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認知症高齢者の尊厳と終末期ケア

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Academic year: 2021

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【 会長請演 】 認 矢□症 高 齢 者 の 専 厳 と 終 末 期 ケ ア 渡辺 み ど り

1.は

じめ に わが国では、近年、高齢人 日の急速な増大 とともに認知症高齢者数 も増加 し、認知症 ケアが高齢者政 策 の中心 的課題 となって いる。 ことに介護老人福祉施設 は

5500を

越 え、利用者 の要介護度 の重度化や 医療依存度 の上昇への対応 とともに、利用者 の終末期 ケアヘ の対応が求 め られて いる。

2007年

10月 に 厚 生労働省 によ り、「終末期 医療 の決定 プロセス に関す るガイ ドライ ン」が提案 され、基本 的な考 え方 や本 人・ 家族 と医療・ ケアチームの話 し合 いと合意が強調 されている。 しか し現実 には、認知症高齢者 の意思決定の合意形成プロセスのあ り方や本人 と家族 に対する意思決定支援方法は確立 してお らず、 こ れ らが介護福祉施設の終末期 ケア体制整備 の障害 となって いる。 このような現状 を踏 まえ、筆者 らは、「どのよ うにケア提供者 と家族が協働 したな らば、認知症高齢 者 の尊厳 を支 える終末期 ケアが実現可能で あるのか」 を明 らか にすべ く、研 究 を展 開 してきた。以下 に、筆者 の博士論文 「介護老人保健施設入所高齢者の生活行動 における自己決定の構造」 を基軸 としつ つ、「認知症高齢者の尊厳 と終末期 ケア」 について考察 したい。

2.終

末期ケアにおける認知症高齢者の事前意思 と代理決定 認知症 高齢者 は、法 的には中等度・ 重度 にな ると判断能 力を失 う存在 として扱われて きた。 しか し、 人権 を擁護す る立場 にあるケア提供者が、 この考 え方 によ り日常生活援助 を行 うと認知症高齢者 の安心 感 。安寧感 は著 しく阻害 され、随伴症状 の誘発・増悪 につなが る。特別養護老人ホーム の熟練看護師 は、認知症高齢者の終末期 ケア決定 において、 どのよ うな困難 に直面 し、 どのような解決方略を持 って いるのであろうか。 これがれ当講座 の 「介護老人福祉施設 における終末期ケアの事前意思決定 に関わ る 看護職 の困難 とそ の解決方略」 とい う修士論文のテーマ とな った。認知症高齢者 の事前意思決定 に関わ る看護者は、 【高齢者か ら意思確認できない ことに悩む】 【高齢者不在 の意思決定 に悩む】 【家族か ら治 療 の同意や症状の理解 を得 る ことが難 しい】 【お任せ します という家族への対応が難 しい】【身内が いな い高齢者の倫理性 に悩む】 という困難 を抱えて いた。その一方で、 これ らの解決のため、 【多職種 の協 働 によ り具体 的でかつ個別 的に意思 を確認する】【情報 と選択肢 を提供 し家族 の決定役割 を支 える】 【状 況 に応 じて家族 の気持 ちの変化 に対応す る】 【高齢者 に代わ り家族が代行決定す る視 点 を援助す る】な どの対処 を、個別 のケースに応 じて複合的かつ連動的に活用 し、解決を図って いた。 一方、特別養護老人ホーム入所高齢者の家族 は高齢者の終末期ケアの事前意思決定 において、 どのよ うな困難 に直面 しどのよ うに対処 して いるのであろうか。 これが 「施設入所認知症高齢者の事前意思決 定 に直面 した家族 の困難 と対処」 とい う修士論文のテーマ とな った。 これは、特別養護老人ホーム に入 所 して いた認知症高齢者 の看 取 りを終 えた家族 12名の貴重な経験か らデータを得ている。そ の結果、 看取 りに関す る家族 の代理決定 は、{看取 りに関す る情報 の入手}、 {看取 りのイ メー ジ化)、 (高齢者 の意 思 の推測)、 (実現可能な看取 り方針 の決定)、 {決定への納得)とい う局面 によって構成 され るプロセスで ある ことが導 かれた。家族 は、代理決定のプロセスにおいて 【看 取 りに関す る不十分な情報 】 【看取 り のイ メ

=ジ

化不足 】 【現在 の高齢者 の意思が不明】 【看 取 りに関す る高齢者 の意 向が不明】 【看取 りに関

(2)

す る希望 と現実が折 り合わな い】 【看 取 り方針 の決定が不可能 】 【決定後 の不確 か さに悩む】な どの困難 を抱えて いた。家族 は、 これ らの解決のために 【わか らな い ことは 自分 な りに解釈す る】 【自分 に置 き 換 えて看取 りを考 える】 【高齢者 の生活史 を回顧す る】 【過去 に把握 した高齢者 の意思 を思 い起 こす 】 【寿命 を受 け入れて気持 ちを整理す る】 【現実 的な事情 に従 う】 【他 の家族 の一致 した見解 に従 う】な ど の対処 を して いた。 このよ うに、認知症高齢者 の終末期 ケアの決定 において、家族 とケア提供者は、認知症高齢者が意思 表現能 力に限 りあるゆえに、「認知症高齢者 に とって のよさ」 と 「根拠 の不確か さ」 の狭 間で葛藤す る。死期が近 い認知症高齢者であって も、心地よい感情は、表情、些細な 目の動きや しぐさによ り、表 現す る ことができる。 この表現 の読み取 りは、認知症 高齢者 の身近な者だか らこそ可能なのである。そ して読み取れた高齢者の感情や意向は、「認知症高齢者 にとってのよさ」 の根拠 とな り、「不確か さ」 を 「確かさ」 に変える。 死 の看取 りは、家族 とケア提供者 のそ の後 にも大きな影響 をもた らす。看取終 えた家族 とケア提供者 が、認知症高齢者の人生 という文脈を浮き彫 りにしつつ 「生の終結」 を見つめることができたな らば、 それ は家族の再出発の原動力、終末期ケアの意味を見出す ことにつなが るであろう。

3.認

矢□症高齢者の 日常生活援助 に潜む尊厳 終 末期医療 にお ける忠者 の 自己決定権 は、法 的にはアメ リカの PSDA(Patient selttdetermination Act)によって制定 された。我が国の老年医学分野 において も、

2001年

に高齢者の適切な医療およびケア が充分 になされて いない現状 を踏 まえ、「高齢者 の終末期医療に関す る 日本老年学会の立場声明」が発表 された。このよ うに、高齢者 の終末期の人権 の尊重が医療・介護現場で注 目され るよ うになった歴史 は極 めて浅い。 筆者が

2004年

、老人保健施設の 日常生活援助 の清潔行動 を場面にお ける高齢者 とケア提供者 と相互作 用 を調査 した結果、入浴・整容 。更衣 の一連 の 目標行動 の決定 と実施 方法 の決定 の主体者 とそ の性質 によ って、【自立志向型】【介助活用型】【気遣 い型】【受入れ型】【従属型】【忍従 型】の

6つ

の類型が存在す る ことが明 らか となった。入所者が主体 的に目標行動 を決定 して いた相互作用は、前者 の

3類

型のみ、実 施方法 の決定 にあって は前者 の

2類

型のみで あつた。 さ らに、 これ らの 自己決定 には、要介護高齢者 の 価値基準が存在 した。具体 的 には、 【自立指 向型 】にお いて は 「できる限 り自力で行 う」、 【介助活用型】 にお いて は「ッい地 よいケアを受 ける」とい うもので あった。要介護状態 にある高齢者 は、ケア提供者 に行 動 の実施 を依拠す るがゆえ に、 ケア提供者へ の気遣 いや遠慮 によ り自己の主張 を抑制 して しまう。そ し て、ケア提供者 は、業務過重 によ り目先の業務効率 を優先 させて しまう。このよ うな相互作用の繰 り返 し が、「認知症高齢者は意思 ある存在である」 とい う見地 を危 うくす る。認知症高齢者 の意思のないところ で行われ る 日常生活援助 は、高齢者 の 自立の低下 という変調 をきた し、認知症高齢者 を不安 と恐怖 にさ らす。そ の結果、認知症高齢者 の 自尊感情 を低下 させ、 自己信頼 をも失わせて しまうのである。 認知症 高齢者 ケアにお ける尊厳 の原点は、個 々の認知症高齢者が「どんな場面で、どんな状況 を作 った な らば、意思 を言語 的・非言語的 に表現できるのか」、「見せ る表情、しぐさは、どんな感情 を表現 して い るのか」 に着 目して読み取 る作業 にある。そ してケア提供者は、読み取 ったサイ ンを手掛か りに、そ の 時 々の高齢者 を独 自の存在 として認めて関わ らな くてはな らな い。 日常生活援助 のあ らゆ る場面 にお い て、前述 のよ うな認知症高齢者 の 自己決定力を最大限 に引き出す取 り組み こそが、認知症高齢者の尊厳

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