著者
葉 秉杰
雑誌名
国際文化研究(オンライン版)
巻
27
ページ
127-140
発行年
2021-03-31
URL
http://hdl.handle.net/10097/00131061
1 .はじめに 日本語には数多くの[[X]動詞連用形]複合語が存在する。これらは統語的に普通名詞、動名詞、 形容名詞として機能し、また、普通名詞として機能するものは意味的にコトやモノ、人ないし場 所などを示す。[[X]動詞連用形]複合語について、先行研究では様々な分類が試みられており、 一般的には、X と動詞の関係によって語根複合語(root compound)と動詞由来複合語(deverbal compound)に分けられている。しかし、実際、筆者が観察したところ、従来の分類の仕方では 捉え切れない例があり、先行研究に基づく分類の特徴を欠いている[[X]動詞連用形]複合語が 数多く見られる。 2 .先行研究 2.1 語根複合語と動詞由来複合語の定義 語根複合語とは、本来、「花時計」や「菓子皿」のように、後項に動詞が含まれておらず、モ ノを表し、前項と後項の関係が様々で、単純に格助詞に言い換えられない[[X]名詞]型の複合 名詞のことである。それに対し、動詞由来複合語とは、「ゴミ拾い」や「爪切り」、「手作り」の ように、後項が動詞で、前項と後項が文法関係にあるものである。そして、動詞由来複合語はさ らに X と動詞の関係によって、内項複合語と付加詞複合語に下位分類されている1。上記の定義 によれば、「爪切り」「金持ち」のような X と動詞が項関係であるものは動詞由来複合語に分類さ
[[X]動詞連用形]複合語に見られる連続性
葉 秉 杰
要 旨 先行研究では、[[X]動詞連用形]複合語は X と動詞の関係によって、語根複合語と動詞由 来複合語に分けられ、動詞由来複合語はさらに内項複合語と付加詞複合語に分けられている。 本稿では、それぞれの分類に入ったメンバーの語構成、意味統語、音韻について考察を行い、 どの分類にも、その分類にあるべき特徴を一つもしくは複数欠いているメンバーが存在して いることを明らかにした。本稿では、コンストラクション形態論と典型性理論の立場から、 [[X]動詞連用形]複合語を捉え直した。あるべき特徴を欠いているメンバーは例外ではなく、 非典型的なメンバーと捉えることができ、また、語根複合語と内項複合語と付加詞複合語に は連続性があると主張した。 【キーワード:[[X]動詞連用形]複合語 / 典型性 / プロトタイプ / コンストラクション / 連続性】れるはずであるが、影山(1999)は意味の観点から、X と動詞が項関係でも、モノを表す[[X] 動詞連用形]複合語を語根複合語とし、コトを意味する[[X]動詞連用形]複合語のみ動詞由来複 合語としている。一方、伊藤・杉岡(2002)は X と動詞の関係を重視し、X と動詞が文法関係 にあれば、動詞由来複合語としており、モノを表すのは意味拡張による結果としている。このよ うな意味拡張を認める先行研究は伊藤・杉岡らを始め、野田(2010)などにも見られる。「爪切 り」「金持ち」のようなモノを表す複合語は影山(1999)の立場に従えば「N + N」という語構成 になるが、後項は単独ではモノ名詞として用いられない(cf. * 切り、* 持ち2)。つまり、「N + N」 の複合である語根複合語の定義に一致しない。このことから、本稿は伊藤・杉岡らと同じ立場を 取り、後項が単独で用いることができず、X と動詞が文法関係(項または付加詞)にあるものは、 モノを表す[[X]動詞連用形]複合語であっても、語根複合語ではなく、動詞由来複合語とする3。 なお、後項が動詞でも、X と動詞が文法関係ではなく、全体としてモノを意味する[[X]動詞連 用形]複合語は語根複合語とする。まとめると、[[X]動詞連用形]複合語の種類は下記(1)の通 りとなる。 (1)[[X]動詞連用形]複合語の種類: 語根複合語:星組、有田焼、人形焼、玉虫塗 動詞由来複合語:ゴミ拾い、爪切り、金持ち(以上他動詞の目的語と結合する内項複合語) 崖崩れ、胸焼け(以上非対格自動詞の主語と結合する内項複合語)手作り、ビール太り、 昼寝(以上付加詞複合語) 2.2 語根複合語と動詞由来複合語の特徴 [[X]動詞連用形]複合語の先行研究は主に生成意味論の枠組みで行われ、英語と対照しながら、 複合語は統語的なのか語彙的なのか、そして語形成レベルが議論の中心であった。[[X]動詞連 用形]複合語の研究の中で、杉岡・小林(2001)、伊藤・杉岡(2002)が音韻から統語、意味、生 産性まで詳しい考察を行なっており、最も包括的なので、以下では両研究を中心に見ていく。ま ず語根複合語について、伊藤・杉岡(2002)は英語の例を挙げ、「名詞と名詞の複合は、その間 に文法関係がないがゆえに、さまざまな解釈が可能になるのである。このような複合語は語根複 合語とも呼ばれ、語形成としての生産性は高い(用例がたいへん多い)が、多様な解釈が可能な ことから、規則性は低い」と述べる(同44)にとどまっており、これ以上の考察は立ち入ってい ない。動詞由来複合語については、日本語は英語と異なり、内項の他に付加詞との結合も可能で あり、また、特定の接尾辞(i.e.「-ing」、「-er」)を伴わずに行為や人、道具などを表せると指摘 している。また、動詞の第一投射の内項は英語と同様に動詞と複合し得るが、付加詞は動詞の第 一投射ではない。そのため、内項複合語は項構造(argument structure)で形成されるのに対し、 付加詞複合語は語彙概念構造(lexical conceptual structure)で形成されると伊藤・杉岡は主張 している。その証拠として、内項複合語は連濁せず、アクセントも起伏型であるが、付加詞複合
語は連濁し、アクセントが平板型であるといった現象を挙げている(e.g. トイレを意味する「手 洗い」は起伏型アクセントで、手で洗うという意味の「手洗い」は平板型アクセント)。統語に ついても、項構造で形成されるとされた内項複合語は行為ないし前述した意味を持つ普通名詞と して用いられるのに対し、語彙概念構造で形成される付加詞複合語は X が語彙概念構造のどの 意味述語を修飾するものかによって動名詞または形容名詞として用いられるという。X が動詞の 語彙概念構造の行為(ACT)と変化(BECOME)を修飾するものは直接「- する」をつけ、動 名詞を形成し得るのに対し(e.g.「手作りする」、「日焼けする」)、結果状態(BE)を修飾するも のは「- の」または「- だ」を伴い、形容名詞になる(e.g.「黒焦げの魚」)。さらに、意味の透明 性と語形成について、内項複合語は比較的自由に新語を作ることができ、意味が透明で、語形成 も規則的であるのに対し、付加詞複合語は「可能な語」でも「実在する語」になることが少なく、 語彙的なものとされている(# は実在しない語を示す)。 (2)内項の「新語」:超能力によるスプーン曲げ 付加詞の「新語」:# 車運び(車で運ぶ)、# 早喋り(早く喋る) 伊藤・杉岡(2002: 130-131一部省略) 表 1 は、[[X]動詞連用形]複合語の特徴について、伊藤・杉岡(2002: 130)の表をもとに、筆 者が当書の議論を踏まえ、まとめたものである。 伊藤・杉岡(2002)以降の[[X]動詞連用形]複合語の研究は、斎藤(2005)や淺尾(2007、 2009)、吉田(2008)、由本(2009a、2009b、2015)、Yumoto(2010)、田川(2010)、葉(2012、 2013)など多数あるが、いずれも伊藤・杉岡(2002)の主張(=表 1 )をもとにさらに発展させ たものである。従って、本稿も伊藤・杉岡(2002)をもとに議論を進めることとする。 表 1 [[X]動詞連用形]複合語に関するまとめ 語根複合語 動詞由来複合語 付加詞複合語 内項複合語 例 人形焼 手作り、黒焦げ ゴミ拾い、崖崩れ X と動詞の関 係(語構成) [[X]名詞] の複合名詞と 同様に様々 X =動詞の付加詞 時 間、 場 所、 方 法、 様 態、 道 具、 原因、材料、結果状態など X =動詞の内項(必須 項4) 音韻 連濁あり 連濁あり 連濁なし 品詞(統語機 能) 普通名詞 (モノ) 動名詞、形容名詞 普通名詞 (コト/モノ) 意味の透明性 言及なし 不透明 透明 語形成 規則性が低い 語彙的 レキシコン 統語的 ルール
3 .本稿の考察対象 考察にあたり、[[X]動詞連用形]複合語は語彙的複合動詞のようなリスト5がなく、筆者は [[X]動詞連用形]複合語の実際の使用状況を把握するため、2019年 7 月から2020年 8 月にかけ、 [[X]動詞連用形]複合語の先行研究及びニュースやテレビ番組(テレビドラマやバラエティ番組 等)、ホームページ(Yahoo! Japan 等)などから合計3,025の[[X]動詞連用形]複合語を採集し、 語構成や音韻などについて考察を行った。考察の結果、先行研究の主張に一致しない例が存在す ること及び、そのような例も語によって一定の傾向を示していることがわかった。 4 .先行研究の反例 筆者が採集した[[X]動詞連用形]複合語の用例を調査したところ、先行研究で指摘されてい る表1の[[X]動詞連用形]複合語の特徴に一致しない用例が数多く見られた。以下では内項複合 語と付加詞複合語に分けてそれらの例を見ていく。 4.1 内項複合語 4.1.1 語構成 先行研究は X と動詞の関係によって、[[X]動詞連用形]複合語を上記表 1 の 3 つに分類して いる。しかし、下記(3)の複合語のように、X と動詞の関係を見ると、 2 種類の解釈が可能で、 どちらにも分類可能な[[X]動詞連用形]複合語が見られる。 (3)挨拶代わり、遺産争い、エビ釣り、田舎暮らし 一つずつ検討していくと、まず「挨拶代わり」は「挨拶に代わる」と分析することも可能であ れば、「挨拶の代わり」と分析することもできる。つまり、前者の分析をとれば、「挨拶代わり」 は内項複合語になり、後者の分析をとれば、語根複合語になる6。「遺産争い」も「遺産を争う(こ と)」(内項複合語)と「遺産の / に関する争い」(語根複合語)と分析することができる。「エビ釣 り」も「エビを釣る(こと)」(内項複合語)と「対象がエビの釣り」(語根複合語)と分析できる。 「田舎暮らし」も「田舎に暮らす」(内項複合語)と「田舎の暮らし」(語根複合語)の二通りの分 析が可能である。これらの例は、先行研究に基づけば、2種類の分析が可能であるが、注目した いのは語根複合語と見なした場合、これらはモノを意味しないということである。 4.1.2 統語 内項複合語は「X を V」という「動作の名付け」で普通名詞として用いられる(例:ゴミ拾い をする;山登りに行く)とされているが、影山(1999)、Yumoto(2010)、由本(2015)によれば、 下記(4)のような場合、内項複合語は直接「- する」をつけ7、動名詞として用いられる。そして、 語によっては新たな項を獲得することもできる。
(4)a. X =目的語の一部もしくは意味が希薄化している 私鉄各社がそろって運賃を値上げ / 値下げした(影山1999: 134) b. 後項が三項動詞の場合 ( 複合によって項が一つ減るがもう一つの項を取れる) 救援物資を船積みする(由本2015: 87) c. 複合語全体の意味が使役変化動詞と同じ 山菜を灰汁抜きする(由本2015: 87) しかし、筆者の調査では、下記(5)~(7)のように、上記の条件を満たしていないものであっ ても、動名詞として用いられる内項複合語が見られた(例は BCCWJ より)。 (5) 父は、さもあたりまえのように、自分に都合よければ不正も必要だとか、世の中には正し いことばかり通用しない、っていうんです。その上、小さいときは猫可愛がりした父は、 突然小学校五年生ごろから月に一回しか帰ってこなくなったのです。 (6) ちょうど、春の大掃除がしたくて、歩哨所から外に出て自分で虫干ししているところのよ うに見えた。 (7) 昨日は支部会員の一人の息子さんが暖簾分けして独立して、新しい店舗としてこの支部に 加わったので… 先行研究は(4)の条件において、内項複合語が動名詞として用いることができるとしている。 (4a)の「値上げ」の X、つまり「値」は「上げる」の内項に当たるが、「値上げ」全体が新たな 項「運賃」を獲得できるのは「値」の意味が希薄化しているからである。(4b)の「船積み」の 「積む」は本来「誰かが救援物資を船に積む」というように三項動詞であるため、「船」が「積む」 と複合しても、項が一つ残っているため、「救援物資」を「外部表示」できる。(4c)の「アク抜 き」は同時に(4a)の条件も満たしており、つまり、「アク」は「山菜」の一部である。そして、 「アク抜き」することによって、山菜がおいしくなるため、動名詞として用いられる。筆者が挙 げた例(5)は、「猫可愛がり」されたのは話者(=人間)であり、前項「猫」は人間の一部であ るとは考えにくく、「猫」の意味も希薄化しているとは考えにくい(= 条件 a)。また、「可愛がる」 は三項動詞ではなく(= 条件 b)、全体も使役変化とは考えられない(=条件 c;i.e. 可愛がられ たことによって、何か変化が起きるわけではない)。にもかかわらず、動名詞として用いられて いる。 4.1.3 意味 内項複合語は「統語的な性格が強く、生産的で意味や形態も透明性が高い8」とされている(杉 岡・小林2001: 267)。先行研究でしばしば例として挙げられる「山登り」や「綱引き」「爪切り」「金 持ち」などは意味が透明と言えるが、上記の「猫可愛がり」「虫干し」などは「X を V」と分析
できるにもかかわらず、全体としての意味が透明とは言えない。「猫可愛がり」は単に「猫を可 愛がる」ということではなく、「猫を可愛がるように甘やかして可愛がること」(デジタル大辞泉) であり、「虫干し」も「虫を干す」のではなく、「夏の土用や秋の晴天の日などに、書画・衣類・ 調度品などを陰干しして風を通し、虫の害やかびを防ぐこと」である(同上)。 また、「粉落し」は「何らかの粉を落とす」という意味だけではなく、(特に博多ラーメンに使 われる)麺の硬さを意味する。「鍋壊し」も「鍋を壊すこと」ではなく、カジカという魚を意味 する。さらに「枕返し」は妖怪の名前になっている。前項が同じ「物もらい」と「物とり」にお いても「物もらい」は「物をもらう」という意味ではなく、目の病気である。「物とり」は単に 「物をとった」という意味ではなく、泥棒のことである。これらはモノを意味する「爪切り」「缶 切り」、人を意味する「人殺し」「金持ち」と比べ、即座に理解できるとは限らず、意味が不透明 だと思われる。 4.1.4 音韻 伊藤・杉岡(2002)は、内項複合語の後項動詞は連濁しない9としながらも、「梅干し」のよう に、X と動詞が項関係と見なせるが、連濁する例もあると指摘している。伊藤・杉岡らは、この ような複合語は「干しぶどう」などと違い、単に梅を干しただけではない10ため、語根複合語と 見なし、一部の作成動詞に限られると主張している。 しかし、筆者が集めた3,025語を観察したところ、連濁が起きていない内項複合語は全部で268 語であったのに対し、後項に連濁の起きている内項複合語は全部で312語であった11。この統計で は後項動詞の1モーラ目が本来濁音であるもの(例:ゴミ出し)及び後項動詞に既に濁音が入っ ている(「ライマンの法則」に合っている)ものは排除してある。 (8) 連濁が起きない内項複合語:アク取り、足変え、足切り、味付け、汗かき、汗拭き、穴掘 り、油はね、油引き、雨降り、餡掛け、イカ釣り、石蹴り… (9) 連濁が起きている内項複合語:アイロンがけ、青木殺し、青田買い、青田刈り、足止め、 頭越し、頭ごなし、遊び好き、宛名書き、後ずさり、アパート住まい、天城越え、いいと こ取り、息切れ、息遣い、石組み、医者通い… 注目したいのは、伊藤・杉岡の指摘する作成動詞以外の動詞の複合語でも連濁が起きているこ と、また一部の動詞に集中している傾向があることである。例えば、「- 殺し」「- 買い」「- 狩り」 「-止め」「- 好き」「- 越え」「- 固め」「- 返し」などである。「虫干し」や「甲羅干し」などの「- 干し」は 伊藤・杉岡(2002)が作成動詞としたものであるが、「梅干し」と違い、「虫干し」「甲羅干し」は モノを意味しない。
4.2 付加詞複合語 ここまで内項複合語を見てきたが、付加詞複合語にも先行研究に一致しない反例が見られた。 (10) 異臭騒ぎ、ボヤ騒ぎ、磯釣り、沖釣り、海釣り、船釣り、夜釣り、動物占い、夢占い、 誕生日占い… (11) ビール太り、水太り、中年太り、夏太り、冬太り、正月太り、幸せ太り、自粛太り (10)の後項は、「騒ぎがあった」「釣りに行った」「占いをした」のように連用形名詞として単独 で用いられることから、これらを「N + N」の語構成の語根複合語と見なすことができるが、語 根複合語と見なした場合、モノを意味しない点で先行研究の語根複合語の特徴と合致しない。 一方、語構成要素間の関係を重視し、付加詞複合語と見なすと、「異臭騒ぎ」、「ボヤ騒ぎ」は 「原因 - 動詞」、「磯釣り」、「沖釣り」、「海釣り」は「場所 - 動詞」、「夜釣り」は「時間 - 動詞」、「動 物占い」、「夢占い」、「誕生日占い」は「方法 - 動詞」と分析でき、動名詞として用いられるはず であるが、以下に見るようにいずれも成立しない。 (12)* 電車の車内で異臭騒ぎした(cf. 電車の車内で異臭騒ぎがあった) (13)* あの人の性格を動物占い / 夢占い / 誕生日占いした (14)* 魚を磯釣り / 沖釣り / 海釣り / 船釣り / 夜釣りした (11)の「ビール太り」は伊藤・杉岡(2002)では「原因 -V」と分析され、「- する」をつけ、 動名詞を形成できると説明されている。後項が同じ「中年太り」、「夏太り」、「幸せ太り」、「自 粛太り」も「- する」をつけて動名詞として用いられ、「原因 -V」の付加詞複合語と分析できる。 しかし、これらの前項と後項の関係を吟味すると、格助詞を使って言い換えると不自然な表現 になるものがある。例えば「中年」は「太る」の直接の原因とは言いにくく、「? 中年で太った」 のように言い換えると不自然になる。このように一つの格助詞を使って言い換えられないのは語 根複合語の特徴であるため、これらの[[X]動詞連用形]複合語は語根複合語と見なすこともで きると思われる。しかし、これらは、モノを意味する普通名詞ではなく、動名詞として用いるこ とができる点で先行研究の語根複合語の特徴と合致しない。 5 .コンストラクション形態論とプロトタイプ理論 先行研究は項構造、語彙概念構造、特質構造(qualia structure)の三つの構造で[[X]動詞連 用形]複合語を捉えている。普通名詞として用いられる内項複合語は基本的に項構造で形成され、 規則的な語形成であるのに対し、付加詞複合語は語彙概念構造で形成され、語彙的な語形成であ るとされている(伊藤・杉岡2002)。しかし、ここまで見てきたように、先行研究では普通名詞 とされている内項複合語に動名詞としての用法が見られるなど、先行研究が指摘している表 1 の
134 ような特徴を欠くものが数多く存在する。由本(2009a、2015)、Yumoto(2010)は動名詞及び 形容名詞、モノを表す普通名詞として用いられる内項複合語を説明するために、さらに特質構造 を導入し、それぞれの規則性を保持しようとしている。 本稿は複合語には規則性と語彙性の両面を持つ性質がある論点を支持するが、先行研究の反例 になる[[X]動詞連用形]複合語が一部の動詞に集中している現象に着目し、これらの先行研究 とは立場の異なるコンストラクション形態論及びプロトタイプ理論を導入し、上記の現象を捉え たいと考える。 5.1 コンストラクション形態論 コンストラクション形態論は Booij(2010)が提案したもので、Goldberg(1995)の構文文法 (constructuion grammar)の考えを継承した形態論である。それに基づくと、合成語は文と同様 に意味と形態を併せ持つ一つのコンストラクションであり、合成語は最小のコンストラクション である。そして、抽象的なスキーマレベルから具体的な事例レベルまで有する階層構造をなして いる。これを日本語の[[X]動詞連用形]複合語に当てはめると、以下の階層構造が考えられる。 構造の各レベルの左側は形態を示し、右側は意味構造を示す。例えば、最も抽象的なレベルの [[X]V]Nは、前項が何らかの要素 X を代入でき、後項が動詞連用形 V に固定していることを示 す。そしてカッコの一番右にある小文字の N はこの構造が名詞であることを示している。矢印 (↔)の右側の[SEM X=relation of V]は、矢印の左側の形態の意味 SEM は、X が V と何やら
の関係を持っていることを示している。12
従来の研究は、X と動詞の関係によって、二つの語形成部門のみ想定し、語形成部門の違いに
左側の形態の意味 SEM は、X が V と何やらの関係を持っていることを⽰している。12
[[X]V]N ↔[SEM X=relation of V]
[[X]動詞連用形]複合語
[[X]V]N↔[X=modifier of V] [[X]V]N↔[X=internal argument of V] [[X]V]VN↔[X=adjunct of V] 語根複合語 内項複合語 付加詞複合語
[[X]V] ↔[X=location of V] … [[X]Vi]N↔[X=theme of Vi] [[X]Vt]N↔[X=theme of Vt] … [[X]V] ↔[X=method of doing V] …
[[X]焼き] ↔[X=]producing area of 焼き(china)] … [[X]崩れ]N↔[X=theme of 崩れ] … [[X]拾い]N↔[X=theme of 拾い] … [[手]Vt]N↔[doing V by 手] …
有田焼 美濃焼 笠間焼… 崖崩れ 値崩れ… ゴミ拾い 栗拾い… 手作り 手焼き 手ごね… 図1 [[X]動詞連用形]複合語の階層構造13 従来の研究は、X と動詞の関係によって、二つの語形成部門のみ想定し、語形成部門の 違いによって音韻や統語などの特徴も決まっている(規則がトップダウン的に適用される) と想定している。しかし、上で見たように、その分析に合っていないものも数多くあるた め、本稿は、コンストラクション形態論に基づき、部門の想定をせず、[[X]V]を事例から ボトムアップ的に抽出されたものとして捉える。これは[[X]動詞連用形]複合語の語彙性と 規則性を無視するわけではなく、個々の事例の語彙性もしくは規則性をより重視するアプ ローチである。 最下層の事例レベルを除き、スキーマは従来の研究の語形成規則に相当するが、スキー マ⾃体は⾃由に複合語を「⽣成」できない。新規の事例に適⽤させる時、より具体的なス キーマが優先的に選択されると考えられる。事例の全くない動詞からスキーマが抽出され ないため、事例が⼀つもない動詞で新語を作るのは難しい。動詞によっては⽣産性が異な る(斎藤 2005、淺尾 2009)のはこのためだと考えられる。しかし、その場合、より抽象的 12 厳密には、統語機能によって、さらに普通名詞と動名詞、形容名詞に分けるべきであるが、ここでは 便宜上、形態に基づいて N で⼀括する。また、紙幅の都合上、⼆段⽬以降の「SEM」は省略する 13 紙幅のため、連用形「continuative form」を V と略す。また、語根複合語と付加詞複合語は一部略して 表示しているもの(…)がある。 図 1 [[X]動詞連用形]複合語の階層構造13
よって音韻や統語などの特徴も決まっている(規則がトップダウン的に適用される)と想定して いる。しかし、上で見たように、その分析に合っていないものも数多くあるため、本稿は、コン ストラクション形態論に基づき、部門の想定をせず、[[X]V]を事例からボトムアップ的に抽出 されたものとして捉える。これは[[X]動詞連用形]複合語の語彙性と規則性を無視するわけで はなく、個々の事例の語彙性もしくは規則性をより重視するアプローチである。 最下層の事例レベルを除き、スキーマは従来の研究の語形成規則に相当するが、スキーマ自体 は自由に複合語を「生成」できない。新規の事例に適用させる時、より具体的なスキーマが優先 的に選択されると考えられる。事例の全くない動詞からスキーマが抽出されないため、事例が一 つもない動詞で新語を作るのは難しい。動詞によっては生産性が異なる(斎藤2005、淺尾2009) のはこのためだと考えられる。しかし、その場合、より抽象的なレベルのスキーマが用いられる。 また、スキーマは文と同様に、形態と意味を持つコンストラクションであるため、文にパラフ レーズできない場合があり、できた複合語にも付加的な意味が付け加えられる(コンストラク ション独自の意味を持つ)と考えられる。例えば「後ずさり」「アパート住まい」は語源的に「後 にすさる」「アパートに住まう」と分析できるが、現代文では「すさる」「住まう」は自立した動詞 として用いられない。また、「キツネ狩り」は「キツネを狩る」と換言できるが、「キノコ狩り」 は「* キノコを狩る」とは言えない。つまり、[[食材]狩り]が独自の意味を持つスキーマを形成 していると考えられる(e.g. ぶどう狩り、さくらんぼ狩り、梨狩り、りんご狩り…)。 5.2 プロトタイプ理論 先行研究の分類は古典的カテゴリー観(A でなければ B だ)に基づいていると考えられる。 例えば、内項複合語は基本的に項構造で形成されているとされているが、項構造では説明できな い例は語彙概念構造もしくは特質構造に委ねる形となる。しかし、4.1.2節で挙げた、「猫可愛がり」 などは(4)の条件のどれにも一致せず、動名詞として用いられるという点で付加詞複合語に接 近しているものがある。先行研究が指摘する特徴を欠き、他の分類の[[X]動詞連用形]複合語 の特徴が見られる[[X]動詞連用形]複合語が数多く見られることから、本稿ではプロトタイプ の立場をとる。それに基づくと、ある分類(カテゴリー)の特徴は事例から共通点をボトムアッ プ的に抽出したもので、分類には典型的なものから非典型的なもの(周辺事例)まで入る。また、 カテゴリーとカテゴリーは重なっている。よって、一つのカテゴリーに属する成員は、そのカテ ゴリーが持つ特徴が多ければ多いほど典型的な成員となり、反対に、少なければ少ないほど非典 型的な成員となる。そして、場合によってはカテゴリー間の間に位置するものもある。 6 .コンストラクション形態論に基づく分析 従来の分析では 3 種類の[[X]動詞連用形]複合語ははっきり分かれたものであるため、 4 節 で挙げたような用例はあくまでも例外または語彙的なものと処理されてきた。しかし、例外では 片付けられないほど多くの用例が見られる。
まず、内項複合語の音韻について、筆者の観察では、連濁が起きる内項複合語とそうでない内 項複合語はある程度決まっている14。例えば、後項が[- 替え]([- 代え])の[[X]動詞連用形]複 合語は大体連濁が起きる(e.g. 模様替え、席替え、代替え、水替え、鞍替え)。一方、後項が[-立て]の[[X]動詞連用形]複合語は連濁が起きないものが多い(e.g. 写真立て、傘立て、筆立て、 槍立て、モップ立て)。さらに、意味統語においても、この二つの動詞を後項とした[[X]動詞 連用形]複合語は大体同じ意味を示し、同じ統語機能を有する。[- 替え]はコトを示す動名詞と して用いられ、[- 立て]は道具を示す普通名詞として用いられる。つまり、これらの事例から下 記(15)(16)のスキーマが形成されていると考えられる。このように仮定すれば、同じく「- 替え」 を後項とする内項複合語は片方が項構造、片方が語彙概念構造あるいは特質構造で形成されると 想定しなくてもよい。 (15)[[X]たて]N ↔ [X をたてる]モノ (16)[[X]がえ]VN ↔ [X をかえる]コト 付加詞複合語についても、4.2で「ビール太り」と同じように「原因 -V」と分析できる「中年 太り」を統語的に言い換えられないのを見たが、[原因 -V]を意味する[[X]動詞連用形]複合語 は[[X]太り]の他に、「車酔い」「船酔い」「宇宙酔い」などもある。従って、図 2 のスキーマが 抽出されると想定できる。しかし、スキーマレベルでは X が V を引き起こす原因が直接的なの か間接的なのか規定されていないため、「ビール太り」は先行研究で付加詞複合語とされている が、「中年太り」は「中年で太る」のように統語的に言い換えられず、語根複合語に近いと言える。 このように、コンストラクション形態論は 4 節に挙げた現象を例外とせず、統一的に捉えられる。 7 .プロトタイプ理論に基づく分析 伊藤・杉岡(2002)は 3 種類の複合語の特徴として表 1 の特徴を挙げており、明言していない が、実質的にこれらの特徴を 3 種類の複合語の弁別的特徴として扱っている。本稿ではそれらの 特徴は同時に 3 種類の複合語の典型性を決める特徴でもあると考える。これを踏まえれば、例え 13 用形]複合語は大体連濁が起きる(e.g. 模様替え、席替え、代替え、水替え、鞍替え)。一 方、後項が[-立て]の[[X]動詞連用形]複合語は連濁が起きないものが多い(e.g. 写真立て、 傘立て、筆立て、槍立て、モップ立て)。さらに、意味統語においても、この二つの動詞を 後項とした[[X]動詞連用形]複合語は大体同じ意味を示し、同じ統語機能を有する。[-替え] はコトを示す動名詞として用いられ、[-立て]は道具を示す普通名詞として用いられる。つ まり、これらの事例から下記(15)(16)のスキーマが形成されていると考えられる。この ように仮定すれば、同じく「-替え」を後項とする内項複合語は片方が項構造、片方が語彙 概念構造あるいは特質構造で形成されると想定しなくてもよい。 (15)[[X]たて]N ↔ [X をたてる]モノ (16)[[X]がえ]VN ↔ [X をかえる]コト 付加詞複合語についても、4.2 で「ビール太り」と同じように「原因-V」と分析できる 「中年太り」を統語的に言い換えられないのを見たが、[原因-V]を意味する[[X]動詞連用 形]複合語は[[X]太り]の他に、「車酔い」「船酔い」「宇宙酔い」などもある。従って、図 2 のスキーマが抽出されると想定できる。しかし、スキーマレベルではX が V を引き起こ す原因が直接的なのか間接的なのか規定されていないため、「ビール太り」は先行研究で 付加詞複合語とされているが、「中年太り」は「中年で太る」のように統語的に言い換え られず、語根複合語に近いと言える。 [[X]V]VN ↔[SEM X=Cause of V] [[X]太り]VN ↔[X=太る原因] [[X]酔い]VN↔[X=酔う原因] ビール太り 水太り 中年太り 冬太り… 車酔い 船酔い15 乗り物酔い 宇宙酔い… 図2 [[原因]V]の階層構造 14 伊藤・杉岡(2002)が指摘したように、「宛名かき」「宛名がき」のように連濁の有無で意味が変わるも のもある。 15 「船酔い」は音韻的にも「ふねよい」ではなく「ふなよい」となっており、付加詞複合語としての非典 型性を示している。 図 2 [[原因]V]の階層構造
ば、ある[[X]動詞連用形]複合語の X と動詞の関係が「内項(対象)ヲ V」で、後項に連濁が 起きず、そしてコトを意味する普通名詞として用いられれば、その[[X]動詞連用形]複合語は 典型的な内項複合語となる16。反対に、ある[[X]動詞連用形]複合語は表1 の特徴の中の一つも 欠いていれば、その[[X]動詞連用形]複合語は内項複合語としての典型性が下がる。ここまで の内項複合語に関する考察をまとめると表 2 になる。マイナス(-)は無標の特徴を表し、プラ ス(+)は有標の特徴を表す。プラスが多いものほど典型性が低いことを表す。 「ゴミ拾い」は語構成と意味が透明で、音韻的にも連濁が起きず、普通名詞として用いられる ため、内項複合語として最も典型的だと言える。それに対し、「人殺し」は語構成及び意味統語 は無標であるが、音韻変化が起きている。そして、「粉落とし」は意味が不透明であるが、他の 3 つの特徴は無標である。つまり、この 2 つの内項複合語は「ゴミ拾い」よりも内項複合語とし ての典型性がやや下がっている。「猫可愛がり」は動名詞として用いられるほか、意味も不透明 である。「枕返し」は意味が不透明である(cf. 恩返し)他に、後項も連濁している。この 2 つは さらに内項複合語としての典型性が下がっている。「虫干し」は意味が不透明で、動名詞として も用いられる(cf. 布団干ほし)。さらに後項も連濁しており、内項複合語としての非典型性を示し ている。 ここで注目されたいのは表1に示した内項複合語の特徴はその典型性を示すと同時に、他の 2 種類の複合語との弁別的特徴でもあることである。動名詞として用いられるのは付加詞複合語の 特徴であるため、動名詞として用いられる「猫可愛がり」「虫干し」は内項複合語としての非典型 性を示していると同時に、付加詞複合語との連続性を示唆していると言える。特に「虫干し」は 語構成の上では内項複合語だが、動名詞用法があり、意味も不透明で、連濁するといった付加詞 複合語の特徴も持っているため、最も付加詞複合語に近いと思われる。 付加詞複合語は表 2 にはないが、内項複合語より様々な X と結合し得る点で、そもそも内項 複合語より語根複合語に近い特徴を持つと思われる。但し、X が語根複合語ほど自由ではなく、 表 1 の 8 つの意味に限定されるため、独自のカテゴリーを保持していると考えられる。しかし、 表 2 内項複合語のメンバーの典型性と非典型性 特徴 例 語構成 - 透明 + 不透明 統語 - 普通名詞 + 動名詞、形容名詞 意味 - 透明 + 不透明 音韻 - 音韻変化なし + 音韻変化あり ゴミ拾い - - - - 人殺し - - - + 粉落とし - - + - 猫可愛がり - + + - 枕返し - - + + 虫干し - + + +
138 上で見たように、「中年太り」のような、[原因 - 動詞]と分析できるが、統語的に言い換えられ ないメンバーが数多く見られる。統語的に言い換えられないというのは語根複合語の特徴である ため、このような複合語は付加詞複合語と語根複合語との連続性を示していると言える。 最後に、筆者が集めた語根複合語に分類される例の中には、コトを意味する例があった(例: 雨宿り、(縄跳びの)あや飛び)。語構成を重視し、X と動詞の関係が様々な[[X]動詞連用形] 複合語を語根複合語と見なすならば、日本語にはモノを意味せず、コトを意味する語根複合語が 存在していることになる。だが、それらはあくまでも語根複合語として非典型的である。 以上の考察を図示すると以下の通りになる。同心円はカテゴリーを示し、円心に近ければ近い ほど典型例であることを示し、円心から遠ければ遠いほど非典型例であることを示す。円と円が 重なり合っている部分に位置する[[X]動詞連用形]複合語は二つのカテゴリーに跨るものを示 す。また、円の上側に位置する例と円の下側に位置する例は同じ円の中であれば、非典型性の程 度は同じである。 なお、内項複合語と語根複合語にも連続性があると考えられるが、図 3 にはそれは反映されて いないことを断っておく。 8 .終わりに 以上、本稿では先行研究の主張に一致しない[[X]動詞連用形]複合語を指摘し、それをコン ストラクション形態論及びプロトタイプ理論の枠組みで捉え、その非典型性を示すとともに、三 者の連続性を示した。同一のカテゴリー内のメンバー同士にも連続性がある(つまり、非典型的 でありながらも他のカテゴリーに入らないメンバーがある)と考えられるが、別稿に譲る。 参考文献 淺尾仁彦(2007)「複合語の生産性と文法的性質」『日本言語学会第134回大会予稿集』416-421. _(2009)「用法基盤モデルに基づいた複合語形成の生産的パターンの抽出」『言語処理学会第15年次大会発 す。円と円が重なり合っている部分に位置する[[X]動詞連用形]複合語は二つのカテゴリー に跨るものを示す。また、円の上側に位置する例と円の下側に位置する例は同じ円の中で あれば、非典型性の程度は同じである。 なお、内項複合語と語根複合語にも連続性があると考えられるが、図3 にはそれは反映 されていないことを断っておく。 [[原因]太り] [[対象]替え] 中年太り 虫干し 人形焼 異臭騒ぎ 手作り ゴミ拾い ビール太り 粉落とし 猫可愛がり 語根複合語 付加詞複合語 内項複合語 図3 [[X]動詞連用形]複合語の連続性 8. 終わりに 以上、本稿では先行研究の主張に一致しない[[X]動詞連用形]複合語を指摘し、それをコ ンストラクション形態論及びプロトタイプ理論の枠組みで捉え、その非典型性を示すとと もに、三者の連続性を示した。同一のカテゴリー内のメンバー同士にも連続性がある(つ まり、非典型的でありながらも他のカテゴリーに入らないメンバーがある)と考えられる が、別稿に譲る。 参考文献 淺尾仁彦(2007)「複合語の生産性と文法的性質」『日本言語学会第 134 回大会予稿集』416-421. ____(2009)「用法基盤モデルに基づいた複合語形成の生産的パターンの抽出」『言語処理 学会第15 年次大会発表論文集』749-752. 伊藤たかね・杉岡洋子(2002)『語の仕組みと語形成』研究社. 影山太郎(1993)『文法と語形成』ひつじ書房. 図 3 [[X]動詞連用形]複合語の連続性
表論文集』749-752. 伊藤たかね・杉岡洋子(2002)『語の仕組みと語形成』研究社 . 影山太郎(1993)『文法と語形成』ひつじ書房 . _(1999)『形態論と意味』くろしお出版 . 斎藤倫明(2005)「語形成と選択制限―文法と語彙の間―」『日本語文法』5 巻 1 号、121-137. 沈晨(2013)「日本語連用形名詞の自立性の段階について」『第 4 回コーパス日本語学予稿集』151-158、国立国語研究 所 . 杉岡洋子・小林英樹(2001)「名詞+動詞の複合語」影山太郎(編)『日英対照 動詞の意味と構文』242-268、大修館 書店 . 田川拓海(2010)「X +動詞連用形複合語の記述的整理:音韻論的特徴を中心に」『筑波学院大学紀要第 5 集』157-163. 陳奕廷・松本曜(2018)『日本語語彙的複合動詞の意味と体系―コンストラクション形態論とフレーム意味論―』 ひつじ書房 . 竝木崇康(1985)『語形成』大修館書店 . 野田大志(2010)「[名詞+他動詞連用形]型複合名詞の構文的多義性に関する一考察」『日本認知言語学会論文集』 第10巻、204-214. 西尾寅弥(1988)『現代語彙の研究』明治書院 . 安井泉(2010)『ことばから文化へ - 文化がことばの中で息を潜めている』開拓社 . 由本陽子(2009a)「複合形容詞形成に見る語形成のモジュール性」由本陽子・岸本秀樹編『語彙の意味と文法』く ろしお出版、209-229. _(2009b)「名詞を含む複合形容詞」影山太郎編『日英対照 形容詞・副詞の意味と構文』大修館書店、 223-257. _(2015)「名詞+動詞」複合語の統語範疇と意味的カテゴリー」益岡隆志(編)『日本語研究とその可能性』 開拓社、80-105. 吉田妙子(2008)「動詞由来複合語の語構成から覗く日本の食卓文化-『茶碗蒸し』か『土瓶蒸し』か-」『大学院 教育改革支援プログラム「日本文化研究の国際的情報伝達スキルの育成」活動報告書平成20年度海外教育 派遣事業編』お茶の水女子大学、237-246.
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辞書
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コーパス
注 1 外項(external argument)は「受取人払い」などごく一部の例を除き、一般的に動詞と複合できないとされ ている。 2 沈(2013)は「切り *(がいい)」のような特定の構文でしか現れない連用形を「構文補助タイプ」と呼び、「組 み」のような単独でも用いられる連用形を「自立タイプ」と呼んでいる。そして、「海岸沿い」の「沿い」のよ うに単独では用いられないものを「複合語タイプ」と呼んでいる。内項複合語の中でモノ名詞として用いられ るものであっても、例えば「野菜炒め」の「* 炒め」は単独では用いられないため、「N+N」という構造を語根 複合語とするのは必ずしも適切ではない。
3 英語の story-teller や can opener もそれぞれ人、道具を表すが、語根複合語ではなく、動詞由来複合語と位置 付けられている(竝木1985、杉岡・小林2001) 4 由本(2009a)の主張による。 5 国立国語研究所『複合動詞レキシコン』Web データに基づく複合動詞用例データベース『日本語複合動詞リ スト(ver.1.3)』(陳・松本2018も参照) 6 「替わり」が接尾辞化していると考えれば、「挨拶替わり」は派生語と見なすことも可能である。 7 伊藤・杉岡(2002:112)は、内項複合語は[-V]素性を持つ普通名詞であるため、「* ボール投げする」が非 文で、それを許容する人もいるのはくだけた話し方で「を」が省略されるからだと説明している。 8 透明性とは、ある複合語の語構成が分析できるかどうか、かつ語構成要素から話し手及び聞き手にその意味 が推測できるかどうかによる(Bauer1983)。 9 動詞が連濁する内項複合語に関する指摘は吉田(2008)、田川(2009)もしている。 10 由本(2015)も同じ論点である。 11 4.1.1節で指摘したように、二種類の分析が可能な例もあるため、この統計に個人差によって数字が前後する可 能性がある。 12 厳密には、統語機能によって、さらに普通名詞と動名詞、形容名詞に分けるべきであるが、ここでは便宜上、 形態に基づいて N で一括する。また、紙幅の都合上、二段目以降の「SEM」は省略する。 13 紙幅のため、連用形「continuative form」を V と略す。また、語根複合語と付加詞複合語は一部略して表示 しているもの (…) がある。 14 伊藤・杉岡(2002)が指摘したように、「宛名かき」「宛名がき」のように連濁の有無で意味が変わるものもあ る。 15 「船酔い」は音韻的にも「ふねよい」ではなく「ふなよい」となっており、付加詞複合語としての非典型性を 示している。 16 直接「- する」をつけ、動名詞として用いられる内項複合語は(4)に見たように条件付きのものであること からも、そのような内項複合語は典型的な内項複合語ではないと考えられる。 謝辞 本稿は、2020年国立政治大学日本語文学系国際研討会(2020年10月17日、於国立政治大学)にお いて発表した原稿を加筆・修正したものである。また、査読者に貴重なコメントを頂き、厚く感謝の意 を申し上げる。 (葉 秉杰 国立政治大学日本語文学系助理教授/言語文化交流論 修了生)