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「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント : アジア太平洋障害者センタープロジェクトの事例から

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はじめに  2006 年 12 月 に 採択 さ れ た 障害者権利条約 は,批准国が 20 カ国に達し,2008 年 5 月 3 日 に発効した.日本は 2007 年 9 月に署名はした ものの,2008 年 10 月現在,批准には至ってい ない.しかし今後批准に至った場合,第 32 条 に基づき国際協力において障害者1)に対する支 援,また第 6 条に基づき女性障害者に対する配 慮が求められる.開発協力の分野において,女 性障害者に対する支援の重要性はこれまであま りクローズアップされてこなかった.それは, まず女性障害者が抱える特有の問題が一般的に 認識されていないこと,障害者に対する政策と ジェンダー平等政策がしっかりと遂行されれば 女性障害者の問題はなくなると捉えて敢えて女 性障害者に焦点を当てる必要性がないと考えら れていること,そして既存の援助プログラムの 中に女性障害者も当然に被益者として入ってい ると思い込まれていたこと等の理由からであ る.このような認識であるため,彼女らは未だ 取り残された存在となっている.  このような状況から,開発協力において女性 障害者をエンパワメントするには,どのような 支援の体制を整える必要があるか,という問題 設定をした.本稿では,国際協力機構(JICA) の障害者支援の一つである,「アジア太平洋障 害者センタープロジェクト」を事例に取り上げ, その教訓から一方法を見出していく.  本稿は次のように構成される.まず第 1 節で は,途上国における女性障害者の現状を概説す ると共に,国際社会における女性障害者への認 識の高まりの歴史を説明する.第 2 節では,日 本の開発協力の実施機関である JICA の障害者 支援への取り組みの中で,女性障害者への配慮 がどのように行われているかを概観し,現状分 析を行う.続く第 3 節では,JICA のアジア太 平洋障害者センタープロジェクトの事例を紹介 する.このプロジェクトで来年行われる女性障 害者に焦点を当てた研修の,計画立案段階にお ける配慮を紹介するとともに,ジェンダー及び 女性障害者への配慮が行われるようになった要 因を分析する.最後に第 4 節では,第 3 節の事 例研究を踏まえて,開発協力において女性障害 者をエンパワメントするために必要な支援の方 法を模索する. 第 1 節 女性障害者の現状と国際社会の動き ⑴ 途上国における障害者の現状  世界保健機構(WHO)によると,障害者は, その程度に差があるものの,世界人口の約 1 割 に達し,その約 6 割が途上国に居住していると 言われている.そして途上国に居住する障害者 の多くは,都市部から離れた農村地域に居住し ている.障害を負う原因は様々であるが,途上 国の障害の原因は,母子保健の未熟さからくる, 妊娠時の栄養不良や,高すぎる出生率,近親結 婚に加え,事故や紛争などがある(長田 2005: ⅱ).先進国では,人権の意識が高まることに

「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント

──アジア太平洋障害者センタープロジェクトの事例から──

長 谷 川  涼 子

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よって,障害者の抱える問題に対して,法律の 制定などの整備が整えられてきた.一方途上国 では,障害者は心身機能の障害に加えて,経済 的に貧困であることや社会制度の未整備によっ て,先進国以上に差別,不平等,人権侵害や社 会参加の制限がある.途上国と言っても国によ り状況は異なる.その国の歴史的経緯や社会的, 文化的背景などの違いがあり,国によって様々 な要因が絡み影響している(久野編 2004:39).  具体的な途上国の障害者の状況を以下に挙げ る.まず,障害児を抱える家庭の多くは貧しく, また障害児を抱えるがためにさらに貧しくなる (久野編 2004:40 ─41).限られた収入や食料は, 稼ぎ手となる非障害者児に優先的に回され,障 害児は後回しにされる.当然に,障害者は教育 を受ける機会も限られ,その結果雇用の機会も 限定され,正規雇用は教育を受けていないこと から困難である.さらに,自営を試みても,障 害者であるが故にマイクロファイナンス等の小 規模融資も受けられないことが多く,家族に依 存して生きるほか手段がない人が多い.  重度障害者の場合には,医療を施しても長生 きしないと考えられ,放置されることもある. リハビリテーションを始めとする,サービスを 利用する必要がないと家族が考え,本人が受け たいと考えていたとしても,受けられないこと も多い(久野編 2004:41).国によっては,障 害を持って生まれてきたこと自体家族の恥であ ると考え,家の中に隠され,名前さえ付与され ない障害者もいる.このように障害者に対する 差別が現在も続き,対策が取られていないこと は,非常に重大な問題である.加えて,各国政 府が国内の障害者に関する正確なデータを把握 出来ていないことも,障害者の抱える問題が喫 緊の問題であることを示している.このような 中で,途上国の女性障害者はさらに酷い状態に 直面している. ⑵ 途上国における女性障害者の現状  途上国において,女性障害者は複数の差別を 受けている存在である.それは,障害者である ために受ける差別と女性であるために受ける差 別の二重の差別に加え,貧困であるために受け る差別である.貧困とは,一日一ドル以下で生 活しているといった経済的貧困のみならず,教 育や雇用を始めとしたあらゆる機会が奪われて いる状態を意味する.彼女らが受けている差別 の具体的内容は途上国のみならず,援助国であ る先進国においても認識が乏しい.そのため, 国内の施策においても,ドナーの援助施策にお いても女性障害者は支援を受けられず,取り残 された存在となっている.その具体例を以下に 挙げる.  まず,健康に暮らすための権利が保障されて いない.つまり,安全な水,食糧,基本的な保 健医療などへのアクセスが保障されていないの である(中西編 2003:51).次に,教育や雇用 の機会が保障されていない.それは,障害を持っ ているために結婚が見込めないため,そのよう な女子には教育を施す必要性がないと,家族や 親戚に判断されるためである.また,仮にその 必要性が見出されたとしても,バリアフリー化 がなされていないため,学校に行く手段が限ら れたり,授業に参加できなかったりといった障 壁がある.このように,教育の機会に恵まれな いために,彼女たちは識字率が低い.その結果, 女性として必要な基本的な保健医療などの講習 を受けても理解出来ない.そのため,感染症な どの予防が出来ず,非障害者の女性と比較して 伝染病の感染率が高いという結果が出ている. また,講習内容を理解できないどころか,講習 があることすら知らない場合が多い.加えて, 女性障害者は雇用の機会にも恵まれず,家庭の 中に閉じ込められ,家族に依存した生活を強い られている.一日の初めに,今日は何を着るか, 何を食べるか,外出するかどうか,といった自 己選択さえも認められていない.家族の中で何 の役割も果たせず,自分のことすら自分で決め られない状況であることから,女性障害者は障 害を負った自分を否定的に捉え,生きる希望を

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17 「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント(長谷川) 見出せないでいるのである.  そして,このような複数の差別に加えて,女 性障害者特有の差別も受けている.例えば,子 宮摘出手術の強要である.これは,月経時の介 助負担軽減のために行われていると言われてい る.しかしその奥には,女性障害者は妊娠や出 産をしない存在であるという,差別的な考えが 非障害者の中にあることを意味する.また,こ のような固定観念が起因しているもう一つの差 別として,家族や周囲の人からの性的暴力があ る.途上国の,特に農村地域に居住する女性障 害者は家に閉じ込められていることが多く,家 族や親戚に依存した状況で生活をしている.家 族が農作業で家を空けている間に暴力を振るわ れることも多い.女性障害者は,誰から暴力 を受けたか認識出来ない,または,仮に誰から 暴力を受けたかを認識できたとしても,訴える 手段を知らないことが多い.非障害者は,この ような状況を理解した上で,彼女達を性的暴力 の対象としている.仮に彼女達が訴える手段を 知っていたとしても,家族に依存して生きてい ることから訴えることが出来ないのが現状であ る.  また,妻や母としての役割を奪われる.事 故や天災などから後天的に障害を負った場合 は,夫から離婚され,子どもたちを奪われ, 障害を負った女性たちは絶望的な状態になっ ている.しかし,男性が後天的に障害を負っ たとしても,離婚されることはほとんどない. それは,男性の世話をすること,育児をする ことや家事をすることは女性の役割であり, 障害を負った女性はその役割を担うことが出 来ないと考えられているためである.そのた め,先天的に障害を負っている女性の結婚は 非常に困難であるが,男性は比較的に非障害 者の女性との結婚の機会に恵まれている.  つまり,子宮摘出手術の強要,性的暴力,そ して妻や母としての役割を奪われるといった差 別は,女性障害者のみが受けている差別であ り,女性であるから受ける差別や障害者である から受ける差別とは異なる種類の「女性障害者 が受ける特有の差別」であると言える.これは, 女性で,障害者であるという非障害者による社 会認識や位置付けから生じる差別である.この ような差別を撤廃するには,途上国の政府にお いて障害者に対する施策,その中でも特に女性 障害者に配慮した施策が必要である.女性障害 者の抱える問題に対応していくためには,単に 女性に対する施策と障害者に対する施策を行う だけでは完全ではない.女性であり,障害者で あるために受けている特有の差別を認識し,そ の問題の解決に向けた対応を取っていくことが 必要である.しかし途上国政府の少ない予算の 中で対応していくのは限界があるため,国際的 な支援が必要となる.次項において,国際社会 における障害者に対する施策と女性障害者の抱 える問題に対する認識について概観していく. ⑶ 国際社会の障害者施策2)と女性障害者の 問題への認識の高まり  1975 年に国連で「障害者の権利宣言」が採 択され,1976 年の国連総会で,1981 年を「国 際障害者年」とすることが決定したことから, 国際的に障害者に対する権利保護の機運が高 まっていった.それまでも各国の政策に少な からず障害者政策が組み込まれていたが,そ れは障害種別に別けられた政策であったり, 偏りのある政策であったりした.しかし,こ の国際障害者年の大きなテーマとして「完全 参加と平等」が掲げられたことによって,各 国の政策にも変化が見られるようになった. この「完全参加と平等」は現在においても障 害者政策のテーマとなっている.  その後,国連は 1983 年から 1992 年までの 10 年間を「国連・障害者の十年」とし,その概念 を明示した「障害者に関する世界行動計画」が 1982 年に採択された.この障害者に関する世界 行動計画 は,「障害予防」,「リ ハ ビ リ テーショ ン」,「機会の均等」を基本概念としており,障 害者があらゆる分野の「リハビリテーション」 (325)

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という名のもとに,生活を一生管理されるので はなく,自己管理や自己決定を持つことを認め たものとして,非常に重要な意義を持ってい る.また,1987 年にスウェーデンで行われた障 害者の十年の中間年実施状況モニタリング会議 においては,国連の専門家会議として初めて障 害当事者の専門家が過半数を占めるといった成 果もあがった(久野編 2004:44).これはまさに, 障害者の「完全参加」が実行されてきた証とい えよう.  国連・障害者の十年の最終年である 1992 年, アジア太平洋地域では国連アジア太平洋経済社 会委員会(ESCAP)第 48 回総会において,国 連・障害者の十年を継続すべく「アジア太平 洋障害者の十年(1993~2002)」を独自に採択 した(成清編 2008:72).その行動計画である 「アジア太平洋障害者の十年のための行動計画」 は,12 の課題3)とそれに基づくアジア太平洋 ブロックにおける地域協力からなっている.12 の課題の内容は,世界行動計画の中で自明のこ とゆえに触れられていなかったこと,アジア太 平洋地域において特に必要であること,世界行 動計画で掲げられているが再度行う必要のあ ること,そして電子機器へのアクセスといっ た,世界行動計画作成時には存在しなかったこ とに分類されている.世界的な障害当事者団体 である「障害者インターナショナル(Disabled Peoplesʼ International:DPI)はこれらの課題 を 中心 に 10 年計画 を 立 て,さ ら に 全体 を カ バーする課題として,地域のネットワークの 必要性を強調した.また,障害当事者の声や 非政府組織(NGO)との連携を重視し,「地域 に根差したリハビリテーション(Community-Based Rehabilitation:CBR)」4)の 拡大 を 目指 すこととし,1993 年には「アジア太平洋障害 者 の 十年 キャン ペーン 93 第 1 回国際 NGO 会 議・障害者 の 社会参加 に 関 す る 沖縄会議」を 沖縄で開催した.その決議として,アジア太 平洋地域の民間団体でアジア太平洋障害者の十 年を推進する目的で,「アジア太平洋障害者の

十年推進 NGO 会議(Regional NGO Network for Promotion of the Asian Pacific Decade of Disabled Persons:RNN )」が 1996 年 に 設立 された(成清編 2008:72).RNN はマニラ,ジャ カルタ等で毎年開催され,アジア太平洋障害者 の十年を推進する役割を担った.この「アジア 太平洋障害者の十年」を機に,「アフリカ障害 者の十年」や「アラブの障害者の十年」が採択 されるに至っている.  アジア太平洋障害者の十年の推進を担ってき た RNN は毎年アジア太平洋地域の各都市で行 われてきたが,2001 年のハノイにおける RNN キャンペーン会議において,2002 年に終了す るアジア太平洋障害者の十年を延長すること が提案されたことを受けて,2002 年の第 58 回 ESCAP 総会決議において 2012 年までの延長 が宣言された.そして同年 11 月の ESCAP の 協議において,アジア太平洋障害者の十年の 総括および,次の十年を位置付ける枠組みとな る「びわこミレニアムフレームワーク(Biwako Millennium Framework for Action: Towards an Inclusive, Barrier-Free and Rights-Based Society for Person with Disabilities in Asia and the Pacific:BMF)」の検討と採択が行わ れた.BMF は「障害者のためのインクルーシ ブでバリアフリーな,かつ権利に基づく社会を 達成するために,地域内各国政府や関係者によ る行動のための地域的宣言を提言する,地域行 動計画」と位置付けられている.また,BMF は「障害者問題の関心がミレニアム開発目標及 び関連の目標を達成する努力と不可分になるよ う,それらの目標を明確に盛り込んでいる」と されている.BMF において掲げられている優 先的課題は①障害者の自助団体及び家族・親の 団体,②女性障害者,③早期発見・早期対処と 教育,④自営を含む訓練と雇用,⑤各種建築物 および公共交通機関へのアクセス,⑥情報通信 及び技術支援を含む,情報通信へのアクセス, ⑦能力構築・社会保障及び持続的生計プログラ ムによる貧困緩和の 7 つであり,その具体的な

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19 「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント(長谷川) 目標と行動計画が定められた(図 1 参照).また, 障害者権利条約の促進,アジア太平洋障害者セ ンターの支援,アフリカ障害者の十年との協力 等を重点項目とした(UNESCAP2002:1─27). この BMF で初めて女性障害者への配慮の必要 性と具体的な方策が公に明示された.  BMF における女性障害者への視点は,まず, BMF の原則と政策方針の中で,ジェンダー主 流化への女性障害者の参加に加え,障害当事者 団体においても女性障害者の参加に重点を置 き,それらを支援すると共に,国の政策決定過 程においても女性障害者を含めていくことが規 定されている.次に,域内政府の優先的政策領 域の一つとして「女性障害者」が明記されてい る.この優先的政策領域とは,アジア太平洋障 害者の十年(1993─2002 年)の実施期間中には 十分な進展が見られず,行動が遅れたと認識さ れた領域を指している.つまり,女性障害者が, アジア太平洋障害者の十年終了時には未だ脆弱 な存在として捉えられ,政府が取り組むべき課 題として認識されたことになる.それぞれの優 先領域の計画実施に向けて,重要課題,BMF の目標及び目標達成のために求められる行動 が記されている.女性障害者の重要課題とし ては,女性障害者が幾重にも不利であり,貧 困層にもその数が多く,男性障害者よりも家庭 内においても差別され社会的・地域的活動にも 阻害されていること等,女性障害者が受けてい  出所:UNESCAP(2002:4)  図 1 BMF の優先領域の図示 ࿑㧝㧦BMF ߩఝవ㗔ၞߩ࿑␜ ಴ౖ㧦UNESCAP(2002:4) ⥄ⴡࠍ฽߻⸠✵ߣ㓹↪ ฦ⒳ᣉ⸳෸߮౏౒੤ㅢᯏ 㑐߳ߩࠕࠢ࠮ࠬ ᅚᕈ㓚ኂ⠪ 㓚ኂ⠪ߩ⥄ഥ࿅૕෸߮ ኅᣖ࡮ⷫߩળ ᖱႎ࡮ㅢା෸߮ᛛⴚᡰេࠍ ฽߻㧘ᖱႎㅢା߳ߩࠕࠢ࠮ ᣧᦼ⊒⷗㧘ᣧᦼኻಣ ߣᢎ⢒ ⢻ജ᭴▽㧘␠ળ଻㓚෸߮ᜬ ⛯⊛↢⸘ࡊࡠࠣ࡜ࡓߦࠃࠆ ⽺࿎✭๺ (327)

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る差別の実態が述べられている.さらに,非障 害者の女性の活躍により効果の上がったジェン ダー主流化の運動は,女性障害者の運動には殆 ど影響を及ぼしていない事実が述べられ,政府 が女性障害者に対して必要な支援サービスを提 供し,発展の主流への完全参加を促進する責任 を持つとされている.  BMF における女性障害者への目標は以下の ように,3 つ掲げられている. 1. 政府は,2005 年までに,女性障害者の権利 を守る,適切な反差別施策を確保する. 2. 各国の障害者自助団体は,2005 年までに, 組織の管理,組織的訓練,広報活動を含め た団体の活動への,女性障害者の完全参加 と平等な代表を促進する方針を採用する. 3. 女性障害者を,2005 年までに,それぞれの 国の一般の女性団体に含む.  この 3 つの目標を達成するための求められる 行動として,12 項目5)が掲げられている.この 12 項目は,政府が女性障害者に対して行うべ きこと,NGO や障害当事者団体が女性障害者 に対して行うべきこと,女性障害者自身が行う べきこと,そして非障害者の女性や女性団体が 女性障害者に対して行うべきことが明記されて いる.  第 2 次アジア太平洋障害者の十年の中間年 に当たる 2007 年には,バンコクにおいてハイ レベル政府間会合が開かれ,27 カ国・地域の 政府及び国連機関代表,そして障害 NGO 関係 者など 185 名が集まった.前半 5 年間を振り返 り,状況の変化や新たな課題を考慮した「びわ こプラス 5」を採択した.この「びわこプラス 5」は BMF を補完するもので,第 2 次アジア 太平洋障害者 の 十年 の 後半 5 年間(2008 年~ 2012 年)の実施促進のための行動指針である. BMF との具体的な変化としては,BMF 優先 分野における目標達成のための行動を追加し, BMF の 4 つの戦略を 5 つ6)に再編した.また, BMF 及びびわこプラス 5 のレビューは第 2 次 アジア太平洋障害者の十年最終年である 2012 年に実施されることとなった.  再編されたびわこプラス 5 では,BMF の優 先的行動分野における行動に関して,行動内容 が追加された.女性障害者に対しては,新たに 3 点が追加された.第 1 に,ジェンダーの視点 を,障害関連の政策,計画及び法制に含むこと. 第 2 に,障害のある女性の視点を,ジェンダー 関連の政策,計画及び法制に含むこと.第 3 に, 障害のある女性及び障害のある女性の組織が, ジェンダー関連及び障害関連の両者の政策,プ ログラム,計画及び法制の策定プロセスへ参加 することである.その具体的な内容として,① 政府は,女性障害者へのリーダー管理者研修を 通じて,経済的,社会的及び政治的エンパワメ ントを支援すべきであり,結婚,妊娠,出産及 び性的関係に関する事項などの女性障害者が受 ける差別に対する取り組みを行う必要がある. ②障害当事者団体は,女性障害者のニーズを考 慮して組織の運営を見直し,彼女たちのエンパ ワメントを支援する必要がある.③女性障害者 の自助団体は,地域に根差した開発団体やあら ゆるレベルの政府と連携して,隔離された地域 の女性及び少女の問題に敏感になり,地域に根 差したプロセスを通してその問題に取り組むべ きである,という3点が記載されている.  そして,第 2 次アジア太平洋障害者の十年 の前半 5 年間の中で最も顕著な達成事項の一 つ は,「障害者権利条約(Convention on the Rights of Person with Disabilities:CRPD)」7) 及 び そ の「選択議定書」の 採択 で あ る.1975 年に国連が障害者の権利宣言を行って以来,2 度も条約案が提案されていたものの,これまで 否決されており,約 30 年かかって採択された 本条約は,障害者やその家族,そして障害者を 支えてきている人々にとって重要な条約であ る.その中で条文の一つとして女性障害者が規 定されたことは,国際的に女性障害者の抱える 問題が認識され始めていることを示している. まず,第 6 条に女性障害者に対する人権の保障 の必要性が明記された.さらに,彼女らの地位

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21 「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント(長谷川) 向上やエンパワメントを確保するための適切な 措置が求められている.第 16 条「搾取,暴力 及び虐待からの自由」では,虐待にジェンダー に基づくものが存在することを認めており, ジェンダーに対して敏感に対応することが必要 であること,第 25 条「健康」においては,リ ハビリテーションを含む,健康に対するサービ スをジェンダーに敏感に行うことを保障する必 要があること,そして第 28 条「十分な生活水 準及び社会保障」においては,社会保障計画や 貧困削減計画に,障害者,特に女性や女子の障 害者,障害のある高齢者のアクセスを確保する ことが必要であることが規定された.  また,条文以外の部分においても女性及び女 子の障害者やジェンダーに配慮する必要性が規 定されている.前文では,女性障害者が性的暴 力などの危険にさらされていること,障害者の 人権や基本的自由を完全に享有するためにはす べての分野においてジェンダーの視点を入れる ことが必要であることが強調されている.そし て一般原則においても男女平等が規定されてい る.このように,障害者権利条約の各所に女性 障害者への配慮の必要性が明文化されていると いうことは,国際的に女性障害者が極めて脆弱 な存在であり,格別の配慮が必要であることを 意味している8)  また,障害者権利条約の大きな特徴は,障害 者に対する支援が国際協力においても必要であ ることが,条文の一つとして記載されているこ とである9).つまり,途上国の現状として,障 害者の支援には他国からの援助が必要であるこ とを示している.そしてその援助の中でも女性 障害者への配慮の必要性を求めている.  では,このような国際社会の認識の中で,日 本の開発協力ではどのように障害者に対する支 援が行われ,その中で女性障害者への配慮はど のようになされているのかを次節において概説 する. 第 2 節 日本 の 開発協力 に よ る 女性障害者 へ の取り組み  日本の開発協力の実施機関である JICA によ る 障害分野 へ の 協力10)は,1976 年青年海外協 力隊(マレーシア・理学療法士)の派遣から始 まり,その後研修員受け入れ,無償資金協力, 技術協力プロジェクト等が実施されている(木 下 2003:148).2003 年 10 月には障害者支援の 課題別指針 を 発表 し,「JICA が 事業 を 実施 す る途上国において障害者の『完全参加と平等』 が実現できるよう支援すること」を目的として いる(国際協力機構 2003:22).また課題別支 援委員会として,障害者支援課題別支援委員会 を設置し,障害当事者を含む外部有識者から助 言を得られる体制が整えられた.さらに 2004 年に,JICA 内に障害者支援を包括的に扱う部 署 を 設置 し た(木下 2003:149).障害者支援 の課題別指針では,障害者支援の目的達成のた めの基本方針として,「障害者のエンパワメン ト」と「障害者のメインストリーミング」とい う 2 つの柱を立てている.JICA 事業における 障害者のエンパワメントとは,経済協力開発機 構(OECD)/開発援助委員会(DAC)の貧困 削減ガイドラインにおけるエンパワメントの考 え方を採用し,5 つの能力(基礎的能力,社会 的能力,経済的能力,政治的能力,危機対応能力) を障害者やその家族,コミュニティーが状況に 合わせながら開発していく過程を指している. 具体的な支援方法としては,障害者やその家 族,当事者団体を直接の被益者とした直接支援 (リーダー育成,自立生活訓練など)と,各国政 府や市民,医療リハビリテーションの専門家を 対象とした,エンパワメントのための条件・環 境整備(コミュニティーでの啓発,関連職種専 門職の育成など)という間接的な支援の 2 つの アプローチがある.そして JICA 事業における 障害者のメインストリーミングとは,「障害者 の視点を全ての協力スキーム,事業サイクル, セクターに組み込むという考え方で,このこと によって,全ての開発課題において,計画策定, (329)

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実施・モニタリング,評価に障害者が参加する ことを目指す」と記されている.これら 2 つの 柱は独立して存在するわけではなく,相互に連 携し,補完しながら障害者の完全参加と平等を 目指して実施されるとしている(国際協力機構 2003:22─26).  このような方針の中で,女性障害者に対する 記載は,直接支援の重点対象者の 1 つとして挙 げられているだけである.直接支援として,女 性障害者自身が自信をつけ,技術を身に付ける ために訓練を行う必要性があることに加え,彼 女らを取り巻く家族や地域コミュニティーと いった社会の理解を促すことも必要であるとさ れている.そして,訓練された女性障害者たち が生産活動を営めるような仕組みの検討も必要 とされている(国際協力機構 2003:31).  以上のように,JICA の障害者支援の方針を 示す,課題別指針の中に女性障害者への配慮の 必要性は述べられているものの,女性障害者が 受けている差別の具体例や JICA 事業において どのように配慮していくのかという実際の施策 は記載されていない.そして実際に,ジェンダー や女性障害者に配慮して障害者支援を行ってい るのは,2008 年 10 月現在,アジア太平洋障害 者センター(APCD)プロジェクトだけである. (APCD プロジェクトに関しては,第 3 節で事 例研究として取り上げる.)このような現状は, 課題別指針の策定に携わった人々等のある一定 の人は,女性障害者という取り残された存在 や,彼女らの抱える問題を認識しているが,多 くの人は未だそれらを認識していないことを示 している.女性障害者が抱えている問題は,障 害者が抱える多くの問題の 1 つとして含まれる はずであり,それを認識していないということ は,JICA 事業の全てに障害者の視点を入れる という,障害者のメインストリーミングが未だ 浸透していないことを意味するのではないだろ うか.  このような状況の中で,先にも述べた APCD プロジェクトは JICA 事業の中で唯一女性障害 者に配慮して,事業を展開している.次節では, APCD プロジェクトの概要を説明すると共に, どのように女性障害者に配慮を行ってきたの か,そしてなぜ女性障害者に配慮した支援を実 施することが出来るのかを分析する. 第 3 節 アジア太平洋障害者センターにおける 女性障害者研修 ⑴ アジア太平洋障害者センタープロジェクト 概要  ア ジ ア 太平洋障害者 セ ン ター(Asia-Pacific Development Center on Disability:APCD) プロジェクトは,2002 年から開始された JICA の 技術協力 プ ロ ジェク ト で あ る.2007 年 8 月 に 第 1 フェーズ を 終 え,同年 9 月 か ら 第 2 フェーズに入っており,現在も継続して JICA による支援が行われている.APCD は JICA の 他の障害者支援とは異なり,次の点において独 自の特徴がある.  第 1 に,タイを拠点としたアジア太平洋地域 の障害者支援を行っている広域プロジェクトで あることである.タイ国内の障害者に対する支 援だけではなく,アジア太平洋地域の障害者に 対する支援を行っており,第 3 国研修の実施や 南南協力の推進も行っている.APCD はアジ ア太平洋諸国の政府関係者や障害者リーダーの 人材育成に従事し,彼らが自国で活動を行うこ とが可能となるための,ファシリテーターの役 割を担ってきた.  第 2 に,ネットワーク型の支援を行っている ことである.各国政府および NGO と広くネッ トワークを構築することで,障害者自身による 障害者のエンパワメントを実現させることを狙 いとしている.また,障害者個人だけでなく, 障害当事者団体,NGO,そ し て 政府高官 や 民 間企業にも働きかけ,国際的なリソースの活 用や,情報共有を通してネットワークの強化を 図っている(国際協力機構 2008:53).  第 3 に,障害者の生活が困難であるのは,障 害者個人ではなく社会の問題であり,社会その

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23 「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント(長谷川) ものが改善されるべきであると考える,「障害 の社会モデル」を障害に対する概念とし,事業 を実施していることである.障害の社会モデル を軸として支援をすることによって,障害者を 取り巻く社会を非障害者側からも障害者側から も変革してゆくことが見込まれるのである.  第 4 に,研修後にフォローアップをする体制 であることである.APCD 事業におけるフォ ローアップとは,当該国においてリソースパー ソンとなる研修修了生が,帰国後に行う活動を 支援することである.その活動内容に応じて, 障害当事者団体 や 中央政府,地方行政,民間 企業などのステークホルダーと接点を見出し, 相互に連携をすることで,制度・社会レベル のインパクトを発現させるのである.しかし, APCD 事業において,フォローアップそのも のが目的なのではなく,プロジェクトの計画立 案から実施,モニタリング,評価という一連の 流れの一つとして位置付けられている(国際協 力機構 2008:22).  第 5 に,障害当事者である有識者が研修の企 画や講師を行う等,障害者が主体となる事業 が進められていることである.つまり,APCD では,事業の計画立案の段階から,実施,フォ ローアップまで障害者が主体となって行われて いる.研修の講師は,研修生選定と同時に,そ の分野の障害当事者の有識者が選定される.そ の際に,APCD の研修修了生がリソースパー ソンとして選ばれることも多々ある.  第 6 に,ESCAP や障害当事者団体などの他 の機関との連携があることである.ESCAP や DPI アジア太平洋事務局がバンコクに事務所 があることで,密な情報共有を行うことが可能 となっている.また,研修内容に応じて,他の 国際機関や障害当事者団体,そしてあらゆる段 階の行政組織との連携も行っている.  このような独自性ゆえに他国からも注目度が 高く,びわこミレニアムフレームワークにも地域 協力として APCD が明記されている.これまで APCD では「障害者のエンパワメント」のため

の研修として,自助グループ(Self Help Group: SHG)研修,自助団体(Self Help Organization: SHO)研修,CBR 研修,自立生活(Independent Living:IL)11)/ ピア・カウンセリング12)研修を 行って き た.そ し て「バ リ ア フ リー社会 の 促 進」のためには,建物・交通のバリアフリー化 研修13)や ICT(Information and Communication Technologies)アクセシビリティ研修を行ってき た.  それらの研修の際において,APCD は常に ジェンダーに配慮をしてきた14).例えば,APCD の専門家が対象国の関連団体を訪問する際に, 女性障害者の応募を期待する旨を伝えているこ とである.また,研修員選考においても男女比 のバランス考慮をしている.加えて,APCD の 研修ごとに発足するタスクフォース等の内部関 係者や,協力団体等の外部関係者に対して,戦 略的に女性障害者に支援をしていくことの重要 性を伝えてきたことも,APCD によるジェン ダー配慮の一つである.このような努力の結果, 全研修生の約 4 割が女性障害者となった.この ように,APCD ではジェンダー配慮が行われた が,女性障害者が抱える問題は未だ解決されず, 男性障害者と比較して脆弱な立場にあるという 状況は変わらなかったため,女性障害者に焦点 を当てた研修(以下,女性障害者研修)を行う ことを決定した. ⑵ 女性障害者研修の計画立案プロセスに おける配慮  女性障害者研修は 2009 年 3 月に実施予定で あるが,その計画立案プロセスにおいて配慮さ れたのは,計画立案を女性障害者が主体となっ て行うことである.これまで障害当事者団体の 代表が国際会議等に出席し,障害者が受けてい る差別や抱える問題について国際社会に訴えて きた.しかし,その代表は男性障害者が多数で あったため,女性障害者が抱える特有の問題に ついては言及されてこなかったことが,未だ女 性障害者が最も取り残された存在である原因で (331)

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もあった.そのため,女性障害者研修は女性障 害者が主体となって計画される必要があった. 女性障害者が主体となって計画立案を進めると いうことは,自然と女性障害者に必要な研修内 容が作成されることになるのである.  本研修の計画立案は,DPI アジア太平洋事務 局の女性障害者が主体となり行われた.そして それを基に,男性障害者及び非障害者と議論を して研修内容が作成された.研修の目標は,研 修生が所属する障害当事者団体に女性部会を作 る必要性を認識すること,及び女性部会の設立 方法を学ぶことである.その目標到達のために は以下の段階を踏む必要性が検討された.  第 1 に,非障害者の女性や男性障害者にはな い女性障害者に特化した問題を認識してもらう 必要がある.例えば,月経時の介助負担を削減 するための子宮摘出手術の強要や,結婚,妊娠, 出産,育児の機会が奪われていることが,障害 者であるからと言って当然に行われるべきでは ないことや,それらの行為を拒否する権利があ ることを,自立生活をしている女性障害者が講 師となり発表する.そして,研修生の居住する 地域において,どのようにすれば自己選択をし て生活していくことができるかを,グループ ディスカッションで模索する.国の違いや障害 の種別によって,同じ女性であっても必要とす ることが異なることを,研修生が理解していく ことを目的としている.  第 2 に,上記の問題の是正を女性障害者の家 族や周囲の人々に理解を得るために,同じ境遇 の女性障害者たちが互いに協力をし,周りの意 識を変容する必要がある.そのためにはセルフ ヘルプグループ(SHG)設立の必要性を認識し なければならない.何事も一人で周囲に状況の 変更を訴えても,効果は乏しい.本研修には同 じ障害当事者団体に所属している障害者を 2 名 ずつ研修生として迎えることから,まずは二人 が協力して,周囲に居住する女性障害者に働き かける.そして,自分たちの生活改善という, 同じ目的を持った者同士が協力して周囲に理 解を求めていくことが必要である.ここで,共 通の認識を持つことが重要となってくるため, SHG を設立し,同じ目標に向かって,周囲の 人々に理解を得ることが有効な手段であること を理解することが目的となっている.  第 3 に,社会全体の意識改革をするためには 女性障害者のみの SHG では影響が小さすぎる ため,女性障害者の抱える問題が,障害者全体 の問題の一つであることを男性障害者に理解し てもらうことが必要である.その方法として, 既存の障害当事者団体において女性部会を設立 する必要があることを認識してもらう.女性障 害者の抱えている問題を家族や周囲の人々,ひ いては社会全体に意識変容を求めるためには, 男性障害者が理解をして共に問題解決に取り組 むことが必要である.その事実を,実際に障害 当事者団体の女性部会に所属する女性障害者に 説明をしてもらい,研修生が所属する団体にお いてどのように女性部会の設立を呼びかけ,男 性障害者に理解を促すかを,研修生同士で意見 交換をし,模索する.  以上のような段階を踏み,最終的には女性部 会の設立方法を享受する.今後女性障害者研修 の実施に向けて,APCD ではジェンダー・女 性障害者タスクフォースを立ち上げ,多くの 女性障害者が主体となって,より具体的な研修 内容を男性障害者や非障害者とともに構築し ていく予定である.また,本研修は障害の種 別を問わず,包括的に女性障害者をターゲッ トとしていることから,世界盲人連合(World Blind Union:WBU),世界 ろ う 連盟(World Federation of the Deaf:WFD),知的障害者 の生活向上のために活動する組織である,イン クルージョン・インターナショナル(Inclusion International:II)などとの連携も行っていく 予定である.

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25 「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント(長谷川) ⑶ APCD 事業 で ジェン ダー及 び 女性障害者 配慮が行われる要因  開発協力において女性障害者に配慮をした支 援を行っている国は少数であるにも関わらず, APCD 事業でジェンダー配慮が行われてきた ことや,今回女性障害者研修を行うことが決定 したことは,以下 3 つの APCD の独自性に起 因していると考えられる.  第 1 に,障害者が主体となって事業が行われ ているため,事業の計画立案や,その後のフォ ローアップまで障害者の視点で行われているこ とである.障害者が抱える問題を障害者が中心 となって解決することで,それが障害者自身 の力となり,自信に繋がるのである.つまり, APCD は障害者の「内発的なエンパワメント」 が出来る事業体制をとっている.そして,障害 者の視点で捉えることで,障害者だからこそわ かりあえる問題が共有でき,自然と女性として の障害者のニーズも把握することが可能とな る.その例がパキスタンの障害当事者団体の女 性障害者に対して行った自立生活のための研修 である.  2005 年 10 月に起きたパキスタン北西部の地 震は,現地時間の午前 9 時頃に発生した.その 時間は,男性は外へ働きに行き,女性は家の中 で家事等を行っている時間であったため,家の 中にいた女性たちが家屋の下敷きとなり,被災 者の多くが女性であった.その女性たちは脊椎 損傷や頸椎損傷などの障害を負い,今後の生活 に対し,絶望的な状態になっていた.そこでこ の研修は,女性障害者自身が新たに障害者と なった女性のカウンセリングをすることで,生 きる希望を見出していくことを狙ったもので あった(国際協力機構 2008:38).この研修で 重要な点は,震災直後に現地での支援を行った 際には,特に女性障害者をターゲットとはして いなかったが,現地で障害者自身が障害者に対 する救援活動をしたことで,被災によって障害 を負うことになった人々の多くが女性であり, 彼女たちが今後の生活に対して不安を抱き,絶 望的な状況に置かれていることを認識したこと である.そして,その女性たちに対して,自立 した生活を送っていくための研修を行う必要性 を見出したことにある.  第 2 に,障害の社会モデルで事業を実施して いることである.障害者主体で事業実施をし, 内発的にエンパワメントされた障害者たちが, 自らを取り巻く社会の差別的な構造,制度,そ して人々の態度を変革していくことを APCD が支援し,実際に社会が変革していくことが, 障害者の「外的なエンパワメント」になる.つ まり,女性障害者の抱える問題が存在すること に気付き,その問題解決には,彼女らを取り巻 く社会を変革していく必要があると考える,障 害の社会モデルで事業を実施している APCD だからこそ,女性障害者への配慮が可能になっ たのである.これまで JICA で行われてきた障 害者支援の多くは,医療リハビリテーションな ど,医療の専門家が主体となって,障害者にサー ビスを提供することを目的とするものであっ た.医療リハビリテーションも重要な支援では あるが,その支援においても,障害者を内発的 にも,外的にもエンパワメントすることに目を 向けなければ,その目的の達成になり得ないだ ろう.特に,文化的要因等も絡んで脆弱な存在 である女性障害者には,双方のエンパワメント が目的達成に向かう重要な要素となる.  第 3 に,APCD は 障害当事者団体 と の 連携 が強く,特に DPI アジア太平洋事務局がバン コクにあることもあり,密接な情報共有等の関 係を構築していたことである.DPI にはロー ルモデルとなりうる女性障害者たちがおり,彼 女たちの働きかけが APCD 事業においてジェ ンダー配慮を進めてこられた理由の一つと言え る.また,DPI 以外にもタイ国内に活動的な女 性障害者が多いことや,女性障害者への配慮に 賛同するリーダー的存在の男性障害者がいたこ とも要因の一つとして考えられる.  このように,APCD では障害者が主体となっ て事業が実施され,そして事業の中でジェン (333)

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ダー配慮が行われてきたにも関わらず,アジア 太平洋諸国の女性障害者の置かれた状況はあま り変化しなかった.つまり,アジア太平洋諸国 の女性障害者たちは,現在でも就学率が男性障 害者と比較しても格段に低く,自立した生活と は程遠い状況であった.そして,女性障害者の 人数や,障害の種別などの正確な統計も存在し ない状態である.このような状況が問題である として,既存の研修におけるジェンダー配慮に 加えて,これまでとは異なった方法で女性障害 者をエンパワメントしていく必要があることを 障害者自身が気づき,APCD との連携によっ て女性障害者に焦点を当てた研修を行う必要性 を見出したことが,今回の女性障害者研修へと 繋がったのである. 第 4 節 今後の女性障害者へのエンパワメント に向けた開発協力の方向性  APCD が障害者支援の成功例となりえた要 因は,前述のように障害者自身をリソースパー ソンとして活動を展開してきたことにある.つ まり女性障害者に対する支援も女性障害者が主 体となって行うことが,途上国の女性障害者を エンパワメントする最も重要な要因ではないだ ろうか.今後開発協力において女性障害者への エンパワメントを行うにあたり,APCD の試 みから得られた教訓は貴重であり,以下の 3 点 が今後の支援に重要であると考える.  第 1 に,支援の案件形成段階から障害者が主 体的に参画とすることが求められる.障害者に 対する支援を,障害者が主体となって行うこと により,当事者だからこそわかる問題を見出し, より効果的に障害者の抱えている問題を解決で きる.女性障害者の抱える問題についても,女 性障害者が主体となって参画することによっ て,より支援の必要性の高い状況を見出すこと が可能になるだろう.  第 2 に,上記のような段階を踏んでいく中で, 「女性」であることを,障害者が抱える一つの 特殊性として捉えることが必要である.障害に は視覚,肢体,知的など様々な特殊性がある. また,障害者自身も民族や社会的な地位により 置かれている状況は一様ではない.女性障害者 の抱える問題は,一つの特殊性の問題として捉 えることが必要である.したがって,障害(者) を一括りにして捉えるのではなく,障害者が抱 える特殊性に起因するニーズに合わせて支援の 内容や対象者,方法を考えていく必要がある. 女性障害者に参加促進をするといった配慮もそ の一環で考えていくべきものである.  第 3 に,ターゲット地域の選定の際に,DPI のような世界的な当事者団体に加盟している 障害当事者団体 や,国内 で 比較的活発 な 活動 をしている障害当事者団体が存在する地域を選 定し,その団体と連携を取りながら支援を行う ことである.パートナー機関として位置付ける ことによって,当該地域の女性障害者の人数や 障害種別等の実情把握に係る情報収集媒体とな り,そこから新たなロールモデルの発掘が見込 まれる.加えて女性障害者の働きが活発化する ことにより,女性部会の設立や他機関とのネッ トワーク化から女性障害者支援に係る国際的な トレンド把握も可能となる.また,力をつけた 女性障害者が増えていくことによって,国レベ ル,地域レベル,コミュニティレベルといった, 女性障害者を取り巻く社会のあらゆる場で,非 障害者や社会との橋渡しをすることが可能にな る.これによって,女性障害者自身が社会へ働 きかけることが可能になり,非障害者や社会が 持つ,女性障害者であるという社会的認識や位 置付けからの差別問題にも対応していくことが 出来得る.  そして,これら 3 点を遂行していくために は,医療従事者が中心となって障害者が受益者 となる,従来の,医療リハビリテーションが主 体の医療モデルでは十分ではない.変わるべ きは障害者自身ではなく,不平等や差別を生み だしている社会であり,障害者が主体となって 障害者を取り巻く社会環境を変革していく社会 モデルを採用した支援を行っていくことが必要

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27 「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント(長谷川) である.さらに医療リハビリテーションの支援 であっても,機能回復のみを目的とするのでは なく,障害者を主体として彼らを取り巻く社会 (家族,地域コミュニティーなど)の意識変容 にも取り組む必要がある.そして,医療リハビ リテーションに女性が参加しやすいように,女 性スタッフを配置するといった配慮も重要にな る.  以上のように,障害者自身が活動の主体とな り,障害者個々の特殊性に配慮する中で,女性 固有の課題・ニーズを捉えて,それらの解決に 向けた支援をしていくことで,女性障害者が自 分に自信が持てるようになる.それが女性障害 者の内発的なエンパワメントとなる.そして彼 女たちを取り巻く社会に対し,彼女たちへの理 解を求め,実質的なバリアフリー化の支援をす ることで,社会の女性障害者に対する差別的な 構造や制度,そして人々の態度が変革してい き,女性障害者が受けている差別が緩和されて いく.それが女性障害者の外的なエンパワメン トとなる.上記の双方が満たされてこそ,女性 障害者へのエンパワメントとなるのである. おわりに  本稿では,APCD プロジェクトを事例研究 として,その教訓から今後の開発協力における 女性障害者へのエンパワメントの方法を模索し た.しかし,開発協力における女性障害者への エンパワメントの手法を確立するためには,他 の援助国の手法を分析することも含めて模索 が必要であろう.他国の事例研究を含めた分析 は,別の機会において発表する予定である.  これまで JICA の障害者支援では,ジェンダー や 女性障害者 に 配慮 し た 支援 は,APCD プ ロ ジェクト以外は行われてこなかった.しかし, 2008 年 12 月よりパキスタンにて行われる「障害 者の社会参加促進プロジェクト」では,ジェン ダー配慮を重視した支援が行われる予定となっ ている.このプロジェクトも障害者が主体となっ て支援が行われる予定である.当然 APCD とは 支援内容が異なるが,どのような支援内容であっ ても,障害者を主体として,一様ではない障害 の特殊性に対応した支援方法を模索し実施して いくことで,その特殊性の一つに「女性」があ ることに辿りつくだろう.また,SHG や障害当 事者団体,そして障害者の家族で構成されてい る組織との連携も視野に入れていることからも, 女性障害者をエンパワメントする要因は整って いる.これは APCD の教訓を活かしたプロジェ クトであると言える.この新しいプロジェクト が,ジェンダーや女性障害者に配慮した障害者 支援の新たなグッドプラクティスとなり,女性 障害者へのエンパワメントに向けた支援の模範 になることを期待する. 1)「障害者」という表記についてはいくつかの議 論がある.それには,障害や障害者の捉え方が 反映されている.「害」という字の意味が,否 定的な意味としてられることに成りかねないこ とから,「障がい者」や「障碍者」と表記され ることもある.また,「障害をもつ人」や「障 害のある人」と表記されることもある.しかし この表記では,障害を機能や能力という側面で のみ理解しているという批判もある.また,障 害者ではない人を「健常者」と表記されること が多いが,これは障害者が不健康で異常な存在 であるという対比の言葉と捉えられてしまう可 能性が高いことから,本稿では「非障害者」と 表記している.表記に関しては,久野編 2004: ⅲ,脚注 1 を参照. 2)国際社会の障害者に対する認識の歴史につい ては,大曽根編 2005:33─36,中西編 2004:43─ 54,成清編 2008:66─78 を参照. 3)アジア太平洋障害者の十年の 12 の課題とは, ①国内調整,②法律制定,③情報,④国民の啓 蒙,⑤アクセシビリティとコミュニケーショ ン,⑥教育,⑦訓練 と 雇用,⑧障害原因 の 予 防,⑨ リ ハ ビ リ テーション,⑩福祉機器,⑪ 自助団体,⑫地域協力である(United Nations 2008). 4)CBR は,様々な定義やアプローチが存在する. その代表的な定義は,WHO,ILO,UNESCO, UNICEF が 2000 年 に 共同 で 発表 し た Joint Position Paper で示されているものである.そ の定義とは,「 CBR は全ての障害児・者のリ (335)

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ハビリテーション,機会均等,社会統合を実現 するために,一般的なコミュニティー開発の枠 組みで実施される戦略である.CBR は障害者 自身と彼らの家族,そして彼らの属するコミュ ニティーが一致協力することによって,また, 適切な保健,教育,職業訓練および福祉それぞ れのサービスを提供することによって,実現す る.」とされている(国際協力機構 2003:付録 3). 5)BMF の 重要課題 で あ る「女性障害者」に 対 する 3 つの目標を達成するために求められる行 動 12 項目(UNESCAP2002:6─8)  1 .政府は,女性障害者の権利を擁護するため の,そして,特に,保健サービス,教育,訓 練及び雇用への平等なアクセスを確保し,性 的その他の虐待や暴力から保護し,彼女等ら を差別から守るための施策を実施すべきであ る.  2 .政府,NGO 及び障害者自助団体は,女性障 害者の状況についての認識を高め,積極的な 姿勢やモデル的役割及び彼女らの発展の機会 を促進するため,国民の意識向上を図るため の計画を実施すべきである.  3 .政府は,地域,国及び地方レベルで,ジェ ンダー関連の適切な情報を女性障害者間で普 及するような仕組みを構築する.その情報に は,それらに限らないが,国際的文書や国の 立法に関する情報も含まれるべきである.  4 .障害者自助団体 は,地域,国及 び 国内地方 の各レベルで,女性障害者を代表する者が障 害者自助団体に加わることを保障しなければ ならない.  5 .障害者自助団体は,会議やワークショップ, セミナーに参加する代表団の少なくとも半数 を女性障害者で構成しなければならない.  6.女性障害者は,障害者自助団体が行う管理 や総務的な分野の研修に参加することを奨励さ れ,優先される.  7 .政府,NGO,障害者自助団体及びドナーは, 女性障害者のために,彼女らのジェンダーに 関する意識を向上させ,また,障害者自助団 体のあらゆるレベルでの,及び,政府へ提唱 し,協議する役割において,また市民社会の 中で,政策・意思決定過程へ参加する能力を 強化するために,指導者養成研修を提供すべ きである.  8 .女性障害者は,支援や情報発信・共有のた めに,自助団体内に自助グループを設け,ま た,右グループの国・地域ネットワークを設 立すべきである.  9 .女性障害者の団体やネットワークは,特に, 教育や保健情報,研修,社会開発へのアクセ スを重視しつつ,女子障害者の能力向上を促 進すべきである.  10 .女性障害者の国及び地域レベルのグループ やネットワークは,一般の女性団体に対し, 情報の普及と支援のために,女性障害者と彼 女らの自助団体並びに関心事項を一般の女性 団体の組織やネットワークに含めるよう提唱 すべきである.  11 .一般の女性団体は,利用しやすい形で訓練 のための教材を準備するだけでなく,利用し やすい会場,手配,支援を提供することで, 特に女性障害者を研修プログラムに参加させ るべきである.  12 .政府,NGO,障害者自助団体,ド ナー及 び市民社会を含むすべての機関は,常に,選 択と自己決定における女性障害者の権利を促 進・指示しなければならない. 6)権利ベースのアプローチの強化,政策策定及 び実施のための効果的なメカニズムの強化, データ及び他の情報の質・量の向上,あらゆる 障害者を含むインクルーシブな開発の促進,共 同体ベースのアプローチの強化,という 5 つに 再編した. 7)障害者権利条約の日本語訳は,外務省からの 政府仮訳と川島,長瀬仮訳が出されている.両 者は,用語の訳し方が異なるため,本稿では women を女性,gender をジェンダーと訳して いる点等の理由から,後者の仮訳を参照した. 8)障害者権利条約における女性障害者への視点 は以下のように条文に記載されている(川島, 長瀬仮訳).  ○ 前文(q)障害のある女性及び少女が,家庭 の内外で暴力,傷害もしくは虐待,放置,も しくは怠慢な取扱い,不当な取扱い又は搾取 を度々受ける危険に一層さらされていること を認め,  ○ 前文(s)障害のある人による人権及び基本 的自由の完全な享有を促進するためのあらゆ る努力にジェンダーの視点を組み込む必要が あることを強調し,  ○第 3 条 一般原則(g)男女平等  ○第 6 条 女性障害者  1 .締約国は,障害のある女性及び少女が複合 的な差別を受けていることを認め,また,こ れに関しては,障害のある女性及び少女によ るすべての人権及び基本的自由の完全かつ平 等な享有を確保するための措置をとる  2 .締約国は,この条約に定める人権及び基本 的自由の行使及び享有を女性に保障すること を目的として,女性の完全な発展,地位の向 上及びエンパワメントを確保するためのすべ ての適切な措置をとる  ○第 16 条 搾取,暴力及び虐待からの自由  1 .締約国は,あらゆる形態の搾取,暴力及び

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29 「障害と開発」における女性障害者のエンパワメント(長谷川) 虐待(それらのジェンダーに基づく側面を含 む)から家庭の内外で障害のある人を保護す るためのすべての適切な立法上,行政上,教 育上,その他の措置をとる  2 .締約国は,また,特に障害のある人並びに その家族及び介助者に対する適切な形態の ジェンダー及び年齢に敏感な援助及び支援を 確保することにより,あらゆる形態の搾取, 暴力及び虐待を防止するためのすべての適切 な措置(暴力及び虐待の…含む)をとる.締 約国は,保護サービスが年齢,ジェンダー及 び障害に敏感であることを確保する  4 .締約国は,…をとる.このような回復及び 復帰は,障害のある人の健康,福祉,自尊心, 尊厳及び自律を育成し並びにジェンダー及び 年齢に特有の必要を考慮に入れる環境におい て行わなければならない  5 .締約国は,障害のある人に対する搾取,暴 力及び虐待の事例が発見され,調査され,か つ,適切な場合には訴追されることを確保す るための効果的な法令及び政策(女性及び子 どもに焦点を合わせた法令及び政策を含む) を定める  ○第 25 条 健康     締約国は,障害のある人が障害に基づく差別 なしに到達可能な最高水準の健康を享受する権 利を有することを認める.締約国は,ジェン ダーに敏感な保健サービス(保健関連のリハビ リテーションを含む)への障害のある人のアク セスを確保するためのすべての適切な措置をと る.  ○ 第 28 条 十分 な 生活水準及 び 社会保障 2 (b)   社会保障計画及び貧困削減戦略への障害のあ る人,特に障害のある女性及び少女並びに障害 のある高齢者のアクセスを確保するための措置 9)障害者権利条約における国際協力に関する事 項は,長瀬 2006,長瀬 2008 を参照. 10)JICA の 障害者支援 に つ い て は,国際協力 機構 2003:21─50,木下 2003:148─158,越智 2008:18─21 を参照. 11)障害者の自立生活とは,「他の援助を受けず, 自分の力で身を立てること」という意味ではな い.国からの保障や,介助者などの支援は受け るが,すべてのことを自己選択して生きていく ことを意味する.つまり IL 研修は,障害者が 障害者のままでも自立して生活していくことを 支援する研修である. 12)ピア・カウンセリングとは,ピア(peer)が, 仲間や同等という意味で,障害を持つ人に対し て同じく障害を持つ人が行うカウンセリングで ある. 13)タイのバンコクでは国際協力銀行の円借款に よりバリアフリー化された地下鉄が建設され た.その地下鉄での勤務をする職員に対して, 障害者への対応方法などの研修が行われた. 14)APCD におけるジェンダー配慮および女性 障害者研修に関する事項は,現地調査による 情報及 び APCD の 日本人専門家 へ の イ ン タ ビューから得た情報である. 参考文献 青柳幸一(2008)「障碍をもつ人の憲法上の権利 と『合理的配慮』」「筑波 ロー・ジャーナ ル」 4 号 大曽根寛,小沢温編(2005)『障害者福祉論』財 団法人放送大学教育振興会 落合雄彦,金田知子編(2007)『龍谷大学国際社 会文化研究所叢書 4 アフリカの医療・障害・ ジェンダー─ナイジェリア社会への新たな複 眼的アプローチ─』(株)晃洋書房 越智薫(2008)「日本の技術協力における障害者 のメインストリーミング」『アジ研ワールド・ トレンド』第 14 巻第 6 号 通巻 153 号 川島聡,長瀬修仮訳(2007)『障害のある人の権 利に関する条約』 木下真理子(2005)「 JICA の取り組み」,国際開 発高等教育機構編『外務省委託 平成 17 年 度 NGO 研究会(障害分野)人間 の 安全保障 を踏まえた障害分野の取り組み─国際協力の 現状と課題─』 久野研二,David Saddon(2003)「開発 に お け る 障害(者)分野 の Twin-Track Approach の 実現 に 向 け て:『開発 の 障害分析』と 『 Community-Based Rehabilitation:CBR 』 の現状と課題,そして効果的な実践について の考察」国際協力事業団国際協力総合研修所 久野研二,中西由起子(2004)『リハビリテーショ ン国際協力入門』(株)三輪書店 近藤久史,二文字理明,藤田和弘編(2003)『社 会福祉ライブラリー① 障害者福祉概説』㈱ 明石書店 国際開発高等教育機構編(2005)『外務省委託  平成 17 年度 NGO 研究会(障害分野)人間 の安全保障を踏まえた障害分野の取り組み─ 国際協力の現状と課題─』 国際協力機構(2003)『課題別指針 障害者支援』 国際協力機構(2008)『キャパシティ・ディベロッ プメントに関する事例分析 アジア太平洋障 害者センタープロジェクト』 国際協力事業団(2002)『課題別指針 ジェンダー 主流化・WID 』 田中由美子,大沢真理,伊藤 る り 編(2002)『開 発とジェンダー エンパワーメントの国際協 (337)

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参照

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三〇.

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