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自動運転向け道路インフラシステムの運用効果測定シミュレーター

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Academic year: 2021

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(1)自動運転向け道路インフラシステムの 運用効果測定シミュレーター 菊池  典恭   矢野  貴大 中林  昭一   浜口  雅春  自動運転車の安全走行実現への取組みが進展している。 しかし、周囲の安全を確保し、 より快適で円滑な走行の実. ಕ࿑΢ϱϓϧεητϞΝ಍೘ͤΖ৖߻. 現には、人間による運転が自動化されるだけでは十分とは 言えない場合がある。自動運転車は車載の自律系センサー. ଐౕ௒੖ ௪৶൥ҕ. により周囲の安全を認知・判断しているが、高速道路の合. ࿑ଈ‫ؽ‬. ࿑ऄؔ௪৶ ऄྈ৚ๅ. 流シーンなど建造物に遮られた場合では、合流側を走行 する車両(以下、合流車両)は、本線側を走行する車両(以 下、本線車両)の位置や速度などを合流の直前にならなけ れば把握できず、合流のタイミング調整が困難な状況が. ऄྈ‫ݗ‬ड़൥ҕ. ࿑ଈιϱγʖ. ಍೘͢͵͏৖߻. 発生する。安全・快適な走行を目的とし、 より円滑な合流を. ଐౕ௒੖. 実現するためには、本線車両の情報を合流車両に提供す る新たな支援システム、 すなわち、道路インフラシステムの 導入・整備が必要である。 用化が期待される道路インフラシステムについて設置条 件の検討及び運用効果の評価を進めてきた。本稿では道. ଐౕ.  O K Iは、 自動運転車の円滑な走行を支援するために実. 路インフラシステムの概要及びその運用効果を測定する. ଐౕ௒੖ ֋࢟. ଐౕ௒੖ ֋࢟. ՅଐϪʖϱ఼ً. ためのシミュレーターについて紹介する。. ߻ླྀஏ఼. ߻ླྀऄྈ͹Ғ஖. ಍೘ͤΖ৖߻͹๏͗؉Ώ͖͵ՅଐౕͲ߻ླྀՆ೵ 図 1 道路インフラシステムの概要. 道路インフラシステム  高速道路では交通渋滞が度々発生するため、 さまざまな. 52. 施策が講じられているが、近年でも十分に解決されたとは.  従来のように道路インフラシステムを導入しない場合. 言えない。国土交通省の報告によれば、年末年始の高速. では、自動運転車は車載の自律系センサーにより見通し. 道路の交通損失時間は546万人・時間に及ぶとされ 1)、交. 内に存在する車両しか認知できない。従って、合流の直. 通渋滞の緩和は急務となっている。道路インフラシステム. 前にならなければ本線車両の位置、速度及び車長が検. は、高速道路の交通渋滞を起こす要因の一つとされる合. 出できない。このとき、合流に伴う速度調整は加速レー. 流シーンで、 自動運転車の円滑な走行を実現するものとし. ン起点の通過以降から開始することになるが、加速レー. て期待されている。. ン終端までに本線に合流する必要があるため、本線車両.  道路インフラシステムの概要を図1に示す。道路インフラ. が存在する位置、速度、車長及び加速レーン長によって. システムは、本線車両の位置、速度及び車長の情報を取得. は、大きな加減速を伴い合流せざるを得ない場合が発生. する手段と、 合流車両へ取得した車両情報を伝達する手段. する。. から構成される。レーザーレンジファインダーなどの路側セン.   一 方、道 路インフラシステムを導 入する場 合では、車. サーを本線側に設置し、車両検出範囲内に走行中の車両. 両検出範囲内を走行中の本線車両の位置、速度及び車. を検出する。また、取得した車両情報は有線通信などを経. 長の情報を、合流車両は加速レーン起点に到達する前に. 由し合流側の路側機まで伝送され、 路側機の通信範囲に進. 取得できるため、 この情報を利用して本線車両が存在し. 入した合流車両に向けて路車間通信により伝送される。. ない時刻に合わせつつ、合流車両が合流地点に到達す. OKI テクニカルレビュー 2019 年 12 月/第 234 号 Vol.86 No.2.

(2) るように速度調整すれば、合流時の急激な加速度が回避. 表 1 シミュレーターの設定可能パラメーター例. できる。これにより円滑な合流が実現できる。. ஍͹ྭ. Ϗϧϟʖνʖ ຌતऄྈ͹ଐౕ. シミュレーターの必要性  道路インフラシステムの導入は、定性的には交通流の 円滑化にとって効果が期待できるように考えられる。しか し、道路インフラシステムの有効性をフィールドで定量的 に確認することは容易ではない。交通流として成立するだ けの車両数を公道で発生させて実証することは、規模が大. >NPK@. ߻ླྀऄྈ͹ଐౕʤऄྈ൅ਫ਼࣎ʥ. >NPK@. ຌતऄྈ͹ऄྈ‫ݗ‬ड़൥ҕ. >P@. ௪৶൥ҕ. >P@. ࿑ଈιϱγʖ͹અ஖Ғ஖ ʤ࿑ଈιϱγʖͳՅଐϪʖϱً ఼ΉͲ͹ಕ͹Ε‫཯ړ‬ʥ. >P@. ࿑ଈ‫ؽ‬͹અ஖Ғ஖ ʤ࿑ଈ‫ͳؽ‬ՅଐϪʖϱ఼ًΉͲ ͹ಕ͹Ε‫཯ړ‬ʥ. >P@. ऄྈ੏‫ޜ‬Ϡυϩ. ,'0ɼՅ‫ݰ‬ଐϠυϩ. ऄझຘ͹ऄௗ. ෕௪ऄʁ>P@ ୉‫ܗ‬ऄʁ>P@. ऄझຘ͹ׄ߻. ෕௪ऄʁ ୉‫ܗ‬ऄʁ. で有効性を評価することになる。しかし、道路インフラシス. ऄྈ͹൅ਫ਼ֶؔ.  >භऄؔ@. テムの導入による有効性を評価できるものはこれまで開. ࿑ऄؔ௪৶͹௪৶඾࣯. Φϧʖ͵͢. ࿑ଈιϱγʖ͹ऄྈ‫ݗ‬ड़͹‫ࠫޣ‬. ‫͢͵ࠫޣ‬. きく、現実的ではないためである。このような場合、一般的 には交通流シミュレーターと呼ばれるものを活用し、道路 環境や車両の挙動などをモデル化してコンピューター上. 発されていなかった。 ௪৶Ϡυϩ ʀ௪৶๏ࣞ. ॴཀྵஙԈ࣎ؔ. >භ@. ௪৶‫ؽ‬͹෕‫ིٶ‬. . ಕ࿑‫ڧ؂‬Ϡυϩ. ʀఽ൘Ϡυϩ. ʀॴཀྵஙԈ࣎ؔ. ʀಕ࿑෱ ʀ࿑ଈ‫ؽ‬ʙ࿑ଈιϱγʖ͹અ஖Ғ஖. システム導入による効果の検証方法  道路インフラシステムの導入により合流が円滑になるこ とは、 どのように評価すればよいだろうか。円滑である状態 では合流に伴う車両の挙動が安定する必要がある。さらに、 挙動が安定するとは、加速度が十分に低いまま無理なく合 ऄྈϠυϩ. ࿑ଈ΢ϱϓϧૹ஖Ϡυϩ ʀ‫ݗ‬ड़൥ҕ. ʀ‫ݗ‬ड़‫ࠫޣ‬. ʀऄௗ. ʀऄྈ੏‫ޜ‬Ϡυϩ. ʀऄझ. ʀଐౕ. ʴड़ྙʵ֦ऄྈ͹ଐౕɼՅଐౕɼҒ஖͹৚ๅ ʴ෾ੵʵӣ༽ްՎ. 図 2 シミュレーターの概要. 流の処理が進められ、停止することなく走行が継続できる 状態であると考えられる。このとき、特定の車両挙動のみ が安定すれば良いのではなく、 全体の車両挙動が安定する ことにより、交通流の円滑化は実現される。以上を踏まえて、 定量的に評価する方法を考えると、図3に示すように合流 に伴う各車両の最大加速度(絶対値とする)を統計的に取 得していき、 それを累積分布関数として表し、道路インフラ システムを導入した場合の累積分布関数が、導入しない場.  OKIはこの点に着目し、 自動運転を支援する道路インフ. 合の同分布より、最大加速度の分布として低い方向に移動. ラシステムの実用化に向け、自動運転車や混在する一般. すれば、全体の車両挙動が安定する、すなわち、円滑な合. 車の車両制御モデル、各種道路の上限・下限速度、路車間. 流の実現に有効であるという判断ができると考えられる。. 通信の路側機設置条件や路側センサーの設置条件などを. ऄྈ‫ڏ‬ಊ͗҈ఈ. 取り入れた運用効果測定用のシミュレーターを開発した2) (図2)。本シミュレーターにより、高速道路などの合流シー ンフラシステムを設置する前にシステムの導入効果を確 認できる。なお、道路環境、路側センサーの検知性能や路 車間通信装置の通信性能など、 さまざまな条件を変更して、 設置環境に最適な設備の構築を検証することができる。 例えば、表1に示すような環境を変更して評価することが できる。. ྩ੷෾ා‫਼ؖ‬. ンでの車両挙動の安定性を評価することで、実際に道路イ. 100%. ຌεητϞΝ ಍೘ͪ͢৖߻. ಍೘͵͢. 50%. 0%. χϧ΢ώʖ͗෈ չͶ‫ͪ͏͵ͣ״‬ Ό͹໪ඬ஍  ૺߨ஦͹࠹୉Յଐౕ >*@. 図 3 車両挙動安定性の検証方法. O K I テクニカルレビュー 2019 年 12 月/第 234 号 Vol.86 No.2. 53.

(3)  次に、各車両の走行中の最大加速度をどの程度まで低.  次に、設計による効果を累積分布関数の比較により確. 下させれば、車両が安定したとみなせるのか確認する。文. 認する。道路インフラシステムを導入した図3の領域を満. 献. 3)、4). によれば、 ドライバーが不快に感じず、車両が安定的. たす★の設置条件の場合、満たさない☆の設置条件の場. とみなせる走行は、最大加速度が概ね0.2G(重力加速度). 合、 及び道路インフラシステムを導入しない場合の3パター. 以下となっている。また、普通車とトラックなどの大型車で. ンの結果を図5に示す。. は挙動が安定する最大加速度も異なり、 トラックでは普通.  ★の設置条件の場合では、設計の期待どおりに、発生し. 車より低い加速度で走行することが一般的である。これらを. た全ての合流車両の最大加速度は0.15Gを下回っている. 踏まえ、 現在の検討では、 合流時に伴う全車両にとって走行. ことが確認できる。一方、領域の範囲外の値を用いて設計. 中の最大加速度が0.15G以下となるように道路インフラシ. した☆の設置条件の場合では、0.15Gを上回る車両が存. ステムを設計する方針として進めている。. 在してしまうことが確認できる。道路インフラシステムを導 入しない場合に比べて改善はするが、設計が適切でないと 交通流の円滑化に十分な効果が得られないことが確認で. シミュレーターを用いた設計とその有用性. きる。シミュレーションでは便宜上、0.15Gを大幅に上回る.  具体的に、本シミュレーターにより設計し、 その有用性を. 最大加速度が生じてもそのまま走行を継続させている。し. 確認する。なお便宜上、路側機と路側センサーの設置条件. かし、実際の車両ではこのように大きな加速度を伴って走. に着目して設計することにする。それ以外の値は表1に. 行することはないと考えられ、急ブレーキやアクセルなど. 示す値を用いる。実際の設計では、実環境の調査によりシ. により加速度を調整する、あるいは停止すると推測する。. ミュレーションモデルを最初に精緻化する。今回は路側機. その場合、渋滞の発生や、後続する車両の挙動に影響する. と路側センサーの設置位置を変更しながら、1000台の車. ため、 円滑な交通流を妨げる原因となる。. 両数を発生させシミュレーションを実施した。結果を集計.  実際の導入には路側機や路側センサーの位置を敷設後. し、前述のように最大加速度の累積分布関数を求め、全車. に変更することはコストが非常にかかるため、本シミュレー. 両の最大加速度が0.15G以下となるかを確認する。0.15G. ターを用いて十分な検証を事前にしておく必要がある。. 以下となる場合の設置条件と0.15G以下とならない場合 の設置条件を区別して集計した結果を図4にまとめる。 ˔͹અ‫ܯ‬͹৖߻. . ࿑ଈ‫ؽ‬͹અ஖Ғ஖ >P@. ˓͹અ‫ܯ‬͹৖߻. ಍೘͵͢.   . χϧ΢ώʖ͗෈չͶ‫״‬ ͣ͵͏ͪΌ͹໪ඬ஍. ˔ .  . ˓.  . 図 5 システム導入による効果. . . . . . . . . ιϱγʖ͹અ஖Ғ஖ >P@ 図 4 全走行車両の最大加速度が 0.15G 以下となるための   路側機と路側センサーの設置条件(ハッチ領域内). まとめ  OKIは、 次世代交通分野でインフラと車などが通信手段に より情報交換を行うインフラ協調型ITSサービスの実現を推.  横軸は路側センサーの設置位置、縦軸は路側機の設置. 54. 進している。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が. 位置を示す。青色にハッチされた領域は、走行中の合流車. 推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1. 両が0.15G以下の加速度で合流できる場合の路側機と路. 期/自動走行システム」の一環として2018年度に実施され. 側センサーの設置位置であることを意味する。すなわち、. た「実環境を想定した自動走行通信支援のメッセージセット. この領域内の値を満たすように路側機と路側センサーを. 及びプロトコルに関する調査検討」に参画してきた。. 設置すれば、走行中の全車両の最大加速度は0.15G以下.  この中で実環境で想定される周辺車両による電波の遮. になることが期待できる。. 蔽やマルチパスなどの影響を評価、 さらに今回開発したシ. OKI テクニカルレビュー 2019 年 12 月/第 234 号 Vol.86 No.2.

(4) ミュレーターを利用して、車両挙動の安定化や交通流の円 滑化を支援する通信のメッセージセット及びプロトコルの 検討を進め、道路インフラシステムによる合流時の円滑化 を評価してきた。  今後は、本シミュレーターの検証結果を踏まえてフィー ルドでの検証を重ね、 自動運転の普及と道路交通に関する さまざまな課題の早期解決を目指して、道路インフラシス テムの実用化に幅広く取り組んでいく。      ◆◆. 1)国土交通省:高速道路の交通状況ランキング(平成27 年年末年始)、http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/pdf/ ranking_5.pdf 2)菊池典恭、矢野貴大、中林昭一、金子富、浜口雅春:路車 間通信を用いた合流支援システムによる車両挙動安定性 の評価、第18回情報科学技術フォーラム、2019年 3)田中裕章、 竹森大祐、 宮地智弘、 入部百合絵、 小栗宏次:自 動車の制動時の安心感に関する研究、 DENSO TECHNICAL REVIEW、Vol.21、2016年 4)橋本博、川越麻生、岡山巧:大型トラックの制御時減速 度調査、JARI Research Journal、Vol.30、No.11、2008年. 菊池典恭:Noriyasu Kikuchi. 情報通信事業本部 社会イン フラソリューション事業部 コンポーネント開発第二部 矢野貴大:Takahiro Yano. 情報通信事業本部 社会インフ ラソリューション事業部 コンポーネント開発第二部 中林昭一:Shoichi Nakabayashi. 情報通信事業本部 社会 インフラソリューション事業部 コンポーネント開発第二部 浜口雅春:Masaharu Hamaguchi. 情報通信事業本部 IoT アプリケーション推進部. 自律系センサー  車両単独で周辺の障害物などを検知できるレーダーやカ メラなどの車載センサーのこと。 路車間通信  LTEなどの基地局を介さない、道路に設置した通信設備 と自動車間で行われる直接通信のこと。 累積分布関数  確率変数Xがある値x以下となる確率を表す関数のこと。. O K I テクニカルレビュー 2019 年 12 月/第 234 号 Vol.86 No.2. 55.

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