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高次元可積分ヒエラルヒーの$\tau$函数(非線型可積分系の研究の現状と展望)

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(1)

高次元可積分ヒエラルヒーの$\tau$函数 京都大学総合人間学部基礎科学科 高崎 金久 (Kanehisa TAKASAKI) Moyal 代数を係数とする擬微分作用素を用いて K$P$ ヒエラルヒーの高次元化が構成できる. トーラス上の Moyal 代数には不変なトレースが存在する. このトレースを利用することに より K $P$ ヒエラルヒーの $\tau$函数の類似物が定義できる. さらにこの高次元可積分ヒエラル

ヒーには W-infinity 型の無限次元Lie 代数が対称性として作用している. この対称性は $\tau$

函数にも拡張できるが, K$P$ ヒエラルヒーの場合と同様に交換関係には異常項が現$h$ Lie 代数の1次元の中心拡大を生じる.

1

序: 高次元化のアイディア

$=large-N$

-limit

ごく直観的に言えぱ, 我々の高次元可積分ヒエラルヒーは多成分KP ヒエラルヒーで成 分数を無限大にした極限である. これは数学的に厳密な主張ではないが, 可積分ヒエラル ヒーの素性を理解する上では大切なことなので, 後の話への導入としてここで説明してお きたい K $P$ ヒエラルヒーとは何だったかと思い出してみると, 一つの見方は Lax 方程式系, $\supset$ まり

(2)

という形の方程式系のことである. ここで $L$ (Lax 作用素) と $B_{n}$ (Zakharov-Shabat 作 用素) は . $\cdot$ $L$ $=$ $\partial_{x}+\sum_{\tau\iota=1}^{\infty}g_{n+1}(x,t)\partial_{x}^{-n}$, (2) $B_{n}$ $=$ $(L^{n})\geq 0$, $($ $)$ : $\partial_{x}$ の非負巾 (微分作用素) 部分への射影 (3) という形のスカラー係数擬微分作用素 ($x$ は1次元の変数で\partial x $=\partial/\partial x$ ) であり, その係 数が方程式系の未知函数となる. $x$ および $t=(t_{1},t_{2}, \ldots)$ が方程式系の独立変数である. さらに, この Lax 表示の背後には $L=W\partial W^{-1}$ (4) という関係で $L$ と結ばれた擬微分作用素 (dressing 作用素) $W=1+ \sum_{n=1}^{\infty}w_{n}(x,t)\partial_{x^{-n}}$ (5) が存在し, Lax 方程式系は $W$ に対する方程式系

$\frac{\partial W}{\partial t_{n}}=-(W\partial_{x}^{n}W^{-1})_{\leq-1}W$ (6)

(それは Baker-Akhiezer 函数の満たす線形系と同等である) から導かれる二次的なものに

すぎないことがわかる. さらにこの dressing 作用素の背後には $\tau$函数$\tau=\tau(t)$ なるもの

が存在し, K$P$ ヒエラルヒーは最終的には $\tau$函数の満たす広田型双線形方程式系へと還元 される. 多成分K$P$ ヒエラルヒーとは, 一言でいえぱ, スカラー係数の代わりに正方行列係数の 擬微分作用素を用いてK $P$ ヒエラルヒーの類似物を構成したものである. 多成分系 (以下 では成分数を $N$ として $N$ 成分系を考えることにする) の定式化は1成分系よりもかなり 複雑になる. ま劣 Lax 作用素としては上のような $L$ (ただし係数$g_{n}$ は $N\cross N$ 行列) に 加えて $U_{\alpha}=E_{\alpha\alpha}+ \sum_{n=1}^{\infty}u_{\alpha,n}\partial_{x}^{-n}$ (7) ($\alpha=1,$ $\ldots,$$N,$

$E_{\alpha\beta}$ は一般に $(\alpha,\beta)$ 要素のみ1で他は $0$ $N\cross N$ 行列を現すものとする)

という $N$ 個の Lax 作用素を用意する. 従って未知函数は $g_{n},$$u_{\alpha,n}$ (いずれも $N\cross N$ 行

(3)

$t=(t_{n\alpha}),$ $n=1,2,$$\ldots,$ $\alpha=1,$

$\ldots,$$N$ という二重の添字をもつものを考える. さらに Lax

表示もこれらの作用素の時間発展を記述する部分

$\frac{\partial L}{\partial t_{n\alpha}}=[B_{n\alpha}, L]$, $\frac{\partial U_{\beta}}{\partial t_{n\alpha}}=[B_{n\alpha}, U_{\beta}]$ (8)

(これは1成分の場合と同様) と作用素間の代数的関係を与える部分 $[L, U_{\beta}]=[U_{\alpha}, U_{\beta}]=0$ (9) (これは 1 成分の場合にはなかった) からなる. ここで $B_{n\alpha}$ は $B_{n\alpha}$ $:=(L^{n}U_{\alpha})\geq 0$ (10) で与えられる. これらに対しても dressing 作用素が1成分の場合の$w_{n}$ を $N\cross N$ 行列に した形で存在し, それを用いればLax 作用素は $L=W\partial_{x}W^{-1}$, $U_{\alpha}=WE_{\alpha\alpha}W^{-1}$ (11) という形で書かれ, $W$ 自体は

$\frac{\partial W}{\partial t_{n\alpha}}=-(W\partial_{x}E_{\alpha\alpha}W^{-1})_{\leq-1}W$ (12)

という方程式に従う.

r

函数との関係は1成分の場合よりもかなり複雑になる. 当然のことながら, 変数の多い分だけ多成分K$P$ ヒエラルヒーは1成分の場合よりも多 様な内容をもっている. そこから特殊化として得られる非線形可積分系の種類もはるかに 多い. それでも $x$ という特別な変数が空間変数の役割を演じているという点は変わらない. その意味ではこれらは $1+\infty$ 次元 (1 $x$ の次元をあらわす) の可積分系ということに なる. (ただし, 実際の応用では $t$ の中の一部 たとえば$t_{1\alpha}$ 達も空間変数と解釈されるこ とが多い. もともと1成分K$P$ ヒエラルヒーも, $x$ と $y=t_{2}$ を空間変数 $t_{3}$ を時間変数と みなす形で$KdV$方程式の空間2次元化を試みることが動機となって見いだされたもので ある. しかしながらここでは数学的な視点から, K $P$ ヒエラルヒーは 1 成分も多成分も空 問1次元の系であると考える.) このような可積分ヒエラルヒーの高次元版をつくるために, 我々は物理学者の次の主張 に注目する.

$\lim_{narrow\infty}g1(N)$ $\simeq$ $Poisson(\Sigma)$

(4)

ここで $\Sigma$ はある 2 次元のシンプレクティック多様体である. シンプレクティック形式 $\omega$ は

局所的には正準座標 $(y, z)$ を選んで

$\omega=dy\wedge dz$ (14)

と書ける. このとき Poisson$(\Sigma)$ は $\Sigma$

上の函数環に Poisson 括弧

$\{f,g\}:=\frac{\partial f}{\partial y}\frac{\partial g}{\partial z}-\frac{\partial f}{\partial z}\frac{\partial g}{\partial y}$ (15)

で Lie 代数の構造を入れたもの, また Moyal$(\Sigma)$ は Moyal 括弧

$\{f,g\}_{\hslash}$ $:= \frac{2}{\hslash}\sin[\frac{\hslash}{2}(\frac{\partial^{2}}{\partial y\partial z’}-\frac{\partial^{2}}{\partial z\partial y’}I]f(\hslash,y, z)g(\hslash,y’,z’)|_{y’=y,z’=z}$ (16)

で Lie 代数の構造を入れたものをそれぞれあらわす. (一般に, Moyal 括弧の定義式右辺は んの無限級数になるので, 考える函数自体初めから $\hslash$ の無限級数であると思わなければ環 として閉じない.) Moyal 括弧は Poisson 括弧の量子変形の一種で, 基本的な性質としては $\{f,g\}_{\hslash}$ $=$ $\{f,g\}+O(\hslash)$, $\{y, z\}_{\hslash}$ $=$ 1, $\{f, g\}_{\hslash}$ $=$ $\frac{1}{i\hslash}(f*g-g*f)$ (17) などがある. 3番目の性質は Moyal括弧が実は (簡単な正規化因子を別にすれば) 結合律 をみたす積演算 (star product)

$f*g:= \exp[\frac{i\hslash}{2}(\frac{\partial^{2}}{\partial y\partial z’}-\frac{\partial^{2}}{\partial z\partial y’})]f(\hslash,y,z)g(\hslash,y’, z’)|_{y’=y,z’=z}$ (18)

の交換子であることを意味している. star product は幾何学的量子化の一つの道具立てと

して昔から知られてきたもので, いわゆる Weyl 順序で書いた量子力学的作用素の合成則

に他ならない. 上に示した主張は数学的にはあまり厳密ではないが, $g1(N)$ のある種の生

成系を考えると確かにそのような見方ができることがわかる. Poisson(\Sigma ) と Moyal$(\Sigma)$ の いずれが得られるかはその極限移行の際のいくつかのパラメータの調節の仕方による.

我々はこの主張を高次元可積分ヒエラルヒーへ向けた発見的考察の出発点として眺めて

みたいのである (その厳密な裏付けは当面必要ではない). 実際, 上の主張と N-成分$K$

$P$ ヒエラルヒーの構成を見比べると, $L,$$U_{\alpha}$ の係数は $N\cross N$ の行列だから $Narrow\infty$ の極

限 (large-N limit) では Poisson$(\Sigma)$ か Moyal$(\Sigma)$ の要素 (つまり $\Sigma$ 上の函数) に化ける

(5)

数の構造ではなくて結合的代数の構造が必要である

.

従って採用すべきは $Moyal(\Sigma)$ であ

ろう (その上には star product がある). つまり, N-成分K$P$ ヒエラルヒーの large-N

限として Moyal 代数係数の擬微分作用素に基づく可積分ヒエラルヒーの理論ができるはず だ. そこでは $x$ 以外に $\Sigma$ の座標 $(y, z)$ が新たな空間変数として現れる. その意味でこれ は $3+\infty$ 次元の可積分ヒエラルヒー (もっともこれだけでは可積分性が保証されているわ けではなかろうが, その可能性は十分にある) であり, 確かに高次元的なものに思われる. さらに, 通常のK$P$ ヒエラルヒーの無分散極限 (あるいは古典極限) として無分散K $P$ ヒエラルヒーというものが知られているが, それはK$P$ ヒエラルヒーの理論で擬微分作用 素の交換子を Poisson 括弧で置き換えたような構造をもつ. その意味で, 上の発見的考察 で Moyal 括弧の代わりに Poisson 括弧をとるならば, 無分散K$P$ ヒエラルヒーの高次元版 が得られるだろうと期待できる. 実際, このような発見的イメージが示唆する可積分ヒエラルヒーを厳密に構成すること ができる. 次の節ではその最も簡単な場合を説明する. それを見れば, large-N limit とい うのはこのようなものを考える動機付けの一つに過ぎず, それに頼らず直接に, かなり一 般的な (しかも 2 次元のみならず一般次元の) シンプレクティック多様体から出発して同様 の議論が可能であることがわかる. この記事の後半ではトーラス (簡単のため2次元トー ラスを考えるが, 任意偶数次元でもよい) に付随する場合を考察し, その場合にはK $P$ エラルヒーの $\tau$函数の類似物がつくれることを示す.

2

高次元可積分ヒエラルヒー (平面模型) $\forall$ ここで紹介するのは $\Sigma$ がいわば平面の場合である. そのためここで扱う可積分ヒエラル ヒーを仮に平面模型と呼んでいる. (実際には平面というよりはその原点の近傍し力考えな いのであるが.) まず Lax 作用素としては $L$ $=$ $\partial_{x}+\sum_{n=1}^{\infty}g_{n+1}\partial_{x}^{-n}$,

$U$ $=$ $y+ \sum_{n=1}^{\infty}u_{n}*L^{-n}$ (19)

というものを考える. ここで係数はあとで Lax 方程式を考えるときの時間変数の組$t$ に依

存する Moyal 代数の要素, つまり

(6)

という函数である (Moyal 代数の構成から, Planck 定数は常にパラメータとして入り込

んでくる). 1成分・多成分K$P$ ヒエラルヒーでは空間変数は $x1$ 個だけだった. 今は

$(x, y, z)$ というように3次元あることに注意されたい. 今考えているヒエラルヒーを高次

元的と考えるのはこのことによる.

一般に Moyal 代数係数の擬微分作用素 (のシンボル) $A= \sum a_{n}$確, $B=\Sigma b_{n}$確に対し

て和 $A+B$ と積 (合成) $A*B$ を次のように定義する.

$A+B= \sum(a_{n}+b_{n})\partial_{x}^{n}$, $A*B= \sum c_{n}\partial_{x}^{n}$, ここで

$c_{n}$ $:= \sum_{i+j-k=n}(\begin{array}{l}ik\end{array})a_{i}*b_{j}^{(k)}$, $b_{j}^{(k)}$ $;=\partial_{x}^{k}(b_{j})$

.

(21) これはやはり結合的代数を与える. star product に基づくことを強調するために, 擬微分 作用素の積も $*$ であらわすことにする. ただし $A*\ldots*A$ のような巾については余りに 煩わしいので, 通常のごとく $A^{n}=A*\cdots*A$ ($n$ 重積) (22) と書くことにしよう. 前節の背景説明からわかるように, このような Moyal 代数係数の擬

微分作用素は $N\cross N$ 行列係数の擬微分作用素の large-N limit と解釈できる. その意味で

今考えているヒエラルヒーは N-成分K$P$ ヒエラルヒーの large-N limit を実現するもので

ある.

ヒエラルヒーとしては $t=t_{n\alpha},$ $n,$$\alpha=0,1,2,$$\ldots$, という二重添字で番号づけられた時間

変数をもつものを考えることができる. Lax 表示は Lax 方程式系

$\frac{\partial L}{\partial t_{n\alpha}}=[B_{n\alpha},L]$, $\frac{\partial U}{\partial t_{n\alpha}}=[B_{n\alpha}, U]$ (23)

ならびに Lax 作用素問の代数的関係式 $[L, U]=0$ (24) からなる. ただし $B_{n\alpha}$ $:=(L^{n}*U^{\alpha})\geq 0$ (25) (( ) はここでも $\partial_{x}$ の非負巾部分をあらわす) であり, また交換子はもちろん上で述 べた積に関するものである. $[A, B]$

$:=A*B-B*A$

. (26)

(7)

このヒエラルヒーの dressing 作用素はやはり Moyal 代数係数の擬微分作用素で,

$W=1+ \sum_{n=1}^{\infty}w_{n}(\hslash, x, y, z,t)\partial_{x}^{-n}$ (27)

という形をもち, Lax 作用素達と

$L=W*\partial_{x}*W^{-1}$, $U=W*y*W^{-1}$ (28)

という関係で結ばれていて, それ自体は

$\frac{\partial W}{\partial t_{n\alpha}}=-(W*\partial_{x}^{n}y^{\alpha}*W^{-1})_{\leq-1}*W$ (29)

という方程式系に従って時間発展する. K $P$ ヒエラルヒーの場合と同様, dressing 作用素の空間における flow は擬微分作用素の 因子分解 (factorization, あるいは Riemann-Hilbert 問題) を介して線形化できることが わかる. これを幾何学的に言い換えれば, K$P$ ヒエラルヒーの場合の無限次元Grassmann 多様体に相当するある種の無限次元多様体の上での力学系となる. 特別な場合, たとえば $W$ $W=1+w_{1}\partial^{-1}+\cdots+w_{N}\partial_{x}^{-N}$ (30) というように有限項で切れるときには, もう少し具体的な形で解を記述することができる. (ただし, KP ヒエラルヒーと違って, この場合も問題は有限次元の線形代数には帰着しな $\backslash .)$ その意味でこの高次元ヒエラルヒーも可積分ヒエラルヒーと呼ぶことができる

.

以上の設定からわかるように, 多成分K$P$ ヒエラルヒーの場合の$U_{\alpha}$ に相当するのは $U^{\alpha}$ である. $U_{\alpha}$ が射影作用素的なものであるのに対して $U^{\alpha}$ はもちろんそうではない. dressing 作用素を使えぱ $U^{\alpha}$ は $U^{\alpha}=W*y^{\alpha}*W^{-1}$ (31) とあらわされるが, ここで多成分 K$P$ ヒエラルヒーの場合の射影行列 $E_{\alpha\alpha}$ の代わりに登場 しているのは $y^{\alpha}$ という巾である. このことは両者の取扱いに微妙な違いを引き起こす.

3

高次元可積分ヒエラルヒー (トーラス模型) 前節の平面模型に習ってトーラス上の Moyal 代数に基づく高次元可積分ヒエラルヒー を構成することができる. 後で

\mbox{\boldmath $\tau$}

函数を構成するのはこの可積分ヒエラルヒーに対してで ある.

(8)

まず2次元トーラス $T^{2}$ 上の Moyal 代数について説明する. (以下の議論は任意偶数次元

のトーラスにもそのまま当てはまる.) $\theta=(\theta_{1}, \theta_{2})$ でこのトーラス上の角変数 (基本周期

$2\pi)$ をあらわすことにする. シンプレクティック形式は

$\omega=d\theta_{1}\wedge d\theta_{2}$ (32)

である. トーラス上の函数を周期$2\pi$ の二重周期函数と考えて, 平面の場合と同じ式でstar

product と Moyal 括弧を定義すれば, 閉じた代数ができる. この Moyal 代数 Moya1$(T^{2})$ の一つの特徴は次のような trace 汎函数が存在することである :

$t_{\theta}r(f):=\int_{T^{2}}\frac{d\theta_{1}d\theta_{2}}{(2\pi)^{2}}f(\hslash,\theta_{1},\theta_{2})$

.

(33) $f(\hslash,\theta_{1},\theta_{2})$ を

$f( \hslash,\theta_{1},\theta_{2})=\sum f_{\alpha_{1}^{-}\alpha_{2}}e^{i\alpha_{1}\theta_{1}+i\alpha_{1}\theta_{2}}$ (34)

と Fourier 展開すればもちろん $tr_{\theta}(f)=f_{00}$ である. これを trace 汎函数と呼ぶのは $tr_{\theta}(f*g-g*f)=0$ という性質をもつからである. より詳しくは, 次のことが成立する

(Fourier 級数展開を使えぱ用意に確かめられる) :

$t_{\theta}r(f*g)=t_{\theta}r(g*f)=t_{\theta}rfg$,

$t_{\theta}r(1)=1$

.

(35)

第2式はこの trace 汎函数の正規化の仕方を示している. これと $N\cross N$ 行列の場合の式

tr(l) $=N$ とを見比べると, large-N limit の過程で trace を乗法的に

1

$\overline{N}$ tr

$Xarrow$ tr$f$ (36)

と再正規化 (繰り込み) していることがわかる.

平面の場合のヒエラルヒーの構成に習えぱ, $y$ に相当するのは $\theta_{1}$ である. そこでLax作

用素として

$L$ $=$ $\partial_{x}+\sum_{n=1}^{\infty}g_{n+1}\partial_{x}^{-n}$,

$U$ $=$ $\theta_{1}+\sum_{n=1}^{\infty}u_{n}L^{-n}$ (37)

というものを考える. ここで係数

(9)

はトーラス上の函$\ovalbox{\tt\small REJECT}$

つまり $\theta$

について二重周期性をもつものとする. 従って $U$ 自体は二

重周期的でないが, $\alpha$ を整数とすれば$e^{i\alpha U}$ は二重周期的である. これが平面の場合の $U^{\alpha}$

に相当するものである. $\alpha$ は今の場合すべての整数値$0,$ $\pm 1,$ $\pm 2,$

$\ldots$ を走る. 従って時間変 数としては $t=(t_{n\alpha}),$ $n=0,1,2,$

$\ldots,$$\alpha=0,$ $\pm 1,$ $\pm 2,$$\ldots$, というようなものを用意する. こ れらを用いてトーラス模型を Lax 方程式系

$\frac{\partial L}{\partial t_{n\alpha}}=[B_{n\alpha}, L]$, $\frac{\partial U}{\partial t_{n\alpha}}=[B_{n\alpha}, U]$ (39)

ならびに Lax 作用素問の代数的関係式

$[L, U]=0$ (40)

により定義する. ここで

$B_{n\alpha}$ $:=(L^{n}*e^{i\alpha U})\geq 0$

.

(41)

さらに dressing operator は $W=1+ \sum_{n=1}^{\infty}w_{n}(\hslash,x,y, z,t)\partial_{x^{-n}}$. (42) (係数は $\theta$ について二重周期的) という形の擬微分作用素で, Lax 作用素と $L=W*\partial_{x}*W^{-1}$, $U=W*e^{i\alpha\theta_{1}}*W^{-1}$ (43) という関係で結ばれ, それ自体は

$\frac{\partial W}{\partial t_{n\alpha}}=-(W*\partial_{x}^{n}e^{i\alpha\theta_{1}}*W^{-1})_{\leq-1}*W$ (44)

という方程式系に従う. 平面模型とトーラス模型で違う点を並べると次のようになる :

4

高次元可積分ヒエラルヒーに対する $r$ 函数 ここでも多成分K$P$ ヒエラルヒーを手がかりに議論を進める. 1 成分・多成分いずれの 場合も

r

函数を定義するには何通りかのやり方がある. もちろん定義されるのは同じ函数 である. 典型的なものを掲げると :

(10)

(i) Grassmann 多様体の Pl\"ucker 座標を用いる方法, (ii) 自由フェルミ場. Clifford 作用素を用いる方法, (iii) $\log\tau$ に対する微分方程式系を立てる方法, ということになるだろう. このうち (i), (ii) は解の構造まで踏み込んで論じることができる 点で優れているが, 高次元への拡張が難しい (拡張できれば願ってもないが, いまのところ できない). (iii) は

r

函数の理論のごく初期に用いられたものであるが, こちらは large-N limit の考え方で容易に高次元に拡張できるのである. (iii) の立場では N-成分 K$P$ ヒエラルヒーの $\tau$函数を次の微分方程式の解として特徴付け られる :

$\frac{\partial\log\tau}{\partial t_{n\alpha}}=r_{\lambda}estr[\lambda^{n}E_{\alpha\alpha}W(\lambda)^{-1}(\frac{\partial W(\lambda)}{\partial\lambda}-\sum_{k=1}^{\infty}\lambda^{-k-1}\frac{\partial W(,\lambda)}{\partial t_{k0}})]$

.

(45)

ここで $W(\lambda)$ は $W$ $\partial_{x}arrow\lambda$ と置き換えて得られる Laurent 級数

$W(\lambda)$ $:=1+ \sum_{n=1}^{\infty}w_{n}\lambda^{-n}$, (46)

$res_{\lambda}$ は $\lambda$

に関する formal residue,

$r_{\lambda}es(\sum a_{n}\lambda):=a_{-1}$, (47) tr は $N\cross N$ 行列のトレースである. また $\partial/\partial t_{k,0}$ は

$\frac{\partial}{\partial t_{k,0}}$ $;= \sum_{\alpha=1}^{N}\frac{\partial}{\partial t_{k,\alpha}}$ (48)

により定義される ; あるいは $t_{k,\alpha}$ を使わず もっと直接に

$\frac{\partial W}{\partial t_{k,0}}=-(W\partial_{x}^{n}W^{-1})_{\leq-1}W$ (49)

で定義してもよい. 上の方程式は連立系であるが, その Frobenius 可積分条件はヒエラル ヒーによって保証されている. このような r函数の定義は佐藤三輪神保上野のモノ ドロミー保存変形の研究の中にその原型を見いだすことができる. それは伊達柏原神 保・三輪のK$P$ ヒ午ラルヒーに関する初期の研究にも引き継がれている. 上の

r

函数の定義方程式を見ると, 行列のトレース以外はそのまま我々の高次元ヒエラ ルヒーに拡張できそうな形をしている. トレースについては, Moyal 代数のトレースに置 き換えればよいだろう. そのためには平面模型ではダメで, トーラス模型のようなトレー スをもつ Moyal 代数に基づく模型が必要であろう – これが基本的な発想である. 実際こ れがうまく行くことが証明できる :

(11)

定理. 上の方程式で

$trarrow t_{\theta}r$,

$\lambda^{n}E_{\alpha\alpha}arrow\lambda^{n}e^{i\alpha\theta_{1}}$ (50)

と置き換えて得られる方程式系

$\frac{\partial\log\tau}{\partial t_{n\alpha}}=r_{\lambda}est_{\theta}r[\lambda^{n}e^{i\alpha\theta_{1}}*W(\lambda)^{-1}*(\frac{\partial W(\lambda)}{\partial\lambda}-\sum_{k=1}^{\infty}\lambda^{-k-1}-\frac{\partial W(,\lambda)}{\partial t_{k0}})]$ (51)

Frobenius

可積分条件を満たす. 従って積分定数の不定性を除いて $\log\tau=\log\tau(\hslash, x,t)$ が決まる 証明の方法は結局K$P$ ヒエラルヒーの無限次元Grassmann 多様体による取扱いの真似で ある. ただし, 今の場合 Pl\"ucker 座標に当たるものはないので, 本来の局所座標系 (affine 座標系) に相当するものを使って議論を進める. トレースについては具体的な表示は必要 でな \langle , $tr_{\theta}(f*g-g*f)=0$ という性質しか使わないので, 2次元トーラスに限らずト レースのある Moyal 代数ならば一般に (トーラスに限らず) 同じことができる. このように多成分K$P$ ヒエラルヒーと平行した議論が可能であるが, その場合とはかな り異質な要素を含んでいることにも注意しなければならない. 実際, すでに前節で注意し たように, 行列のトレースと Moyal 代数のトレースは再正規化 (繰り込み) によって結ば れている. 従って $\tau$函数と N-成分K $P$ ヒエラルヒーの

r

函数\mbox{\boldmath$\tau$} $N-KP$ の関係も繰り込みを 経た複雑なもののはずである. (荒っぽくいえば $\tau\sim\lim_{Narrow\infty}\tau_{N-KP^{1/N}}$ (52) というところだろうか $?$) この繰り込みの過程で多成分K $P$ ヒエラルヒーで存在したさま ざまな構造 (例えば広田型双線形方gx Wronski 行列式表示, 頂点作用素, etc. ) が壊 れてしまっているらしい. 特殊解 (そもそも具体的にわかる解が少ない) に対する $\tau$函数 の具体的な形も全然わからない. それでもこの $\tau$函数の定義は以下のような理由により妥当なものであると考える.

1.

上に示したように, 多成分K$P$ ヒエラルヒーの場合の構成のきわめて自然な拡張で ある.

2. $\partial_{x}arrow i\hslash\partial_{x},$ $\partial/\partial t_{n\alpha}arrow i\hslash\partial/\partial t_{n\alpha}$ という置き換えで Planck 定数を導入して $\hslasharrow 0$

極限を考えることにより, 高次元の無分散可積分ヒエラルヒーが得られるが, 上の $\tau$函数

の定義はこの極限移行の過程を見るのにも適していることがわかる.

3.

平面模型 トーラス模型ともにその背後に無限次元の対称性があるが, 上の \mbox{\boldmath$\tau$}函数

に基づいてそれらの対称性も $\tau$函数に持ち上げられる. (実は $\tau$函数を上のように定義でき

(12)

次の節では最後の点について論じる.

5

ヒエラルヒーの対称性と代数的構造 まず dressing 作用素の言葉で無限次元対称性について説明する. これを Lax 作用素の言 葉に翻訳することはすぐにできるが, ここでは省略する. 最後に, こうしてできる無限次 元対称性を $\tau$函数に持ち上げる. $\tau$函数を考える都合上, 以下ではもっぱらトーラス模型 で話を進めるが, 平面模型でも r函数に進む直前のところまではそのまま当てはまる. ここで対称性と呼んでいるのは方程式に働く無限小変換 (解空間上のベクトル場といって

もよい) のことで, 擬微分作用素$A=A(\hslash, x, \theta_{1}, \theta_{2}, \partial_{x})$ を任意に与えるごとに次のような

無限小変換が得られる (これは dressing transformation と呼ばれるタイプの変換である) :

$\delta_{A}W$ $:=(W*A(t)*W^{-1})_{\leq-1}*W$, (53)

ここで

$A(t)$ $:= \exp(\sum_{n,\alpha}t_{n\alpha}\partial_{x}^{n}e^{i\alpha\theta_{1}})*A*\exp(-\sum_{n,\alpha}t_{n\alpha}\partial_{x}^{n}e^{i\alpha\theta_{1}})$. (54)

これが対称性であるとは, $Warrow W+\epsilon\delta_{A}W$ $mod \epsilon^{2}$

でヒエラルヒーの解を解に移して いることを意味する. 対称性となる条件は $\delta_{A}W$ に対する微分方程式の形で具体的に書き 下せる. この条件を直接に検証することも (計算は大変だが) できるが, もともと上の無 限小対称性は別の方法 (Riemann-Hilbert 問題) から導かれたものである. この無限小対称性については以下の基本的な事実がわかっている. (第1項はただちにわ かるが, 第2項の証明にはかなりの計算が必要である.)

1.

次の式が示すように, ヒエラルヒーの flow を定義するベクトル場自体 この対称性 の特別な場合である :

$\frac{\partial W}{\theta t_{n\alpha}}=\delta_{\partial_{x}^{n}e^{i\alpha\theta_{1}}}W$ (55) 2. この無限小変換は次のような交換関係に従う. $[\delta_{A},\delta_{B}]=\delta_{[A,B]}$

.

(56) つまり, この無限小対称性は擬微分作用素の Lie 代数を解空間上のベクトル場として実現 したものになっている. ヒエラルヒーの floW の生成子はその中で可換な部分代数をなして いる. この Lie 代数はK$P$ ヒエラルヒーの場合の代数構造 (W-infinity 代数) の一つの高 次元化を与える.

(13)

問題はこの無限小対称性を

\mbox{\boldmath$\tau$} 函数のレベルにまで引き上げることである. 結果を説明す

るために記号を準備する. まず, $A(t)$ $x,$$\partial_{x}$

とそれ以外の部分に分けて, $x,$$\partial_{x}$ を左へく

くりだした形

$A(t)= \sum_{n,\ell}*\partial_{x}^{n+l}x^{\ell}a_{n\ell}(\hslash,t, e^{i\theta_{1}}, e^{i\theta_{1}})$ (57) に展開しておく. 係数は $\theta$ について二重周期函数なので$t,$$e^{i\theta_{1}},$$e^{i\theta_{2}}$ の函数とみなしている. このとき $\delta_{A}W$ は $\delta_{A}W=\sum_{n,l}(W*\partial_{x}^{n+l}*x^{l}a_{n\ell}(\hslash,t,e^{i\theta_{1}},e^{i\theta_{2}})*W^{-1})_{\leq-1}*W$ (58) と書ける. これを用いると無限小対称性の log\mbox{\boldmath$\tau$} への拡張は次のように具体的に構成できる. 定理. $\delta_{A}$ の $\log\tau$ への作用を $\delta_{A}\log\tau$ $=$

$- \sum_{nl}r_{\lambda}est_{\theta}r[\lambda^{n+l}a_{n\ell}(t, e^{i\theta_{1}}, e^{i\theta_{2}})*W(\lambda)^{-1}$

$*( \frac{1}{(\ell+1)!}\frac{\partial^{l+1}W(\lambda)}{\partial\lambda^{l+1}}-\sum_{k=1}^{\infty}\lambda^{-k-1}\frac{\partial^{\ell+1}W(\lambda)}{\partial t_{k0}\partial\lambda^{\ell}})]$

$-\gamma(A, \hslash, x, \theta, t)$ (59)

により定義すると

$\frac{\partial}{\partial t_{n\alpha}}\delta_{A}\log\tau=\delta_{A}\frac{\partial\log\tau}{\partial t_{n\alpha}}$ (60)

という関係式力輪たされる. これは$\log\tauarrow\log\tau+\epsilon\delta_{A}\log\tau$ が$mod \epsilon^{2}$ $Warrow W+\epsilon\delta_{A}W$

に対応する $r$函数の変換を与えることを意味している. ここで$\gamma(A, \hslash, x, \theta, t)$ は$A$ で決ま

るスカラー函数である (後で説明する).

特に $A=-\partial_{x}^{n}e^{i\alpha\theta_{1}}$ の場合に当てはめると (この場合, $\gamma(A,$$\hslash,$

$x,$$\theta)=0$ ) $\log\tau$ の定義方

程式の右辺に一致する. 裏返せぱ, $\log\tau$ の定義方程式は無限小対称性としてヒエラルヒー

の flow 自体を選んだものとして与えられている.

さらに, 交換関係についても次の結果が得られている.

定理. この無限小変換は次のような交換関係に従う

:

$[\delta_{A}, \delta_{B}]=\delta_{[A,B]}+c$($A$, B)凸。

$g\tau$ (61)

ここで $c(A, B)$ $A,$$B$ で決まる定数 (これも後で説明する) であり, 凸。

$g\tau$ は

$\log\tau$ だけ に非自明に作用する無限小変換 ( $\tauarrow c\tau,$ $c\neq 0$, というスケール変換の無限小形)である

:

(14)

$\partial_{\log\tau}$ はほかのすべての微分 $\delta_{A}$ と可換で, $c(A, B)$ はコサイクル条件 $c(A[B, C])+c(B[C, A])+c(C[A, B])=0$ (63) を満たすので, $\log\tau$ に拡張された無限小対称性の交換関係は$W$ レベJの無限小対称性の 交換関係の1次元中心拡大である. これは1成分・多成分K$P$ ヒエラルヒーの場合と同様 である 最後に $\gamma(A),$ $c(A, B)$ について説明する. 今のところ擬微分作用素本来の言葉で定義す ることは難しく, いったんすべてを無限行列に翻訳して定義する.

まず, ] に擬微分作用素$A=A(\hslash, x, \theta, \partial_{x})$ に対して Moyal

$\tau$

数の要素$a_{ij}=a_{ij}(\hslash, x,\theta)$ を次のように定めることができることに注意する :

$\partial_{x}^{i}\cdot A=\sum_{j=-\infty}^{\infty}a_{ij}\partial_{x}^{j}$. (64)

これらを要素として A $=(a_{ij})$ という $Z\cross Z$ 行列をつくると, $Aarrow A$ という対応は Moyal

代数係数の擬微分作用素の非可換環から Moyal 代数要素の無限次-iffl 舅$g1(\infty, Moya1(T^{2}))$

への準同型となる. 行列 A は定数でなく, 次の微分方程式を満たす :

$\frac{\partial A}{\partial x}=[A, A]$, (65)

ここで A は$KP$ ヒエラルヒーでおなじみの shift 行列

$A=(\delta_{i+1,j})$, (66)

言い換えれば

$A=\exp(Ax)*A(0)*\exp(-Ax)$, $A(0)=A1\cdot=0$ (67)

ちなみに, $A(t)$ に対応する無限行列 $A(t)$ はこれをさらに拡張した形の方程式

$A(t)=\exp(Ax+\sum t_{n\alpha}A^{n}e^{i\alpha\theta_{1}})*A(0)*\exp(-Ax--\sum t_{n\alpha}A^{n}e^{i\alpha\theta_{1}})$ (68)

を満たす.

以上の準備のもとで $\gamma(A, \hslash, x, \theta, t)$ は次のように定義される :

$\gamma(A,\hslash,x,\theta,t)$ $=$ $\frac{1}{2}trZt_{\theta}r([E,\exp(-xA-\sum t_{n\alpha}A^{n}e^{i\alpha\theta_{1}})]$

(15)

ここで $tr_{Z}$ は整数添字 $(i,j)$ に関するトレースをあらわす. また $E$ は次のような $Z\cross Z$

行列である :

$E=(\begin{array}{ll}-\delta_{ij}(i,j\leq-1) \geq 0(i\leq-1,j0)-0(i\geq 0,j\leq-1) \delta_{ij}(i,j\geq 0)\end{array})$

.

(70)

$c(A, B)$ の方は対応する行列 $A,B$ の行列要素の $x=0$ での値を用いて

$c(A, B)=$

$\sum_{:\geq 0,j\leq-1}t_{\theta}r(b_{ji}*a_{ij}-a_{ji}*b_{ij})|_{x=0}$ (71)

と定義される. これは結局 $g1(\infty, Moya1(T^{2}))$ 上のコサイクルを $Aarrow A$ によって擬微分

作用素の方に引き戻したもので, 普通の $g1(\infty)$ のコサイクル (Kac-Peterson コサイクル)

の拡張になっている. 違いは $tr_{\theta}$ が現れていることだが, $g1(\infty)$ を N-成分K$P$ ヒエラル

ヒーの設定で考えれば$N\cross N$ 行列のトレースが現れるので, これは1成分多成分K$P$

ヒエラルヒーに現れるコサイクル (1次元中心拡大) の自然な拡張であることがわかる.

実は上の $\gamma(A, \hslash, x,\theta,t)$ はこのコサイクルを「半分積分したもの」で, 次の微分方程式で も輸致づけられることがわかる :

$\frac{\partial\gamma}{\partial t_{n\alpha}}$ $=$ $c(A^{n}e^{i\alpha\theta_{1}},$$A(t))$ ,

$\frac{\partial\gamma}{\partial x}$ $=$ $\frac{\partial\gamma}{\partial t_{1,0}’}$ $\gamma|_{x=0,t=0}$ $=$ $0$. (72) このことも1成分多成分K$P$ ヒエラルヒーの場合となんら変わらない. 以上の結果はK$P$ ヒエラルヒーの対称性を無限次元 Grassmann 多様体の affine 座標で 取扱うやり方に習って導かれる. 出てくる概念や結果がK$P$ ヒエラルヒーの場合と似てい るのはそのためである. 反面, 頂点作用素や Pl\"ucker 座標が使えないため, それを使うや り方に比べて相当ゴタゴタしている.

6

まとめ この記事で紹介したことの要点は以下の通り :

1.

N-成分K$P$ ヒエラルヒーの $g1(N)$ を Moyal 代数に置き換えることにより高次元可 積分ヒエラルヒーが得られる. これは直観的には一種の large-N limit と見ることができ るが, 実際, これを指針にして多成分KP ヒエラルヒーに関して成立することを高次元可 積分ヒエラルヒーに拡張することができる.

(16)

2.

平面上の Moyal 代数と違って, トーラス上の Moyal 代数には正規化されたトレー

ス汎函数が存在する. このトレースを用いて

r

函数を定義することができる.

3. F.l‘R7-C可積分ヒエラルヒーも無限次元の対称性をもつ. この対称性は最初に dressing

operator に対する変換 (dressing transformation) として構成され, そのあと r函数へ拡

張される. $\tau$函数への拡張に際してこれらの無限小対称性の交換関係にはコサイクル項が

生じ, ft‘J友的構造は dressing transformation のもつ W-infinity 型代数を1次元中心拡大し

たものになる. ここで現れるコサイクルはK $P$ ヒエラルヒーに現れるコサイクルを高次元 化したものと解釈される.

4.

KP ヒエラルヒーの場合の自由フェルミ場・頂点作用素.PlUUcker 座標などの道具は 現状では高次元に拡張できていない. そのためもあって

r

函数の実体はまだよくわからな い. しかしながら, \mbox{\boldmath$\tau$}函数自体の拡張の仕方はわかったのだから, これらの道具も何とか 高次元に拡張できるのではないか, と思えてくる. それが本当に可能ならば場の理論とし ての応用も期待される. ここでは紹介できなかったが, 5. これらの結果はさらに古典極限 (無分散K $P$ ヒエラルヒーの高次元化を与える) に 移すこともできる. トーラス模型の場合, 擬微分作用素の古典極限は $(k, x, \theta_{1}, \theta_{2})$ という 4変数の函数 ($\partial_{x}arrow k$ という対応による) で, 交換子は Poisson 括弧に化ける. このよ うな設定のもとで4, 5節の内容に相当する結果が得られる. これは無分散K $P$ ヒエラル ヒーについて知られている結果の高次元版である.

6.

擬微分作用素の代わりに差分作用素を用いれば戸田ヒエラルヒーの高次元化も得ら れる. これについてもまったく同様の結果が得られるはずである.

7

文献 1節 $\bullet$ 1 成分および多成分 KP ヒエラルヒーの定式化については次に従った.

M. Satoand Y. Sato, Soliton equationsasdynamical systemsinaninfinitedimensional

Grassmann manifold, in: Nonlinear Partial

Differential

Equations in AppliedSciences

(North-Holland, Amsterdam, and Kinokuniya, Tokyo, 1982).

$\bullet$ $g1(N),$ $s1(N)$ の large-N limit とその非線形可積分系への応用の試みについては, 次

(17)

Jens Hoppe, Lectures on integrable systems, Lecture Notes in Physics, Monograph

series no. 10 (Springer-Verlag, 1992).

2 節

$\bullet$ 平面模型は次の論文で導入された

.

そこでは古典 (無分散) 極限の処方や自己双対

Einstein 方程式との関連も論じられている.

K. Takasaki, Dressing operator approach to Moyal algebraic deformation of selfdual

gravity, Kyoto preprint KUCP-0054/92 (December, 1992), Journal of Geometry and

Physics (to appear).

3節

$\bullet$ この節の内容は筆者の未発表の結果による.

4節

$\bullet$ 無限次元グラスマン多様体による $\tau$函数の記述 :

M. Sato and Y. Sato, Soliton equationsasdynamical systems inan infinite dimensional

Grassmann manifold, in: Nonlinear Partial

Differential

Equations in AppliedSciences

(North-Holland, Amsterdam, and Kinokuniya, Tokyo, 1982).

$\bullet$ 自由フェルミ場による $\tau$函数の記述 :

E. Date, M. Kashiwara, M. Jimbo and T. Miwa, Transformation groups for soliton equations, in: Nonlinear Integrable Systems –Classical Theory and Quantum Theory (World Scientific, Singapore, 1983).

$\bullet$ モノドロミー保存変形における

r

函数の一般論 :

T. Miwa, M. Jimbo and K. Ueno, Monodromy preserving deformations of linear

or-dinary differential equations with rational coefficients I, Physica $2D$ (1981), 306-352.

M. Jimbo and T. Miwa, Monodromy preserving deformations of linear ordinary dif-ferential equations with rational coefficients II, Physica $2D$ (1981),

407-448.

M. Jimbo and T. Miwa, Monodromy preserving deformations of linear ordinary dif-ferential equations with rational coefficients III, Physica $4D$ (1981), 26-46

$\bullet$

(18)

5節 $\bullet$ この節の内容は筆者の未発表の結果による. 方法論的にはKP (および超KP) ヒエラ $Js$ヒーの対称性に関する以下の研究が下敷きになっている. 特に超 K $P$ ヒエラルヒー では, 少なくともこの論文が書かれた時点で, Pl\"ucker 座標の方法が利用できず, affine 座標を用いて \mbox{\boldmath$\tau$}函数や対称性の構成を論じている. その方法は高次元ヒエラルヒーに も使える.

K. Takasaki, Geometry of universal Grassmannmanifold from algebraic point ofview,

Reviews in Math. Phys. 1 (1989), 1-46.

K. Takasaki, Synmetries of the super KP hierarhy, Lett. Math. Phys. 17 (1989),

351-357. 6節 $\bullet$ トーラス模型の古典 (無分散) 極限に対しては, $\tau$函数に代わるものとして$F$函数 (自 由エネルギー) が導入できる. これは無分散K$P$ ヒエラルヒーの$F$函数の高次元化で ある. この高次元の

F.

函数に対しても

4,

5節の内容に相当する議論が展開できる. これについては現在論文を準備中.

参照

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