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食道憩室に停滞した異物の1例

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Academic year: 2021

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〔臨床〕松本歯学32:245∼247,2006        key words :異物一食道憩室一誤飲一医療事故

食道憩室に停滞した異物の1例

内 田 啓 一   黒 岩 博 子   山 下 秀 一 郎   石 塚 正 英   杉 野 紀 幸   塩 島 勝

      1松本歯科大学 歯科放射線学講座 2松本歯科大学 総合歯科医学研究所 顎口腔機能制御学部門      3松本歯科大学 口腔顎顔面外科学講座

Acase of retained fbreign body in the esophageal diverticula

KEIICHI UCHIDA HIROKO KUROIWA SHUICHIRO YAMASHITA MASAHIDE ISHIZUKA NORIYUKI SUGINO and MASARU SHIOJIMA

    ’Depαrtment ofOrα〃1αdi・1・gy, Scん・・Zげ1)e功8彦ry,ル蹴8耽・t・Z)ental University 2Division of Orα1 and Maxillofaciα1 Biologor, lnstitute fbr Orα1 Science, Matsumoto Dentα1 University 3Deραrτme励orOrαZαπ∂1脆劔φcZαZ S助geη, Scho・1・fl)e功8鋤,ルlatsum・t・De吻》σ励er8吻

Summary

 Various accidents during dental treatment including aspiration or accidental ingestion of pros七heses and fテactures or aberrant position of den七al devices. Inappropria七e measures and managemen七〇f such fbreign bodies sometimes cause risks of serious complications.  Here, we report a 68−year−old male with retained foreign body in the esophageal diver− ticula due七〇aspiration during dental treatmen七.  This case allowed us to closely reexamine the need fbr patient reassurance during man− agement as well as prevelltive measures a七the onset of medical accidents du亘ng den七al treatment. 緒 言  歯科治療中における偶発事故には,補綴物の誤 嚥や誤飲,歯科用器具の破折や迷入など様々であ り,時としてこうした異物は適切な処置や対応を 誤ると重篤な合併症を引き起こす危険がある.  今回,著者らは歯科診療中の誤飲により食道憩 室に停滞した異物の1例を経験したのでその経過 について報告する. 症 例 患者:68歳男性. 初診日:2005年7月15日. 主訴:誤飲物の精査依頼 既往歴:2004年12月に胃潰瘍の手術を行ってい る.その他特記事項はない. 現病歴:2005年7月8日,某歯科医院にて補綴物 試適時に口腔内に全部鋳造冠(FCK)を落下さ せられた.2005年7月15日にFCKの位置確認の (2006年11月15日受付;2006年12月20日受理)

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246 A 霞 内田他:食道憩室に停滞した異物の1例 ぺ h’/.

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一「; 『 _.。 iXSa。、、、be・ L..、itriMN“am£. 写真2:CTでは左側上部食道部にFCKを認める(矢印).       i 写真1:胸部エックス線写真において右側頸部に不定形の強    い不透過像を認める(矢印). ために本学を紹介にて受診した. 処置および経過:医療事故発生日,患者に咳き込 み感や気道閉鎖感がないため,主治医がFCKを 誤飲したと判断し,患者への説明を行い帰宅を指 示した.翌日7月8日,11日に主治医が電話にて 症状の確認を行った.その際にとくに変化がない ため経過観察をするように指示を行った.同年7 月15日全身状態の変化はなかったが,本学を精査 目的にて受診して頂き精査のため胸部エックス線 撮影を行った.その結果,右側頸部に不定形の強 い不透過像を認めた(写真1).その不透過像の 局在を診断するためにCT検査を行ったところ, 左側上部食道部にFCKを認めたく写真2).同 年同日某病院に依頼し内視鏡検査を行った.その 結果,上部食道に多数の憩室を認め,FCKの憩 室内への迷入を認めたため内視鏡下にて除去を 行った(写真3).除去したFCKの確認と症状 等の問診や今後の指示を行い帰宅させた.その 後,とくに合併症状はなかった. 考 察  歯科治療中における異物の誤飲には,補綴物や 歯科用器具の破折あるいは下顎智歯分割時のカー バイトバーの破折などがある.その殆どが,誤飲 時には食道あるいは胃に停滞し数日で排泄される ことが多いとされている.しかし,本症例のよう に1週間にわたり無症状で食道憩室に停滞した異 物の報告例はきわめて稀である. 写真3:a内視鏡検査では上部食道憩室へのFCKの迷入を認める(矢印).    b内視鏡ドでの除去(矢印),c多数の食道憩室を認める(矢印).

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松本歯学 32(3)2006  食道憩室には食道壁縦走筋の最も薄い場所であ る喉頭・食道境界部後壁に発生する圧出性憩室で ある喉頭食道憩室(Zenker憩室),結核性リ1ンパ 節炎によって気管分岐部のリンパ節炎が癩痕化し それに食道が牽引されて憩室が生じる牽引性憩室 である中部食道憩室(気管分岐部憩室),横隔膜 上部食道に発生する圧出性一索引性憩室である横 隔膜上部憩室がある1).その症状としては通常無 症状で大きいものでは,嚥下障害,喉頭部違和感 や胸痛を訴え,憩室に異物が停滞すると感染や出 血を併発するなどの特徴がある1).  今回の症例は,上部食道に発生した喉頭食道憩 室(Zenker憩室)であり,患者自身の自覚症状 は殆どなかったが,既往歴において胃潰瘍の手術 の経験があることから,その病歴について詳細に 問診を行うことも重要である.また,食道異物は その直後から嚥下障害の症状を示すことから,誤 飲と診断することができるが,食道憩室内に停滞 した異物は自覚症状が乏しいとされている.しか し,こうした異物が長時間停滞すると食道潰瘍や 穿孔が生じ,開胸手術が必要となる縦隔洞炎を引 き起こす場合もあり速やかに除去することが重要 である.  異物の誤飲の診断とその処置に関しては,誤飲 発生時の状況や異物の位置の確認,患者の状態や 口腔内あるいはチェア周囲の確認を早期に行うこ とが重要である.とくに重要なことは患者の状態 に変化がなくても,歯科医師が適切な状況の判断 が出来ること共に重篤な合併症を引き起こす危険 もあるので早急にエックス検査によりその位置を 把握することである2). 247  歯科治療時における異物の誤飲を防止する方法 としては,ラバーダムの装着,金属修復物の試適 時においてとくに撤去時に注意をすることや歯科 用器具を正しく使用することで防止することがで きる3).また,咽頭空隙の大きな患者や嚥下反射 の減衰している高齢者ではとくに注意が必要であ る.しかし,慎重な歯科治療を行っていてもこう した医療事故に遭遇した場合は,その内容と共に 今後の処置や対処について正直に患者に説明する ことが大切である3).また,処置後の経過観察や 対応についても充分に患者の立場になり対応する ことは言うまでのないことである. 結 語  今回の症例において,歯科診療を行うに上で, 詳細な既往歴を知ることや,医療事故発生時にお ける対処や予防方法の再確認を行うことを充分に 反省した1例であった.

引用文献

1)武藤徹一郎,幕内雅敏監修(2006)新臨床外科  学,第4版,404−−5,411−2,医学書院,東京. 2)池田久住,飛田尚慶,大場誠悟,野中美保子,  藤澤昭彦,柴原清隆,山田桂子,井口次夫  (2006)側頭下窩迷入異物(裁縫針)の1例.日  口診誌19:126−8. 3)田島 徹,嶋田 淳,清水麻斎子,野玉智弘,  南清和,金井靖,森 一将,相原悦二郎,  正田久直,龍田恒康,竹島 浩,坂本栄一,安井  利一(2006)智歯分割抜歯時にバー破折により  破折片が顎骨内及び頬粘膜内に迷入した2例.  日口診誌17:120−3.

参照

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