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総合学習へのアプローチとしての「ミニ総合学習」

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(1)Title. 総合学習へのアプローチとしての「ミニ総合学習」. Author(s). 長谷川, 美栄子. Citation. 僻地教育研究, 55: 45-51. Issue Date. 2000-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1695. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである. Hokkaido University of Education.

(2) 総合学習へのアプローチとしての「ミニ総合学習」. No.55. 2000.12. 総合学習へのアプローチとしての「ミニ総合学習」. 長谷川 美栄子 (南茅部町立臼尻中学校). Ona .. Mieko HASEGAWA. 論文概要. 平成10年12月,各学校がゆとりの中で特色ある教育を展開し,生徒の豊かな人間性や基礎・基本を身に付け, 個性を生かし,自ら学び自ら考える力などの生きる力を培うことを基本的なねらいとした新しい中学校学習指 導要領が告示され,平成14年度から「総合的な学習の時間」(以下,「総合学習」と略す)が完全実施されるこ ととなった。. 学校や地域,生徒の実態に応じて,各学校が創意工夫を生かした学習活動を積極的に展開することが求めら れる中,総合学習をどのように捉え,それぞれの実態に応じてどのように進めていくかが,今問われている。. この論文では,本校の生徒の実態から総合学習で目指す生徒像を設定し,給合学習を進める上で必要とされ る生徒の資質や能力を高めるための学習活動について示した。さらに,総合学習で示されている学習活動との 関連についても触れ,長時間を配当する本格的な総合学習の準備段階として,「ミニ総合学習」を設定するこ との有効性について述べている。. キーワード:総合的な学習,自己を見つける,子供の興味・関心,地域との関わり. いる。. 1.はじめに. 『新中学校教育課程講座 総則』に拠れば,これは,. 総合的学習は,平成8年7月の中央教育審議会「21世. (∋ 横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心など. 紀を展望した我が国の教育の在り方について」(第1次. に基づく学習などの過程を通じて,自ら課題を見. 答申)において,(》各学校が創意工夫を生かした特色あ. つけ,自ら学び考え,問題を解決する力などの【生. る教育活動を一層展開できるようにするための時間を確. きる力】を育てること。. 保する必要がある。②自ら学び自ら考える力などの【生. ② 情報の集め方,調べ方,まとめ方,報告や発表. きる力】をはぐくむために,既存の教科等の枠を超えた. ・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に. 横断的・総合的な学習を実施できるような時間を確保す. つけ問題解決に向けて主体的,創造的な態度を育 成すること。. る必要もある。と,いった趣旨から設けられたものであ. ③ 自己を見つめ,現在や将来について真剣に考え, 卒業後の進路を主体的に選択し,生きがいのある. る。. さらに,平成10年12月告示の「中学校学習指導要領」 に拠れば,総合学習のねらいとして,「自ら課題を見付け,. 生活を実現していくという自己の生き方について. 考えること。(注1). 自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を. を,目指したものである。. 解決する資質や能力を育てること。」「学び方やものの考 え方を身に付け,問題の解決や探求活動に主体的,創造 的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることが. これらの資質や能力,態度などの育成は,これまでの 教育課程においても行われており,学習活動を通じて身. できるようにすること。」と,いったことがあげられて. についた知識や技能,資質や能力は,生徒の中で一体と − 45 −.

(3) 長谷川 美栄子. なって働くものと考えられ,それが期待されてきた。 しかし実際には,学校で学んだ知識や技能は実生活と の関連が薄く進学のための知識に過ぎないと,子供に受 けとめられていることも多い。また,こういった意識か ら,学習に対する取り組みも受動的になり,探求心を持っ. さい」という言葉は活動や学習に対する彼らの心情を象. 徴している。学習に対しては,先に指摘したように,学 校で学んだ知識や技能と実生活との間に隔たりを感じる. 生徒が多く,進学のための知識を得る行為にとどまって. いるように思われる。また,勉強しなくても高校にいけ るだろうといった意識の生徒も見られ,自分の将来に対. て主体的に取り組むといった姿勢が欠如している。. しても漠然としている。. 総合学習のねらいとしているところは,まさにそのよ. うな点にあり,自ら学び自ら考え,問題を解決する力な などのねらいのもと,各教科などで身につけた知識や技. 2.2 実態をふまえた総合学習の目額 このような実態は,総合学習のねらいの「自己を見つ. 能を相互に関連づけ,深め,総合的に働くようにするこ. め,現在や将来について真剣に考え,卒業後の進路を主. どの【生きる力】の育成や学び方やものの考え方の習得. とを目指すものといえる。このような時間の活動を通し. 体的に選択し,生きがいのある生活を実現していくとい. て,特に学校で学ぶ知識と実生活との結び付き,知の総. う自己の生き方について考えることができる」と重なる. 合化の視点を重視し,各教科等で得た知識や技能等が実. 部分が多く,特に本校では「自己を見つめる」ことがで. 生活において生かされ総合的に働くようにすることが大. きる生徒の育成が重要な課題であると考える。. 「自己」の「自」の対義語は「他」である。「他」とは,. 切である。. 家族・友達・地域・社会といった自分以外の全てを指す. 言葉であり,「自己」とは「他」を認識した上で意識さ. 2.学校の実態と総合学習. れるものと考える。つまり,「自己を見つめる」という ことは,「他」を認識し,自分自身との関連性を考えた. 2.1 勤務校の実態 総合学習は子供の興味・関心が出発点となるといって. り比較する(他者を見つめる)ことによって初めて行わ. も,総合学習を通してどんな子供を育てていくかという. れる行為である。また,「他を見つめる」ということは,. 教師側の目指す生徒像を明確にしておく必要がある。こ. 他者を認めることでもある。これは,技術や能力,個性. れらは「中学校学習指導要領」(平成10年12月告示)の. や感性・人間性といった多面的な視点で「他者」を捉え. 中で具体的に示されているが,実際の教育現場では,生. ることで社会の中で果たす役割や存在の意義を考え,他. 徒の実態や学校の重点教育目標を考慮にいれて考えなけ. 者の存在を肯定的に受け入れることを意味する。. そのうえで,長所と短所を併せ持つありのままの自分. ればならない。. を受け入れ,自分の在り方や生き方について考えていく. 稿者の勤務校は,渡島半島の東海岸,函館から車で1 時間程のところに位置する南茅部町の北部にある,7学. ことが「自己を見つめる」ということになると考える。. 以上のことから,「自己を見つめる」を「自他の生き. 級(特殊学級1を含む)生徒146名,教職員15名の中規. 方を見つめる」と捉え直し,「他者の生き方から自分の. 模校である。地域の大半は,町の主要産業である昆布漁 や沿岸漁業に関係しており,共働きの家庭も多い。また,. あるべき姿や生きる姿勢を考え,それに向かって自分の. 子供は家業の貴重な働き手でもあり,本校の生徒も長期. 個性や特性を伸ばしていける力を持った生徒」を「目指. の休みには朝早くから自分の家庭や近所の家の手伝いを. す生徒像」と設定した。. している。また,校区内に学習塾がないこともあって, 放課後習い事や塾に通っている生徒が少なく,その反面,. 3.総合学習へのアプローチ. 週1・2回,家庭教師がついている家庭が多い。生徒は. 3.1 「ミニ総合学習」の導入. 町内の2校の小学校の出身者であり,7割以上が地元の 高校に進学しているのが現状である。以上のことから,. 私達は,家庭や地域を通して,あるいはテレビ・新聞・. 本校の生徒は,他からの刺激が少ない比較的狭い人間関. 雑誌などのマスメディアから情報を得ることで,「他」. 係や環境の中で生活していることがわかる。. を認識し「他」と自分自身とを比較したり,関連性を考. 一方,学校での生徒の様子は,比較的落ち着いており,. えたりすることで,社会における自己の在り方を模索し. 素直で純朴な生徒が多い。学校行事や諸活動に対する取. ている。しかし,情報が氾濫している今日の社会では,. り組みも真面目であるが,探求心が乏しく,何事にも受. 多くの場合,自分で情報を選択しそれらについてじっく. け身的な傾向が見られる。また,自分がやらなくても他. り考えるゆとりが持てない。また,情報化社会とはいっ. の者がやるだろうといった他者に依存する意識を持つ生. ても,これまでの私達は,マスメディアから一方的に発. 徒も多い。生徒と接していてよく耳にする「めんどうく. 信される情報や他者による見解を受け入れるばかりの受. ー 46 −.

(4) NO.55. 総合学習へのアプローチとしての「ミニ総合学習」. 2000.12. 動的な存在であり,自分が情報の発信者となることはま. させ,それを板書していく。この際,生徒からでた意見・. ずあり得なかったのではないだろうか。子供達の周辺に. 感想・疑問に対する他の生徒の反応を書き加えたり,場. 身近な問題や社会での出来事を気軽に話し合う場がない. のも,こういった事柄が要因となっているものと思われ. 合によっては同意見の人数を集約したり,類似したもの や関連性が強いものをある程度まとめるなどして,生徒. る。. に見やすく提示できるように心がける。. 生徒の意見や反応と関連づけながら,教師側の着眼点. 上に示した受け身気質は本校の生徒にも顕著に見ら. れ,「自分の主張を伝えたり,他の人の言ったことにつ. を示し,それについてさらに意見や感想を吸い上げ板書. いて考えたりするのがめんどくさい。」というように他 者と交流を持つことを億劫がる生徒や,「友達がほしい。」. する。 最初に設定した時間を目安に話し合いを集約し,その. 「本当の自分をわかってもらいたい。」という要望を持っ. 段階での生徒の見解や疑問・感想をまとめさせる。. ていながらそれをかなえる術を知らない生徒,自分から. 大まかな流れは上記に示したとおりであるが,以下こ れまでの実践と生徒の反応を例にあげて説明する。. 他者に働きかけることに慣れていないために交流を苦手. とする生徒が多い。. 3.2 ミニ総合学習「有珠山の噴火について」. 目の前の生徒を「他者の生き方から自分のあるべき姿. や生きる姿勢を考え,それに向かって自分の個性や特性. 2000年6月20日に実施した授業の概要を記す。. を伸ばしていける力を持った生徒」という生徒像に近づ. (1)学習の流れ. けるためには,まずこの受け身気質を変えていく必要が. ① 有珠山の噴火について思うことをできるだけ多く. 書き出させる。. ある。そこで,総合学習へのアプローチとして,身近な. ・まとまった文章にしなくてもよい。箇条書きやメ. 問題や社会の出来事について生徒が思ったことや感じた ことをひろいあげ,それを学級で広げていくという学習. モでもよしとする。. ② 一人ずつ自分の考えを発表し,他の反応を吸い上 げる。(板書の内容については後ろに添付). 活動を設定し,その学習を「ミニ総合学習」と呼ぶこと にした。. ・教師が指名して生徒に発表させ,それを板書する。. この学習活動の目的は,. ① 生徒の受動的な姿勢を能動的なものに変える。. その際に出てきた他の生徒の反応も黒板にメモす. ② 社会全体に対して興味や関心を持ち,一事象を多 面的に捉える力をつける。. る。. ・机間指導の際に「被災者がかわいそう。」「避難し ている人達はどうしているんだろう。」といった. ③ 社会の事象や他者を通して自分自身を見つめさせ. コメントが目についたので,発表が多岐に及ぶよ. る。. であり,この「ミニ総合学習」を繰り返すことによって,. う,最初の発表では被害者についてのコメント以. 社会全体に対する興味関心が芽生え,理解力・推察力・. 外のものと限定した。 ③ 生徒の意見や反応と関連した着眼点を提示し,生 徒からの意見を求める。. 分析力・発表力が身に付くだろうと思われる。学習は初. めのうち,1∼2時間程度を1単元とした教師主導型で行 われるが,学習の流れが定着した後は,生徒が主体となっ. ≪教師が用意しておいた着眼点≫. て進めていくことも可能である。. ◎=生徒の意見と関連づけて出された着眼点. 学習の大まかな流れは,まず,教師によって話し合い. ○=教師が意図的に与えた着眼点. のテーマが提示され,生徒は短時間でそれについて思う. ・=提示しないで終わった着眼点. ⑦ 社会全体に対して興味や関心を持ち,一事象を. ことをできるだけ多く学習プリントに記入する。学習の. テーマとしては,地域や社会が抱える問題,新聞記事の. 多面的に捉えるための着眼点. 抜粋・コラム・投稿など生徒の身近に存在する事柄を広. ◎有殊山周辺の住人の職業や暮らしについて。. く取り上げ,学習を通してこれまでの認識が深まったり,. ・どんな人が有殊山周辺の地域や被災者と関わっ. 多面的な視点にたって物事を捉えられるように,話し合. ているか。. う際のいくつかの着眼点を前もって用意しておく。生徒. ○有珠山が噴火したことによって,利益を得た人. は,自分の考えを書くことでテーマと向き合い,それに. は誰か?. ついての認識や見解を整理することができる。またこう. ◎有珠山の噴火という出来事と関連した事象につ. することで,話し合いの時に自分の考えと他者の考えを. いて。. 容易に比較できるという利点もある。 頃合いをみて,生徒全員に自分の考えを一つずつ発表. ◎有珠山の噴火に閲した報道の在り方はどうだっ たか?. ー 47 −.

(5) 長谷川 美栄子. (2)実際の学習活動から. ○過去の自然災害(阪神淡路大震災・北海道南西. ここでは,(資料1)「ミニ総合学習【有珠山の噴火に. 沖地震・裏仙普賢岳の噴火など)との比較. せるための着眼点. ついて】」の板書の内容に基づいて述べる。板書は生徒 の発言によって構成されていて,()は,そのコメン トに賛同した生徒の人数である。また,資料中の丸数字. ◎有珠山が噴火した時の自分の率直な感想は?. は,説明のために後付けしたものである。. ◎身近な人の意見や反応について. ①∼⑲のコメントは,主に自然現象に対する生徒の疑 問や興味・関心と捉えてよい。ここには被災者や他者に. ・自然環境への影響. ⑦ 社会の事象や他者を通して自分自身を見つめさ. ◎自分が住んでいる地域との関連性は何か。 ・もし,駒ヶ岳(近隣の活火山)が大規模な噴火 をしたら,自分の生活がどうなるか。. 対する視点が乏しい。. ⑪∼⑮では,噴火に間接的に関わる他者の存在が意識 されている。生徒は,教師が示した着眼点をきっかけに. ④ 授業に対する感想や意見と学習を通して思ったこ. して,社会の事象には利害が絡んでくることを認識した. とをまとめさせる(学習活動後の声)。. (資料1)「ミニ総合学習【有珠山の噴火について】」の板書の内容 2000年6月20日(火)1年B組(24人学級)にて実施 (D 自然の力はすごい. ② ドカーンといけばいい(12人)−−一一→③ すぐ終わるから ④ 溶岩が見たい. (9 夜に見えないから. ⑥ どうして噴火したのか(13人) ⑦ いつ・なぜ噴火が終わるのか(6人) ⑧ どうして有珠山というのか(4人) (9 あー,煙が見えた ⑲ 有珠山を見に行きたい・見に行った(8人). 噴火してよいことがあるのか?. ⑪ 他のホテルがもうかる. ⑫ 自分の見たいテレビ番組が見ることが出来ず不満(18人)−一一→⑬ 噴火した当初は、どの番組をつけても噴火のことば かりだったけど,しばらくするとニュースとして扱わ れることが少なくなる。 −→⑭ 情報が偏っている? ⑮ もう噴火してほしくない(15人). ⑲ 噴火するまで、有珠山のことを知らなかった。(12人) ⑰ 銀行のお金がとられた事件があった ⑲ 動物(馬・ペット)への害は(7人). ⑲ ペット用の住宅が不足している心配だ→⑳ ペット用の住宅を考える前に人間用の住宅について考えるべき。 住宅を用意するための予算も不足していた?! 1. ④ 税金でロケットの開発をして打ち上げ失敗(13人が知っている)するよ りこういう時に[垂室]を使うべきだ(14人) 1. ⑧ 消費税∼自分たちも税金を払っている ロケットは何のために開発されたのか? 人工衛星?!(気象情報を得るため?!). 1. ◎ 食料も国が負担しているのかな? ⑤ 洞爺湖がもったいない画・くだもの・農業・牧場) 南茅部に起こりうる自然災害は?. ⑤ 駒ヶ岳の噴火・津波・土砂崩れ. ㊦ 被害にあった住宅はどうなるのか?→⑥ 保険(生徒から災害保険というのがあるいう声)でたてなおすから大丈夫?! ⑪ 国が半分負担する?! ① 南西沖や阪神の地震時の過去を調べればわかるはず。. ① 募金・物資(服)があふれている→気に入ったものがなくて使われない。必要なものが少ない. − 48 −.

(6) 総合学習へのアプローチとしての「ミニ総合学習」. NO.55. り,情報が持つ理不尽さや偏りに気づいたようである。 ⑲∼◎については,災害をきっかけにして,税金の使. 2000.12. かも昆布がとれなかったらお母さんのいってる工場. が倒産したりするかもしれないということに気づい. われ方に話が発展している。教師側では,このような展. た。だから,噴火はいやなものだとわかった。. 開になることを予想していなかったが,他の事象との関. Y・Kさんの最初のコメントの「べつに関係ない。」は,. 連性を考えて,そこに生じる問題を捉えようとする姿が. 他の生徒のコメントにも見られ,生徒の本音として捉え. 伺える。このような横断的な視点が総合学習では,大切. ることができる。これが,学習終了時のコメントでは,「噴. になってくると考える。また,今回の学習活動では,調. 火なんてあんまり関係ないと思ってたけど,いろいろな. べたり確かめたりする活動に発展することを想定してい. 意見があって,いろいろとわかった。」と変化している。. ないため,疑問で終わってしまう部分も見られるが,生. また,「ミニ総合学習」で他の生徒の意見を聞くことで,. 徒の今後の課題として残したままにしておく。. 被災者の住宅についての認識が広がり,自分で得た情報. (診∼(Dは,災害を自分自身にも降りかかる問題として 捉えている。「大きな噴火だと昆布に影響が出てくる。」. を結びつけている様子がうかがえる。テレビ報道の在り 方についても,生徒自身の中でも疑問が生まれている点. と家の人が言っていた,というコメントから,家庭の中. に注目したい。. でも有珠山のことが話題にされて,これが生徒の認識に. A・Tさんの最初のコメントでは,有珠山の噴火と自. 影響を与えていることがよくわかる。. 分自身との関わりについては,「好きなテレビが見れな. この時の授業では,(Dについて詳しくふれる時間がと. い。」というコメントのみで,それ以外については触れ. れなかったが,⑫④◎と同じように,意外と多くの生徒. られていない。「ミニ総合学習」で昆布への影響が話題. がニュースや新聞に触れ,関連の情報を得ているものと. に取りあげられたことによって,噴火を身近な問題とし. 思われる。. て捉え思考が深まっている。 両者とも最初のコメントは,文が短く,マスメディア. (3)生徒の学習の最初の段階と終了時のコメント. から得た情報に対する単発的な疑問や感想が目立つのに. 対し,学習終了時のコメントでは,話し合いの経過を踏. 生徒の学習の最初の段階と終了時のコメントを比較す. ることで,学習活動を通して生徒がどのようなことを受. まえながら,自分自身の中で考えたことが表面化してい. けとめたのかを検討する。. て文も長くなっている。 上記の他,授業についての感想を掲げる. ・Y・Kさん. ・自分では気づかいところを他の人が出してくれてすご くおもしろかったです。一つのことからどんどんいろ. 〈最初のコメント〉∼大変だなと思った。うちがなくな. いろなところにつながっていってだんだん自分の思っ. る。うちに戻れない。べつに関係ない。食べ物がな. い?農家の人とか困る(店も)。友達に会えない。ペッ. ていることがわかりました。 ・この授業でしらないことがわかったり,けっこう. トをみれない。. 「えっ!そうなの?」というのもあってけっこうおも. 〈学習活動後の声〉∼噴火なんてあんまり関係ないと思っ ていたけど,いろいろな意見があって,いろいろと. しろかった。. わかった。税金のこと(長谷川注:住宅をふやすの. ・有珠山についていろんなことを考えたような気がしま. に税金がかかる。税金の使い道をもっと考えるべき. した。今度の総合学習の時間も,有珠山のことのよう. であるという意見を指している)とかはそうだなと. な記事がいいです。小渕総理死亡みたいなお母さん連. 思った。でも,住むのにお金がかかるからあまり住. が考えてるようなことを考えてみたいです。. まない人もいるとかいってたからその辺も考えてほ. 現時点では,文章で表現しきれない生徒も多く,興味. しいと思った。テレビでは,今有珠山のこととか昔. や関心の度合いによる個人差も見られるがるが,学習活. のことはやらないのでちょっとおかしいと思った。. 動の時の様子から判断して,他者の意見と自分の考えを. ・A・Tさん. 比較しながら話を聞くというように,を意欲的に取り組. 〈最初のコメント》∼ちゃんと噴火するのか。避難して. んでいた生徒が多かったように思う。. いる人達は超かわいそ−。噴火している近くの家の. 3.3 ミニ総合学習「ゴミ問題について」. 人達もかわいそ−。みんなはどこに逃げるか。どう. して噴火したのか。好きなテレビが見れない。いき. 2000年6月22日に実施した授業の概要を記す。. なり見ていたテレビが有珠山のテレビになった。. (1)学習の流れと実際の学習活動. この時の実践も【実践1】と同じ様な流れで取り組ん. ≪学習活動後の声〉∼最初は有珠山が噴火してほしかっ. だ。(資料2)「ミニ総合学習【ゴミ問題について】」の. たけど,臼尻に近い所だったら漁業にも影響が,し. − 49 −.

(7) 長谷川 美栄子. (資料2)「ミニ総合学習【ゴミ問題について】」の板書の内容 2000年6月22日(木)1年B組(24人学級)にて実施 ダイオキシンがでるから. ・なんでも燃やしてほしくない→. 1(ダイオキシンについて). 見えないからピンとこない なんで発見が遅れたのか ・分別しないとゴミを取りに来る人が苦労する. 空気がおいしくない. ・南茅部はゴミに関わるきまりがすくない(17人) ・何も思わない(17人) ・家の前にゴミを捨てないで(20人). ・別に関係ない. ・生きている間が大丈夫ならいいや(5人)←自己中心的?! ・ゴミを拾うのがめんどうくさい(17人). ∴・■ ̄∴ ・ゴミを捨ててもまわりに注意する人がいない ・海にゴミをすてていたのを見た. ・港にゴミ(生ゴミ)がいっぱいある ・缶バックもやってもきりがない(14人) ・無法投棄がふえている ゴミと関連がある人達(ゴミがでないとこまるのは). ・浜に外国のゴミが流れてきた. ・日本は燃やせないものを他の国に送っている. ・ゴミの再生業者. ・ゴミ問題と騒いでいるわりには努力がたりない。. ・発電所・発電所. ・ゴミを集める人. ・ゴミ関係のものを作っている人 ・ホームレス. ・不要なものを処分した後新しいものを買うから 新製品をつくったり販売している人. ・環境汚染はよくない(19人) ・地球はどうなるのか. ・ゴミは汚いし,海が汚れる. 昆布の同じ?!. ・空気が汚くなる ・緑がなくなる ・ゴミの分別をしよう −−→. 生ゴミ. 電化製品 容器(空き缶・ペットボトルなど). 一−−−−−−−→使えるものも. 紙→→再生 プラスチック. ゴミは多いし臭いしきたない ゴミはじゃまだ. →使えなくなる. 使わなくなる. 板書の内容と,生徒の学習の最初の段階と終了時のコメ ントによって,学習活動のだいたいの様子が把握できる. ・K・Yくん ≪学習活動後の声》∼別に関係ないと思っている人が意 外に多くてびっくり!(自分もだけど). と思われるため詳細については省略する。. ・M・Nさん. (2)生徒の最初のコメントと学習活動後の声. ≪最初のコメント≫∼ゴミ. を置く時以外に置かない。工. ・Y・Sさんの場合. 夫して置く方がいいと思う。ちゃんと分別してなげ. 《最初のコメント≫∼缶バックをやってもきりがない。. ないとゴミを取りに来る人が苦労する。ゴミを捨て る時はちゃんとゴミ箱に捨てる。. なんでも燃やすからダイオキシンとかでてくる。. ≪学習活動後の声≫∼自分はゴミはどうでもいいやあ∼. ≪学習活動後の声≫∼ゴミ. について今までほとんど無関. と思っていたけど,今回で「あっ,けっこう自分で. 心だったけども,今日話し合って今度から気をつけ. やってることあるじゃん」と思うことが多かった。. ようと思った。自分だけじゃなくて,ほかの人のこ. 人は反省することが多いのかも?と思った(自分も). とを考えるのがいいと思った。今までゴミを捨てて − 50 −.

(8) 総合学習へのアプローチとしての「ミニ総合学習」. NO.55. たけど,今度からは気をつける。上(最初)にかく. 2000.12. と横断的に結びつくことも考えられ,多面的な視点でよ り深く物事を捉えられるようになる。. ことはもっといっぱいあったと思う。もっと真剣に. 考える。. しかし,「ミニ総合学習」では1つのテーマを1−2. ・M・Nさん. 時間とするため,調べ学習や体験学習と言った活動まで. 《最初のコメント》∼ダイオキシンとかって,なんとな. 発展させて取り組むことが出来ない。したがって,次の. くわかるけど,なんか……。汚いような……。_ユー. 段階として,このような活動を取り入れた長時間を配当. スとかでやってるゴミ焼却場って,いんちきくさい。. する総合学習が想定される。. うそばっかじゃん。身近そうだけどそんなに身近だ. 「ミニ総合学習」の学習活動は,長時間の総合学習の 随所でも取り入れられ,調べ学習や体験学習によって身. とは思えない。ゴミだしてるのは自分たちだけど,. きちんと始末できてない。. に付いた知識や経験を,どのように受けとめ,どう生か すかに発展させる時にも必要な視点となると思われる。. ≪学習活動後の声》”自分のまわりにあっても大して関. 係ないような気がする。ゴミは出るんだからしょう. 補記:総合学習における「地域」とは何か。. がない。これだから自己中心的なんだ。ちょっとだ. け,「他人のことだからって考えない。」という気持 総合学習では,何を「地域や学校の特色」とするかが. ちが小さくなった。でもまだ自分が第一ですが……。. 問題となるが,「体験学習で地域やふるさとを扱うこと (3)2つの実践をまとめて. =総合学習」であると短絡的に捉えるのは危険である。. 実践で示した通り,これらの学習活動は,生徒の見解. 「ミニ総合学習」ではテーマの1つとして,地域やふるさ. や疑問が学習活動の原動力であり,その一方で生徒のほ. とを扱うこともあるが,「地域や学校の特色」を,生徒. とんどが内容を整えて発言することが出来ない生徒の実. の認識を形成する1つの要素と捉え,さまざまなテーマ. 態を踏まえ,生徒のちょとしたつぶやきを拾い上げ,そ. を考える際に,「地域・家庭・学校」という視点を着眼. れを受け入れることから始めた。また,自分の意見を発. 点として持ち,「地域・家庭・学校」について考えること. 表することが苦手な生徒であっても,他者に賛同するこ. ができる生徒を育てることを目指すべきである。 「ミニ総合学習」や「総合学習」でいかなるテーマを. とで意見の交流に参加し情報の発信者となることができ. ると考え,態度の表明を促した。. 取り扱っても,自分の身近な問題(自分自身や家庭・地 域)としてそれらを捉え,地域の実態と比較したり,自. 1つのテーマに対して1∼2時間程度を配当すること で,いろいろなテーマについて集中して考えることがで. 分自身の在り方や地域の在り方,自分と地域との関わり. きる。さらに,学習したことが蓄積されると,複数のテー. について考えることが,生徒にとっては大切である。. マに共通することや相互の関連性などにも目が向くよう. になり,多面的にものごとを捉えられるようになる。 【注】. 【実践1】では,噴火の被災者を気の毒に思う反面, 自分の好きなテレビが見られないという自己中心的な一. 1.河村潤子・藤田和光・湊屋治夫・坂口浩司編著『新. 面に気づいた生徒が【実践2】のゴミ問題でも人間の利. 中学校教育課程講座 総則』(2000年3月・ぎょうせ. 己的な部分を指摘し,全体でそのことが話題となった。. い). また,日常生活においても,「これって,こないだ総合. 学習でやったことだよね。」というセリフを耳にするよ 【参考文献】. うになり,生徒が少しずつ変容しているのを実感する。 社会の事象や他者を通して自分自身を見つめるといっ. ・文部省『中学校学習指導要領(平成10年12月)』. た認識も芽生えているようである。. ・児島邦宏・佐野金吾編『中学校「総合的な学習の時間」 研究の手引き』(1997年・明治図書). ・加藤幸次編著『総合学習の実践』(1997年4月・黎明. 4.総合学習と「ミニ総合学習」の学習活動上. 書房). の関連. ・平野朝久編著『子どもの「学ぶ力」が育つ総合学習』. 「ミニ総合学習」では,国際理解,情報,環境,福祉,. (1997年8月・ぎょうせい) ・田中熊次郎編『講座教職課程演習4 教育心理』(1976. 健康などを含めた課題を数多くこなすことで,生徒の興 味や関心をこれらにむける役割を果たしている。さらに,. 年4月・協同出版). 「ミニ総合学習」で取りあげられた事柄が,生徒の知識. ー 51−.

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