• 検索結果がありません。

知的障害児の動作模倣能力の発達と演劇的表現(1)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "知的障害児の動作模倣能力の発達と演劇的表現(1)"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

演劇的世界の形象化には, ことばによる表現だけでなく例えば顔の表情, 身体各部の動き, 身 体全体の動きなど, 具体的な動きによる表現が不可欠である. しかし, これまで障害児学校や障 害児学級をフィールドとして演劇的表現活動の実践・研究を行ってきた経験からいえば, 知的障 害がある児童 (以下, 児童という) には具体的な動きによる表現に弱さがみられる. 児童の場合, 劇遊びにおいて動作模倣をさせようとしても, 手や指, 腕, 足, 身体全体を動か すことができず, 結果的に演劇的世界が形象化できないケースが多い. 特に, 単一に行う動作よ りも 2 つ以上の動作を組み合わせた協応動作, さらに粗大動作よりも微細動作などに抵抗が見ら れる(1). こうしたケースの多くは, 他者の動作が実際に目に見えているのにもかかわらず, 自己 の身体を機能的に働かせ, 身体各部を動かすことができないために, 立ち起こってくる現象では ないかと考えられる. 動作模倣は外面的な身体の動きのみを再現しているように見えるが, 実は内面的なところでは 感覚系や神経系の活動が伴っている. すなわち感覚系においては知覚や認識, 記憶などが伴い, さらに神経系においては関節や筋肉を動かす運動神経の機能が伴っている. ところが, 児童の場 合, こうした感覚系や神経系に何らかの障害を受けているために, それに伴って諸器官が不十分 な機能しかできないのではないかと思われる. 目前で演示をみているのにもかかわらず, 動作を 再現できないなどのケースの場合も, こうした要因が加わっているのではないかと考えられる. 以上のような問題意識に基づきながら, 児童の動作模倣に関する問題について, その遅れのメ カニズムを含めて明らかにし, 演劇的表現活動に関する指導法につなげたいと考えた. 本稿にお いては, 児童の演劇的表現活動についての指導法の開発を究極目的に, 臨床的な調査を踏まえな がら視知覚発達や身体意識, 調整力などとの関連において動作模倣能力を究明する.

知的障害児の動作模倣能力の発達と演劇的表現



伊勢田

(2)

1. 演劇的表現と動作模倣

 演劇的表現と身体的行動 舞 台 芸 術 の 創 造 に 関 す る 理 論 と シ ス テ ム を 創 始 し た ス タ ニ ス ラ フ ス キ ー (Konstantin Sergeevich Stanislavsky) は, 演劇は身体的行動によって表す芸術であり, そのために俳優は 登場人物の内部過程の全てをたどり, 精神的および身体的生活に適合させることが重要であると 述べ, 役 (やく) を生きるということは, まさにこうしたことができたときだと指摘してい る(2)(3). スタニスラフスキーがいう身体的行動とは, 人間の肉体から発する声や動きなどを総称 した概念であるが, 演劇において生きた人間の世界を形象化しようとすれば, 当然, 外面的に身 体を動かして形を似せるだけでなく, その役の精神的, 身体的生活にまで立ち入り, 自らを融合 させることが必要である. スタニスラフスキーのこうした指摘は, 一般に子どもたちが演ずる劇にも同様に当てはまる. それは例えば, 障害児学校や障害児学級における劇が絵本や物語を媒介としたものではあっても, 人間や人間がつくり出している社会が基盤になった世界である以上, そこには登場するものの身 体, 生活, 心理などが反映しているはずであり, 役 (やく) を演ずる児童は登場するものと自ら を融合させ, 演ずることができなければならないということである. つまり, 人間の身体的行動 を行う場合, 登場するものの身体や生活, 心理などを自らに引き入れて表現することが, どのよ うな場合にも必然的に求められるのである. いずれにしても児童は自らを創造媒介とし, 登場するものの身体や生活, 心理などを自らに引 き入れ, 身体を駆使してさまざまな身体的行動を創造しなければならない. 劇における身体的行 動には, ここでは取り上げないが身体運動を通じて話されることばのほかに, 身振り, しぐさ, 感情の表出, 顔の表情, 身体の構えなどがあり, 身振りには文字通り身体を動かして表す動作や 姿勢であり, 話しながら腕を広げたり指差したりすること, 泣きながら手で顔を覆うことなどが 含まれる. また, しぐさは何かを表すための動作ではなく, 実際に何かをするための行為であり, 生活に伴って生ずる動作であり, この範疇には食べる, 作る, 逃げる, 抱き抱える, 防ぐ, 刈る, 悪口をいうなどが含まれる. このような身体的行動は, 換言すれば目的的な行動である. そこには登場するものの人柄や性 格, 生き方, 仕事, 周りの人々との関係などとの関わりによって発生してくる心理的過程, また はイメージを伴っており, そこにおける身体的行動には一定の動機に基づいた指向性がある. し たがって, 劇中においてリアリティがある表現をしようとすれば, 当然のことながらその過程に おいて登場するものの人柄, 性格, 生活などを知り, そこから発してくる心理やイメージまでを も読み取り, 一つひとつの動作を目的的に表現することが求められる. 演劇的表現活動において児童が行う身体的行動には, 創造上において極めて重要な役割がある. したがって, スタニスラフスキーがいうように, 演劇を 「人間精神の内生活の創造であり, それ を芸術的な形式で表現すること」 にまで近づけるためには(4), 身体的行動を大切に扱わなければ

(3)

ならない. そのためにも障害児学校や障害児学級で見られるような, 単に外面的に形だけを真似 させる劇から脱皮し, 児童が真に劇中の役 (やく) を生きることができるよう, 身体的行動を育 てる演劇的表現活動の指導を展開することが求められる.  知的障害児と動作模倣 模倣とは, 他の者の行動を見て, その刺激によって無意識的および意識的に類似した行動をと るという現象を指す. この模倣という行動には口唇を動かすことや声を出すこと, 指や手を動か すことなどが含まれており, ピアジェ (Piaget Jean) は, こうした模倣が発達初期である感覚 運動的段階の第 2 段階 (1∼4 ヵ月) において時々見られるとし, 第 6 段階までの (2 歳) 様相に ついて述べている(5). ここでは子ども自身のレパートリーにない反応が模倣によって獲得される こと, 運動が視覚的に統制しないときも音などの刺激を通して模倣が可能になることなどを, 重 要な発達としてみなしている. 一般的に子どもの場合には, 大人のモデル行動を模倣し, それによって価値や道具的反応を獲 得すると考えられている. 模倣によってそれまでは容易でなかった新しい動作を可能にするなど, 新たな行動を獲得することにつながっていく. また, 模倣した動作によって周囲の大人に働きか け, 大人との共有関係の中からそれを動作的シグナルとして身につけ, コミュニケーションの媒 体として使用できるようになるほか, やがて表現の媒体としても使用できるようになるなど, 模 倣が生活拡大の原動力にもなる. このような模倣の機能は, 基本的には児童の場合にも同様にあてはまる. しかし, 児童の場合 には, 模倣の過程において多くの問題がみられる. 例えば動作のモデルを目前で演示して見せて も, 動きの一つひとつや全体が捉えられず再現できないとか, また, 仮に動きを捉えていたとし てもその動きを手や指, 足などの器官を働かせ, 同じように再現できないとか, 動作の模倣にお けるさまざまな問題がみられるのである. こうした問題の多くは, 児童の感覚系と神経系, 運動 系などの障害が関与し, 発生するのではないかと考えられる. 運動機能というものは, 身体の細胞や器官の機能と感覚や視覚, 認識, 思考などの機能と密接 な関係によって成り立っている. したがってその機能の発達は, 単に手足や身体全体を動かすと いう運動系の発達ばかりでなく, 感覚系や神経系の発達が相互に連関しなければ実現しない. 動 作模倣の場合にも, 目前で行われている動きを全感覚によって知覚し, さらに既有の経験や知識 などとつなげて認識, 再構成し, その上で身体各部に引き移し (同定), 筋肉や関節を働かせて動 作として再現するという, 感覚系, 神経系, 運動系の作業が伴わなければ成り立たないのである. ところが, 児童の場合には感覚系, 神経系, 運動系の発達が阻害されているために, 動作模倣 においてさまざまな困難を示すことになる. 例えば児童の動作の模倣における困難として, ①他 の者が行った動作の知覚や調整の問題, ②他の者の動作を自分の身体へ引き移して同定すること の問題, ③自らの身体を意識することの問題, ④自らの身体を動きとして調整・再現することの 問題, ⑤調整・再現過程における記憶や表象の問題, などが挙げられるが, こうした諸問題をみ

(4)

ると動作模倣の全過程にわたって問題が現れていることが分かる. 児童の動作模倣におけるこうした問題は, 生活空間や生活経験を狭める要因となっている. そ して, 生活の狭さが経験の希薄さに結びつき, このことが身体的行動を弱々しいものにしがちで ある. そこで, それを補完するために児童自らの生活や経験, そこにおける感情体験などにつな げ, 登場するものを創造しながら演技の創造を行うことになる. しかしながら実際, こうした作 業もなかなか効果を伴わないために, 身体的行動の基礎を養成するために動作の模倣を繰り返し 指導したり, あるいはまた実際の劇において登場するものの動作を, 手を取って直接的に模倣さ せたりするのであるが, 期待したとおりの効果が得られないのが現実である. このようなことから児童の動作模倣の実態を踏まえながら, 演劇的表現活動の指導の在り方を 再考してみる必要性を痛感する. そこで, 児童の動作模倣能力の発達の様相を把握し, 演劇的表 現活動における指導法を開発することを目的に, 以下のような調査を実施したことから, その手 続きや内容・方法, 結果等について述べる.

2. 動作模倣能力の実態調査の方法

 調査の期間・対象 調査期間は 2001 年 2 月から 2002 年 5 月まで, 調査の対象は群馬県内T養護学校小学部 (以下, T養護学校という) 12 名, 埼玉県内F養護学校小学部 (以下, F養護学校という) 11 名, 合計 23 名である. 抽出した児童は四肢に麻痺のない知的障害が主たる障害の者であり, CAおよび MAについては表 1 に示したとおりである. また, 児童と健常幼児 (以下, 幼児という) の視知 覚発達を比較する目的で, 群馬県内K保育園の幼児 4 名を対象としてフロステッグ視知覚発達検 査を実施した.  調査の方法・内容と結果 先ず児童の動作模倣能力に関しては, 田辺・田村・小出らが運動学的側面などから研究してお り(6)(7)(8)(9)(10), そこで用いられた姿勢・動作模倣課題 (図 1) などを参考にした(11). なお, 姿勢・ 動作模倣課題についてはⅠ・姿勢模倣課題, Ⅱ・動作模倣課題のⅡ領域から成り, Ⅰは上肢, 下 肢, 手指, 上肢と下肢の協応動作, 上肢と下肢の協応動作, Ⅱは上肢, 下肢, 手指の課題で構成 されている. 各課題の実施にあたっては事前に簡単な会話や遊びを行うなど, 動機や目的意識を喚起した上 で, それぞれの練習課題を行ってから本課題に入るようにした. さらに, 課題の実施にあたって は, 検査者と被験者が対面し, 必ず演示してから模倣させるように配慮した. また, 演示後, 20 秒程度経過しても模倣しない場合には, 次の課題に進むようにした. 姿勢・動作模倣課題が達成されたかどうかの判定は 2 名で行ったが, 結果の精度を高めるため に事前に同一の児童を個別に検査した上で, 判定水準を調整するようにした (一致度 98.3%).

(5)

また, 姿勢・動作模倣課題の評価についてはA∼Dの 4 段階に分けて判定し, A (正確にできる, 3 点), B (正確さは欠けるが大体できる, 2 点), C (正確さに大きく欠ける, 1 点), D (でき ない, 0 点) のように配点した. 次に視知覚発達検査については, フロスティッグ視知覚発達検査 (DTVP, 飯鉢ほか, 日本文 化科学社) を用い, その中から, 「視覚と運動の協応」 の問題 1∼16 を抜粋して実施した. また, この検査は基礎的な検査であり, 各群の児童から 1 名, 幼児 4 名を抽出し, 全検査項目について 実施した. なお, 検査の実施・評価にあたってはフロスティッグ視知覚発達検査 (DTVP) の 「実施要領と採点法手引」 にしたがった.

身体意識および調整力検査については 「Movement Education Program Assessment (以下, MEPA という)」 (小林芳文著, 日本文化科学社) を用いた. MEPA の検査項目は, 各発達レベ ルにおいて運動・感覚, 言語, 社会性の 3 領域から成り立っているが, そのうち運動・感覚領域 の運動・感覚領域を抜粋し, T養護学校, F養護学校の教員の協力を得て実施した. なお, MEPA の実施・評価にあたっては, 「ムーブメント教育プログラムアセスメント (MEPA) 手 引」 にしたがった. 以上のような課題・検査の実施結果は, 表 1, 表 2, 表 3, 表 4 に示した. また, 姿勢・動作 注) 動作模倣課題は, 1 回の往復を 1 つの動作とみなす. 図 1 姿勢・動作模倣課題

(6)

模倣課題の達成率とCA, MA および各課題・検査との相関係数については, 表 5 に示した. な お, 表 1 について若干補足すれば, 横軸に群, 生活年齢 (CA), 精神年齢 (MA), 姿勢模倣, 動作模倣, 視知覚発達, 運動発達 (身体意識, 調整力) を配列し, 各課題, 検査毎の得点, 達成 表 1 児童の姿勢・動作模倣課題及び視知覚発達, 運動発達の得点と達成率 群 番 号 性 別 学 校 C A M A 姿 勢 模 倣 /45 (%) 動 作 模 倣 /27 (%) 視知覚発達 /32 (%) 運 動 発 達 身 体 意 識 /55 (%) 調 整 力 /72 (%) Ⅰ 1 女 T 8:10 2:03 27 (60.6) 10 (37.0) 4 (12.5) 42 (76.4) 58 (80.6) 2 男 F 8:09 2:06 6 (13.3) 6 (22.2) 12 (37.5) 34 (61.8) 49 (68.1) 3 男 F 11:03 2:06 14 (31.1) 8 (29.6) 7 (21.9) 39 (70.9) 53 (73.6) 4 女 T 11:05 2:06 24 (53.3) 15 (55.6) 4 (12.5) 37 (67.3) 52 (72.2) Ⅱ 5 男 T 9:07 2:07 24 (53.3) 18 (66.7) 14 (43.8) 48 (87.3) 66 (91.7) 6 女 T 12:01 2:08 32 (71.1) 21 (77.8) 10 (31.3) 49 (89.1) 68 (94.4) 7 男 T 12:05 2:09 30 (66.7) 15 (55.6) 16 (50.0) 46 (83.6) 64 (88.9) 8 男 F 11:03 3:00 15 (33.3) 9 (33.3) 10 (31.3) 38 (69.1) 50 (69.4) 9 男 F 8:09 3:01 32 (71.0) 18 (66.7) 8 (25.0) 45 (81.8) 64 (88.9) 10 男 T 9:08 3:01 38 (84.5) 15 (55.6) 17 (53.1) 50 (90.9) 70 (97.2) 11 男 F 10:02 3:01 12 (26.7) 7 (25.9) 8 (25.0) 42 (76.4) 56 (77.8) 12 男 F 10:01 3:02 26 (57.8) 9 (33.3) 9 (28.1) 40 (72.7) 56 (77.8) 13 男 F 12:01 3:02 15 (33.3) 6 (23.2) 17 (53.1) 42 (76.4) 58 (80.6) 14 男 T 10:03 3:03 26 (57.8) 12 (44.5) 24 (75.0) 50 (90.9) 70 (97.2) 15 女 F 7:10 3:04 21 (46.7) 10 (37.0) 17 (53.1) 36 (65.5) 50 (69.4) Ⅲ 16 女 T 10:01 3:07 34 (75.6) 22 (81.5) 20 (62.5) 48 (87.3) 66 (91.7) 17 女 T 11:03 3:07 27 (60.0) 21 (77.8) 21 (65.6) 53 (96.4) 71 (98.6) 18 女 T 11:02 3:08 36 (80.0) 18 (66.7) 21 (65.6) 50 (90.9) 70 (90.2) 19 女 F 11:10 4:01 21 (46.7) 8 (29.6) 15 (46.9) 47 (85.5) 61 (84.7) 20 男 F 12:11 4:07 10 (22.2) 7 (25.9) 8 (25.0) 46 (83.6) 62 (86.1) Ⅳ 21 女 T 12:05 5:07 40 (88.9) 25 (92.6) 21 (65.6) 42 (76.4) 62 (86.1) 22 女 T 12:06 6:03 24 (53.3) 14 (51.9) 24 (75.0) 54 (98.2) 71 (98.6) 23 男 F 10:09 6:09 45 (100) 27 (100) 30 (93.8) 51 (92.7) 67 (93.1) 表 2 児童の姿勢模倣課題の項目別達成率 単位:% 群 1. 上 肢 2. 下 肢 3. 手 指    全体    全体    全体 Ⅰ 91.7 58.3 25.0 58.3 50.0 50.0 50.0 50.0 66.7 16.7 16.7 33.3 Ⅱ 90.9 87.9 75.8 84.8 97.0 63.6 39.4 66.7 78.8 18.2 15.2 37.4 Ⅲ 100 93.3 66.7 86.7 86.7 66.7 40.0 64.4 73.3 40.0 26.7 46.7 Ⅳ 100 88.9 77.8 88.9 100 100 33.3 77.8 100 66.7 66.7 77.8 4. 上肢+手指 5. 上肢+下肢    全体    全体 16.7 41.7 25.0 27.8 75.0 25.0 0 33.3 57.6 54.5 39.4 50.5 78.8 24.2 9.1 37.4 53.3 40.0 46.7 37.8 66.7 60.0 26.7 51.1 66.7 66.7 66.7 66.7 100 100 77.8 92.6

(7)

率を示した. 縦軸のⅠ∼Ⅳまでの群は, 田中昌人の可逆操作特性の高次化における 「段階−階層」 理論を参考に設定し(12)(13), MA 2 歳 6 か月まで, 3 歳 6 か月まで, 5 歳 6 か月まで, 5 歳 7 か月 以上の 4 つに区分した. また, 各課題・検査の得点数値は ( ) の左側に, ( ) 内には得点を 満点 (姿勢模倣 45 点, 動作模倣 27 点, 視知覚発達 32 点, 身体意識 55 点, 調整力 72 点) で除 し, 百分率で表した数値を示した. 次に表 4 の補足であるが, 縦軸に各群を横軸に下位検査を配列した. また, 下位検査はⅠ・視 覚と運動の協応, Ⅱ・図形と素地, Ⅲ・図形の恒常性, Ⅳ・空間における位置, Ⅴ・空間関係を 表し, これらの検査結果は粗点から換算して PA (知覚年齢), SS (評価点), PQ (知覚指数) として示してある.

3. 知的障害児の動作模倣能力

 動作模倣能力の発達 調査の結果から各児童の姿勢・動作模倣の達成率と CA, MA, 視覚発達, 身体意識, 調整力 表 3 児童の動作模倣課題の項目別達成率 単位:% 群 1. 上 肢 2. 下 肢 3. 手 指    全体    全体    全体 Ⅰ 58.3 66.7 50.0 58.3 66.7 41.7 16.7 41.7 25.0 0 0 8.3 Ⅱ 84.8 42.4 33.3 53.5 97.0 54.5 21.2 57.6 57.6 30.3 12.1 33.3 Ⅲ 93.3 86.7 66.7 82.2 60.0 66.7 6.7 51.1 46.7 40.0 0 28.9 Ⅳ 88.9 100 100 96.3 100 100 44.4 81.5 66.7 33.3 66.7 55.6 表 4 児童と幼児のフロスティッグ視知覚発達検査の結果 群 番 号 区 分 性 別 MA/CA 下 位 検 査 PQ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ PA SS PA SS PA SS PA SS PA SS Ⅰ 1 障害 女 MA/2:03 3:09 5 3:00 4 2:09 4 2:00 3 3:08 5 30 健常 男 CA/2:00 7:06 16 3:08 9 3:06 9 2:00 9 3:08 9 86 Ⅱ 5 障害 男 MA/2:07 5:10 7 3:08 5 3:03 4 2:08 3 3:08 5 36 健常 男 CA/3:03 8:08 16 4:03 11 4:00 10 4:00 8 3:08 10 114 Ⅲ 16 障害 女 MA/3:07 9:04 12 4:05 6 3:06 5 3:03 4 5:09 8 58 健常 男 CA/4:01 9:04 16 5:03 13 4:06 11 5:08 14 4:05 10 148 Ⅳ 21 障害 女 MA/5:07 9:04 12 6:10 9 5:08 7 5:08 7 6:06 8 78 健常 女 CA/5:07 9:04 16 6:04 11 9:03 16 8:00 14 6:06 12 164 注) 知的障害児の番号は, 表 1 の番号に対応する 表 5 姿勢・動作模倣課題の達成率とCA, MAおよび諸検査との相関係数 課題項目 C A M A 視知覚発達 身体意識 調 整 力 姿勢模倣 0.229 0.406 0.521 0.547 0.722 動作模倣 0.214 0.481 0.531 0.548 0.609

(8)

などとの相関関係を, Pearson の相関係数によって算出した. 表 5 はその結果であるが, それ によると姿勢模倣課題の場合にはr=0.229, r=0.406, r=0.521, r=0.547, r=0.722 であり, 一方の動作模倣課題の場合にはr=0.214, r=0.481, r=0.531, r=0.548, r=0.609 であり, そ れぞれにおいて弱いながらも相関が認められた. こうした姿勢・動作模倣課題の達成率と, CA, MA, 視知覚発達, 身体意識, 調整力の相関 関係は表 1 にも現れており, 全体的に MA が高くなるにしたがって姿勢・動作模倣課題の達成 率が高くなる傾向にある. また, 全体的には動作模倣課題 (全体平均 51.7%) よりも姿勢動作 課題 (55.9%) の達成率が高いなど, 上肢, 下肢, 手指の連続的な動作における問題がみられる. さらには相対的にどの児童も視知覚発達の達成率が低くなる傾向にあり, 他方, 身体意識や調整 力の達成率は高い傾向を示している. 表 1 から個別的にみると, MA に比較して姿勢模倣, 動作模倣ともに達成率が低い児童 (No. 11, 13, 19, 20, 22) がみられること, 反対に MA が低くても動作模倣課題の達成率が高い児 童が全体で 10 名に達すること, などの特徴がみられる. また, 各群ともに MA が低くても姿勢・ 動作模倣課題の達成率が低かったりするなどのバラツキがあり, この傾向は視知覚発達や身体意 識, 調整力との関係においても認められ, 運動発達のアンバランスな関係が浮き彫りになってい る. さらに興味深いことにT養護学校とF養護学校の児童の姿勢・動作模倣の達成率には, 明らか な違いがあるということである. 総じてT養護学校の児童の方が, 各群ともに達成率が高い傾向 を示しており, このことは視知覚発達や身体意識, 調整力の各項目についても明確に現れている. ちなみに姿勢模倣, 動作模倣, 視知覚発達, 身体意識, 調整力の達成率の平均値は, T養護学校 が 67.1%, 63.6%, 51.0%, 84.6%, 90.6%となり, F養護学校が 43.8%, 38.8%, 40.0%, 76.0%, 79.0%となっている. 次に姿勢・動作模倣課題の達成率の傾向を, 項目別にみてみよう. 先ず, 表 2 からは各群とも に上肢, 下肢の順達成率が高くなる傾向が認められ, 特に上肢, 下肢の項目では各群ともに 50% 以上の高い達成率を示している. しかし, 手指の一方を開き, 他方を閉じるというような同時的な 運動になると, 平均的に達成率が下がる傾向にある. さらにはⅢ群までの児童の場合, 上肢と手指, 上肢と下肢などのように, 2 つ以上の部位を同時に動かし, しかもそれぞれに違った動きを行う課 題になるとその傾向がより増し, 姿勢模倣課題, 動作模倣課題ともに達成率が低くなっている. 表 3 をみると運動が複合して複雑になるほど, 課題の達成率が低くなっていることが分かる. 全体的には上肢よりも下肢の達成率が低くなり, また, 手指の達成率においても全体的に低くな る傾向になる. さらに下肢や手指に関しては, Ⅰ群, Ⅱ群, Ⅲ群が右腕 (脚) と左腕 (脚) を同 時に動かし, しかもそれぞれに異なった動きをする課題において達成率が大きく落ち込んでいる. 手指の項目における右手と左手の異なった動作は, 特にⅠ群からⅢ群までの児童にとって困難な 課題であったように思われる. 以上の分析をさらに深めるために, MA と姿勢・動作模倣の相関, 姿勢・動作模倣課題の各

(9)

群別達成率などについて図示した. 先ず, 図 2 からは知的発達に伴って姿勢・動作模倣能力の発 達が進展し, 緩やかではあるが相関関係があることが認められる. また, 個別的に見ると姿勢模 倣課題と動作模倣課題の達成率にバラツキが見られ, さらに MA の下位と上位との間に著しい 差 (86.7 ポイント) があると同時に, CA が高い一部の児童 (No.11, 13, 19, 20, 22) の達成 率が低いなど, その発達にアンバランスな関係があることが分かる. こうした現象と同様のことは, 各群別の姿勢模倣課題の達成率を示した図 3, 各群別の動作模 倣課題の達成率を示した図 4 にも現れている. 特にⅠ群においては動作模倣課題の各項目で差が 大きく広がり, Ⅱ群の場合には姿勢模倣課題の達成率が動作模倣課題よりも高いが, 差は姿勢模 倣課題で広がる傾向にある. また, Ⅲ群の各項目では姿勢模倣課題の達成率が優位であるが, そ の差は姿勢模倣課題よりも動作模倣課題の方で開いている. いずれにしてもⅢ群までは姿勢模倣, 動作模倣の両面の達成率にバラツキがあり, とりわけⅡ群までの児童においては, 手と指, 上肢 と下肢などのように, 2 つ以上の動作を組み合わせた項目が明らかに低い数値を示していること が分かる. ところでⅡ群までの児童の場合にも, 2 つ以上の動作を統合した姿勢・動作模倣課題において, 低いながらも一定の得点を得ているが, 臨床の場をとおして観察した結果によれば, これらの児 童の場合, 加算的な運動との関連で考える必要がある. つまり, 上肢と下肢を同時に動かして模 倣する場合, 先ず上 (下) 肢を模倣してから次に下 (上) 肢を模倣するというように, それぞれ 別々な動きとして再現し, 結果的に協応動作を達成しているように思われる. 一般に子どもの場 合には, 2歳頃から垂直方向と水平方向をある程度意識し, 実際に動作として再現できるように なるのは 3 歳を過ぎた頃だといわれており(14), 3 歳 6 か月頃までの児童では 2 つの動作の統合が 困難と考えられ, 加算的な動作は自然なことであるように思われる. 一方, これまでの研究においては, 視知覚が実践的行為に優先するようになるのは, 3∼4 歳 頃とされ, それ以前の目と手の関係は, 物を操作するという行為そのものに統合されるために, 視覚的な刺激に対しては反応が弱い. そのために物の輪郭や形態の認知, 図形の形と穴の対応 (マッチング) といった行為においても, 視知覚反応に実践的行為が優先するといわれている(15). したがって, 3 歳 6 か月頃までの児童のこうした加算的な動作の問題も, 行為そのものに注意が 集中しているために, 連続的な経過よりも動作の最終的な形のみに目が向いている結果とみるこ ともできる. 最後に, 上肢に比較して下肢の達成率が低いことについて触れておきたい. 児童の場合には, 歩行獲得や運動経験などの問題と深い関わりがあり, 大塚 (1994) は上肢運動年齢が下肢運動年 齢に強く規定されるとし, 上肢と下肢の運動発達は相関関係にあるとしている. そして, その上 で児童の上肢運動年齢が幼児に比較して低くなる要因として, 始歩の時期や身体的・運動的な素 質や成熟度を挙げている(16). このことから児童の下肢の姿勢・動作模倣の達成率の低さを考え ると, そこには神経学的な問題と合わせて歩行の遅れや運動経験の問題も, 深く関与しているの ではないかと考えられる.

(10)

 視知覚発達および身体意識・調整力と動作模倣能力 実態調査の結果から姿勢・動作模倣課題と視知覚発達および身体意識・調整力の相関関係をみ ると, 表 5 のようになっている. ちなみに視知覚発達の場合には姿勢模倣課題, 動作模倣課題と の相関係数はr=0.521, r=0.531, 身体意識の場合には姿勢模倣課題との相関係数はr=0.547, r=0.548, 調整力の場合には姿勢模倣課題と動作模倣課題との相関係数がr=0.722, r=0.609 となっている. これらの相関係数からは, それぞれに弱いもののある程度の相関が認められる. このような関係は表 1 にも現れている. 視知覚発達検査の達成率が 50%以下になっている者 は, Ⅱ群までの児童の場合 15 名中, 10 名に達し, その内訳をみるとⅠ群 4 名, Ⅱ群 6 名となっ ている. また, Ⅲ群において 50%以下の達成率を示している児童は, 5 名中, 2 名となっている. いずれにしても視知覚発達の水準が全体的に低い傾向を示し, それと同時に姿勢・動作模倣課題 の達成率も低い傾向を示していることが分かる. ただし, 視知覚発達の達成率が低くても姿勢・ 図 2 MA と姿勢・動作模倣の相関 図 4 動作模倣課題の各群別達成率 22 22 23 23 21 21 20 20 19 2 2 3 3 1 11 11 13 8 8 12 13 15 14 15 19 4 4 7 5 12 10 1417 18 9 5 7 1 10 16 18 17 16 6 6 9 1 2 3 4 5 6 7 8 (歳) 10 20 30 40 50 60 70 80 90  (%) MA 姿勢模倣 姿 勢 ・ 動 作 模 倣 課 題 達 成 率 動作模倣 図 3 姿勢模倣課題の各群別達成率 10 20 30 40 50 60 70 80 90  (%) Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 上肢 下肢 手指 上肢+手指 上肢+下肢 群 姿 勢 模 倣 課 題 達 成 率 上肢 下肢 手指 10 20 30 40 50 60 70 80 90  (%) 動 作 模 倣 課 題 達 成 率 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 群

(11)

動作模倣の達成率が高い児童 (N0.1, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 11, 12, 16, 21 など) がみられる など, アンバランスな関係が一方では認められる. 表 4 は, 各群から抽出した児童と幼児のフロステッグ視知覚発達検査の結果である. この表 4 をみると児童の下位検査の結果は, 全てにおいて MA よりも高いものとなっており, 特に下位 検査Ⅰ・視覚と運動の協応, Ⅱ・図形と素地, Ⅴ・空間関係においては, 随分と突出した数値と なっている. ただ, 下位検査Ⅲ・形の恒常性, Ⅳ・空間における位置に関しては, Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ, Ⅴよりも知覚年齢が低く, このことから形の恒常性や空間における位置について, 視知覚上の問 題があるのではないかと考えられる. 表 4 から児童と幼児を比較すると, 下位検査ⅠにおいてⅠ群, Ⅱ群の児童, 幼児の知覚年齢の 差が大きく開き, Ⅲ群以降の児童, 幼児の場合には差が全くなっている. 下位検査ⅡとⅤでは児 童, 幼児ともに同じような知覚年齢であり, 下位検査Ⅲでは各群で差が開き, 特にⅣ群では 3 歳 7 か月の差になっている. 下位検査Ⅳでは, Ⅱ群以降 2 歳以上の差がみられる. 一方, 身体意識においては, 全体として達成率がやや高い傾向を示し, 各児童の達成率は 61.8%から 98.2%の範囲に入っている. しかし, 身体意識の達成率の高さに反し, 姿勢・動作模 倣の達成率は低い水準に留まっている. この傾向を達成率の全体平均で見ると, 身体意識は約 81%であるのに対して姿勢模倣課題が約 56%, 動作模倣課題が約 52%程度に留まり, 身体意識 が高くても動作模倣能力が低くなる傾向にある. 特に No.2, 3, 8, 11, 13, 19, 20 などの児童 の場合, 身体意識の達成率に対する姿勢・動作模倣課題の達成率が低くなっているのが目立つ. 調整力の場合, 表 1 からみてみると達成率の範囲は 68.1%から 98.6%の間に収まり, 全体平 均の達成率は 85.1%の高い数値を示し, 比較的各群の間の差が小さい. しかし, 一方で調整力 の達成率が高いにもかかわらず, 姿勢模倣課題で 50%以下の児童がそれぞれ No.2, 3, 8, 11, 13, 15, 19, 20 など 8 名, 動作模倣課題では No.1, 2, 3, 8, 11, 12, 13, 14, 15, 19, 20 な ど 11 名となっており, その実態に大きなバラツキがある. こうした視知覚発達, 身体意識, 調整力と姿勢・動作模倣の二者間におけるバラツキは, 相関 を表した図 6, 図 7, 図 8 にも明確に現れている. 先ず, 図 6 からは姿勢・動作模倣と視知覚発 達の相関関係が弱く, しかも視知覚発達と姿勢・動作模倣の達成率にアンバランスな関係がみら れるなど, 相対的に達成率にバラツキが大きい. また, 表 4 を図示した図 5 をみると, 下位検査 ⅠにおいてⅠ群とⅡ群, Ⅱ群とⅢ・Ⅳ群の間に知覚年齢の差が特に大きくなっており, さらに下 位検査Ⅱ, Ⅲ, Ⅳ, Ⅴにおいてもそれぞれの間に知覚年齢に差が認められる. 図 7 からは全体的な傾向として身体意識の達成率が高くなるにしたがって, 少しずつではある が姿勢・動作模倣の達成率が高くなっている. しかし, 個別的にみるとⅢ群までの児童において, 身体意識の達成率と姿勢・模倣模倣の達成率の二者間に, アンバランスな関係がみられる. さら に図 8 からは, 調整力と姿勢・動作模倣との相関が強くなっている一方で, 調整力の高さに比較 して達成率が低い水準に留まっていることが浮き彫りになっている. 特に, 調整力の達成率が 80%以上と高いにも関わらず, 姿勢・動作模倣課題の達成率が 30%以下になっている児童がみ

(12)

られ, ここでもアンバランスな関係が目立つ. 児童の場合, 障害が要因となって諸能力の発達がアンバランスになりやすい. このことは運動 発達においても同様にいえることであり, その傾向は図 6 にでも典型的に現れている. 図 6 をみ ると視知覚発達の達成率が高くても姿勢・動作模倣課題の達成率が低かったり, その反対に視知 覚発達の達成率が低くても姿勢・動作模倣課題の達成率が高かったりというように, 極めてアン バランスな関係が浮き彫りになっている. 総合的な能力である運動能力においても, 機能間にズ レが生じてこうした特有の現象が現れてくるものと考えられる. 以上のことから児童の場合, 目でみたことを手指, 上肢と下肢など, 身体各部を同時的に協応 させて動作することに, 多くの問題があるということが理解できる. そして, 各群抽出のフロス テッグ視知覚検査の結果を踏まえると, 児童の協応動作の問題発生の背景には, ①身体各部の働 きの問題, ②動作全体を構成している形の把握の問題, ③動作の変化を連続的な線として把握す ることの問題, ④空間における動作全体の形の認知などの問題が絡まっていると考えられる. そ して, これらの問題の多くは, ②∼④の視知覚と運動の関係に属する問題である. しかし, 児童のこうした視知覚と運動の発達の問題発生には, 一方で目と運動の相互作用とい う行動領域の問題が関与していることを, 特に指摘しておかなければならない. というのは目は 見る, 見分けるという視知覚領域の機能に加えて, 運動をコントロールするという行動領域の機 能を合わせ持っているが(17), 児童の場合にはこの機能に障害があり, 十分に働いていないと考 えられる. 手指や腕, 脚などの各部位による運動の阻害や, 同時に 2 つ以上の部位を動かす運動 において, コントロールがスムースにいかないのも, こうした要因が関わっているからと推測さ れる. 最後に, いうまでもないが児童のさまざまな運動上の問題には, 神経学的な問題が深く関与し ていることを再確認しておきたい. エアーズ (Ayres) は, 統合感覚過程の最初の感覚インパル スの統合においてすでに問題が生じている障害児の場合, 次の感覚入力の統合や目と手の協応, 運動としての再現などにおいても, 深刻な問題が発生すると指摘しているが(18), 大脳の障害に よって知的な発達が阻害されている児童の場合, 神経系の障害が要因となって運動上におけるさ まざまな問題を抱えている. まさに姿勢・動作模倣と視知覚, 身体意識, 調整力などとのズレや アンバランスは, こうした根源的要因も絡んでいるのである.

小 括

動作模倣能力は視知覚発達や運動発達などと相関関係にあり, 相互連関的に発達している. し かし, 児童の場合には, こうした関係にズレやアンバランスさがあり, そのために演劇的表現活 動においても動作模倣ができなかったり, 正確さを欠いたりするなど, さまざまな問題が発生す る. こうした児童の動作模倣に関する問題について, 臨床的な調査を実施してその要因を追究す ることは, 演劇的表現活動の指導法を開発する上で重要な課題であるが, 長い間, さまざま事情

(13)

から積み残したままとなっていた. 今回, 1 年以上の時間をかけ, 視知覚発達や身体意識, 調整力との関係においてデータを蓄積 し, 動作模倣の問題が発生するメカニズムを曲がりなりにも解明できたことは, 長年の課題を解 決したという意味において大いなる喜びである. 特にこの臨床的な調査によって, 動作模倣の問 題の背景に神経学的側面, 発達学的側面, 運動学的側面などの要因が, 根深く関与していること を確認できたことによって, 演劇的表現活動の指導法の開発が, 一層, 前進するものと期待でき る. 次稿 「知的障害児の動作模倣能力の発達と演劇的表現」 でその成果を発表できるよう, 今後, 一層, 研究に精励したいと思っている. 図 8 調整力と姿勢・動作模倣の相関 図 5 下位検査における知覚年齢 1 (歳) 下 位 検 査 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Ⅰ−1 (障) Ⅰ−1 (健) Ⅱ−5 (健) Ⅱ−8 (健) Ⅲ−16 (健) Ⅲ−11 (健) Ⅳ−21 (健) Ⅳ−18 (健) 知 覚 年 齢 図 6 視知覚発達と姿勢・動作模倣の相関 Ⅰ群 Ⅱ群 Ⅲ群 Ⅳ群 Ⅰ群 Ⅱ群 Ⅲ群 Ⅳ群 姿勢模倣 動作模倣 10 20 30 40 50 60 70 80 90  (%) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (%) 1 4 4 1 9 9 12 6 6 3 3 11 11 20 20 2 2 12 8 8 5 5 7 7 10 15 15 13 13 19 19 17 18 16 17 18 16 10 21 21 14 14 22 22 23 23 姿 勢 ・ 動 作 模 倣 課 題 達 成 率 視知覚発達課題達成率 図 7 身体意識と姿勢・動作模倣課題の相関 身体意識課題達成率 10 20 30 40 50 60 70 80 90  (%) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (%) 姿 勢 ・ 動 作 模 倣 課 題 達 成 率 21 21 4 4 15 15 2 2 3 3 11 11 13 19 20 20 8 8 12 13 1 19 14 22 22 17 14 10 5 9 1 12 7 9 5 18 6 7 16 6 16 18 17 10 23 23 Ⅰ群 Ⅱ群 Ⅲ群 Ⅳ群 Ⅰ群 Ⅱ群 Ⅲ群 Ⅳ群 姿勢模倣 動作模倣 10 20 30 40 50 60 70 80 90  (%) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (%) 姿 勢 ・ 動 作 模 倣 課 題 達 成 率 身体意識課題達成率 21 21 23 23 4 4 15 15 8 8 3 3 2 2 11 11 19 20 20 22 10 17 16 18 6 10 6 9 9 7 18 5 17 10 14 22 14 19 7 5 1 12 1 12 13 Ⅰ群 Ⅱ群 Ⅲ群 Ⅳ群 Ⅰ群 Ⅱ群 Ⅲ群 Ⅳ群 姿勢模倣 動作模倣

(14)

最後になったが, 養護学校や保育園における調査に快くご協力いただいた戸田竜也氏 (埼玉純 真女子短期大学専任講師) に, 厚くお礼を申し上げたい. 調査が滞りなくできたのも氏のご協力 によるところが大であり, 改めて深甚の感謝を申し上げる. また, 群馬県内 T 養護学校, 埼玉 県内 F 養護学校, 群馬県内 K 保育園の関係者, 児童・幼児たちにも, 多大なご協力をいただい たことから, 心からの感謝のことばを申し上げる. 調査をつつがなく実施でき, 何とか論文とし てまとめることができたのも, 皆さんのご協力の賜物である. ここに衷心よりお礼を申し上げた い. 参考文献  伊勢田亮 障害児の演劇教育研究 宣協社, 1995, pp.73−74  スタニスラフスキー (山田肇訳) 俳優修業 未来社, 1975, pp.25−26  スタニスラフスキー (土方与志訳) 身体的行動 未来社, 1953, pp.62−63  前掲書 , p.26  J. ピアジェ (大伴茂訳) 模倣の心理学 黎明書房, 1968, pp.10−159  田辺正友 「発達における機能連関に関する研究  精神遅滞児の運動機能と視知覚機能 」 奈 良教育大学紀要 34, 1985, pp.145−156  田辺正友ほか 「発達における機能連関に関する研究  精神遅滞児の運動機能と身体模倣能力 」 奈良教育大学紀要 35, 1986, pp.201−210  田辺正友ほか 「精神遅滞児の運動発達 姿勢模倣および動作模倣による分析 」 障害者問題研 究会 46, 全国障害者問題研究会, 1986, pp.49−55 田辺正友ほか 「精神遅滞児の運動発達 身体コントロール・調整課題による分析 」 奈良教育 大学紀要 36, 1987, pp.95−104 田辺正友ほか 「精神遅滞児の身体運動模倣の発達 身体像との関連 」 奈良教育大学紀要 24, 1988, pp.11−17 前掲書 , p.50 田中昌人 「発達における階層の概念の導入について」 京都大学教育学部紀要 23, 1977, pp.1−13 田中昌人 「発達における階層間の移行について (Ⅲ)」 京都大学教育学部紀要 31, 1985, pp.32−59  園原太郎 子どもの心と発達 岩波書店, 1979, pp.251−252  ザポロージェツ (青木冴子) 知覚と行為 新読書社, 1975, pp.251−252  大塚佳子 「中・軽度精神遅滞児の上肢運動の規定要因の検討」 日本特殊教育学会第 32 回大会発表論 文集, 1994, pp.226−227  宇佐川浩 障害児の発達臨床とその課題 学苑社, 1998, p.50  エアーズ (佐藤剛監訳) 子どもの発達と感覚統合 協同医書出版社, 1983, pp.35−149

参照

関連したドキュメント

④日常生活の中で「かキ,久ケ,.」音 を含むことばの口声模倣や呼気模倣(息づかい

本学級の児童は,89%の児童が「外国 語活動が好きだ」と回答しており,多く

在宅の病児や 自宅など病院・療育施設以 通年 病児や障 在宅の病児や 障害児に遊び 外で療養している病児や障 (月2回程度) 害児の自

平成 支援法 へのき 制度改 ービス 児支援 供する 対する 環境整 設等が ービス また 及び市 類ごと 義務付 計画的 の見込 く障害 障害児 な量の るよう

イ小学校1~3年生 の兄・姉を有する ウ情緒障害児短期 治療施設通所部に 入所又は児童発達 支援若しくは医療型 児童発達支援を利

委 員:重症心身障害児の実数は、なかなか統計が取れないという特徴があり ます。理由として、出生後

2. 「STOP&GO ボディ・シェイプ編」 3. 「STOP&GO

[r]