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<新刊紹介>井上文則著『軍人皇帝時代の研究―ローマ帝国の変容―』岩波書店2008年11月刊226頁7,245円

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<新刊紹介>井上文則著『軍人皇帝時代の研究―ロー

マ帝国の変容―』岩波書店2008年11月刊226頁7,245

著者

宮崎 雄介

雑誌名

関学西洋史論集

33

ページ

45-46

発行年

2010-03-30

URL

http://hdl.handle.net/10236/12889

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井上 文則 著

『軍人皇帝時代の研究

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ロ ーマ帝国の変容

岩波書店 2008年11月刊 226頁 7,245円

宮 崎 雄 介

本書は、 従来ロ ーマの政治体制が、 元首政か ら専制君主政へ と推移 し て い く 混乱に 満 ち た 「過渡期」 と し て みな さ れて き た、 軍人皇帝時代の政治史研究書で あ る。 軍人皇帝時代は、 五賢帝時代に続い た セ ウ ェ ル ス朝が235年 に断絶 し てか ら デ イ オ ク レ テ イ ア ヌ ス帝 が即 位す る284年 ま で のほぼ半世紀 に わた る。 し か し な が ら そ の史 料状況は劣悪で あ り 、 ロ ーマ史研究 におけ る軍人皇帝時代研究は、 遅れて い る と いわ ざ る を得 ない。 近年 P ・ ブラ ウ ンの研究 を契機 と し て、 危機 と 破減の時代 と し ての軍 人皇帝時代像について も見直 し が迫 ら れる こ と と な っ た。 し か し なが ら その見直 し は、 主に社会経済史や心性史の面で一定の進展 を見せたが、 政治史において国内外問わず 研究は依然低調で あ っ た と い う こ と がで き る だ ろ う。 本書は軍人皇帝時代 を中心 と し た時期の統治階層の移 り 変わり の実態 を追及 し つつ、 そ れ と 密接に関連す る と 想定 さ れる ロ ーマ帝国の統治構造 を解き 明かす こ と で、 前期 ロ ーマ帝国か ら後期 ロ ーマ帝国への変容過程 を問 う と い う 大 き な主題に対す る一つの 答 え、 さ ら には単 な る過渡期 と し て ではな い軍人皇帝時代像 を提示 し て い る。 こ れま での低調で あ っ た軍人皇帝時代研究史の動向か ら も、 古代ロ ーマ史研究において本研 究が持つその重要性は指摘す るま で も ない。 本書は序章、 終章に加え 1 部 4 章、 2 部 3 章か ら構成 さ れて お り、 以下簡単で はあ る がその内容 を順に紹介 し て いき たい。 第 1 部 「『騎士身分の興隆』 再考」 では、 前期ロ ーマ帝国か ら後期ロ ーマ帝国への 変容過程を問 う 上で重要な要因 であ る統治体制の変容、 つま り 統治階層交替 を考察の 主 な対象 と し て い る。 こ こ で い う 統治階層の交替 と は、 元老院議員 に代わ っ て、 帝国 統治の要職へ騎士身分が進出 し て い っ た現象、 すなわ ち 「騎士身分の興隆」 を指 し て い る。 第 1 章 「『 ガ リ エ ヌ ス勅令』 を め ぐ っ て」 では、 騎士身分興隆 に決定的 な意味 を 持 っ た と 考 え ら れて き た、 皇帝 ガ リ エ ヌ スが発 し た 「 ガ リ エ ヌ ス勅令」 を、 そ の存

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在の有無か ら再考 し て いる。 その結果、 騎士身分の興隆時期 を、 通説的理解で あ る ガ リ エ ヌ ス帝期 と は異 な り 、 そ れに先立 つ ウ アレ リ ア ヌ ス帝期 に遡 る こ と がで き る点 を 指摘 し てい る。 第 2 、 3 章においては、 軍人層台頭の制度的背景 をそれぞれ、 官職 も し く は称号で あ っ た プロ テ ク ト ルの性質 の変遷、 常設機動軍の形成 を手がか り に論 じ、 興隆 し た騎士身分が軍人層 で あ っ た こ と 、 そ し て その主要因 が機動軍の出現 によ る帝 国の統治構造の変化 にあ っ た と い う 論 を展開 し て い る。 第 4 章では、 ロ ーマ帝国の一 地方パル ミ ラ の支配者 で あ る オ ダエ ナ ト ウスの経歴 を復元 す る こ と で、 先行す る章で 得 ら れた結論 の例証 を試 みて い る。 第 2 部 「 イ リ ュ リ ア人のロ ーマ帝国」 では、 軍人皇帝時代の中で も史料が著 し く 僅 少 で研究が困難で あ る、 いわゆる 「 イ リ ュ リ ア人皇帝の時代」 を舞台 に、 興隆す る騎 士身分の多 く を占めたイ リ ュ リ ア人 を主人公 と し て論が進め ら れて い く 。 第 5 章では、 ウ アレ リ ア ヌ ス帝 と ガ リ エ ヌ ス帝期 に創設 さ れた機動軍 が継承 さ れて い た こ と を 確認 し、 こ れま で皇帝 た ちの権力基盤や帝国統治 のあ り 方 な どの基底的 な問題について あ ま り 論 じ ら れて こ なか っ た 「 イ リ ュ リ ア人皇帝の時代」 を理解す る上 で、 一 つ の手が かり を提示 し て い る。 第 6 章は、 その即位の不可解な状況に も関わ らず、 大方の先行 研究が無視 し て き た タ キ ト ウス帝即位の謎につ いて新 た な史料批判 を通 し て通説的理 解 を批判的 に論 じ て い る。 その中 で元老院の持 っ た あ る一定の影響力 につ いて言及 し て い る。 第 7 章では、 コ ンス タ ンテ イ ヌ ス帝の治世に再度現 れた騎士身分か ら元老院 議員への統治階層の交替 と い う 事象に対 し て、 「 イ リ ュ リ ア人皇帝の時代」 後の軍人 層の動向 を探 る こ と を通 し て その答え を提示 し て い る。 ロ ーマ帝国が事実上 の分割統 治 に至 っ た こ と で、 イ リ ュ リ ア人の全帝国規模で の影響力が消減 し、 新 た な帝国の結 合力の担い手 と し て 伝統的支配層で あ る元老院議員 が再 び登用 さ れる よ う に な っ た と い う 結論は、 非常 に説得力 のあ る魅力的 な論旨で あ る と 思われる。 紙幅の都合上、 各章の ご く 簡単 な概要 を紹介す る に と どま っ たが、 軍人皇帝時代 と い う さ ま ざま な事情か ら極めて研究 が困難 な時代 を手 がか り に、 前期 ロ ーマ帝国か ら 後期ロ ーマ帝国への変容過程 を明 ら かにす る と い う 、 スケ ールの大 き い議論が本書全 体 を通 し て展開 さ れてお り、 筆者の意気込みが伝わ っ て く る意欲的 な研究書で あ る。 通説的理解 と は異 な る視点、 緻密な史料批判か ら生ま れる説得力、 そ し て何よ り 従来 ブ ラ ッ ク ボ ッ ク スの状態で あ っ た軍人皇帝時代の政治史研究 を考察の対象 と し てい る 点 が、 本書 の最大 の魅力 で あ る と い う こ と がで き る ので は な い だ ろ う か。 ま た、 その 学問的意義は計 り 知れな い。 今後、 筆者の新たな研究が期待 さ れる。

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