滴下熱分解法による酸化物高温超伝導材料の合成と熱力学的性質
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(2) 70. よる広域放射能汚染などである。. 将来,増大していくエネルギー需要を環境と調和し た形でみたして行くためには,在来一次エネルギーの. ←. waste gas. 一. surroundlng. 変換,輸送システムの高効率化を計り,化石燃料消費. gas. を増加させないで供給のみを増して行く方策をたてる ことと併せて,太陽,風力,波力などの自然エネルギー を基幹エネルギーに取り込んで行くことが必要になる。. 6. 然るに,自然エネルギーの供給は本質的に季節,気 象,時刻,地域などに依存する。従って,自然エネル. ’. 8. ギーを基幹エネルギーとして取り込むためには,需要. 3. との時間的ギャップを埋める年のオーダーでのバッファ,. 8. 3. き. 触. 即ち大規模な電力貯蔵システムと,地理的ギャップを. roller pu田P. 鳶 右. ま. 埋める大規模な電力輸送システムが必要になる。. 超伝導現象は原理的に大電力の高効率輸送と,開発 途上にある新型蓄電池システムの達成するであろう規 模をはるかに凌ぐ大規模な高効率電力貯蔵に利用する. ことが可能である。1986年から相次いで報告された. nitrate SOlution mlxtures. 高温超電導酸化物は将来創造されなければならない環 境適合型エネルギーシステムの中で決め手の材料とし ての期待がある。. Fig.1 ‘Drip Pyrolysis’method. 筆者らは,このような長期展望の基に,高温超電導 酸化物について,その化学的,熱力学的側面に関する. 一定のκの範囲で連続固溶する超伝導体La2_、Sr.. 基礎研究を始めている。本町は,その第一歩となるも,. CuO4などでは, Laサイトを置換したSrの濃度が試. ので,昭和63年度教育研究特別研究費「高温超伝導材. 料中で均一になっていないと,試料各部の示す超伝導. 料の開発と応用技術の研究」の補助を受け,分担課題. 転移澱度や物性が少しずつ異なるため,正確な転移温. 「高温超伝導材料の合成法及び物性と熱力学的性質」. 度の決定や物性測定ができない。酸化物試料合成法に. として行われた研究の結果の概要である。代表的高温. は,粉末金属を混合して焼成するセラミックス法,金. 超伝導酸化物として,最初に発見された30K級超伝. 属塩の水溶液からの共沈法,ゾルゲル法などの様々な. 導酸化物La2_エSr謁CuO4(2−1−4相)1・2)と93Kに. 方法があるが,セラミックス法では,試料の均一性に,. 超伝導転移点を持つYBa2Cu307_d(1−2−3相)3). また共沈法では全てのイオンを完全に沈澱させるため. を取り上げ,均質な試料をいかにして低温で簡便に合. の条件設定が難しいなど,それぞれの難点を持ってい. 成するか,低温合成を可能にする要因は何かを明らか. る。. にし,また超伝導酸化物の安定性を決めている分解圧. 筆者らは,生成酸化物中の金属イオン比を所定比に. や,物性を決める酸素不定比性の大きさを定めること. 保ち,更に均一性も保誼される方法として,従来から. を目的とした。. 滴下熱分解法を用い,各種ペロブスカイト型酸化物を. 2. 滴下熱分解法:均質試料の低温合成の 試み. 合成してきだ)。この方法は,所定比の金属学を含む 水溶液を加熱した石英管内に滴下することにより,瞬 時に目的酸化物を得ようというもので,本研究ではこ. 2,1.滴下熱分解法の位置付け. の手法によりしa2_、SrエCuO4とYBa2Cu307の合. 高潟超伝導酸化物のように2種以上の金属を含み,. 成を試みることとした。. 各金属の入る格子位置が正確に定まった化合物を合成 する際には,金属成分の地を正確に合わせることが必. 2.2. 実験法. 要になる。例えば,La2CuO4では,原料中のLaサ. Fig.1に用いた装置の概要を示す.各金属の硝酸. イト金属とCuサイト金属の比が2:1からずれると,. 塩水溶液(約0,1mol/1)を調製し,重量分析により. 余剰金属成分の酸化物が不純物として試料中に取り残. 各水溶液のfactorを決めた後,所定金属比になるよ. され,生成試料の物性に多大な影響を与える。また,. うに各液を混合する。その後,所定温度に保った石英.
(3) 71. 管に滴下する。系には任意の雰囲気ガス(窒素,空気,. ると石英管温度700℃において単一相1−2−3化合物. 酸素など)を流通させる。充分に加熱された石英壁に. が生成するが,この温度は単独の硝酸バリウムが完全. 触れた液滴はほぼ瞬時に水分の蒸発と熱分解を起こし,. に熱分解する温度より100℃以上低い。しかし,滴下. 雰囲気により酸化されて酸化物に変わる。系からの廃. 熱分解がきわめて迅速な反応であるため,なぜ単独の. ガスはNOXを含むため,廃ガスはアルカリ及び水で. 硝酸塩より低い温度で混合硝酸塩が分解し,分解と同. 処理後大気中に放出している。この方法によれば,各. 時に単独の酸化物ではなく1−2−3化合物が生成する. 液滴(0.05ml程度)ごとに含まれる金属の組成比が保. のかを,その場観察で解明することはきわめて困難で. たれるので,試料全体にわたるマクロな組成変動は生. ある。本研究では,各金属の硝酸塩と,Y:Ba:Cu置. じない。. 1:2:3の硝酸塩混合水溶液を真空乾燥器で乾燥固化. した混合硝酸塩について,熱分解挙動をTG(熱重量 2.3.結果. 分析)一DSC(示差走査熱量測定)により追跡した。. 種々の温度,雰囲気の条件下溝下熱分解法によって. 滴下法による迅速な分解挙動は,TG−DSCの昇華. 試料合成を試みた結果,La2繋SrエCuO4系では,石. 速度を速くしたときの測定結果の変化から推定した。. 英管温度650℃,750℃,空気雰囲気中で滴下した試. 測定は装置の都合上,流通酸素雰囲気で行った。. 料は,粉末X線回折の結果,試料の大部分を2−1−4. 相が占めるものの,一部La含05及び1−1−3型のペ ロブスカイト相が残留した。この試料を乳鉢で粉砕混. 3.2.結果. Fig.2は各金属硝酸塩とその混合硝酸塩の昇温速度. 合した後,1200℃で4h焼成したところ,粉末X線回. 30℃/minによる熱分解のTG−DSCダイアグラム. 折で観測する限りでは不純物の無い単一相2−1−4化. である。硝酸銅のDSCダイアグラムは150℃及び. 合物になった。. 250℃付近に鋭い吸熱ピークを示す。TGおよび粉末. YBa2 Cu307_ゴ系については,窒素(酸素分圧. X線回折のデータを総合した結果,硝酸銅Cu(NO3)2・. P(02);/0 2−!0一3atm),空気,酸素の3雰囲気. nH2Gは15G℃付近で脱水し, C恥(OH)3NO3にな. で滴下した。滴下温度650℃以下で作製した場合,粉. る。ついで250℃付近でCu2(OH)3NO3がCuOに. 末X線回折の結果,1−2−3化合物は生成せず,. 分解すると結論された。同様な検討の結果,硝酸イッ. CuO, Cu2Y205,及び硝酸バリウム(窒素中で滴下. トリウムY(NO3)、・nH,0は300℃以下で数段の脱. した場合)あるいは炭酸バリウム(空気中で滴下した. 水反応によりY(NO3)3になり,約400℃でYONO3. 場合)が主に生成した。石英温度700−900℃の窒素. に,更に500℃付近でY203になる。硝酸バリウム. 中,空気中で滴下した試料は1−2−3化合物が主成分. Ba(NO、)2は590℃付近で融解した後,750℃付近. であった。これらの試料はいずれも900℃の空気中で. から徐々に分解してBaOになって行く。. アニールすることにより,ほぼ単一相の1−2−3化合. 混合硝酸塩の熱分解ダイアグラムは,各硝酸塩の熱. 物となった。しかし,酸素ガス雰囲気で滴下した試料. 分解ダイアグラムを併せたものとは異なっている。. は緑色のY2BaCuO,相などの混合物になり,目的物. DSCによれば硝酸銅の分解に対応する150℃と250. である1−2−3相は殆ど生成しなかった。また,酸素. ℃のピーク及び硝酸バリウムの融解に対応する590℃. 中で滴下して得られた混合物は,900−950℃の空気. のピークは各硝酸塩単独のものとほぼ同様な位置に認. 中で再処理しても1−2−3相にはならなかった。. められるが,硝酸バリウムの分解に対応するピークの. 滴下熱分解の結果から,1−2−3相の形成は,銅の. 温度が50℃程下がり,硝酸イットリウムの分解に対. 硝酸塩とイットリウムの硝酸塩が600℃以下で共熱分. 応するピークは認められない。TGによれば混合硝酸. 解し,Cu2Y205とCuOのなった後,700℃以上で. 塩は250℃と650℃付近の2段階で分解する。DSC. 硝酸バリウムと共熱分解して1−2−3相を形成するも. ダイアグラムから各ピークのエネルギーを計算した結. のと推定される。. 果,混合硝酸塩の250℃に於けるCu,590,650℃に. 3. TG−DSCによる低温合成の機構の 検討. おけるBa各1モル当りに換算1した吸熱量は, Cu,. Baの各硝酸塩単独の場合の1モル当りの吸熱量の倍 程度の大きさになっている。. 3.1.滴下熱分解の反応機構をいかにして検証する. これらの知見から,混合硝酸塩では,脱水反応の後,. か1考え方と実験法. 先ず250℃付近で,硝酸銅に硝酸イットリウムなどの. Y,Ba, Cuの混合硝酸塩水溶液を窒素中で滴下す. 他の硝酸塩が固溶した硝酸塩固溶体が分解し,次いで.
(4) 72. 轟 〆lrl. 1Y−2Ba−3Cu nitrates. 二こト. /. T. 、1\. t \ y. ll l 0. 20. 20. u. YB. 難’. の 10門. 1・黙一. 焉. 20 ▽30. o. 0. 、\、 YBC \ ビー4 》 ぐ. 一8. TG \. c・\ \._____,_曹. ・一. 一4 蜜. 7 』 10§. 書 O. 102030. ・叙/. 》. ぐ一8 in l atrn O2 gas. in 1・加02 gas. Fig.2. iG 黶D. 5。c/田in. 30。C/mjn 一12. ゙\ 叩馬〃. ’一一. 1’,6、’ 8 博 〃 ! ミ. Ba. 5。C/藺n. 一12. 0. 0 800 t/。C. t/。C Fig.3. TG−DSC diagram for Cu, Y, Ba nitrates and the 1:2:3rnixtures. Initial sample weight was 10mg.. 炭酸バ1」ウムを主体とする硝酸塩固溶体が590℃付近. 200 400 600 00. TG−DSC diagram of the 1:2=3 mixtures with different temperature scanning rate. Initial sample wei− ght was 10mg.. 解質として電池こ空気,R/YSZ/Pt,選管試料室]. で溶解する。そして250℃に於ける分解生成物も含め. を構成し,この電池の封管試料室町電極を負にして通. て全体が溶融した形になり,650℃付近での最終的な. 電すると,酸化物イオンが封管試料室から空気極重へ. 熱分解と同時にYBa2Cu307_ゴが生成するものと考. 流れ,通電電気量に癒じた酸素が封管試料室中の試料. えられる。硝酸塩固溶体の形成による共熱分解が低温. から引き抜かれる。通電後の電池の起電力Eから,. でYBa2Cu307−dが生成する主要因である。. 封管内の試料の平衡酸素分圧P(02)がNernstの. Fig.3に示すように,昇温速度が増加するほど,. 式. 分解反応は明瞭な2段階反応になる。. 4EF篇Rコマln[1)(02)/0.21] (1). 4. 熱力学的性質:分解圧と酸素不定比量. によって求められる。試料から引き抜かれた酸素の量 が試料の酸素不定比鷺の最大値を越えると,試料は分. 4.1.熱力学的性質の重要性. 解し始め,その時の封管内の酸素分圧は,試料とその. 化合物の分解圧は,その物質の生成自由エネルギー. 分解生成物との共存酸素圧になる。この状態では,更. と対応する。生成自由エネルギーの大きさは,他の物. に酸素を引き抜いても,試料分解が終了するまで封管. 質との反癒性,安定性を決定付ける。また,酸素不定. 内の酸素分圧は変わらない。従って,通電前後の封管. 比量の大きさによって電気的性質が大きく変化する。. 内の酸素分圧が変化しないときの酸素分圧が試料の分. 従って,高温超伝導酸化物の分解圧,酸素不定比量の. 解圧になる。. 大きさなどの熱力学的性質は,その物質の特性を示す. 酸素欠損量は,O、一Ar混合ガスにより雰囲気制御. 重要なパラメータである。YBa2Cu307_ゴについて. のできる熱天秤装置を用いて測定した。. は既に酸素不定比量についての詳細な報告が行われて おり,また分解圧についての報告も出始めている5’6)。. 4.3.結 果. 本研究では,最初に発見された高温超伝導体であり,. クーロン滴定の実際の測定に当たっては,封菅のシー. 高温超伝導発現の考察に当たって重要な意味を持つと. ルが完全でなければならないなどの難しさがあるが,. 考えられるにも拘らず,超伝導転移温度Tcが低い. La2_xSrκCuO4について800℃の分解圧がおよそ. ため基礎的なデータがまだ余り報告されていない. log[P(0,)/atm]諜一7.1であることが明らかになっ. しa2_κSr.CuO4に重点をおいて熱力学的性質を測定. た。これはCuOがCu20に分解する六八分圧よりは. した。. るかに低く,2−1−4相の中では銅の2価以上の高い 価数状態が安定化されていることが検証された。分解. 4.2.実験法. 圧の温度,Sr含有量による変化については今後明ら. 分解圧は,クーロン滴定によって測定した:安定化. かにしていく。. ジルコニア(8m/oY203添加ZrO2;YSZ)を電. 酸素不定比蟻の測定結果の一部をLa2一、SrエCuO4_ゴ.
(5) 73. 1og−P(0、)に対するプロットの傾きは極小値を与え 4二〇〇. 3.98. 写墾讐:夢= 夕!■O o O ⑤. ℃3.96. O ⑦ / o. るB)。Fig.4にはその傾向が認められないことから,. La2_エSrκCuO4_d系はCuの平均原子価が2.00に なっても金属的な電子状態を保つものと判断される。. 参考文献. △ :}(=0.10サ 9000C. 1. 寸. 3.94. 3.92. his o:x昌0.10,1000。C. work △ :x=0.16, 9000C o:x需Oj6,1000。C by Sh1・・y…二:盤{1:lo819、. 1)J,G.Bednorz. and K.A.Muller, Z.Phys.B−. Condensed Ma乞ter,64,189(1986).. 2)KKishio, KKitazawa, S.Kanbe,1,Yasuda,. 一5 −4 臨一3 −2 −1 0. N.Sugii, H.Takagi, S.Uchida, KFukei,. 1・9(P(02)/・t・). and S.Tanaka, Che拠. Lett,,(1987)429 3)M.Kl,Wu, J.R.Ashbum, C.J.Torng, P.H.. Fig.4Nonstoichiometry of La2_ぎSrエCuO婆一d Thick curves:This work.. Hor, R.L. Meng, L.Gao, z.J.Huang, Y.Q.. T}1in curves:By Shirnoyana et a1.7). Wang and C.W.Chu, Phys. Rev. LeLt.,58, 908 (1987).. の式量当りに含まれる酸素量4−dと平衡酸素圧の. 4)K:.TsuneyQshi, KMori, A.Sawata,. 関係の形でFig.4に示す.日中,細線で示したのは. J.Mizusaki and H.Tagawa, Solid State. 下山等による測定結果であるη。酸素欠損量dはSr. Ionics, in press.. 置換蛍κの増加,温度の上昇,平衡酸素分圧の低下. 5)K.Kishio, J.Shimoyama, T.Hasegawa,. によって増加する。しかし,900℃以下で空気より酸. KKitazawa and KFueki, Jpn.」. Appl.. 素分圧の高い条件下では測定した組成の試料はいつれ. Phys.,26, L1228(1987).. もほぼ定比組成La2_κSrκCuO4.ooになる。. 6)M.Tetenbaum, A.Brown and MBIander,. La2_、Sr.CuO4_4中のCuの平均原子価は2+κ. ”Ceramic Superconduc乞ors”, Proc.. 一2dになるので,700−900℃の空気中でアニー. Ceramic Superconductivity Symposium,. ルした試料中のCuの原子価はSr置換量に対応し. VoHI, Amer. Ceram. Soc, pp.51−59. て増加する。一方,La玉,g Sro.1 CuO4_ゴ及び. (1988).. La1,84Sro.16 CuO4_dのdは1000℃,10g[P(02)/. 7)笛木,北沢編”酸化物超伝導体の化学”,講談社. atm]篇一5において各々ほぼ0.05及び0.08になり,. サイエンティフィック(1988)p.66.. この時のCuの原子価はほぼ2.00である。. 8)J.Mizusaki, Y.Mima, S.Yamauchi,. 欠陥平衡論によれば,Cuの平均原子価が2.00の. KFueki and H.Tagawa,」.Solid State. 時バンドが満ちた状態になるならば,(4一(1)の. Chem.,80,102(1989),.
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