MEMOlRS
OF
SHONAN 【NSTITUTE
OF
TECHNOLOGV Vol
、
34,
No、
1,
2〔Xぬ極低
温
冷 凍機 直 接 冷 却 超 電 導
マ
グ
ネ
ットと そ
の
応 用
荻 原 宏 康
*・
佐 藤
昭
**Drymagnets
:Advanced
Cryocooler
Directly
Cooled
SuperconduCting
Magnets
,
and
their
Application
Hiroyasu
OGIwARi4
andAkira
SATo
Evolution
of advanced cryocoolers anddevelopment
ofhigh−
temperature superconducting electric current leads haveresulted
in
high
pe
ormance (コry ooler directly cooled superconducting magnets (dry・
magnets ).
New
phenomenahke
the Moses e 丘ect had been discovered
in
high
magnetic 且eld space of ad
ワ・
magnet.
Industrial apparatus like a (li:}r一
g−
net water pur面 tion magnetic separator with nolarge
scalehelium
liquiefier
is
field
tested.
This
paper reviews possi−
ble
applications ofdry−
magnets anddiscusses
furtherdirections
for R and D1
.
は じ め に 超 電 導 浮 上 式 鉄 道 (簡 単に浮上式リニ モー
ター
カー
さ ら に簡 略し て浮上式リニ ア とい う)の開 発で は関 連 する 超 電 導・
極 低 温 技 術の完 成が キー
ポ イン ト と なっ てい る。
100
人に も お よぶ乗 客 を 乗せ た車 両 を 地上 か ら 10 も の 高 さに磁 気 的に非 接 触 支 持 す るために は,
強 力 な 電 磁 石が必 要で,
軽 量でコ ンパ ク ト,
さ らに はエ ネル ギー
損 失の ない超 電 導マ グ ネ ッ ト と極 低温 冷凍技術な し に は こ の よ う な 非 接触支持を実現 するこ と は不可 能である。
超 電導マ グ ネッ トを超電 導 状 態で使 うために は極 低 温 冷 凍 技 術が不 可 欠 だか ら で ある。
超 電 導 浮 上式 鉄 道用超 電 導 技 術の 開発 が も た ら し た も の と し て小 型 高 性 能の極 低 温 冷 凍 機 (ク ライ オクー
ラー
) が あ る。
ク ラ イ オクー
ラー
に は冷 凍 能 力が,
42K に お い てIW 〜10W
の,
ギフ ォー
ド・
マ クマ ホン方式.
あ るい はス ター
リン グ方 式の もの が あ る。
他方,
超 電導コ イル を極低 温 状 態に維 持 する た めの 極 低温容 器 (ク ラ イ オ ス タッ ト)の断 熱 技 術 もこ こ10
年 で 格 段の進 展 をみ せ て い て浮上式 リニ ア モー
タ カー
用の 超 電導マ グ ネッ トは も と よ り医療用 磁 気 共鳴イメー
ジン グ装置の超 電導マ グネッ トで もク ラ イ オクー
ラー
で充 分 に冷 凍で き る程 度に冷 凍負 荷は小さ く なっ て き てい る。
さ らに 1987年に発 見された ビス マ ス系高温 超 電導 酸 化 物でつ くっ た大 電 流 リー
ド の 開 発で,
100A〜
3000A を 流 す超 電導マ グ ネ ッ トで もク ライ オ ス タ ッ トを,
ほ と ん ど内 蔵 する超 電 導コ イル の大 き さ と 同 じく らい までに,
コ ン パ ク ト化するこ と が 可 能に なっ た。
以 上,
二つ の 発 見,
研 究 開 発が集 約 さ れた もの が 超電 導コ イル を 冷 や すの に液 体ヘ リウ ムを使わない,
極 低温 冷 凍 機直 接 冷凍 式超電導マ グネッ ト で あ る。
以 下,
液 体 ヘ リ ウム を使わ ない こ と に着目 し て ド ラ イマ グネッ トと 略 称 する。
こ の論 文では ドライマ グ ネッ トの 概 要とそ れに よっ て 見出され た 新 しい 磁 気 現 象・
効 果につ いて報 告 し,
さ ら に ドラ イマ グ ネッ トを 主 要 装 置 と し て 展 開 さ れ よ う とし てい る研 究 開 発,
産 業 応 用につ い て紹 介 す る。
* 電気工学 科 教授 * * 電気工学 科 教 授 平成11
年10
月27
日受 付2.
ド ラ イマ グネ
ッ トと「
湘一
6
」
ド ラ イマ グネッ トの身 近 な 例に,
本 学 電 気工学 科の 愛 称 「湘S (Sh(浦 )」1}が あ る。
「湘 崎 」は図 1に示 すよ う に 直径180
の 常 温 空 間 を も ち.
そこ に最 高6T
の定 常 磁 界 を 発 生 する。.
1
蜘
軍
晦有で;
れ だ けの 空 間にこれ だ けの磁界 を発 生さ せようとするとt たと え ば一
.
.
・
辺2m
程 度の 大 き さの 電 磁 石と大 き な電 源,
さらに大 量の冷 却 水を流す水冷ポン プ を必要とする。
大 電 力と有に,
一
教 室 分のス ベー
ス を必要と し たc 「湘一
6
」は同じ く らい の 大き さの コ ンプレ ッサ と電 源 を 必要とする が,
それに し て も一
.
抱 えの 大き さの もの 二つ あれ ば図 1の よう な大 空湘 南工科 大 学 紀 要 第
34
巻 第1
号 間 (直径180
で長さ が約300
)に6T
の高 磁 界 を,
超電導の 知識も極 低 温の 知識も 必要と せずに,
簡単に発 生 す るこ と ができ る。
しか も,
その 中で起 き るこ と を 容 易に観 測 で き る オー
プン ボアになっ て い る。
現在,
ドラ イマ グ ネ ッ トは 直径10
の 常温 空 間に 図 1 「湘喝 」10T
の高 磁 界 を 発 生するもの を標準品と し て購入 で き る よ う に なっ てい る。
ま た,
こ の標 準品 を基 本と し て 用途 に応じ た常 温 空 間 径,
磁 界 強 度の もの がカ タロ グ製 品と して 購 入 可 能 で あ る。
前 述の よ うに超 電導の知 識も極 低温技 術の 習熟 も必要 と し な い で高 磁 界 を発生で き る ド ラ イマ グネッ トは幅広 い科 学,
技 術 分野の 関心を集め て現在,
国 内で,
大学,
研 究機関に限っ て も100
基に近い標 準ド ライマ グネッ ト が使 わ れて い る。
ドラ イマ グネッ トの 国 内で の 分 布 状 況 を図 2に示 す。
な お,
ド ライマ グネッ トで も超 電 導コ イル は 4.
2K
(実 際に は 4.
5K 程 度)で超 電 導 状 態に な っ て 高 磁 界 を 発 生 し て い る。
しか し,
最 新の高 温 超 電導酸 化 物 電 線の 開 発 進 捗の結 果,
高 温 超 電導体コ イル が作 れるよ うになっ た。
冷 凍 温度 22K で動 作 する ビス マ ス 系超 電導酸化物コ イル を 使った ドライマ グネッ ト が住 友 電工 (株 )によっ て実 現 されてい る2〕。
4.
5K
冷 凍と22K 冷 凍で は冷 凍 機製造の 容易 さ,
冷 凍機 負 荷,
必要電 力,
効率な どに大 き な 差が ある。
ド ラ イマ グネッ トの将 来を占う お お き な 成果であ る。
・
ot 図2
ド ラ イマ グネッ トの 国 内 設 置 状 況一 68 一
極 低 温 冷 凍 機 直 接 冷 却 超 電 導マ グネッ トと その応 用 (荻 原 宏 康
・
佐 藤 昭 }←
B
丶
B
図3
磁気メニ ス カス 円 筒 軸に直 交 す る 高 磁 界の 中に置かれた水 面一
鉄 円 筒 界 面で観 測された磁 気メニ ス カス。
以 ドで は ドライマ グ ネッ トを使っ て観 測,
発 見 さ れ た 新 現 象,
新 効 果に つ い て紹 介 し てみる。
こ の よ うな観 測,
発 見が さ ら に ド ラ イマ グネッ トの需 要 と な り,
一
層の高 性 能化研 究 開 発 促進とい う要望 と なっ て現 れて きて い る。
3
.
ドラ イマ グ ネッ トに よっ て 観 測 さ れ た新 現
象
, 新 効果
新 しい技 術 開 発によっ て生 ま れる器 材 が 理 学の 進 歩 を 支 え,
そ れが さ ら に次の 技術 開発 を生み出し て ゆくとい う螺 旋 階 段 構 造の科 学 技 術の 歩み は ドラ イマ グネッ トに つ い ても真で あ る。
ド ラ イマ グネッ トが見 出 し た新 現 象,
新 効 果は たくさ んあ る。
3.
1
磁 気メニ ス カス 3) 液 体表面と物 体の 間の 表 面 張 力に よっ て起 き るの がメ ニ ス カス現象で あ る。
図 3は円筒 軸に直 交する高 磁 界の 中に置かれた水 面一
鉄 円 筒で観 測 さ れ たメニ ス カスで あ る。
円 筒 中 心 を通る磁 界によっ てメ ニ ス カ ス は円 筒 面に 沿っ て昇っ てい る の に対し て円筒 側面で は負の メニ ス カ スが観 測 されてい て,
円 周に沿 っ て水の 高さ は プラ スか らマ イ ナスへ,
マ イ ナス からプラ スへ と変 化し てい る。
高磁界下 で観 測される,
いわ ば 磁 気メニ ス カ ス効 果で あ る。
この 効 果 を説明 する の に円筒円周 沿い の磁 界の強度 変 化,
磁 界,
磁 力の方向を計算 し たの が図 4で あ る。 円 周 沿い に磁 界,
水が感 じ る磁 気 力 変 化 し て い て,
表 面 張 力に影 響 を与え る結 果,
図3
のようなメニ ス カスが変化 する と 説 明 で き る。
3.
2 モー
ゼス効 果 と 逆モー
ゼス効 果4) 超 電 導マ グネッ トの つ く る 高 磁 界 沿い に挿入 された細 長い 容 器の 中で 水が 中 心か ら両側に 分か れるこ と が九 州 図 4 磁 界中の鉄 円 筒の まわ りの磁 界 分 布 大 学 で 観 測 さ れ た。
旧 約 聖 書の 紅 海 の 事蹟 に 因 ん でモー
ゼス効 果 と 名づけ ら れた。
こ の 現 象は東 大工学 部の広 田 に よっ て,
水 面に働 く磁 気 力と水に働 く重 力の バ ラ ン ス と して解 析 的に説明されて い る。
解析に よる と上 下に あ る 二つ の流体の組み合せ に よっ て は モー
ゼス効果と は逆 に中 央が盛 り上 が る逆モー
ゼス 効 果 も 可 能な こ と が予測 で き,
広田 によっ て実 験 的に確 認,
実 証 されてい る (図 5 >。
3,
3
磁 気アル キメデス効 果 5)20T
もの高 磁 界の 中で は カエ ル の よ う な 生 体 を 中 空に 浮かすこ とが で き るこ とをフ ラ ン ス で 実 験し て い る。
同 じよ うに 20T も あ れ ば 水の塊が磁 界中で浮くこ とを 東 北 大が示 した。
カエル の よ う な 生 体は ほ ぼ水の 塊と み な せ る。 つ ま り,
カエ ル は水の 塊と し て 高 磁 界 中に浮い た と 説 明で き る。
こ の 実 験 を 東 京 大 学 工 学 部の池 添 は 12T とい う ドライ マ グネッ トで発 生でき る磁 界の 中で再 現 してみせ てい る。
そ れに は水 と 高 圧 酸 素 を 使 う。
水,
酸 素 と もに微 弱 な 磁 性 を 持っ て おり,
高圧酸 素の 中で水の塊が持つ 浮 力が,
水に働 く重 力 よ り大きくな るこ と で説 明がつ けられてい る。
3 .
4
磁 気メニ ス カ スと不均一
酸化 3} 高 磁 界の 中で は微 弱な磁 性で も検知可 能な磁 気 的な振 舞い が認め られる。
前に示した磁 気メニ ス カ ス で,
水の 中の 溶 存 酸 素はメニ スカスが 強 化 される部 位に集 り,
弱 ま る と こ ろ か ら強ま る部 位へ 移 動する。
その た め金 属円湘南工 科 大学 紀要 第 34巻 第 1号
Center
80mm
∈ER
Genter
図5
モー
ゼス効 果と逆モー
ゼス効 果 高 磁 界中で の水 面の 沈 降 (モー
ゼス 効果 )とE
昇 く逆モー
ゼス 効 果 )。
80mm
図6
磁 界 中の鉄の 不 均一
酸化 円 筒 軸に直交する高磁 界の 中 で 鉄 円 筒の磁 界 に向い た 面 で酸 化が集 中 的に起 り,
磁 界と平 行な面では 酸 化は 起き てい ない。
筒 表 面に生 じ る酸 化,
すな は ち さびの発 生 も 不 均一
に な る。 図 6に不均一
酸化の 発 生状況を示 した。
3.
5
水の蒸発促 進6} 高 磁 界の 中で は水の蒸 発が促 進 さ れ る。TDK
(株 ),
東 大の 中川 ら は図7
に示した実 験セ ッ ト に よって ドラ イ マ グ ネッ トの 中の位 置に よ る水の 蒸 発 を 測 定 し てい る。
鰮 空間は直径50,
長 さ470mm で,
図8
に中 心か ら の 位 置によ る 磁 界の 変化 を示 し た。 最 大 磁 界は 中心で8T ,
静 磁 気 力に直接 関係する磁気勾配 も同時に示されて い る。
円 筒 内の位 置によ る 蒸 発 量の変 化は図9
に示され て い る。
中 心か ら ±00mm に お け る蒸 発 量が極大 を示す こ と と図8
か ら水の 蒸 発に磁 気 力が関 係し てい るこ と が 考え られた。
「湘一
6
」をつ か っ て水の 蒸 発 実 験 を 行っ た。
こ の実 験で は水 蒸 気を含む 空 気 に 磁 気力が働い て空 気の 流 れ を起 し,
蒸 発 を促 進 す るこ とを確か め た。 図 10a は 「湘 E 」の中の磁 界 分 布で,
図10b
の よ う な,
シ リ カ ゲ ル を挿入 した容 器 を 「湘 S 」の図 10aの位 置に 入 れ,
5T の磁 界 を3
時 間 印 加して,
その 間の シ リカ ゲル の 重 量増極 低 温 冷 凍 機直接 冷 却 超 電導マ グネッ ト と その応用 (荻 原宏康
・
佐 藤 昭 ) Air団 圃 回 団 圃
200
!Water
temperature controller 図 7 高 磁 界中の 水の 蒸 発 実 験 ソ レ ノ イ ドコ イルの 中に置い た小さ な水槽での 水の 蒸 発は,
磁 気 力が大きくな る中心か ら外 れ た位置で最 大に な る。
50(
60
慧」
oo ⊆ 〇一
← 面 N■
」
OnO , 05O 》一
糾 面一
〇 匡 o−
200−
100 0 100 Pesitien x (m ) 図 9 蒸 発 量の変 化 200 図7
の実 験で磁 界 中に置い た9
個の小 水槽そ れ それで の水の 蒸 発 量。
10 8 6 4 2 ε 口 ⊇ 遁 り 蕁 藍 O 而 Σ o・
200−
100 0 100 200Position
x 〔mm ) 400 200君
曾
゜蹇
一
200 曽 qロー
400 図8
磁 界の 分 布 直径 50,
長 さ470 の 8T ドラ イマ グ ネッ ト の発 生 磁 界 分 布 と 磁 気 力の 分 布。
を 測 定 し た。
結 果は,
磁 界の 強い 側と弱い側で80
%を 越え る重 量 変 化が見られ,
水 蒸 気 を 含む空 気が磁 界の強 い ほ う か ら弱いほ うへ 流れるこ と が確かめられ た。
な お,
実 験 は恒温状態 で 行 わ れ,
同 じ 温 度 で,
磁 界の ない 時の 水 蒸 気 蒸 発 量は3
時 間で左 右の シリカゲル に差はな く,
約 10% で あっ た。
この 実 験か ら機 械 的 部 分 を 持たずに 磁 気的に風 を起こす磁 気送 風機の ア イ デア も生 ま れて い る 7)。
3 .
産 業 応 用 と その将 来 高 磁 界の 中の 磁 性 体 細 線は周 りに大 き な 磁 気 勾 配の空b
Silica
→gel
a65432
ε
oo1
丶 \ \ 丶 丶 \ \丶
\ \ 丶 aハ
し ー・
le19rOA
臨S
齢
← ← 丶 、 丶 丶 丶 o−
300
−200
−
1000
100
200
300
X (mm ) 図10a
)湘 6 の 磁 気 力 分 布b
)湘一
6
に よる水の 蒸 発 実 験 間 を 作る。
高 磁 界で 微 弱な磁 性 を 持つ 物 質に も働 きか け,
さらに大 き な 磁 気 勾 配 と合 わせ て強い磁 気 力 を働か せ て細 線の周り に集め て,
媒 体あるい は溶媒か ら分離し湘 南工科 大学 紀 要 第 34巻 第 1号 図
11
置 磁 場4
テス ラ,
処 理 量6ton
/hr ド ラ イマ グネッ トを使っ た磁気 分離 浄 水 装 よ うとい う もの に高 勾 配 磁 気 分 離 技 術が ある。
高 磁 気は 超 電 導マ グ ネッ トで し か発 生で きない の で超 電 導 磁 気 分 離 と もい う。
た と え ば,
ワイシ ャツ を白くするの に使 わ れる カ オ リン粘土の 中に極微 量で存在する鉄 粉の除 去に 使わ れ て き てい る。 100 着の 中の一
着に鉄 粉がつ い て小 さ な茶色の斑点 を作っ てもワ イ シャ ツ製 造で は問 題にな る からで ある。
ま た,
浄 水 場にながれ 込む水か ら青コ と い うプラン ク トンを除去 した り,
赤潮の原 因と なっ て い るプラン ク トン を除去するの に,
プラ ン ク トンにシー
デ ィ ング剤とい う磁 性 粉 を付 着させ て分離,
除 去 す るこ とも行われてい る。 以 前は超 電 導シス テ ム は高 価で大 掛 か り な装置で あっ た た め膨 大な量の 母 体か ら極微量の稀 少 資 源 を 回 収 す る よ う な 場合に使 うことが考 え られ てい た。
し か し,
ドラ イマ グネッ トの開 発によっ て用 途は大 きく広がっ て きて い る。
図 11は ドラ イマグネッ ト によ る 浄 水シ ス テム装 置の野 外 実 証 実 験 状 況で あ る。
地 球環境 保 全 を 目的にい ろい ろ な 開 発 活 動 が展 開 されてい る。
高 磁 界は,
流 体の熱 対流に も 強い電 磁流体 力学の 力を 働か せ る。 半 導 体 産 業の シ リコ ン単結 晶 引き上 げ 装 置で は るつ ぼか ら出る不純物 を壁 面 近 くに拘 束し て お いたり,
るつ ぼの 中の対 流 を 安 定さ せて均 質な単結 晶 をつ く るの に ドラ イマ グネッ トが 使 わ れてい る。
製 鋼 所では 高 温の 金属融 体の制 御に ド ラ イマ グネッ トを利 用 する技術が開 発 途 上で あ る。
4 .
日本学
術振
興会
の未 来 開 拓科学技
術プ
ロジ
ェ ク ト「
高磁 界
の材料
お よび生 体の挙 動に及 ぼ す 効 果
」
研 究 「湘一
6
」の よ う なドライマ グネッ トがつ くる,
極 低 温・
超 電導に関する知 識や経 験 を 必 要 としないで,
身 近で観 測可能な高磁界空間は新 しい現象や効果,
そ し て技 術応 用 の可能性 を 提 供し て く れて い る。
こ のよう な高 磁 界 空 間で何が で き る かを検 討 する た め に (社 )低温工学 協 会 で は 「新 磁 界工学 展 開の 可 能 性 検 討 」 研 究 会 を 組 織 して い る。
ま た,
科 学 技 術 庁 管 下の技 術 開 発 事 業 団ではこれ まで 2回の 「新 磁 気 科 学 研 究 報 告 会 」 を 開 催 し て磁 気 応 用の新しい展 開につ い て の研 究 開 発 を集 めてみせ てい る。
こ こでは,
たとえ ば 「骨 粗 鬆 症モデル に対する静磁 界の 影 響」と か 「腰痛に対 する磁 気 治 療効果の検討 」とい う よ う な研 究も報 告されてい る。 こ のよ う な動きの 中で科 学技術 庁は振 興 調整費 研 究と して 「協 奏 反 応 場の 増 幅 制 御 を利 用 した新材料 創製に関 す る研 究 」 を 昨 年 (平 成10
年 度 )か ら 発 足 させた。
こ の 中に 「連 続 強 磁 界印加に よ る蒸着過 程の協奏増 幅と結 晶 配 向制御」お よび 「磁界・
超音波 を反応 因 子と し た液 体 プロセ スの協 奏 増幅メ カニ ズムの解明」の研 究が あ る。
ま た , 日本 学術 振興会で は本 年 (平 成 11年 度 )か ら 5 年計 画で 「高 磁 界 下に おけ る 材 料と生 体の挙 動に関 す る 研 究 」、
総額 約17
億 円 を 発 足 させ た。
こ の 主 題の も と に 1.
強 磁 場 下の 生 体挙 動と影響評価 2.
強 磁場に よ る 磁 気 分離を用い た環 境 改 善と資源 循環利用3.
強磁場 下 での溶融凝 固・
焼 結・
結 晶 化における新 規 効 果 4.
微 粒 子,
分 子 鎖,
薄 膜の 磁 場 下 挙 動5.
新 規 強 磁場効 果 の探 索と機 構 解 明 の 五つ の サ ブテー
マ が動 く。
いず れ も中心ツー
ル と して ド ライマ グネッ トが用 意されるこ と に なっ てい る。
湘 南 工 科 大 学 も 「高 磁 場 下 での腐 食 に 対 す る 磁 気 効 果 」の テー
マ でこ の プロ ジェ ク トに参 加 し て い るe5 .
ドライマグ
ネッ トの課 題 ドラ イマ グ ネッ トは あくま で もク ラ イ オクー
ラー
の 支 援が不 可 欠であ る。
ク ライクー
ラー
の 冷 凍 能 力,
信 頼 性 で ド ラ イマ グネッ ト の性 能,
信 頼 性 も 決る。
その意 味で 完 成 品で はな く,
これか らもつ ねに改良され 使い やすい もの,
よ り高い磁 界 を 発 生するものが 生 ま れてくるは ず で あ る。
また,
標 準 ド ラ イマ グ ネッ トの性 能向上 の一
方 で,
用途に適 し た形の産業へ の応用 も次々 と現 れるに違 い ない。
新 磁 界工学 展 開の 可能 性の検 討が進み,
電 気 並み に磁 気応用 を広 げる努力が必 要であ る。
ま た,
ク ラ イ オ クー
ラー
へ の ドラ イマ グネッ トか ら の 要 請とし て はよ り簡単なか たちで信 頼 性の高い ク ライ オ クー
ラー
の開 発 が ある。
これに はすで にパ ルス冷 凍 機 と い うター
ゲ ッ トが で き てい る。
パ ル ス冷凍 機は可 動 部 分一
一
極 低温 冷 凍 機 直 接 冷 却 超 電 導マ グネッ ト と そ の応用 (荻 原宏康
・
佐 藤昭 ) を もたず
,
ク ライ オ クー
ラー
の 信 頼 性 を決め て い るコ ン プレ ッ サー
を 必 要 としない。
GM
冷 凍 機や ス ター
リ ン グ 冷 凍 機の 性 能 向上 に は も ち ろ ん期 待 し た い が,
で き る だ け早く,
パ ル ス冷 凍 機 冷 却 ドラ イマ グネッ トを実現 し た い。
さ ら に,
冷 凍 負 荷の 軽 減,
高 性 能 化とい う こ と に結 びつ く超 電 導コ イル を高温 超 電 導 酸 化 物で 実現するこ と を 期 待 したい。
6 .
ま と め 高 性 能 小 型 極 低 温 冷凍 機 直 接冷却超 電 導マ グ ネッ ト (ド ラ イマ グ ネッ ト)の 出現 は,
容易 に接 近で きる,
大 き な常 温 空 間に発 生 する高 磁 界 を提 供 し て くれ てい る。
こ の よう な磁気空 間で起 き るい くつ もの 新しい 磁 気現 象・
効 果が報 告されるよう に なっ た。
その 中に は高 磁 界 を利用 する新 しい応 用 技 術につ な が る と期待させる もの もお おい 。 実際,
半導体単結 晶の 引 上 げ 装 置 や 水 質 改 良 の た めの 磁 気 分 離 装 置 な どが開 発され 実 証試験が進ん で る もの が あ る。
ド ラ イマ グネッ トの い っ そ うの 高 性 能化 の ため にはパ ル ス冷 凍 機の 開 発 な どク ラ イ オクー
ラー
の 高 性 能 化 を 期 待 したい 。 さ ら に高 温 超電導酸 化 物の 工 業 材 料に より,
今 よ りは高 温で は動 作 する超 電 導コ イル 開 発にも期 待したい。
参 考 文 献1)
Sato,
A .
andH .
Ogiwara,
ISTEC ∫,4,35,1998.
2) Kato, T 砿 α乙,
∠
4
ぬSuperconductim
’
ty
X ,
2,
877,
1997.
3
) 佐 藤昭ほ か
,
日本応 用 磁 気 学 会 誌,22 ,
837,
1998.
4
)Hirota
,
N.
et.
aL,
lpn
.
」.AppL Phpts.
,34,
L991,1995.
5)