Title
ロシアにおける立憲主義の生成と憲法裁判制度( はしがき )
Author(s)
竹森, 正孝
Report No.
平成10年度-平成11年度科学研究費補助金 (基盤研究(C)(2)
課題番号10620025) 研究成果報告書
Issue Date
1999
Type
研究報告書
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/65
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。は し が き 本報告は、平成7∼8年度科学研究費補助金(一般研究(C))研究「ロシア新憲法の原 理と体系」に引き続く、「ロシアにおける立憲主義の生成と憲法裁判」と鬼する平成10∼ 11年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))の研究成果報告書である。 この間、私は、社会主義の「再生」を課題としたベレストロイカからソ連崩壊をともな った脱社会主義化、脱ソビエト化へと展開するロシアの政治過程を、ロシアの新憲法制定 過程の研究、その新憲法の原理と体系の研究をつうじてフォローしてきた。さまざまの問 題をはらみつつ成立した93年ロシア憲法も、制定後すでに6年余を経ており、新憲法に 対応しての立法酒動もかなり進展をみせている02000年3月には、エリツィン大統領 の突然の辞任を介してではあるが、新しい大統領が選挙をつうじて選出され、表面上は9 3年憲法の定着とそのもとでの立憲政治の確立がなったかに見える。しかし、それは果た して確立したといえるのであろうか、それとも未だ生成途上にあり、確立したものとはい えないのであろうか。私自身は、立憲主義の理解にもかかわるが、その確立のメルクマー ルのひとつに大統領制の機能変化が不可欠だと考えている。人権の保障と権力の分立とい う古典的立憲主義理解からいっても、立法権、執行権のうえに超然と存在しうる大統領の 地位は、権威主義体制には適合的であっても、近代立憲主義の伝統にはそそわないと考え るからである。 本研究は、そうした基本的立場を前提としたうえで、人権保障、連邦制、地方自治制度 などの領域で、憲法的価値(それ自体考無限定に是認することは93年憲法の場合には留 保が必要であるが)の実動こ多大の影響を及ぼしている憲法裁判所の寄与を判決の検討等 をつうじて明らかにしようとするものである○現代の憲法裁判は、しばしば指摘されるよ うに、憲法秩序、憲法体制の擁護機能をその主要な任務としており、ロシアの憲法裁判制 度もその例外ではない0しかし、時に憲法裁判所は、国際人権条約やヨーロッパ地方自治 憲章などを根拠として、その憲法をも越えようとすることがある。そこに、現代ロシアの 憲法政治と現代立憲主義のもつ複雑な特徴がうかがわれるのである。 こうした視点にたち、2年間にわたり、ロシア立憲主義の生成の過程を憲法裁判制度を