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翻刻『百人一首姫小松』(抄) : 「本朝賢女鑑」の歌徳説話について

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(1)Title. 翻刻『百人一首姫小松』(抄) : 「本朝賢女鑑」の歌徳説話について. Author(s). 菅原, 利晃. Citation. 札幌国語研究, 10: 53-62. Issue Date. 2005. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2704. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) ︵抄︶. 辺給水. ㊥. 菅. 原. ︵大阪︶,明玉堂︵大阪︶蔵版. 安永五. 晃. 形態︰1冊.大. 叢書. の二種が載せられ. *江戸出版書目による﹂とある。. た書は見受けられる。それには、﹁一冊 ㊨ 狂歌 ㊨. 下河. なお、岩波書店刊﹃国書総目録﹄第七巻に、﹃百人一首姫小松﹄ の名は見えないが、﹃百人首姫小松﹄という、﹁ごの字が抜け. ている。. 所蔵者︰国文研.ヰ?Nの∽一W︵以下略︶﹂. 合冊︰叢書 注記︰︵般︶ 冒頭・上段に種々の女訓あり。. うきち︶. の歌徳説話について−. ﹃百人一首姫小松﹄に 関 し て. −﹁本斬賢女鑑﹂. 翻刻﹃百人一首姫小桧﹄. 一 ﹃百人一首姫小松﹄ ︵架蔵︶は、仝一冊の板本である。大き. 和歌・. さは、縦約二十六二二糎×横約十八ニー糎。丁数は八十二であ. る。 岩波書店刊r古典蕗総合目録﹄第二巻によると、﹁類. 注釈﹂として、﹁版 国文研︵一冊︶﹂があげられている。また、. 国文学研究資料館 ﹁古典籍総合目録データベース﹂ 刊写の別︰刊. 出. 倉﹂ の二字と推察する。また、それぞれふりがなもつけられて いるが、かなり見にくいものとなっている。. 最初の﹁□□山荘図﹂の二字分は判読が困難だが、おそらく﹁小. 朝賢女鑑﹂、﹁女教訓袖鑑﹂、﹁貝合松明之記﹂などと判読できる。. 成る目録題姦が中央にあり、右上から左に、﹁□□山荘図﹂、﹁本. の一部とが読める。この短冊第以外に、十二×四段のマスから. 辛うじて子持枠の一部が見られ、その中に﹁松﹂と﹁仝﹂の字. ︵http︰\\base−.nij−.ac.jp\∼kOten\︶には、﹁標目書名︰百人一 首蔵本の、表紙の原題第である短冊答は殆ど欠落しているが、 架. 姫小松︵ひゃくにんいっしゅひめこまつ︶,外. 注記︰︵般︶ 所蔵者︰大阪中央図百. 形態︰26Cm,1冊. ︵形︶通しページなし。. 版事項︰岡本仙助︵大阪︶他. 図版あり。. 刊. 人首,∽3.り\\≡〇一k 目録分類︰往来物︵以下略︶﹂、﹁標目書. 名︰百人一首姫小松︵ひゃくにんいっしゅひめこまつ︶,外 写の別︰刊 出版事項︰岡本仙助︵おかもとせんすけ︶︵大阪︶, 岡本支店︵おかもとしてん︶ ︵大阪︶,北島長吉︵きたじまちょ. ー53−.

(3) 表紙の裏、すなわち見返しには、大きく中央に﹁百人.一首姫. 全部 萱 冊. /. 江戸. 安永五丙. 書林. /. 博栄堂蔵﹂とある。上部右肩. 小松﹂の題字が見え、その右に烏﹁女教訓躾方日用宝鑑﹂とあ り、中央の題字の左には﹁皇都. 女教大全姫文庫. 下河辺給水. には、丸型・宋の魁星印が捺されている。. /. 裏見返しには、刊記として﹁書図. 申歳孟春 ︵ママ︶ 原茂兵衛 / 京都梅村半兵衛﹂とあり、﹃国書総日野第七 巻のr百人首姫小松﹄に一致するところがある。 ところで、﹁女子用往来総目録百人一首の部﹂ ︵﹃江戸時代女. 注. 本稿では漢字は基本的に現行体に改めた。. ︵1ウ∼2オ︶・﹁本朝賢女鑑﹂︵2. ︵9オ︶までを翻刻した。表紙の目録. 二所収歌説話に関して 本稿では、このうちの. に従えば、﹁小倉山荘図﹂. の四つの記事ということになる。ここまでを翻. 須 ウ∼6オ︶・﹁女教訓袖鑑﹂︵6ウ∼8ウ︶・﹁月合松明之記﹂ ︵8オ∼9オ︶. 刻する理由は、そこに歌説話が多くふくまれているからである。. 例えば、﹃百人一首﹄という一つの視点から見れば、小式部. 内侍では、﹁大江山いくの、道のとをければまだふみもみず天. のはしだて﹂︵角川文庫﹃百人一首﹄による︶が﹃百人一首﹄. 性生活絵図大事典﹄別巻・大空社・平成六年六月︶によれば、 このr百人一首姫小松﹄は﹁安永5︵京都・梅村判兵衛. にもとられ、世間でも認められ、人口に檜灸しているであろう。. 江戸・. 須原屋茂兵衛︶﹂、﹁嘉永6︵明玉堂︶﹂、﹁刊年不明︵大阪・岡本. の. にもかかわらず、ここではそれは採らずに、﹁ことハりや﹂. 代表歌があるにも関わらず、他の歌説話を載せている。ただ、 神石讃岐のみ﹁我袖は﹂の歌説話をとっており、﹃百人一首﹄. 泉式部、赤染衛門、西行法師、在原業平も、﹃百人一■首﹄ にも. 歌説話をとっているのである。同様に、紫式部、清少納言、和. 仙助ほか2書韓︶﹂とあるので、当該本はその最初にあたるも のであろう。 なお、﹁女散大仝姫文庫﹂の左に、小さく﹁百人一首、女躾方、 四季用文章、婚礼図式、歌仙、源氏物語、賢女物語、其外日用 重宝不残しるす﹂というように内容が記されているが︵読点は 菅原が付した︶、これから翻刻紹介する﹁本朝賢女鑑﹂は、こ. 紙の書j溝など、さまざまな記事をふくんで小る。しかしなが. どころ内容は、﹃百人一首﹄をはじめ、婚礼に関すること、手. けの教訓書や教養書の類であることはあきらかである。実際の. これらの目録、書名などだけからみても、この善が婦女子向. いう理想像の追求である。. の編集意図とは、歌徳説話の収集への志向であり、﹁賢女﹂と. らの歌説話には、ある編集意図が含まれているのであろう。そ. がないということなのかもしれない。しかし、それ以上にこれ. が載せられているので、﹁本朝賢女鑑﹂にいまさら載せる必要. と一致するものとなっている。 これらは、﹁百人一首姫小松﹄ の本編にすでに ﹃百人一首﹄. ら、﹁狂歌﹂に類するものは見受けられない。. のうちの﹁賢女物語﹂に相当するものと思われる。. 一54−.

(4) そ土で、次に、収められている歌説話をあげてみる。また、 同話、類話、あるいは当該和歌を含む歌集などを記したが、調. r枕草子㌔. 1清少納言集㌔. 1千載和歌集﹄巻第十九釈敦歌、. ﹃風雅和歌集﹄巻第十九神祇歌、﹃和泉式部集﹄. ﹃世継物語﹄. 各作品は、概ねそれぞれ成立順としたが、必ずしも正確なもの ではない。なお、各和歌がどのような作品に取り入れられてい. ﹃女郎花物語﹄︵写本︶下、﹃雑々集﹄上、﹃月刈藻集﹄中、. 査が十分ではないので、大方のご教示をお願いする次第である。. るかということに関して、詳しくは、中村薫氏﹃名歌辞典﹄︵明. ﹃濁源集﹄三、﹃題林類葉集﹄二、﹃和歌威徳物菰野二八、﹃和. ︵5オ︶. ﹃古今選﹄三恋. ︵6オ︶. 著聞集﹄巻第八、F撰集抄﹄六、﹃沙石集﹄巻第五末、﹃古. 巻本︶、﹃十訓抄﹄十ノ十五、﹃古今著聞集﹄巻第五、﹃古今. 上巻、﹃古来風体抄﹄下、﹃古本説話集﹄上五、﹃宝物集﹄二. 六々撰﹄、﹃今昔物語集﹄巻第二十四第五十一、﹃袋草紙﹄. ﹃赤染衛門集﹄、﹃玄々集﹄、﹃詞花和歌集﹄巻第十雑下、﹃後. 赤染衛門、﹁かはらんと﹂の歌説話. ﹃惟然坊句集㌔. 巻十、﹃一目玉鉾﹄巻一、﹃女今川教文﹄、﹃安斎随筆﹄巻八、. くらべ﹂上、﹃月刈藻集﹄中、﹃伊勢物語集注﹄、﹃本朝女鑑﹄. ﹃二八要抄﹄恋一、﹃題林愚抄﹄恋部三、御伽草子﹁美人. 秀歌﹄、去小倉百人一首﹄、﹃三五記﹄、﹃女房三十六人歌合﹄、. r千載和歌集﹄巻第十二恋歌二、﹃二条院讃岐集﹄、r百人. 沖石讃岐、﹁我袖は﹂の歌説話. 随筆﹄巻町九、﹁玉勝間二一の巻. 二七、﹁雑説裏話b巻の下末、﹁講後談﹄、﹃笈填. ︵松井本︶、. ︵4ウ︶. 治書院・昭和十一年︶、﹃新編国歌大観﹄ ︵角川書店︶等を参照. 歌奇妙談﹄. 和泉式部、.﹁晴やらぬ﹂﹁もとよりも﹂の歌説話. されたい。 ∼︵2オ︶、﹁本. 歌説話以外では、﹁小倉山荘図﹂の、定家が﹁新古今和歌集﹄ への不満から﹁百人一首﹄を挟んだ話︵1ウ︶. 朝賢女鑑﹂の中の中将姫の説話︵5ウ︶、﹁女教訓袖鑑﹂の諸記 事︵6ウ︶∼︵8オ︶はーいずれもよく知られたものであり、. ︵2ウ︶∼︵2オ︶. 諸書に広く見られるものなので、類誌等はあげなかった。 ﹁ 本 朝 賢 女 鑑﹂ 小式部内侍、﹁ことハりや﹂の歌説話. ﹃和歌威徳物語﹄十七、﹃和歌寄徳物語﹄四、御伽草子﹁小 式部﹂、﹃和歌奇妙談﹄七十人. ︵4オ︶. 下、御伽草子﹁猿源氏草紙﹂、﹃百姓嚢﹄巻. 紫式部、﹁日の本に﹂の歌説話 ︵3ウ︶. ﹃八幡愚童訓﹄. 四、﹃三省録﹄巻二 清少納言、﹁もとめても﹂の歌説話. 一55−.

(5) 大江広貞注︵為相注︶﹄、東山御文庫所蔵﹃古今集. 説話は、結果が記されていないが、和泉式部の﹁晴やらぬ﹂の. 歌説話では、神の許しを得ているし、沖石讃岐﹁我袖は﹂の歌. 今集註 注﹄、﹃落 書 露 顕 ﹄ 、 ﹃ 体 源 抄 ﹄ 十 末 、 ﹃ 女 郎 花 物 語 ﹄. 説話では、異名や名声を得るに至っている。赤染衛門は、和歌. ︵写本︶. 下、﹃月刈藻集﹄上、﹃本朝孝子伝﹄巻上、﹃和歌徳﹄、﹃和. このように、さまざまな形ではあるが、﹁歌徳説話﹂を例示. により子の病を癒えさせた。. 二、﹃本朝列女伝﹄巻之三、﹃和歌奇妙談﹄六、﹃本朝語園﹄. することで、﹁賢女﹂としてのありかたを物語っているのである。. 歌威徳物語﹄三、﹃和歌杏徳物語﹄六、﹃本朝美人鑑﹄二ノ 七十六、﹃女堪忍記大倭文﹄、﹃玄同放言﹄巻之三、﹃百人一. のような、﹁賢女﹂についての説話が多く含. たはずである。当然、秀歌を通しての和歌の学習という側面も. い。そして、これら歌説話から、当時の児女が学ぶことも多かっ. まれている。それらは、歌説話、特に歌徳説話である場合が多. に﹁本朝賢女鑑﹂. ﹃百人一首﹄を含む女子教訓書・教養書の類には、このよう. ︵8ウ︶. 首一夕話﹄巻の五、﹃前賢故実﹄、﹃歌の大意﹄、﹃皇朝二十. 四 孝 ﹄ 、﹃女有職草文庫﹄. 西行法師、﹁今ぞしる﹂歌説話. ﹁ 貝 合 松 明 之記﹂ 貝おほひの事. ︵9オ︶. 翻刻の凡例 r百人一首姫小松﹄. 三. ちがいないのである。. ・架蔵の. ・底本の丁付は、︵. ︶内に、1オ・1ウのように示した。. ・底本には、各丁に挿絵があるが割愛した。. その冒頭九丁の表までを、なるべく忠実に翻刻した。. ︵安永五年板本︶を底本とし、. 状況をみごとに乗り切った﹁賢女﹂に、理想的女性像を見たに. ただろう。さらには、秀歌を詠み、その歌徳によって、困難な. 二十五、﹃東海道名所記﹄四 あっただろう。あるいは、歌徳の実践上の手本という側面もあっ. 在原業平、﹁かち人の﹂歌説話. ﹃山家集﹄下雑、﹃夫木和歌抄﹄ 松明の事. ﹁歌枕. r伊勢物語﹄第六十九段、﹃古今和歌六帖﹄五、﹃業平集㌔ r歌林良材集﹄上、﹃袖中抄﹄第四、﹃色葉和難集㌔. 名寄㌔ r藤川五百首㌔ 三一冊子㌔ ﹃石上私淑言﹄上. 特に歌が存在しない中将姫の説話を除く、これら﹁本朝賢女 鑑﹂の説話群には﹁歌徳説話﹂としての特徴がみられる。 例えば、小式部内侍﹁ことハりや﹂の歌説話は、詠歌によっ. ・カタカナの﹁ハ﹂﹁ミ﹂﹁ツ﹂はそのままとした。. て状況を好転させるという﹁歌徳説話﹂となっている。紫式部 漢字は基本的に現行体に改めた。ただし、﹁寄﹂﹁萬﹂﹁黍﹂ の﹁日の本に﹂の歌説話も、夫宣孝の心情を変えさせたので、﹁歌 ﹁﹁﹂などはそのままとした。 徳説話﹂といえよう。もっとも、清少納言﹁もとめても﹂の歌. −56−.

(6) 濁点・振り仮名・送り仮名等については、底本の表記に 従った㍉. Uつ. うしな. としたるゆへ、此. 実を失ひ、花を専 この しうほんゐ 集本意なき事に. 寓代. 曇り. までも くも. こしきぶのないし. 小式部内侍. ︵ママ︶. ふ暫ハらのやすとミ. しゆ. は、. こ、ろ. ぅた 式部なり。つね︿寄に つきはな. 松のいのりの寄 をよミてことぶ. うた. 部を召されて、. ぶめ. いづミ. こまつやかれ の小杏一夜に枯ければ、 こ し▲号 あさ 小式 御おしみ浅からず、. ける。あるとき、君御寵愛. きミ○てうあい. めで、、月花に心をよせ. しきぶ. 藤原保冨の娘、母ハ和泉. ひ†め. なし給ひしとぞ。︵2オ︶. なき鑑と. か.、−‘、. 給ひ、 よろづよ. ゑら を撰ミ. 山荘にて、百人一首. をぐら. 漢字の踊り字は﹁々﹂になおした。. 思ひ給ふて、小倉の. がう. さんせう. 本文に句読点は存在しない。私に句読点を施した。場合に ょっては、﹁・ ﹂ も 付 し た 。. 改行は、底本に従った。その際の字下げの位置も、概ね底 本に従った。. 本文の誤りもそのままにし、︵ママ︶と施した。ただし、﹁ゆ. わか. きやうこくくハうもん. ﹃百人一首姫小松﹄翻刻 本 文 ︵ 抄 ︶. へ﹂などの仮名遣いについては︵ママ︶を施していない。. 四 ていかきやう. しゆんぜいきや う な ん. 定 家 卿 ハ 京 極黄門と号す。. 骨随を待給ふとぞ。抑. 俊成卿の男にして、和寄の. ︵ママ︶. こつでいえそも く. か. に仰て撲れしが、其. ゑらミ. ち、しゆんぜいきやう. その. てい. ひやくし○し暮し. 百首色耗. しんこ き ん し う. この†ぐら. がた. 此小倉 ありいゑ. 形ハ、新古今集を、 ミちとも. 通具・有家・定家・ かりうまさつね こ の. ていか き や う. ゑら ま. 家隆・雅経、此五人 あーせ ころ. ゐ. せんしう. こきん. こ・ろ. 頃 、 定 家 卿 ハ父俊成卿の も. こきん. 喪にこもり居給ふゆへに、 しん. しん. 新古今の撰集、心にかな そのゆ へ. ハず。其故ハ新古今の撰 ︵1ウ︶. 一57−.

(7) あり. きをなすべしと みことのり有 けれバ かれ. ひめ こ ま つ. ことハりや枯てハ いかに姫小杏 ちよ 千代をば に ゆづると. おもへば かく▲い. 斯詠じ奉り この 重 つ. しや う. けれバ、此香 みどりを生じ、. ︵2ウ︶. ごとさかへ も と の 如 く 栄 、ミか ど はじめ. けり。御門を初奉り. おつと. のぶたかそと. 紫式部ハ、一条院の后妃上東. いちぎ きぞく ミな 一座の貴 族 た ち 、 背 いつとうかん 一同に感じ給ひ け る 。 ︵ 3 オ ︶. むらさきしき ぶ 紫式部 いち で うゐんこうひじや う と う. あるとき. 門院につかへし官女にして、和寄の 、ミち. 道くらからず。或時、夫の宣孝外へ. も人ゐん. いで ひま いわし うをくひ 出たる隙に、鰯と 云 魚 を 喰 け る の ぶ た か う ち か へ こ れ い や し. を、宣孝内へ帰り、是を見て、購き ものくひ わら しさぶ 物を喰給 ふ よ し 笑 ひ け る 。 式 部. とりあへす、 ひもと. いわしミづ. 日の本にはやらせ 給ふ岩清水まい らぬ人ハあらじ かくえい. とぞおもふ く. は暫. おつとけつ. 斯詠じけれバ、夫結 句ことばを恥られ. けるとなり。︵3ウ︶. つく. 王こもとすけ. ぽだい. で. こ、ろ. か. 清原深養父の曾. じようバう. にして、枕草 をへ 作り 心紙ば を、. 。. むいす めのゐ人 ちう. せいしやうなコん 清少納言 せいしやうなコ ん 少 言ハ、 きよ ハらの清 ふか や納ぶ ひ 重くちぎうし. せんざいしう. あらハせりとぞ。 てらけちえんかう. 千載集に、菩提といふ 寺に結線の講じける いひつかハ. とき、まふでたりしに、 わ. 人のとくかへれと言達し 亨 けつ れゃ ハよ 、 はちすつゆ. もとめてもかゝる よ. またハ. 蓮の露をきて うき世に. かへる. −58−.

(8) ものかは. ︵4オ︶. いづミし舌ぶ 和泉式部 しきぷくまの あるとき、式部熊野にもふで ほうペい. たりけるに、さハりに成て、奉幣 かなハざりけれバ、 はれミ 晴やらぬ身のうき くも 雲のたなひきて つ書 月のさはりと なるぞかなしき. とよみて、うちふしける ゆめに、. まじはる神なれバ なに. もとよりもちりに かミ おばしめし. 月のさハりも何かくるしき し竜ぶうた. かく式部が寄をかんじ思召て、ゆるし つけ 告させたまふとぞ。︵4ウ︶. おきのいしのさぬき. いし こひ わがそでしほひ おきいし. 我袖は汐干に見えぬ. 沖の石の人こそ. しらねかハくまもなし こと. なんし. †て. とし. に有べきものなり。拙きものハ女なり。. ぎん うけ. 石によする恋といふ心を読り. このうた. こ・ろ 上め. 此寄、殊にすぐれたりとて、 いし なおき 名を沖の 石とよべり。 ころ ていか与やう. 定家卿もその比の. うた 寄よミなりと の給ひしとぞ。︵5オ︶ ちうじやうひめ. 中将姫. ちうじやうほうじ上 ち、 うだいじ人とょ摩りこう 中将法女、父ハ右大臣皇成公と けいば くにひばりや王. 申奉る。継母の護を受給ひ、大和. たへ壬二でら 六才にて、当﹁寺にいたり、. 国雲雀山に揺られ給ふ。御年十 さい. ほとけ. 心のはれやらて、仏の. ことにこ,ろ. 僧都悔弔し給ふ。あるとき、 をんな. をしへ. 女ハ殊 もち. 御教にももれぬべき身を 持て、男子の心をはかる. つたな. なんしミのり 男子のすくやかに御法にうとからぬやう. こ、ろ. ハ女にすぎたるハなし。せめて. こそ悲しけれ。ひがめるもの. かな. でうのいん. 神石讃岐. さぬき. すがたハ女成とも、心ハなどか. 讃岐ハ二条院に. くハんサよ つかへ奉る官女、 けんぎんミよりょさ まご 源三位頼政の孫にて、 いづのかミなかつな むすめ 伊豆守仲綱の娘なり。 せんざいわかしうだいこひうた. 千載和寄集第十二恋の寄、. や王との. −59−.

(9) ねが. ねが. のちよ. すミよし. いそ. ことさら ・ミ︶と. ふたかミ. なんによ. き,ミ. の御事にて、三男のあね君に. なん. うミ給ふ。一女といふハ、天照大神. てんしやうだいじん. みとのまくばいして、一女三男を. いちによなん. あまはしはじめ. 尊の二神より男女とわかれ. たかちか. 赤染衛門. ねが. 願ふても願ふべきハ後の世なれバ、殊更に. て、天のうき橋のもとに始て. わがこ お、え. た、. まふで うた. わづら. 明神の崇りによりて、. てわたらせ給ふ。御かたちひかり かゝやき、うるハしく あ王てるお、んかミ 、天照大神. ミやうじん. いのち. はくハつ. なんによ. たかま、はら 奉る。高閣の原をしらしめ. がれ給ひ、今の世までも、いと しよにん. こ、ろ. るなり。されバ、女ハ人のはじまり︵6ウ︶ てんせうだいじん. じやうだい をんな. かざれて、欲心ふかく、やさし. よくしん. をまんじ、いろふかく、いつハり. 人をそねミ、ねたみ、我身. わがミ. てハ、女の心日々にあしく成、. こ、ろひ.、. すへよいまよわよ らず。未の世今の世に及び. の女ハ、心すなほにして、邪な. ひと ず、人の世となりても、上代. なれハ、神代はいふにおよば. かミよ. なる事、天照太神のながれ. をんな. もかしこく、諸人うやまひ奉. い王よ. しろしめして、地神の祖とあふ. 督じんミあや. 給ふ。下界にあまくだり、天下. げかいあめかした. またひかミ. おもく煩ひけれバ、急ぎ. ミやうじん. 我子大江の拳周、住吉. あかそめのゑもん. おも. 思ひとりて、女ハ願ふべきにこそ。︵5ウ︶. あまつか、、、. とも申奉り、又日の神とも申. ましま. 明神へ詣て、寄をかきて. いの. 奉り、祈りけ る 。. かはらんといのる命ハ をしからてさても. ゆめ. かなしき. わかれんことぞ そのよ. 其夜の夢に、白髪の らスノをう にぎて. 老翁、此幣をとりて、 すなハちやま. うちゑませ給ふと見 けるが、則病ひいえて、 つ、がなかりしとなり。︵6オ︶ くにとこ 天地すでにわかれて、国常 たち. あめつち. よあいだ. 立 の み こ と在してより、天神 い ぎなミ. ︵ママ︶. 七代の間ハ、男女のわかちなし。 い さなぎ. 七代めの伊井諾・伊弊冊の. よこしま. −60−.

(10) き心もなく いますへよ. なさけをしらず。 た.ヽ. なれど、人々心がけ. ひとくこ、ろ. 今未の世に いかで女の正し かるべき。 しやう暫き. おや. こじんことバ. かう. しとなり。親たる人にハ孝を. つくすべし。古人の詞にも、人. せん. ひやくまんせんいだ ひすめをよめいり ょく百万銭を出して、女子婚姻 しり. せしむる事を知て、十万銭︵7ウ︶. しんりよ. し. 婦人嫁しても、去らるべき逼 り. こh. りを知らすんバあるべからず。 ふし人かさどう. さる. 理七ツあり。是を七去と云。第. ことバね、. に不孝なれバ去。. しうとしうとめふかう. 一、舅∵ 姑. さろ. りんき. こ. ものハ去。第六、療病などの悪 さる. さるこのきよ. せいじん. なれバ、去事なし。此七去と こと. 、. かんよう. によしこのこと. いふハ、聖人ののたまひける バ. いふ. たい. ぬ†ミニ、ろあれ 淫乱なれバ去。第三、盗心. へ給ひ、心つくべき事肝要なり。︵8オ︶. おば. れハ去、といへり。しかれども子 たヾ ていせつ 学びな 、き 心と をて 苦、 て心 、正 女 のく 守、 り貞 行 し 節. き疾あれバ去。第七、子なけ. やまひ. さるらいびやうあし. ハ去。第五、惰気物ねたミする. さる. 。第、 バ去 四口がましく詞多き者. いんらん さる. 書よ. かな。女子の親たる人、此ことハ. 事をしらずといへり。誠なる によしをや. たしなミ給 ハ、、すなほの心. ︵7オ︶. まこと. を出して、子をよくおしゆる. しをしゆによし. おこな. ものからわう. まも. ともなり、 神慮の正直にも しやうやき かなひ給ふべし。心正直なれ. あハ れ ミ 、 心 も や さ し く な る. ハ、おのづからしつとの心なく、 なさけもの よくすくなく、情ふかく、物を 二、ろ. ものなり。 なんしそといで ししたが 男子ハ外に出て、師に順ひ、 かくもんつとめによ 学文を勤さすれども、女 子にハ教ることうとし。女子 いくはどたいゑえん ハ、幾程か他の家に縁あり ときしうとしうとめおつと. て む か ハ る、時、舅・姑・夫につ か. をやいゑゐ へるものなれハ、親の家に居る ことかねミち 事しバらくなり。兼て道を. 一門の恥をなさん事、いか斗. まな こ、ろ くるしめ ミちおは ふ道を覚ゆべし。しからすバ、 カおつと 嫁しても、夫の心にそむき、 もんは暫ばかり. 物うからんことを、唐の女王も ひめきミかき 姫君ヘ音あらハしあたへ給ひ. −61−. 、.

(11) い. 貝おほひの辛 かいあハ. 、. あやまり. 貝合せといふハ、あやまり なりといふ人あれども とはいひがたし。 ふぽくしう. さいぎやうほうし. 夫木集に、. うら. 西行法師よめる、 いま. ふた、ミ. 今ぞしる 二見の浦の はまぐりを 貝合と て. かいあハせ. にしのミやの. し書ぷ. ぎよう. おほふなりけり. ぁと.、. れいせい. 大臣、むらさき式部に ちぎりたまひ 、. さすらへの時より. 書よう ほうペい. 冷泉の御宇、西宮. 清和帝の御宇、在原. 時、帖子内親王斎宮. ありハら し. はじまるといふ。︵8ウ︶ ついまつ. 松明の事 せいわてい なりひら. いせげかう. 業平、奉幣使として、 伊勢下向し給ひし ︵ママ︶. ちぎ. てうしないし ん わ う さ い く う しの. 忍びて、契り給ひける. なごり. わかれの時、ふかく名残 をおしませ給ひ、 かち人のわたれと ぬれしゑにし あれば. とかハらけにかきて、出し給へば、 ひらついまつ なり平、松明のすみして、 さかせき. 松明といふも、此ゆへなりとぞ。︵9オ︶. 是寄がるたのはしめなり。されバ、. またあふ坂の関ハこえなん. これうた ついまつ. −62−.

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