持続可能な金融に向けた金融機関の
持続可能性情報開示の課題
川
原
尚
子
要旨 近年,持続可能な金融に向けた様々な国際的イニシアチブや方針が発展しつつあり, 金融機関はこの問題に徐々に取り組み始めている。本研究は,持続可能な金融を推進するた めの,重要な国際的イニシアチブの取組みや諸外国の政策に焦点を当て,持続可能な金融を 推進するための金融機関による情報開示の課題を明らかにしている。金融機関による持続可 能な金融への取り組みの影響を適切に報告することは,持続可能な金融の実効性を上げる重 要な鍵となる可能性があるが,報告をベンチマークするための枠組みについて未だ決定的な ものはない。Abstract In recent years, an increasing number of different international initiatives and policies have been developed regarding sustainable finance, and financial institutions are gradually beginning to address these issues. This research focuses on important international initiatives and policies around the world and in several countries to promote sustainable finance and clarifies the challenge of financial institution’s information disclosure in order to enhance sustainable finance. Adequate impact reporting by financial institutions regarding sustainable financial initiatives can be an important key to raising the effectiveness of sustainable finance, but there are no decisive frameworks for benchmarking reports.
Key words 持続可能性(sustainability),ESG(environment, social, and governance), 情報開示(disclosure),金融(finance),投資(investment)
Ⅰ は じ め に
持続可能な開発の概念は,国際連合(国連)による「将来の世代の欲求を満たしつつ, 現在の世代の欲求も満足させるような開発」(UN 1987)と定義されるが,近年,持続可能 な社会に向けた国際的動向の中で,持続可能な金融の重要性の認識が高まりつつある。そ の主な国際的動向には,2015年に国連総会で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」 採択されたことや,その具体的行動指針である「持続可能な開発目標(SDGs)」が設定さ れたことが挙げられる。また,同年12月に気候変動枠組条約締約国会議(COP21)におい て,世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つことをうたう 「パリ協定」が採択されていることも挙げられる。このような国際的課題の統合的解決に は多額の資金が必要となるが,そのような資金の流れをどのようなメカニズムで作り出す かの一つの重要な方策として,持続可能な金融がますます注目されている。持続可能な金 融は,一般に,環境,社会,統治(ESG)の事項を考慮した金融と定義できる。 問題は,持続可能な金融を促進する政策や方針が様々ある中で,持続可能な金融に資す る情報開示のあり方である。持続可能な金融に向けて金融機関がどのように取組むことが できるかの議論はかなりあるが,一方,その取り組みのもたらす環境や社会への影響をど のように情報開示できるかの手法については未だ確立しているとはいえない。 本稿では,近年の持続可能な金融を巡る議論や,国際的イニシアチブや諸外国における 政策や法規制の発展状況について,文献レビューの手法により検討し,金融機関による持 続可能な金融に係る情報開示の課題を明らかにしていく。このような検討は,わが国でも この分野の政策的議論が高まりつつある中で,検討のための重要な基礎を提供するものと なりうるので非常に重要である。 本稿の構成は,次章で持続可能な金融と金融機関の情報開示を巡る先行研究を検討し, 第3章で持続可能な金融のための制度要因として国際的なイニチアチブや政策を概括し, 第4章で考察し,第5章で結論を述べていく。Ⅱ 環境,社会,統治(ESG)情報開示を巡る議論
1 ESG 情報とは ESG の概念はその用語を使う者によって様々に定義される。投資家は環境,社会,およ び統治(ESG)の用語を好んで使い,それ以外の者は持続可能性,持続可能な開発,企業 の社会的責任( CSR ),持続可能なビジネス,トリプルボトムラインの用語を使う場合が あり,いずれも普遍的な定義はない(TSX および CPA Canada 2014)。 ESG 問題は組織の業績や組織の価値に影響を及ぼす可能性があるものと定義される (TSX および CPA Canada 2014)。そして ESG 問題の内容は,TSX および CPA Canada (2014)によれば,環境,社会,統治の3つの分類で次のような内容を含むものと考えら れている。まず,環境の分類には,温室効果ガス排出, 水の使用・欠乏・品質, エネル ギー利用,廃棄物やその管理,大気汚染物質の排出の問題が含まれる。次に,社会の分類 には,人権,健康と安全,地域社会とその他のステークホルダーとの関係,土着の人々と の関係,外国政府職員への贈賄が含まれる。最後に,統治の分類には,取締役会のプロセ スや構成に関する内容,例えば,取締役の知識や技能,取締役会メンバーの独立性,取締 役会の権限と委員会組織,取締役や役員の報酬が含まれる。(TSX および CPA Canada 2014) 2 ESG 情報に関心が高まる理由 ESG 情報は,組織内部あるいは外部からのステークホルダーの情報要求に対する圧力に よって,関心の対象になる可能性がある(TSX および CPA Canada 2014)。まず,組織 内部からの情報要求の圧力を与えるステークホルダーは,ビジネスに重要な環境的および 社会的問題を管理し開示することを求める者であり,これには取締役,株式発行の受託者, 上級の管理者や従業員が想定される。これらの者は,トリプルボトムラインのプラスの便 益,すなわち費用削減,革新的な製品からの収益増加,興味関心を引き付ける点での有利 さ,従業員の離職防止と動機付け,リスク管理の改善,評判や顧客の忠誠心の向上という 便益に関心があると予想される。(TSX および CPA Canada 2014) 一方,組織外部からの情報要求の圧力を与えるステークホルダーには,投資家,金融機 関,保険会社,顧客,サプライチェーン,政府,地域社会,非政府組織が想定される。こ れらの者は,関連する環境的および社会的問題に関する情報開示と行動をさらに要求する可能性がある。とりわけ長期的視点に立った投資家は,投資リスクにより曝されているの で,投資先企業がどのようにうまく環境や社会のリスクを管理しているのかを知りたい立 場にあるといえる。そして,投資した株式の価格が上昇する局面においては,投資先企業 が環境や社会の問題に関連した事業の機会や競争優位を有しているのかどうかを理解した い可能性がある。(TSX および CPA Canada 2014) ESG 問題と財務業績は関連性があるとの認識の下で,ESG 問題は投資の意思決定にお ける関連事項として金融関係者に重視されつつあるが, その理由を UNEP FI および Freshfields Bruckhaus Deringer(2005)は,以下のように説明している。すなわち, ESG 問題を考慮することは,意思決定者が投資先の性質,外部性,持続可能性に関連する 規制リスク,投資リターンを理解することに役立つかもしれない。分散型のポートフォリ オを適切に構築する一部分として,投資の様々なリターンやバランスを適切に取ることに 役立つかもしれない。ESG 問題を理解することで,意思決定者は,ある投資の,将来の長 期の実行可能性や持続可能性をもっと理解するかもしれない。ESG 問題を考慮すること は,意思決定者が,価格の変動しやすい投資について将来の経済的政治的含意を理解する のに役立ち,よって投資の価値に影響するかもしれない。ESG 問題を考慮することは,特 に資金が特定の目的のために設定されたならば,ある投資がその資金にどのように影響す るかを理解するのに役立つかもしれないし,評判を失墜するリスクを検討するにあたり考 慮されるかもしれない。特に,あるプロジェクトへの投資が,国際的な贈収賄やマネーロ ンダリング,人権侵害や国連制裁に関連するような場合は,考慮されるであろう。 3 持続可能な金融の意味合い 持続可能な金融とは,環境,社会,統治の事項を考慮しつつ投資の資金を提供すること と定義できる(EU ウェブサイト)。持続可能な金融は,地球環境への圧力を低減し,温室 効果ガス排出に対処し,環境汚染の問題に取り組み,廃棄物を最小化し,自然資源の利用 において効率を改善する一方,経済的発展も支援することを狙った,環境保全を強く志向 する金融の要素を含むものと考えられている(EU ウェブサイト)。持続可能な金融の範囲 は,このように持続可能性の3つの側面と言われる ESG のうちの環境分野,とりわけ気 候変動や温室効果ガス排出の問題に焦点が当たりがちであるが,社会や統治に関する分野 も含まれるし,社会の分野と広い環境分野についてもっと焦点を当てることが喫緊の課題 でもある(European Commission 2018a)。また,持続可能な金融とは,金融システムの 持続可能性に影響を及ぼすリスクや,適切な統治を通じて,リスクを低減するために金融
や企業関係者の必要性についての認識や透明性を増加させるものと説明される(EU ウェ ブサイト)。 さらに,持続可能な金融とは,炭素や資源に集約した投資から離れて,持続可能な投資 へ方向性を変えることであり,個々の金融機関,金融機関同士,金融市場全体のレベルに 関わるシステミックリスクのレベルでの,気候変動やその他の環境リスクに対応した金融 のあり方といえる(Dikau および Volz 2018)。とりわけ,国内外での持続可能な金融の 目標や政策を達成するために,資金,信用,金融市場全体を規制監督する規制当局や中央 銀行は,金融機関を支援する,あるいは金融機関のリスク評価や管理の視点で,主導的立 場にあるといえる。規制当局や中央銀行は金融セクターやマクロ経済の短期,あるいは長 期の安定性や発展に重大な影響を及ぼすリスクに対処することが重要な役割であることか ら,単に付加的な持続可能性への対応といったレベルではなく,マクロプルーデンスのレ ベルで,金融政策や金融機関の規制の既存の枠組みの中に,環境の外部性の問題を含む, 持続可能性問題を組み入れる必要性が指摘されている(Dikau および Volz 2018)。特に, 情報の不完全性や非対称性(Akerlof 1970)によって,市場に非効率な結果がもたらされ るが,そのような市場の失敗は政府の介入によって改善できる(Stiglitz 1994)。しかしそ のような介入は次善の策であり,むしろ市場の失敗を防ぐ政策,例えば,社会的コストを 内部化するようなメカニズムや,非持続可能な投資への誘因を減らすような方策の方が優 先される(Dikau および Volz 2018)。 4 持続可能な金融の情報開示 気候変動関連のリスクについての情報を金融機関に開示を効果的に要請することにより, 気候変動の影響,気候変動に対する方針,自然災害などの要素が,金融機関によって,適 正に価格設定される可能性がある。もし,誤った資産の配分や誤った価格設定があるなら ば,金融市場の大きな局面で,突然の価格修正を引き起こす可能性がある。よって金融機 関のリスク情報の欠如が金融の安定性に影響するとの見方に立てば,情報開示は気候変動 やその他の環境リスクへの対応を形成する中心的要素としてその役割が重視されることに なる(TCFD 2017)。 また, すべての金融機関を対象とした強制的開示規制は, 所定の目 標達成に向けた規制的手法となりうるし,気候変動に関する透明性の向上と,適正な価格 設定が,持続可能な金融のためのマクロプルーデンスな規制の前提条件であるとみなされ ている(Volz 2017)。 次に,金融市場で取引される債券やその他の資産に関する,環境やその他の持続可能性
に関連した情報を求める効果的な手続を規制当局や中央銀行が導入することを通じて,持 続可能性に配慮した資産の特定や受入れを強化することに繋がる(Dikau および Volz 2018)ので,金融取引の対象資産にかかる持続可能性情報の開示も重視されるといえる。 さらに,持続可能な金融システムのための国際的に一貫した手法としての,基準や政策 関与の方法が,国際的な金融機関関係者によるイニシアチブ,例えば,気候変動関連の財 務情報開示に関する金融安定審議会のタスクフォース(TCFD),持続可能な投資フォーラ ムなどでも議論されている(TCFD 2017)。
Ⅲ 持続可能な金融の制度要因
1 国際的イニチアチブ 近年,持続可能な金融を促進するための様々な国際的イニチアチブが発展してきている が,中でも,資本提供者や保険者などの投資家にとっての代表的な国際的イニシアチブに は,1 )フレッシュフィールド報告(UNEP FI および freshfields Bruckhavs Deringer 2005),2 )責任投資原則( PRI ),3 )CDP ,4 )赤道原則(エクエーター原則),5 ) 持続可能な保険原則(PSI),6 )気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS), 7 )気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース(TCFD),8)ポジティブインパク トファイナンス原則が挙げられる。ここではそれぞれの特徴を概括していきたい。 フレッシュフィールド報告フレッシュフィールド報告書( UNEP FI および Freshfields Bruckhaus Deringer 2005)とは,2005年に公表された「ESG 問題を機関投資に統合するための法的枠組み」と いう表題の報告書であり,国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)の資産運用作業部 会と,信託分野の専門家のフレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガー法律事務 所によって作成されたものである。 この報告書は,ESG 問題を投資決定に組み込むことが金融機関の信認義務に適合してい るかについて調査した結果を扱っている。この報告の背景にあるのは,過去において,信 託者は法的に財務問題に取り組むに過ぎず,環境問題や社会問題を自らの投資意思決定に 結びつけることはできない立場にあるという,機関投資家・年金基金受託者・資産運用会 社・投資顧問会社側の考え方である。しかし,投資財産の運用方法について意思決定をす るのは資産所有者ではなく,実際には少数の契約者あるいはその代理人であり,それらの
意思決定を資産所有者に通知するという法的手続きを取ること通じて,投資を受け事業主 体の行為が大きく影響を受け,最終的に,事業主体が相互作用を及ぼす環境や社会に影響 すると考えられている。そこで,UNEP FI では, 投資と環境や社会との間の相互作用に 注目し,証券の評価の際の ESG 問題の重要性について検討してきたのである。 その結果,この報告書では,日本を含む9つの法的管轄区域を対象とした調査の結果, 投資分析の際に,財務業績の予測の信頼性を向上させるために ESG 問題を考慮すること は許容の範囲にある行為であり,またどの法的管轄区域においてもこの考慮は必須である と結論している。 フレッシュフィールド報告では,年金資産運用の意思決定などにおいて,どの程度 ESG を考慮しているかを開示することを要請する法規制のある法的管轄区域として,オースト ラリア,ドイツ, フランス, 英国を挙げている。ESG 問題を投資決定に組み込むために は ESG 投資方針の開示を法令で強制することの議論も取り上げている。また OECD ガイ ドライン では統治構造と方針,企業活動に影響するリスク要因,社会,倫理,環境の方 針などの企業情報を開示することについての,特定の義務を取り扱っていることを紹介し ている。さらにオーストラリアの2001年改正会社法 で,投資商品や投資保険商品などの 金融商品販売に関する情報開示についての規定が盛り込まれ,投資の選定や除外に際して, 労働基準や,環境,社会,倫理問題の考慮についてどの程度考慮したかを,商品概要書や 目論見書に開示することが求められていることや,オーストラリア証券投資委員会からこ の開示に関する拘束力ある指針を公表して,開示を要請している ことも議論している。 責任投資原則(PRI) 責任投資原則は,国際的規模で責任投資を推進する独立のイニシアチブである。ここで いう責任投資とは,ESG の要素を投資判断に組み込み,リスクをより適切に管理し,持続 可能で長期的な収益を生み出すことを目指す投資へのアプローチをいう。 設立の経緯については,2005年初めに国連のコフィ・アナン事務総長が世界最大の機関 投資家のグループに責任投資の原則を策定するプロセスに参加するように呼びかけ,その 後,12か国の機関から集められた20人の投資家グループを投資業界,政府間組織,市民社 会の70名の専門家グループが支援し,ニューヨーク証券取引所で2006年4月に責任投資原
OECD Guidelines for Multinational Enterprises. Section 1013D(1) of the Corporations Act at 2001. ASIC, Section 1013DA Disclosure Guidelines at 2003, p.11.
則が設立された。 責任投資原則の目的は,投資家が ESG の問題を投資意思決定と保有慣行に結びつけ, 受益者への長期的な収益を向上させることである。また ESG 要因による投資の影響を理 解するとともに,これらの要因を投資の意思決定に組み入れることを署名した投資家によ る国際的ネットワークを支援し,投資家のリターンとリスク管理の向上のために責任投資 を使うことを奨励し,環境や社会全体への長期的な利益を目指すことである。 責任投資原則は,2018年4月現在,管理対象資産で82兆米ドルを超える1,961名の署名者 を擁しており, 近年, 管理対象資産の金額も署名者数も増加している(PRI ウェブサイ ト)。 わが国の責任投資原則の署名者については, 最近,その数が増加しつつあり67団体に なった(附表1参照) (2018年12月現在)。近年,金融業界の関係者のこのイニチアチブ への署名に対する認識に少なからず影響を与える要因となるような,年金積立金管理運用 独立行政法人(2015年)や株式会社かんぽ生命保険(2017年)のような巨額の資産を保有 する団体が署名している。また,不動産投資顧問会社,未公開株を扱う中小の独立系の投 資顧問会社,ネクストシフト株式会社のように社会的インパクト投資を事業目的とする投 資顧問会社も署名しており,多様な金融関係団体が署名してい状況が見られ,このイニチ アチブの重要性が金融業会に広く認識されつつある状況が伺える。 責任投資原則は6原則からなる。これは ESG 問題を投資実務に組み込むために取りう る行動を一覧にしたものであり,自主的で野心的な投資原則としての特徴を有する。この ような原則は国際的な機関投資家が投資家のために開発されたものであり,経済的に効率 的で持続可能な世界的な金融システムの発展に貢献することが期待されている。以下,6 つの原則を示していく。 原則1:私たちは投資分析と意思決定のプロセスに ESG 課題を組み込みます。 原則2:私たちは活動的な所有者となり,所有方針と所有習慣に ESG 問題を組入 れます。 原則3:私たちは,投資対象の企業に対して ESG 課題についての適切な開示を求 めます。 原則4:私たちは,資産運用業界において本原則が受け入れられ,実行に移される よう働きかけを行います。 原則5:私たちは,本原則を実行する際の効果を高めるために,協働します。
原則6:私たちは,本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。 責任投資原則では,これら6原則を署名者が採択し,その実施に関する協力をするよう に奨励する役割を担っており,優れた統治,誠実さ,説明責任を促進することと,持続可 能な金融システムに障害となる金融市場に関する慣行,構造,規制に対処していくことを 責任投資原則の機能としている。 この6原則のうち, 原則3が投資対象企業の ESG 情報開示を,原則6が投資企業の ESG に関する報告を扱っていることから,ESG 情報開示はこの原則で重視されていると いえる。具体的に,責任投資原則(PRI 2016)によれば,原則3の具体的な手法として, 金融機関が投資対象企業に GRI ガイドラインなどのツールを使用して ESG 問題に関する 報告方法を標準化するよう求めること,ESG 課題を年次会計報告書に組み込むよう求める こと,関連する規範,基準,国際規範または国連グローバルコンパクトのような国際的イ ニシアチブの実践や遵守に関する情報開示を投資先企業に対して要求すること,ESG 情報 開示を促進する株主イニシアチブや決議を支持することを例示している。同様に原則6に ついては,金融機関自身がどのように ESG 課題を投資実務に組み込んでいるかを開示す ること,活動的な所有者としての活動(議決権行使,エンゲージメント,政策対話)を開 示すること,当該原則についてサービス提供会社から何が求められるかを開示すること, ESG 問題と当該原則について受益者とコミュニケーションを取ること,「遵守せよ,さも なくば,説明せよ」のアプローチを活用して,当該原則に関する進捗や成果を報告するこ と,当該原則の影響を評価すること,報告を利用してより幅広いステークホルダーの間に おける意識を高めることを例示している。ただし,これらの手法は責任投資原則の署名者 の判断に任せられており,あくまでも任意開示の範囲内であることに一定の限界が伺える。 CDP CDP(旧名称カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は,長期的な持続可能な 経済発展を目指す,英国の非営利法人である。CDP は,投資家,企業,都市に対して,環 境影響を測定し管理することを可能とする,自己報告ベースでの環境データを包括的に収 集し,世界的な開示システムを15年にわたって構築してきている。CDP のプロジェクトで は,まず50カ国のオフィスとパートナーを通じて,企業や都市に,気候変動,水の安全, 森林伐採,サプライチェーンに関する環境業績の情報開示を求める。その収集したデータ を環境リスク,機会,影響の点で詳細に分析する。そしてその分析結果を,87兆米ドルに
相当する資産を管理する650以上の機関投資家,世界7,000以上の企業,世界中の620以上の 都市の政策策定者が利用することにより,よりよい意思決定,リスク管理,出資に結びつ けることを支援している(CDP ウェブサイト)。 CDP では,情報開示や関連する行動を取ることが企業に事業上の便益をもたらす可能性 があることを認識することで,企業はますます野心的に気候変動,森林伐採,水の安全の 問題に対処するための重要な手立てを取ることに繋がるという仕組みを想定している。こ のような仕組みの中で,パリ協定などの規制や政策の変更や強化に対応できる,すなわち 規制リスクへの適切な対応が取れるようになり,企業が長期的な持続可能性と収益性を担 保できると主張している(CDP ウェブサイト)。 CDP による気候変動,森林伐採,水の安全の情報開示プログラムは, 企業が提供する データを投資家に提供することを支援し,またサプライチェーンの情報開示プログラムは, 供給者がその顧客に提供することを支援することを目指している(CDP ウェブサイト)。 CDP(2017)によれば, 近年,CDP のプログラムに関して, 企業の情報開示の重要性 や正確性の認識が高まっていると評価している。CDP の2017年の調査では,対象とした日 本企業500社のうちの283社(57%)から回答を得ており,回答企業数も回答率も前年より 増加していたが,回答率について,わが国の ESG 投資の関心の高まりに鑑みると必ずし も高いとは言えないと批判的見解を述べている(CDP 2017)。また CDP の分析による優 良開示企業であるAリスト企業に13社がランクインしている(CDP 2017)(附表2参照)。 一方,CDP(2017)は,非回答の企業が依然存在することなどいくつかの課題を指摘して いる。回答率をセクター別に見た場合,金融セクターで回答率が最下位(38%)で,しか も昨年から事実上変化していないことを踏まえ,CDP のデータを利用する立場の金融セク ターの回答率が低調であることを CDP ではかなり問題視している(CDP 2017)。 さらに 自主回答企業と非回答企業との二極化が固定化される傾向にあることや,回答企業のうち に,回答情報を非公開とした企業の割合が依然として20%もあることを踏まえ,透明性に 課題があると指摘している(CDP 2017)。 赤道原則(エクエーター原則)(EP) 赤道原則(EP 2013)は, 大規模なプロジェクトファイナンスの環境的, 社会的リスク を決定,評価,管理するための信用リスク管理フレームワークであり,金融機関に適用さ れる自主的指針である。プロジェクトの総資本コストが1,000万米ドルを超える場合など適 用範囲が限定されることもあり, この原則を採択するわが国の金融機関は5社に留まる
(附表1参照)。 赤道原則を採択した金融機関は,資金の借り手が,赤道原則で要請される社会的および 環境的方針や手続を遵守するプロジェクトにのみ融資を行うことを約束することが求めら れる。赤道原則の第3版(2013年から有効)では,プロジェクト関連企業や,短期間の高 利のつなぎ融資(ブリッジローン)を含めており,赤道原則の範囲が拡大している。 赤道原則は人権と気候変動をより重視しており,貸し手や借り手の監視と報告の強化を 求めている。また責任あるリスク意思決定を支援するためのデューデリジェンスと監視の 最低基準を提供することを主な目的としている。赤道原則は10の原則で構成されており, これらすべてを満たすことが求められている。 情報開示については,原則5において環境や社会に対するリスクと負の影響があるプロ ジェクトの情報を,資金の借り手がアセスメントの初期段階,遅くともプロジェクトの建 設が始まる前には必ず開示すること,かつその後も継続的に開示することが要請されてい る。すなわち,情報開示の時期を規定しているものといえる。また原則10において,顧客 は環境社会影響評価の少なくとも要約をオンライン上で開示することを確約すること,顧 客はプロジェクト操業期間中の温室効果ガス( GHG )排出量が CO2 換算で年間10万トン 超の場合(スコープ1とスコープ2の合計),その GHG 排出量を公表すること,GHG 排 出量の公表についての詳細は付属書Aを参照することが示されている。 なお,原則8に誓約条項(コベナンツ)があり,赤道原則の遵守に関連する誓約条項を 盛り込むことが赤道原則の強みであるとされている。この誓約条項があることで借り手の 情報開示に対して貸し手が強制力を発揮できる可能性が伺える。 持続可能な保険原則(PSI) 持続可能な保険原則は,世界の保険業界が ESG リスクと機会に取り組むための枠組み を提供するイニシアチブである。この原則に署名する団体は世界で64団体あり,そのうち 日本企業は3企業である(PSI ウェブサイト)(附表1参照)。 このイニシアチブは,2012年の国連の持続可能な開発会議において,ESG リスクと機会 に対処する世界的枠組みとして,国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)によって策 定され,当時の国連事務総長の支持のもとで,国連と保険業界のイニシアチブとして最大 規模となった(PSI ウェブサイト)と認識されている。 持続可能な保険原則イニシアチブの目的は,環境,社会,ガバナンスのリスクをよりよ く理解し,予防し,削減し,品質と信頼性の高いリスク保護を提供する機会をより適切に
管理することとしている(PSI ウェブサイト)。 持続可能な保険原則は以下の4つで構成され,それぞれの原則には取りうる行動も示さ れている。なお,この原則は ESG 投資インデックスであるダウ・ジョーンズ・サステナ ビリティ・インデックスとフィッチ・フォー・グッド( FTSE4Good )の保険業界基準の 一部にもなっている(PSI ウェブサイト)。以下に,持続可能な保険原則の4原則を示す。 1 私たちは,保険事業に関連する ESG 問題を私たちの意思決定に組込んでいき ます。 2 私たちは,クライアントやビジネスパートナーと協力して,ESG 問題に対する 意識を高め,リスクを管理し,解決策を開発します。 3 我々は,政府,規制当局およびその他の主要な利害関係者と協力し,ESG 問題 に関する社会全体の広範な行動を促進します。 4 私たちは,この原則を実施する際上での進捗状況を,定期的に公に開示するこ とで,説明責任と透明性を示していきます。 出典 PSI(2012)。 先述の4原則のうち,情報開示に直接的に関係している原則を見ていくと,まず,原則 の2についての取りうる行動として,クライアントとサプライヤーに ESG 問題を情報開 示するように,また関連する情報開示や報告の枠組みを活用するように推奨することが求 められている。次に,原則の4についての取りうる行動として,関連する情報開示や報告 の枠組みに参加すること,この原則を通じた,情報開示の価値について,クライアント, 規制者,各付け機関,その他のステークホルダーと,相互理解を得るために対話をするこ とが求められている。 気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS) 気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(金融システムを環境配慮に変えるための 中央銀行および監督者ネットワーク)は,気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討す るための,世界各国の中央銀行や監督当局,および国際機関で構成されるグループであり (附表3参照),2017年12月12日のパリで行われた気候変動サミット(ワン・プラネット・ サミット)で設立された。 このネットワークは,自主的ベースで,経験を交換し,最善の実務を共有し,金融セク
ターにおける環境や気候変動の管理に寄与し,持続可能な経済への移行を支援するために 主流の金融を動かすことに,進んで取り組むことを主な使命としている。 このネットワークは,このネットワークの会員の内外で実施される最善実務を定義し, 促進すること,また環境に配慮した金融に関する分析作業を実施または委託することを目 的とする。 このネットワークは,気候変動や環境に関連する変化から派生する財務上のリスクと機 会に対応して,国家や国際的なイニシアチブの範囲で活動し,パリ協定,持続可能な開発 目標,気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース,G20(金融・世界経済に関する 首脳会合)のグリーン/サスティナブルファイナンスと同様の国際的な活動である(NGFS 2018)。 このネットワークでは4つの活動成果として,1 )将来のリスクと機会を評価するため のシナリオ分析を利用し,高レベルのシナリオを開発しリスク分析の複雑さを絞り込むこ と, 2 )企業の財務リスク管理を強化し, システミックリスクを評価し, 情報開示をサ ポートするための監督的でマクロプルーデンスなアプローチの結果を分析すること, 3 ) 「グリーン」資産と「ブラウン」資産の潜在的リスクの差をもっと分析し, 追加作業の必 要がある場合のギャップや中央銀行および監督当局の適切な対応を特定すること,中央銀 行と監督当局が例を挙げて説明する分野を特定し,気候関連の基準を多くの業務に統合し ていく作業を行うことを掲げている(NGFS 2018)。 気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース(TCFD) 気候関連財務情報の開示に関するタスクフォースは,G20の財務大臣・中央銀行総裁か らの要請を受けて,金融安定理事会(FSB)のもとで,2015年に設置された,民間主導の 国際的イニシアチブをいう。日本では金融庁,金融機関および一般事業会社が支持表明を している(附表4参照)。 タスクフォースは,企業が投資家,貸し手,保険会社,およびその他の利害関係者に情 報を提供するための,自主的な気候変動に関連した財務リスクの開示を開発することを目 指して設立された。また,気候変動に関連する物理的,賠償責任および移行のリスクと, 業種間の効果的な財務開示を構成するものについて検討することも使命としている。タス クフォースによる作業と勧告は,企業が気候変動リスクを測定し対応するために,金融市 場が開示から要求する内容を理解するのに役立ち,企業が投資家の要求に合わせて開示す るよう促すものとなるよう期待されている。タスクフォースの役割は,既存の気候関連情
報開示を主導してきた NGO の役割をしのぎ,気候関連情報を財務報告の主流の利用者, すなわち金融市場関係者にもたらす機会を創出することといえる。また,財務報告の分野 の主要な利害関係者との広範な連携をもとに,世界中で利用される勧告を取りまとめる役 割を担うことを目指している。(TCFD ウェブサイト) タスクフォースは2017年6月に公表した最終報告書の中で,気候関連のリスクと機会に 関する「企業の任意情報開示フレームワーク」を提示し,統治,戦略,リスク,指標と目 標の4項目を中心とした提言をまとめて公表している。すなわち,1 )統治(ガバナン ス):気候関連のリスクと機会に係る組織のガバナンスを開示する, 2 )気候関連のリス クと機会がもたらす組織のビジネス,戦略,財務計画への実際のおよび潜在的な影響を開 示する(その情報が重要である場合), 3 )気候関連リスクについて, 組織がどのように 識別,評価および管理しているかについて開示する,4 )気候関連のリスクと機会を評価 し管理する際に使用する指標と目標を開示する(その情報が重要である場合)という4項 目について,それぞれの項目に関する重要情報を,有価証券報告書のような,主流の財務 報告上で開示することを推奨している(TCFD 2017)。 タスクフォースでは,金融市場の参加者が自らの気候関連リスクを理解できる情報開示 の枠組みの必要性をいくつかの理由を挙げて説明している(TCFD 2017)。すなわち,こ れまで G20の大半の国や地域において債券や株式を発行する企業には,重要な気候関連リ スクなどの重要なリスクを,その企業の財務報告で開示する法的義務がある。しかし,実 際,気候関連財務リスクを開示する標準的枠組みがないために,報告企業にとって財務報 告にどのような情報を記載すべきか,またその記載や表示の方法についてもどうすべきか, 判断が難しいことが多い。その結果,開示情報の品質にばらつきが生じ,また財務的影響 に対して重点が置かれていないために,金融機関は経済的意思決定に有用な情報を十分入 手できていない。さらに,気候関連情報の開示があっても,強制的枠組みと任意的枠組み が存在するために,情報比較に困難が生じる。金融機関は,投融資先の企業が公表する情 報をもとに意思決定せざるを得ない立場にあり,そのため規制当局は金融システム全体に 気候関連のリスクがもたらす影響の程度を判断する際に,金融機関の情報を利用するにあ たり困難な状況にある。 加えて,タスクフォースでは,気候関連の財務情報開示が,金融市場関係者にもたらす 潜在的便益をいくつか指摘している(TCFD 2017)。すなわち,データによりよくアクセ スできることで,気候関連のリスクが評価され,価格設定がされ,管理される方法の改善 に結びつく可能性がある。企業においては,自社のリスクと,サプライヤーや競合他社の
リスクも,もっと効果的に測定し評価できるかもしれない。投資家においては,自らの資 本配分を情報に基づいて意思決定できるようになるかもしれない。貸し手,保険会社,引 受人が短期,中長期のリスクとエクスポージャーをよりよく評価できるようになるかもし れない。 ポジティブインパクトファイナンス原則 ポジティブインパクトファイナンス原則(UNEP FI 2017)は,国連環境計画金融イニ シアチブによって策定された持続可能な発展と持続可能な開発目標を達成するための資金 ギャップを埋めるための解決ツールである。この背景には,先述の持続可能な開発目標を 達成する場合に必要とされる資金ギャップの問題がある。持続可能な開発目標の達成には, 社会基盤,クリーンエネルギー,水と衛生,農業の分野へ,年間7兆米ドルの投資資金の 流入が必要になると見積もられているが,その資金調達方法について国際的に議論されて きた。例えば,様々な資本を混ぜて開発途上国の発展を支援する手法であるブレンドファ イナンス,ベンチャーキャピタル,インパクト投資,クラウドファンディング,グリーン ボンドのような環境や社会性を志向する金融市場商品は,このような資金調達のために設 計されたメカニズムとみなされるが,従来の手法では十分な資金調達ができないことが懸 念されている。また,緊急の対応が迫られる中で,公共部門,民間部門,その他の利害関 係者の協力が必要であると認識されているが,資金需要とビジネスモデルや資本を結びつ けることが困難であると考えられてきた。このような背景の下で,2015年に,国連環境計 画金融イニシアチブの銀行と投資分野のメンバーによってポジティブインパクトマニフェ ストが公表され,新しい金融のパラダイムが求められた。マニフェストでは,持続可能な 発展と持続可能な開発目標を達成するための資金ギャップを埋めるには,持続可能な発展 の,経済,環境,社会の3つの側面の全体論的考察に基づく,新しいインパクトベースの 手法を必要とすることが指摘された。ポジティブインパクトファイナンス原則は,先述の マニフェストに概説されたポジティブインパクトロードマップの中心的要素であり,金融 機関と投資家を,経済,社会,環境にプラスの影響を与えるように導くために開発された ものである。金融業界とより幅広いステークホルダーに共通の言語を提供することによっ て,持続可能な開発目標の機会を広げ,持続可能な開発のための資金ギャップを克服する ことができると想定されている。 この原則は,とりわけ,金融機関,投資家,監査人等が様々な場面で利用できるように 策定されている。すなわち,金融機関がポートフォリオ全体でポジティブインパクトファ
イナンスを特定し,促進し,伝達する場合,投資家や寄付者が投資の影響を全体的に評価 し,それに応じて投資の選定や関与を方向づける場合,また監査人や格付機関がポジティ ブインパクト金融の発展を促進するのに必要とされる,認証,検証,格付けサービスを, 金融機関,投資家,その他のステークホルダーへ提供する場合にこの原則が活用できるこ とを想定している。また,企業やその他の経済的ステークホルダーが持続可能な開発目標 に焦点を当てた事業機会やビジネスモデルを構成し,その取り組みを支援できる金融機関 を特定する場合,政府がこの原則にもとづいてインパクトベースの事業の実施業者を選定 したり,公的資金の活用を最大限にするために戦略的に公共政策を調整したりする場合, 市民社会が,インパクトベースの新しいビジネスモデルを確立するときに,支援するため の技術能力を特定したり開発したりする場合にも利用できると想定されている。(UNEP FI 2017) この原則の特徴は全ての金融機関や金融商品に適用可能で,包括的な枠組みを提供して いるところにあるといえる。ポジティブあるいはネガティブの両面を評価し,持続可能性 問題を包括的に扱うものである。また,金融商品に特化したグリーンボンド原則,金融セ クターに特化した責任投資原則, リスクに焦点を当てた赤道原則など, 既存の国際的フ レームワークに基づいており,持続可能な開発のための金融を達成するための共通の枠組 みを提供しているものといえる。 この原則は4つの原則から構成されているが,とりわけ原則3で報告の問題を取り上げ ている。以下,その4原則を示していく。 原則1:定義 ポジティブインパクト金融とは,ポジティブインパクトビジネスの資金調達に役立 つものである。 持続可能な発展の3つの側面(経済,環境,社会)のいずれか1つに潜在的な負の 影響が適切に特定されて緩和されれば,1つ以上に潜在的な正の貢献をもたらすも のである。 ポジティブインパクト金融は,このように持続可能性問題の全体像を評価すること によって,持続可能な発展目標のための資金調達の課題に直接的な対応となる。 原則2:枠組み ポジティブインパクト金融の実行を促進するために,事業主体(金融または非金融)
は,活動,プロジェクト,プログラム,および / または投融資された事業主体のポ ジティブインパクトを特定し,監視するための,十分な過程,方法論,ツールを必 要とする。 原則3:透明性 ポジティブインパクト金融を提供する事業主体(金融または非金融)は以下につい て透明性を確保し情報開示をする必要がある。 ・ポジティブインパクトとみなされて資金調達した,活動,プロジェクト,プログ ラム,および / または事業主体,それについての意図されたポジティブインパクト (原則1に従って) ・適格性を決定し,影響を監視し検証するために確立されたプロセス(原則2に 従って)。 ・活動,プロジェクト,プログラム,および / または資金提供された事業体によっ て達成されたインパクト(原則4に従って)。 原則4:評価 事業主体が提供するポジティブインパクト金融(金融または非金融)の評価は,達 成された実際のインパクトに基づいて行われるべきである。 出典 UNEP FI(2017)。 先述の原則3では,透明性の確保と情報開示を要請しており,活動内容よりも,むしろ 資金提供された活動等がもたらす影響を記述することを求めていると解釈できる。またそ の影響を監視し検証するためのプロセスを重視している。さらに,事前と事後の影響につ いての報告を求めていることが伺える。 2 諸外国地域における政策 これまで世界各地域の政府や関係諸団体が,持続可能な金融を促進するための様々な方 針を公表してきているが,2001年以降の諸外国の政策の主なものに焦点を当てて概括して いく。
北米地域:カナダ カナダでは2014年に,トロント証券取引所とカナダ勅許職業会計士協会が「環境社会情 報開示のための入門書」(TSX および CPA Canada 2014)を公表している。同年,カナ ダ財務省は年金給付法を改正 し,年金制度管理者に,ESG のリスク要因が年金制度の投 資方針や手続きに組み込まれているかどうか,それらの要素がどのように組み込まれてい るかの情報を含む,年金制度の投資方針や手続きについての声明書を規定するよう求めて いる。2017年に,オンタリオ州は排出量取引制度を導入し, オンタリオの炭素市場から の収入を温室効果ガス排出削減に投資する政府機関として,オンタリオ・グリーン基金を 創設している。 南米地域:ブラジル ブラジルでは2008年に,ブラジル中央銀行がアマゾナス州のような脆弱な地域で事業を 行っている企業への融資を制限することを求める環境規制に関する決議 をしている。そ の後2011年までに,ブラジル中央銀行は,アマゾンの生物群集の保護,サトウキビ投資, 奴隷労働などの,産業やテーマを特定した環境金融規制を公表している。ブラジル銀行協 会連盟と環境省は,銀行向けの自主的な環境金融の指針である「グリーン・プロトコル」 (FEBRABAN および the Ministry of Environment 2008)を公表し,その指針は2008
年に国有銀行に,また2009年に商業銀行に適用されている。2011年に,ブラジル中央銀行 は,環境被害に晒されるリスクを,国際決済銀行にあるバーゼル銀行監督委員会による国 際統一基準であるバーゼルⅡにおいて規定される「自己資本充実度に関する内部評価プロ セス」(ICAAP)の要件とすることを決議 している。2014年に,ブラジル中央銀行は, 社会的および環境的責任方針の新設と実施に関連した,銀行の社会的および環境的責任に 関する指針を含む決議 をし,社会的および環境的リスク・エクスポージャーを討議し定 義している。 欧州地域:欧州連合(EU) 最近, 欧州連合( EU )は2018年に市場の透明性と長期的視点を推進するための行動計 Ontario Regulation 235/14. カナダではケベック州でも排出量取引制度を導入していたが,オンタリオ州と共に米国カリ フォルニア州と排出量取引市場を2018年1月に統合している。
Banco Central do Brasil: Resolution 3545/2008. なお Resolution 3813 Resolution 3896/2010 and Resolution 4008/2011も関連決議である。
Banco Central do Brasil: Resolution 3988/2008. Banco Central do Brasil: Resolution 4327/2014.
画(European Commission 2018b)を策定し,持続可能性の徹底と会計基準の強化をテー マとした計画を公表している。以下,その内容を見ていきたい。まず,この行動計画にお いて,企業の持続可能性に関する報告は,投資家とステークホルダーは企業の長期的な価 値創造と持続可能性のリスク・エクスポージャーを評価することができるものと定義され ている点が特徴的である。 次に,この行動計画の議論の背景をみると,2014年に改正された EU 指令(EU 2014) による非財務情報の開示の実務的課題がある。この指令により,公共の利益に関わる法人 は,重要な ESG 情報とそれらに起因するリスクの管理方法に関する重要な情報とを開示 するよう求められている。この指令のもとで,持続可能性情報の開示は柔軟に行うことが できるので,金融セクターの開示については,持続可能性問題のリスクと気候関連リスク・ エクスポージャーを考慮する方法など,資産運用者や機関投資家の透明性を高めるメリッ トがあると考えられている。 もう一つの背景として,現行の会計基準が,持続可能な投資意思決定に資するものでは ないという懸念が欧州委員会にある。とりわけ,2016年10月6日に採択された,国際財務 報告基準(IFRS)に関する欧州議会決議における,金融商品に関する新会計基準(IFRS 第9号)は,長期投資に影響をもたらすとの懸念がある。欧州委員会は,この会計基準が 持続可能かつ長期的な投資を,直接的または間接的に妨げないようにすることが重要であ ると認識しており,長期投資にさらに影響するような特定の調整がある場合にはいつでも, 国際財務報告基準の承認手続きを柔軟に行うことを検討する必要があると考えている。 ESG 情報の開示と会計原則の強化についての行動計画9について,以下,検討していき たい。まず,欧州委員会は,企業報告書に関する EU 法の公的報告要件の適合性チェック を開始し結論を公表することを計画している。これにより,欧州委員会によって,将来, 立法措置が通知されるものである。この EU 法には,持続可能性報告要件を含む非財務情 報指令が含まれる。 2つ目に,2019年第2四半期までに,気候関連情報に関する非財務情報のガイドライン の改訂をすることとしている。気候関連財務開示タスクフォースの提言内容を参照しつつ, 気候関連情報の開示方法についての指針を提供し,その後,その指針は他の環境および社 会的要因を含むように改正される予定である。 3つ目に,2018年第3四半期までに,欧州会計報告諮問グループ(EFRAG)の一環と して,欧州の企業報告研究所を設立する予定である。その研究所において,企業や投資家 は気候関連財務開示タスクフォースの提言に沿った気候関連の開示など,持続可能性報告
に関する最善事例を共有できることが想定されている。 4つ目に,資産運用者および機関投資家は,戦略や投資意思決定プロセスにおいて,持 続可能性の要因,とりわけ気候関連のリスク・エクスポージャーをどのように考慮すべき かを開示するよう要請することとしている。 5つ目に,欧州委員会は欧州会計報告諮問グループに対し,新規または改訂された IFRS 基準が持続可能な投資に及ぼす潜在的な影響を評価するように体系的に要請することとし ている。 6つ目に,株式および株式型商品の長期投資ポートフォリオの公正価値測定に対する健 全な代替会計処理を検討することを欧州会計報告諮問グループに求める予定である。 7つ目に,国際財務報告基準第9号「金融商品」の長期投資への影響に関する委員会報 告書の作成を予定している。国際財務報告基準の導入プロセスにおいて,長期的な投資目 的に支障をきたす可能性があるなど,国際財務報告基準が欧州の公共財として貢献しない 場合に,それを具体的にどのように調整できるかを検討していく。 以上見てきたように,欧州連合の持続可能性の徹底と会計基準の強化をテーマとする内 容は,持続可能性の要因をリスク・エクスポージャーの視点で捉えており,企業財務報告 の中の持続可能性報告のリスク情報,特に気候関連開示情報が,金融の意思決定プロセス に利用されることを促進することを重視する姿勢が伺える。また持続可能性のための長期 投資の評価の観点で,国際財務報告基準の導入について検討していることが見て取れる。 英 国 英国 では,2013年に,環境・食料・農村地域省が「環境報告ガイドライン:強制的な 温室効果ガス排出報告ガイドラインを含む」(Defra 2013)を公表し,ロンドン証券市場の 上場企業に炭素排出の強制開示を要請している。2015年に,英国の金融監督機関の一つで ある健全性規制機構は「気候変動の英国保険セクターへの影響:健全性規制機構による気 候変動への適応報告」(PRA 2015)を公表している。その報告書に対して,中央銀行であ るイングランド銀行の総裁のマーク・カーニーが,気候変動に関するイングランド銀行の 見解を述べている。2016年に,イングランド銀行は気候変動に関するさらなる調査を公表 し,主要20か国地域首脳会議( G20)の環境金融研究会の共同議長をつとめ,気候変動リ スクと金融安定化を主題とする中央銀行のワークショップと会議を取り纏めている。2018 英国上場企業の温室効果ガス排出量報告については2006年会社法に規定がある(Defra 2013)。
年に, 健全性規制機構は「思考の移行:気候変動の英国銀行セクターへの影響」( PRA 2018)を公表している。 オランダ オランダでは,2014年に,中央銀行であるオランダ銀行の権限が「持続可能な繁栄」と 「財務の安定性」を含むように更新され,その任務を果たすため, 金融システム全体のリ スク状況を分析・評価して制度設計や政策対応を図り,それによって金融システム全体の 安定を確保するとの,すなわちマクロプルーデンス政策に基づく手段を備え付けている。 2017年に,オランダ年金連盟は,年金資産のための ESG 制限条項(コベナンツ)を創設 することを宣言している。同年,オランダ銀行は「中央銀行と環境金融」についてのワー クショップを組織している。2018年に,オランダ銀行は,監督者のための気候変動リスク 国際会議を組織している。 フランス フランスでは,2001年に,フランス国会は新経済規制法 を通過させたが,その法では 金融実務の「倫理的」側面に関するより広い枠組みの一部として,ESG 問題に関する報告 要件を導入している。2010年に,フランス国会は「GrenelleⅡ」法 を通過させ,その法 では資産運用者への環境報告の要求事項とともに,環境配慮のための国家のコミットメン トも概説している。2015年に,フランス国会は,グリーン成長のためのエネルギー移行法 を通過させたが,その法では気候関連リスクの評価手順を概説し,グリーン移行における 金融セクターの役割について取り扱っている。2017年に,中央銀行であるフランス銀行は, 気候関連と環境リスク,および環境金融の範囲について監視した経験を共有するために, 先述の気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)を立ち上げている。 アジア地域:日本 環境省は,持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)を2011 年に公表している。この原則は,持続可能な社会の形成のために必要な責任と役割を果た したいと考える金融機関の行動指針として,約1年にわたり,環境金融行動原則起草委員
Law no. 2001420 of May 15, 2001. Law no. 2010788 of July 12, 2010. Law no. 2015992 of August 17, 2015.
会で議論して纏められた。この原則はイニシアチブでもあり,このイニシアチブへの署名 金融機関は,それぞれの業務内容を踏まえつつ,21世紀金融行動原則で提示された7原則 に基づく取組みをできるだけ実践するよう要請されている。このイニチアチブは業態・規 模・地域などに制約されることがないが,金融特有のテーマ別,例えば運用・証券・投資 銀行業務,保険業務,預金,貸出,リース業務,環境不動産,持続可能な地域支援という, 分野ごとの作業部会が設けられている。2018年6月末現在,262団体が署名している。 この原則は7つの原則で構成されているが,ここで ESG 情報開示や報告に密接に関連 していると見られる原則6について吟味していきたい。 原則6:社会の持続可能性を高める活動が経営的な課題であると認識するとともに, 取組みの情報開示に努める。 出典 環境金融行動原則起草委員会(2011)。 この原則6は金融機関の情報開示を推奨していることが伺える。 この原則に付随して ウェブサイト上で公表されている運用・証券投資・銀行業務ガイドラインを見ると,具体 的な対応の内容が推奨されている。例えば,銀行・保険・資産運用会社等が,投資対象企 業に対する ESG 関連の情報の開示を求めること,そのために ESG 情報の分析や活用手 法を高度化することやそのレベルアップが期待されている。また,証券会社においては, 投資者保護の観点から金融商品・有価証券等の投資判断に必要と考えられる ESG に関す る情報を投資家等へ伝達することや,必要な ESG 情報の提供や説明が期待されている。 2つ目に,財務省は「『責任ある機関投資家』の諸原則:日本版スチュワードシップ・ コード」を2014年に公表し,その後2017年に改訂している(スチュワードシップ・コード に関する有識者検討会 2017)。このコードではスチュワードシップ責任を,機関投資家が 投資先企業との対話を通じて,その企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことを通じ て, 顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任として捉えている。 この コードはその責任を果たすための諸原則として規定されたものであり法的拘束力はない。 このコードの設定の背景には,2012年に内閣の「日本経済再生本部」のもとで,産業の競 争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具現化と推進が図られ,2013年には「日本再興戦 略」において「機関投資家が,対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど,受託者責 任を果たすための原則」が検討された結果,取りまとめられた経緯がある。
このコードは7つの原則から構成されているが,ここで ESG 情報開示や報告に密接に 関連すると見られる原則4と原則6について吟味していく。 原則4:機関投資家は,投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて, 投資先企業と認識の共有を図るとともに,問題の改善に努めるべきである。 出典 スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会(2017)。 この原則4の指針として, 機関投資家が公表情報をもとに, 投資先企業との建設的な 「目的を持った対話」を行うことが可能とされている。 この原則の趣旨として公正さを重 視し,公表情報を利用して対話をすることが要請されているものと伺える。ただ,ESG 情 報が既に公表されていない場合,持続可能性の業績や関連リスクについての対話の機会も 限られてしまう可能性も伺えるが,投資先との認識の共有や問題の改善への対処の過程で, 企業に将来の ESG 情報開示を促す余地があるかもしれない。 原則6:機関投資家は,議決権の行使も含め,スチュワードシップ責任をどのよう に果たしているのかについて,原則として,顧客・受益者に対して定期的 に報告を行うべきである。 出典 スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会(2017)。 この原則6の指針として,運用機関が直接の顧客に対してスチュワードシップ活動を通 じてスチュワードシップ責任をどのように果たしているかを,原則,定期報告すること, 資産保有者は受益者に対してスチュワードシップ責任を果たすための方針とその方針の実 施状況を,原則,少なくとも年に1度報告すること,また機関投資家の顧客・受益者への 報告の具体的な様式や内容は,顧客・受益者との合意や,顧客・受益者の利便性・コスト なども考慮して決め,効果的かつ効率的な報告を工夫することが要請されている。これら より,機関投資家による報告の様式も内容も任意裁量の範囲に留まることが伺える。 3つ目に,東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コードを2015年に公表し,その 後,2018年に改訂している(東京証券取引所 2018)。このコードではコーポレートガバナ ンスを,「会社が,株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で,透明・ 公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」として定義している。このコードは
実効的なコーポレートガバナンスの実現に資するための,主な原則を取りまとめたもので 法的拘束力はない。このコードが適切に実践されることで企業の持続的成長と中長期的な 企業価値の向上のための自律的な対応が図られることが期待されており,その結果,企業, 投資家,経済全体の発展に寄与することが期待されている。 2018年の改訂にあたり,ESG 情報開示をコードに盛り込むことを求める意見がパブリッ ク・コメントとして多数寄せられたため,2018年の改訂版では ESG 要素が非財務情報に 含まれることが明示されている。 このコードは5つの基本原則とその細則にあたる原則から構成されているが, ここで ESG 情報開示や報告に密接に関連していると見られる箇所について抜粋して吟味してい く。 第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働 基本原則2:上場会社は,会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は,従 業員,顧客,取引先,債権者,地域社会をはじめとする様々なステー クホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認 識し,これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。 取締役会・経営陣は,これらのステークホルダーの権利・立場や健全 な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダー シップを発揮すべきである。 出典 東京証券取引所(2018)。 この基本原則に付随して示された「考え方」の記述を見ると,上場企業がステークホル ダーとの適切な協働を行う中に,ESG 問題への積極的で能動的な対応が含まれ,そのよう な対応が,社会・経済全体に利益を及ぼし,企業自身にも利益がもたらされるとの考え方 が示されている。 原則21:中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定 上場会社は,自らが担う社会的な責任についての考え方を踏まえ,様々なス テークホルダーへの価値価創造に配慮した経営を行いつつ中長期的な企業価値 向上を図るべきであり,こうした活動の基礎となる経営理念を策定すべきであ る。
原則23:社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題 上場会社は,社会・環境問題をはじめとするサステナビリティー(持続可能性) を巡る課題について,適切な対応を行うべきである。 出典 東京証券取引所(2018)。 この基本原則2に付随して示された原則21と23では,「社会的な責任」や「サス テナビリティー」という用語が明示されている。原則23の「補充原則」の記述を見る と,持続可能性を巡る課題への対応はリスク管理の一部として認識されるとともに,近時, 要請や関心が大きく高まりつつあることを理由として,取締役会がこの課題に積極的・能 動的に取り組むことを求める文言が見られる。しかし,社会的な責任がどのようなことへ の対応なのか,また持続可能性の問題がなぜ企業リスクとして管理すべきなのかについて の分かりやすい説明は見られない。 第3章 適切な情報開示と透明性の確保 基本原則3:上場会社は,会社の財政状態・経営成績等の財務情報や,経営戦略・ 経営課題,リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について,法令に 基づく開示を適切に行うとともに,法令に基づく開示以外の情報提供にも主 体的に取り組むべきである。その際,取締役会は,開示・提供される情報が 株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ,そうした 情報(とりわけ非財務情報)が,正確で利用者にとって分かりやすく,情報 として有用性の高いものとなるようにすべきである。 出典 東京証券取引所(2018)。 この基本原則3に付随して示された「考え方」において,上場企業の情報開示の特性に ついて言及しつつも,ESG 問題の記述が一般的なレベルにとどまり,具体性が欠けるため に情報の価値が棄損しているとの認識が伺える。一方,情報利用者にとって有益な情報と はどのような性質をもつ内容か,それをどのように開示すべきか,また ESG 問題がリス ク情報の開示と関連する可能性があるかなどの具体的な言及は見られない。 最後に,環境省は2017年にグリーンボンドガイドライン(環境省 2017)を公表してい る。このガイドラインにおいてグリーンボンドは「企業や地方自治体等が,国内外のグ