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<論説>サンゴ礁保護における国際法の利用可能性に関する一考察

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(1)サンゴ礁保護における国際法の和用可能性に関する一考察. サンゴ礁保護における国際法の 利用可能性に関する一考察. 西. 谷. 斉. はじめに しサンゴ礁の価値と機能. 2.世界的なサンゴ礁の衰退現象一一原国と婦結 3 . 既存の国際法による保護の可能性 4 . 冨家の領域主権と環壌保護 5.環境条約の相互関謀. 6 .I 環境と爵発」の問題 7 . 雷擦ネットワークの講築一一一サンゴ礁保護の処方筆? 結びに代えて. はじめに. 近年サンゴ礁の急激な衰退が世界各地における共通の現象として指揺さ れるようになっている O 後にみるように,その原因は多様であると司時に 椙互に密接な形で関連している O また,サンゴ礁の保護又は保全(1)を試 みる多国間枠組を構築する場面においては,サンゴ礁の大部分が国家額域 内に存在しているため沿岸富む領域主権と国際公益の蕎突及び経済発展と 環境保護の調和の問題が必然的に生じてくることが予想される。特に後者. I 保護 ( p r e s e r v a t i o n;p r o t e c t i o n )Jは「一切手を加えないで守る こと J ,I 保全 ( c o n s e r v a t i o n )J は「有効に利用しつつ守ること Jの意味でそ れぞれ尾いられるが,本稿においてもそれに従う。なお,文中で単に「保護J としている留所もあるが,それは「保全」の意味を排除する趣宮ではな~ ' 0. ( 1 ) 一般に,. - 73-.

(2) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号. の問題については世界のサンゴ礁の多くが開発途上諸国の領域内に存在す ることからも一層強調されなければならな L王。こうした原留の語襲性,領 域主権の壁,環境と開発の調和の問題もあってか,サンゴ礁を直接の規律 対象とする国禁条約は依然として存在していな L、。これまでのところサン ゴ礁保護の問題を国際法の側面から扱った論稿が見当た告ないのもこうし た事需が背景にあると考えられる。しかしなが G,このことはサンゴ礁保 護に向けた制度の存在を否定するものではなく,現に複数の国際的ネット ワークがいわば「緩やかな j あるいは「インフォーマんな」国際都度とも 呼ぶべき多様な利害関孫者聞の協力の枠組を提供している。さらに法的な 枠組においても,既存の環境保護条約はサンゴ礁探護について一定の接点 を直接又は間接的に提供している。 本稿 i ま,以上のような状況下にあるサンゴ礁の保護をめぐる問題点を主 に国際法学の視点を中心に検討することを百的とする O そこで本穣は,ま ずサンゴ礁の衰退に関する概括的な考察を加え,続いて①既存の冨際法に よる保護の可能性,②関連する冨擦法上の問題点,③望まれる国擦制度, の三点について顕に検討する G こうした作業はサンゴ礁が有する錨値を法 的な文脈に乗せ,そのことによって既存の環境レジームの履行確保あるい は新たな国際髄度の形成を促進する土台を提供する意味において有益であ るように思われる O ところで,サンゴ礁保護の問題は国際レベんだけではなく,国内レベル の問題でもあり,この問題を地域社会の経済発展と環境保護という視点か ら考察することも重要であろう O 従って,本積ではこうした国内的側面に ついても,日本におけるサンゴの主要な生息地であると同時に,様々な経 済,社会,安全保障に関する問題を抱える沖縄を拐にとりつつ必要な限り において舷れるつもりである G. 7 4-.

(3) サンゴ礁保護における冨際法む和用可能性に関する一考察. 1 . サンゴ礁の缶{直と機能 サンゴ礁は,サンゴや員の石灰質の骨格や殻が海中で堆積することによ り形成される地形であり,以下のような多様な価僅と機能を担っている O まずサンゴ礁は,漁業資源を提供し,多くの観光客やダイバーを引き寄せ ることによって地元の経済を支えるという. f 経済的価値j を有する。次に. ます。石灰岩は古代のサンゴや貝 サンゴ礁は地域の文化や社会に影響を及 l が死んだ後,堆積したものが長い年月を経て地上へと睦起したものである が,建築物の建材や塀として,あるいは家庭患の道具として利用されてき た(2)。 沖 縄 を 例 に 取 れ ば , 沖 縄 本 島 を 中 心 と す る 「 琉 球 弧J (琉球列島) はかつての琉球王冨の領域と一致し,世界に関かれた海洋国として独特の 文化を形成してきた。これらはサンゴ礁の「文化的・社会的錨値j として 特徴付けることができる G さらにサンゴ礁は自然の造形物として,その存 在自体の価値,つまり. f 内在的価笹」も有している。経済的価値や文化的. ・社会的価値を度外視した,美しさや癒し,吉然遺産としてのサンゴ礁で ある O 加えてサンゴ礁は,捧波や高波から島民を保護する「自然、の訪波堤j としての機能も営む。例えば,. 2 0 0 4 年1 2月に発生したインド洋大津波にお. いて,開発の進んでいたタイの沿岸では大きな被害が出たが,サンゴ礁が 残っていたモルディブでは被害がそれほど甚大ではなかったことがその機 能の重要性を示している汽従ってサンゴ礁を保護することは自然災害に 対する安全を確保する側面もあると言えるは)。 出. 沖縄では,首里域の建材として使用されたほか,そむ形状を利用した「麦す り石」としても用いられていたという O 環境省・百本サンゴ礁学会編 I I B本の 0 0 4 年 , 2 俗5真。 サンゴ礁i 日本環境研究センター, 2. ( 3 ) 1朝呂新語Jl 2 0 0 5年 1月 9B朝刊。 出. サンゴ礁の訪護機能は,損害の軽減による歳出増加の抑制という意味においメ. 7 5.

(4) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号. サンゴ礁が果たす機誌として蓉筆すべきなのが, 1"温暖化訪止J と f 生 物多様性の保護j である O サンゴは褐虫藻という単細胞の藻類と共生関係 を持っており,その作用を通して海中の二酸化炭素を石灰〈炭酸カルシウ ム)の形で閉じ込めている O 海水には大気中に含まれる二酸化炭素の数十 倍が含まれており,従ってサンゴは地球の二酸化炭素を海中において吸収 ・国定化するという重要な機能を果たしてきたといえる O また,生物多様 性という棲点からしても,サンゴ礁はしばしば「海中の熱帯掠j と称され るように多様な海洋生慈系の基盤として多くの生物を青み,地域住民に 豊かな漁場を提供している O そこは遺伝子資源や生化学物賞の宝庫でもあ るO サンゴ礁はまさに生物資源の揺りかごであるといえる叱 このようにサンゴ礁は,①経済部倍値,争文化的・社会的信僅,舎美的 ・内在的{酉値,@土地の拐護,@湿暖化訪止,⑥生物多様性保護,という. 6つの価憧と機能を有している叱. 2 . 世界的なサンゴ礁の衰退現象一一原国と嬉結 ( 1 ) 衰退の原菌. 1 9 9 8 年に世界的な規摸でサンゴの自化現象が確認された。自化現象とは. 、て経済的規u 冨を併せ持つことにもなろう。. ( 5 ) サンゴ礁は f 棲み込み連鎖Ci n h a b i t a t i o nc h a i n )J仮設によれば,生物た ちに石灰賓の基盤を提供している点できわめて重要な意義を有している。井上. F 生物多様性とその保全J(岩波講座「地球環境学 5J )岩 波書庖, 1 9 9 8 年 , 1 6 5 6 7 頁。したがって「主要な骨格生物が鍵全な状態で生育. 民二・和司英太隠編. して群集を形成しているということは,それらが基礎となりまた中心となって まかならない j のである O 構造化される棲み場所の枠組みが存在することに i 「同上書J ,1 9 3 夏 。 ( 6 ) 1 9 9 2年の国連環境開発会議(リオサミット)の擦に採択された「アジェンダ. 2 1Jも第 1 7 章中の,国家管轄権の下にある蒋洋生物資源の持続的な和用及び保メ. - 76-.

(5) サンゴ礁探護における園際法の科用可能性に関する一考察. サンゴと共生関係を営む褐虫藻が水準の上昇や海水の汚染によってサンゴ から抜け落ち,そのためにサンゴが白っぽくみえる現象であるが,この状. 9 9 8 年当時,太平洋, 態が長くつづいた場合,サンゴは死滅してしまう o 1 インド洋,ペルシャ湾,地中海,カリブ海など世界の 4 0ケ所以上でサンゴ が白化し,沖縄でも白化現象が広範屈に渡って観察された(7) 0 サンゴの台化に法地球温襲化が大きく影響している。サンゴは環境の変 北に極めて敏感であり,水温が 1度ないし 2震上昇するだけで,ポリプ 〈サンゴを形成する微小な刺起動物〉泣褐虫藻を吐きだしてじまう G サン ゴむ成長は遅く,失われたサンゴ礁を再生させることは極めて困難である といわれる o 1 9 9 8 年の白化現象はそむ直前 i こ発生したエルニーニョとの関 連が指摘されているが,そのエルニーニョ自体が地球の温暖化によって頻 発するようになったと言われている叱地球温暖化が環在のレベルで進行 すれば,将来サンゴの白化現象が頻発するようになち,その結果,地球上 の二酸化炭素の増大-温援化の加速ーサンゴ礁の衰退又は消波一二致化炭 素む増大,という負の循環に焔る可能性がある o 2 0 0 1年に発表された気候 変動に関する政野間パネル(I PCC) の第 3次報告書は,地球上の海面水 温及び陸地の気温が, 1 9 世紀末から現在までに O .4~0. 8 度上昇したと指擁 している{針。 IPCC は , 1 9 9 0年から 2 1 0 0 年までに1.4~5. 8 度気温が上昇す ることを予測しており,このことからもサンゴ礁及びサンゴ保護のための. 、全に関する笛所において,サンゴ石震が「重要な生態学上の機能を提供し,海岸 を保護し,食料,エネルギー,ツーリズム及び経済発展にとって重要な資源と. . 7 2 ) 0 なっている j こ と を 指 摘 し て い る な 7 ( 7 ). r 朝日薪麗 J1 9 9 8 年1 1月1 8日夕刊。. ( 8 ) 茅根創「地球環境変動とサンゴ礁の劣化Jr 海洋』第 3 7 巻 2号 , 2 0 0 5年 , 1 6 4 頁9. ( 9 ) IPCC第三次報告書については次のサイトを参照。 http://www.grida.no/ c l i m a t e / i p c c _ t a r / w gl/012.htm 存t e m p e r a t u r e s - 7 7.

(6) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第. 1号. 冨境を越えた取り組みをおこなう必要性が存在するといえる O 日本のサンゴの 9割以上が沖縄に生息しているが,やはり減少傾向にあ る憾。だがその原菌を地球逼暖化だけに帰することはできない。沖縄特有 の問題として,ダムの建設や農地整備といった公共事業及びリゾート開発 による陸上起因の赤土汚染もサンゴ礁が衰退する大きな原菌となっている からである O すなわち,さまざまな開発の結果,沖縄を覆う国頭マージと 呼ばれる赤土が雨によって流れだし,それが海底 i こ沈殿したり充を遮断し たりすることによりサンゴが死援するのである制。さらにオニヒトデの大 量発生による被害も知られている O オニヒトデ増加の原国には諸説あるが, 読出する赤土に含まれる物質が大量発生に影響しているとの見解も存在す るO その他,空港の建設などに伴う海岸の埋め立て鰭,船舶む航行による 重接的破壊もサンゴ礁の消滅原菌として挙げられる。これらは他の諸国に おいても再様である O さらに開発途上諸国では,ダイナマイトや薬品を使っ た漁法が行われる場合があり,サンゴを傷つけている。このようにサンゴ が減少あるいは死滅する原因は多様であるが,いずれにせよ人間の活動が 大きな影響を与えていることは疑いない叱 以上を要するに,サンゴ礁の主な衰退原国として挙げられるのは,(D地 球温暖化,②破壊的漁業,@陸上起因汚染,③オニヒトデの大量発生,⑤ 護岸工事等による董接的破壊,の 5つということになろう O ( 1 0 ) 例えば石西璃瑚のサンゴ礁群は最近 2 0年間で 75%議議した。『琉球新報』 2 0 0 4 年 1月2 9B韓両。 ( 11 ) 最近では,除草剤や船底の塗粍に用いられる化学物質である「ジウロン j が サンゴの白化現象を招くことも明らかになっている。 f 朝日新開I J2 0 0 5 年1 2月 2 6日朝刊。 鵠 沖縄では 2 0 0 3 年だけで1.2 8 平方キロの海が埋め立てられたという o ~朝日新 開I J2 0 0 4 年 5J 32 2日朝刊。 1。特に 日本のサンゴ礁Jl ( 註( 2 ) )1 こ詳し t 鱒以上の諸原菌については,前掲 F 第 2章「サンゴ礁の撹乱j を参照。. - 78-.

(7) サンゴ礁保護における国際法の利用可能性に関する一考察. 出衰退の嬉結 以上のように,サンゴ礁はさまざまな原菌によって消滅の危機を迎えて いる叱サンゴ礁の衰退又は消滅が詔く影響は,靖的に言えば先に見たサ ンゴ礁が有する価値や機能の消滅に対応するわけであるが,本稽の自的上 ここでは次の 5つに集約させておく。. ( i ) 地球温暖化の加速. (時生物多様性の減少 制. 自然遺産の消滅. ( i v ) 海洋環境の悪イヒ. ( り. その他経済・社会・文化全般に対する否定的影響. サンゴが衰退する原因はさまざまであり,それが与える影響も多方面に 渡る O それ辻同時にサンゴ礁を保護する手段が多面的にならざるを得ない まと、挙げたサンゴ礁が衰退する 5つ C 原毘のうち,持 ことを意味する O 先 i i こ②. ⑤は沿岸国の領域主権に関わるものであり,国擦的な合意形成が函. i ) ( i v )の否定的彰響につい 難となる側面を有する {130 しかしながら,上記 (. ては関連性を有する国際的な法制度が存在しており,それらを通じて詩接 こであれサンゴ畿の衰退・消誠原因をできる限り徐去することは,サン 的i ゴ礁の保護に一定の効果を年えるように思われる O そこで次にこれらの法 制疫を頗次検討し,サンゴ礁の保護と冨際法の接点を探ってみたい。. 制. 2 0 0 0年に発表された米国海洋大気局 (NOAA) の報告書は, 2 0 3 0年までに 世界のサンゴ礁の 60% が請議すると予測している。『日本経済新聞~ 2 0 0 0年 1 2 月1 28夕刊。世界の各地域におけるサンゴの状況については,次のサイトを参. E 君 。 R eefBaseGIS,h t t p : / / w w w . r e e f b a s e . o r g / d a t a p h o t o s / d a t _ g i s . a s p 鵠. もっとも,③の陸上記因汚染については地域的な法制度がいくつか存在して ) 参熊)。 いる〔後掲註信1. - 7 9.

(8) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号. 3 . 既存の冨際法による保護の可能性 ( 1 ) 気候変動枠組条約及び京都議定書. 先に触れたように,サンゴ礁衰退の主要な原因の一つである白化現象は 地球温暖化の影響が大き L、。気候変動枠組条約締は,. r 気候系に対して危. 険な人為的干渉を及 i ますこととならない水準において大気中の温室効果ガ スの濃度を安定化させること Jを自的とし(第 2条),温室効果ガスの排 出を抑制する義務を先進国に諜している(第 4条 ) 01 9 9 7 年の第 5回締約 冨会議. ( C O P 5 ) において採択された京都議定書は先進国の義務として,. 具体的な数値目標を定めた温室効果ガスの排出削減並びに開発途上諸国に 対する資金援助及び技術援助義務を定めている叱また,同議定書はさま ざまな柔軟メカニズム鵠を用意することによって数値目標達成むための 便宜を図ると同時に条約体制への参加を促進している O 議定書の義務不履 行の擦には不遵守手続が発動される倒。京都議定書は,その発効要件であ る5 5パーセント・ルール闘がロシアの批準により達成された結果, 2 0 0 5 同. 「気候変動 i こ関する国際連合枠組条約 J( 19 9 2年採択, 1 9 9 4年発効)。わが冨. 9 9 3 年に同条約を批濯した。 は , 1 間 第 3条 , 1 0 条 , 1 1条を参照。資金援助に爵しては,世界銀行,国連開発計璽. (UNDP),国連環境計画 (UNEP) が共同で運営する「撞球環境ファシリティ」 が1 9 9 1年に設立されている。 ( 1 8 ) 共毘実施〈第 5条),クリーン開発メカニズム(第 12条),排出量取引(第 1 7 条〉なと、。. 1 ( 訪 2 0 0 1年の第 7回締約冨会議 (COP7) で採択された f マラケシュ合意Jによ り,議定書の不遵守手続制度が確立した。詞申i 度は不遵守国に対する技術的・ 財政的支援を中心に,制裁ではなく,国擦譲力による履行確保を主眼としてい る 。 5カ患が批準し,さらに 1990 年当時の二酸 自 由 京都議定書が発効するためには, 5 5パーセントを上回る,と 化炭素排出量全体(先進諸国が排出した分のみ)の 5 5 条 1項参照)。 いう二つむ条件を共に満たす必要がある(京都議定書第 2. - 80-.

(9) サンゴ礁保護における国際法の利用可能性に関する一考察. 年 2丹 1 6日に発効した部。 もっとも,地球温暖化問題の解決 i こは多くお菌難が伴う G まず,温暖化 のメカニズム自体が科学的にはっきりと解明されているわけではな~ ' 0先. 程の IPCC の報告書が指摘しているように,地球の気温が上昇している ことは事実であるとしても,それが果たして二酸化炭素などの握室効果ガ スだけによるものであるのか,依然として科学者の間では論争が続いてい るむが現状である O 第二に,二酸化炭素を削誠することは,企業にとって 新たな負担を強いることになり,その結果,削減に向けた取り組みが進展 しないことが考えられる問。特に,現在経済的な発展を目指している開発 途上諸国はそうした部減義務を一明拒否する姿勢を貫いている O 反対に先 進諸国の側には,開発途上諸国の削誠義務を一切免除することについて根 強い不満がある。加えて,温襲イとの訪止においては従来の単純な f 先進諸 国対途上諸国Jという対立軸だけで辻捉え切れない点があることが指摘さ れなければならな~,。すなわち,先進諸国の罷でも謹暖化防止に積極的な. EU諸国と,例えば吾本や米国といった諸冨との間では明らかな温度差が 存在する O また,開発途上諸国内においても,中東や南米の産油国と,海 面上昇によって大きな打撃を被るであろう島鎮諸国とでは温暖化防止につ いてまったく異なる態度が示されている叱これらの異なる対立軸を~ , か. にして調整し,一定の方向へ向けさせるかという問題は極めて医難な課題. 立 1 ) 2 0 0 6 年 4月 1 8日現在,議定書の批准国(加入国なども含む)は 1 6 3カ醤となっ. ている O 鈴経済的インセンティブの問題i こ爵しては, 2 0 0 5年 1月から EU で開始され た排出権取引事l 震が企業の温暖化訪止策を誘引する制度として注呂される。 ( 2 3 ) DUNCAN FRENCH, INTERNATIONAL LAW AND POLICY OF SUSTAINABLE 2 0 0 5 ),8 5 8 6 . 先進諸国を含む各 DEVELOPMENT,Manchester Univ. Press (. 冨の具体的な主張については,相長邦夫. 1 4 6 2 2 8を参照。 - 8 1. F 薪・南北問題』藤原書f 吉 , 2 0 0 0 年 ,.

(10) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第. l号. である。塩暖化訪止をめぐる最後の問題は,温室効果ガスの排出主体の問 題である O 二酸化炭素のような温室効果ガスは工業施設からの排出のみな らず,車の運転などの個人の日常生活から無意識的かっ詞接的に排出され るものでもある G また温室効果ガスはそれ自体有毒ではなく,加えて温暖 化が性質上長期にわたって徐々に変化を及 i ます問題であることから,酸性 雨や熱帯雨林の破壊,河川の汚染といった他の環境破壊に比べると,我々 こ到達しにくいという点を指橋することができる図。 の認識レベル i 温室効果ガスの吸収源及び貯蔑庫の 気候変動枠組条約前文第 4段は, I 陸上及び海洋の生態系における役割及び重要性を認識し J (下線は筆者〉 と述べ,間接的な表現ながらもサンゴ礁が温暖化訪止において重要な役割 を演じていることを認めている O 気候変動枠組条約と京都議定書を中心と した温暖化防止のための国際協力は,轟中の C 02吸収源としてのサンゴ を保護することにもつながるのであり,そのことが結果として温襲化防止 に大きく貢献する。さまざまな問題はあるが,温暖化防止はサンゴ礁の保 護において重要な地位を占めていると言える O. ( 2 ) 生物多様性条約. 熱帯雨林の減少が地球温暖化に拍車をかけるだけでなく,生物多様性も 失わせる意味で重要な開題となっているが臨,サンゴ礁についてもこれと. 儲. しかし、温暖化現象泣一定の境界を越えると爆発的 i こ加速する特費(“ r una-. waye f f e c t つを有することが指請されており,そのことからもできるだけ早 い段階で予防措置を講ずることが求められてくる 9 間. 熱帯雨林については 1 9 9 2 年のリオサミットの擦に f 森林原則声嬰」が採択さ れている。ただし,それは熱帯雨梓を含む「全ての地理的区域,気候区分内に ある自然及び人口の森林に適用されるべき」ものとされている〈前文)。さら に,各富 i ま「森林を利用,管理,開発する主権的かっ不可侵の権利」を有する. ( 第 2条 ( a ) ) とされており,利用や揮発についても比重が高くなっている点にメ. - 82-.

(11) サンゴ礁保護におぜる国際法の京j 用可能性に関する一考察. 同様のことが言える O こ の こ と か 弘 生 物 多 様 性 条 約 関 と の 関 連 性 を 指 摘することができる叱 こむ条約は,. r 生物の多様性の課全 j と,その「持続可能な利用 J ,そし. て「遺{云資源の利用による利益の公平な配分Jという三つの異なる目的を 有している(第 1条)叱繕約国は生物の多様性に関する国家計画を策定. s 条),昌国の領域内のうち,生物的多様性を探護する必要があ p r o t e c t e da r e a s ) とすることが求められる(第 s る地域を「保護地域J ( し(第. 条河}。また先進諸国は開発途上自に遺伝子資源む利用に関する情報や技. ¥、留意する必要がある O また, 1 9 9 4 年の「国際熱帯木材議定」は商品協定む色彰 を強く帯びつつも,. r 持続可能であるように経営されている供給源からの熱帯. 木材輸出品の鼓売及び流通を改善すること J( 第 1条 ( k ) ) を巨的のーっとして 掲げている点が特教的である。もっとも,. r この協定のいかなる規定も,木材. 及び木材製品の国擦貿易を制限し又は禁止するための措置(特に,木材及び木 材製品の輸入及び利用に関孫するもの〉をとることを認めるものではない」. 6 条 〉 。 〈 第3. f 生物の多様性に関する条約 J( 19 9 2年採択, 1 9 9 3 年発競)。日本は 1 9 9 3 年に. 観. 批准o ( 2 7 1. r アジェンダ 2 1Jは第 1 5 章(生物多様性の保全)において,諸政唐がその爵. 家致策に基づいて関係機関,. NGOなどと読方しつつ生物多議性を保全するこ. 1 5 . 5 ( 母 ) 。 とを求めており,そめ中にはサンゴ礁も含まれている ( 鵠. つまり,開条約は多様性の保全だけでなく,その構成要素や遺伝子資掠む 「利用 j も条約の目的としている。同条約の交渉過程において,当初の草案は 生物多様性を「人類共通の遺産j としていたが,開発途上諸富が強く反対し,. 0 0 5 年 , 1 1 8 頁。そ 部諒されたという。茜井正弘編『地環環境条約j],有斐閣, 2 の結果,同条約は自然保護条約というよりは,開発の権利及び遺伝資源に対す. r 同上書 j, 1 1 9頁。. 2 0 0 0 年に採 択された同条約のカルタへナ議定書は,生物多様性条約 1 9 条 3項・ 4項,第 8 る主権的権利が強調された条約となっている o. 条{母が規定する遺伝子改変生物などの移議管理・制限などについて詳細往した もむである O 倒. 2 0 0 4 年の第 7屈生物多様性条約締約国会議 (CBD-COP7) 0)際に採択され た「存洋及び沿岸の生態学的多諜性に関する決定J( D e c i s i o nW/5) は,海洋 保護区域 (MPA) が「海洋及び沿岸の生物多様性の保全及び持続的な利用にメ - 83-.

(12) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第. 1号. 備移転,資金の提供をおこなうことが期待されている(第 1 6条 , 1 7条 , 2 0 条 , 2 1条)。 このように,生物多様性条約はサンゴ礁の空間的保護を確保する触媒と してお役割を果たしうるのであり餓,同条約を批准しているわが冨は条約 上の義務を履行する国際的な責任を有している O 日本政府は生物多様性条 約を通し,そむ領域内のみならず開発途上諸国の生物多諜性を保護するよ うに冨際社会から委託されているとも言え,その義務の対象に辻生物多議 性の宝産であるサンゴ礁も当然含まれることになる。わが国としては,生 物多様性条約の理念を冨内的な法制度として反映させると需時に他国と の揚力関係及び地固に対する援助の枠組を積極的に構築していくことが求 められる服。この点,自然公園法による一定区域む国立公園化は,圏内サ ンゴ礁む生物多様性保護についてはある程度貢献していると言える民. ¥連おいて本賞的な手段及びアプローチ j であるとしている。同決議は次のサイト で確認することができる。 h t t p : / / w w w . b i o d i v . o r g / c o n v e n t i o n / c o P s . a s p #海 洋保護区墳については後に触れる 側. 生物の多様性保護については,. G. 1 9 7 3 年に採択された「ワシントン条約j C f 絶. 誠のおそれのある野生動植物の謹の国際取引に関する条約j ) の役割を強調す ることもできる O 例え i ま,沖縄に生息しているジュゴン詰最も厳しいワシント ン条約む付属書 Iに登録され,商取引が禁止されている O また,同条約吋属書 豆で指定されているサンゴ類について泣輪出入が規制されている Q しかし生物 多様性条約による課護が「面的・空間的保護」を提供するのに対し,ワシント ン条約が提供するのは「点的・{画期的探護 j,つまり個別の動揺物に対する保 護である。従ってサンゴ礁全体の生態系の保護を考えた場合,ワシントン条約 による保護はむしろ補足的なものとして考えるべきであろう。 ( 3 1 ) 環境省は 1 9 9 5 年に「生物多様性国家戦略」を策定し,. 2 0 0 2 年には f 新・生物. 多様性冨家戦略Jを発表した。同戦略では,今後とも生物多様性条約の下での 取り組みを推進し,さ告に生物多様性に関連する他の環境条約との連携を強化 していくことがうたわれている。詳しくは,生物多様性センターのサイト. h t t p : / / w w w . b i o d i c . g o♂ jnbsap.html を参照。 問. 自然公圏法は,すぐれた自然の風景地を「国立公園 j, r 国定公園 j, r 県立昌メ. 84-.

(13) サンゴ礁保護における国際法の和居可能性に関する一考察. しかしながら,他の環境条約と同様,生物多様性条約が規定する義務は 伝統的な相互主義に親染むも cではなく,むしろ国際的な協力による履行 確保を主眼とせざるを得な L1630 生物多様性条約における国際的義務は,. 第 3条〉を前 「自国の資源をそり環境政策に従って開発する主権的権利 J( 提に理解されるものである鈍。さらに,その義務の内実は国擦協力の義務 及び一般的な計画書を作成する義務であり,生患域内保全についても「可 能な限り Jでよいとされている間。従って,この点で冨際法が果たしうる 役割としては,国際範度を整え,履行確保の手続的な枠組を提供すること が中 d心とならざるを得ーな~. '0. 、然公園j として保護する制度を定めている O 公圏内には「特別地域j や「海中 公冨地区 j を設けることができ,その場合,開発するためには環境庁長官,国 定公園の開発 i こは知事の許可が必要となる(自然公園法第 1 7条 , 1 8条〉。沖縄 については,愚紡村から名護事にかけての海域及び菖表国立公園の 4ケ所の海 中公屋,慶長関諸島がサンゴを中心とした海中景観が非常に優れている海域と して指定を受けている。また,文艇は異なるものの,. r 水産資源保護法」に基. づく「保護水面j の設定も,保護水面内で開発行為等が規制される点でサンゴ 保護において有効であると思われる。失われたサンゴの再生について泣, 2 0 0 2 年に「自然再生推進法j が制定され,多様な主体の協力による自熱再生の仕組 みが定められた。 註邸)でも触れたが,生物多様性条約の締約国会議はさまざまな決議やガイド. 織. ラインを採択することによって国擦協力の枠組を提扶してきた。こむ点, 1 9 9 5 年にインドネシアで開催された第 2回締約国会議において採択された,. r 謹洋. D e 及び沿岸の生物多様性についての課全及び持続可能な利用に隠する決議J( ClSlO n. 豆/ 1 0 ) は,海洋生物多様性におけるバランスむ取れた包括的な検討を. 進めていくための専門家会合の開催などを定めている O この決議は「ジャカル タ・マンデート」と呼ばれ,海洋生物多様性政策の指針になっている。 2 0 0 6 年. 3丹にブラジルむクリチバで関寵された第 8回締約屋会議では,島嘆地域の生 物多様性保全を実現するために必要な具体的な作業計画を,第 1 0毘締約冨会議 までに作成することなどが決議された。 告 毒. DUNCAN FRENCH,s u p r anote2 3,at 1 3 5 .. ( 3 5 ) 生物多諜性条約第 8条。その他,第 5条,第 5条( b ) ,第 7条においても同様. の表現が見ちれる。. - 85-.

(14) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第. 1号. ( 3 ) ラムサール条約 湿地はサンゴ礁と同様,経済,文化,科学及びレクワエーション上の価 値を有しているが,さまざまな要因によって泊滅が進んでいる。ラムサー ル条約舗は,湿地及び湿地に生息する動植物,. とりわけ国境を横断的に. 移動する水鳥を保全するため, 1 9 7 1年に作成された。同条約の締約冨は, その領域内の適当な湿地を指定し,事務局に登諒する(第 2条)。そして 諦約国は,登録簿に掲げられている湿地の保全を挺進するための計曹を作 成し,実施しなければならない〈第 3条 l項〉。またその湿地が危機にさ らされている場合には,そのことを遅滞なく通報しなければならない〈同 条 2項λ ところで,この条約は湿地を次のように定義している。. 第. l条 1項「この条約の適用上,湿地とは,天恭のものであるか人工むものであ. るか,永続的なものであるか一時的なものであるかを関わず,更には水が滞ってい るか流れているか,淡水であるか汽水であるか離水であるかを問わず,沼沢土色,湿 原,泥炭地又は水域をいい,低潮時における水深が六メートルを超えない海域を含 む 。 J (下線は筆者〉. このように,ラムサール条約においてはサンゴ礁も湿地の概念に含まれ. 0 0 5年にはわ ており,条約が定める措量による保護を受けることになる o 2 が国のサンゴ礁を含む登録地としては初めて,沖縄の慶良関諸島海域及び その 名蔵アンパルが釜録された開。もっとも,湿地を登録することは, I 第 2条 3項) 湿地の存する締約国の排抱的主権を害するものではない J(. 機. 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約J( 1 9 7 1 年採択,. 1 9 7 5 年発効)。日本は 1 9 8 0 年に批准。 的 2 0 0 5 年1 1月に開催された第 9毘締約国会議 (COP9) において承認された。 その結果,わが冨の登録湿地は鎖蕗湿原,谷津子謁,琵琶湖など合計3 3ケ所と なっている O なお,わが国でサンゴ礁を含む海域が登録されたのは今回が拐め てである O. 86.

(15) サンゴ礁保護における国際法の利用可能性に関する一考察. のであり,その意味では,生物多様性条約と再様,この条約は協力の枠組 を提供しているにとどまっている舗。もっとも, 1 9 9 6 年のラムサール条約 第 5国締約国会議において採択された「サンゴ礁の保全に関する勧告J. CRecommendation 6 .7 )鈎)は,サンゴ礁の指定を締約国に対して要請す. るとともに,国連環境接関 CUNEP) や「国際サンゴ礁イニシアティブ. ( I CRI )JC 後述)との連携を条約事務馬に対して求めている O 条約上詰こ うした勧告を通した冨際協力を進めていくほかないであろう O. 出世界遺産条約 サンゴ礁を国際法の枠組みを通して保護する方法として,当該区域を 「自然遺産 j として世界遺産条約織に登録する方法も考えられる O 同条約 うる地形や生物群によって構成された地域を自然遺産 は,普遍的な価値の J として保護することを規定している叱自然遺産として認定されるために は,締約国が世界遺産委員会に自国領域内に春在する自然を推薦し,認定 を受ける必要がある縮。世界遺産として登録された場合,申請国は当該遺. 部) 同条約の作成過程における議論の結果,jE家主権への干渉は最小限にとどめ,. 冨i 繋的な制裁措童に関する規定は除外されることとなった。西井正弘編『荷掲. ,5 9 頁 。 書J 繊 同勧告は次のサイトで確認することができる o h ttp://www.ramsar.org/. !cop6_conLrpt.htm さらに,勧告6 . 1 8は太平洋諸島地域の渥地について, c o pl 締約国と国際機関に対して技術的・財政的支援を要請している O 同勧告につい ても上記サイトを参照。 繊. 「世界の文化遺産及び白熱遺産の保護に関する条約 J0972 年採択, 1 9 7 5年 発効)。日本は 1 9 9 2年 i こ批准。. 拙 世 界 遺 産 は 文 化 遺 産 〈 第 1条),自然遺産(第 2条),複合遺産(第 1条÷第 2条)の 3つのカテゴリーから成ち,わが国については 2 0 0 6 年現在,塁内 1 3ケ 訴が世界遺産として登録されている O 総. その場合,自黙公園法や文化財保護法といった圏内法によって保護されてい. 。 。. ることが申請の前提とされる。磯崎博司『匡際環境法J1 言出社, 2 0 0 0 年 , 8 3頁 。.

(16) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号 産を責在をもって保護・管理しなければならない叱日本についてサンゴ 礁の登録はないが,西表島周辺の海中,慶長関諸島などが. f 海 中 公 園 地 区j. として指定されていることから掛,自然遺産として認定される可能性が存 在するといえる。当該地区のサンゴ礁が人類全体の遺産として特有の価値 をもっており,そのサンゴ礁が現在急速に失われている状況にあるのであ れば,自黙遺産としての霊録を畿きかけることは保護のための一つの有効 な方法であると思われる湖。 ただし,この条約の基本的な性格は国擦社会の協力の枠組みを整錆する ことにあり (48,冨家の領域主権に介入する権限は~ ¥かなる冨又は機関にも. 与えられていない叱このことは条約の第. 5条 1項 が fこ れ ら の 遺 産 が 領. 域 内i こ存在する国の主権は,これを十分に尊重するものとし,また,国内. 結約国比……文化遺産及 罰条約第 4条。詞条は次のように定めている o 1 び自然遺産で自国の領域内に存在するものを認定し,保護し,保存し,整錆し 及び将来の世代へ伝えることを確保することが第一次的には自冨に課された義 務であることを認識する ( r e c o g n I z e s )。このため,締約国は,自国の有する すべての能力を用いて並びに適当な場合には取得し得る冨擦鵠な援助及び協力… を得て,最善を尽くすも cとする ( w i l ld oa l li tc a n )J 。具体的には,管理 計画に基づき,関係国内法規を当該遺産の彊鑑を保護することを吾的としつつ 適用することになるだろう。 樹 前掲註鑓参照。なお,上述したように慶長寵諸島海域はラムサール条約上の 登録霊地となっている。 働 もっとも,世界遺産としての登録は,個人や都道府県ではなく,国が申請す る点で課界が存在するのも確かである D なお,サンゴ礁が自然遺産として認め られている撰として,グレート・バリアリーフ(オーストラリア)がある。 ( 4 6 ) 世界遺産条約は締約国に対して抽象的な義務を課しているにとどまり,そこ から具捧的な法的義務を導き出すのは圏難である。木原正雄「自然環境保護と 地域化 i こ関する覚書一一世界遺産条約と同条約へのオーストラリアの対応を素. 締. 大東法学』第 3 0 号 , 1 9 9 8 年 , 1 4 9 夏 。 材として Jr ( 拘 条約目的の達成は,むしろ締約国が世界遺産を保全するため C 協力及び援助 1 上掲論文 J1 5 0 頁〉むであり,それ の枠組を整えることによって実現される ( は他の環境関連条約についても同様である O. - 88-.

(17) サンゴ礁保護における国際法の利用可能性に関する一考察 こ定める財産権は,これを害するものではない j と述べていること, 法 令i さらに続く第 7条が「国際協力」の意味を,締約国による自国内の文化遺 産及び告然遺産を保存するための努力を. f 支援するための国擦的な協力及. び援助の体制を確立することである j としていることからも伺える。国が 世界遺産として申請し,認定されない譲り,そもそも冨には Lゆ=なる条約 上の義務も発生しない婚。さらに遺産として認定された結果条約上の義 務が諦約国について発生する場合でも,この条約の性搭からして,ある規 定の違反をもって直ちに当該締約国の富家責任を問うことができるとは到 底考えられな L妙。. ( 5 ) 国連海洋法条約 由連海洋法条約倒第1 2部は海洋環境の保護に関する規定を重いている G まず,総期的規定である第 1 9 2条 は 円 、 ず れ の 国 も , 海 洋 環 境 を 探 護 し 及 び保全する義務を有する j というー殻的義務を定め,これを受ける形で第. 1 9 4条 1項 は L、ずれの国も[あらゆる汚染源からの海洋環境の汚染を訪止 し,軽減し及び規制する j ためにすべての必要な措置をとることを要求し ている O. もっとも,世界遺産む中で大規模な自然災害又は武力総争などにより存亡の 金撲を迎えているもむについては,世界遺産委員会が「危機遺産」としてリス トアップし,ユネスコによる技術的および財政的援助の下,遺産の喪失を訪ぐ 1条 , 1 3条〉。危機遺産リストに記載される 対策が講じられることになる(第 1 不名誉j な事態であるとすれば,冨家がそうした事態を避けようとす ことが f る張りにおいて,罷めて間接的かっ消極的な形で国家の行動を制約しうるとも いえよう O 西井正弘編『龍掲書 J ,8 6 頁 。 鋤 この点,世界遺産条約上の義務と京都議定書を結びつける主張が存在する 櫛. 〈後述 ) 0 ( 5 ) 0. I 海洋法に慢する国諜連合条約 J0 982年採択, 1 9 9 4 年発効 ) 0 B本は 1 9 9 6 年. に批准。. 8 9-.

(18) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号 前述したように,サンゴ礁が衰退する原因のーっとして陸上起菌の赤土 汚染が挙げられる。ここで,海洋法がいう「汚染」の概念にそれ自体は無 害であると考えられる赤土が含まれるか否かが問題となりうる叱この点 につき,国連海洋法条約第. 1条 1項 ( 4 )は 「 海 洋 環 境 の 汚 染 」 に つ い て 次 の. ような定義を与えている。. こ対する危害,海洋活動(議業そ 「生物資源及び議洋生物に対する害,人の鍵康 i の飽の適法な海洋の利用を含む。) ,こ対する障害,海水む利用による水質の悪化及 び快適性の減少というような存害な結果をもたらし又はもたらすおそれのある物質 こ海洋環境(河口を含む。〉に持ち込むこ 又はエネルギーを,入国が誼接文は間接 i とをいう。」. この定義によれば, 染であるとは限らず,. r 海 洋 環 境 む 汚 染j と は 必 ず し も 有 毒 物 質 に よ る 汚 r 生物資源及び海洋生物に対する害」という「有害. な結果」をもたらす物質による汚染であり,従ってここでは汚染の概念が 広く捉えられているように思われるc そうであるとすれば,サンゴの死滅 とL 、う有害な結果をもたらしている赤土も汚染物質として認められ,結果 第1 9 4条 1項 に い う 「 あ ち ゆ る 汚 染 源 か ら の 海 洋 環 境 の 汚 染 」 の 中 に 「 赤 土汚染」も含まれると解釈することも可能であろう G さらに,第1 2 部は締約国の法令制定義務及び執行義務についても規定を 設けている闘。法令制定義務のわが国における国内的実施としては,例え. 伝) 第 1 9 4 条 3項は「この部(=第 1 2部※筆者註)の規定 i こよりとる措置は,海. 洋環壌むすべての汚染源を取り扱うものとする」としているが,赤土が「汚染 源j であるかどうかによって第 1 2 部に基づく義務の範囲も変北すると思われる。 5 ( 2 ) 前者につき,第 2 0 7条 1項は睦上起因汚染に関し次のように規定している。 円、ずれの国も,国際的に合意される規期及び基準並びに勧告される方式及び 手続を考車、して,睦にある発生源(河)1[,三角江,パイプライン及び排水口を 含む。〉からの海洋環境の汚染を防止し,軽誠し及び規制するため法令を制定メ. - 90-.

(19) サンゴ礁保護における国際法の利用可能性に関する一考察 ば,水質汚器訪止法や海洋汚染訪止法といった環境立法を挙げることがで き る 叱 た だ し , 第1 2部 は 包 括 的 な 枠 組 を 与 え て い る に 過 ぎ ず 締 , 従 っ て 海 洋 環 境 保 護 に 隠 す る 一 般 的 な 義 務 を 定 め る 第1 9 2条 は , そ れ に 続 く 同 部 の 規 定 内 容 全 体 か ら 解 釈 さ れ な け れ ば な ら な い 開 。 特 に 第1 9 3条 が. fい ず. れの冨も,自国む環境政策に基づき,かっ,海洋環境を保護し及び保全す こ従い,自国の天然資源を開発する主権的権利を有する j と,資源 る義務i. 2部 の 規 開 発 の 主 権 的 権 利 を 規 定 し て い る 点 に 留 意 す る 必 要 が あ る 鴎 。 第1. r. r. 定 は 「 治 岸 国 の 主 権J , 資 源 開 発 の 権 耗J , 統 行 の 利 益J及 び 「 海 洋 環 境 の保全」といった複数の対立概念と,. r 先 進 諸 国 と 開 発 途 上 諸 国 Jという. 国連海洋法条約会議において一貫して存在した対立軸の敬妙なバランスの 上に成り立っている O 以上からすれば,一般的な義務の枠組みを示してい. 、する J o後者の執行義務については,第 213条が規定している。 間 1 9 9 5 年に沖縄黒が制定した「赤土等流出防止条例(赤土防止条例 )J をここ に含めることも可能であるかもしれな l ' o ただし,条約から地方公共団捧の条 例制定義務を直接導くことは,明文でその量規定しているなどの傍外的な状況 が無い接抗困難であろう O この点,わが醤の裁判所も人謹差 撤廃条約第 2 条の履行に関して同様む毘解を示している(損害賠償等請求事件,本L I 幌地裁平 成1 3 年{ワ}第 2 0 6 号,平成 1 4 年1 1月 1 1日判決〉。 (却栗林忠男 F 注解国連語洋法条約(下巻 )j 有斐麗, 1 9 9 4 年 , 2 4頁。文艇は異 なるが, みなみまぐろ事件J において国連事洋法仲裁裁判所は紛争解決に箆 する紛争当事国の意思を尊重する形で,また菌連海洋法条約中の規定が一般的 かっ抽象的な規定であることを考慮、しつつ,特別法たる「みなみまぐろ課存条 約j 中の彊定を,一殻法たる国連海洋法条約の規定に擾先させることにより管. z u. r. o u t h e r nB l u e f i nTuna( A u s t L&N . Z .v .J a 轄権なしとの判決を下した。 S p a n )( A u g .4,2000) reprintedi n3 9I .L.M. 1 3 5 9( 2 0 0 0 ) .このように「枠組 条約」としての国連海洋法条約は,その細部につき,分野別の「実施協定j 又 は「地域的取極Jを通して,さらに当該福知条約の掛争解決軒度も含め,詳細 化ないしは「特別法化」される側面を有することは否めない。 関 栗 林 『 同 上 書 j,2 9 頁 。 関 この条の挿入の背景には開発途上諸国む要求が存在したと言われている(栗 0頁)。第 1 9 4条 l項に[自国の能力に応じ」との文言が挿入さ 林『同上書j,3 れている点についても踊様の背景が存在していたと思われる。. - 91-.

(20) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号. るに過ぎな L、 1 9 2条又は 1 9 4 条の文言のみに依拠して,ある締約冨の陸上起 因汚染について国家妻任を関うことは困難であると考えられる師。さらに この点について国連語洋法条約第 2 3 5条 1項誌,九、ずれの国も,海洋環境 の保護及び保全に関する自国の国際的義務を履行するもむとし,国際法に 基づいて責任を負う J(下線は筆者)と定めている。 現在における国際法の発屡状況からすれば, (赤土〉汚染による害悪の 影響が一国の嶺域内にとどまる限札国連海洋法条約又は一般冨際法上の 責症を追及すること誌困難という他ないであろう闘。こうした「国際法に 基づく責任J,こ隠係してくるのが,次に触れる「領域使用の管理責任の原 期Jである G. 国連海洋法条約は艶揺起因汚染についても規定しており,その内容はさまざ. 間. まな条約において詳細イとされている O 例えば, MARPOL条約 (r船舶による 汚染の防止に関する国際条約 J; 1 9 7 3年条約と 1 9 7 8年議定書を続合し,護数の. 9 8 3 年発効)は,沿岸醤及び掻舶の旗国による執行権について規 付震書と共に 1 定している D (詔~. r 核実験事件j においてオーストラリアは,領土保全の権利及び公毒自由の. 原員。などを理由 i こ,フランスによる核実験の違法性の判新と実験の中止を求め て訴訟を提起し,同時に仮保全措置を要請した〈ニュージーランドも詞誌の訴 訟を提起)。これは領域主権の自由な行痩に制約を課す試みであったとも考え られるむこの点,裁判所は ,primaf a c i e な管轄権の存在及び酉復不能な損害 発生が立証される可能性をもって十分条件とし,仮保全措置を命令したo. N u c l e a rT e s t s (Ausl .v .Fr よ 1973I .C . J .9 9,1 0 2 1 0 6C I n t e r i mP r o t e c t i o n OrderofJune2 2 ) . こうした態度は危険責任や予防原則の発展にとって一定 の意義を有していたといえよう(松井芳郎他編『特例国際法(第 2販 は 東 信 堂. 2 0 0 6 年. 2 3夏 (r核実験事件J[柴垣甥穂、執筆])参照)。だが責任の発生に ついてはやはり実擦の損害発生の認定が前提となることが文脈上読み哀れる G. I d .( N u c l e a rT e s t s ) . もっとも,毘事件判決において裁判所はフランスの一 c l e a rT e s t s 方的宣言に法的拘束力を認めたため,実体判断は下していない。 Nu .v .F r . ),1 9 7 4I .C . J .2 5 3( D e c . 2 0 ) . なおデ・カステロ判事は反対意見 (Ausl の中で必ずしも実擦の損害発生を違法 性認定の前提とはしておらず,その意味 4. では重任の発生について幾分柔軟な考えを示しているように思われる。 S e eI d .. a t3 8 8 9 0( d i s s e n t i n go p i n i o nbyJudgeDeC a s t r o ) . - 92-.

(21) サンゴ礁保護における国際法の和男可能性に関する一考察. 4 . 冨家の領域主権と環境保護 ,l;{上のように,サンゴ及びサンゴ礁の保護又は保全に関する統一的な法 制度が存在しない現状において,既容の国際法が果たしうる役割には自ず と限界がある。また仮にサンゴ礁保護のための条約制震が形成されたとし ても,それが沿岸国の管轄権内に存在する自然環境を保護法益の対象とす る以上,その抽象性と一般性,履行確保の実効性の程変において既存の環 境条約制度と大差ないものになることが予想される O 環境や人権が国際社会共通の伍値として認識されるようになった今日に おいても,伝統的な領域主権は巌然として存在しており,それらの価鐘が 国境の龍で立ち止まることも多 L' 0実擦,多くの環境関連条約において環 境に関する冨家の主権的権和が規定されている醗。国連海洋法条約におい ては,排他的経済水域や大陸棚における環境保護が沿岸冨の管轄下に置か れている(的。陸上起因汚染に関する規制は領域主権の主張もあって,遅れ ているのが現状であり,特に需発途上諸国は自国の経済政策に対する規制 を受け入れたがらないという問題が存在する制。サンゴ礁が位置するのは. ( 5 9 ) 掬えば,国連海洋法条約第 1 9 3条,カルタへナ議定書第 2条 3項,生物多様. 性条約前文及び第 3条など、。. 6 条,第 7 9 条 側 冨 連 海 洋 法 条 約 第5. ( 6 1 ) 陸上起因汚染をもたらす活動は「本質的に各国の排他的管轄権に属する Jo であり,また,多くの場合, I 経済,産業及び社会的発展 i こ向けた国家プログ ラムと密接な形で結び付けられている」ため,国際的な法制度の創設は「非現 実的かつ実際のところ不必要である j とされた。 See Thomas A. Mensah, TheI n t e r n a t i o n a lL e g a lRegimef o rt h eP r o t e c t i o nandP r e s e r v a t i o noft h eMarine b ased S o u r c e s ofP o l l u t i o n ,i n INTERNATIONAL LAW Environmentfrom Land AND SUSTAINABLE DEVELOPMENT (Alan Boyle & David Freestone e d ., Oxford Univ. Press,1 9 9 9 ) at 2 9 7,3 1 2 . さらに地域により異なる汚染原因 と解決に関する見解,経済的発展段階の相違という要素も加わることによって,メ - 93-.

(22) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号. 熱帯及び亜熱帯地域が中心であり,ほとんどが開発途上諸国の領域内であ るO 経済的な制約を受け入れたくない途上諸国の領域内に存在するサンゴ 礁をいかにして保護又は保全するかが問われることになる。 ところで,こうした領域主権の壁が反映される形で富家責任の文振で現 れるのが「領域使用の管理責任の原則 j である O この原期は,. トレイル・. スメ jレター判決踏を端緒に,人間環境宣言原則 2 1や環境と開発に関する. 9 4条 2項,生 リオ宣言第 2京賠において定式化され,国連迩洋法条約第 1 物多様性条約第 3条といった条約においても規定されている原期である O この原期は「その管轄又はその支配下における活動が他の冨,又は自国の 管轄権む限界を超えた地域の環境に損害を与えないようにする妻任を有す るj というものであるが,これ辻つまり,その活動による影響が自国領域 内にとどまる摂り国家責在を負うことはないということの裏返しでもある。 すなわち, I 現在の国際法では,現実に「環境損害Jが発生した場合にの み,貰任法の適用による事後救済の対象となりうる j織のである叱. 、地球規模での法的文書む採択は一層困難となる o I d .a t3 1 3 1 4 . もっとも,バ ルト存や地中海については地域的な陸上起菌汚染条約が春在する。苗者につい こ関する条約j が 1 9 7 4 年に,後者につい て辻「バルト海海域の海洋環境の保護 i ては「汚染からの地中海の保護のための条約」が 1 9 7 6 年にそれぞれ締結されて いる。また,アフリカについては,より包括的な「東アフリカ地域の海洋及び. J が1 9 8 5年に締 沿岸環境の保護,管理及び開発のためり条約(ナイロビ条約 ). 0 例年に罷穫された司条約の第 4回締約国会議の最終文書は, 結されている o 2. f 住民のためのサンゴ礁 J“ (r e e f sf o rp e o p l e " ) アプローチをさまざまな主体 聞の協力によって進震させるよう求めている。. T r a i lSmelter ( U . S . v .Can),3 R .Int 'lA rb. Awards1 9 0 7( 1 9 3 8,1 9 4 1 ) . 倒氷上千之・西井正弘・臼杵知史編 F 国擦環境法』有信堂, 2 0 0 1年 , 1 4 9頁 。 問. 舗. もっとも,領域使用の管理責任の原期が「杏害な領域笹用」を事前 i こ違法化 するか否かについては議論がある。この点,兼原教授は「衡平和用の原則j を 事前協議の実体的課拠として位置づけ,結果,損害発生前における責任発生の 可能珪を指摘する D 兼原敦子 f 領域使用の管理責任原則における額域主権の栢 対北J(村瀬告也,奥脇直也編「冨家管轄権一一塁禁法と国内法Jl,勤草書房,メ. - 9 4.

(23) サンゴ礁過保護における冨擦法の利用可能性に慢する一考察. こうした伝統的な領域主権や国家責在龍度が環境の国擦的保護において 抱える問題点を克服する援念として予防原尉や不遵守手続が持つ意義を強 調することができるだろう O 予訪原則は,因果関諮が科学的に不確実な場 合でも,訪止措置をとることを義務付ける点で,汚染の発生後,あるいは 因果関採が科学的に確実な場合のみ規棋を発動する従来の考え方とは異なっ ている縮。この予防原則が国際漬習法であるとの議論も存在するが(総,む しろ冨擦鵠な協力体制を築くための行動指針として機能しているのが現実 であり翻,少なくとも領域主権に対する介入権を認める根拠にはあたらな. 、. 1998 年 ) , 179-207頁。こむ議論とは別に,一般に,責任法制震が「義務の遵守 を促す行為規範として機能し,間接的に,違法行為による損害の発生を事前に. 防止させる誘因となる j ことは明らかであろう。水上・西井・巳杵編『前掲書ム. 1 4 9 頁。なお,第 1 94条 2項 i こついては, I いずれの冨の管轄にも属さない区域」 である公海のような地域の環境を害した場合の責任追求方法が不明確であるこ ,35 頁 。 とも指摘される。栗林『読掲書J 信 号. S e eg e n e r a l l yNrcoLAsDESADELEER,ENVIRONMENTALPRINCIPLES (Oxford University Press,2 0 0 5 ) at 9 2 2 2 3 . 予防原則に関する最近の論稿として,. r. 高村ゆかり「国際環境法における予拐罪期の動態と機能J 国擦法外交雑誌』 第1 04 巻 3号 , 2005 年 , 1 2 8夏 。 関. See ,e g .,P HILIPPESANDS,PRINCIPLESOFINTERNAIτ'ONALENVIRONMENTAL LAW ( 2 de d . ManchesterUniversityPress,2 0 0 3 ) at2 1 2 .. 間. De Sadeleer は「原賠 ( p r i n c i p l e s )J と「規期(le g a lr u l e s )Jの聞に中間 汚染者負担の原則 J ,I 訪止原則 j 及 び f 予防原則 j 的なカテゴリーを設け, I の三つを「不確定の規則Ci ndeterminater u l e s )J でありながら一定の,かっ 柔軟な法的効果を有する f 指示的原則 ( d i r e c t i n gp r i n c i p l e s )Jとしてそこに 含めている。 S e e NICOLAS DE SADELEER,s u p r a note 6 5,at 308-9,311.さ. adeleer は「予防漂賠」が慣習冨擦法上の原則たる地泣を獲得した らに DeS と述べているが ( I d .a t 318-19),そのことと予拐原則を「指示的原尉 J とし て位量づ、けたことの関採が必ずしも明確ではないように思われる。もっとも, 予訪原則が単なる政治的言説にとどまらず,法的な内実を獲得するに至ってい. i r n i e と Boyle も,予防原則が冨際的な慣習規 るとの議論は傾聴に値する。 B 則か否かという従来の単純な二分論を放棄し,各屋の政策決定者や裁判所が銭 p r i n c i p l eo fi n t e r n a t i o n a l law)Jとして予防原則を 拠する「冨際法の頭副 ( 位量づけている o PATRICIA W. BIRNIE & ALAN E . BOYLE,INTERNATIONALメ. - 95-.

(24) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号. いと考えるべきである勝。環境破壊の圧倒的な危険性の前に,利害関係国 あるいは国際社会がいわゆる「一方的行為j を発動することができるかど うかという問題一一これは~\わゆる「人道的介入j ならぬ「環境的分入」. の問題ということになろうか一一ーが存在するが,現時点で予訪原期にそこ までの法規範性を認めることはできな~. ¥0. この種の開題に常につきまとう. の辻,人道的介入における議論と同様,客観的基準の確保による二重基準 の訪止と,いつ誰が介入しうるのかという介入時期及び介入権者の問題で あろう夙予訪原周はむしろ,そのような状況になる前の段階において, 予測される環境破壊及び被害を跨止する国際協力に向けられるべきである。. , " ¥ LAW &. THE ENVIRONMENT (2d e d . Oxford UniversityPress, 2 0 0 2 )a t 1 2 0 21 .B i r n i e と Boyle が,同書の第一版の中で予訪原郎が抜然として冨擦 法む原則ではないと述べていたことに鑑みれば,その「規範的性質と実際上の 効用 J がその後の約四年開で大きく前進したということであろう o PATRICIA. 明T .BIRNIE& ALAN E . BOYLE. INTERNATIONALLAW & THE ENVIRONMENT. 9 9 2 )a t9 8 . (OxfordUniversityPress,1 ( 時 予j 坊原期ないしは予防的アプローチの考え方は「リオ宣言 J(原期 1 5 ) のよ うな非拘束的な文書だけでなく,多くむ環境条約でも採罵されている(例えば 9 9 5年の国連公海漁 気候変動枠組条約の第 3条 3項,生物多様性条約の前文, 1 業協定第 6条など)。しかし,これがすべての国家を掲束する一般国際法であ ると述べるに辻時期尚早であろう O 水上・西井・巴杵編『前掲書j, 2 28-29頁 参照。その他,論理的な基礎としての「世代間衡平j や条約参加を促す基礎と 共通であるが差異のある責在Jといった境念も重要であるが,いずれ しての f も法的な権利義務を創設するものとは言い難い。 もっとも,大規模な環境被害が切追していることが客観的に明らかである場 合には「緊急状態U ( s t a t eo fn e c e s s i t y ) の法理によって一方的行為をなし得 るであろう O 菌際司法裁判所も「ガブチコボ事件j において,緊急状態の発動 3 条が国擦慣習法を反映していることを認め 要件を定める国家貰任条文草案第3 ている。もっとも,毘判決において裁判所はハンガリーが主張した生慈学的緊 急状態について法要件を充足していないとして,これを認めなかった。 Gabとikovo-Nagymaros ( 豆ung.v . Slovkよ 1 9 9 7I .C . J .7 ( S e p .2 5 ) . 鱒人道的干渉が国益追求の手段になる場合の問題点及び人道的干渉の実例の分 析と理論化については例えば,望月康意『人道的干渉の法理論』国際書読, 2003 年を参照。. - 96-.

(25) サンゴ礁保護における露擦法の利用可能性に関する一考察. あるいは, B i r n i e と Boyleが主張するように,政策決定者や裁判所が抜 拠する「国際法の原期」として,つまち規尉の導出や解釈む指針を提供す ることを通して法秩序を秩序として展開させ,かっその体系性を維持せし めるような原則として,位置付けるべきである叱また,環境保護におい ては人権む保護の場合と同様,担互主義的あるいは集団的な制裁ではなく, 備えば不遵守手続をあらかじめ条約体制に組み込んでおくことによる,技 術的・財政的支援に基づく義務の履行を吾指す手法がとられる制。保護の 対象物の性質上,そのことによってのみ条約百的が達成されると考えられ るからである O. 5 . 環境条約の相互関係 以上のような国家の領域主権に起因する国際的な環境保護における障害 に加え,さまざまな環境条約相互の関保が存機的に結びつけられていない という,制度形成及び解釈論上の問題点を指摘しておく必要がある。近年 特に議論されているのは,いわゆる「環境と貿易 j の問題であるが隠,こ. ( 7 ) 0 謂掲註総参照。. 間. こうした不遵守手続を定めた条約として,モントリオール議定書や京都議定 書を挙げることができる O. 間. こむ問題は,② GATT 第 2 0条の一般的部外規定と WTO の規定の関係, 及 び @WTO と多冨閤環境協定 (MEAs) の関係,. という二つの語から薮わ. れてきた。後者に関しては,パーゼル条約,モントリオール議定書,京都議定 書,カルタへナ議定書などに基づく輪入規制と,数量髄隈を認めない WTO の規定の関係がとりわけ問題とされている D 以上を扱った内外の文献及び論文 は多岐にわたる。さしあたち,以下を参黒。中l!I淳司 rWTO体制における貿 易自由化と環境保護の調整j 小 寺 彰 編. 2 0 0 3 年写平覚. F 転換期の WTO Jl東洋経済薪報社,. n r貿易と環境I JI こ関する紛争の解決における. WTO上級委員会. の『創造的』役割J阿部昌樹・佐々木程寿・平覚編『グローバルイ七時代の法と. J B本評論社, 2004年,同「貿易と環境一一京都議定書と WTO 法メ 法 律 家I - 97-.

(26) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 1号. こでは「環境条約の把互関孫J という視点から,国連轟洋法条約における 海洋環境保護規定と生物多様性条約の規定,世界遺産条約と京都議定書の 。 、 関係についてそれぞれ検討した L. ( 1 ) 国連海洋法条約と生物多様性条約. 冨連海洋法条約第 1 9 4 条 5項は次のように規定している。. fこの部の規定によりとる措量には,希少又はぜい弱な生態系及び減少しており, 脅威にさらされており又泣絶援のおそれのある種その他の迩洋生物の生患地を探護 し及び保全するために必要な措置を含める」. こむ規定の範轄にサンゴ礁が含まれるか否かについては定かでないもの の,文言の「通常の意味J (73)に従えば,サンゴ及びサンゴ礁を含めること が可能であろう問。その場合,この規定は「生物多様性の保全Jや,そ C ため 0) r 保護地域j の設定を求める生物多様性条約の規定(例えば第 8条 〉 と重複する面がある O これらの規定の相互関孫 l まどのように理解されるべ きであろうか。まず,他の国際条約との関係について規定する国連海洋法. 、一一」松下講雄編IrWTO の諸棺Jl (国際関諜学叢書 9)甫窓社, 2 0 0 4年 ;. Robert Howse & Kalypso N i c o l a i d i s,L e g i t i m a c yt h r o u g h“ HigherLaw"?: Why C o n s t i t u t i o n a l i z i n gt h e WTO I saS t e p Too Far,3 0 7,i n THE 豆OLEOF THE JUDGE I N INTERNATIONAL TRADE REGULATION (ThomasCottier & PetrosC . Mavroidis e d ., University o f Michigan Press, 2 0 0 3 ) ; JOOST 鳩 山 P UBLIC INTERNATIONAL LAW (CamPAUWELYN, CONFLICT OF NOR 0 0 3 ) . bridgeUniversityPress,2 ぬ 条 約 法 に 関 す る ウ ィ ー ン 条 約 第3 1条 1項参照(以下「条約法条約j とする)。 間本項の主要な自的は鯨類の保存で品るとの指議もあるが(栗林『前掲書Jl, 3 9頁),条約法条約第 3 2条例及び ( b )のいうような「不明確性」あるいは「不合 9 4 条 5項の解釈により導き出されるわけでは立い以上,条約法条 理 性Jが第 1 1条に規定される解釈の一般票則に従い,問項を解釈するのが自熱であろ 約第3. つ 。 - 98-.

(27) サンゴ礁保護における国 i 禁 法の利用可能性に関する一考察. 条約第 3 1 1条 2項は次のように定めている O. fこの条約は,この条約と両立する他の協定の規定に基づく締約国の権和及び義 務であって勉の諦約国がこの条約に基づく権利を享受し又は義務を護行することに 影響を及ぼさないものを変更するものではな L、 j. この規定によれば,第 1 9 4条 5項と両立する限りにおいて,生物多様性 条約の規定も適用することができそうである O そうすると,例えば領海内 の一定水域を生物多様性条約上の保護地域とすることを実施する冨内法に より「沿岸保護区域 (CPA)J を制定することは,地国の統行の権利が侵 害されない限りにおいて認められることになろう得。 では, f 告の国擦協定との関係について生物多様性条約はどのように規定. 2条を見てみる O しているだろうか。同条約第 2. 第 1項「この条約的規定は,現行の冨際協定に基づく締約国の権利及び義務に影. 響を及ぼすものではなし、。ただし,当該締約菌の権京Ij0行使及び義務の履行が生物 の多様性に重大な損害又は香威を与える場合は,この限りでな ~'J. 第. 2項「締約冨は,海洋環境に関しては,海洋法 i こ基づく国家の権利及び義務に. 遥合するようにこむ条約を実撞する」. いわゆる「後法は先法を廃する」の諮言 i こ従えば一ーもっとも,それは 両条約が同一事項を規律対象としている摂りにおいてであるが一一後に成 立した生物多様性条約が相容れない海洋法条約中の規定に優先するとも考. ( 7 5 ) C h a r l o t t ed eF o n t a u b e r t, David R. Downes & Tundi S . Agardy,. B i o d i v e r s i 砂 i nt h eSeas:I m p l e m e n t i n gt h eC o n v e n t i o nonB i o l o g i c a lD i v e r s i t yi n MarineandC o a s t a lH a b i t a t s,1 0GEO. INT'L ENVTL. L .REV. 7 5 3,7 7 6( 19 9 8 ) .. - 99-.

(28) 近 畿 大 学 法 学 第54 巻第 I号. えられる O ところが,上記第 2項 i こ従えば,冨連海洋法条約が規定する富 家の権利義務と両立しない場合には,生物多諜性条約の規定を適合させる ことになる。すなおち,ここには後法である生物多様性条約む偲の自制が みられる O 従って,上でみたような沿岸保護区域の設定が,地国無害通続 権と抵触するようなケースでは,海洋法上の義務との調和を図る必要がOiS. 9 4 条 5項については, る。ところが,先ほど確認した国連海洋法条約の第 1 こむ規定が生物多様性条約の規定と椙当程変重複する規定となっているた. 2条 2項にいう め,生物多様性条約第 2. f 海洋法に基づく国家の権利及び義. 務に適合するようにこの条約を実施」することと,海洋法条約第 1 9 4 条5 項にいう「保護し及び保全するために必要な措量」との関係が不明確とな るのである錯。再条約の一般的,抽象的性格からして,あるいは規律目的 の相違により,以上の点が直ちに問題になるとは考えられないもの の部,異なる条約閣の護数の環境保護規定に重護する部分がある場合の解 釈問題は今後,より具体的な規定を含む環境条約もしくは議定書が増加し た場合に問題になるであろう O 条約制度影或段階における各環境レジーム 関の規定上及び事務的連携制度上の調整が一層求められることになる問。. この問題とは到に一般に,諸国が排他的経済水域内における生物資援の保 全に関する諸規定をより実効的に履行することが,生物多様性条約の呂的を実 d . at 7 8 7 . 現する上で有益であることは確認しておく必要がある o I 初 この点,生物多様笠条約第 2 3 条 4項( h )が,締約冨会議む任務のーっとして, fこの条約が対象とする事項を扱っている地の条約の執行機関との関の協力の 適切な形態を設定するため,事務局を通じ,当該執行機関と連絡をとること」 を掲げているのが注目される O 当面は,こうした形で各環壌条約相互間の連携 を霞っていくことになるのであろう。なお,事務局には弛む関係国際機関と讃 その託務む効果的な遂行むために必要な事務的な及び契約上 整をおこない, r む取決めを行う j 権限が与えられている(同条約第24 条 l要( d ) )。 ( 7 8 ) Duncan も生物多様性保護の観点からこの点を語講している。 S e e DUNCAN u p r anote 2 3,at 1 3 9 4 0 . FRENCH,s 鴻. -100-.

(29) サンゴ礁保護における冨擦法の利用可能性に関する一考察. ( 2 ) 世界遺産条約と京都議定書 世界遺産条約は,主界遺産委員会による邑然遺産としてむ認定によって 震重な吉然環境及び動植物がより一層の保護を受け,当該地域が国際的関 心を集めるという点において環境課護条約の側面を持っと言える G しかし, 先述したように世界遺産条約は Lゆ=なる罰則規定も紛争解決規定も持たな いゆえ,当該地域が大規模な破壊を受けた,あるいはそうした破壊に直面 している場合にとりうる手段はせいぜい世界遺産委員会が当該区域を危機 遺産リストに加え,対策プログラムを策定することぐらいである粍それ では,世界遺産条約の締約国は領域内の遺産についていかなる国際法上の 責任も負わないのであろうか。 この点, 2 0 0 4 年1 1月に開発途上諸国の代表,環境法学者, NGOが共同 で世界遺産委員会に対して行なった語顕が注目される。そむ内容は,ベリー ズ,ぺ lレー及びネパールに位量する 3ケ所の自然遺産を,気候変動を理由 に「危議遺産リスト J,こ加えよというものであった闘。さらにその請願の 中で彼らは,世界遺産を保護するために温室効果ガスの排出を減少させる 法的義務の確認も求めている。それは世界遺産条約と京都議定書という異 なる二つの環境レジームを結びつける試みであったといえる。その際,設 らが依拠したのがその 2ヶ月前にオーストラリアの法律家クソレープが同委 員会に提出した報告書である制。同報告書は,世界遺産条約の当事国であ るオーストラリア政府には,堂界遺産であるグレート・バリアリーフを保. 間 世 界 遺 産 条 約 第1 1条 4項 。 働. 請穎の内容について詳しくは次のサイトを参類。 h ttp://www.climatelaw.. org/media/UNESCO. p e t i t i o n s . r e l e a s e ( 8 1 ) TheSydney C entref o rI n t e r n a t i o n a l andG l o b a lLaw,GlobalC! i mate ! i a ' sO b l i g a t i o n s under t h e World Change and t h eG r e a tB a r r i e rR e e f :A u s t r a. H e r i t a g eC o n v e n t i o n C S e p t .2 , 1 2 0 0 4 ), a t http://www. l aw.usyd.edu.au/. l / . s c i g. -101-.

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