1 はじめに 自治体職場には,保健,福祉,医療,消防,教育,学 校給食,清掃,上下水道など,現業から事務まで様々な 職場があり,ハザード(危険有害性)も多種多様で,短 い期間で行われる人事異動により,安全衛生に関する人 材育成も難しい1,2).また,最近では正規職員が減少し, 非正規職員が増加していることや3,4),安全衛生管理体制 の整備の必要性も指摘されており5),これらに対応する ための一つの方法として,参加型安全衛生活動を活用 し6),労働安全衛生マネジメントシステム(Occupational
Safetyand HealthManagementSystem;以下OSHMS) を導入することがあげられる. 2018年 にISO45001が 発 効 し, 多 く の 事 業 場 が OSHMSを 導 入 す る こ と に 関 心 を 寄 せ て い るが7), Robsonらによる労働安全衛生マネジメントシステムの 導入効果に関するシステマティックレビューでは,13 の 論 文 が 取 り 上 げ られ8), そ の 中 でBunnら に よ り OSHMSの導入効果が確認されているものの9),導入効 果の評価方法に課題が残るとされている.前報では多様 な業種の集合体である自治体職場へOSHMS導入を進 め,導入過程の課題ともたらされた効果について検討し, リスクアセスメント手法を取り入れた研修を実施するこ とが実践的な安全衛生活動を進める上で効果的であるこ とや,OSHMS導入作業の進捗とともに労働災害発生件 数 の 減 少 が み ら れ た こ と を 報 告 した10). し か し, OSHMSを導入している自治体は全国的に寡少であり, 自治体職場にOSHMSを導入して長期間に渡って観察し た研究も行われていない.また,自治体職場の中でも, 労働災害の年千人率をみると,医師・歯科医師38.45, 清掃業務員30.26,調理員25.19,看護師21.47と現業職 場では,労働災害の発生率が高く3),労働災害の抑制が 課題となっている. そこで本研究では,前報で対象とした自治体職場にお いて,OSHMSを導入・運用し,その状況について長期 間観察を行い,リスクアセスメントの確実な実施などに よるOSHMSの導入・定着が労働災害発生率へ及ぼす影 響を評価することを目的とした. 2 対象と方法 1)OSHMSを導入したO市の特性とOSHMS導入前後 の経緯 今 回 対 象 と し た 自 治 体 職 場 で あ るO市( 人 口 約 114,000人)の2018年度の職員の構成を表1に示した. 年間を通して在籍する正規・非正規職員についてみると, 活動初期にあたる2008年度は,正規職員1,595人(男性 表1 安全衛生委員会別の職員数(2018年度) 安全衛生委員会 正規職員 非正規職員 合計 人数 (%) 人数 (%) 人数 本庁事務系職場 419 (76.7) 127 (23.3) 546 環境(清掃) 47 (88.7) 6 (11.3) 53 環境(し尿) 25 (92.6) 2 (7.4) 27 環境(総務) 42 (76.4) 13 (23.6) 55 学校給食 20 (62.5) 12 (37.5) 32 教育委員会 37 (59.7) 25 (40.3) 62 保健福祉部 173 (69.5) 76 (30.5) 249 消防 126 (94.0) 8 (6.0) 134 企業局 69 (83.1) 14 (16.9) 83 市立病院 449 (88.0) 61 (12.0) 510 総 計 1407 (80.4) 344 (19.7) 1751
自治体職場における労働安全衛生マネジメントシステム導入・定着に
よる労働災害の抑制
渡 辺 裕 晃
*
1,2,伊 藤 昭 好
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1,原 邦 夫
*
1,佐々木 毅
*
3 自治体職場を対象に参加型アプローチを用いてOSHMS を導入・運用し,その状況について17 年間観察を 行い,リスクアセスメントの確実な実施などによるOSHMS の導入・定着が労働災害発生率へ及ぼす影響を評 価した.今回対象とした自治体職場で,OSHMS の導入段階を「導入前(2002~2006 年)」,「導入期(2007~ 2011 年)」,安全衛生活動評価表の評価軸のすべての達成度合いが90%を超えた「定着期(2012~2018 年)」に 分けて,労働災害の年千人率の推移を比較した.その結果,現業職場と比較して非現業職場ではOSHMS の導 入・定着による労働災害の減少は認めなかった.一方,現業職場の労働災害の年千人率は,OSHMS の導入前 に比べ,「定着期(2012~2018 年)」が有意(p<0.01)に低かった.また同時期の現業職場の年千人率は,全国 の自治体のそれを有意(p<0.01)に下回っていたことも確認された.これらの結果から,OSHMS の導入・定 着による現業職場における労働災害の抑制効果が示唆された. キーワード:OSHMS,リスクアセスメント,自治体職場,参加型職場環境改善トレーニング, 安全衛生活動評価表原稿受付 2019年11月7日(Received date: November 7, 2019) 原稿受理 2019年12月20日(Accepted date: December 20, 2019)
J-STAGE Advance published date: January 31, 2020 *1産業医科大学産業保健学部安全衛生マネジメント学 *2大牟田市企画総務部職員厚生課 *3労働安全衛生総合研究所産業ストレス研究グループ 連絡先:〒836-8666 大牟田市有明町2-3 大牟田市企画総務部職員厚生課 渡辺裕晃 E-mail: [email protected] doi: 10.2486/josh.JOSH-2019-0024-GE 原著論文
1,051人,女性544人),非正規職員182人(男性50人, 女性132人),平均年齢43.92±10.48歳であった.2018 年度は,正規職員1,407人(男性826人,女性581人), 非正規職員344人(男性121人,女性223人),平均年齢 44.72±11.59歳であった. 2002~2018年度までの正規職員と短期雇用を含む非 正規職員の推移を図1に示す.図からわかるように,正 規職員が減少し,非正規職員が増加している.このよう な傾向は全国の自治体でみられる3,4). 2007年度から,安全衛生委員会委員等の関係者向け のOSHMS導入のための研修や,各職場の安全衛生上の 課題を把握し,それらの対策を自ら考えるようにするた めのリスクアセスメント研修を実施した.なお,O市に は事業場を基準に10の安全衛生委員会が設置されてい る10).2009年度には,市長による安全衛生方針が表明 されるとともに11),それに基づき部署ごとに中長期目標 や安全衛生計画が作成された.2010年度からOSHMS の運用が開始され,システム監査も実施された. 2)OSHMS導入の取り組み OSHMSの中核となるリスクアセスメントについての 研修やシステム監査研修,ストレス対策研修のほか安全 衛生活動全般を,参加型アプローチで実施した12).特に, OSHMS導入研修の際には実践フィードバック方式を取 り入れて1),次回の研修時までに取り組む実践課題を提 示することによって,職場に成果を残すように努めた. また,事業場ごとに安全衛生上の課題が異なることから, それぞれの安全衛生上の課題を把握するための職場巡視 と,巡視結果をもとにしたグループワークを取り入れた 参加型のリスクアセスメント研修を2018年度までに合 計25回実施した.自治体職場の特徴として,定期的な 異動があることから,研修へは未受講者を参加させるよ うに配慮するほか,安全衛生担当者の積極的なローテー ションに努めた. さらに,安全衛生活動評価表を作成し,OSHMSの構 築ガイド及び達成度の評価に活用した.安全衛生活動評 価表は,2003年に日本産業衛生学会産業保健活動評価委 員会から公表されている産業保健活動評価表(試行 版)13)をもとに,労使が作業現場で使用できるように改 変し作成した.産業保健活動評価表は,産業保健専門家 向けに作成されており,その評価項目は,A) 安全衛生 基本方針と達成計画8項目,B) 組織と連携9項目,C) 危険有害要因の把握6項目,D) リスク評価4項目,E) リスク対策5項目,F) リスクコミュニケーション5項目, G) 教育訓練4項目,H) 文書・記録と個人情報保護4項目, I) 緊急事態への対応3項目,J) 安全衛生活動の監査と継 続的な改善2項目の合計50項目で構成されている.以上 の50項目から専門職の倫理に関する項目と環境マネジメ ントに関する項目の2項目を削除し,職場環境改善活動 への参加者が50%以上の部署でストレス関連指標の改善 効果が高かったとの報告があることから14),「安全衛生 活動に全ての労働者が参加できるように時間保障などの 制度が確立されている」,「部署ごとに作業内容や日常的 な改善についての話し合いが設けられている」の参加に 関する2項目を追加した.また,安全衛生委員会委員等 の関係者が容易に使用できるようにヒントを加え,シス テム監査ツールとしても使用できるようにした.安全衛 生活動評価表の50項目を,ILO-OSH2001に示されてい る5つの主要項目である「方針と目標」「組織化」「リスク アセスメント」「リスク低減」「評価と改善」に「参加」を 加えた6軸に分類し15),項目別の評価を「改善が必要」0 点,「改善余地あり」1点,「改善は不要」2点,「該当せず」 2点とし,評価軸ごとに集計してレーダーチャートで示 した.レーダーチャートには,6軸それぞれを構成する 評価項目の合計得点について,それぞれの満点に占める 割合(%)を算出し示した.なお,レーダーチャートは 数値が大きくなるほど良好な状態であることを示してい る.表2に6軸を構成する評価項目を示した.作成した 安全衛生活動評価表を末尾に付録として掲載した. システム監査は,事業場を基準に設置している10の 安全衛生委員会でペアを組み,相互監査として2009年 度から1年に1回実施した.また,お互いの良好点に学 び合えるようにし,毎年ペアを組み替えるとともに,監 査メンバーも毎年半数程度入れ替えて実施した.2009 年度にはシステム監査ツールとして安全衛生活動評価表 を用いてシステム監査を試行し,2010年度から正式に 使用した. 加えて2009年度からは,各部署で行われた改善活動 の内容を良好・改善事例シートにまとめてもらい収集し た.2010年度からは,OSHMSの進捗状況を確認するた 0 500 1000 1500 2000 2500 職 員数 2002 04 06 08 10 12 14 16 18 年度 正規職員 非正規職員 図1 O市の職員数の推移 表2 安全衛生活動評価表の6つの評価軸を構成する項目 評価軸 項目数 評価項目番号 方針と目標と計画 8 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 41 組織化 10 468, 9, 10, 11, 12, 13, 14 ,15, 16, リスクアセスメント 14 2617, , 1832, , 1933, , 2036, , 4221, 22, 23, 24, 25, リスク低減 16 2739, , 2840, , 2941, , 3043, , 4431, , 4534, , 4635, 37, 38, 評価と改善 6 19, 28, 41, 46, 47, 48 参加 10 4, 8, 9, 14, 27, 34, 36, 37, 49, 50
めの関係者会議を定期的に行い,各部署の安全衛生上の 課題の改善状況を確認しながらリスクアセスメントだけ でなく,OSHMSに職場環境改善を通じた参加型の職場 のストレス対策研修と実践活動も盛り込み16,17),
Plan-Do-Check- ACT (PDCA)サイクルで活動を継続した. システム文書については,OSHMSの運用に必要な, 安全衛生方針,目標,計画を作成した.また,システム 下位文書については,安全衛生活動を先行しながら,当 面の目標として,リスクアセスメント手順書,職場巡視 手順書,安全衛生教育手順書,緊急時の対応手順書の作 成を進めた. 3)労働災害発生状況の把握と分析 労働災害発生件数については,前述した10の安全衛 生委員会ごとに,毎年集計を行っているが,全国の自治 体職場の労働災害の年千人率をみると,現業職場が非現 業職場に比べて高いことから,今回対象とした自治体職 場を,現業職場と非現業職場に分けて,労働災害の年千 人率を算出した.なお,現業職場は,主に現場で作業を 行う清掃職場,学校給食職場,病院職場,上下水道職場, 消防職場とし,それ以外の事務系職場を非現業職場とし た.今回対象とした労働災害のデータは,正規職員・非 正規職員ともに労働災害として認定され,療養給付申請 が行われたケースで,休業・非休業の区別がないデータ であった. OSHMSを導入・運用し,その状況について17年間 観察を行い,リスクアセスメントの確実な実施などによ るOSHMSの導入・定着が労働災害発生率へ及ぼす影響 を評価するため,OSHMSの導入段階についてOSHMS 導入前の2002~2006年を「導入前」,OSHMS導入期の 2007~2011年を「導入期」,全事業場において安全衛生 活動評価表の評価結果から算出した6つの評価軸すべて の達成度合いが90%を超え,OSHMSが定着したと考え られる2012年以降の2012~2018年を「定着期」とした. また,労働災害の年千人率を,Kruskal-Wallis検定を用 いOSHMSの導入段階(導入前,導入期,定着期)で比 較し,多重比較にはDunn-Bonferroni 法を用いた. さらに,Kruskal-Wallis検定及びDunn-Bonferroni法 によってOSHMSの導入段階で労働災害の年千人率に有 意差がみられた現業職場については,OSHMSの導入段 階ごとに全国の自治体の現業職場の労働災害の年千人率 との比較を行うこととした.具体的には,OSHMSを導 入している自治体は全国的に寡少であることや,全国の 自治体の現業職場では今回対象とした自治体の現業職場 と同様の作業が行われていることから,今回対象とした 自治体の現業職場とOSHMS以外の関連要因に大きな差 異がないと考えられる全国の自治体の現業職場の労働災 害の年千人率とを比較するため3),OSHMSの導入段階 ごとに今回対象とした自治体の現業職場と全国の自治体 の 現 業 職 場 と の 労 働 災 害 の 年 千 人 率 の 差 に つ い て Mann-WhitneyのU検定を行った.なお,全国の自治 体職場の非正規職員の労働災害の年千人率は公表されて いないため,正規職員のみについて比較を行った.また, 全国の自治体職場の労働災害の年千人率は,最新のデー タが2017年までしか公表されていないため,2012~ 2017年を定着期とした.データの解析にはSPSSVer25.0 forwindowsを用い,統計的有意水準は5%未満とした. 4)倫理的配慮 本研究の実施については,O市の中央安全衛生委員会 で承認を得た. 3 結果 1)安全衛生活動評価表からみたOSHMS導入の結果 10の安全衛生委員会の安全衛生活動評価表の評価結 果の平均値の推移を図2に示した.2008年度はシステム 監査は実施されていないが,著者らが現場で確認評価し たものを使用した.図からわかるように,2008年度で は「方針と目標・計画」と「評価と改善」が低い状況で あったが,2009年度にはトップである市長への説明を 行い,トップの方針が表明されるとともに,安全衛生計 画や目標が作成されたことから,「方針と目標・計画」 が向上した.さらに,システム監査が実質的に2回目と なった2010年度は「評価と改善」が向上した.2010年 度で,ほぼバランスのよい正六角形が形成され,以降は 着実にレーダーチャートは外周に向かって拡大していっ たが,図上で多くのデータが重なるため,2008,2009, 2011,2013,2016,2018年度のみ示した. OSHMSの定着状況についてみると,2013年度のシ ステム監査では,全事業場において安全衛生活動評価表 のレーダーチャートの評価軸すべての達成度合いが90 %を超えた.当該年度のシステム監査は,前年度の活動 内容を評価するものであるため,2013年度のシステム 監査の結果は,2012年度の活動内容を反映するもので ある.したがってこの結果は,2012年度には全事業場 において評価軸のすべての達成度合いが90%を超えて いたことを示している. また,システム監査には独立性が求められるが18),自 治体職場は多様な業種の集合体であるため,このことを 活用して事業場を基準に設置している10の安全衛生委 員会でペアを組み,相互監査としてシステム監査を行う ことができた.毎年ペアを組み替えてシステム監査を実 施した.システム監査結果を次年度の計画等に反映させ 0 100 方針と目標・ 計画 組織化 リスクアセス メント リスク軽減 評価と改善 参加 % 図2 安全衛生活動評価表による評価結果の推移. 10委員会の 平均値をプロットした. : 2008, : 2009, : 2011, : 2013, : 2016, : 2018.
てPDCAサイクルを回すことで,10の職場巡視用チェ ックリストと5つの安全作業マニュアルが改訂され,シ ステム文書が作成されるなど年々改善が進んだ. 加えて,2009年度から各職場で行われた改善活動の 内容を,毎年良好・改善事例シートへまとめてもらい収 集した.2010年度には163事例が提出され,その後も 毎年50事例以上が提出されている19).この事例シートは, 写真を用い,良好事例や改善前後の内容をビジュアルに 表示し,改善事例シートでは,改善に要したコストや時 間,さらに改善内容の評価や,今後の課題も記入できる ようにした20).また,良好・改善事例集にまとめて,他 の職場へ水平展開できるようにした.提出された良好・ 改善事例については,毎年,良好・改善事例報告会で報 告するとともに,安全衛生委員会で選考しグッドプラク ティス賞の表彰を行った21). 2)労働災害の年千人率の推移 今回対象とした自治体の現業職場の正規職員と非正規 職員,全国の自治体の現業職場の労働災害の年千人率の 推移を図3に,同様に非現業職場の正規職員と非正規職 員,全国の自治体職場の労働災害の年千人率の推移を 図4に示した.今回対象とした自治体の現業職場では正 規職員,非正規職員いずれもOSHMS導入期の2007年 度から労働災害の年千人率は長期的に減少傾向にある. なお,全国の自治体の現業職場の労働災害の年千人率の 推移をみると,大きな変動はみられないが,20台で推 移している.今回対象とした自治体の非現業職場では, 非正規職員の労働災害の年千人率に変動はあるものの, 正規職員,非正規職員いずれも労働災害の年千人率は, 現業職場に比べて低い水準で推移しており,9程度で推 移している全国の自治体職場の労働災害の年千人率とも 大きな差はない. また,今回対象とした自治体の現業職場と非現業職場 それぞれで,労働災害の年千人率を,Kruskal-Wallis検 定及びDunn-Bonferroni法を用いOSHMSの導入段階 (導入前,導入期,定着期)で比較した結果を図5に示 した.なお図中には平均値±標準偏差も示した.現業職 場では,OSHMSの導入・定着が進むにつれ労働災害の 年千人率が減少し,OSHMSの導入前と定着期で労働災 害の年千人率に有意差が認められた(p<0.01).一方非 現業職場では,統計的に有意な差は認められなかった. 今回対象とした自治体の現業職場と全国の自治体の現 業職場の労働災害の年千人率について,OSHMSの導入 段階ごとに行ったMann-WhitneyのU検定の結果を図6 に示した.なお図中には平均値±標準偏差も示した.導 入前と導入期では労働災害の年千人率に有意差は認めら れなかったが,定着期では有意な差を認めた(p<0.01). 0 50 100 150 200 2002 04 06 08 10 12 14 16 18 労 働 災害年 千人 率 →OSHMS 導入期 年度 →OSHMS 定着期 0 50 100 150 200 2002 04 06 08 10 12 14 16 18 労 働災害 年 千人率 年度 →OSHMS 導入期 →OSHMS 定着期 0 10 20 30 40 50 現業職場 非現業職場 労 働 災 害 年 千 人 率 OSHMS 導入前 (2002-2006) OSHMS 導入期 (2007-2011) OSHMS 定着期 (2012-2018) ** 42.9±1.6 28.2±3.1 18.6±5.0 7.3±2.3 8.3±5.5 6.4±2.3 0 10 20 30 40 OSHMS 導入前 (2002-2006) OSHMS 導入期 (2007-2011) OSHMS 定着期 (2012-2017) 労 働 災 害 年 千 人 率 O市現業職場 自治体現業職場の全国平均値 ** 27.9±4.3 27.4±0.9 20.7±3.5 24.8±0.6 15.1±5.1 24.7±0.4 図3 O市の現業職場における労働災害年千人率の推移 ●:正規職員,■:非正規職員,▲:自治体現業職場の 全国平均値 図4 O市の非現業職場における労働災害年千人率の推移 ●:正規職員,■:非正規職員,▲:自治体職場の全国 平均値 図5 OSHMS導入段階別の労働災害年千人率の平均値の比較 **:p<0.01 図6 O市と全国の現業職場の労働災害年千人率の平均値の比 較 **:p<0.01
4 考察 1)OSHMS導入・定着による労働災害の抑制 自治体職場を対象に,参加型アプローチを用いて OSHMSを導入・運用し,その状況について長期間観察 を行い,リスクアセスメントの確実な実施などによる OSHMSの導入・定着が労働災害発生率へ及ぼす影響を 評価した. 今回対象とした自治体の非現業職場では,OSHMSの 導入段階で労働災害の年千人率に減少を認めなかった. これは,非現業職場は現業職場と比較してOSHMS導入 前から労働災害の年千人率が低い水準で推移しており, OSHMSの導入・定着効果が現れにくいことによるもの と思われる. 一方今回対象とした自治体の現業職場では, OSHMS の導入・定着が進むにつれ労働災害の年千人率が減少し, 労働災害の年千人率についてOSHMSの導入段階で比較 した結果では,OSHMSの導入前に比べ,全事業場にお いて安全衛生活動評価表の評価軸すべての達成度合いが 90%を超え,OSHMSが定着したと考えられる2012年 以降の定着期が有意(p<0.01)に低かった.さらに,今 回対象とした自治体の現業職場と全国の自治体の現業職 場の労働災害の年千人率について,OSHMSの導入段階 ごとに比較した結果では,導入前と導入期では有意差は 認められなかったが, 定着期では,今回対象とした自治 体の現業職場が全国の自治体の現業職場の労働災害の年 千人率を有意(p<0.01)に下回った. OSHMSを導入している自治体は全国的に寡少である ことや,全国の自治体の現業職場では今回対象とした自 治体の現業職場と同様の作業を行っていることから考え ると,今回対象とした自治体の現業職場と全国の自治体 の現業職場では,OSHMS以外の関連要因に大きな差異 がないと考えられる.また,今回対象とした自治体の現 業職場と全国の自治体の現業職場のOSHMS導入前の労 働災害の年千人率にも差はみられていない. 以上のことから,自治体の現業職場では,リスクアセ スメントの確実な実施などによるOSHMSの導入・定着 が,労働災害の発生を抑制すると考えられた. また,本研究からリスクアセスメントの確実な実施な どによるOSHMSの導入を進めるうえでいくつかの特徴 や留意点があると考えられる. はじめに,非正規職員の安全衛生対策があげられる. 今回対象とした自治体の現業職場では,非正規職員の労 働災害の年千人率は正規職員に比べて高く,変動が大き かった.これは,非正規職員の雇用期間が短いことや, 毎年入れ替わりが多いことから,安全衛生教育や安全衛 生活動が不十分だったことによるものと考えられた.そ の後,リスクアセスメントが実施され,その結果をもと に作成された安全作業マニュアルを活用した雇入れ時教 育をはじめ,積極的な安全衛生教育や対策が行われ,長 期的には労働災害は減少傾向にあることから,非正規職 員に対しては,リスクアセスメント結果を活用した安全 衛生教育や対策が有益であると思われた.全国的に自治 体職場で非正規職員が増加している状況からすると,非 正規職員の安全衛生対策は重要であると考えられる.な お,非正規職員については,2020年度から会計年度任 用職員の導入が予定されているが22),正規職員と同様の 枠組みで安全衛生活動を行っていくことが肝要である. 次に参加型の安全衛生活動の活用があげられる.今 回対象とした自治体の現業職場のうち学校給食職場で は,全員参加のリスクアセスメントを実施しており, 4年以上にわたって災害ゼロを継続している.全員参加 の リ ス ク ア セ ス メ ン ト 研 修 は, 参 加 型 の 安 全 衛 生 ト レ ー ニ ン グ の 典 型 で あ るWork Improvementsin Small Enterprises(WISE)23)やWork Improvementin
NeighbourhoodDevelopment(WIND)24)の手法と共通 点があり,職場環境改善にも効果が期待される25).全員 参加のリスクアセスメントを行うことで,ハザードに関 する情報やリスク対策に関するアイデアが共有でき, 個々のリスクベースで対応する能力の向上につながった と考えられる. 今回対象とした労働災害のデータは休業・非休業の区 別がないデータであったことから,労働災害の年千人率 に着目したが,職場により労働災害の種類は異なってい た.学校給食職場では切創や熱傷などが多く,清掃職場 では転倒などが多く発生していた.病院職場では針刺し ・切創が多かった.学校給食職場では,毎月全員が参加 して行われる定例会を活用し全員参加型のリスクアセス メントが実施されていた.清掃職場では,職場巡視時に 撮影したビデオ映像をもとに,全員参加型のリスクアセ スメントが行われ,その結果が安全作業マニュアルに反 映されて,雇入れ時教育に活用されていた.学校給食職 場や清掃職場のように全員参加型のリスクアセスメント が実現できた職場では,労働災害の種類にかかわらず発 生を抑制することができ,特に毎月全員参加型のリスク アセスメントを実施できた学校給食職場では,4年以上 にわたって災害ゼロを継続している. 一方病院職場にみられるように,患者数の変動等によ る作業条件や作業負担の変化が大きく,職務遂行に影響 を与える制度・システムの変更がしばしば行われ,対人 サービスを主に行う職場では,全員参加型のリスクアセ スメントが十分に実施できず,労働災害の年千人率は増 減を繰り返した.しかし,2018年は各部署で対策に関 する職場ミーティングが行われ,リスクアセスメント結 果の共有が進み労働災害の年千人率は減少した. 安全衛生活動評価表と労働災害の発生状況との関係を みると,リスクアセスメントの評価軸の達成度合いが向 上するにつれ労働災害の年千人率の減少がみられた.全 員参加型の安全衛生活動ができる職場はもとより,病院 職場のような作業条件や作業負担の変化が大きい職場で も,職場ミーティングによるリスクアセスメント結果の 共有などの参加型のリスクアセスメントの実施が労働災 害を抑制すると考えられた. OSHMSを導入し運用していくまでには,導入研修を はじめとした準備作業に一定の期間を要することもあげ
られる.具体的な活動でも,部署ごとに異なる安全衛生 上の多種多様なハザードを把握しながら,リスクアセス メントなどを進めていくことが必要であることから時間 を要する.本研究では,OSHMSの導入期の2007年から, 全事業場において安全衛生活動評価表の評価軸すべての 達成度合いが90%を超え,OSHMSが定着したと考えら れる2012年までに5年を要している.このことから, OSHMSが定着しその効果が出現するまでには一定の期 間を要するものと思われる. 自治体職場は,多様な業種の集合体であることから, 一つの自治体の中で異業種交流ができ,他部署の良好点 に学びながら連携してリスクアセスメントを実施できる というメリットもある.一方では多様な業種の集合体で あることから,多種多様なハザードが存在することがあ げられる.また,自治体職場には非定常作業もあるため, 非定常作業のリスクアセスメントもOSHMSに盛り込む ことが重要であると考えられる.さらに,自治体職場で は正規職員が減少し,非正規職員が増加する一方で,制 度改正に伴う新たな業務への対応や,近年多発する自然 災害への対応などの非定常作業も増加し,リスクが多様 化している.これらのリスクに対するよりきめ細かなリ スクアセスメントが必要と考えられる. OSHMSではシステム文書が必要となるが,今回対象 とした自治体職場では,方針,目標,計画を先に作成し, 手順書などの下位文書の作成を後回しにした.下位文書 の作成を先行した部署では,手順通りに活動が進まなか ったことから,実際の活動の流れができてから,それを 文書化することとした.そのため,文書化が最後まで課 題として残ったが,文書化を先にした場合,活動が形骸 化する可能性も考えられた.このことから,他の自治体 職場でOSHMSを導入にする際には,文書化は必要であ るが,それに労力を注ぎ過ぎないことも留意点の一つと 思われる. 2)自治体職場にOSHMSを導入・定着させるためのポ イント 本研究の結果から,OSHMSを導入・定着させるため に有効と考えられるポイントとして,トップ(首長)の 方針表明,事業場相互に行うシステム監査,安全衛生活 動評価表,良好・改善事例収集があげられる. (1)トップ(首長)の方針表明 トップが安全衛生に関する方針を表明することは,安 全衛生活動を進める上で必須である26,27).本研究でも 図2の安全衛生活動評価表のレーダーチャートに示した ように,2009年度にトップの方針が表明されたことか ら,「方針と目標・計画」が向上し,OSHMSの構築に 寄与したと考えられた.地方公務員には労働安全衛生法 が適用されるが,非現業職員には,一部適用除外もあり, 労働災害防止計画や司法警察権が適用されず,その代わ りを人事委員会もしくは首長が担うことになる.このこ とから考えると,人事委員会が設置される都道府県,政 令指定都市等以外のほとんどの自治体では,首長が労働 安全衛生の監督を行うことになる.そういう意味で,自 治体職場ではトップが安全衛生に関する方針を示すこと は日常的な安全衛生活動を進める上で意義が大きい5). トップが安全衛生方針を表明するためには,OSHMS に関するトップの理解が必要となる.そのためには,良 質な行政サービスを提供するには,職員の安全衛生水準 を向上させることが重要であることを理解してもらう必 要がある.今回対象とした自治体職場では,2007年度 からOSHMS導入作業を進めたが,市長へOSHMSの内 容の説明だけでなく,OSHMS導入時に行ったベースラ イン調査で得られた,作業環境等と心理的・身体的スト レス反応の関係や,導入過程の労働災害発生件数の減少 傾向を示したことで,市長の賛同を得ることができ た10). (2)事業場相互に行うシステム監査 システム監査は,事業場を基準に設置している10の 安全衛生委員会でペアを組み,毎年ペアを組み替えて相 互監査として行っている.この方式では,毎年お互いの 良好点に学び合うことが可能となり,自らの事業場の安 全衛生上の課題解決へのヒントを得る機会になったと考 えられた.また,システム監査結果を次年度の計画等に 反映させてPDCAサイクルで活動を継続することで, OSHMSの構築につながったと思われる.事業場相互に 行うシステム監査では,異なる職場を目にすることがで き,新鮮な視点で監査を実施することが可能となる.さ らに,毎年監査メンバーの半数を入れ替えたので,職員 の参加を促進することに貢献したと考えられる.監査で は欠点探しに終始せず,相互の良好点に目を向け学び合 うようにしたことで,安全衛生スタッフのモチベーショ ンを上げ,活動の継続に寄与したと考えられた. (3)安全衛生活動評価表 安全衛生活動評価表をシステム監査のツールとして使 用し,レーダーチャートで視覚化することで,OSHMS 構築の達成度が確認でき,次に取り組む課題が明確にな るため,安全衛生活動評価表がOSHMS構築に有効であ ると考えられた.また,評価項目にヒントを加えて具体 的な到達点を明示したため,理解しやすくなったと思わ れる.安全衛生活動評価表の50項目が,OSHMSによ る安全衛生活動の要求事項をカバーしているので,安全 衛生トレーニング教材として活用できる.とりわけシス テム監査員の研修には有効と考えられる. (4)良好・改善事例収集 職場から提出された良好・改善事例は,良好・改善事 例集にまとめて,他の職場へ水平展開したため,リスク アセスメント結果の共有につながり,OSHMSの中核と なるリスクアセスメントの実施の推進にも役立った.本 研究で提出された良好・改善事例は,既報で示したよう に情報共有やコミュニケーション向上のためのチームワ ークに関するものが多かった19).これは,コミュニケー ションの向上につながる領域であるため,参加の促進に つながり,低コストですぐに実施できるものが多かった ことから,活動の継続につながったと考えられる.
3)本研究の限界 本研究は,自治体職場を対象としたが,自治体職場に は,現業から事務まで様々な職場があり,部署によって 職員数や職員構成も異なる.そのため,OSHMSの導入 ・定着効果を検証するための研究デザインに限界がある が,一方では様々な部署の安全衛生活動に関する情報を 同時に収集できるというメリットもある.これらのこと を活用し,研究デザインを工夫することで,OSHMSの 導入・定着効果を評価することが可能になると考えられ る. 本研究を進めるにあたって,全国の自治体職場の非正 規職員の労働災害に関する情報を収集してみたが公表さ れていなかった.全国の自治体職場で非正規職員が増加 していることを考えると,今後非正規職員の労働災害に 関するデータの整備が期待される. 今回使用した安全衛生活動評価表は,日本産業衛生学 会産業保健活動評価委員会から公表されている産業保健 活動評価表(試行版)をもとにして作成したものである が,十分な検証がなされているものではなかった.しか しながら,本研究ではOSHMSの構築やシステム監査ツ ールとして有効に活用できた.今後実践活動の中で使用 し検証作業を行うことで,さらに有効なツールとなると 考えられる. また,本研究で対象とした自治体職場で得られた結果 を全国へ水平展開する際に,以下に示すいくつかの留意 すべき限界が考えられる. 今回対象とした自治体職場では,OSHMS導入以前か ら安全衛生管理体制が整備されており,安全衛生活動も 行われていた.その体制や活動をOSHMSの要求事項に 適合させながら,年次計画で段階的に不足するものを補 っていく導入方法をとったことが成功の一因としてあげ られる.このように安全衛生管理体制が整っていない自 治体職場においては安全衛生管理体制を整備してからで なければOSHMSを円滑に導入できないと考えられる. また,職員には業務繁忙のため新たなことに対する強 い抵抗感がある.今回対象とした自治体職場では,安全 衛生管理体制が整備され,安全衛生活動も行われていた ことから,現有の資源を活用しながら導入を進めること で,負担感を減らすことにもつながったと考えられた. しかし,安全衛生管理体制が整備されておらず,安全衛 生活動も十分に行われていない自治体職場においては, 実施可能な安全衛生活動から着手することが重要であ る.今回対象とした自治体職場では,職場でニーズが高 いメンタルヘルス対策として,職場のストレス対策を OSHMSに取り入れたことや,研修や活動にグループワ ークなどの参加型アプローチを取り入れていることも特 徴としてあげられる.実際に,グループワークを取り入 れた参加型研修の前後の気分の変化をProfileofMood States(POMS)28)で比較したところ,POMSの6つの気 分尺度のうち,研修後に,「抑うつ」「怒り-敵意」「混乱」 の3つに改善が認められている20).OSHMS導入研修や リスクアセスメント研修,ストレス対策研修などに参加 型アプローチを取り入れるためには専門家のサポートが 必要である.特にメンタルヘルス対策については,専門 家のサポートを受けることが不可欠であるため,サポー トを受けることができる専門家を確保することが必要と 思われる. 5 結論 自 治 体 職 場 を 対 象 に 参 加 型 ア プ ロ ー チ を 用 い て OSHMSを導入・運用し,その状況について17年間観 察を行い,リスクアセスメントの確実な実施などによる OSHMSの導入・定着が労働災害発生率へ及ぼす影響を 評価した.今回対象とした自治体職場で,OSHMSの導 入段階を,「導入前(2002~2006年)」,「導入期(2007 ~2011年)」,「定着期(2012~2018年)」に分けて,労 働災害の年千人率の推移を比較したところ,現業職場と 比較してOSHMS導入前から労働災害の年千人率が低い 水準で推移している非現業職場では,OSHMSの導入・ 定着による労働災害の減少は認めなかった.一方今回対 象とした自治体の現業職場では,労働災害の年千人率は, OSHMSの導入前に比べ,全事業場において安全衛生活 動評価表の評価軸すべての達成度合いが90%を超え, OSHMSが定着したと考えられる2012年以降の定着期 が有意(p<0.01)に低かった.また定着期では,今回対 象とした自治体の現業職場が全国の自治体の現業職場の 労 働 災 害 の 年 千 人 率 を 有 意(p<0.01) に 下 回 り, OSHMSの導入・定着による労働災害の抑制効果が示唆 された. 6 謝辞 本研究にご協力いただいたO市産業医の山口秀樹先 生をはじめとするO市安全衛生委員会関係者に謝意を 表する.本研究は,独立行政法人労働者健康安全機構労 働安全衛生総合研究所の所内GOHNET 研究「中小企業 における労働安全衛生マネジメントシステムの確立」の 一環として行われた. 7 利益相反 本論文について申告する利益相反はなし. 文 1) 伊藤昭好.簡単に構築できる安全衛生マネジメントシス テム④ 実践フィードバックトレーニング方法による自治 体職場への労働安全衛生マネジメントシステム導入の試 み. 地 方 公 務 員 安 全 と 健 康 フ ォ ー ラ ム.2006;60: 26-29. 2) 伊藤昭好.安全衛生委員会は職場の安全衛生活動の鍵. 地方公務員安全と健康フォーラム.2007; 64:9-11. 3) 一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会.公務災害の 現況~平成29年度認定分~.平成31年3月.一般財団法 人地方公務員安全衛生推進協会;2019:1-27. 4) 自治労労働調査協議会.「第13回自治労組織基本調査」結 果の概要. 自治労通信.2018;791:2-5.
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Control of work-related accidents in local government workplaces by
the introduction and establishment of the occupational safety and health
management system.
by
Hiroaki Watanabe*
1,*
2, Akiyoshi Ito*
1, Kunio Hara*
1and Takeshi Sasaki*
3Effects of the introduction and establishment of the occupational safety and health management system (OSHMS) on work-related accident rates were investigated in local government workplaces during seventeen years. Risk assess-ment was carried out in a participatory manner in these workplaces. The average work-related accident rates were calculated for blue-collar and white-collar workplaces over three periods: before OSHMS introduction (2002-2006), during OSHMS introduction (2007-2011), and the period of OSHMS establishment (2012-2018) in which the OSHMS achievement degree exceeded 90% in all the evaluation axes of the occupational safety and health activities evaluation worksheet. The accident rates at the white-collar or clerical workplaces were lower than the blue-collar workplaces before OSHMS introduction. There was no significant reduction in work-related accidents during the introduction and establishment of OSHMS. Conversely, accident rates noticeably reduced with the introduction and establishment of OSHMS in blue-collar workplaces, such as garbage collection sites, school lunch kitchens, or hospitals etc. During the establishment period, the average rate of accidents was significantly lower than the national average in blue-collar local government workplaces (
p
<0.01). It was indicated that work-related accidents were reduced by the in-troduction and establishment of OSHMS in blue-collar local government workplaces.Key Words: OSHMS, Risk assessment, Local government workplace, Participatory action-oriented training, Occupational
safety and health activities evaluation worksheet
*1 Department of Occupational Safety and Health Management, School of Health Sciences, University of Occupational and Environmental Health, Japan.
*2 Section of Occupational Safety and Health, Omuta City Office, japan.
付録 安全衛生活動評価表 本評価表は,安全衛生活動状況を事業場単位で評 価し,改善の行動を起こす契機にすることを目的に使 用します.本評価表でいう安全衛生とは,危険有害要 因から労働者を守り,健康を増進する活動の全般を指 します.健診などの狭義の健康管理に限定せず,職場 における危険有害要因の除去,低減のための環境管理, 作業管理,健康管理,さらには健康増進や快適職場の 形成を含む幅広い活動を意味しています. 本評価表には,よりよい安全衛生活動のために必要 と考えられる活動を列挙してあります.この評価表は, 個人で使用しても結構ですが,安全衛生委員会などの 機会を捉え,管理職,非管理職,衛生担当者,安全管 理者,衛生管理者,産業医などが複数人数で使用する とより効果的と思われます. 以下の項目について,事業場で活動が実施できている かどうかを考えて,改善を提案するのが望ましいかどう かを判断して記入してください. ・「改善が必要」:できていないので,改善が必要な場合 ・「改善余地あり」:部分的にできているが,改善の余地 が認められる場合 ・「改善は不要」:十分できており,改善の必要がない場 合 ・「該当せず」:できていないが,当該事業場について, その項目が必要ない,あるいは当てはまらない場合 A.安全衛生基本方針と達成計画 安全衛生活動の大枠を示し,事業者の責任とリーダー シップを宣言するのが安全衛生基本方針です.すべての 安全衛生活動はこの方針を実現するために,具体的で実 現可能な目標を設定し,その目標実現のための計画をた て,実施します. 安全衛生基本方針 改善が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 1 .事業者が自らの責任で安全 衛生基本方針を策定し,業務 に起因する災害,疾病,その 他健康への悪影響を防止し, 健康を増進し,快適な職場の 形成をめざすことを文章で表 明する. ヒント: 1.文書化された安全衛生方針が存在する.たとえば 事業計画の中で方針が掲載されている.方針書には事 業場トップの署名がある.方針書が全職員の目に届く 場所に掲示されているかイントラネット上で確認でき る. その安全衛生基本方針では以下の内容を明確に定 め,事業場全体の活動に活かします. 基本姿勢 改善が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 2 .安全衛生活動は事業を行う 上でもっとも重要な活動の一 つと位置づける. 3 .適用される労働安全衛生関 係法令を遵守すること,およ び必要な措置を自主的に実施 することを表明する. 4 .安全衛生活動の計画,実施, 評価,監査の各場面において 労働者の参加を促進すること を強調する. ヒント: 2.方針書に暗黙の了解ではなく,安全衛生活動は重 要な活動として明言,明文化されている. 3.法令遵守が方針に含まれている. 4.方針書で全職員を対象にすることを明文化してい る.労働者の積極的な参加をうながすような活動を行 っている. 達成目標と実施計画 改善が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 5 .各部署の安全衛生活動の現 状把握に基づき,具体的な目 標を年度ごと,あるいは一定 の期限を設けて策定する. 6 .その目標を達成するための 実行可能な活動計画を策定す る. 7 .安全衛生活動の目標と計画 の策定時に安全管理者・衛生 管理者や産業医等が参画す る. ヒント: 5.目標・計画が存在する.各年度ごとに計画を立て ている.目標に基づいて計画が立てられている. 中長期的目標を立てている.目標の達成度を判断す る(数値)指標を定めている. 6.その年の目標に基づいた年度計画が策定されてい る. 7.衛生管理者・安全管理者・産業医等が目標・計画 策定に際して参画している.都合で参加できない場合 は,事前に意見を聴取している. B.組織と連携 安全衛生基本方針を実現するためには,そのための組 織が必要です.これを安全衛生組織と呼んでいます.こ の組織は労働安全衛生法などが定める労働安全衛生管理 体制だけではなく,個々の事業場の規模や性格,あるい は基本方針に応じて設置されたものを含みます.
安全衛生組織 改善が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 8 .事業場全体を対象とした安 全衛生組織を確立する. 9 .その事業場に所属する全て の労働者を安全衛生活動の対 象とする. 10.関連事業場や構内請負事業 者がある場合には,それらを 含めて系統的に機能する安全 衛生組織を確立する. 11.衛生委員会などを活用して, 安全衛生活動について労使が 定期的に協議する. 12.安全衛生の基本事項につい て教育訓練を受けた管理者を 各部署に配備する. 13.必要な安全管理者・衛生管 理者や産業医等を十分な人数 確保する. ヒント: 8.事業場全体を対象とした組織が作られている.事 業場全体をカバーする安全衛生組織図が作成されてい る.事業場に安全衛生委員会が設置されている. 9.パート・嘱託・派遣労働者を含めた安全衛生活動 を行っている.安全衛生委員会議事録など重要な安全 衛生情報が,パート・嘱託・派遣労働者を含めた全労 働者に伝達されている. 10.パート・派遣・委託・嘱託を含めた指揮系統が確立 している.請負業者内で別に安全衛生組織が存在する 場合,互いに連携をとりあっている. 11.毎月,安全衛生委員会が開催されている.議事録が 全職員に公表されている. 12.管理者教育に安全衛生の項目が含まれている.たと えば課長研修,部長研修には安全衛生に関するカリキ ュラムが含まれている. 13.衛生管理者を法定上の人数選任している.産業医を 法定上の人数選任している. 必要な場合は安全管理者を選任している.保健師の 資格を持つ産業看護職がいる.産業医は安全衛生委員 会に毎回出席している.安全衛生委員会において衛生 管理者・産業医は使用者側委員として出席している. 事業場内外での連携 改善が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 14.各部署での安全衛生活動 は,その部署の管理者,担当 者,労働者,および安全管理 者・衛生管理者や産業医等が 連携して行う. 15.外部機関や専門家から適切 な情報,技術支援などが得ら れる体制を整備する. 16.行政機関や保健医療機関, 安全衛生学術団体などとの連 携体制を整備する. ヒント: 14.安全衛生情報は,衛生管理者,産業医,ラインの管 理者,一般職員の間で共有され,連携した活動が行わ れている.各部署で報告,連絡,相談(ホウレンソウ) がスムーズに行われている. 15.たとえば安全衛生に関する研究者・専門家から助言 を受けることが出来る. 16.たとえば労働安全衛生基準協会などに加入してい る.労働基準監督署の主催する会合などに積極的に参 加する.関連した学会に出席する. C.危険有害要因の把握 危険有害要因とは,法規には定められていないもの, 特定の条件下でしか危険有害でないものなどを含め,労 働者の健康を障害する可能性がある全ての職場因子のこ とで,ハザードとも呼ばれます.たとえば,今までに誰 もばく露したことがなくても強酸溶液を取り扱う作業が あれば,その溶液は危険有害要因です.また,気温,照 度,精神的負荷,作業時間など必ず存在するものでも, 一定の範囲を超えると危険有害性が生ずるものもありま す.危険有害要因は,できるだけ幅広く把握することが 必要です. 改善 が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 17.職場ごとに取り上げる必要 がある危険有害要因を列挙す る. 18.危険有害要因として,人間 工学要因,作業時間要因,社 会心理学的要因も検討する. 19.職場巡視などにより,職場 ごとの危険有害要因を定期的 に見直す. 20.危険有害要因ごとに,ばく 露される労働者を職場単位あ るいは作業単位で特定する. 21.特定されたばく露労働者の 状況に変化がないかを定期的 に見直す. 22.健康状態の異常や未然事故 情報を収集し,かくれた危険 有害要因の可能性を検討す る. ヒント: 17.職場巡視の際にチェックリストを作成して使用して いる.危険有害要因を列挙した文章や表(化学物質の 種類や機器など)が職員の目に入る場所に掲示されて いる.ヒヤリハットの収集を行っている. 18.チェックリストには,人間工学要因(作業姿勢,重 量物取り扱い,人の体に適した道具・機械),作業時 間要因(長時間労働,時間の余裕の有無,夜勤)社会 心理学的要因(職場のコミュニケーション,身を置い ている組織構造からくるストレス,窓口業務のストレ ス,クレーム)などが含まれている.
19.チェックリストを用いて巡視を行っている.見直し た結果を反映できる体制ができている. 巡視報告書が存在する.指摘結果に対して改善を報 告する書式や仕組みが存在している. 20.特殊健康診断(安全衛生法で定める特定の業務を行 っている者に対する健康診断.例えばじん肺健康診断, 有機溶剤健康診断,鉛健康診断など)が必要な作業者 を特定している.特定業務(安全衛生法で定める特定 の業務.例えばエックス線その他の有害放射線にさら される業務,土石,獣毛等のじんあいまたは粉末を著 しく飛散する場所における業務など)ごとにチェック リストが作成されている. 21.チェックリストと対象職場はほぼ毎年見直しが行わ れている.変化があった場合,変更点がわかるように 記録される手順が文書化されている.「変更の管理」 に相当する規定が存在している. 22.健康診断(一般・特殊)が適正に行われている.ヒ ヤリハットの収集を行っている. 新たな危険有害要因を発見した場合,チェックリス ト項目に追加されている. D.リスク評価 リスクとは,労働者が危険有害要因にばく露した場合 に生じ得る健康障害の可能性と重大性を総合したもの で,危険有害性の大きさを意味します.しがって,リス ク評価とは,把握された危険有害要因による現実的危険 有害性の大きさの評価です.安全衛生活動ではリスクを 除去するか,許容できるレベルまで低減しなければなり ません.そのためには,まず,今あるリスクの大きさを 把握しておくことが重要です. 改善 が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 23.危険有害要因にばく露され る労働者集団ごと,または個 人ごとに,健康障害を起こす おそれのあるリスクを定期的 に評価する. 24.労働者の異動,新規設備や 化学物質の導入,その他作業 内容の変更時,あるいは健康 影響についての新たな情報が 得られた時にはリスクを再評 価する. 25.リスクの評価や再評価の際 には安全管理者・衛生管理者 や産業医が参画し,適切な評 価が行われるよう支援する. 26.個々の労働者の健康状態が その職務に適するかどうか を,産業医や産業看護職が定 期的に評価する. ヒント: 23.定期的な健康診断(一般・特殊)を行っている.的 確な特殊健康診断や生物学的モニタリングが行われて いる. 24.リスクアセスメントの手順書が存在し,的確にリス クアセスメントが実施されている.異動,雇用時,設 備導入時にリスクを再評価している. 25.リスクアセスメント表などは,衛生管理者,安全管 理者,産業医が確認し,必要に応じて現場の点検を行 っている.リスクアセスメント記録には,衛生管理者, 安全管理者,産業医の確認欄(押印箇所)が設けてあ る. 26.産業医・産業看護職が各職員の職務適性を判断する 仕組みが確立され,規定が存在している. E.リスク対策 リスクを低減する方法には,危険有害要因の除去や代 替,発生源における密閉,労働者へのばく露経路の遮断, ばく露量・時間・頻度の低減,労働者に対する作業の制 限などがあり,この順に有効性が高いと考えられます. また,職場にはさまざまな危険有害要因があるので,優 先順位にしたがって,リスク対策を実施する必要があり ます. 改善 が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 27.労働者に健康障害を起こす おそれのあるリスクへの対策 は,事業者,労働者および安 全管理者・衛生管理者や産業 医等が協力して立案,実施す る. 28.個々のリスク対策の効果を 確認し,効果が不十分な場合 はさらに措置を講ずる. 29.労働者の健康を確保するた めに,産業医や産業看護職が 必要と判断した就業上の措置 を実施する. 30.有病者の就業,病後の復職 は,産業医や産業看護職の助 言に基づいて行う. 31.労働者に対する健康増進活 動の計画,実施にあたっては 産業医や産業看護職が参画 し,支援する. ヒント: 27.職場改善などのリスク対策は,労働者の自主的な参 加のもと,衛生管理者や安全管理者の支援で行われ, 事業場トップが積極的な推進姿勢を示している. 28.職場改善などのリスク対策が行われた場合は,計画 ・実施・評価・改善のPDCAサイクルが明確になる ような記録文書が残されている.職場改善にあたって 小さなPDCAサイクル(日常の就業の中で行われる PDCAサイクルを指す.)が回るような仕組みが確立 されている. 29.就業上の措置に関して,産業医・産業看護職の役割 が明文化されている.産業医・産業看護職が適正に就 業上の措置を実施している. 30.有病者の就業・病後復職に関して,産業医・産業看
護職の役割が明文化されている.産業医・産業看護職 が適正に有病者の就業・病後復職の措置を実施してい る. 31.職員を対象にした健康増進活動(健康保険組合と協 力した,「ウォーキングキャンぺーン」「禁煙キャンペ ーン」「食習慣改善セミナー」「健康セミナー」等)が行 われている.健康増進活動の計画,実施には産業医・ 産業看護職が参画し,支援している. F.リスクコミュニケーション 労働者の中には危険有害要因を誤解している者や,リ スクに対して過度の不安を感じる者もいます.また,リ スク対策の方法が正しく伝わっておらず,そのため正し く実施されないこともあります.リスク情報は,リスク を正しく認識し,対策へのモチベーションがたかまる様 な形で,わかりやすく職場の管理職や労働者に伝達され なければなりません. 改善 が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 32.業務に関連する最新の危険 有害情報(SDSを含む)や法 令・行政指導などの情報を職 場の内外から収集する. 33.当該職場の管理者や労働者 が自主的にリスク対策を立案 ・実行するために必要な情報 を提供する. 34.職場の危険有害要因の存在, リスク評価の結果,リスク対 策の実施方法などを,職場の 管理者や労働者が理解できる かたちで伝える. 35.健康診断などに基づく保健 指導を適切に実施する. 36.労働者が安全や健康のリス クに気づいた時は,それが速 やかにリスクの再評価に反映 される仕組みを作る. ヒント: 32.必要なSDSを収集している. 関連した法令・行政指導などの情報は的確に入手で きる仕組みがある. 33.各職場の管理者・労働者がリスクアセスメントを実 施して,職場改善を図る際に,必要な情報を提供する 仕組み(部署)が存在している.たとえば職員厚生課 などから必要なときに必要な情報の提供を受けること ができる. 34.リスクアセスメントの結果や職場巡視の指摘事項, その後の対策などについて,文書で職場の全員にわか りやすく伝えられている. 35.健康診断の事後措置が適切に実施されている. 36.ヒヤリハット報告からリスクアセスメントの再実施 など次のアクションが明文化されている. 事故発生時に,原因を調べ,評価するシステムが明 文化され,実施されている. G.教育訓練 作業の遂行やリスク対策の実施に関わる労働者,ライ ン管理者,安全衛生専門職に対して適切な教育がなされ なければ,実効ある安全衛生活動の遂行は困難です. 労働者と管理者の教育 改善が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 37.労働者および管理者に対し, リスク対策の実施に必要な事 項,健康増進対策や快適職場 の形成などの教育訓練を実施 する. 38.作業内容の変更時やリスク 対策の更新時には,再教育を 行う. 安全管理者・衛生管理者や産業 医の教育 改善 が 必要 改善 余地 あり 改善 は 不要 該当 せず 39.安全管理者・衛生管理者や 産業医等の専門能力維持向上 のための教育訓練を計画的に 実施する. 40.労働者の安全と健康を確保 するために,安全管理者・衛 生管理者や産業医等の調査研 究能力を向上させるととも に,研究成果を内外に発表す る. ヒント: 37.雇い入れ時教育・職長教育など安全衛生に関連した 教育が適切に実施されている.教育訓練の情報(参加 人数や内容)を記載した文章が作成されている. 38.異動や,作業内容の変更時,新規機材の導入時には, 当該労働者に対して教育が行われている.このような 教育の仕組みが明文化されている. 39.衛生管理者・安全管理者の能力向上教育参加の機会 を設けて,積極的に推進している. 40.事業場内で活動発表を行う機会を設けている.関連 学会に発表をしている. H.文書・記録と個人情報保護 ここで,文書とは安全衛生活動を実施してゆくために 体系化された基準・手順・組織・責任などを記述したも ので,記録とは安全衛生活動の実施結果・監査結果・見 直しの結果などの事実を記述したものです.安全衛生活 動のすべての過程は文書化され,活動は記録されて必要 な期間保存されねばなりません.また,個人情報の保護 に対する事業者の姿勢も評価項目として重要です.