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臨床看護師の調査からみた小児集中治療室の看護の特徴と展望

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臨床看護師の調査からみた小児集中治療室の看護の

特徴と展望

著者

押切 美佳

学位授与機関

Tohoku University

(2)

修士論文

臨床看護師の調査からみた

小児集中治療室の看護の特徴と展望

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 家族支援看護学領域 小児看護学分野 押切 美佳

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目次 1. 研究の背景 ... 1 1.1 小児集中治療室(PICU)とは ... 1 1.2 PICU における看護研究 ... 1 1.3 ICU における看護研究 ... 2 1.4 海外における小児クリティカル看護研究 ... 2 1.5 研究疑問および着眼点 ... 2 2. 研究目的 ... 3 3. 研究の意義 ... 3 4. 研究方法 ... 3 4.1 研究デザイン ... 3 4.2 調査対象 ... 4 4.2.1 質問紙調査 ... 4 4.2.2 インタビュー調査 ... 4 4.3 調査期間および調査方法 ... 4 4.3.1 質問紙調査 ... 4 4.3.2 インタビュー調査 ... 5 4.4 調査内容 ... 5 4.4.1 質問紙調査 ... 5 4.4.2 インタビュー調査 ... 6 4.5 分析方法 ... 6 4.5.1 質問紙調査 ... 6 4.5.2 インタビュー調査 ... 7 4.6 倫理的配慮 ... 7 5. 結果 ... 8 5.1 質問紙調査 ... 8 5.1.2 基本属性 ... 8 5.1.3 分析結果 ... 9 5.1.3.1 PICU と小児病棟の有意な得点の差 ... 9 5.1.3.2 PICU と ICU の有意な得点の差 ... 10 5.1.3.3 PICU と小児病棟および ICU の共通項目 ... 12 5.2 インタビュー調査 ... 13 5.2.1 基本属性 ... 13 5.2.2 分析結果 ... 13 5.2.2.1 PICU 看護の現状と特徴 ... 13

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5.2.2.1.1. PICU 環境の現状と看護 ... 13 5.2.2.1.2 対象事例の現状と看護 ... 14 5.2.2.1.3 患者に対する看護の現状 ... 15 5.2.2.1.4 家族に対する看護の現状 ... 15 5.2.2.1.5 看護師の現状 ... 16 5.2.2.2 PICU 看護の展望... 17 6. 考察 ... 18 6.1 質問紙調査 ... 18 6.1.1 小児看護との違い ... 18 6.1.2 集中治療看護との違い ... 19 6.1.3 小児看護と集中治療看護の共通点 ... 21 6.2 インタビュー調査 ... 22 6.2.1 PICU 看護の現状と特徴から必要な看護と環境 ... 22 6.2.1.1 広い視野で患者と家族を捉える ... 22 6.2.1.2 患者の人権を尊重したかかわり ... 23 6.2.1.3 家族との情報共有 ... 24 6.2.1.4 看護独自の機能を発揮できる環境... 25 6.2.2 PICU 看護の展望 ... 26 6.3 総合的な考察 ... 26 6.3.1 必要とされている看護の特徴... 26 6.3.2 PICU 看護の展望 ... 28 6.4 研究の限界 ... 30 7. 結論 ... 30 8. 謝辞 ... 31 9. 引用文献 ... 31

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図1 PICU 看護師の現状に関する概念枠組み・・・・・・・・・・・・・・ 37 図2 PICU 看護の概念枠組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 表1 質問紙の構造と質問項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 表2 看護ケア機能の説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 表3 ターゲットの説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 表4 質問紙調査の施設協力数及び回答者数とその内訳・・・・・・・・・・ 42 表5 質問紙調査の基本属性表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 表6 PICU と小児病棟と ICU の多重比較および質問項目と平均順位・・・ 45 表7 PICU と小児病棟の得点の比較および経験による得点の比較・・・・・ 50 表8 PICU 看護の小児看護との違いにおける質問紙の構造・・・・・・・・ 52 表9 PICU と ICU の得点の比較および経験による得点の比較・・・・・・ 53 表10 PICU 看護の ICU 看護の違いにおける質問紙の構造・・・・・・・・ 55 表11 PICU と小児病棟および ICU の共通項目・・・・・・・・・・・・・ 56 表12 PICU と小児病棟および ICU の共通項目における質問紙の構造・・・ 58 表13 インタビュー調査参加者の基本属性・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 表14 PICU 環境の現状と看護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 表15 対象事例の現状と看護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 表16 患者に対する看護の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 表17 家族に対する看護の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 表18 看護師の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 表19 PICU 看護の展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74

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1 1. 研究の背景

1.1 小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit 以下 PICU)とは

小児集中治療とは,各分野の診療科が協力して一人の小児重症患者の治療を 行う体制であり,病院全体,地域全体の重症小児に対してのサービスを提供する 分野である1) 。1967 年にフィラデルフィア小児病院で初めて PICU が設立され, 小児重症患者は PICU に集約して治療を行うことで治療成績の向上が得られる として,欧米諸国を中心に発展普及した。 日本での独立型PICU 設立は 1981 年であるが,小児救急における重症患者を 積極的に収容できる機能を持ち,専従医が管理する本格的なPICU 開設は 2002

年 1 )であった。日本においても全国の集中治療室(Intensive Care Unit 以下

ICU)で散発的に管理されている小児重症患者を積極的に PICU に集約するこ とで,今後さらなる救命率向上が期待できる可能性が示唆されている2)。平成24 年の診療報酬改定では,小児救急医療の充実を図るために,小児特定集中治療室 管理料3)が新しく設定された。しかし,小児人口から全国51 か所に PICU を設 置することが望ましいと提言されている4)ものの,2016 年現在小児特定集中治 療室管理料もしくは特定集中治療室管理料を算定して稼働している PICU は全 国27 施設,約 200 床である。このような状況から日本での小児集中治療は 20 年の歴史の中で,いまだ施設数,機能面で成熟期を迎えていない5)といわれてお り,発展途上であるといえる。以上のことから,今後全国でPICU が設立され, PICU 看護に携わる看護師も増えていくことが予測され,看護師の教育体制の構 築や研究の広がりもこれからであるといえる。 1.2 PICU における看護研究 日本小児集中治療研究会のワークショップでは,子供とどう向き合うか, PICU に入室している子供と家族の援助,PICU 患者のフォロー・アップ,死期 が近づいた子供のきょうだいへの支援,PICU に入室した子供の家族に看護師は どのように関わっているのか6)などが取り上げられているものの,それらの研究 報告は少ない。研究報告としては,終末期医療の家族看護7)89の事例報告,家 族支援の事例報告10)11,家族に対するインタビュー調査12,鎮静スケールの開 発13)14と看護師によるその現状調査15,褥瘡予防の報告16,看護師の患者の 主体性の捉え方17),新任者に対する取り組み18,異動してきた看護師の体験19

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2 などがある。しかし,複数のPICU を対象とし PICU 看護を総合的に示した研 究はない。1993 年の小児看護雑誌では重症患児の看護の問題点とその援助20) 特集されているが,研究から得られた内容ではない上に20 年以上前と現代の医 療の違いは大きいと考えられる。以上のことから,日本の PICU における看護 の特徴を総合的に示した研究はない。 1.3 ICU における看護研究

PICU と同様に重症患者を対象とした看護ユニットに ICU がある。ICU の看 護ケアの特徴を知ることは,PICU 看護ケアの特徴を把握するうえで参考にな る。ICU における重症患者看護ケアの特徴としては,環境調整,睡眠への援助, 家族への援助,疼痛の管理,ストレス緩和援助,リハビリテーション,面会時の 配慮,食事・排泄等の介助21)などが示されている。また,ICU における看護ケ アを総合的に捉え構造化した研究では,患者ケアのターゲット,看護ケアの機能 が示されている22)2010 年以降は,「クリティカルケア看護師の侵襲的医療処 置実施と医療機器装着時の生活行動援助ケアに関する全国調査」23)が行われ, 「重症患者家族のニーズに対する認知構造モデル24)」で看護師の認識している 看護を総合的に示した研究が行われている。 1.4 海外における小児クリティカル看護研究 海外においては,国際学会にて臨床看護師と研究者により小児クリティカル 看護に関する研究課題が特定されている。そこでは研究課題の優先順位として, 生命維持装置管理,危機管理方法,快適な処置の提供,ケアリング,危険防止, 終末期のケアと意思決定,臨床アセスメントとチームワークの向上,モニタリン グ,道徳的なリーダーシップとコーチングやメンタリング25)があげられ,必要 な看護が総合的に示されている。 1.5 研究疑問および着眼点 国内においては PICU 看護の基礎研究が行われていないのが現状であり, PICU 看護を総合的に示す必要がある。PICU で必要とされている看護について 示されていないことで,PICU 看護師は看護を模索し,困難を抱える場合が少な くないと予測される。困難は前向きに看護を行う意欲を削ぐ要因となり,意欲低 下や専門とする看護分野の変更につながる可能性がある。それは PICU 看護発

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3 展を妨げる要因になると考えられる。また,PICU ではクリティカルなケアが求 められるという性質上,救命や治療中心で業務を行い,小児看護の視点を持てな いまま子供とかかわっている可能性も考えられる一方で,独自の小児看護を展 開している可能性もあり,実際に行われている看護を共有することが重要であ ると考えた(図1)。 2. 研究目的 本研究の目的は,臨床看護師の調査から PICU の看護の特徴と展望を示すこ ととした。 3. 研究の意義 PICU 看護に関する研究は,多施設を対象とした研究がないことに加えて,他 の看護領域と比較した研究は行われていない。多施設を対象とし,他の看護領域 との比較を行うことで,PICU 看護の特徴を具体的に示すことができると考えら れる。PICU で行われている看護の特徴と展望を示すことは,看護師の看護実践 の一助となり,目標や役割意識を持ちやすくなると考えられる。そして,実際に 行われている PICU 看護実践を共有することで,PICU 看護全体の質の向上に つながると考える。目指す看護が明確となりPICU に看護師が定着することは, ケアを提供される子供とその家族のQOL 向上へつながり,看護実践の開発にも 役立つ。また,これから新設されていくであろう PICU の看護モデルとして役 立ち,PICU 看護研究の基盤となると考えられる。 PICU は対象が小児であること,集中治療の場であることが特徴として考えら れるため,質問紙調査の仮説は以下の3 点とする(図 2)。 1) PICU看護は,小児看護とは違う特徴を持つ 2) PICU看護は,集中治療看護とは違う特徴を持つ 3) PICU看護は,小児看護と集中治療看護の両方の特徴を併せ持つ 4. 研究方法 4.1 研究デザイン 全国の PICU 看護を全体的に捉えることおよび他の看護領域と比較すること に加えて,実際に行われている看護の具体的な内容を知るために,以下の 2 つ

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4 の方法で調査を行った。 1) 自記式質問紙調査 2) 半構造化インタビュー調査 4.2 調査対象 4.2.1 質問紙調査 研究対象者は,全国のPICU,小児病棟,ICU で勤務する看護師とした。以下 に対象者の詳細を示した。 PICU 看護師は,小児特定集中治療室管理料を算定している 1 看護単位,もし くは患者対象が15 歳未満で特定集中治療室管理料を算定し,PICU として稼働 している 1 看護単位で勤務する,当該部署経験 2 年目以上の看護師とした。成 人患者が同じユニットに入院する体制もしくは心臓に特化している PICU を除 外した。 小児病棟看護師は,日本小児総合医療施設協議会26)に登録されている施設お よびICU 対象施設の小児病棟とし,小児血液腫瘍,小児固形腫瘍,慢性腎不全, ネフローゼ症候群,糖尿病,内分泌疾患,気管支喘息,てんかん,アレルギー疾 患を対象とした病棟で勤務する,当該部署経験2 年目以上の看護師とした。 ICU 看護師は,小児病棟を有する集中治療専門医研修施設27)で,特定集中治 療室管理料を算定している 1 看護単位で勤務する,当該部署経験 2 年目以上の 看護師とした。 4.2.2 インタビュー調査 質問紙調査の対象者で,関東以北の8 床以上を有する PICU 施設および東北, 北海道は病床数を問わない PICU 施設で勤務するインタビュー調査に同意が得 られた看護師とした。インタビュー調査が実施可能な協力施設であり,母集団の 特性が失われない範囲の対象施設に絞り込むために,上記の施設を対象とした。 4.3 調査期間および調査方法 4.3.1 質問紙調査 調査は 2016 年 5 月から 9 月に実施した。全国の適格基準を満たす PICU22 施設,小児病棟142 施設,ICU109 施設に調査協力を依頼した。いずれも対象施

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5 設所属長へ郵送にて研究協力依頼を行い,書面にて同意書の取得を行ったうえ で,配布可能な質問紙数の提示を得た。質問紙は施設に配送し,一週間をめどに 郵送法にて回収した。質問紙調査対象者は質問紙の返送をもって同意とした。 4.3.2 インタビュー調査 調査は 2016 年 5 月から 9 月に実施した。インタビュー調査協力者の選定方 法を以下に示した。 関東以北の8 床以上を有する PICU 施設および東北,北海道の病床数は問わ ない PICU 施設には質問紙調査の際にインタビュー協力者を募る事も含めて同 意書を取得した。質問紙調査の際にインタビュー調査に協力表明が得られた PICU 看護師には後日連絡し調整を行い,協力者所属施設内のプライバシーの確 保できる個室にて60 分を目安に半構造化インタビュー調査を実施した。インタ ビュー内容は協力者に同意を得た上でIC レコーダーに録音し,インタビュー後 速やかに逐語録を作成した。また,研究者はインタビュー中にフィールドノート を作成し,協力者の非言語的な反応や観察事項を記録して分析上の参考データ とした。インタビュー終了の際には,十分話せたかどうかを確認した後に終了し た。質問紙調査の回答とインタビュー協力者は連結不可能匿名化とし,質問紙調 査の回答結果は用いず自由に語ってもらった。 4.4 調査内容 4.4.1 質問紙調査 質問紙は,集中治療看護,家族看護,小児看護の3 つについて先行文献を参考 に作成した(表1)。質問紙の内容を以下に示した。 集中治療看護については,「集中治療における看護の分析とその構造化(上泉 1994)28) 」を基に作成し,看護ケア機能(表 2)ごとに看護ケアのターゲット (表3)とその看護ケアのカテゴリで構成した。看護ケア機能の「緩衝機能」と は,環境が患者に対して侵入することに対応する機能,生命のために不可欠であ るけれども患者にとっては侵入的結果をもたらすという両価的な状況において 始動される機能である。「保護膜機能」とは侵入から患者を守る防壁となる機能 で,患者自身が持つ個人的な空間からの防御機能を保護し保証する機能,看護師 自身が防護膜を担う機能である。「修復の機能」とは内的・外的侵入によって障

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6 害を受けた部分を修復する機能である。「補助の機能」とは不足するなど変化し た部分を補う機能,「情緒的支持の機能」とは心理的情緒的側面を支える機能で ある。「橋渡し機能」とは社会化を助ける機能である。「家族看護における機能」 として,「周産期・小児医療におけるFamily-Centered Care-概念分析―(浅井 2013)29)

」「NICU の看護師が認識する家族中心ケア(Family-Centered Care)

の利点および促進・阻害要因(浅井ほか2015)30)」を基に家族中心ケアの実践 についての質問項目を作成した。「小児看護における機能」としては,「小児看護 における看護実践を記述する用語の構造と特徴(二宮 2007)31)」での成人看護 領域にない小児看護領域独特の行為ラベルを基に,患者が小児であるという対 象の特性から行っている看護機能についての質問項目を作成した。 質問それぞれに,「していない」「あまりしていない」「どちらかというとして いる」「している」の4 段階で回答を求めた。背景と属性については,性別,年 齢,看護師養成課程,看護師経験年数,現病棟経験年数,小児看護経験年数,現 病棟病床数,看護方式,ICU 指示制度,面会状況とした。 質問内容は,研究者および複数の小児看護学研究者,複数の小児看護経験看護 師で妥当性と適切性を合議したうえで作成した。 4.4.2 インタビュー調査 PICU の看護の現状から特徴と展望を知るために,PICU だからこそ大切にし ていることや重要である看護はどのようなものか,PICU における家族看護につ いてどのように考え,どのようなことを行っているか,PICU 看護において今後 あなたが必要と考える看護とはどのようなものか,についてたずねた。インタビ ューガイドの妥当性と適切性は,研究者および複数の小児看護学研究者と合議 し作成した。 4.5 分析方法 4.5.1 質問紙調査 4 段階で求めた回答は点数化し,「していない」を 1 点,「あまりしていない」 を2 点,「どちらかというとしている」を 3 点,「している」を 4 点とし,点数 が高いほど行っている意識が高く,点数が低いほど行っている意識が低いとし た。

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7 質問紙から得られた結果は統計学的手法を用いて分析を行った。分析には SAS 9.4 を用いた。回答には正規性が認められなかったため,2 群の得点の比 較にはMann-Whitney の U 検定(正確確率検定)を用いた。71 の質問項目の うち小児看護に特化しない共通の58 の質問項目に対する回答は,PICU と小児 病棟,および ICU で 3 群間多重比較を行い,Bonferroni 法32) にしたがって有 意水準0.0167 とした。71 の質問項目のうち小児看護に関連する 13 の質問項目 は,PICU と小児病棟で比較を行うため有意水準 0.05 とした。そこで PICU に 有意な得点の差のあった質問項目について,PICU 経験による回答の比較(有意 水準0.05)を行った。PICU 経験年数は中央値 4.0 で 2 群に分け,1 から 3 年目 をPICU 経験前群とし,4 年目以降を後群とした。次に,PICU 経験により有意 な得点の差があった質問項目について,看護師経験と小児看護経験による回答 の比較(有意水準0.05)を行った。看護師経験年数は中央値 12.0 で 2 群に分け, 2 から 11 年目を看護師経験前群とし,12 年目以降を後群とした。小児看護経験 年数は中央値10.0 で 2 群に分け,2 から 9 年目を小児看護経験年数前群とし, 10 年目以降を後群とした。 4.5.2 インタビュー調査 録音したインタビュー内容から逐語録を作成した。逐語録を精読し,PICU で 行われている看護内容と現状および展望について語られた部分を,文脈に留意 しながら関連する内容を抽出し,協力者の思いと看護について意味内容を残す ように整理し質的内容分析33)によりコード化した。コード間のまとまりをカテ ゴリ化し,類似しているカテゴリごとに集め,サブカテゴリ,カテゴリへと体系 化した。分析過程では常に逐語録と照らし合わせ,語り内容の確認を行いながら 進めた。分析内容は,研究者および質的研究法について経験のある複数の小児看 護学研究者と小児看護経験のある看護師で複数回にわたり合議し,信頼性と妥 当性の確保に努めた。 4.6 倫理的配慮 本研究は,東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認(受付番号:2016-1-49)を受けたうえで,各調査施設の了承を得て実施した。質問紙調査対象者に は文書にて,またインタビュー協力者にはプライバシーが確保された場所で文

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8 書と口頭にて,調査の目的と意義,協力の自由意思,プライバシーの保護および 個人情報の保護方法,調査の協力によって期待される利益および不利益,結果の 公表方法,調査中および調査終了後の問い合わせ先について説明した。調査への 同意については,質問紙調査は返送をもって,インタビュー協力者は同意書の取 得を持って確認した。質問紙調査とインタビュー調査は,連結不可能匿名化にて 実施した。質問紙調査表および,インタビュー調査にて取得した録音データとフ ィールドノートは,東北大学大学院医学系研究科小児看護学分野内の施錠でき る室内の鍵のかかるキャビネット内にて保管した。電子データは,外部とつなが らない単独のメディアに保管し,そのメディアは鍵のかかった同施設内のキャ ビネットで保管した。データを使用する時にはネットワークと切り離した状態 で使用し,インタビュー内に個人情報にかかわる情報が出た場合は,逐語録にす る際に協力者とは関連のない記号等に置き換えた。 5. 結果 5.1 質問紙調査 協力施設数および回答者数と内訳を表4 に示した。PICU では,10 施設(45.5%) から協力が得られ,質問紙を180 部配布し 100 部(55.6%)回収した。非有効 回答1 部を除く 99 を分析対象とした。小児病棟では,26 施設(18.3%)から協 力が得られ,質問紙を487 部配布し 296 部(60.8%)回収した。非有効回答 4 を除く292 を分析対象とした。ICU では,11 施設(10.1%)から協力が得られ, 質問紙を181 部配布し 104 部(57.4%)回収し,104 を分析対象とした。 5.1.2 基本属性 基本属性を表5 に示した。性別は,いずれも女性が多く,PICU では 85.6%, 小児病棟では93.1%,ICU では 81.7%であった。年齢層では,30 から 39 歳が PICU(42.4%),ICU(42.3%)で最も多く,小児病棟では 29 歳以下(53.8%) が最も多かった。看護師免許取得学校は,PICU(55.7%),小児病棟(53.8%), ICU(58.3%)でいずれも専門学校が最も多かった。交代勤務は PICU で三交代 制(74.8%)が最も多く,小児病棟(55.5%)と ICU(75.7%)は二交代制が多 かった。看護方式はPICU ではプライマリーナーシング(46.8%)が最も多く, 小児病棟(44.6%)と ICU(50.0%)はチームナーシングが多かった。集中治療

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9 領域において,すべての指示が集中治療科医師から出されるクローズドICU 方 式はPICU(53.2%)で多く,ICU(65.0%)は各診療科医師から指示が出され るオープンICU 方式が多かった。面会は,PICU(53.1%),小児病棟(52.0%), ICU(79.0%)でいずれも面会時間設定ありが最も多かった。病床数平均は, PICU9.9 床(SD=2.3),小児病棟 32.0 床(8.4),ICU12.4 床(5.6)であった。 現病棟経験年数平均は,PICU4.9 年(2.9),小児病棟 4.7 年(3.8),ICU5.3 年(3.4)であり,ICU が高かった。看護師経験年数平均は,PICU12.5 年(7.0), 小児病棟10.0 年(8.1),ICU9.9 年(5.5)であり,PICU が最も高かった。小 児看護経験年数平均は,PICU10.6 年(6.4),小児病棟 8.1 年(6.7),ICU2.2 年 (3.8)であり,PICU が最も高かった。 5.1.3 分析結果 PICU と小児病棟および ICU では多くの項目に有意な得点の差があった(表 6)。仮説に沿ってターゲットを【 】,看護ケアのカテゴリを『 』,質問内容を [ ]として,結果を以下に示した。 5.1.3.1 PICU と小児病棟の有意な得点の差 71 の質問項目のうち 32 項目で有意な得点の差があった(表 7,8)。PICU 看 護師が行っている意識が高かった質問項目は11 項目であり,行っている意識が 低かったのは21 項目であった。 行っている意識が高い項目としては,【生命維持システム】の看護ケアのカテ ゴリでは『生理学的変化への素早い対応』『与薬時の体重確認』『皮膚損傷予防対 策』『機器類着脱時の事故抜去予防』『患者にあわせた用手人工呼吸』であった。 【内的自己システム】では『個人の尊重』『時間の流れの提供』であった。【日常 生活行動のシステム】では『行動の指示・行動化』であった。【小児看護】では 『母子分離への配慮』『愛着形成促進への援助』『成長発達にあわせた抑制』であ った。 行っている意識が低い項目としては,【内的自己システム】では『安全感の保 証』の[患者にこれから行う医療行為,ケアを予告する][医療行為によっても たらされる感覚を事前に患者に伝える][患者にしっかり看ているというメッセ ージを伝える][患者になにか変化があったとき,患者自身に理由を伝える][患

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10 者にこれから行う医療行為は心配いらないことを伝える][患者のできる行動を 示し,少しずつ促している]の6 項目であった。『個人の尊重』では[患者が自 分で決めることができることを示し,決めることを支援する][患者が覚醒して いるとき,ケアや処置を行ってよいか尋ねて許可を得る]の 2 項目であった。 『時間の流れの提供』では[患者にケアや処置などのスケジュールを伝える][患 者に今後どのようになるか,退院後を想定した話を伝える]の2 項目であった。 【保護膜のシステム】での『パーソナルスペースの保護』は[患者が自由にでき る範囲(パーソナルスペースやテリトリー)を拡大する][患者のパーソナルス ペースやテリトリーを意識して,入りすぎないように行動する][患者に装着さ れている機器やチューブに,患者が触れる,つかんでいるなどをあえて見守る] の3 項目であった。【日常生活行動のシステム】の『行動の指示・行動化』では [患者が行動できるように,患者がどのようにしたらよいのかを伝えたり,他の 行動の提案をしている][患者がこれからとる行動を,患者と一緒に試す]の 2 項目であった。【社会的つきあいのシステム】では『日常的な会話』であった。 【家族への情報提供と情報共有】では『家族に対するケアや養育のイメージ作り』 『家族間の情報共有と交流支援』であった。【小児看護】では『セルフケア援助』 『学習の援助』『仲間への参加援助』であった。 有意な得点の差があった 32 の質問項目のうち 6 項目は PICU 経験による有 意な得点の差があった。【内的自己システム】では『時間の流れの提供』の[患 者に今後どのようになるか,退院後を想定した話を伝える]の1 項目であった。 【日常生活行動のシステム】では『行動の指示・行動化』の[患者がこれからと る行動を,患者と一緒に試す]の1 項目であった。【小児看護】では『セルフケ ア援助』『学習の援助』『仲間への参加援助』であった。全てでPICU 経験年数前 群より後群が行っている意識が低かった。PICU 経験による有意な得点の差があ った 6 項目のうち『セルフケア援助』は看護師経験による有意な得点の差があ り,看護師経験年数前群に比べて後群が行っている意識が高かった。小児看護経 験による有意な得点の差はなかった。 5.1.3.2 PICU と ICU の有意な得点の差 58 の質問項目のうち 31 項目で有意な得点の差があった(表 9,10)。PICU 看護師が行っている意識が高い質問項目は 5 項目であり,行っている意識が低

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11 い質問項目は26 項目であった。 行っている意識が高い項目としては,【生命維持システム】では『与薬時の体 重確認』『患者にあわせた用手人工呼吸』であった。【家族への情報提供と情報共 有】では『家族が実施できる子供のケアに関する情報提供』『家族に対する患者 のケア参加促進』であった。【内的自己システム】では『努力への評価』であっ た。 行っている意識が低い項目としては,【生命維持システム】では『治療的体位 の変換・保持』であった。【内的自己システム】では『安全感の保証』の[患者 にこれから行う医療行為,ケアを予告する][医療行為によってもたらされる感 覚を事前に患者に伝える][患者にしっかり看ているというメッセージを伝える] [患者になにか変化があったとき,患者自身に理由を伝える][患者にこれから 行う医療行為は心配いらないことを伝える][患者のできる行動を示し,少しず つ促している]の6 項目であった。『個人の尊重』では[患者が自分で決めるこ とができることを示し,決めることを支援する][患者が覚醒しているとき,ケ アや処置を行ってよいか尋ねて許可を得る]の2 項目であった。『情報提供によ る現実認知の促進』は[患者に治療上挿入されている状況,掛物がかかっている 状況など,患者の現実的な姿を伝える][患者には見えない処置や看護ケアにつ いて,状況を伝える][時間,場所,出来事などに関する患者の誤った記憶をそ の都度訂正し,現実的な情報を提供する][患者が覚醒したとき,現在どこにい るのか,そこがどういう場所か周囲に何があるかなど伝える]の 4 項目であっ た。『感覚への刺激の提供による現実認知』は[患者に触れたり,握ったりして 患者が触覚から現実を認知できるようにする][患者に声をかけて,患者が会話 から現実を認知できるようにする][患者にテレビなど見えるようにする,勧め るなど,患者が視覚から現実を認知できるようにする]の3 項目であった。『時 間の流れの提供』は[患者が入室してから今までの経過を,患者に伝える][患 者に現在の年月日,時刻を伝える][患者にケアや処置などのスケジュールを伝 える][患者に集中治療室から出るタイミングなど,経過の見通しを伝える]の 4 項目であった。【保護膜のシステム】の『パーソナルスペースの保護』は[患 者から見える位置で業務を行っているとき,患者に注意を払いながらあえて関 心を示さない][患者に装着されている機器やチューブに,患者が触れる,つか んでいるなどをあえて見守る]の 2 項目であった。【日常生活行動のシステム】

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12 の『行動の指示・行動化』は[患者が行動できるように,患者がどのようにした らよいのかを伝えたり,他の行動の提案をしている][患者がこれからとる行動 を,患者と一緒に試す]の2 項目であった。【社会的付き合いのシステム】では 『日常的な会話』であった。【家族への情報提供と情報共有】では『きょうだい に対する情報提供』であった。 有意な得点の差があった 31 の質問項目のうち 4 項目は PICU 経験による有 意な得点の差があった。【内的自己システム】では『努力への評価』と『情報提 供による現実認知促進』の[患者に治療上挿入されている状況,掛物がかかって いる状況など,患者の現実的な姿を伝える]であった。【生命維持システム】で は『治療的体位の変換保持』であった。【日常生活行動のシステム】では『行動 の指示・行動化』の[患者がこれからとる行動を,患者と一緒に試す]であった。 全てで PICU 経験年数前群より後群が行っている意識が低かった。PICU 経験 により有意な得点の差があった 4 項目で看護師経験による有意な得点の差はな かった。しかし,『努力への評価』で小児看護経験による有意な得点の差があり, 小児看護経験年数前群に比べて後群が行っている意識が低かった。 5.1.3.3 PICU と小児病棟および ICU の共通項目 24 の質問項目で有意な得点の差がなかった(表 11,12)。そのうち PICU と 小児病棟およびICU で共通の項目は 17 項目であり,【生命維持システム】では 『創部のケア』であった。【内的自己システム】では『安全感の保証』の[患者 との距離を近づけて,医療者は安全であると示す][患者に関わる人物(医師や 看護師,PT,OT など)についての情報を伝える]の 2 項目,『添う』の[患者 の気持ちを理解し,それにより添う][患者が辛い時にそばにいる]の 2 項目, 『甘えさせる』『努力への評価』であった。【保護膜のシステム】では『パーソナ ルスペースの保護』『医療者の行為を詫びる』であった。【日常生活行動のシステ ム】では『行動の補助』の[患者が保持なく,自力で体を支えられるように体勢 を整えたり,アドバイスしたりする][患者がクッションなどを使用して体を支 えていられるための援助を行う][患者が必要とする物品を使用できる位置にセ ットする]の3 項目であった。【社会的付き合いのシステム】では『代弁』であ った。【家族への情報提供と情報共有】では『家族への多様なニーズを尊重した 面会の実施』『家族に対するケアや養育のイメージ作り』『患者のケアに関する家

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13 族と看護師の情報共有』『患者のケアに関する医療チーム内の情報共有』であっ た。【小児看護】の質問項目でPICU と小児病棟に共通していたのは『成長発達 を促す支援』『遊びの援助』『年齢を考慮したかかわり』『成長発達にあわせた処 置介助』『しつけ』『育児支援』『成長発達にあわせた説明』の 7 項目であった。 24 の共通項目のうち,2 項目は小児病棟と ICU の間で有意な得点の差があ り,【日常生活行動のシステム】の『行動の補助』の2 項目であった。質問内容 は[患者がクッションなどを使用して体を支えていられるための援助を行う] [患者が必要とする物品を使用できる位置にセットする]であり,いずれもICU の行っている意識が高かった。 5.2 インタビュー調査 5.2.1 基本属性 調査協力者の属性を表13 に示した。調査協力者は 4 施設の PICU 看護師 5 名 で,全て女性であった。PICU 看護経験年数は 5 から 21 年であり,看護師経験 年数と小児看護経験年数は7 から 25 年であった。いずれも他施設での PICU 経 験はなく,小児看護経験以外の看護経験があったのは1 名であった。所属 PICU の病床数は7 から 9 床であり,いずれも 24 時間面会可能だが,一部制限する時 間を設定していた。 5.2.2 分析結果 インタビュー調査の結果 PICU 看護の現状と特徴として,PICU 環境の現状 と看護,対象事例の現状と看護,患者に対する看護の現状,家族に対する看護の 現状,看護師の現状の5 つの視点で構成された。また,PICU 看護の展望につい ての結果が得られた。以下,カテゴリを《 》,サブカテゴリを〈 〉,コードを 「 」で示した。 5.2.2.1 PICU 看護の現状と特徴 5.2.2.1.1. PICU 環境の現状と看護 PICU 環境の現状と看護は,8 のカテゴリと 24 のサブカテゴリ,106 のコー ドから成っていた(表 14)。PICU 看護師は,「医師の仕事を多く請け負ってい る」など〈医療行為の多くを請け負う〉現状にあった。「体重あたりの細かい組

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14 成の点滴を使用する」といった〈細かい調剤が求められる〉うえに「患者の急変 時に薬剤作成でもどかしさを感じる」といった〈対応にスピードが求められる〉 環境で業務を行っていた。看護師は「子供は大人に比べて回復できると希望を持 っている」ので,「患者の生命優先に考える」なかで《救命に関連することが最 も必要である》と考えていた。「複数の診療科と情報を共有する」といった《医 師との連携が密である》ことや,「鎮静状況に合わせた事故抜去予防が必要であ る」といった《事故抜去の要因が多い》などの診療の補助が必要とされていた。 一方で「看取りと救命の看護を並行して行っていく必要がある」など,《救命と 終末期が共存する》環境で看護にあたっていた。また,《イメージが難しい特殊 な環境である》ため「術前訪問で PICU での様子を具体的に伝える」ことや, 〈専門的で特殊な治療を行う場である〉ことから,《家族が特殊な治療を理解す るのが難しい》状況に対して支援していた。〈成立して間もない家族の大きな人 生のイベントである〉PICU への入室は《家族の機能がおびやかされる場であ る》と看護師は認識して支援を考えていた。そのなかで看護師は〈意思決定まで の期間が短い〉と感じており,〈短期間の急性期管理が目的の病棟である〉性質 上,〈短時間で家族の情報を集める〉ことで〈意図的に家族とかかわる〉ように しているものの,〈きょうだいとかかわる機会が少ない〉など《医療者が患者と 家族にかかわる時間が短い》なかで看護を行っていた。 5.2.2.1.2 対象事例の現状と看護 対象事例の現状と看護は,10 のカテゴリと 23 のサブカテゴリ,77 のコード から成っていた(表15)。《病態が複雑で重症な患者を対象とする》ことや,「疾 患によって成長発達が様々である」といった《年齢と成長発達が幅広い患者を対 象とする》こと,「病態によって覚醒時に病状が悪化することがある」といった 《容易に病状悪化する患者を対象とする》など,多種多様な事例を対象としてい た。《臓器移植を受ける患者と家族を対象とする》《児童虐待が原因と考えられる 重症な患者と家族を対象とする》《個別性が求められる重症心身障害児を対象と する》など,PICU 入室前の情報が重要になる事例を扱っていた。また,「年齢 によってせん妄症状が違う」ような《せん妄のある患者を対象とする》こと,「医 療用テープを多く使用する」ことから《皮膚損傷リスクの高い患者を対象とす る》といった疾患以外にも支援が必要な事例を対象としていた。短期間で急性期

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15 管理が目的でありながら「先天性心奇形の患者は繰り返し入室する」といった 《繰り返し入室する患者と家族を対象とする》継続看護が必要な事例を扱って いた。「その後の生活を視野に入れて気管切開の意思決定支援を家族に行う」と いった〈在宅移行後の生活を視野に入れた支援を行う〉こともあり,「家族に情 報提供するために,在宅について情報を得る」「入室前に行っていたケアを出来 る限り継続する」など《退室後の生活を見据えた支援が必要な患者と家族を対象 とする》といった生活のアセスメントが必要な事例を対象としていた。 5.2.2.1.3 患者に対する看護の現状 患者に対する看護の現状は,3 のカテゴリと 12 のサブカテゴリ,38 のコード から成っていた(表16)。PICU 看護師は,患者が「病状と薬剤の影響から意思 表示できない」状況であっても「鎮静中の患者に話しかける」といった〈患者に 声をかけながらケアする〉〈患者の思いを代弁する〉ようなかかわりを行ってい た。そして「患者の成長発達に合わせて説明する」といった〈成長発達に合わせ た説明を行う〉ことで,《患者の人権を尊重する》ことを大切にしていた。「状況 を理解できないまま混乱している環境にいる」ことから〈患者はイメージできな かった環境に不安と恐怖を感じている〉と捉えており,「患者ができることをひ きだす」「術前訪問で患者の気持ちを支えるための情報を得る」など《患者の気 持ちを支える》ための看護を行っていた。また,特殊な環境にあっても「看護ケ アを生活習慣として置き換えて患者に声をかける」など〈日常生活活動を維持す る〉支援を行っていた。看護師は,「感覚が刺激される遊びを提供する」「成長発 達に対する援助を,病状と併せて考える」といった〈成長発達を促す〉視点で患 者と関わっていた。〈季節のイベントを提供する〉〈病状に合わせた遊びを検討す る〉ことで,「遊びを提供することで行動が落ち着く」患者をみて〈遊びが患者 に良い影響を与える〉と感じ,《患者の成長発達を止めない支援を行う》看護を 行っていた。 5.2.2.1.4 家族に対する看護の現状 家族に対する看護の現状は,5 のカテゴリと 18 のサブカテゴリ,89 のコード から成っていた(表17)。看護師は,《不安や戸惑いを抱えた家族を支援する》 ことがPICU 看護の特徴であると感じ,「子供の生命への不安が強い」家族に対

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16 して「術前訪問で家族と顔を合わせることで不安の軽減につなげる」ことや「家 族とうまく雑談することで緊張を和らげる」といった支援を行っていた。「家族 ときょうだいの意向を確認し,面会の調整を行う」など〈きょうだいへの面会支 援を行う〉ことや,「家族が患者とできるだけ長く一緒にいられる方法を考える」 ことで〈患者と家族が近くで共に過ごす時間を大切にする〉支援を行っていた。 そして,「患者が子供なので,子供と親の関係は大切である」「家族関係の維持に 必要な看護を検討する」など〈家族が一緒に過ごせる時間を確保する〉支援を行 い,〈患者と家族が共に過ごすメリットがある〉〈きょうだいと患者がかかわるメ リットがある〉と捉え,《患者と家族が共に過ごせるよう支援する》ことを大切 にしていた。また,「患者の変化に気づこうとする」家族に対して,「家族が患者 の実際の様子を見られるように調整する」ことや「家族が面会していない時の患 者の情報を伝える」ことで,《情報を得る機会が少ない家族と情報共有する》よ うにしていた。家族は「患者に何ができるのか,何をしてよいのかわからない」 ので,「家族の思いを汲み取り,家族ができることを提案する」といった《患者 にできることを家族に提案する》ことで情報提供と情報共有を行っていた。また 看護師は,「PICU は家族の意思決定を支援する場だ」と捉えており,家族が「意 思決定時に患者の思いがわからないから難しいと感じる」「家族は,意思決定に 自信がない」状況に対して情報提供と情報共有を通して《家族の意思決定を支援 する》看護を行っていた。 5.2.2.1.5 看護師の現状 看護師の現状は,6 のカテゴリと 18 のサブカテゴリ,53 のコードから成って いた(表 18)。PICU 看護師は「余裕がないことで看護の視点を持てない」「点 滴や処置で余裕がなく,患者の思いに目が向きにくい」など〈疾患や治療に視点 が向き,看護の視点に気づきにくい〉状況にいると感じていた。看護師は「技術 や疾患が習得できないと家族看護に向かいづらい」「経験を積むと看取りや緩和 の看護が必要だと気づく」といった〈救命に関連することを習得した後,看護の 視点を持つ〉環境におかれていた。「患者と家族のそばで看護にあたる時間が取 れない」「急変時には生命優先で家族対応ができない」など〈医療行為を多く担 うことで看護ができない〉と看護師は感じていた。そして「点滴作成や処置によ り,患者と家族に関わる時間が少ない」「点滴作成に時間を多く取られる」こと

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17 から「家族は看護師が忙しそうなので声をかけにくい」と自らを評価しており, 《診療の補助が多いため看護独自の機能を十分発揮できない》体験をしていた。 それに伴って「終末期看護に自信がない」「家族看護に強くなりたいが,弱さを 感じる」など,《終末期看護や家族看護に自信が持てない》という思いを抱えて いた。また,「患者が退室した後の回復した様子を知ると嬉しい」が「医療行為 の繰り返しで辛くなる」体験をしており,《看護の成果を実感する機会が少ない》 と感じていた。しかし,「患者の成長発達を見て愛着を感じる」ことや「患者に ついて家族と共有することが楽しい」と感じており,〈看護の視点で裁量を発揮 する〉ことは《看護をした実感を持つとやりがいを感じる》体験につながってい た。また,「集中治療と小児の看護知識が必要である」ことや「それまでの日常 と現在の病状のどちらも考える」など〈救命の看護知識だけでは難しい〉と感じ る中で,〈重症患者を看ながらの指導に困難を感じる〉など《PICU 看護教育の 難しさがある》と捉えていた。一方で,「看護師が多いことでたくさんの看護の 視点がある」と《看護師の人数が多い強みがある》と感じていた。 5.2.2.2 PICU 看護の展望 PICU 看護の展望は,10 のカテゴリと 22 のサブカテゴリ,35 のコードから 成っていた(表19)。方向性としては,「患者と家族にかかわる時間がもっとほ しい」「ME や薬剤師を導入することで看護師の業務量が減る」といった《看護 を行える環境を整備する》ことがあげられた。看護師は,〈急変時の家族対応を 多職種と連携したい〉〈家族看護を多職種と連携して行いたい〉〈多職種と連携し て広い視野で看護を考えたい〉という《多職種連携の可能性を検討する》ことを 考えていた。また,〈PICU 看護を充実させたい〉〈PICU 看護の可能性を広げた い〉といった《PICU 看護の視点を拡大する》ことがあげられた。 今後確立すべきこととしては 6 つあげられた。まず「退院後の地域情報につ いて,家族に情報提供できるとよい」といった《救命後の生活を視野に入れた支 援方法を確立する》ことがあげられた。次に「一番は後遺症なくもしくは最小限 であることと併せて,その子らしい成長を支援していける病棟になるとよい」と いった《患者の生命と成長を同時に支える看護を確立する》ことがあげられた。 「デスカンファレンスは,多職種が入って実施することで次に活かされる」とい った《PICU における終末期看護を確立する》ことがあげられた。そして「PICU

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18 看護は,生命と家族看護を同じくらい考えていけるとよい」といった〈救命だけ ではなく,家族看護を発展させたい〉という《PICU における家族看護を確立す る》があげられた。〈患者と家族のつながりを維持できる方法を検討したい〉 〈PICU の面会制限は柔軟にできるとよい〉〈患者と家族がなるべく共に過ごせ る支援をしたい〉といった《家族が共に過ごせる方法を確立する》があげられた。 また,《きょうだい支援を確立する》こともあげられた。そして,「PICU 看護が 確立すれば,技術習得と並行して看護の視点が持てる」といった《確立したPICU 看護を共有する》という展望が示された。 6. 考察 6.1 質問紙調査 3 つの仮説ごとに考察を行った。 6.1.1 小児看護との違い ターゲットの【生命維持システム】では7 項目中 5 項目で PICU 看護師の行 っている意識が高かった。PICU が持つ本来の特性上,PICU 看護師には生命維 持に関連する看護が必要とされていた。TAKEMOTO ら34) ICU での看護師 の業務は,約70%が必要で中断できない,もしくは一時的な中断はできるもの の,連続して行われる患者の生命維持に必要な業務であると述べており救命や 治療に関連した業務が小児病棟より多く必要とされていることが PICU 看護師 の特徴であることがここでも示された。 ターゲットの【内的自己システム】では,28 項目中 2 項目で PICU 看護師の 行っている意識が高く,そのなかには看護ケアのカテゴリとして『個人の尊重』 1 項目が含まれていた。また,行っている意識が低い項目は 9 項目あり,看護ケ アのカテゴリとして『個人の尊重』2 項目が含まれていた。『安全感の保証』に ついては, 6 項目が行っている意識が低い項目に含まれており,行っている意 識が高い看護は含まれていなかった。以上のことから,PICU 看護師は,個人を 尊重できているかに注目していると考えられる。Davydow ら35)ICU での治 療終了後,退室した後も28%の患者に不安や抑うつ症状が継続していると報告 している。集中治療環境が患者に与える影響は大きいと考えられ,看護師は小児 病棟よりも患者への支援が必要であると感じているが十分にできていない,も

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19 しくはもっと行えることがあると捉えている可能性がある。 ターゲットの【小児看護】では,13 項目中 3 項目で PICU 看護師の行ってい る意識が高く,3 項目で行っている意識が低かった。行っている意識が高い看護 ケアのカテゴリでは,『母子分離への配慮』『愛着形成促進への援助』『成長発達 にあわせた抑制』があげられた。救命や治療に関連した業務が多くなることは, 患者と家族が共に過ごせる時間が少ないことにつながっていると考えられる。 ボウルビィ36)は親子関係の相互作用は,両者に与える満足の程度が高いほど一 層安定する傾向があり,どちらか一方あるいは両方に不満をもたらす場合,安定 の程度は低くなると述べている。つまり親子関係が,親密で継続的で,両方が満 足と喜びに満たされているような状態が親子関係において必要であるなかで PICU では母子分離が起こっており,PICU 看護師は小児病棟看護師より支援を 意識していると推察される。また,永井ら37)PICU での抑制について抑制が 児に与える影響を考慮し,過剰・不必要な抑制をせず,児の個別性を取り入れた 看護が必要であると述べており,PICU では治療上の安全のために抑制の機会が 多いことが考えられ,成長発達の状況をしっかり捉えることが必要とされてい るといえる。これは人権の尊重にもつながってくると考えられる。また,意識が 低かった3 項目は『学習の支援』『仲間への参加援助』『セルフケア援助』があっ た。それは PICU 看護経験を積むほど行っている意識が低くなっていることが わかった。PICU 看護経験を積むほど行っている意識が低い項目には退院後の話 をすること,退院後のイメージができるようなかかわりが含まれていた。また, 『セルフケア援助』については看護師経験を積むと行っている意識が高くなっ ており,求められている看護が救命や治療に関連した業務のみではないことが 推察できる。これらの行っている意識の低い項目は,PICU にあまり必要とされ ていない看護であるとは言い切れず,できていないと感じている看護の可能性 がある。IZUMI38) は,小児看護師は小児看護経験を積むほど自らの成長を意識 し,前向きに職場組織に適応していくことによって仕事に向かう力が高まると 述べており,PICU 看護師のやりがいにつなげていける体制を考えていく必要が ある。 6.1.2 集中治療看護との違い ターゲットの【生命維持システム】では7 項目中 2 項目で PICU 看護師の行

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20 っている意識が高かった。ICU は PICU と同様に救命や治療に関連した業務が 必要とされている領域でありながら,PICU 看護師の行っている意識が高い結果 が得られたことは,患者が小児であることが関連していると考えられる。看護ケ アのカテゴリとしては『与薬時の体重確認』『患者にあわせた用手人工呼吸』と なっている。齋藤39)は,PICU では呼吸生理からも低酸素の危険に曝されやす いことや,乳児になれば頚部の位置 1 つで事故抜管から片肺挿管まで気管チュ ーブは大きく位置を変える可能性を有すること,これらの微細な病態変化に対 応できる管理体制の構築と,救命という一刻を争うダイナミズムの両者が同時 に要求されていると述べており,PICU では呼吸に対する技術の習得が特に求め られていると推察される。 【家族への情報提供と情報共有】では,9 項目中 2 項目で PICU 看護師が ICU 看護師より行っている意識が高く,看護ケアのカテゴリとしては『ケア参加』に 関する項目であった。小児病棟との比較では行っている意識に差がなかったこ とから,患者が小児であることで行っている意識が高いと考えられる。須永ら40) は,ICU へ入室した小児患者の家族ニードとして,家族は知るニードを持って おり面会時の医療者のかかわりが重要であり,危機的な状況の中で家族が安定 することが子供への援助にもつながっていくと報告しており,救命や治療など の診療の補助が必要とされるなかでも,PICU 看護師は【家族への情報提供と情 報共有】を意識して行っていると考えられる。しかし,『きょうだいに対する情 報提供』に関しては PICU 看護師の行っている意識が低かった。宇井ら41)は, 急性期小児患者のきょうだい対する支援として年齢や発達,心理状態などに合 わせ,患者の入院や病気に対する説明を行う支援が望まれていると述べており, ICU とは違い PICU においてきょうだいは子供であることが多く,きょうだい の支援について課題があると考えられる。 ターゲットの【内的自己システム】では28 項目中 1 項目で PICU 看護師の行 っている意識が高く,18 項目で行っている意識が低かった。行っている意識が 高い1 項目は『努力への評価』であり,PICU 経験と小児看護経験においていず れも経験を積んだ看護師の行っている意識が低かった。勝田ら42)は,子供が処 置を受けるにあたり覚悟すること,および覚悟に至る影響要因として,まわりの ゆとり,過去の経験のイメージ,子供が選択できる可能性,周りとの一体感,処 置に対する代償利益の確認,自らする覚悟の宣言があると報告しており,子供が

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21 処置を受ける際には処置に耐えた代償として子供に利益を提供することは重要 である。PICU 看護師は,処置に対する代償利益を示すことで患者が主体的に覚 悟して臨める支援を行いたいと考えているものの,できていない現状があると 考えられる。また,行っている意識が低かった項目の多かった看護ケアのカテゴ リは『安全感の保証』『個人の尊重』であった。成人の集中治療領域で福田ら43) は,ICU 入室体験を持つ患者の多くは,記憶の欠落や非現実的な体験などの記 憶の異常を抱えてその後の療養生活を送っており,ICU での重症期を脱した患 者はICU 退室後早期から記憶や体験の整理を行っており,その支援に対するニ ーズも存在していると報告している。『安全感の保証』と『個人の尊重』は特殊 な環境に置かれた患者にとって重要な看護であり,PICU 看護師は心理的支援を もっと行いたいと感じていると推察された。また【内的自己システム】では,『情 報提供による現実認知の促進』『感覚への刺激の提供による現実認知』『時間の流 れの提供』に関しては行っている意識が低かったが,行っている意識に差がなか ったものとして『添う』『甘えさせる』などがあり,小児看護の特性である成長 発達によって影響を受ける項目として現実認知の方法や時間があったと考えら れる。今後,小児患者に対する現実認知の実際の方法や効果を示していくことが 望まれる。 PICU 経験を積んだほうが行っている意識が低くなる項目は 3 つあり,ター ゲットはそれぞれ違い,【生命維持システム】の『治療的体位の変換・保持』内 的自己システムの『情報提供による現実認知の促進』,【日常生活行動システム】 における『行動の指示・行動化』であった。これらの項目はPICU 看護師が経験 を積むほど課題を感じていると考えられ,今後は方法について検討していく必 要がある。 6.1.3 小児看護と集中治療看護の共通点 PICU 看護は,小児看護,集中治療看護と多くの項目で違いがみられた。一方 で『きょうだいへの情報提供』以外のすべてのターゲットで共通項目があること が明らかとなった。それは,PICU 看護の特異性はあるが看護として共通してい る部分が多いといえる。また,ターゲットの【日常生活行動のシステム】におけ る,『行動の補助』2 項目では小児病棟看護師より ICU 看護師の行っている意識 が高かったが,いずれもPICU との差はなかった。質問内容としては,[患者が

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22 クッションなどを使用して体を支えていられるための援助を行う][患者が必要 とする物品を使用できる位置にセットする]であった。この項目は PICU 看護 師が小児病棟看護師より行っている意識が高く,ICU 看護師よりは行っている 意識が低い項目であった。小児病棟では成長発達により,自ら体位を保持する段 階にない患者がいる一方で患者自ら体位を保持し,必要なものを引き寄せる患 者もいる。また,家族が付き添いや面会の際に支援することが多い可能性があり, 小児病棟看護師は行う機会が少なく意識が低いと考えられる。また,ICU の患 者は,体位が保持できず必要なものを取ることができなかった場合,自ら看護師 に伝え支援を受けるので看護師の行っている意識が高いと考えられる。しかし, PICU では自ら動くことができず,言葉で表現できない患者が入室しており,家 族がいる時間も小児病棟より短いことが予測され,PICU 看護師が患者の行えて いないことを汲み取って支援していると考えられる。 6.2 インタビュー調査 以下にPICU 看護の現状と特徴から必要な看護と環境についての 4 つの視点 と,展望について考察する。 6.2.1 PICU 看護の現状と特徴から必要な看護と環境 6.2.1.1 広い視野で患者と家族を捉える 《年齢と成長発達が幅広い患者を対象とする》ことから,小児の成長発達を理 解し支える小児看護の視点が必要である。加えて PICU では臓器移植や重大な 児童虐待,重症心身障害児など,対象とする疾患や背景は様々であり,入室前の 情報を知り《退室後の生活を見据えた支援が必要な患者と家族を対象とする》の で,その支援が求められている。西田44)は,NICU においては小児病棟に転棟 し継続入院する乳児を持つ母親への支援として,小児病棟から NICU への転棟 前訪問や,面会時の様子や子供の世話の習得具合などの転棟時の伝達など,母親 も含めた転棟と捉えた体制を築き連携をはかる必要性を示している。PICU は集 中治療領域であっても,患者と家族にはそれまでの経過やこれからの生活があ り,そこにはきょうだいもいるという視点でかかわりを考え,病棟との連携体制 を築くとともに,家族へ今後の生活を考慮したかかわりを行うことが求められ ていると考えられる。また,《救命と終末期が共存する》ということは,《救命に

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23 関することが最も必要である》なかで PICU では救命以外の視点で患者と家族 にかかわることが求められているといえる。日本集中治療医学会から出された 『集中治療における重症患者の末期医療のあり方に関する勧告45)』と,その後救 急医療における終末期医療のあり方に関する委員会より提示された『救急・集中 治療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)46) 』や『集中治療領域に おける終末期患者家族のこころのケア指針47)』から,集中治療領域において終末 期看護は注目されている視点である。立野ら48)は,医療チームは,患者や家族 と積極的なコミュニケーションやサポートに取り組んでいるが,医療者の 8 割 以上が,ICU における終末期ケアに困難性を感じていたと報告しており,PICU においても多くの取り組みと支援が必要であると考えられる。またArdith ら49) は,PICU の設置に原則として緩和ケアの実践を統合することは家族中心のケア につながり,家族や多職種間のコミュケーション機会を向上させるための機会 となると述べている。PICU において終末期ケアに取り組むためには,家族を多 面的に捉え支援していく必要があり,看護師には救命以外の広い視野が必要と なる。以上のことから,PICU 看護は広い視野で患者と家族を捉えていくことが 重要であると考えられる。 6.2.1.2 患者の人権を尊重したかかわり PICU では《救命に関連することが最も必要である》ことから,鎮静薬使用や 治療による影響により〈患者は意思表示ができない〉ことが多い。加えて子供は 発達途上にあるため,理解や判断,言語能力が未熟で,権利を十分に主張するこ とが困難な場合50)がある。草野ら51は,認知能力が発達途上であったり,自分 のことを的確に表現できなかったりという発達の特徴を持つ子供への最善の利 益を考えた看護が家族や医療者を動かしながら行われるためには,看護師の持 つ看護観や倫理観とスタッフ間でのコミュニケーションが重要であると報告し ており,PICU 看護師には《患者の人権を尊重する》意識を高めて患者とかかわ っていけるための組織づくりが必要であると考えられる。蝦名52)は,事前に「何 が起こるか」の説明を受けることは,医療処置上のマニュアルではなく,大人の インフォームド・コンセント同様,子供に医療を行う際の倫理上の問題であり, 子どもの基本的人権であると述べている。子供に事前に説明を行い同意を得る ことは,《イメージが難しい特殊な環境である》PICU にとって特に必要な視点

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24 であると考えられる。また,山北ら53)は,遊びは病児にとって成長発達,情緒 的心理的発達に欠かせない,病児にとって治療的な力を持っていると述べてお り,PICU 看護師が《患者の成長発達を止めない支援を行う》視点でかかわるこ とは,集中治療場面であっても重要なことであるといえる。以上のことから, PICU 看護は,患者の人権を尊重したかかわりが重要であると考えられる。 6.2.1.3 家族との情報共有 PICU 看護師は,家族への看護を多く行っていた。それは,看護師が PICU で は家族看護が重要であると認識しているからであると推察される。Jos ら54)は, 家族は不確実性も含めて正直に情報を共有することに感謝している,子供の診 断や治療の不確実性に注意しながらも話をすることが家族との信頼関係を築く と報告しており,PICU に子供が入室した《情報を得る機会が少ない家族と情報 共有する》ことは,とても重要であるといえる。《救命に関することが最も必要 とされる》PICU 環境では《家族の機能がおびやかされる場である》。家族が共 に過ごす時間が短く《家族が特殊な治療を理解するのが難しい》なかで,親役割 を維持したいが〈家族は患者に何ができるかわからない〉ので,時に〈家族の行 動が病状に影響を与える〉こともあるといえる。PICU 看護師が《情報を得る機 会が少ない家族と情報共有する》ことは,《救命に関連することが最も必要であ る》PICU で患者の生命を維持しながら家族機能を維持し,親子関係を築く支援 を行うことにつながり,大切な看護であると考えられる。また,子供の入院と母 親の付き添いがきょうだいに及ぼす影響として新家ら55)は,きょうだいには情 緒と行動の問題が強く出現する傾向があり,その中でもひきこもりの傾向や身 体的な問題を訴える傾向,不安を強く抱き抑うつの傾向を出現させるものがい ること,きょうだいの情緒と行動の問題の程度には母親の状態不安の程度,きょ うだいに対する面会制限,入院児の入院回数,きょうだいの主な世話人,きょう だいの年齢,入院児の出生順位,きょうだいへの入院児の病状に関する説明の程 度が関連しているときょうだいへの影響が大きいことを報告している。PICU で 家族機能を維持するためには,きょうだいも含めた支援を検討していく必要が ある。また,《救命に関することが最も必要である》PICU であるが,退室後の 生活を見据えた支援が必要な患者と家族に生活まで含めた《家族の意思決定を 支援する》必要がある。2012 年に日本小児科学会倫理委員会より『重篤な疾患

図 1  PICU 看護師の現状に関する概念枠組み・・・・・・・・・・・・・・  37  図 2  PICU 看護の概念枠組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  37  表 1  質問紙の構造と質問項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  38  表 2  看護ケア機能の説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  41  表 3  ターゲットの説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  41  表 4  質問紙調査の施設協力数及び回答者数とその内訳・・・・・・・・・・
図 2  PICU 看護の概念枠組み
表 6  PICU と小児病棟と ICU の多重比較および質問項目と平均順位  続き(2/5)
表 6  PICU と小児病棟と ICU の多重比較および質問項目と平均順位  続き(3/5)
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