国・地域において著しく低い租   税負担に服している場合,当該外国法人を特定外国子会社等とする。  2)当該特定外国子会社等が各事業年度において,適:用対象留保金額を有す.   ることが必要である。同金額は,当該特定外国子会社等の未処分所得の金   額に,対応する税額,剰余金の配当等を調整の上,算定する。.  3)当該適用対象留保金額を当該内国法人に案分することで,課税対象留保   金額を算定する。同金額は,当該特定外国子会社等の各事業年度終了日の   翌日から二月48)以内の日を含む当該内国法人の各事業年度の所得金額を算   定する際,益金の額に算入する19)。.  4)未処分所得の金額については,別途,定義がある20)。当該定義では,一   定の欠損の金額を調整することとなっている。  5)種々の適用除外がある21)。.  6)法人税法69条により,二重課税の排除を行う22>。. 49.

(4) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). 第2節 本判決に至る迄の経緯  第1款 事実  本判決における被控訴人X23)は内国法人であり、海運業を営む同族会社であ る。.  Xは1983年24),パナマ共和国にA社を設立した。.  XはAの設立以来,A名義の資産,負債及び損益のすべてがX自身に帰属す るものとして,法人税の確定申告(青色申告)をしてきた。  控訴人である税務署長Y25)は, Xに対する法人税の調査を行った。その上で. Yは,Xの1994年以降の三事業年度(係争事業年度)に関し, Xに対して法 人税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。ここでの主 たる理由は,以下の二点である。.  1)以下の二点から,係争事業年度においては,本税制の適用がある。    (1)Aは,特定外国子会社等に該当する26)。    (2)適用除外に該当しない。.  2)XはAの損失を,自身の損金の額に算入している。本税制の適用上,当   該処理を認めることはできない。.  Xはこの処分の取消を求め,不服申立27)を経て出訴した。.  第2款 判示  第1項 原審  原審は,Xの請求を認容した。曰く。「措置法66条の6は,特定外国子会社 等の所得の金額に所定の調整を加えた上でなお所得が生じていると認められる 場合に,これを一定限度で内国法人の所得の計算上,益金の額に算入する取り 扱いを規定したものにすぎず,特定外国子会社等に欠損が生じた場合にそれを 内国法人との関係でどのように取り扱うべきかということまでも規定したもの ではない」。.  かかる判示の根拠として,以下の二点を掲げている。 50.

(5)                  特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法.  1)本税制導入に至る経緯28).  2)措置法66条の6第1項の規定内容 その上で,未処分所得の金額の定義を定める措置法66条の6第2項2号に関 し,以下の判示を行っている29)。.  1)この規定が,「内国法人の所得の計算における特定外国子会社等に係る   欠損の取扱いについて定めた規定であると解釈することは,その文理に照   らし疑問である」。.  2)この規定は,「特定外国子会社等に生じた所得が内国法人の益金の額に   算入されることとの均衡上,特定外国子会社等の所得を算定するに当たり,   5年以内に生じた欠損の額を控除することを定めたものにすぎない」。.  第2項 本判決  本判決は,Yの控訴を認容した。曰く,「措置法66条の6は,特定外国子会 社等に欠損が生じた場合には,それを当該年度の内国法人の損金には算入する ことはできず,当該特定外国子会社等の未処分所得算出において控除すべきも のとして繰り返す(原文ママー筆者注)ことを強制しているものと解すべきで ある。」.  かかる判示の根拠として,以下の三点を掲げている。.  1)本税制導入に至る経緯.  2)措置法66条の6第1項の規定内容.  3)措置法66条の6第2項2号の規定内容  さらに,「課税執行の安定を図るという…  立法趣旨に鑑みれば,特定外 国子会社等に該当する以上は,適:用対象留保金額があるかないかにかかわらず,. 措置法66条の6を適用すべきである…  。…  Aは…  特定外国子会社. 等… に該当し,かつ… 適用除外の要件を満たさないと解されるので, 措置法66条の6が適用され」る,と判示した。. 51.

(6)  横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月).  第3節 判示の整理一両判決の異同点を中心に一  このように,争点に関する判断は,原審と本判決で正反対となっている。以 下,専ら両判決の判断の分かれ目に着目しつつ,判示を整理していこう。.  まず,本税制導入に至る経緯に関する言及である。原審及び本判決共に,結 論を述べる直前で,当該経緯を判断の拠り所とする旨,明文上述べている。に も関わらず,両者は正反対の結論に至っている30)。.  故に,本税制関連条項の解釈が,両判決の分水嶺である。.  第1款原審の判示  この点,原審は,措置法66条の6第1項の規定内容に依拠している。その上 で,措置法66条の6は,特定外国子会社等に所得がある場合の取扱いを定めて いるに過ぎない,と説き,欠損の場合は同規定の射程外である,とした。.  このよう’に,原審においては,措置法66条の6第1項が判断の決め手となっ. ているが故に,これに続く措置法66条の6第2項2号に対する言及は,付随的. である。かかる付随的判示で,原審は,措置法66条の6第2項2号がYの処分 を正当化しない,という。すなわち,同規定の文理は,特定外国子会社等の欠 損の金額を,その株主等たる内国法人の損金の額に算入することを禁じていな い,という解釈を示しているのである。.  第2資本判決の判示  これに対し本判決は,措置法66条の6第1項及び同66条の6第2項2号の, 双方の規定内容に依拠している。その上で,原審と正反対の結論を導いている。. すなわち,措置法66条の6の下では,特定外国子会社等の欠損の金額は,当該 特定外国子会社等において繰越さなければならない,というのである。.  本判決が依拠した二つの条項の内,いずれの規定内容及びそれに対する解釈 論が,かかる判断の決め手となっているのだろうか。.  まず,措置法66条の6第2項2号に関し,本判決は個別の解釈論を展開して いない。.  次に,本判決は,結論を述べた後で,特定外国子会社等が適用対象留保金額 52.

(7)                  特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法. を有するか否かに関わらず,措置法66条の6は適用する,と説く。かかる判示. は,「措置法66条の6第1項は,課税要件として,適用対象留保金額があるこ とを規定している」というXの主張に対する応答である31)。もっとも,かかる. 判示が,措置法66条の6第1項に関する個別の解釈論なのか否かは,必ずしも 分明でない。.  第4節 本税制関連条項の文理解釈と判示の評価一私見の仮提示一  このように,本判決は,結論に至る上で根拠とした二つの条項のそれぞれに つき,個別の解釈論を展開していない。故に,両判決の差異の原因として,具 体的条項に関する解釈論を示すことは困難である。.  以下,本節では,本稿の主題との関連で本税制関連条項の文理解釈を独自に 行い,この結果を仮⑳私見として整理することで,次章での諸説の検討に備え ることとしたい。なお,この過程で,原審及び本判決の判示に対する評価も行 う。.  第1款措置法66条の6第2項2号  まず,措置法66条の6第2項2号から検:討しよう。既に見た通り32),措置法 66条の6第2項2号は,未処分所得の金額の定義規定である33>。.  未処分所得の金額の算定は,我が国の法人税法州庁は特定外国子会社等の所 在地国・地域の税法に基づいてこれを行う34)。我が国の法人税法に照らせば, 未処分所得の金額は,法人の各事業年度の所得の金額に相当する35)。.  ここでの算定結果が欠損となった場合において,同規定は,当該欠損を特定 外国子会社等の株主等たる内国法人の損金の額に算入することを,明文で禁じ ていない。ここに,原審の示したような解釈の余地がある。もちろん,同規定 には,当該損金算入を明文で認める旨の件も存在しない。.  もっとも,未処分所得の金額の定義として,同規定は,一定期間以内「に開 始した各事業年度において生じた欠損の金額に係る調整を加えた金額をいう」 と定めている36)。この趣旨として,本税制の立法担当者による解説は,以下の.                                   53.

(8)  横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). 二点を掲げている。.  1)本税制は,特定外国子会社等に留保所得がある場合のみ,当該留保所得   を親会社たる内国法人の益金の額に算入する。故に,特定外国子会社等に   欠損が生じた場合に何らかの手当てを講じないと,酷になる37)。.  2)欠損の取扱いは,特定外国子会社等の所在する国・地域により,区々で   ある。故に,その処理について統一的に取扱うこととした38)。.  ちなみに,ここでいう「一定期間以内」は,係争事業年度においては,五年. 間であった。これは,2005年度の改正で,七年間となった。この改正は,法 人税法57条の2004年度改正を受けている39)。同条1項は,青色申告書を提出し. た事業年度の欠損金額の繰越しに関する規定である。同規定は,2004年度の 改正で,従来の五年間に替えて,七年間を繰越控除の期間としたのである。.  第2款措置法66条の6第1項  以上の定義に基づく未処分所得の金額は,措置法66条の6第1項が定める課 税対象留保金額を算定する際の,いわば出発点である40>。.  同規定の定める要件は,特定外国子会社等が,その未処分所得の金額から留 保したものとして,当該未処分所得の金額に種々の調整を加えた「適用対象留 保金額…  を有する」ことである。同規定の下では,適:用対象留保金額を内. 国法人に案分した上で課税対象留保金額を算定し,これを当該内国法人の益金 の額に算入する。.  既に見た通り41),原審は同規定を直接の根拠として,措置法66条の6の適用 を,特定外国子会社等が所得を有する場合に限定した。もっとも,かかる判示. は,措置法66条の6第1項の文理解釈を,同規定を包含する措置法66条の6全 体の適用如何に迄及ぼしている点で,論理が飛躍していると言わざるを得な い。.  一方,本判決は,適用対象留保金額の有無は,措置法66条の6の適用如何を 左右しない,と判示した。本判決は,かかる判示の根拠として,課税執行の安 定を図るという本税制の立法趣旨を掲げている。既に見た通り42),かかる判示 54.

(9)                  特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法. は,措置法66条の6第1項の文理を根拠としたXの主張に,応答することを目 的としている。同規定の解釈問題として考えた場合,かかる判示は,同規定の 文理に反すると言えよう。.  第3款 まとめ①  以上,本税制関連条項の文理解釈を試みた。  原審及び本判決の判示の評価も,同時に行った。総じて,原審及び本判決は, 共に,本税制関連条項の文理解釈を,充分に展開していない。  文理解釈の結果である仮の私見をまとめておこう。.  ユ)措置法66条の6第1項は,適用対象留保金額の存在を,要件としてい   る。. ・2)適用対象留保金額は,措置法66条の6第2項2号が定義している未処分   所得の金額を基に算定する。.  3)措置法66条の6第2項2号に基づく算定結果が欠損となった場合,当該   事業年度においては,適用対象留保金額は存在しない。.  4)措置法66条の6第1項が定める要件に従えば,当該事業年度において,   同規定の適用はない。.  5)この場合の受け皿が,措置法66条の6第2項2号である。同規定は,欠   損金額の繰越しに関する法人税法の規定と連動して改正となった。さらに   同規定は,特定外国子会社等の欠損の金額を,当該特定外国子会社等にお   いて繰越すとの取扱いを定めている。ただ,これと異なる取扱い,すなわ   ち,当該欠損の金額を,株主等たる内国法人の損金の額へ算入することを   禁止する件は,同規定には存在しない。  次章では,当該私見の適否を,諸説との比較を通じて検証することとしよう。. 第2章 諸説に基づく仮の私見の検証 本稿の主題に関し,諸説は,否定する見解43)と肯定する見解44)に分かれて.                                 55.

(10)  横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月) いる。.  以下,これら諸説の内,主たるものが掲げる論拠を,論者毎に整理する。そ の上で,これらの論拠の内,本税制の性質論に基づく論拠を検討する。最後に, 前章で掲げた仮の私見の適否を,諸説を参考に検証することとしたい。. 第1節 主たる諸説の論拠 第1款 否定説 話1項東亜由美45) 1)本税制関連条項には,内国法人の手元での損金算入を認める規定が,存  在しない。 2)本税制は,特定外国子会社に留保所得がある場合のみを対象としている。.  欠損の金額の繰越に関する規定は,かかる取扱いを前提として,欠損につ  いても一定の手当てを講じないと酷な制度になってしまうとの趣旨に基づ  いているのである。. 3)本税制の性質は,別法人であることを前提としたみなし配当課税である  とする見解も有力である。この見解の下では,もともと配当すべき所得が  存在しない場合に,本税制に基づき内国法人の手元で損金算入ができない  のは,むしろ当然である。 第2項 占部裕典46). 1)未処分所得の金額は,特定外国子会社等の所在地国・地域の法令に基づ  き算定することができるものの,その際,一定の調整が必要である。当該  法令の下で特定外国子会社等の欠損の金額を繰越しの上,損金経理してい  る場合,当該欠損の金額を加算して未処分所得の金額を算定するのである47)。. 2)措置法66条の6第2項2号が,未処分所得の金…額の算定上,欠損の金額  を繰越控除するよう定めているのは,内国法人における同様の取扱いと歩  調をあわせた結果である48)。. 3)措置法施行令39条の16は,課税対象留保金額の算定過程の詳細を定め 56.

(11)                 特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法.  ている。同規定によれば,課税対象留保金額は,特定外国子会社等の未処  分所得の金額を前提:として算定する。ここにおいて,外国法人たる特定外.  国子会社等の欠損の金額を,その株主等である内国法人の収益(あるいは  益金)から控除することを認める規定は存しない。特定外国子会社等の適  用対象留保金額の計算に至る過程においても,同様である49)。. 4)特定外国子会社等が納付した外国法人税額の調整に関する規定は,特定  外国子会社等と内国法人の所得算定が,それぞれ独立していることを前提  としている50)。. 5)以下に掲げる規定が存在せず,不合理である51)。.  (1)損金算入後の欠損の金額に関する規定(内国法人においてさらに繰越   すのか,それとも,特定外国子会社等において繰越すのか)。  (2)事業年度の相違に基づく損金算入に関する規定(課税対象留保金額は,.   特定外国子会社等の各事業年度終了日の翌日から二月以内の日を含む内   国法人の各事業年度において,当該内国法人の益金の額に算入となる)。.  (3)多数の納税者たる内国法人が存在する場合,欠損の金額の配分方法に   関する規定。. 第2三二定説一中里実52) 1)本税制は,その制定以前から存在した法人税法11条の規定を,明確に  した。本税制の適用により,タックスヘイブン子会社を支店と同様に扱  う。. 2)本税制は,租税負担の不当な軽減の防止を目的としており,懲罰的な課  税ではない53)。故に租税負担が,タックスヘイブン子会社を用いなかった  場合よりも増加してはならない54)。. 57.

(12) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月).  第2節 本税制の性質論に基づく議論の妥当性  東亜由美の掲げる論拠の三番目及び中里実の掲げる論拠の一番目は,本税制 の法的性質に基づく。.  前者は,本税制がいわゆるみなし配当課税であるとした場合,内国法人の手 元での欠損の金額の損金算入は,当然否認となる,と説く55)。これに対し後者 は,本税制は法人税法11条の延長線上にあり56),本税制の下では,特定外国子. 会社等をその株主等たる内国法人の支店と同視するのである,と説く。このこ とから後者は,本税制の下では,かかる欠損の金額を,内国法人の手元で損金 算入することができる,と結論付けるのである。.  ここで検討すべきは,本税制の法的性質に関する議論の中身である。所論は 一般に,特定外国子会社等という独立した人格を有する外国法人との関連で, 本税制関連条項がどのような擬制を行っているのかを議論している57)。すなわ. ち,本税制関連条項の文理解釈で本税制の構造を導き出し,これを前提に,外. 国法人の留保所得に対し課税権を行使する態様を法的に把握する試みが,議論 の神髄である。本税制の性質論に基づき,本税制関連条項の解釈を行うのでは ない58)。.  第3節 仮の私見の検証  前章で示した仮の私見は,本稿の主題との関連で,本税制関連条項の文理解 釈を行った結果であった。以下,当該私見に至る際に文理解釈の対象とした措. 置法66条の6第1項及び同第2項2号を軸に,本章前節迄で整理・検討した諸 説に照らし,当該私見の検証を行いたい。.  第1款措置法66条の6第1項  仮の私見においては,この規定が,適用対象留保金額の存在を要件としてい ることを出発点とした。  諸説は,この規定に関し,直接言及していない59)。.  もっとも,本税制の下では,特定外国子会社等が留保所得を有する場合のみ, 58.

(13)                  特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法. 当該留保所得が株主等たる内国法人の益金の額に算入となる。立法担当者によ. るこの説明60>は,措置法66条の6第2項2号が定める欠損の金額の取扱いと関. 連していた。かかる制度趣旨は,措置法66条の6第1項の文理から読みとるこ とができる。この規定は,特定外国子会社等が「適用対象留保金額…  を有 する」ことを,その適用要件としているのである61)。.  第2款措置法66条の6第2項2号  この規定は,特定外国子会社等の欠損の金額を,その株主等たる内国法人の 損金の額に算入することを禁止しているのか。それとも,かかる損金算入を許. 容しているのか。仮の私見においては,措置法66条の6第1項との関係及び法 人税法上の欠損金額の繰越しに関する規定との結び付き62)を根拠に,前者の見. 解に対する一定の理解を示した。一方で,この規定が,かかる損金算入を禁止 する旨の明文の件を有さない63)ことを指摘し,後者の見解も成り立ち得る,と した。.  占部裕典の掲げる論拠の五番目は,種々の不合理64)を根拠に,この規定が, かかる損金算入を禁止しているとの解釈論を,結果的に支持している65)。.  これに加え,占部裕典の掲げる論拠の一番目は,特定外国子会社等の所在地 国・地域の法令に基づき,その欠損の金額を処理した場合の取扱いに触れてい る。すなわち,法人税法57条,58条又は59条66)に相当する所在地国・地域の. 法令に基づき,欠損の金額を繰越控除した場合である。この場合の欠損の金額 は,措置法66条の6第2項2号関連の施行令67)に基づき,未処分所得の金額の. 算定過程で,加算となる。措置法66条の6第2項2号が定める欠損の金額の繰 越に関しては,本税制の下,当該欠損の金額を統一的に取扱うとの趣旨の説明 があった68)。ここでいう欠損の金額の加算は,かかる統一的取扱いの一環であ るという69)。. 59.

(14) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月).  第3款 まとめ②  以上,前章で示した仮の私見を,本章で整理・検討対象とした諸説との対比 で検証してきた70)。結果,措置法66条の6第2項2号に関する解釈を,一部, 修正するのが相当であると判断した。.  当該私見は,措置法66条の6第2項2号が,特定外国子会社等の欠損の金額 に関し,強制的取扱いを定めていないとの立場に立っていた。ただ,この規定 が,かかる欠損の金額に関し,特定外国子会社等における繰越控除を強制して いると解すべき要素が,諸説の整理・検討の結果,明かになった。故に,当該 規定は,かかる欠損の金額につき,特定外国子会社等における繰越を強制して いるとの解釈を採用したい。. おわりに  本稿は,本税制の下で,特定外国子会社等に生じた欠損の金額を,株主等た る内国法人の損金の額に算入することの可否を検討した。かかる検討の上で, 本判決及びその原審を題材とし,周辺の諸説をも参考とした。  以下,本稿の冒頭で示した結論を敷街の上,本稿の結びとしたい。. 「本税制の下では,特定外国子会社等の欠損の金額を,その株主等たる内国法 人の損金の額に算入することはできない。」.  1)措置法66条の6第1項の文理は,特定外国子会社等が適用対象留保金額   を有することを,その適用の要件としている。.  2)適用対象留保金額は,未処分所得の金額を基に算定する。故に未処分所.   得の金額が欠損となった場合,措置法66条の6第1項は適:用とはならな   い0.  3)翻って当該欠損は,未処分所得の金額の定義に関する措置法66条の6第   2項2号に基づき,一定の調整の対象となる。当該調整,すなわち,特定   外国子会社等における繰越は,強制的であると解してよかろう71)。 60.

(15) 特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法. 4)この意味で私見は,本判決の結論に賛成する。ただ,理論構成に関して  は,原審及び本判決共に,本税制関連条項の文理を充分に踏まえていると  は言い難く,首肯できない。 5)本税制の性質論に関する議論は,本税制の構造を前提とした議論である72)。. 故に,本税制関連条項の文理解釈には影響を与えない。この点,原審及び 本判決の結論は,特定外国子会社等の欠損の金額の取扱いという点から, 本税制の性質論を左右すると言えよう73)。. (了). 1). 以下,措置法という。. 2). 以下,措置法66条の6及びこれと関連する条項が定めている制度を,本税制という。本税制 の概要は,本稿第1章第1節を参照のこと。なお,従来,我が国においては,本税制に対し, 「タックス・ヘイブン対策税制」及びこれに類する呼称を用いていた。かかる呼称は,近時,. 変化している。詳細は,川端康之ほか「国際課税上の諸問題」中島正義編『第53回租税研 究大会記録』184頁[杉江発言](社団法人日本租税研究協会,2002)及び川田剛ぽか「国際 課税をめぐる諸問題」中島正義編『第54回租税研究大会記録』79頁[浅川発言](社団法人. 日本租税研究協会,2002)を参照。なお,財団法人納税協会連合会『平成14年版租税条約 関係法規集』1035頁以下(清文社,2002)は,同版より,従来の「タックス・ヘイブン税制」 に替えて,「CFC税制(特定外国子会社合算課税制度)」という呼称を用いている。 3). 措置法66条の6第1項。. 4). 訟月52巻2号667頁。. 5). 響町52巻2号690頁。. 6). 本稿第1章第2節第1款。. 7). この点,佐藤栄一「タックスヘイブン対策税制の実務問題」二三54巻5号148頁(2006)は, 本判決の射程として,「通常のケースでタックスヘイブン子会社の欠損を合算できるか否か というものというより、は,むしろ…  納税者がタックスヘイブン税制適用以前の問題だと. 考えて合算処理したとしても,欠損の合算となる場合にはタックスヘイブン対策税制がその 合算を禁止するということを示しているものである。」と述べている。ただ,本判決におい. て,外国法人の設立は1983年,すなわち,本税制導入後である。本稿第1章第1節及び第1 章第2節第1款も参照。 8). 高橋元監修『タックス・ヘイブン対策税制の解説』145頁(清文社,1979)。. 61.

(16) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月) 9)我が国を含む六箇国の制度比較として,占部裕典『国際的企業課税法の研究』70頁(信山社,   1998)。なお,∫θθαZso B. ARNoLD, THE TAxATIoN OF CoNTRoLLED FoREIGN CoRPoRATIoNs:AN.   INTERNArloNAL CoMPARIsoN 495,497(1986)。OECD(経済協力開発機構i)加盟国に関して   は,OECD, CONTROLLED FOREIGN COMPANY LEGIs飴TION 77(1996).その他,河原茂晴ほか.   「国際課税をめぐる諸問題」中島正義編『第49回租税研究大会記録』138頁[白鳥発言](社   団法人日本租税研究協会,1998)及び宮武敏夫ほか「国際課税をめぐる諸問題」中島正義編   『第51回租税研究大会記録』204頁[榎発言](社団法人日本租税研究協会,2000)も,併せ   て参照。. 10)岡田大樹「素謡」二月52巻2号672頁は,本判決は,かかる争点に関する初めての判断であ   る,としている。. 11)本稿執筆時点において,本判決は,上告及び上告受理申立て中である。               ら 12)以上,高橋・前掲注8)82頁。なお,武田・後掲注35)4984頁も参照。. 13)高橋・前掲注8)76頁は,我が国における本税制の導入に最も関連が深いのは,OECDの租   税委員会である,としている。. 14)OECD, RECOMMENDArION OF THE COUNCIL ON TAX AVOIDANCE AND EVASION,   短ρ万〃’θ4伽OECD, INTERNArlONAL TAX AVOIDANCE AND EVASION 15(1987).この仮.   訳として,高橋・前掲注8)72頁以下。 15)高橋・前掲注8)251頁に再録。 16)高橋・前掲注8)81頁。 17)特に断りのない限り,以下では,本判決の係争事業年度における本税制を前提とする。なお,.   本判決の係争事業年度と本稿執筆時点とで,本税制の基本構造に大きな変更はない。. 18)高橋・前掲注8)94頁は,この二月間いう期間は,株主が資料を入手し申告するために最小   限必要な余裕であり,所得の株主への実質的な帰属の時点は子会社等の事業年度末と考えて   よい,としている。. 19)以上,措置法60条の6第1項。. 20)措置法66条の6第2項2号並びに同法施行令39条の15第1項及び第2項。 21)措置法66条の6第4項。 22)措置法66条の7。 23)原審における原告である。 24)本税制の導入後である。. 25)原審における被告である。. 26)この点に関し,原審においては争いはないものの,本判決においては争いがある。. 27)審査請求(国税不服審判所平成13年12月21日裁決・国税不服審判所裁決事例集62号293頁)   においては,かかる損金算入の可否が,本税制と法人税法11条との適用関係を巡って争点   となっている。国税不服審判所は,法人税法11条と本税制とは,それぞれ独立した規定と   して存在するものの,両者の適用が競合する場合には,まず,法人税法の特別法である本税   制を適用することになる,と判断した。その上で,直ちに,本税制の下ではかかる損金算入   が不可能である,としている。かかる裁決の結論を妥当とするものとして,植野禎仁「判批」 62.

(17) 特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法.   際商32巻4号519頁(2004)。なお,審査請求においては,Aが特定外国子会社等に該当する   か否かに関しても,争いがある。. 28)本稿本章第1節を参照. 29)なお,措置法66条の6第2項2号と法人税法22条3項との関連では,概ね以下の判示を行っ            \   ているQ   (1)特定外国子会社等と,その株主等たる内国法人とは,法人格を異にする。.   (2)故に,法人税法22条3項の下では,特定外国子会社等の欠損の金額は,その株主等たる     内国法人の損金の額に算入することはできない。.   (3)措置法66条の6第2項2号は,上記法人税法の規定に言う「別段の定め」に当たらない。. 30)この点,占部ほか・後二三46)317頁に掲載の「研究者の視点」は,本税制をどのように仕   組むかは,本税制の趣旨や立法目的との関係で,立法裁量に属する,と説く。占部・後掲注   48)215頁も参照。. 31)既に見た通り,XはAの設立以来, A名義の資産,負債及び損益のり切をX自身に帰属させ   た上で,申告を行ってきた。このため,A固有の所得が,そもそも存在しないのではないか,.   というのがここでのXの主張であり,当該主張に対する応答が,ここで取り上げた判示であ   る。. 32)本稿本章第1節。. 33)Xは原審及び本判決を通じて,同規定は未処分所得の金額の計算規定’に過ぎない,と主張し.   た。これに対しYは,原審において,同規定は,国税通則法24条の「国税に関する法律の規   定」である,と主張している。. 34)措置法施行令39条の15第1項及び第2項。 35)武田昌輔編著『DHCコンメンタール法人税法9』5031頁(第一法規)。. 36)措置法施行令39条の15第5項も参照。 37)高橋・前掲注8)153頁。なお,武田・前掲注35)5039頁も参照。この点,原審にも類似の   判示がある。. 38)高橋・前掲注8)153頁以下。. 39)住三二ほか『平成17年版改正税法のすべて』302頁(財団法人大蔵財務協会,2005)。 40)本稿本章第1節。. 41)本稿本章第2節第2款。 42)本稿本章第3節第2款。 43)以下,否定説という。詳細は以下の通りである。.   (1)一般論として,滝口博:志ほか著『判例・裁決からみた海外取引をめぐる税務』560頁以     下(2006)。なお,武田昌輔「タックス・ヘイブン対策一税制の概要と問題点一」国際.     税務1巻1号13頁(1981)は,措置法施行令39条の14本文かつこ書を理由として掲げて     いる。.   (2)原審に対する評釈として,平石雄一郎「判批」ジュリ1279号166頁(2004)。.   (3)本判決に言及するものとして,岡田・前掲注10)671頁,佐藤・前掲注7)148頁及び山     下学「判批」税弘53巻8号87頁(2005)。 63.

(18) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月). 44)以下,肯定説という。井上康一「二三」税務事例36巻9号38頁(2004)及び松井孝之「判   批」海運920号55頁(2004)等,いずれも原審に対する評釈である。詳細は以下の通りであ   る。.   (1)占部ほか・後掲注46)332頁に掲載の「税理士の視点」は,次のように説く。.    ①特定外国子会社において所得が生じ留保した場合には,親会社において課税する。.    ②これに対し,損失を生じたときには,それを繰越し,将来の特定外国子会社の所得の金    額からのみ控除できるというのは,当該親会社(内国法人)にとっては酷な取扱いであ    る。.     もっとも,同314頁の「税理士:通例の対応」は,措置法の規定が欠損の金額の繰越を    定めているので,実務上,当該欠損の金額は内国法人の手元で損金算入できない,として    いる。.   (2)川田剛「判批」国際税務24巻12号27頁(2004)は,措置法の規定を更正処分の根拠と     したがった課税当局の気持ちも分からないではない,とする・その上で,Xの処理を否     認するというのであれば,原審の言う通り,法人税法本法によるべきであった,と説く。’.     なお,荻野豊「判批」TKC税研情報13巻3号81頁(2004)も,同様の観点から,原審     の判示を理解しているようである。前掲注33)で示したXの主張も参照。 45)東亜由美「タックス・ヘイブン課税の趣旨と子会社の従属性をめぐる問題点」小川英明ほか   編『新・裁判実務大系租税争訟』453頁以下(青林書院,2005)。これは,検討の上で,原審   を題材としている。. 46)ここで取り上げる占部裕典ほか「判批」三木義一ほか編著『[租税]判例分析ファイルH法   人税編』314頁以下(税務経理協会,2006)に掲載の「研究者の視点」は,原審に対する評.   釈である。なお,同325頁以下に掲載の「研究者の視点」は,措置法66条の6第2項2号の   みを根拠に,特定外国子会社等の欠損の金額を,内国法人の手元で損金算入することを禁ず   ることはできない,とする。ただ,これに続けて,同規定の背景には,そもそも「内国法人」   と「外国法人である特定外国子会社等」は別法人格で,両者の間での損益通算は特別の規定   が積極的になければできないとの立場が存在する,という。その上で,結果的には,両者の   間で欠損の金額の通算はできないであろう,と説く。 47)占部ほか・前掲注46)321頁に掲載の「研究者の視点」。. 48)占部ほか・前掲注46)321頁以下に掲載の「研究者の視点」。なお,占部裕典「タックス・   ヘイブン税制と租税条約の抵触関係について」同法58巻2号241頁以下(2006)も参照。 49)占部ほか・前掲注46)323頁以下に掲載の「研究者の視点」。 50)占部ほか・前掲注46)327頁以下に掲載の「研究者の視点」。 51)占部ほか・前掲注46)327頁以下に掲載の「研究者の視点」。. 52)中里実「タックスヘイブン対策税制と赤字子会社」税研21巻2号72頁以下(2005)。これは,   検討の上で,本判決を題材としている。中里実「アメリカ租税法の研究動向と月本における.   最近の課税問題」租税研究673号155頁(2005)も参照。なお,中里実『デフレ下の法人課   税改革』129頁以下(有斐閣,2003)は,現行制度においては,欠損の金額は繰越控除の対   象であるとしつつ,同様の理由付けにより,立法論を展開していた。 64.

(19) 特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法 53)中里・前掲注52)「赤字子会社」74頁は,本税制上,外国税額控除が設けてあるのも,本税   制の適用の結果が懲罰的にならないよう配慮する趣旨である,としている。. 54)中里実「政策税制の政策目的に沿った限定解釈」税研22巻2号77頁以下(2006)は,政策   目的の課税規定の目的的解釈という立場から,議論を展開している。その上で,海外子会社   が赤字である場合は本税制の適用はなく,本法である法人税法に基づき,当該赤字を処理す.   る余地がある,と説く。この点に関しては,中里・前掲注52)「赤字子会社」74頁以下も参   照。占部ほか・前掲注46)329頁に掲載の「研究者の視点」は,かかる解釈論を批判してい   るようである。. 55)占部ほか・前掲注46)314頁に掲載の「税理士:通例の対応」も参照のこと。なお,課税当   局による同様の説明として,宮武ほか・前掲注9)206頁[伊藤発言]。. 56)もっとも,占部・前掲注48)209頁以下は次のように述べて,これに反論している。   (1)タックス・ヘイブンの利用等による租税回避につき,規制立法が存在しない状況下では,.    法人税法11条の適用で対応可能な場面のみ規制していたに過ぎない。   (2)措置法66条の6は,外国法人の未処分所得が,当該外国法人の株主たる内国法人に税法.    的に帰属したとみなす。このような現実の法律関係から離れた取扱いは,私法上の真実    の法律関係に照らして隠蔽・仮装が存しない場合において,法人税法11条の下では許容.    できない6 57)所論は以下の通りである。.   (1)木村弘之亮『国際税法』918頁以下(成文堂,2000)は,「措置法40条の4∼40条の6,.    66条の6∼66条の9をひとつの統一的な連関のある体系にとどのえる試論」と称してい     る。.   (2)占部・前掲注9)70頁は,内国法人と外国法人との間で欠損の通算ができないことを捉     え,我が国を含む六箇国の制度が「みなし配当理論」によっている,と説く。この「み    なし配当理論」は,ARNoLD,∫砂駕note 9, at 497における“deemed dividend theory”の.    和訳である。ここでは,外国法人の所得を,当該外国法人の株主たる内国法人が配当と     して受領した,と考えるのである。なお,占部・前掲注48)244頁も,我が国の制度は,    関係規定の算定構造からして,みなし配当理論を前提としている,としている。   (3)金子宏『租税法第10版』430頁(弘文堂,2005)は,‘本税制の構i造を説明した後に,「タ.     ックス・ヘイブン・コーポレーションの留保利益を株主に配当したものとみなして課    税」する,と本税制の趣旨・目的を説いた。もっとも,同書は,次の版において,同様     に本税制の構造を説明した後で,「タックス・ヘイブン・コーポレーションの課税対象.    留保金額相当額を株主であるわが国の内国法人等の擬i制収益ないし擬制配当として課    税」する,と説く。金子宏『租税法第11版』445頁(弘文堂,2006)。   (4)吉川保弘「外国税額控除制度とタックス・ヘイブン対策税制をめぐる諸問題」税務大学.    校論叢17号148頁以下(1986)は,赤字部分の損益通算をしない点等を指摘して,みな     し配当課税と考える余地もある,としている(もっとも同149頁は,所得の帰属是正と    考えたい,としている)。.   (5)佐藤正勝「タックス・ヘイブン対策税制」日税研論集33号128頁以下(1995)も,ここ 65.

(20) 横浜国際経済法学第15巻第3号(2007年3月).    まで見てきたのと類似の態様で議論を展開している。もっとも,同127頁以下は,逆の    態様で議論を展開している6 58)中里実の掲げる論拠の二番目は,本税制が懲罰的性格を有さないことを強調している。この   点,前掲注30)において,占部裕典が,立法裁量を問題としていることに留意すべきであろ   う。なお,佐藤・前掲注7)148頁に,具体例に基づく解説がある。 59)占部裕典の掲げる論拠の三番目は,適用対象留保金額及び課税対象留保金額の算定に係る政.   令を根拠としている。当該政令(措置法施行令39条の16第2項)は,措置法66条の6第1項   関連の施行令である。. 60).本稿第1章第4節第1款。東亜由美の掲げる論拠の二番目も,かかる説明に依拠している。   東・前掲注45)454頁。. 61)本稿第1章第1節。 62)占部裕典の掲げる論拠の二番目も参照。. 63)これとは逆の意味で,明文の件の欠如を指摘するのが,東亜由美の掲げる論拠の二番目であ   る。. 64)もっとも,・ここで言う不合理の二番目は,前掲注18)との関連で考慮する必要があろう。そ   こで見た通り,特定外国子会社等の事業年度末を,その留保所得の益金算入時と考えて良い   のである。仮に欠損の金額の損金算入を考慮する場合においても,留保所得の益金算入と同   様に考えて良いのではないか。 65)前掲注46)も参照。. 66)いずれも,内国法人の欠損金額の繰越しに関する規定である。なお,措置法(法人税関係)   通達66−6−10(1)は,未処分所得の金額の算定において,「青色申告書を提出する法人である.   ことを要件として適用することとされている規定については,当該特定外国子会社等は当該   要件を満すものとして当該規定の例に準じて計算する。」としている。この点,占部ほか・   前掲注46)322頁に掲載の「研究者の視点」も参照。. 67)措置法施行令39条の15第2項9号。 68)本稿第1章第4節第1款。 69)高橋・前掲注8)152頁。武田・前掲注35)5035頁も参照。 70)なお,占部裕典の掲げる論拠の四番目は,前掲注46)との関連で考慮する必要があろう。中   里・前掲注52)「赤字子会社」73頁以下も併せて参照。ちなみに,高橋・前掲注8)168頁は,.   措置法66条の7が定める二重課税の調整措置は,直接税額控除と間接税額控除のいずれでも   ない,としている。この点,藤井保憲「タックス・ヘイブン対策税制の問題点」水野忠恒編   著『二心版国際課税の理論と課題』134頁(税務経理協会,2005)も参照。. 71)金子・前掲注57)第11版445頁は,本判決を引いて,本税制の下では,「特定外国子会   社…  の欠損金を親会社の所得と=通算することはできないと解すべきであろう」としてい   る。. 72)なお,川端康之「平成17年度税制改正における国際課税の論点」税弘53巻6号10頁(2005)   は,「立法当初の『税負担の不当な減少』というニュアンス」を根拠に,「留保所得をみなし   配当として持分権者に課税する,という理解」を支持している。 66.

(21)                     特定外国子会社等の欠損の金額と租税特別措置法 73)本税制の性質論に関する考慮要素として,例えば,.吉川・前掲注57)148頁以下を参照。. ※ 本稿は,平成17年度及び平成18年度の科学研究費補助金(特別研究員奨励費)の交付に基   づく研究成果の一部である。.   なお,校正時に,細川健「タックスヘイブン対策税制の論点一高松高等裁判所平成16年12   月7日判決(双輝汽船事件)を題材に一」税弘55巻2号167頁以下(2007)に接した。. 67.

(22)

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