苗寵の染色体丿形成について
井 上 重 ●陽
(農学部作物育楓学教室) ● 。 ●。 ’ 緒 言 此研究は佐々木(喬)陣士の指導のもとに行われ7こ黄4に圓する研究の一部であって、’特に黄麻 ・の染色体の形成される模様を明かにする仁めに、その減数分裂について調べ7こものであるo 茲に本研究の成果の一部を公表するに当り本研究の途行に対し、終始御懇路なる御指導と御援助 と・を賜わっ7こ佐々木t専士に対し、衷心より感謝の意を表し良い。術ほ本実験途行に当り前田和美氏 の助力を得北ること甚だ大であっすこ。茲に記して共労を謝し良い。 ヶ 材 料 及 方l法 材料は黄麻の花粉母細胞であって、ファン(130UIN、)氏旅で固班しヽりイデンノヘイン(HAH)EN- HAIN)氏鉄明券ヘマトキシリン法にょって染色し7こ。嶮鏡材料の厚きは7∼10μである‘。 賞 験 成 績 喝 1 。 1 1.休lh期、(Resting sta^e) 黄麻の花粉ほ細胞の休削 核網と、。球形の仁とをもって居る(第1図)。 、 、 よ核綱はその糸炉極めて細く、且つ染色も非常に淡い篤め、その配列の模様は極めてl不明瞭であ る。・杉綱の処々には染色質の小粒が散在して居る。この染色質の小粒は、その数が不定であって、 多い場合には十数佃を数える炉、齢い場合には僅加数佃に過ぎない。斯様に共数は不定である加、 これは多分他の植物で、厭々報告されて居る前染色体、(Proohromosomo)であろう。 仁の数は普通!佃であって、2個叉はそれ以上の場合は極めて稀れにしか認められない。 2.第一前期(1sしprophase) ’ 作粉母細胞の分裂が始まるとヽ先づ第一に核の内容の収縮作用炉起る俤2図)。その結果ヽ核 の内容は次第に一ヶ所に集中して一つの塊りとなり、収縮期(Syninesis s内e)に入る(第3図)。 ・此時代に於て核の内容は、栽の中央に向って収縮せすに、核の一隅と仁との間に集まる事炉多 いo何故斯様に片寄って優るの炉? 七の理由に就いては論議の処で述べろこととし良い。 此時代の核網は収縮のすこめ、その糸の配列は一忌不明瞭となる。狗ほ核網の処刎こ散在して居北 前染色体(Pro.chi oinosoine)は、核の内容の収縮にっれてその形炉崩れろ。そして或ものは幾ら加 延びて細長くなろ。 牧縮期、(Sy 「nesis sはge)の後期になろと、核綱は次第に其の太さを増しで行く。その結果、核 糸の配列を明瞭に認める事炉出来る榛4こなろ。 それと同時に今迄、収縮-して居打核の内容は再び核 内に拡がって行く。これは多分、太糸期(Pachyten 8はZe)であろう(第4及第5図)o 太糸期(Pfichyten staび)の終り1こなると、各杉糸は縦に二本づっに分かれ始める。そして次第 に複糸期(Dip!Qteiio sりぴ)に入る(第6図)。但し二本づっに分かれず二複糸期(Oipl・・tene sは訪)の核糸は互に振れているので、此時代を振糸期(Strepsiteiie sり、j6)と言うこと加でき る(第7図)o麿址時代に於いて、核糸の一部炉仁と直接連絡して居る様に見える場合加る。訟も財の郎粉こ仁と蔀して影艇:は、やや錆の雑肘持って居て餌謔順いo
黄・廊の染色ヽ体の'形成に'つい・で・ ・.・〔井よ〕
53
此時代の核糸は、分裂の進む、に従っで次第に太く、一短加く、且つ濃くなって行く(第9図)い j 複糸期QDiploteue stage) に於いて二本づっに分かれfこ核糸は、共後一居、短縮して次第に珊 状の染色体となり;デイアキネシス期(Diakinesis)・に入る。環状の染色体の数は7個である(第 10図)。環状の染色休は更らに短縮して7対のdoubleの染色体となるべ第11図)。 。・I ・I F ご3. 第一中期cist raetaphaae)ヤ. j. ‘ よ・ デイアキネシス期(Diakinesis)の後期に於て、杉膜と仁’と炉消失し、それと殆んど同時に染色 体は赤道板の中央に集りい第一中期。Cist metaphfiae)に入る(第12図)o、 し ’‥ 14.第=-後期。(1st、anaphase)、 い 、 。・ ・・・・ ・。‥‥‥ ‥‥第=一中期cist metaphase) (;於て赤道板にtんだ7対の染色体は、、第一後琲、(1st anaphase) ;に於て二群に分かれ両極に向って次第に移励する。 それと同時に両極に向・う各群の各;々の染色体は 縦に裂け目炉出来てdoubleとなる(第13図)。 ’。¶ 。 ÷ I. ・ 。 ・ I 5. 第=終期(lat telophase) 犬 ・ > 染色体炉両極に達すると間もなく、その周りに核膜加現われるo それと同時に染色体は;次第にそ の染色質を失って形が崩れて行く’(第14図)。 \ づ ・ 6y・中間期(Intorkinesis) ‥/・ 染色体はその染色質を失って、或ものは全く消失して見えなくなる炉、他のものは7-部の染色質 を保留して、小粒となって核内に残る。 それと前後して仁炉再び極内に現われ、中間期(Iatダrki・ nesis)に入る(第15図)。 ‥ 。’l 。。7.・第二前期(2nd propha8e)及第二中期(2nd metaphase) ’‘ −ニ 第二阿分裂が始まると核内に再び7対のdoubleの染色休炉形成され、それと殆んど同特に核丿膜 と仁と炉消失して第二中期(2、nd mot町)h。Se)に人いる(第坏図)。此時代の染色体は中期期、 (Interkinesis")に核内に残されてい7こ、染色質の小粒炉中心となって形成されヽるものの様である炉、 黄原では材料加やや微細な7こ叫こ明確に斯力ヽる事実を認める事炉出来な力ヽつ7こ。 い 卜‥へ 8.第二後期(2nfl anapha8e)及第二終期(2n(V telophase) ! ’ 第二後期(2nd an?.phase5に入ると7対のdoubleの染色休は二群に分加れ両極に向って移動す ろoやがて染色体炉両極に達するとその周りに核膜炉再び現われる(第17図)。 ヽその後、染色休は次第にその染色。質を失い、‘それど同時にその形加崩れ七行’く6、間も砥く仁が再 び核内に現われるo \ ‥ 9. Tetrad 。 ` ’ 黄麻の花粉母細胞の核は、二同の分I裂によって4佃の核となりヽ此4佃の核加中心となって4佃 の花粉を形成す&が、・第一回の分裂が絡わ。り、ごっの核加形成されても、この立づの核の間比細胞 ‥膜炉形成されないo従って第二回の分裂が終ると花粉母細胞は一つの細胞の’中に4倶の核聚もっこ ととなる加(第18図)、筒もなく、この4・個の核の内、二つ宛の核を取り囲んIで細胞膜が現われる。 即ち二組の細胞に分加れ始める(第19図)。”‘ レ やがて此二組の細胞は各々その中央部附近で切れて4個の細咆となり‘、。途に4佃の花粉を形成す ・ 4 ・ ・1 ● るに至る(第20及第21図)・・。 ゛ \ ≒ ’
論 議●
1.核糸と仁との連終について .八
黄麻の花粉母細咆の分裂の複糸期(Dゆ‘loteno
stりe)パこ於て、犀々柱糸の一部炉仁と密に連絡
し七・いる様に見える゛こと・がある・(第6図`)レ著者ぱ曾てぞれと同じ現象を大萎(i93j)友び臨霖
く\2y
54
高知大学研究報告 自然秤学
・(1938)に於で見出し、?こ事がある。即ち大麦とtj球の減数分裂に於て、核糸が東状となって仁の一 呟と明かに連絡しているのを諺めすこ事炉あるo黄麻に於て核糸の一部炉果して仁と直接連絡してい る炉、或は翠に偶然、接隅して居るに遡ぎないの加。それを確加める最も適当な方法は、仁を核の 外に取り出して調べることであるが、この事は現在の設備では殆んど不可能なことであるo それで 止むを得ずプレパラート製作中郎 べることにし仁o この事も、もとより至難な事であろ加根気よ・く、探して居る内に、かかる場合に遭 遇することがある。。第22図はその一例であるが、これは多分、太糸期(Pacホyteii sはge)に属す るものと思われる炉、仁が牛ば核の外に飛び出ている。これは恐らしミクロトーム(Microtome) の刄炉仁に軽く’屑れす二篤に、僅加許り核外に飛び出す二ものであろう。 第22図に依ると核糸のー。一部が一明かに仁と連絡しているのを認めること炉川来る。。そして仁と連絡 してい勧 て論じ7二様に、仁の中の染色質炉それと連絡している核糸の方へ移動して行く篤であろう゜。 核糸炉次第に染色質を増して、濃く太い1つ短力ぺなって染色体を形成するに至る事は一般に知 られて居る事実である加、黄麻に於て核糸全休加どんな形で仁と連絡して居るものであろう加o 著者は恐らく仁と核糸とは第23、24、25及26図に示す様な分枝状に似f二形で互に連絲して居石もの。 ● ¶ ・ではな加ろう加と考える。 そして仁の中に含まれて居る染色質はそれと連絡している核糸の方へ次 第に移動して行って、途に染色休が形成されるものと思われる。・ 2. 牧縮lyj (Syiiizesis staび) ・。 花粉母細咆の分裂の初期に於て、・核の内容炉収縮して牧縮!91 (Synizesis stage)に入ろ事は、減 数分裂の一つの特色とも言われて居るか、著者は核の内容の収縮する現象と、核糸炉仁と連絡する 、事実との間に、何等加の闘係炉存存しているものと考える。多分、核糸は仁の一点と連絡せん力付こ めに核の内容の収縮作用加起るものであろう。特に核の内容炉核の中心に向って収縮せすに息々、 核の一偶と仁との間に収縮する事実は、核糸刳二との間に密接な闘係炉存在することトを襲書きする ものであろうo 摘 要 1. 芦麻の花紛母細咆!こ於て、減数分裂が始まると核の内容炉収縮して牧縮期(SynizesiHt3ge) に入るが、これは多分、核糸炉仁の一点と連絡せん力吋こめに核の内容の収縮作用が起る7こめであろ うo ・ 。● 2. 収縮jffl (Syuizesis sはge)の絡りに至れば今迄、収縮して居7こ核糸は再び核内に拡がり始め るoそ、して次第に太糸期(Pachyteiie stage)に入る加、此の時代に於て、核糸の一部加仁の一点 と連絡しているのを明かに認める事炉出来るo ● ・ l 考 i ” ●3. 太糸期fPachytcne stage)を過き’る‘と、核糸は二本宛に分加れて複糸期(Diplotene stage) に入る炉、二本宛に分加れた核糸は次第に濃く、太く且つ短カベなって途にデイアヤネシx期(呻・ akinesis)の環状の染色体を形成するに至る。 4. 黄麻の花紛母細胞の減数分裂の前期に於て、核糸は多分、`が柱状となって仁の一点と連絡し ているものであろう。この連絡している部分を通じ。て、仁の染色質炉次第に核糸の方へ移動して行 って、染色体を形成するものと思われる。
● 文 献一一
1.
Cloland, R, E., 1924. Meiosia in Pollen mother
cells of Oenothera
franciacana aulf・
(3)
2 3
・黄郷の染色体の、形成・にっいぞ
(井上) 55urea. Bot. Gaz
77. .’,’ .し
Gregoire・ V・,1906. La structure do l'elomant
chromosomique
au repos et en division
・゛ ●I ,‘i ? g ‘.`,・ ・ j .1
dans.!es cellules vejutalos
(Ra?ines
d'Alliu゜') . La Cellul? 23・ . ダ
Inouye,
C. 1933' Meiotic
mitosis ’
in Hordeum
sativum.
BuしMiyazaki Col.
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No.5.
4. lnouye. C. 1938. Meio3is ill Linum. Bui. Miyanaki Coi. A:;ri. No. 10.
5. La^.ter, J., 1926. The l?oUen dovelopraont of Lftthyrus odoratiis. Ann. Bot. 40
6
盛永俊太郎ニ. 栽培世物染貨休毒
イ ……函’勺
誕 明
・図の廓大数は約2000倍である。 ” ・
第1図 休止期(Resting
staび)。核は球状の仁と不規則な核網とを蒋つて居る・。核網の処刑こ
染色質の小粒炉散在して居るo ゛‘
第2図 第3図 第4図 第5図 第6図 ・第7図 第8図 第9図 第10図 第U図 第12図 第13図 第14図 第15図 第16図 第17図 第J8図 第19図 第20図 .第21図 第22図第23図
第24図
第25図
第26図
牧縮朗の初期(Early synizesia 9tage)o核の内容は収縮し始める’・o・・ 収縮155 (Synizesis stage)。核の。内容は核のヤ隅と仁との中間に収縮するo 太糸期の初期(Early Pa(ホytene sは訪)。核糸がやや明瞭となるo 太糸期(Pachytene stage)' o核糸は再び核内に。拡がるo い。 複糸期の初期(Early dip!otoiie st鮭e)。核糸は二本宛に分かれ始めるo複糸期(Diplotone stage) o し`
F / s 同 核糸は次第に`濃・く太・くなる0 。- .li d ¶ 1IL 同 ・ /● 1 ● 。● 。゜ ’ 。 デイアキネシス期(DiakJnesis)・。核糸は環状の染色体となるo / 同, ・Doubleの7対の染色休炉形成される6 ご 第一中期(1st metaphase)。染色体の牛数(Haploid)は7である6 −。 第−後期(1S!; anaphaso)。。染色体昨縦に裂・け目炉現われてdoubleとなるo。 ● ・■ 1 ● j 第一経期(1st telophase・)。。, 中間期(Interkinesis) o ・ ・。 第二中期(2≪d Meりph?.se)。 Doubleの7対の染色体が二ヶ所に形成される。 第二絡期(2iicl te・lophase) o°
同 ヅ
同同
1 1 Tetrad. ’ S ● ’● ● ● ● d − 。 太糸期(Pachytene 3tage)。仁は核の外に僅力ヽ許り飛び出して居るo准糸と仁との連絡 ● 。 。 。 4 。 を明加に認める事炉出来るO I / 核糸と仁との連絡を示す模型図。太糸W (Pachytene stage)。 ・ | 。 ● r! ● 同 ・、 複糸期(D、iploteiie sはge)。 レ 同 − デイアキネシス期(Diakinesis)。 I ・ ● i r 、 1 。 同 ・・ 。・第一中期(I5t raetaphase)。(昭和25年U月30日受理)
(4)56
高知大学課究報告自然科学痢i号第2冴晟
SUMMARY.
ON THE
DEVELOPMENT
OF・THE
CHROMOSOMES
OF
j・UTE(CORCHORUS
CAPSULARIS,
L・)
By CHOYO lNOUYE
(Plant
BreodiiT' Laboratory,
Ag・rioultiireFaculty,
K6clu University. )
1. The material used in this investiga'iion is the pollen mo i her cells of juto rcoi・choj・us cn.p8ulai-i3,L.) which were fiχed in BOUIN'S solu'aou. Sections wore cut at a thickness of 7 0r 10 micra and staind in HEIDENHAIN'S lroii-<Mum-lui3matoxyliii.
2。With the bsgiiiniiig of the m!c!ear division, the nuclear contents contracts and a
separates from the nuc!ear membrane to form tUe syiiizesis stage (Figs. 2 and 3). . .3. A"; the Olid of・tliQ syn iisesia a以ぷa the con'irao.ted tliread3. gi・adually b3gin t0 expand again ’in the nuclear cavity, and they become inoreasiiijly thicke・r Perhaps this is a pachytene 8はge. (Figs. 4 and 5). ・, `’`二’
In this stage many thick. d^rlc tlireads lire found extending uniforinly throughouヒthe nuclear cavity. . ● ●
4.A七tho・end of tlie pachy'jene sbacre the spireme gradually bagins to spliヒ into two threads which are more or !es3 twisJBcl togethe八This .iS‘the bejinninj of. the diplotene ●
stage (Fig. 6 and 7). ; 5. After continued thickening 3r!(1shortenln.; the twWied threads of the diploiene 8い age gradually become rilリsluipecl aliromosomes of dia'cinesis (Fiぷs.9 and 10j ‘.
6 Towareil the end of tlio di'ikinesis tlio )・i 11cr chromosomes gradually ・deore・age ill size, uMi! they form the pairiii'' or doulile du・りmosomeg of t恥1st metaphase (^Fijs. 11 and 12),: The haploicl n urn beヽrof the chromosomes of・juじei8 seven. ’
7. During the 1st aiiiiplnse ooo・irs the separat ipn of the ‘pairing chi'oraosoines 6f the 1st r ・
.metaphaao. As the separating chromosomes approach each ‘pole of the spindle, they siilit lengtliwise and become cloub 1e (F吋.13)・ . こご . ● ;
゜8.A nsw nuc!ear membrane bofins to appear iironふ1 the cliroraosomes early in the I3t 喩 ● . ●覧 telophuae and, tillrin f this slaび, tho cliormosomos bsoome gradually irregular in shape and bejiii to lose their chroma':in which ooitoenりr 「',e3 into oneOr two. placis forming the niicleolua of tlic in I;e r k・iuesis (Figs. 14 and 15)
9. During the 2nd pro]ihaso ssveii liairsof uhroniosoraep iiro l・eformed (Fig.16).
10. Someiinies, cluring the‘1stprophase, a part of the spirerae seems to be connected ・ ・with the nucleo!,us(Fig.6)レ
The connection between the spiiome and the nucleolus can be clearly observed when the niicleolus is projected out of the nucleus as shown in Fig. 22.
' 11. Perlxaps, during the prophaso, the nucleolus may be connected indirectly with the wliolo Sliiremc as showii by the ox.plan:’・toびdiavrams of Fi^s. 23. 24* 25 and 26. And a movament of chromatiii may occur from the nucleolus to the comiectinj spireme to form ●
the chromosomes. (Received November 30> 1950.)
⑥
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1 4 19