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駅バリアフリー地図情報の提供システムの構築

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Academic year: 2021

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日本福祉大学社会福祉論集 第 126 号 2012 年 3 月 キーワード:ナビゲーション, 車イス, バリアフリー, 公共交通機関, 携帯電話

1. はじめに

障害のある人もない人も共に暮らせるまち, 福祉社会の実現のためには, 誰もが自立した生活 を営むことができる生活環境を整備することが必要である. なかでも公共交通機関を利用して, 安全で快適に移動できる環境の整備が求められる. これを実現するため, 交通バリアフリー法に よるエレベータの設置などハードウェアの整備のほかに, バリアフリー情報の提供などのソフト 面の施策の展開が重要である. 公共交通事業者, 特に地下鉄事業者は, ホームページにより, バリアフリー施策の取り組みを 紹介している. 具体的には駅のバリアフリー設備の有無を表示したり, エレベーターなどの施設 の配置を平面図や立体図で図示することを実現している. 障害者等は交通機関を利用する前にプ リントアウトし, それを持ち歩くことができる. しかし, 利用者が予定の駅と違った駅を利用す る場合など, バリアフリー施設を探すことに大きな苦労を要する. 最悪の場合, 降車して初めて, 希望のバリアフリー設備が未整備であることを知る問題が指摘されている. また, 各事業者間で 表示方法が統一されていない. さらに駅の内部で, 位置情報を活用した適切なガイダンスシステ ムがないことも問題である. 本研究では, 上記の問題を解決できる情報環境 「駅バリアフリー地図情報システム」 を開発し, 障害者等が利用する実証実験を行い, 効果を確認しながら, システムの精度の向上を目指すもの である.

2. 障害者向け地下鉄利用実態調査

2. 1 調査方法 地下鉄の駅構内で進められているバリアフリー化やエレベータやトイレなどの案内の実態がど

駅バリアフリー地図情報の提供システムの構築

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うなっているか, それを必要としている人の視点から見て分かりやすいものとなっているか, も し不備があれば, その原因は何かを明らかにする. 地下鉄を利用する障害者等に向け, バリアフ リー情報の利用状況や利用に当たっての問題点を明らかにし, システム構築に反映させる. 調査票の設計の段階において, 先行事例である文献 1 を参考にし, 本研究の目的に合うように 修正を加えた. 調査対象は, 車椅子利用者 160 人と妊婦・乳児の保護者 40 人の合計 200 人である. 各団体の 協力のもと, 対象者へ調査票と返信用封筒を配布し, 回答後, 調査票 (設問数は 17 問) を郵送 により回収した. 回収数は 51 で, 回収率は 25.5%である. 2. 2 実態調査の結果 アンケート調査で質問した 17 問のうち, 特徴的な結果が出た質問 8 問について以下に取り上 げ, 分析を行った. 「どのくらいなら, 苦痛なく階段を上り降りできますか?」 という質問に対して, 「上がれない」 つまり, 階段を利用できないという人が圧倒的に多かった. 障害を持った人や乳児を連れた母親 が外出するために, エレベーターやスロープの設置等のバリアフリー環境が必要である. 「地下鉄でいろいろなことが改善され, 買い物やレジャーを含め, 外出しやすくなれば外出す る頻度を増やしたいですか?」 という質問に対して, 7 割以上もの回答者が, バリアフリー化が 進めば外出頻度を増やしたいと考えている. つまり, 回答者のうちまだ 7 割以上もの人が, 現在 のバリアフリー環境には満足していないと捉えることもできる. 地下鉄のみならず, 様々な建造 物でバリアフリー化を進め, 「潜在的な 7 割もの移動困難者」 層の外出頻度を増加させることが 可能である. 「初めての場所へ外出するとき, 地下鉄を利用する前に, パソコンのホームページを見て, 駅 構内のバリアフリー情報などを確認したことがありますか?」 という質問に対して, 事前に情報 図 2−1 どのくらいなら, 苦痛なく階段を上り降りできますか? (昇降可能な階段数) 㪍㪈㪅㪏 㪈㪉㪅㪎 㪈㪅㪏 㪎㪅㪊 㪌㪅㪌 㪈㪇㪅㪐 㪇 㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪌㪇 㪍㪇 㪎㪇 ਄䉏䈭䈇 ૐ䈇ᲑᏅ䈭䉌 䋱Ბ䈣䈔䈭䉌 ᢙᲑ䈭䉌 䋲㓏䈮਄䈏䉎䈒䉌䈇䈭䉌 㚞䈱㓏Ბ䈭䉌 䈇䈒䉌䈪䉅 䋨න૏䋺䋦䋩 上がれない

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図 2−2 外出しやすくなれば外出する頻度を 増やしたいですか? 䈇䈇䈋 㪉㩼 ੹䈱䉁䉁䈪䉋 䈇 㪉㪉㩼 䈲䈇 㪎㪍㩼 䈇䈇䈋 㪋㪇㩼 䈲䈇 㪍㪇㩼 図 2−3 初めての場所へ外出するとき, ホーム ページを見て, 駅構内のバリアフリー 情報などを確認したことがありますか? 図 2−4 その時, どのような情報をご覧になりましたか? (確認情報の種類) 㪊㪅㪍 㪉㪏㪅㪍 㪉㪍㪅㪏 㪉㪌㪅㪇 㪈㪋㪅㪊 㪈㪅㪏 㪉㪍㪅㪏 㪈㪍㪅㪈 㪉㪊㪅㪉 㪋㪉㪅㪐 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌 㪊㪇 㪊㪌 㪋㪇 㪋㪌 䈠䈱ઁ ᚲⷐᤨ㑆 ਸ਼䉍឵䈋ᣇᴺ ᤨೞ⴫ ᢱ㊄ 䉮䊮䊎䊆ᖱႎ 䊃䉟䊧ᖱႎ ⋡⊛࿾䈱ᦨነ䈱಴ญ 䊖䊷䊛䊶䉮䊮䉮䊷䉴 䊋䊥䉝䊐䊥䊷ᖱႎ 䋨න૏䋺䋦䋩 図 2−5 初めての場所へ外出するとき, 地下鉄を利用する場合の不安は何ですか? 㪇 㪇 㪇 㪏㪅㪊 㪈㪍㪅㪎 㪎㪌㪅㪇 㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪌㪇 㪍㪇 㪎㪇 㪏㪇 䈠䈱ઁ ᢱ㊄䉇ᚲⷐᤨ㑆䈏ਇ᣿ 㚞᭴ౝ䈱቟ోᕈ 䊃䉟䊧䈱႐ᚲ䊶⸳஻⁁ᴫ ⒖േᤨ䈮ㅅ䈉䈖䈫 㚞᭴ౝ䈪⒖േ䈏䈪䈐䉎䈎 䋨න૏䋺䋦䋩

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を確認する層が, 情報を確認しない層を上回る. また, バリアフリー情報などを確認せずに地下 鉄を利用しようとする人 (40%) が, 駅に着いて初めてその駅がバリアフリーになっていないこ とに気づき, 迷子になることなどが起こりうると考えられる. 前問に引き続いて, 「その時, ホームページにおいて, どのような情報をご覧になりましたか?」 という質問に対して, 多くの人がバリアフリー情報に目を向けており, これは, 駅構内の移動に 関して不安を抱いている人が多くいるということを窺わせる. 「初めての場所へ外出するとき, 地下鉄を利用する場合の不安は何ですか?」 という質問は, 6 つの回答のうち, 重要なものから順番に 3 つを上限に選択してもらう回答形式であるが, 1 つ目 に選択されたもの (最も重要であると考えられるもの) のみをピックアップし, 集計した. その 結果を見ると, 「駅構内で移動できるか」 「移動時に迷うこと」 を合わせて, 90%以上の回答者が, 何はともあれ, まず駅構内での移動環境について不安を抱えているということがわかる. 「地下鉄の駅の中で迷った経験についてお尋ねします」 という質問に対して, 地下鉄構内で 「あまり迷ったことがない」 人は 5.6%と少なく, 迷ったことのある人が多い. 「他のホームへの 移動」, 「出口への道のり」, 「トイレへの道のり」 「他の地下道への移動」, 「目的のホームへの道 のり」 など満遍なく迷っている経験がある. 「地下鉄駅の中で迷ったときは, どうされていますか?」 という質問に対して, 「駅員を探して 尋ねる」 ことと, 「案内の通りに移動する」 ことが多い. それらに比べて, 「利用者に尋ねる」 こ 図 2−6 地下鉄の駅の中で迷った経験についてお尋ねします 㪋㪅㪉 㪌㪅㪍 㪈㪏㪅㪏 㪈㪏㪅㪈 㪈㪍㪅㪎 㪉㪇㪅㪏 㪈㪍㪅㪇 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌 䈠䈱ઁ 䈅䉁䉍ㅅ䈦䈢䈖䈫䈏䈭䈇 ಴ญ䈻䈱㆏䈱䉍 䊃䉟䊧䈻䈱㆏䈱䉍 ઁ䈱࿾ਅ㆏䈻䈱⒖േ ઁ䈱䊖䊷䊛䈻䈱⒖േ ⋡⊛䈱䊖䊷䊛䈻䈱㆏䈱䉍 㩼 図 2−7 地下鉄駅の中で迷ったときは, どうされていますか? 㪎 㪉㪊 㪊㪏 㪈㪊 㪋㪊 㪈㪊 㪊㪇 㪋㪌 㪈㪈 㪊㪋 㪈㪋 㪉㪌 㪈㪊 㪈㪋 㪉 㪉㪊 㪈㪍 㪋 㪉㪎 㪈㪊 㪋㪊 㪌 㪉 㪊㪍 㪐 㪇㩼 㪉㪇㩼 㪋㪇㩼 㪍㪇㩼 㪏㪇㩼 㪈㪇㪇㩼 ᩺ౝ䉕⷗䈭䈇䈪䇮 ⴕ䈔䉎䈫䈖䉐䉕ត䈚䈩⒖േ䈜䉎 ᩺ౝ䉕ෳ⠨䈮䈜䉎䈏䇮 ⥄ಽ䈪್ᢿ䈚⒖േ䈜䉎 ᩺ౝ䈱ㅢ䉍䈮⒖േ䈜䉎 ೑↪⠪䈮዆䈰䉎 㚞ຬ䉕ត䈚䈩዆䈰䉎 ᄙ䈇 䉇䉇ᄙ䈇 䈬䈤䉌䈪䉅䈭䈇 䈅䉁䉍䈚䈭䈇 䈾䈫䉖䈬䈚䈭䈇

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とや, 「案内を見ないで行けるところを探して移動する」 人は少ない. こうしたことから, 駅員 の配備はコスト負担が大きいため, 案内情報の充実が重要であると言えそうである. 「初めて利用する地下鉄駅の案内情報 (表示板など) に関わって, 以下のような経験はありま すか?」 と言う質問に対して, ほとんどの項目で約半数の人が図 2−8 に示すような経験が多い と感じている. 特に, 「エレベータのある出口が分からない」 に対しては, 6 割以上の人がよく 経験している. 総合的に見て, 案内情報がないと困るということがわかる. 2. 3 障害者等のバリアフリー情報へのニーズ 階段を利用することが困難な車椅子利用者や乳児を同伴する保護者において, 地下鉄を利用し た外出希望は高い. そして事前にパソコンによる Web 検索にてバリアフリー情報を引き出して いる方が多い. 地下鉄利用に当たって, 不安は駅構内で間違えずに移動できるかどうかであるこ とが理解できる. 不安解消のために, 案内情報の充実が望まれ, 一般化した携帯電話を活用した 多様な情報提供も複合的なバリアフリー環境の 1 つである.

3. 開発した情報システム

3. 1 開発したシステムの機能 本研究で開発したシステムは, 携帯電話から専用のサイトに接続し, 乗降駅・出入口を入力す ると, バリアフリーに対応した駅構内の移動経路が案内図で表示されるシステムである. 経路案 内の他に車椅子対応トイレや売店等の駅構内の設備情報を検索する機能も備えている. 図 2−8 初めて利用する地下鉄駅の案内情報 (表示板など) に関わって, 以下のような経験はありますか? 㪉㪈 㪈㪋 㪈㪋 㪌 㪉㪈 㪐 㪈㪋 㪊㪍 㪉㪇 㪉㪊 㪉㪎 㪊㪋 㪊㪍 㪐 㪊㪇 㪉㪌 㪊㪏 㪉㪌 㪊㪋 㪉㪐 㪈㪍 㪈㪏 㪈㪋 㪉㪎 㪐 㪈㪋 㪉㪈 㪈㪏 㪉㪊 㪉㪇 㪉㪊 㪉㪌 㪉㪌 㪊㪇 㪉㪊 㪉㪎 㪉㪈 㪎 㪈㪋 㪈㪋 㪈㪊 㪐 㪈㪈 㪉㪐 㪈㪍 㪉㪌 㪌 㪈㪋 㪐 㪈㪋 㪇㩼 㪉㪇㩼 㪋㪇㩼 㪍㪇㩼 㪏㪇㩼 㪈㪇㪇㩼 㚞䉕಴䈢䉌᩺ౝ䈏ή䈒࿎䈦䈢 ᡷᧅ䉕಴䈩䈎䉌䈱 ਸ਼䉍⛮䈑䈱⚻〝䈪ㅅ䈦䈢 䊖䊷䊛䈎䉌ઁ䈱䊖䊷䊛䈻ⴕ䈒 ⚻〝䈪ㅅ䈦䈢 䊃䉟䊧䈻䈱᩺ౝ䈮ᓥ䈦䈢䈏ⴕ䈔䈭䈇 ೑↪น⢻䈭䊃䉟䊧䈱႐ᚲ䈏ಽ䈎䉌䈭䈇 ಴ญ䈻䈱᩺ౝ䈮ᓥ䈦䈢䈏䇮 䉣䊧䊔䊷䉺䈏ή䈒࿎䈦䈢 䉣䊧䊔䊷䉺䈱䈅䉎಴ญ䈻ⴕ䈒⚻〝䈪ㅅ䈦䈢 㚞᭴ౝ䈪䉣䊧䊔䊷䉺䈱䈅䉎಴ญ䈏ಽ䈎䉌䈭䈇 㚞䈱಴ญ䈫ⴕ䈐వ䉕⏕⹺䈚䈢䈇䈏䇮 ࿾࿑䈏ή䈒ಽ䈎䉌䈭䈇 㔚ゞ䈎䉌㒠䉍䈢䈫䈐 㚞䈱䈬䈖䈮䈇䉎䈎ಽ䈎䉌䈭䈇 ᄙ䈇 䉇䉇ᄙ䈇 䈬䈤䉌䈪䉅䈭䈇 䈅䉁䉍䈭䈇 䈾䈫䉖䈬䈭䈇

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 主要機能 ① バリアフリー (エレベータ) に対応した最適乗換ルートの検索 乗車駅名, 乗車駅の入口, 降車駅名, 降車駅の出口を選択入力すると, バリアフリーに対応し た乗換経路が検索され, 検索結果が画面に表示される. 入力された情報により, データベースの 登録情報の中から最適な乗換経路が検索される. 最適経路の決定にあたっては, 通常の乗換サイ トの検索のように時間・距離等ではなく, 「バリアフリー対応の有無」, 「乗換回数」, 「乗換のし やすさ」 を考慮して決定する. ② 案内図によるナビゲーション 駅構内の移動経路を表示した案内図により, 案内を行う. 乗車駅では 「地上入口 → 改札 → 乗 車ホーム」, 乗換駅では 「降車ホーム → 乗換路線の乗車ホーム」, 降車駅では 「降車ホーム → 改 札 → 地上出口」 の経路案内を表示する. 文字でのルート案内説明画面とデジタル地図による案 内図画面で構成される. 案内図はデフォルメされたシンプルで分かりやすいデジタル地図に移動 経路を表示した画像なっている. 利用者は表示される案内図を移動しながら順番に切り替え, 図 中に表示される矢印に従い, 目的の場所に移動する. 移動中は自分がフロアのどの位置にいるか 分かりにくいため, 全体図も用意し, 詳細図と切り替え可能とした. ③ 車椅子対応トイレ, 売店等の駅構内の設備情報の検索 駅名を入力し, 検索すると, 該当駅の設備情報が表示される. バリアフリー利用者がよく利用 する設備として駅構内の下記設備を対象とした. 検索結果では設置の有無, 設置箇所及び場所, 案内図が提供される.  車椅子対応トイレ  売店 (コンビニ) ④ 地上出入口, 駅構内施設, 駅電話番号等の地下鉄に関連する情報の検索 地下鉄を利用するにあたり, 役立つ情報を検索できる機能である. 地下鉄で役立つ情報として 下記 3 つの情報を対象とした. 図 3−1 案内図によるナビゲーションの流れ (地上入口→乗車ホームの例)

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 地上の出入口情報  駅構内の施設情報  駅の電話番号 3. 2 システムの構成 携帯電話の Web 閲覧機能を使用し, 携帯電話網, インターネット網を経由して, システムの 専用サイトに接続される. システム側のネットワーク構成はクライアントサーバ型の構成となっ ている. システムは Web アプリケーションとデータベースを搭載したサーバ 1 台の構成となっ ている.  システム仕様 システムは Web コンテンツで提供されるため, Web サイトの閲覧が可能な携帯電話であれば 使用可能である. サービスの性質上, キャリアや端末スペックに依存しない形で開発した. GPS 等の機能を使用しないため, 専用端末や携帯電話に特別なアプリケーションのインストールは必 要ない. キャリアを問わず, 現在普及している携帯電話のスペックで十分動作する.  最適ルートの決定方法 今回のシステムでは, 車椅子利用者の乗り換えを少なくするような以下の 3 点を考慮し, シス テム構築を行った.  バリアフリー対応の有無 バリアフリーに対応していない駅は乗車駅・降車駅の一覧に表示しない. また, バリアフ リーに対応していない乗換駅のルートは採用しない.  乗換回数 利用者が車椅子やベビーカーを利用する方のため, 時間や距離の他に乗換回数の少なさを 考慮する.  乗換のしやすさ バリアフリー対応駅であっても乗り換えに不便な駅も避け, 乗換のしやすいルートを採用 する. バリアフリーを考慮した最適ルートの一例として, 乗車駅が浅間町駅, 降車駅が栄駅であるケー スを取り上げる. 時間距離で最短となるのは, 浅間町駅から出発し, 伏見駅で東山線に乗り換え, 栄駅に到着す るルートである. しかし, 伏見駅はバリアフリー未対応の駅である. で述べたように車椅子利 用者には適さないルートであるため, このルートを不採用とする. また, 丸の内駅での乗り換え は, 久屋大通駅で乗換えがもう 1 回発生するため, システム上, このルートを不採用とする. 本 システムでは総移動時間はかかるが, 乗り換えにバリアフリーの設備が使用でき, かつ乗り換え

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回数の少ない上前津駅経由のルートを採用する (浅間町駅 (鶴舞線) → 上前津駅 (名城線) → 栄 駅).  ルート検索の実現方式 入力された乗車駅・入口, 降車駅・出口によりデータベースを検索し, 乗車駅 → (乗換駅) → 降車駅を参照する.  最適ルートの提示 事前に入力された乗車駅・降車駅に該当する最適ルート(使用する駅・ホーム)をデータベー スに登録し, 該当するデータを参照する. リアルタイムで乗車駅から乗換駅を経て降車駅までの最適なルート検索を実現しようとし た場合, 検索の方法の実現に大幅な時間とプログラム化の工数が必要なため, ルートを乗車 駅と降車駅の組み合わせごとに登録しておく方法を採用した.  乗車駅の案内 (地上入口から乗車ホームの案内) 入力された入口と参照した乗車駅のホームからデータベースを検索し, 案内情報 (地図デー タ・案内メッセージ) を取得する.  乗換駅の案内 で参照した乗換駅の降車するホーム及び乗車するホームの情報からデータベースを検索 し, 案内情報 (地図データ・案内メッセージ) を取得する.  降車駅の案内 (降車ホームから地上出口の案内) で参照した降車駅のホームと入力された出口からデータベースを検索し, 案内情報 (地 図データ・案内メッセージ) を取得する. 図 3−2 ルート選択のイメージ ᶣɧ੔ဇ ᶣɧ੔ဇ

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4. システムの有効性

4. 1 実証実験の目的 本実証実験は, 開発した情報システムの機能の検証と効果の確認を行うものである. その実証 実験の結果から, さらにシステムの精度の向上を目指す. 開発した 「駅バリアフリー地図情報システム」 を障害者等が利用する実験を行い, 成果を把握 し, 実利用できるレベルにまで精度を上げるための課題を抽出する. 実証実験の対象とする鉄道 事業者を名古屋市営地下鉄とする. 被験者としての対象は, 車椅子利用者 2 組とベビーカー利用 者 2 組とする. 4. 2 実験シナリオの設定 アーバンネット名古屋ビルから, 名古屋市営地下鉄の久屋大通駅を利用し, 目的地の八事駅 (改札外) までの実験シナリオとなる. ルートは, 久屋大通 (名城線) − 上前津 (名城線 → 鶴舞線) − 八事 (鶴舞線) となり, 上前津駅で乗換えとなる. グループ 1 (車椅子利用者 1 組, ベビーカー利用者 1 組) には, 地下鉄ルートマップと乗換駅 の上前津駅の平面図を事前に渡し, ルートのイメージを事前につかんでいる. 八事駅で車椅子対 応トイレを利用する. グループ 2 (車椅子利用者 1 組, ベビーカー利用者 1 組) には出発駅名, 乗換駅名, 目的地駅 名の情報しか渡さないものとする. 上前津駅でコンビニを利用する. 4. 3 システムの評価基準と有効性 「駅バリアフリー地図情報システム」 の設計および開発が適切に行われたことを検証するため, システムの完成後, システムの評価を実施する. システム評価の実施は, 実証実験のシナリオ (表 4−1) に則り, 表 4−2 の評価基準で行う. 実証実験を通じて, 以下の有効性が確認できた.  「駅バリアフリー地図情報システム」 を利用した障害者等の評価が総じて高かった. 評価 が低かったのは, GPS 電波などがないため, 自分の位置を自動的にルート案内図上で確 認できないことや, 初めて触るシステムへのストレスが, 別途のインタビューで指摘され た.  目的地までの確実な誘導, 乗換時間短縮の効果があった. エレベータを複数乗り継ぐよう な乗換の複雑な駅では大きな効果を発揮する. 今回乗換を行った上前津駅では下記のよう

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表 4−1 実証実験のシナリオ 想定経過 時刻 イベント 被験者の行動 備 考 00:00 実験開始 ルートを検索 【発】久屋大通 【入】アーバンネット名古屋ビル 【着】八事 【出】アネックス ∼ UN 名古屋ビル→久屋大 通 名城線左回りホーム 案内図に従い名城線左回りホームへ 00:22 久屋大通 乗車 名城線左回りに乗車 00:27 上前津 到着 上前津にて下車 上前津の案内を表示 グループ 2 はコンビニを利用 ∼ 乗り換え 名城線ホーム→ 鶴舞線赤池方面ホーム 案内図に従い, 名城線左回りホーム から鶴舞線赤池方面ホームへ移動 00:39 上前津 乗車 赤池行きに乗車 00:51 八事 下車 八事にて下車 八事の案内図を表示 グループ 1 は車椅子対応トイレ利用 ∼ 鶴舞線ホーム→地上 案内に従い, 鶴舞線ホームから地上 へ移動 01:15 地上到着 アネックス出口付近に到着 01:30 実験終了 表 4−2 実験参加者による評価結果 評 価 基 準 平均得点 (小さいほど良い)  システムの操作性はよかったか? 2.3  最適なルートが検索されたか? 2.5  ルート案内図は見やすかったか? 2.8  ルート案内図を見て目的地まで辿り着けたか? 2.3  紙媒体より, 今回のルート案内図の方が良いか? 3.3  電波が途切れることは無かったか? 2.5  地図イメージの認識に楽しさや新鮮さという価値を見出せたか? 2.5  ストレスを感じないシステムとなっているか? 3.5 ルート案内図に自分の位置を見出せたか? 3.8 総合的な評価はいかがですか? 2.3

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に 3 回のエレベータの乗り継ぎが発生し, 非常に複雑な乗換経路である.  システムの性能について, ルートの検索, 案内図の順序も正確であった. またデータ検索, 案内図の表示に関するレスポンスもストレスを感じることなく実用的なレベルであった. 利用者からも 「検索が遅い」, 「案内図の表示が遅い」 等のレスポンスに関する不満の声は なかった.  冊子や印刷物等の紙媒体を持ち歩く必要がない. 携帯電話で情報が取得できるため, 外出 の際に紙媒体を持ち歩く必要がなくなる. 常に携帯している最も身近な情報端末である携 帯電話の大きなメリットの一つである.  文字と経路を記した詳細な図による案内で, 紙媒体の地図に比べ分かりやすい.  車椅子対応トイレ等の設備情報も検索できる. 現地で確認が可能である. 名城線左回りホーム → エレベータ EV1 → 改札フロア → エレベータ EV2 → 名城線右回りホーム → エレベータ EV3 → 鶴舞線赤池方面ホーム ᬌ⚝⚿ᨐ䈻ᚯ䉎 䊃䉾䊒䊕䊷䉳䈻ᚯ䉎 䋼䊦䊷䊃⺑᣿䋾 ਭደᄢㅢ㚞 ೑↪ᤨ㑆䋺䋵䋺䋰䋰䌾䋱䋺䋰䋰 ࿾਄䋨䍏䍎䍨䍼䍻䍦䍍䍢ฬฎደ䍩䍼䍷䋩 䌾ฬၔ✢䊖䊷䊛䋨㊄ጊᣇ㕙䋩 㽲䉝䊷䊋䊮䊈䉾䊃ฬฎደ䊎䊦 ౝ䈱䉣䊧䊔䊷䉺䊷䈮䈩ᡷᧅญ 䊐䊨䉝䉁䈪 㽳ධᡷᧅญ䉕ㅢ䈦䈩䉣䊧䊔䊷 䉺䊷䋨䌅䌖䋮䋳䋩䈮䈩䊖䊷䊛䈻 㽴䌅䌖䋮䋳䈎䉌ㄭ䈇ਸ਼㒠૏⟎ ⇟ภ䈲䇮㊄ጊᣇ㕙䋱䋳⇟ ᰴ䈻 䊦䊷䊃⺑᣿䈮ᚯ䉎 ᬌ⚝⚿ᨐ䈻ᚯ䉎 䊃䉾䊒䊕䊷䉳䈻ᚯ䉎 ਭደᄢㅢ㚞䈮㔚⹤䈜䉎 ో૕࿑ ೨䈻 ᰴ䈻 ᬌ⚝⚿ᨐ䈻ᚯ䉎 䊃䉾䊒䊕䊷䉳䈻ᚯ䉎 ਭደᄢㅢ㚞䈮㔚⹤䈜䉎 ʁދٻᡫעɥకϋ ʁދٻᡫᬜకϋ 図 4−1 携帯電話上の画面イメージ 䋼ᬌ⚝⚿ᨐ䋾 䂾䂾㚞 ᩺ౝ⴫␜ ゞ᫹ሶኻᔕ䊃䉟䊧䈅 䉍(1▎ᚲ) 㚞ᜰቯ䈻ᚯ䉎 䊃䉾䊒䊕䊷䉳䈻ᚯ䉎 䊶ർᡷᧅઃㄭ(ᡷᧅᄖ) ゞ᫹ሶኻᔕ࠻ࠗ࡟ 図 4−2 車椅子対応トイレの検索イメージ

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 現地での検索や目的地が変更になった際の対応が容易であるため, 外出先で利用できる携 帯電話は自宅パソコンや紙媒体に比べ, 柔軟性がある.  最適ルート検索は, 環状線を中心とし支線に広がりを持つ名古屋市地下鉄の形状において 非常に効果的な仕組みであり, 特に初めてのルートの場合には, 名古屋市交通局の Web ページによる事前学習や, 現場の駅構内の案内表示等の組み合わせ利用により, 相乗効果 を発揮する.  今回実験を実施した駅構内ではほぼ問題なく携帯電話の通信が使用できた. 地下鉄構内の エリア化は小型の屋内基地局設備 (IMCS) 等の設置により急速に進んでいる. 使用可能 な範囲は広がり, 地下鉄構内で携帯電話を使用した情報取得は有効な手段となっている.

5. 今後の課題

今回の実証実験を通じて, 以下の 7 つの課題が確認できた. 複数の課題がある中で, 今後, 現 在位置の把握を自動化するためのシステムを新たに開発することが, 最も大きな課題を解消する ことになり, 必要なことであると考えている.  地下では自分の位置情報が取得できないため, 経路を外れた場合に迷ってしまうケースが あった. 自動で位置情報を取得し, ルート案内に反映する仕組みや, 経路を外れた場合の 警告メッセージを検討する必要がある. 現在地下では GPS による位置取得が利用できな いため, ZigBee (ジグビー) や無線 LAN, RFID (IC 無線タグ) 等による追加システム が考えられる.  システムの操作性について, 音声案内や画面の自動切換え等の機能があるとさらに使い勝 手の良いナビゲーションが可能となる. 画面の自動切換えには上記のような追加システ ムが必要となる.  地下街の店舗等の情報とも連動して欲しいとの声があった. 地下街だけでなく, 他鉄道会 社や地上とのシームレスなナビゲーションを実現することで利便性はさらに向上すると考 えられる.  エレベータの点検日やトイレのベビーベット有無等の情報も検索できると良いとの声があっ た. 今回, 車椅子対応トイレ, 売店 (コンビニ) 等の設備情報を検索できるよう盛り込ん だが, このシステムを利用する利用者が必要と思われる情報を引き続き調査する必要があ る. また, ルート案内に関しても乗車位置の表示やスロープの表示が欲しいとの要望もあ り, 案内図上に掲載する情報についても利用者の要望を聞きながら改善する必要がある.  実験参加者から 「エレベータの番号表示が小さい」, 「長いスロープは疲れる」 等のバリア フリー設備に対する改善の声もあった. 利便性の向上にはシステムの開発とともにハード 面の設備の改善も不可欠であり, 提案を検討していく必要がある.

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 今回の実験では乗降時に名古屋市交通局様のご協力により, 問題なく乗降車することがで きたが, 通常は駅員に連絡し, 支援を受ける必要がある. スムーズな利用のためには, 利 用者からの連絡手段, 駅間の通信手段を導入する必要性がある. 連絡を円滑にすることに より, 乗降車をスムーズに行うとともに目的駅で降車できない等のトラブルを防ぐ効果が 期待できる.  情報システムのメンテナンスの必要から, 受け皿となる組織とシステムのバージョンアッ プの仕組みを構築しておく必要がある. 大きなバージョンアップが望まれる点は, エレベー タの未設置駅に順次整備が進むことや, その他のバリアフリー設備が設置されてくること から, 情報システムの修正が必要となってくる. また, システム自体に対して新たなニー ズが出てくる可能性がある. そうした状況に応えるための継続的な組織と仕組みが必要で ある. 最後に本調査研究は, 名古屋市交通局, 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの支援があっては じめて実施できたものである. また, 利用者のニーズを把握するためのアンケート調査, システ ムの検証のための実験で, 実に多くの方にお世話になった. この場を借りて感謝の意を表したい. 参考文献 1 ) NPO 法人まちの案内推進ネット;「外出と交通の案内についてのアンケート調査レポート」, 2006 年 11 月 2 ) 岡田光生, 他 2 名;「身体属性の視点に基づく公共空間の情報環境に関する現況分析 外出と交通の 案内についてのアンケート 調査より」, 福祉のまちづくり学会第 10 回全国大会, 2007 年 8 月 3 ) 樋口宜男 (KDDI 株式会社);「高齢者・障害者用鉄道最適経路案内システム」, リハビリテーション 工学カンファレンス, 2002 年 8 月 4 ) マイクロソフト株式会社;「中部国際空港における新しい旅客ナビゲーションシステムの試験導入に ついて」, 2007 年 6 月

参照

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