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眼底に魅せられて

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Academic year: 2021

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眼底に魅せられて

秋山 英雄

1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科眼科学 平成 8年に私が入局しました群馬大学眼科学教室は, 先 代の清水弘一教授から現在の岸章治教授まで網膜硝子体を 一貫して専門としております. 入局と同時に緑内障グルー プに配属されましたが, 網膜硝子体も並行して診療, 研究 と行ってきました. 緑内障に関する英語論文は一編もなく, 興味関心は網膜硝子体にありました. 網膜は眼底にある薄 い神経の膜で, ものを見るために重要な役割を果たしてい ます. 網膜には明かりや色を感じる神経細胞が敷きつめら れ, 無数の細かい血管が張り巡らされています. 眼球で消 費される酸素の約 90%は網膜で われる一方, 網膜はでき るだけ透明度を保つため必要最小限の血管しか張り巡らさ れていません. それゆえ循環障害により一定の網膜虚血が 起こると, 網膜や隅角に新しい血管が成長してきます. こ の血管は脆弱のため切れて出血を生じやすく, 血管透過性 が亢進しているため膜が張ってきます. その結果, 硝子体 出血や網膜剥離がおこり, 視機能が脅かされてしまいます. 本稿では, 大学院, 留学を通じて行った新生血管に関する 研究内容の一部を紹介したいと思います. 大学院時代 眼科医 3年目の夏, 佐久 合病院に勤務しておりました ところ, 木村保孝助教授から電話がありました.「来月の大 学院試験を君が受けることになったからよろしく!」という 内容でした. それまでの眼科は臨床研究が中心で大学院生 がおりませんでしたが, 着任されたばかりの岸章治教授が 基礎研究の重要性を感じられていました. 不真面目な学生 時代を過ごした自 にとって, それは突然の やる気ス イッチ となってしまいました (笑).平成 11年度から群馬 大学第 2内科にお世話になり, 永井良三教授のもとで助教 授をされていた倉林正彦先生 (現循環器内科教授) に指導 していただきました. 当時の主な研究テーマは転写でした. 網膜芽細胞腫の cell lineである Y79 に all-transレチノイ ン酸をふりかけて VEGF 遺伝子発現が誘導されることを 証明しました.

このテーマをそろそろ IOVS (Investigative Ophthalmol-ogy &Visual Science) に投稿しようかという時の出来事を 思い出します. 光刺激が網膜内の all-transレチノイン酸濃 度を上昇させるという論文を偶然 Pub Medで見つけまし た. ひょっとすると Y79 に光刺激をしたら VEGF が誘導 されるかもしれないという仮説がひらめきました. その晩, 研究指導医の田中亨先生と居酒屋で酒を酌み わしなが ら, その話題にふれたところ, 先輩は内科医でありながら その仮説に大変興味を示し, 実験の細部にわたり話が弾み ました. 翌日, 即実行. まず懐中電灯をインキュベータ内に おいて Y79 培養細胞に照射しました. 火災などのトラブル が起こるといけないので, 2時間おきにインキベータを観 察しました. すると高温のためか電池が一晩ももたないこ とに気づき, そのかわりに電球をインキュベータ内に設置 したところ, 問題なく 3日間照射をすることができました. ― 37― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成27年12月13日 修正 平成27年12月18日 採択 平成27年12月28日 論文別刷請求先: 秋山英雄 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科眼科学 電話:027-220-8338 E-mail:akiyamah47@gunma-u.ac.jp

流 れ

2016;66:37∼38

(2)

培養細胞を回収してノーザンブロットをしたら何と予想が 的中!現在も原因がはっきりしない加齢黄斑変性症のメカ ニズムになりえるかもと, この時の胸の高まりは説明しが たく, 一生忘れることのできない出来事となりました. これら 2つの論文のほかに, 同時に進めていたプロジェ クトがありました. von Hippel-Lindau (VHL) 遺伝子を発 現するアデノウイルスを 1年半かけて作成しました. VHL 遺伝子はユビキタスに発現しているがん抑制遺伝子で, 酸 素定常状態では Hypoxia inducible factor (HIF)-1αは VHL protein によってユビキチンによる標識を受けてプロ テアソームで 解されます. サル眼の主要な網膜静脈を光 凝固で血管を途絶させると, 1週間もしないうちに網膜や 隅角に新生血管が発生してきます. このサル新生血管モデ ルに対してアデノウイルスの硝子体注射をして VHL 遺伝 子を過剰発現させると, 眼底や隅角の新生血管は抑制され ました. 留学時代 2003年 8月から 2年間アメリカメリーランド州ボルチ モアにある Johns Hopkins大学 Wilmer Eye Instituteで基 礎研究を行いました.ボスである Peter Campochiaroは M. D.でありながら, 子生物学的知識も持ち合わせている先 生でした. ラボのテーマは大きく けて 2つあり, 網膜血 管新生と神経保護に関するものでした. 大学院生時代に VEGF に関する研究をしていたことから, 血管新生研究グ ループに属していました. 自 に与えられた仕事はおよそ 2つに けられ, ①マウス血管新生モデルに対してベン チャー企業が持ってきた薬を, さまざま方法で投与し, そ の血管新生の prevention や regression効果をみる. ②血管 新生にかかわる遺伝子のトランスジェニックマウス, ある いはノックアウトマウスを作製してその機能をみる, でし た. ①については 2本論文となり, そのうちの 1本は PDGF-Bアプタマーが網膜の血管を伴った増殖膜を抑制 できるという内容です. 現在, このドラッグを って加齢 黄斑変性の治験が進められており, 自 がかかわった仕事 が臨床に生かされつつあるのは大変幸せなことです. ②に ついては, 莫大な時間を費やしたにも関わらず残念な結果 に終わりましたが, マウスの管理方法を基礎から学べたこ とはよかったと思っています. 現在進行中の研究 2005年に帰国後, ふたたび群馬大学眼科学教室のスタッ フとして臨床・教育・研究に従事しております.日本有数の 手術件数を誇るこの施設で, たくさんの硝子体手術や緑内 障手術を経験させていただきました. フルオレセイン蛍光 眼底造影や光干渉断層計 (OCT) といった革新的な検査機 器は, 日本で初めて群馬大学に導入されました. 今まで やってきた 子生物学的な知識とあわせて, 当科の強みで あるイメージングに焦点を合わせて研究を進めておりま す. 臨床で得られた OCT 画像の解析を行い, 新しい知見を 報告し続けています. 一方では,群馬大学・大学院工学研究科応用化学・飛田成 教授と共同でイリジウム錯体のりん光が酸素によって顕 著に消光されることを利用して, 低酸素組織をイメージン グし, その酸素レベルを定量・画像化するための最適発光 プローブの開発,in vivo イメージング技術の確立を目標と しています. 眼科学的に開発したい技術は, 網膜組織の酸 素 圧絶対値であり, 網膜虚血が関係している糖尿病網膜 症や網膜静脈 枝閉塞症における病態解明です. 先進国で 増加しつつある加齢黄斑変性の原因はまだはっきりしていま せんが,虚血が関係しているのではという説もあります.興 味深い研究ができる環境を与えてくださった竹内利行教授, 飛田成 教授, 穂坂正博教授, 吉原利忠先生, そして実験に 協力してくれている下田幸紀助教と向井 亮助教に感謝し つつ, 今後も新知見のために邁進していきたいと思います. 参 文献

1. Akiyama H, Tanaka T, Maeno T, et al. Induction of vegf gene expression by retinoic acid through sp1-binding sites in retinoblastoma y79 cells. Invest Ophthalmol Vis Sci 2002; 43:1367-1374.

2. Akiyama H,Tanaka T,Doi H,et al. Visible light exposure induces vegf gene expression through activation of retinoic acid receptor-alpha in retinoblastoma y79 cells. Am J Physiol Cell Physiol 2005;288:C913-920.

3. Akiyama H, Tanaka T, Itakura H, et al. Inhibition of ocular angiogenesis by an adenovirus carrying the human von hippel-lindau tumor-suppressor gene in vivo. Invest Ophthalmol Vis Sci 2004;45:1289-1296.

4. Akiyama H, Mohamedali KA, E Silva RL,et al. Vascular targeting of ocular neovascularization with a vascular en-dothelial growth factor121/gelonin chimeric protein. Mol Pharmacol 2005;68:1543-1550.

5. Akiyama H,Kachi S,Silva RL,et al. Intraocular injection of an aptamer that binds pdgf-b:A potential treatment for proliferative retinopathies. J Cell Physiol 2006;207:407-412. 6. Sakurai K, Akiyama H, Shimoda Y, et al. Effect of intravitreal injection of high-dose bevacizumab in monkey eyes. Inv Ophthalmol Vis Cci 2009;50:4905-4916. 7. Mukai R, Akiyama H, Tajika Y, et al. Functional and

morphologic consequences of light exposure in primate eyes. Inv Ophthalmol Vis Sci 2012;53:6035-6044.

8. Akiyama H,Shimoda Y,Fukuchi M,et al. Intravitreal gas injection without vitrectomy for macular detachment as-sociated with an optic disk pit. Retina 2013;33:363-370. 9. Akiyama H, Kashima T, Li D, et al. Retinal ganglion cell

analysis in lebers hereditary optic neuropathy. Ophthalmol 2013;120:1943-1944.

10. Akiyama H, Itakura H, Li D, et al. Retinal ganglion cell analysis in multiple evanescent white dot syndrome. BMC Ophthalmol 2014;14:132.

眼底に魅せられて

参照

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