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権利擁護支援体制構築に向けた社会ネットワーク形成の諸相─中山間地域における権利擁護支援センター誕生までを事例として─

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『日本福祉大学社会福祉論集』第 130 号 2014 年 3 月 

Abstract:Municipal offices functioned as a consultation service in the both cases such as staff members of specialized institutions could not judge if advocacy is necessary and staff members believed that it is necessary.

 The purpose of this research is to make the fundamental resources for the social network formation of the advocacy supporting system and its supporting center in a mountainous area. In the survey, questionnaire research was done to the welfare professionals in the area, asking current state, issues and necessary things to support advocacy. Based on this survey, we studied the construction of networking to support advocacy.

 We found the following issues from the survey. (1) Advocacy is necessary when troubles in keeping track of finances and family relationship takes place. (2) The situation where right protection, or the case which strayed and the case where right protection support is needed, first of all, achieves the consultation window function of each organization of right protection of the window of a town in a specialized agency, and support organization is produced is seen. (3) We found that the consultation was promoted most in the sections for elderly-people welfare of the local government. Then welfare commissioner and a social welfare council of the town followed. .In this area, the local residents and local government played important roles in this issue.

権利擁護支援体制構築に向けた

社会ネットワーク形成の諸相

  

中山間地域における権利擁護支援センター誕生までを事例として   

仲 野 真由美 

垣 屋 稲二良 

松 田   悟 

寺 垣 琢 生 

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要 旨  本研究の緒言は,人々が主体性を持ち,健康で豊かに心地よく暮らせる地域社会の実 現のために,地域の社会ネットワークはどのような役割を果たすのかという問いであ る.本稿では,中山間地域の権利擁護支援事業のネットワーク形成の諸要件に焦点を置 き調査し,その問いを考察する事を試みた.  調査は,T県東部地域における権利擁護支援体制の実態把握と,平成23 年度に設置 予定の権利擁護支援センターにおける設置構想策定のための基礎資料とするために行っ た.その調査では,地域の福祉専門職に対して,権利擁護支援における現状や課題,支 援を行う上で必要な事等を尋ねた.その調査結果を基に,全国権利擁護支援センターが 示した権利擁護の実践概念枠組みに照らし,権利擁護支援体制のネットワーク構築につ いて考察した.  結果,(1)権利擁護支援の必要性が生まれるのは,権利擁護支援制度の利用者とはっ きりと断定できる場合と,金銭管理や家族等の人間関係で迷うケースだった.(2)各専 門機関で権利擁護支援が必要かどうか迷ったケースや権利擁護支援が必要とされるケー スは,市町村窓口が最初の窓口として機能を果たしていた.(3)連携により相談状況は 進捗したか尋ねると,市町村福祉担当課が最も多く,ついで,民生委員と市町村社会福 祉協議会だった.T県東部地域では,住民や市町村行政等の役割が大きいと言えた.

キーワード:Construction of right protection, Social network, social welfare council

 1.はじめに

 1.1 研究目的  本研究の目的は,権利擁護支援事業における社会ネットワーク形成の諸要件を,中山間地域の 権利擁護ネットワークの実態調査を基に明らかにすることにある.  1.2 研究背景  2000 年 4 月 1 日から施行された成年後見制度は,それまでの民法で規定された「禁治産者・ 準禁治産者宣告の制度」を大幅に見直したものである.それは,ノーマライゼーションの思想と 共に個人の「自己決定」が尊重される動きが広がり,社会福祉基礎構造改革においても措置制度 から契約制度へと利用者が自ら福祉サービスを選択し,サービス提供事業者と契約する利用制度 への転換がはかられる中で誕生した.そして,13 年を迎える.  また,成年後見制度のみならず,日常生活自立支援事業 (旧地域福祉権利擁護事業)により, 住民ができる限り地域で自立した生活を継続していくために必要なものとして,福祉サービスの

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利用援助やそれに付随した日常的な金銭管理等の援助が行われている.そして,現在,市民後見 人の養成が各地域で始まり,より権利擁護の取り組みが地域の住民主体で行われる仕組みの構築 へと転化されてきている.  その根底にあるのは,認知症高齢者や知的障害者あるいは精神障害者など判断能力の不十分と される人は,財産の管理や身上監護について契約,遺産を分割するなどの法律行為を自分で行う ことが困難であるという前提である.しかし,「判断能力が不十分」とされる人々も,自分で判 断し実行できることもあり,法律行為における自己決定の実相は多様である.  また,福祉サービス利用者を中心として,そのような人々への権利擁護支援体制の構築は,地 域で不可欠であり,それは,法律関係者や福祉関係者がそれぞれ単独で行うよりも,多職種の ネットワークを構築して行う事が有効であり効果的であることは先行研究で論じられてい る1) 2)3)  1.3 先行研究  新村氏は4),「多職種の専門職,権利擁護に携わっている諸機関・諸団体の担当者,地域で権 利擁護実践に関わっている市民等によって構成されるネットワークがうまく機能すれば,解決困 難に思われるケースについても,適切な解決策を見出すことができる.逆にどんな有能な専門職 であっても,単独で問題解決しようとすればうまくいかないことも少なくない」と述べ,権利擁 護におけるネットワークのメリットとして,以下の4 点を挙げている.  第1 に,直接的な効果として,クライエントが抱える課題・問題が単一職種の専門職・機関に 相談する場合と比べてより良い方向で解決され得る.  第2 に,たとえば地域包括支援センター等に時にみられるように,専門職ないし専門機関が, 自分だけでは解決策と見いだし得ない困難な問題を抱え込み,どのように関わったらよいか悩 み,行き詰ることがあるが,ネットワークに問題提起することにより解決への糸口を見いだすこ とができ,専門職が一人で悩み,消耗するという事態を回避する事ができる.  第3 に,権利擁護ネットワークの参加者にとって,そこでの事例検討会や学習会に参加する事 を通じて,自分が抱えている困難ケースの解決への手がかりが得られるだけでなく,自分自身の スキルアップができ,当然ながら,他の多様な専門職とのつながりができる.  第4 に,ネットワークへのその地域の多様な専門職・諸機関の参加が増えれば増えるほど,地 域の専門職・諸機関の連携・協力関係が強化され,結果としてその地域の「権利擁護状況」,ひ いては「福祉力」が著しく向上するだろう.  また,平田氏5)は,「権利擁護という言葉が,正義の言葉として,定義も批判もない状態に置 かれすぎている気がしている.」と述べ,その実質的な発展のためにも,定義や批判を活性化さ せておくべきと述べる.  では,各地域で多様な権利擁護に関する社会ネットワークが構築され,権利擁護支援の問い直

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ろうか.そのネットワーク構築の実態を考察してみたい.  1.4 概念枠組み  先行研究から権利擁護支援システムを捉える概念枠組みとして,全国権利擁護ネットワークが 提示した以下の支援軸の概念を用いる6).①生活支援,②相談援助,③法的支援の3 つの支援が 揃っていないと被後見人を支える事は難しいとされている.その支援軸を用い,対象地域の支援 状況を確認する.

 

2 .調査方法

 本調査は,T県東部地域における権利擁護支援体制の実態把握および平成23 年度に設置予定 の権利擁護支援センターにおける設置構想策定のための基礎資料とするために行った.その際, 地域で活動する福祉相談専門職に対して,権利擁護支援における現状や課題,支援を行う上で必 要なものについて調査した.その調査を基に,上記概念を基に,権利擁護支援体制のネットワー ク構築について考察する.  2.1 調査対象機関  T県A 地域における以下の 189 件の保健・医療・福祉機関に対して,担当者へ個別に郵送し, 留置質問紙調査を実施した(表1).回収率は 118 件(62.4%)だった.  2.2 調査期間  2011 年 11 月 15 日~ 2011 年 12 月 16 日 図1 権利擁護の実践概念図

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 2.3 研究選定地域と調査の特徴  2013 年 3 月の時点で,A 地区は,人口 235,907 人(T県人口 580,516 人),高齢化率 26.4% の 限界集落も抱える中山間地域であり,山間部での高齢者独居世帯の増加や,若者の山陽・近畿圏 への流出等による介護力の低下など,課題を抱える地域となっている.  そのようなT 県 A 地域において,2013 年 4 月,権利擁護支援センターが誕生した.平成 2011 年8 月から 2013 年 3 月にかけて,筆者等は,そのセンターの前身である権利擁護支援センター 設立準備委員会に所属し,権利擁護支援に従事しながら,成年後見ネットワーク会員と共に,地 域に存在する保健・医療・福祉サービス機関へ向けた権利擁護実態調査を行った.  その結果,T県A 地区における権利擁護の課題として以下の 3 点が明らかにされた. 1 .権利擁護の相談窓口について,本人と家族が利用に消極的である. 2 .虐待通報が「ためらわれ」地域包括支援センターが「迷うケース」において,結果とし て,地域で頼ることができず置き去りにされる権利擁護ケースがある. 3 .地域包括支援センターでは権利擁護以外の相談で忙しく,個別の権利擁護事案に対応で きていない現状がある.  以上の課題から,3 つの地域の社会資源の必要性が考えられた. 1 .住民が権利擁護について理解するための啓発機関の設置と市民講座の開催. 2 .権利擁護の相談窓口や機能がわかりやすく示され,住民の相談に迅速に対応してくれ,か つ,具体的解決をしてくれる相談窓口. 3 .市町村の地域包括支援センターや事業所が判断に迷った時に相談にのり,迅速な対応がで きるサポート機関  この調査結果を住民や県,市町村に向け公表して理解を得,権利擁護センターが誕生した.本 研究では,この調査結果7)と実践を分析対象とした. 表1 調査対象機関 対象機関 配布箇所数(件) ○居宅介護支援事業所 ○小規模多機能型居宅介護事業所 56 ○市・町 福祉担当課 6 ○高齢者施設 63 ○地域包括支援センター 8 ○障がい者(児)相談支援事業所 ○障がい者(児)自立支援法に基づく事業所 42 ○病院 14 合  計 189

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 2.4 倫理的配慮  質問紙調査送付の際,調査の概要を説明し,調査結果は匿名で所属等が分からないように配慮 する事を文書で述べ,調査協力を頂いた.

 

3 .分析結果

 調査結果を以下の3 つの視点で分析してみる.①権利擁護が必要な人々をどのような機関で支 援しようとしているか,②どのような状況の時,権利擁護支援のネットワーク体制が生まれるの か,③権利擁護支援体制を構築する社会的なネットワークは役割を果たすのか.  3.1 査回答者の基本属性  回答者の所属する機関は,居宅介護支援事業所が最も多く,次いで高齢者施設,障害者施設の 順だった(表2).権利擁護ケースは回答者担当者 1 人当たり 15.62 件,権利擁護ケース以外一 人当たり78.65 件,どちらか迷うケースは 2.41 件だった(表 3 参照).  回答者118 人の内,成年後見制度利用は,「利用している」31 件(26.3%),「未利用」が 74 件(62.7%),無回答 13 件(11%)だった.「利用している」31 件の内,そのうち,補助 5 名 (16.1%)補佐 11 件(35.5%),後見 6 件 (19.4% ),任意後見 5 件(16.1%),無回答 4 件 (12.9% ) だった.成年後見制度利用の利用が必要と思われるが利用に至っていないケースがあるかの問い に,ある40 件(33.9%),ない 62 件(52.5%)無回答 16 件(13.6%)だった.  表4 は,権利擁護ケース等を誰がサポートしているかを示した結果である.権利擁護ケース数 が多いのは居宅介護支援事業所51 件であり,次いで病院 46 件との回答を得た.また,どちらか 迷うケースについても居宅介護事業所が19 件見られた. 表2 調査対象者の基本属性 番号 区 分 回答数(人) 割合(%) 1 居宅介護支援事業所 48 40.8 2 小規模多機能型居宅介護事業所 5 4.2 3 地域包括支援センター 11 9.3 4 障がい者相談支援センター 1 0.8 5 高齢者施設 23 19.5 6 障がい者(児)施設 20 16.9 7 病院 8 6.8 8 市町障がい福祉担当課 2 1.7 合  計 118 100

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 3.2 調査結果 1―権利擁護が必要な人々をどのような機関で支援しようとしているか  では,権利擁護が必要な人々をどのような機関が支援しようとしているだろうか(表5).総 数からみると居宅介護支援事業所52 件(35.6%),次いで,高齢者施設 27 件(18.4%),地域包 括支援センター24 件(16.4%)だった.  虐待のケース,セルフネグレクトのケース,消費者被害のケース,多重債務による経済困窮の ケース,本人の金銭( 財産 ) 管理方法親族間の調整が難しい軽度のケース,成年後見制度や地域 福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース,高齢者と障害者等の同一親子(孫)世帯で, どちらにも権利擁護支援が必要なケース等,どのケースでも居宅介護支援事業所で対応している 状況が見られた. 表4 ケースをサポートしている機関 (件) 区  分 居宅介護 支援 事業所 小規模多機能 型居宅介護 支援事業所 障害者 相談支援 センター 高齢者 施設 障がい 者(児) 施設 病院 市町障が い福祉 担当課 合計 権利擁護ケース 回答者数 22 1 8 8 5 44 ケース数 51 2 19 14 46 132 一 人 当 た り 2.3 2.0 0.0 2.4 1.8 9.2 0.0 3.0 権利擁護ケース 以外のケース 回答者数 9 1 2 1 2 15 ケース数 20 1 150 2 8 181 一 人 当 た り 2.2 1.0 0.0 75.0 2.0 4.0 0.0 12 どちらか迷う ケース 回答者数 7 1 2 3 1 14 ケース数 19 1 12 4 1 37 一 人 当 た り 2.7 1.0 0.0 6.0 1.3 1.0 0.0 3 合計 ケース数 90 4 0 181 20 55 0 73 表3 権利擁護ケース数(担当したケースの分析) 区  分 回答件数(件) 合計ケース数(件) 一人当たり(件) 権利擁護ケース 50 781 15.62 権利擁護ケース以外のケース 20 1573 78.65 どちらか迷うケース 17 41 2.41 合  計 87 2395 96.68 *有効回答数のみで集計

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 3.3 調査結果 2―どのような状況の時,権利擁護支援のネットワーク体制が生まれるのか  1)権利擁護の必要性と関係機関の支援状況  権利擁護の必要性について相談内容をどの機関が支援しているか調査結果を示す.権利擁護対 応のケースと判断されるのは,成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われる ケース38 件(26.0%),本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友人,知人)の間の調整が難し いケース30 件(20.5%)虐待ケース(27%)等だった(表 6).  権利擁護の判断に迷うケース通して,本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友人,知人)の 間での調整が難しいケース11 件(28.2%),成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要 と思われるケース8 件(20.5%)だった(表 7).  権利擁護ケースやどちらか迷うケースについて,所属事業所や地域包括支援センター以外のど の機関と相談しているかについて表8 に示す.合計件数から見ると,成年後見制度や地域権利擁 護事業の利用が必要と思われるケースに次いで,虐待ケース,高齢者と障害者等の同一親子世帯 表5 権利擁護支援が必要な人々と支援体制 (所属別権利擁護ケースの状況)       (件) 区  分 居 宅 介 護 支 援 事 業 所 小 規 模 多 機 能 居宅介護事業所 地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー 障 が い 者 相 談 支 援 セ ン タ ー 高 齢 者 施 設 生 が い 者 ( 児 ) 施 設 病 院 市 町 障 が い 福 祉 担 当 課 合     計 1 虐待(身体的,心理的,ネグレ クト,経済的,性的)ケース 11 5 4 3 4 27 2 セルフネグレクト(対象者によ る介護拒否,環境劣化(ゴミ屋 敷など))のケース 3 1 3 1 1 9 3 消費者被害(第三者,悪徳業者 などによる)のケース 7 1 2 3 1 14 4 多重債務(対象者自身や家族) による経済的困窮のケース 3 1 3 2 2 2 13 5 本人の金銭(財産)管理の方法 で親族(友人,知人)の間の調 整が難しいケース 10 1 3 9 4 3 30 6 成年後見制度や地域福祉権利擁 護事業の利用が必要と思われる ケース 14 1 6 8 5 4 38 7 高齢者と障がい者等の同一親子 (孫)世帯で,どちらにも権利 擁護支援が必要なケース 4 2 3 2 3 14 8 その他のケース 1 1 合  計 52 6 24 0 27 18 19 0 146

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でどちらにも権利擁護支援が必要なケースと続く.また,判断に迷うケースの相談先について専 門機関別に見ると,権利擁護支援を専門とする弁護士,司法書士,社会福祉士よりも市町村社会 福祉協議会や高齢者福祉担当課の担当職員に相談するケースが多いことが分かる.  以上のことから,権利擁護支援の必要性が生まれるのは,権利擁護支援制度の利用者とはっき りと断定できる場合と,金銭管理や利用者の状況として家族等の人間関係で迷うケースがあげら れる.また,専門機関で権利擁護か迷ったケースや権利擁護支援が必要とされるケースは,まず は,市町村の窓口が権利擁護の各機関の相談窓口機能を果たし支援体制が生まれる状況が見られ た. 表6 専門職が対応する権利擁護ケース 区     分 回答数 割合(%) 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト,経済的,性的)ケース 27 18.5 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒否,環境劣化(ゴミ屋敷など))のケース 9 6.2 3 消費者被害(第三者,悪徳業者などによる)のケース 14 9.6 4 多重債務(対象者自身や家族)による経済的困窮のケース 13 8.9 5 本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友人,知人)の間の調整が難しいケース 30 20.5 6 成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース 38 26 7 高齢者と障がい者等の同一親子(孫)世帯で,どちらにも権利擁護支援が必要なケース 14 9.6 8 その他のケース 1 0.7 合     計 146 100.0 ※その他=「DV」 表7 専門職が権利擁護の判断に迷うケース 区     分 件数 割合(%) 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト,経済的,性的)ケース 5 12.9 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒否,環境劣化(ゴミ屋敷など))のケース 7 17.9 3 消費者被害(第三者、悪徳業者などによる)のケース 3 7.7 4 多重債務(対象者自身や家族)による経済的困窮のケース 2 5.1 5 本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友人,知人)の間の調整が難しいケース 11 28.2 6 成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース 8 20.5 7 高齢者と障がい者等の同一親子(孫)世帯で,どちらにも権利擁護支援が必要なケース 3 7.7 8 その他のケース 0 0.0 合     計 39 100.0 ※その他=「DV」

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表8 判断に迷うケース事例の相談機関先 区  分 合計件数 ア   弁護士(弁護士会) イ   司法書士(リーガルサポート) ウ   社会福祉士 エ   法テラス オ   警察 カ   担当主治医 キ   家族会 ク   民生委員 ケ   県社会福祉協議会 コ   市町社会福祉協議会 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト,経済的,性的)ケース 45 2 2 2 2 4 4 1 2 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒否,環境劣化(ゴミ屋敷など))のケース 27 1 4 3 2 3 消費者被害(第三者,悪徳業者などによる)のケース 27 2 3 1 1 1 2 1 3 4 多重債務(対象者自身や家族)による経済的困窮のケース 33 3 4 1 5 1 1 2 5 本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友人,知人)の間の調整が難しいケース 41 3 3 1 2 5 10 6 成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース 58 5 3 2 1 3 2 3 13 7 高齢者と障がい者等の同一親子(孫)世帯で,どちらにも権利擁護支援が必要なケース 43 2 3 2 3 2 5 8 その他のケース 合  計 274 18 18 8 7 3 15 0 16 11 37 区  分 サ   東部福祉保健局 シ   市町福祉事務所 ス   消費生活センター セ   障がい福祉担当課 ソ   障がい者相談支援事業所 タ   精神保健福祉センター チ   高齢者福祉担当課 ツ   成年後見ネットワーク テ   保健センター ト   その他 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト,経済的,性的)ケース 4 1 3 2 1 8 2 1 4 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒否,環境劣化(ゴミ屋敷など))のケース 2 3 1 1 1 2 2 2 3 3 消費者被害(第三者,悪徳業者などによる)のケース 1 6 1 1 2 2 4 多重債務(対象者自身や家族)による経済的困窮のケース 1 3 3 1 2 3 1 2 5 本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友人,知人)の間の調整が難しいケース 1 1 1 4 5 2 1 2 6 成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース 4 3 2 1 7 5 2 2 7 高齢者と障がい者等の同一親子(孫)世帯で,どちらにも権利擁護支援が必要なケース 1 3 5 4 1 6 2 4 8 その他のケース 合  計 9 18 10 14 15 3 33 13 7 19

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 2)高齢者虐待における通報と支援体制について  判断に迷うケースとして,高齢者虐待を通報することからネットワークが形成される可能性が ある.  その現状について調査結果を概観してみる(図表1).「あなたは虐待ケースを通報することに どのように感じますか」という問いに,「速やかに通報する」64 件(54.3%),「通報することを ためらう」34 件(28.8%)「無回答」20 件(16.9%)だった.  これまで通報をためらう事があるは9 件(26.5%)で,その内,ネグレクトや身体的虐待,経 済的虐待のケースについて通報をしないケースが見られた(図表2).  通報をためらう要因として,「相談しても解決に向かうか疑わしいから」20 件 (21.1% )「対象 者家族が通報することを望まないと感じるから」13 件(13.7%)「対象者本人が通報することを 望まないと感じるから」「通報する事でケース支援が複雑になると思うから」12 件(12.6%) だった(表9). 区  分 回答数 割合(%) 速やかに通報する 64 54.3 通報することをためらう 34 28.8 無回答 20 16.9 合  計 118 100.0 図表1 虐待を通報することについて 区  分 回答数 割合(%) あ  る 9 26.5 な  い 25 73.5 合  計 34 100.0 図表2 これまでに通報しなかったケース (上表のうち「ある」回答の類型内訳) 区  分 回答数 割合(%) 身体的虐待 3 33.4 ネグレクト 4 44.4 心理的虐待 0 0.0 性 的 虐 待 0 0.0 経済的虐待 2 22.2 合  計 9 100.0 これまで通報しなかったケースはあるか。

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 3.4 調査結果 3―権利擁護支援体制を構築する際,社会的ネットワークは役割を果たすのか  権利擁護支援体制を構築する際の連携状況を見てみると(表10),居宅介護支援事業所への連 携が41 件で,その内,成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース 12 件(29.2%)虐待ケース 7 件(17.0%)だった.次いで多いのが,地域包括支援センター 25 件 で,宅介護支援事業所への連携が41 件で,その内,虐待ケース 7 件(17.0%),成年後見制度や 地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース12 件(29.2%)だった.  ケース別にみる関係機関との連携による進捗状況は(表11),「進展した」「少し進展した」を 含めると,成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の利用が必要と思われるケース20 件 /21 件, 虐待ケース17 件 /23 件だった.「あまり進展していない」「全くしていない」の合計を見てみる と,「本人の金銭(財産)管理の方法で親族間(友人,知人)の間で調整が難しいケース」7 件/21 件,「虐待ケース」6 件 /23 件だった.  また,表12 は,どの関係機関や専門職と連携するとケースの相談は進捗するかを調査した結 果である.全体的に「進展した」「少しした」の件数が多く,様々な関係機関や専門職と連携を とることが,ケースへの対応を進展させることがうかがえた.その内訳として,「進展した」「少 表9 通報することをためらう要因(複数回答可) 原   因 回答数 割合(%) ①通報することでケース支援が複雑になると思うから 12 12.6 ②書類の作成など,事務手続きが煩雑だと感じるから 2 2.1 ③通報先がわからないから 1 1.1 ④相談しても解決に向かうかどうか疑わしいと感じるから 20 21.1 ⑤家族の生活歴や成育歴の特性だと感じるから 10 10.5 ⑥事実確認を要求され,それが負担と感じるから 8 8.4 ⑦対象者本人が通報することを望まないと感じるから 12 12.6 ⑧対象者家族が通報することを望まないと感じるから 13 13.7 ⑨通報しても関係機関(者)が相談に応じてくれないと感じるから 5 5.3 ⑩自分自身の活動を評価や批判されるように感じるから 6 6.3 ⑪その他(   ) 6 6.3 合   計 95 100.0 :その他 家族の特性なのか,判断に迷うケースがあった. 確実に虐待であるか確信が得られない. 虐待ではないかもしれない為. 虐待の内容による。通報するより,関わっている事業所等関係者とまず相談すると思う. 程度による. 包括へはすぐ通報できるが警察には・・・.

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表10 ケース状況別にみる関係機関との連携状況 (件) 区  分 居 宅 介 護 支 援 事 業 所 小 規 模 多 機 能 居 宅 介 護 事 業 所 地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー 障 が い 者 相 談 支 援 セ ン タ ー 高 齢 者 施 設 障 が い 者 ( 児 ) 施 設 病 院 合     計 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト, 経済的,性的)ケース7 7 2 2 3 21 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒 否,環境劣化(ごみ屋敷など))のケース 1 1 4 1 1 8 3 消費者被害(第三者,悪徳業者などに よる)のケース 8 2 3 13 4 多重債務(対象者自身や家族)による 経済的困窮のケース 3 1 3 2 2 1 12 5 本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友 人,知人)の間の調整が難しいケース 8 1 6 5 1 21 6 成年後見制度や地域福祉権利擁護事業 の利用が必要と思われるケース 12 5 4 2 3 26 7 高齢者と障がい者等の同一親子(孫)世帯 で,どちらにも権利擁護支援が必要なケース 2 1 3 1 3 10 8 その他 1 1 合  計 41 3 25 0 15 16 12 112 表11 ケース別にみる連携による進展状況 区  分 進展した 少しした あまりし ていない 全くして いない 無回答 合 計 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト, 経済的,性的)ケース 12 5 3 3 23 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒 否,環境劣化(ごみ屋敷など))のケース 2 2 3 7 3 消費者被害(第三者,悪徳業者などに よる)のケース 9 2 11 4 多重債務(対象者自身や家族)による 経済的困窮のケース 7 5 12 5 本人の金銭(財産)管理の方法で親族(友 人,知人)の間の調整が難しいケース 9 5 4 3 21 6 成年後見制度や地域福祉権利擁護事業 の利用が必要と思われるケース 14 6 1 21 7 高齢者と障がい者等の同一親子(孫)世帯 で,どちらにも権利擁護支援が必要なケース 3 2 2 1 8 8 その他 1 1 合  計 56 28 13 3 4 104

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しした」の内訳を見てみると,高齢者福祉担当課が最も多く14 件,民生委員と市町村社会福祉 協議会9 件だった.T県 A 地域では,住民や町村行政等の役割が大きいと言える.  以上の結果を総括すると,権利擁護支援体制を構築する際に,専門職機関での社会的ネット ワークは役割を果たしており,実際のケース対応には,居宅介護支援事業所や地域包括支援セン ターが役割を果たし,どちらか迷うケースの相談には,住民や社会福祉協議会の役割を果たし, 権利擁護体制が構築されていくという結果を得た.  また,新設の権利擁護支援センターへの期待は,特に,日頃から権利擁護の相談窓口として機 能を果たしている居宅介護支援事業所や高齢者施設,地域包括支援センターから新設の権利擁護 支援センターに要望する回答が寄せられた.権利擁護支援が必要な人々への相談をはじめ,他制 度の掛け渡し等の機能と幅広く役割を期待されている現状が見られた(表13). 表12 関係機関別にみる連携の進捗状況 区   分 進展した 少しした あまりしていない 全くしていない 合  計 ア 弁護士(弁護士会) 6 2 1 9 イ 司法書士(リーガルサポート) 6 1 2 9 ウ 社会福祉士 2 1 3 エ 法テラス 1 1 オ 警察 1 1 2 カ 担当主治医 4 3 7 キ 家族会 0 ク 民生委員 6 3 9 ケ 県社会福祉協議会 1 1 コ 市町社会福祉協議会 7 2 1 10 サ 東部福祉保健局 1 1 2 シ 市町福祉事務所 4 1 1 6 ス 消費生活センター 2 2 1 5 セ 障がい福祉担当課 4 3 1 8 ソ 障がい者相談支援事業所 5 2 7 タ 精神保健福祉センター 1 1 チ 高齢者福祉担当課 8 6 1 15 ツ 成年後見ネットワーク 4 2 6 テ 保健センター 2 2 4 ト その他 6 1 2 9 件   数 70 30 14 0 114

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4 .考察

 4.1 回答者の基本属性と調査結果 1 から-居宅介護支援事業所と権利擁護支援における役割 について  調査結果から,居宅介護支援事業所が権利擁護のケースを多くサポートしている現状がうかが えた.成年後見制度の周知について見ると,利用の必要性が判断できなくて利用できない場合の 表13 新設の権利擁護支援センターに求めるもの (件) 区   分 居 宅 介 護 支 援 事 業 所 小規模多機能型 居宅介護事業所 地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー 障 が い 者 相 談 支 援 セ ン タ ー 高 齢 者 施 設 障 が い 者 ( 児 ) 施 設 病      院 市 町 障 が い 福 祉 担 当 課 合     計 ①権利擁護支援ケース(疑いを含 む)の相談(判断や承認)機能 22 1 6 1 9 5 3 1 48 ②ケース事例に関する全体コーディ ネート(家族支援を含む) 17 6 9 5 4 1 42 ③成年後見制度における申し立て支援 21 4 5 3 4 1 38 ④成年後見制度における後見候補者 の調整(法人後見も含む) 11 3 2 1 4 1 22 ⑤成年後見制度の申し立て費用の調整 9 2 1 1 2 15 ⑥成年後見人のための相談支援窓口 14 1 5 10 3 4 1 38 ⑦司法関係者(債務整理や裁判所申 し立て委任等)への橋渡し 14 4 3 2 3 1 27 ⑧利害関係者との調整 3 1 1 1 14 ⑨虐待事案における養護者の直接的 な支援や支援調整 13 2 1 2 1 2 21 ⑩強制介入(危機介入を含む)を要 するケース事案の初動対応 11 1 2 3 1 2 20 ⑪ケース事案の進捗管理 4 2 1 5 1 2 15 ⑫他制度,他施策への橋渡し 12 2 3 1 2 20 ⑬ケース事例の直接的な対応を全て 移管できる 11 1 1 1 3 1 2 20 ⑭一般市町民向けの講座 11 5 1 1 18 ⑮その他 1 4 5 合   計 179 4 47 4 60 27 35 7 363

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られる.  また,回答者の内,補助や補佐の件数が多い事は,権利擁護体制の中で,被後見人の意思や自 己決定が尊重されながら支援されているケースと考えられる.その中で,権利擁護ケースと判断 される場合のみならず,権利擁護ケースかどうか迷うケースについても居宅介護支援事業所で対 応している状況が見られた.居宅介護支援事業所の役割として,保健・医療・福祉サービス機関 の利用における相談や調整,契約締結までに至るまでの相談もあり,事業所のどの業務において 権利擁護ケースと判断され権利擁護のサポートが行われているのかを把握する事が今後必要と思 われた.  特に居宅介護支援事業所と地域包括支援センターが併設している事業所では,どのように役割 分担しているだろうか.「地域包括支援センター業務マニュアル」8)によると,地域包括支援に おける「権利擁護業務としての関わり方」の中で,以下の5 点が役割として述べられている.① 地域からもたらされる広範な相談や情報から判断して緊急性の高いと思われる場合には,迅速に 支援する事,②必要に応じた訪問(アウトリーチ)による実態把握と状況確認を行う事,③生活 全体を視野に入れ,一つのサービス制度の適用のみでなく,それらの間をつないだり,必要な社 会資源を開発したりすることを含め,幅広い観点から支援を行う事,④地域の実情に応じた連携 とネットワークによりできる限り社会資源を有効利用すること,⑤一人ひとりの生きる力を引き 出す(エンパワメント)対人援助を行う事.そのような役割を担う機能を果たすことが求めら れ,成年後見手続きと並行しながら支援がされていると考えられる.また,地域包括支援におけ るネットワークの意義として,①ニーズ発見機能,②相談連結機能,③支援機能,④予防機能の 4 つの機能がマニュアルに述べられている.  本調査結果から,居宅介護支援事業所が,虐待ケース,ネグレクトのケース,経済困窮ケース に相談対応している状況が見られた.また,金銭関係をめぐる親族(友人,知人)との関係調整 が難しいケースにおいても権利擁護支援されている状況が明らかにされた.ゆえに,居宅介護支 援事業所や地域包括支援センターがそのような人々のエンパワメントし,対人援助の一役を担 い,関係調整を担うことができるような方法論が確立されていく必要とも考えられる.そして, 居宅介護支援センターで戸惑い迷うケース等については,弁護士や社会福祉士等の成年後見業務 を担う人々に気軽に相談し,権利擁護支援がもれなく受けられる体制づくりが必要と思われた.  4.2 どのような状況の時,権利擁護支援のネットワーク体制が生まれるのか  1)権利擁護の必要性と関係機関の支援状況  権利擁護支援ケースと判断されるのは,成年後見制度が必要と思われるケースのほかに,金銭 管理に関する親族間等の人間関係の調整が難しいケースであった.ゆえに,金銭管理の必要性と 人間関係調整から権利擁護ケースのネットワークは生まれる可能性があると言える.  2012 年 3 月日本福祉大学権利擁護研究センター開設シンポジウムにて,細井氏により,芦屋 市の事例9)を基に「地域のおける個別支援ネットワーク構築の取り組み」が報告され,個別支

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援から見えてきた課題として以下の3 点挙げられていた.①支援を必要とする高齢者の早期発 見,②高齢者虐待の潜在化と顕在化した虐待への対応,③複合支援ニーズを抱えた世帯への支援 体制強化.また,同じく,細井氏の発表の中で,平成20 年度に実施された権利擁護支援に関す る調査結果の中で「支援者の悩み」が以下のように示された.法的な対応が必要と思われる事案 には,①具体的な対応手続きが分からない.②司法関係者に対して,実際の手続の依頼にためら い繋がりにくさを感じると発表された.また,制度の狭間(疾病,年齢,障がい,経済)にある 事案には,①どの機関も中途半端な状況から対応しない.②誰もコーディネートや面接対応でき ない等があることが報告された.  本研究の調査結果からも,「判断に迷うケース」について,市町村社会福祉協議会や高齢者福 祉担当課の職員で対応しているケースが見られ,法的手段を講じる司法関係者へのダイレクトに 相談に至っていない実態が見られた.経済面での人間関係等,制度の狭間にある事案について は,権利擁護ケースとして「悩みの相談」が始まりとして,ネットワークが構築されることが示 唆された.  2)虐待における通報と支援体制-ネットワークの有効性と限界  本調査では,虐待については,「速やかに通報する」が多い状況であり,通報することにより 支援体制が広がるとも考えられた.しかし,「通報をためらう」専門職もあり,「なぜ通報をため らうのか」理由と尋ねた.すると,「相談しても解決に向かうか疑わしいから」との回答が見ら れた.このことから,虐待行為を認知していながらも,相談機能が果たせないために虐待の解決 行為に結び付かない現状があることが示唆された.このことから,警察等に通報する前に相談 し,解決に向けて対応してくれる機関と共に,支援者向けの相談窓口と即時対応できる機関の必 要性が考えられた.  また,虐待について「本人家族が,通報される事を望まないと感じるから」とする回答も見ら れ,支援について慎重になる専門職もいることが明らかとなった.権利擁護支援におけるネット ワーク構築は重要ではあるが,通報や支援を期待しない本人家族にとっては,それは家族の私的 関係への集団での「予期せぬ介入」を意味する.そこにネットワーク構築の難しさと限界がある と言える.支援する際のインテークにおける支援方法や継続的な関わりをどのように行うかによ り本人家族の受け止め方は異なり,その受け止め方により柔軟に支援体制が変化させる必要性が あると考える.虐待を見過ごしてはならないが,慎重に介入することが不可欠な事は言うまでも なく,ネットワーク構築における有効性と限界に関する見極めも考慮に入れながら対応しなくて はならないだろう.  4.3 権利擁護支援体制を構築する際に,社会的なネットワークは役割を果たすのか-市町村 と社会福祉協議会の役割

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進捗状況をみると,権利擁護支援体制を組み様々な機関と活動する方がケースの相談の進捗があ ることがうかがえた.その反面,金銭管理の親族間の調整については,進捗が難しい状況が見ら れた.そもそも,金銭管理の親族間調整は,福祉専門職で担いきれるものであろうか,もしく は,担えるような支援体制の構築をするとするならどのような支援体制が必要であろうか.  調査結果から,住民や社会福祉協議会の果たす役割は大きく,権利擁護体制を構築する上で社 会福祉協議会の活用が重要と思われた.社会福祉協議会では,主に日常生活自立支援事業(旧地 域福祉権利擁護事業の名称変更)についても関わりが大きいと言える.社会福祉協議会が行う日 常生活自立支援事業においても利用者の意思決定が難しい状況にある場合,成年後見制度の利用 とともに継続的な支援の必要性が課題と思われる. また,社会福祉協議会等に法人後見を要請す る機会が増え,結果,成年後見人を受任し相談に乗る件数が多い傾向にあるとも考えられた.  全国社会福祉協議会が実施した法人後見受任社協アンケート(2010 年 11 月 1 日時点)では, 法人後見を受任している都道府県・指定都市,市区町村社会福祉協議会は114 法人との結果が報 告されている10).社会福祉協議会における法人後見の特徴は,後見が4 分の 3 を占め,市町村 長の申し立てによる受任も全体の約6 割を占めていること等,自らの資力や親族関係では成年後 見制度が利用しにくい人々への支援となっている現状がある.  2012 年,日本福祉大学権利擁護研究センター開設シンポジウムにて,田邉氏により伊賀の社 会福祉協議会の取り組み11)が報告された.その中で,「制度からもれる人は必ず発生する」とし て,「本人の困りごとの中には,本人だけでは解決の難しいトラブルも含まれる可能性が高い. しかし,制度対応には必ず限界がある.困りごとの中は,将来背負う可能性のあるリスク・不安 が含まれている場合もある.ゆえに,相談支援・権利擁護支援の中で制度利用にとどまらない対 応が求められる」と述べられた.そして,伊賀における支援方法として,「安心生活想像事業」 や伊賀地域福祉後見サポートセンターの取り組みの実際が報告された.そのような,今まで,市 町村の身近な福祉の窓口として機能を果たしてきた社会福祉協議会が,具体的に事業展開する方 法を構築し,身近な機関として新たな権利擁護機能を果たしていくことは今後ますます重要にな ると思われた.  そして,高木氏は,市町村の役割として,たとえば,市町村申し立てによる受任件数は,2010 年度は3109 件(全体の約 10%)とある. 3108 件の内訳を家庭裁判所管轄内別に見ると,東京 524 件,大阪 340 件,横浜 247 件,200 件を超える件数の家庭裁判所がない事を挙げ,市町村申 し立てについても,地域間格差があることを指摘する12).市町村申し立てを行えば,市町村の 日常生活自立支援事業にも関与してくる状況があると考えられる.ゆえに,市町村申し立ての格 差は,成年後見制度利用支援事業等の利用の格差にもつながり,福祉行政における各市町村の福 祉行政における財政力による支援状況のあり方が左右されるとも考えられる.今後,そのような 市町村財政と成年後見利用支援事業との関係についての分析も必要になると言えよう.  また,調査結果から,民生委員等の役割が地域権利擁護の役割を果たす時に重要な役割を果た すと思われた.岩間氏は,地域を基盤としてソーシャルワークにおけるネットワークと連携・協

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働について,「クライエントの「生活のしづらさ」に焦点を当て,その生活上のニーズをとらえ, そこに対応できる援助システムを形成するには,専門職ならずインフォーマルサポートに関わる ネットワークを組み,共通の視点を持って連携・協働することが不可欠だ」と述べる13). 本調査 結果からも,住民と市町村,住民と地域包括支援センター職員等が協働して支援する体制づくり は不可欠であり,権利擁護に取り組む住民の存在は大きいと言える.  4.4 新設の権利擁護支援センターへの期待から見える地域特性  権利擁護支援体制に新設の権利擁護支援センターに期待されている事は,T県A地域の特性に も関連している.  高齢化と人口減少が急速に進む中山間地域における認知症高齢者への支援は,調査対象地域に とっても深刻な課題である.特に,調査結果から,高齢者施設や地域包括支援センター,居宅介 護支援事業所からの権利擁護支援センター創設へ向けての期待が大きいのは,急速な高齢化が進 む調査地域での高齢者に対する権利擁護支援の役割を果たすことの必要性と期待があることを物 語る.  また,限られた社会資源と財源の中で,協働関係やネットワークを組むことにより懸命に住民 の暮らしや命を守ろうとする医療や福祉,保健等の職員や住民自治により支えられていると言え るだろう.また,調査結果から市町村行政や市町村社会福祉協議会の役割は大きいと考えられ る.それらの社会資源とともに,新設権利擁護支援センターの役割について考察し,生かすこと も重要な課題と思われた.  

 おわりに

 以上の調査結果と考察から,人々の生活を支える支援体制として各機関が協働することが,権 利擁護の支援を進捗させることが調査結果から確認できた.また,地域社会の中で人を支える新 たな支援体制が生まれる時,既存する関連機関からの期待が役割を果たすことが示唆された. ゆえに,ネットワークの可能性と限界を考察しながら,人々の暮らしが守られるように協働関係 や絆をもとに権利擁護システムが構築されることの必要性があると思われた.  しかし,調査結果から,居宅介護支援事業所等に権利擁護支援の相談が集中する等の現状があ り,日々のケアマネジメントの実践を通して,どのように権利擁護に関する協働関係を築き上げ るかという課題がある.また,新設の権利擁護支援センターに,今まで居宅介護支援事業所が 担ってきた権利擁護の相談機能をどの程度果たし分担するのか,もしくは,虐待対応等につい て,新たな違う役割を果たし得る可能性があるのかということも開設後の課題である.  今後も,本調査結果を基に,権利擁護支援の実践を通して生まれる絆を大切に育む中,分析と 考察を続け,人々の暮らしが守られる地域社会の実現に向けて取り組んでいきたい.

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 謝辞  本研究をまとめるにあたりご協力下さった各事業所の皆様,権利擁護のあり方や地域ネット ワークに関する新たな知見をご教示下さった本学教職員の皆様に深謝いたします. 引用文献 1 )PAS ネット(2009)『権利擁護で暮らしを支える-地域をつないだネットワーク-』ミネルヴァ書房 2 )PAS ネット(2012)『福祉専門職のための権利擁護支援ハンドブック』ミネルヴァ書房 3 )高野範城,新村繁文(2010)「今なぜ権利擁護か-ネットワークの重要性-」福島大学ブックレット 『21 世紀の市民講座』No. 6 公人の友社, 4 )新村繁文他福島大学権利擁護システム研究所(2010)「社会的弱者の権利擁護の実現に向けて-権利 擁護ネットワークの重要性-「社会的弱者」の支援にむけて地域における権利擁護実践講座」.明石書 店:313-314 5 )平田厚(2012)『権利擁護と福祉実践活動:概念と制度を問い直す』明石書店 6 )佐藤彰一・平野隆之・湯原悦子他 全国権利擁護支援ネットワーク権利擁護支援システム構築専門委 員会(2013)『権利擁護支援システムを創ろう!~権利擁護支援活動マニュアル(ガイドブック)~』 7 )T県東部権利擁護支援センター設立準備会(2012)『権利擁護支援に関するアンケート調査結果報告 書』 8 )長寿社会開発センター(2011)『地域包括支援センター業務マニュアル』  www.nenrin.or.jp/center/event/pdf/manual03.pdf 9 )細井洋海(2012)「地域における個別支援ネットワーク構築の取り組み」『日本福祉大学権利擁護研究 センター開設記念シンポジウム抄録 制度から“もれる”人の権利擁護』:9 10)松田京子(2013)「第 4 章成年後見制度利用支援事業」『権利擁護と成年後見制度』中央法規:156-157 11)田邉寿 (2012)「地域における個別支援ネットワーク構築の取り組み~制度からもれる人たちへの支援 を中心に~」『日本福祉大学権利擁護研究センターシンポジウム抄録』:31 12)高木粧知子(2013)「第 5 章 3 節 市町村の役割」『権利擁護と成年後見制度』中央法規:153-155 13)岩間伸之・原田正樹(2012)「ネットワークの活用と連携・協働による援助」『地域福祉援助をつかむ』 有斐閣:76 参考文献 ・日本福祉大学権利擁護研究センター(2012)『日本福祉大学権利擁護研究センター開設シンポジウム  制度から“もれる”人の権利擁護』日本福祉大学権利擁護研究センター ・金圓景(2013)『地域における権利擁護支援システムの形成に関する調査研究(その 1)~権利擁護支援 システムの構成要素の視点から~』日本地域福祉学会 ・奥田佑子(2013)『地域における権利擁護支援システムの形成に関する調査研究(その 2)~権利擁護支 援システムの形成プロセスの視点から~』日本地域福祉学会 ・湯原悦子・平野孝之・上田晴男・佐藤彰一・竹内俊一・田邊寿(2013)「学会記録 権利擁護の領域に おける司法福祉実践」『日本福祉大学社会福祉論集 第128』:133-148 ・特定非営利法人東三河市民後見検討委員会(2012)『独立行政法人福祉医療機構社会福祉振興助成事業 市民後見人養成とサポートシステム構築事業報告書』 ・福田幸夫, 森長秀(2013)「権利擁護と成年後見制度」『権利擁護と成年後見民法総論 第 2 版』. 福祉臨 床シリーズ編集委員会編/責任編集. 弘文堂, ・民事法研究会(2013)『成年後見制度の位置づけと権利擁護  市民後見人養成講座:第 1 巻』 ・高野範城(2012)『社会保障・社会福祉の権利をいかに獲得するか 子ども,障害者,高齢者の生存権と 権利擁護』 創風社

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・飯田泰士(2012)『成年被後見人の選挙権・被選挙権の制限と権利擁護 : 精神・知的障害者,認知症の人 の政治参加の機会を取り戻すために』明石書店 ・湯原悦子(2005)『介護殺人-司法福祉の視点から』クレス出版 ・稲葉陽二(2008)『ソーシャルキャピタルの潜在力』日本評論社 ・稲葉陽二(2011)『ソーシャルキャピタル入門-孤立から絆へ-』中央公論新書 ・日本成年後見学会(2007)『市町村による権利擁護機能のあり方に関する研究会:市町村における権利 擁護機能のあり方に関する研究会 平成18 年度報告書』 ・芦屋市高齢者権利擁護委員会プロジェクトチーム(2008)『権利擁護支援に関するアンケート調査結果 報告書.芦屋市高齢者権利擁護委員会プロジェクトチーム』

表 8 判断に迷うケース事例の相談機関先 区  分 合計件数 ア  弁護士(弁護士会) イ  司法書士(リーガルサポート) ウ  社会福祉士 エ  法テラス オ  警察 カ  担当主治医 キ  家族会 ク  民生委員 ケ  県社会福祉協議会 コ  市町社会福祉協議会 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト,経 済的,性的)ケース 45 2 2 2 2 4 4 1 2 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒 否,環境劣化(ゴミ屋敷など))のケース 27 1 4 3 2 3 消費者被害(第三者,悪徳業者などによ
表 10 ケース状況別にみる関係機関との連携状況 (件) 区  分 居宅 介 護支援事業所 小規模多機能居宅介護事業所 地域包括支援センター 障がい者相談支援センター 高齢者施設 障がい者(児)施設 病院 合   計 1 虐待(身体的,心理的,ネグレクト, 経済的,性的)ケース 7 7 2 2 3 21 2 セルフネグレクト(対象者による介護拒 否,環境劣化(ごみ屋敷など))のケース 1 1 4 1 1 8 3 消費者被害(第三者,悪徳業者などに よる)のケース 8 2 3 13 4 多重債務(対象者自身や

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