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固定資産税の法的性格と国会審議の検討

ドイツ連邦憲法裁判所による財産税判決との比較

阿 部 成 治

1. は じ め に  戦後における市町村税の柱のひとつとなってい る固定資産税は,通説によると,収益への課税と 財産への課税という二面性を有す「収益的財産税」 である1)。さらに,国会における議論では,固定 資産税は不動産という物を対象とした「物税」, あるいは市町村が提供するサービスに対する「応 益税」とも説明されている。その一方で,課税対 象とされる固定資産は財産だとして「個別財産税」 ともされているが,財産は,所得・消費と並び,「応 能税」における担税力の一指標である。以上のよ うな多面性で語られる租税は固定資産税以外には なく,その法的性格を解明し,議論を整理するこ とが望まれる。  固定資産への課税は,日本に限られない。不動 産税(Grundsteuer)が市町村税とされている点 で日本に類似するドイツでは,連邦が定める財産 税(Vermögensteuer)も不動産に課税している。 その財産税では,以前から不動産評価に関連して 合憲性が問題とされており,1995 年に,連邦憲 法裁判所が財産税法の一部を違憲と決定した。判 決は,財産税の性格に関して広く判断を示してお り,根拠とされたのが,先進国が共通して憲法に 採用している租税公平主義と私有財産の保障で, 日本国憲法にも相当する規定がある。判決内容は, 日本でも詳しく紹介されている2)。しかし,判決 が,わが国で「収益的財産税」とされている固定 資産税の理解に新たな視点を提供する点は,論じ られていない。そこで,本論文は,わが国におけ る固定資産税の議論を,判決と比較検討する。  わが国における議論としては,固定資産税に関 する国会審議を中心に検討する。とくに,シャウ プ勧告を受けて固定資産税が誕生する際と,住宅 用地への課税標準の特例,ならびに市街化区域農 地への宅地並み課税を重点とする。 2. シャウプ勧告と固定資産税の誕生 2-1. 戦争直後の地租・家屋税  わが国の固定資産税は,戦前からの地租・家屋 税を基礎に,シャウプの税制勧告で誕生した。勧 告に先立つ戦争直後は,地租と家屋税にとって激 動の時代であった。それまでの国税が地方税に委 譲され,しかも地代家賃統制令の下でインフレー ションが進んだためである。  従来,地租と家屋税は,土地台帳・家屋台帳に 記載された賃貸価格に国税として課税され,税収 が県に還付されていた。戦後の経済混乱期は,ま ず 1946 年に地租が 3% から 4%,家屋税が 2.5% から 3.5% に増税された3)。翌 1947 年に地方税に 委譲された際は,進行中のインフレーションに対 応し,地租 24%,家屋税 21% と大幅増税の上, 賃貸価格が固定されている間は,法律を改正せず に地租は 3 倍,家屋税は 2 倍までの増税が認めら れた4)。さらに 1948 年には,賃貸価格が改定さ れるまで暫定的に地租 200%,家屋税 250% とさ れ,1949 年には地租・家屋税とも暫定税率が 500%に上げられた5)  地代家賃統制令の影響で課税標準が固定され, 税率の操作で後追い的に税収を確保する手法は, 各方面から批判されている。1948 年の地方税法 改正の際は,衆議院に参考人として呼ばれた 2 名 の知事が,徴税の困難さに触れている6)。証人と して 9 名を招いた参議院では,地租・家屋税に触 れた 4 名全員が,課税標準を固定して税率を上げ る手法に苦言を呈した7)。シャウプ勧告は,こう

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して強く改革が求められていた状況で作成されて いる。 2-2. シャウプの税制勧告8)  シャウプ勧告は,第 12 章「不動産税(地租・ 家屋税)」でこの問題を扱っている。勧告の重点は, a. 税収の全額を市町村に与える,b. 課税標準を 年間賃貸価格から資本価格にする,そして,c. 課 税対象を減価償却が可能な事業資産に拡大する, の 3 点である。課税の性格に関係すると考えられ ているのが b で,勧告を受け,課税標準が賃貸価 格から資本価格に変えられ,固定資産税に関する 「価格」が,地方税法第 341 条に「適正な時価を いう」と定められた。通説は,これによって土地・ 家屋への課税が,それまでの収益税的な性格から 財産税に変化した,と理解する9)。しかし,シャ ウプ勧告の第 12 章全体を読むと,そのような意 図はないことが理解できる。  勧告は,「現行の年間賃貸価格ではなく,資本 価格を課税標準として,本税を課すこと」に続き, この改正で得られる重要な利点を 2 つ述べてい る。ひとつは減価償却資産には賃貸価格を課税標 準とする税制度がうまくあてはまらない点,もう ひとつは,事業資産の再評価で過大な評価を避け る自動的なチェックとなる点で,「このチェック を行うためには,地租・家屋税は賃貸価格ではな く資本価格に課税すべきである」と記している。 つまり,勧告は,課税を償却資産に拡大する前提 として,課税標準を資本価格に変更する必要があ ると述べている。  課税標準に関してより重要なのは,第 12 章の 冒頭部である。勧告は,「地租・家屋税」の平均 税率が 500% であるにもかかわらず歳入があまり に小さいことに驚き,「この明らかな矛盾は,課 税標準が戦前の推定年間賃貸価格であるというこ とによって理解できる。その後,インフレーショ ンの結果,価格水準は 1938 年の 100 倍ないし 200倍に高騰している」と記している。「広範な 脱法があると一般に言われている」ものの,地代 家賃は「法律上ではとくに厳重」な価格統制下に ある。1949 年度に 140 億円と見積もられた税収を, 500億円に改革することを目ざす勧告が,地代家 賃統制令でインフレーション前の水準に固定され ている賃貸価格を課税標準に採用するのを断念し た理由は,この点にあると考えられる10)。勧告に は書かれていないが,資本価格を課税標準にする 最大の利点は,地代家賃統制令の下で,税率を上 げずに経済の展開に応じた税収を確保できる点に あった。  さらに,勧告には,地代家賃から支払うという 収益性の維持を暗示している記述が 2 ヶ所ある。 ひとつは,「家屋税は,大半の国で,伝統的に地 方政府の大きな財源である」という段落の最後に, 「本税は土地家屋所有者よりもむしろ借地借家人 によって負担されるものと通常予定されている」 と記していることである。もうひとつは,現行ど おり不動産の所有者に課税するとしたことに続 き,「同時に,地代家賃統制令で固定されている 地代家賃は,増税相当額だけ引きあげること」を 求めている点である。  以上のように,固定資産税の基礎となったシャ ウプ勧告に,収益によって支払う税金から,財産 そのものに対する税金へと変える意図は見出せな い。勧告が課税標準を地代家賃から資本価格へ変 更するように求めたのは,地代家賃が統制で低額 に固定されている状況に対処すると同時に,課税 対象を償却資産に拡大する準備であった。 2-3. 地方税法誕生時の国会審議  シャウプ勧告の実施を目ざして 1950 年の通常 国会に提案された地方税法案は,参議院で否決さ れ,廃案となった。そこで,直ちに修正して臨時 国会に提案され,ようやく成立に漕ぎ着けている。 シャウプ勧告に沿って通常国会に提案された固定 資産税の税率 1.75% は,臨時国会へ 1.7% で提案 され,審議の結果 1.6% に修正された。この経過 からわかるように,固定資産税は,地方税法の審 議における争点のひとつとなった。  固定資産税の審議で主に議論されたのは,「支 払いが可能かどうか」であった。支払いが困難だ

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という意見に対し,シャウプ勧告によって国税が 減税されており,地方税の増税はその減税額より 少ないことが強調して説明されている。農地改革 で自作農となったばかりで,価格を形成する自由 な市場がない農地に対し,従来より高い固定資産 税が課せられることについても,農林大臣が,「農 業がこの税をかけられても経営し得られるよう に,農業政策を持って行くという方針を進めるな らば,決して御心配になるようなことはない」と 力説している11)  一方,固定資産税の性格は,財産への課税と説 明された。法案の提案理由で,「具体的な地方税 改革の方針」として,「第一には,財産課税の重課, (中略)等を行い,地方税全般にわたって,その 負担の合理化と均等化を徹底する」と説明されて いるが12),この「財産課税の重課」が,地租と家 屋税を拡充して「固定資産税」を創設することで ある。審議では,従来の賃貸価格主義を資本価格 に変え,時価主義を採用した根拠も質問された。 答弁に立った自治庁次長は,「大体この賃貸とい うような事実が非常に少くなって」おり,「賃貸 という事実がないのにかかわらず,その賃貸を標 準にして課税することは適当でないというような ことから,今回これを時価に改め」たと,勧告内 容と異なる説明を行っている13)  当初の地方税法は,第 344 条に「使用者に課す る固定資産税」を定めていた。これは,実際に税 金を負担しているのは使用者であるという観点か ら,非課税となっている国や地方団体が所有する 土地・家屋では代わりに入居者に課税しようと導 入されていたもので,家賃から税金を支払うと想 定していたシャウプ勧告にも沿う。固定資産税は 財産税の性格を持つという説明に対し,この規定 をもとに,「都営住宅の利用者から家賃をとると 同時に,その人間から家屋税をとるというような 形をとっていることは財産税とは言えない。収益 税的な意味を持って来る」と質問が行われた。こ れには,財産税を「さらに学問的に検討いたしま すと,ただいま御指摘になったように直接の財産 課税たるものと,あるいは収益的な性格を持って いるものとにわかち得るのではないか」と答弁が 行われ,「さらに研究を進めて参りたい」が,従 来どおり「いましばらくこれを原則と」したいと 付け加えられている14)  以上のように,地方税法制定時の審議では,家 賃地代から支払うという勧告の趣旨にもかかわら ず,財産に課せられる税金と強調された。この背 景には,占領下において法律を通過させなければ ならないという事情があったと推測される。当時 は緑風会が参議院第一党で,いわば「衆参ねじれ」 の状況にあった。国税の減税額よりは少ないもの の,やはり地方税増税には抵抗がある。しかも, 結果的に家賃・地代から支払われる固定資産税に は,大衆負担の要素がある15)。この点を弱め,審 議をスムーズに進めるため,「財産課税」と打ち 出したのではないかと推測できる。  なお,収益税の性質になると質問された使用者 課税制度は,1951 年改正で削除された。戦後の 住宅難を緩和するために「地方団体が一般庶民の ために設けております住宅につきましても,その 使用者にかなり重い固定資産税を課しておりまし て,現在の住宅政策から考えて」問題だからであ り16),課税の性格を理由とする廃止ではない。 3. 地価の高騰と住宅用地の扱い 3-1. 地価高騰による負担調整の登場  こうして登場した固定資産税は,住民税と並び, 市町村税の中心となった。課税対象となる固定資 産の価格は,地方税法にある「適正な時価」であ る。その後地価が上昇したが,一挙に引きあげる と経済への影響が大きいため,自治省は低めの引 き上げ率を指示し17),時価との格差が拡大した。 そこで,売買実例に関する全国的な調査を行い, その結果を基礎に 1964 年から土地の評価を大幅 に引き上げることとなった。全国的にみて,農地 は 1.2∼1.4 倍,宅地は 6∼7 倍になるので,税額 にどう反映させるかが難問である。評価の見直し は増税を意図したものではなく,均衡化が目標で あ る。 そ こ で, 税 制 調 査 会 の 答 申18)を 受 け, 1964年の地方税法改正で「負担調整措置」が登

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場した。これは,上昇率の低い農地の税額は固定 し,宅地では課税標準を前年の 2 割増までに制限 して,税負担の急増を防ぐ手法である。  この案を審議した 1964 年の国会では,衆議院 の参考人意見聴取で,税制調査会メンバーから, 「固定資産税の基本的なあり方については,なお 検討することとし,評価制度の改正に伴う負担の 調整に当たっては,税率を引き下げるという意見 もあったが,さしあたり激変緩和に主眼をおいて, 次の評価改訂の時期まで,下記の経過措置をとる」 という答申への経過が説明されている19)。審議で は,「固定資産税は収益課税なのか,財産課税な のか,どういうふうに御理解されておりますか」 と,税の性格をめぐる議論も行われた。「財産課 税と考えております」という自治大臣の答弁に, 「収益を無視するような形で固定資産税の課税を 考えておられる。こういうものの考え方自身に私 は大きな誤りがあるのではないかと思うわけで す。いま暫定措置はお出しになっておりますけれ ども,恒久措置についてもその考え方を貫いてい かれるわけですか」と再質問が行われた。これに は,税務局長が,「個別財産税といったような考 え方に立っておるわけであります。ただ,どこか ら税金が払われるかといいますれば,やはり収益 を予想しての財産所有という実態に課税をすると いう考え方に立っておる」と答弁している20)  負担調整が始まった 1964 年の末に,税制調査 会から答申が出された21)。暫定的な調整措置が行 われている固定資産税については,「課税の特例 を設ける等の措置により,その負担の合理的調整 を図るべきである」と認め,方法として(イ)税 率の引き下げ,(ロ)土地の課税標準の特例,(ハ) イとロの両方,の 3 つを審議した。その結果,(イ) は問題があるので(ロ)か(ハ)が適当だと述べ ている。土地と家屋・償却資産の間で税率を変え る方法があげられていないのは,「土地,家屋及 び償却資産の間で,その収益力に差があるかどう かは議論の存するところであるのみならず,現実 の各資産の使用の実態は,ほとんどの場合一体的 に利用されているから」,各資産の収益力を分別 して差を判定するのが困難だからである。また, 固定資産税の性格が財産税か収益税かを種々の角 度から検討した結果,「現行の固定資産税は,本 来収益力のあることが予想される土地,家屋及び 償却資産について,その収益性に担税力を見出し て課する税」だという意見が大勢を占めた。  このように,「固定資産税は形式的には財産税 だが,納税の基礎は資産の収益力にある」という のが,当時の政府の考え方であった。 3-2. 住宅用地への課税標準特例  3 年毎に行われている土地の評価替えで,1964 年度に大幅に高くなった宅地は,1967 年度の評 価替えが見送られた。次の 1970 年度の評価替え では,さらに 2 倍強となると予想された。この結 果,評価額の上昇に応じて 1966 年度から年 1∼3 割増と差がつけられていた課税標準の負担調整に 4割増が追加され,増税のテンポが上がった。  負担調整で税負担の激変は緩和できるが,最終 的な税額を軽減する効果はない。そこで,評価替 えでさらに評価が上がる 1973 年度に,「住宅用地 に課する固定資産税の課税標準を二分の一の額と する」という恒久的な負担軽減策が登場した。 1973年度の住宅用地課税標準は,新評価額の 30%前後になる。3 倍強の 100% になるまで継続 する負担調整による増税を,6 割増の 50% で止 めよう,というのが特例の考え方である22)。これ は,1964 年末の税制調査会答申にある(イ)(ロ) (ハ)のうち,住宅用地に限って(ロ)を適用す るものである。  衆議院地方行政委員会における 1973 年 3 月 6 日の質疑から23),住宅用地特例は,固定資産税が 収益税としての性格を有するとして考えられたこ とを確認できる。まず,固定資産税の額が大幅に 増加して町に住めないという質問に,自治省税務 局長が,「結局,地価の上昇と所得の上昇という ものが非常にアンバランスになっているのではな いかという点は,確かに御指摘のとおり」であり, 「そういう点では,宅地の中でも直接的な収益を 生まないところの住宅用地というものについて

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は,他の事業用の資産と区別して税負担を求める べきではないだろうかというような観点から,今 回の固定資産税の改正をお願いをするということ にいたした」と答弁している。固定資産税は収益 税か財産税かという質問には,「現在の経済社会 において有効に利用されております場合に生むで あろう収益のうちから一部税負担をしてもらう, そういう趣旨の収益税的な性格を持つものだ」と 答えられた。続いて「固定資産が持っている予想 収益力といいますか,期待収益力に課税をしてい る」という理解でいいかと質問され,税務局長が 同意している。  住宅用地と事業用地を分離した背景には,税金 の負担態様の違いもある。住宅用地では,いくら 固定資産税を支払っているのかに関係なく,所有 者に所得税や住民税が課税される。一方,事業用 地の場合は,固定資産税が「事業経営のための経 費」となり,「法人税の計算におきまして損金に 算入される」という違いが出てくる24)  翌年の 1974 年には,住宅一戸あたり 200 m2 での面積にかかる固定資産税について課税標準を 四分の一の額とする「小規模住宅用地の特例」が 追加された。200 m2の根拠は,住宅統計調査等 による都市部の住宅の平均敷地面積が 199 m2 あったことである。「住宅用地として最低限度必 要なものについて減税をする」という観点から, 全国平均値の 290 m2は採用されていない25)  こうして住宅用地に課税標準特例が設定された 背景には,地価上昇による庶民住宅への固定資産 税の増税が社会問題となっていた事情がある。学 界においては,現に居住の用に供している土地は 「生存的財産」であり,地価が上昇したとして評 価基準を引き上げることは問題だとする主張が, 理解を広げていた26)  その後,1994 年度に,固定資産税における地 価評価が公示地価の 7 割とされ,評価が全国平均 で約 3 倍に上昇した。大幅な増税が予想されるた め,住宅用地課税標準の二分の一特例が三分の一 に,そして 200 m2までの小規模住宅用地の四分 の一特例が六分の一に強化され,今日まで継続し ている。 4. 市街化区域農地への宅地並み課税問題  3 章の検討で,負担調整と住宅用地特例の背景 に,固定資産税の性格を収益税とする考え方があ ることを確認できた。誕生時には財産課税と説明 された固定資産税だが,その後は収益性が重視さ れたことは,シャウプ勧告の趣旨に沿う。しかし, 実際には,住宅用地特例の誕生前後に,国会の審 議で収益性が否定されていた。それが,市街化区 域農地への宅地並み課税の議論である。 4-1. 空閑地税と宅地並み課税  三大都市圏に産業と人口が集中し,深刻化した 土地・住宅問題に対処するための政策が模索され る中で,土地保有税の強化で宅地供給を進める案 も候補とされた。当初は,空閑地税等の新税が有 力視され,1967 年 6 月に税制調査会に設置され た土地税制特別部会で精力的に検討された。しか し,翌 1968 年に提出された答申は27),譲渡所得 税の軽減を中心とする内容で,新税はなかった。  調査会では,市街化区域内で建築物や工作物の 敷地とされていない土地に,空閑地税等の新税を 課税することも審議された。しかし,用途地域は, 当該地域内の全ての土地を宅地以外に利用するこ とを制限する趣旨のものではない。空間を残して おくことが望ましい部分についても宅地としての 利用を間接的に強制する恐れがあることや,土地 利用の最低限度を定めた規定がない点から,課税 対象や土地利用度の判定に客観性のある基準を見 出すことは困難だと,否定的な見解が述べられて いる。その一方で,答申は,「固定資産税の評価 の適正化等」として,「市街化区域内で,市街地 として都市施設が整備された地域における農地, 山林等については,周辺宅地と評価の均衡をはか ることが必要である」と示した。  その後は,市街化区域農地への宅地並み課税が 追求される。とくに,1970 年 2 月の東京問題専 門委員会助言は28),時価評価による固定資産税と 都市計画税の試算結果をもとに,「農業純収入の

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全額を土地保有税につぎこんで,まだ足りないこ とになる。したがって土地保有税の時価評価が都 市近郊農家に与える農地転用促進効果には疑問の 余地がない」として,市街化区域内の農地・山林 を時価評価して固定資産税を課し,同時に都市整 備と土地所有者への貸家建設資金融資を行うよう に提言した。農業継続を希望する農家へは,代替 地のあっせんを提案している。  これらの動きを受け,1970 年 8 月に国の地価 対策閣僚協議会が「地価対策について」を決定し た29)。そこには,市街化区域設定の早期完了とそ の計画的整備に続き,「市街化区域内の農地の固 定資産税及び都市計画税について,農地と近傍宅 地との課税の均衡を考慮し,土地保有課税の適正 化を図る」と記されていた。 4-2. 宅地並み課税の国会審議  農地への宅地並み課税は,農業収益とは無関係 で,高額である。この結果,固定資産税の性格に 関する政府答弁が変更を強いられることとなる。 それが最も強く現れているのが,市街化区域農地 への宅地並み課税の導入を決定した 1971 年の国 会審議である。重要なのが「予想される収益から 支払う」という答弁の変更で,根拠とされたのが 地方税法の規定である。  まず衆議院で,野党議員が,「いかに売買すれ ば高価な土地であると算定できても,何ら収益の あがらない現状の農業の実態の中で,宅地並みの 税金を課すということは非常に過酷」と,農家へ の特別な対応を求めた。しかし,自治省税務局長 は,負担はそう耐えられないものではないだろう と述べた後,「宅地には固定資産税の負担を求め ている。そことのアンバランスをどう考えるかと いう問題もあろう」と,バランス論を打ち出した。 そして,「この固定資産税では,土地の収益力と いうものには着目しませんで,結局,適正な時価 という法律の規定になっておりますので,売買実 例価格というものを基本に置いて課税をしておる というたてまえ」になっていると付言した30) 農地から生産された農産物を販売して所得が出た 場合に税金をかけるのが基本原則で,潜在的な価 値に課税すると生産手段を破壊するという意見も 出された。これには,「固定資産税というのはも うけがあって,もうけから払う税だというそこの 認識が,いささか私ども所見を異にする」として, 「この税の本質といたしましては,財産を所有し ておる,固定資産を所有しておるという事実に着 目をいたしまして,その資産の価値にこの課税標 準を求めて課税をする」と税務局長が答弁し,自 治政務次官が,「赤字の会社であっても,(中略) 固定資産税はかかるという性格が」あると付け加 えている31)  従来の答申や助言は,農地と山林を同格に扱い, 都市施設が整備された段階で宅地並みに課税する よう提言していた。法案が農地だけを対象として 山林を除外した点については,質疑を見出せない。 都市施設の整備については,「区分けというもの ができるかどうか,こういうことにつきましてい ろいろと調査と検討いたしたわけでございます が,結論的には,これはできる話ではない」と, 技術面で説明された。代わりに出てきたのが,地 価で「A,B,C の区分けをして漸次負担を求め ていく」方法である32)  参議院では,「市街化農地を耕作している農民 に高い税金をかけて農地の手放しを強要する」強 制法規ではないかという質問も出された。これに は,自治大臣が,「固定資産税内の課税の公平と いう点がむしろ主眼」であり,市街化区域のまと まった農地は調整区域に入れ,減免措置や職業転 換時の資金等,「この際まずとるべき措置は大か た講じた」と説明している33)  憲法との関連は,衆議院の参考人招致で,課税 の均衡が早急に実現されるべきで,賃貸住宅建設 や職業転換の施策が必要だと述べた参考人に,野 党議員が,職業選択の自由への意見を質問しただ けである。参考人は,この法律が職業選択の自由 に介入する恐れがあるとは考えていないことと, 固定資産税は資産利用による収入とは直接的な関 係を持たない財産税だ,と述べている34)  こうして,宅地並み課税を全国的に実施する法

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改正が成立した。その後,農民の反対運動が生じ, 初年度の 1972 年度は,地価が高い A 農地のうち, 耕作されていない名目だけの農地に限って課税が 実施された。翌 1973 年度は,自民党修正案とし て三大都市圏特定市の A・B 農地に実施する案が 出され,自民党議員が野党議員に答弁する形で審 議が進められた。憲法に関連し,野党議員が,数 年間に税額が 100 倍以上になることは「税の面で 農業をやめろと言うことと同じじゃないでしょう か。(中略)これは,憲法二十二条の職業選択の 自由からいって許されないことじゃないですか」 と質問している。これには,自民党議員が,「同 じ憲法に,すべての国民は法のもとに平等に取り 扱わなければならないという条章がございまし て,同じに並んでいる一方の土地が現在何百円か の固定資産税がかかっておるときに,隣は農地と いう状況にあるからといって,これは二円しかか かっていないということは,これまた憲法違反に なるのではないか」と反論して終わっている35) 4-3. 近傍宅地課税との均衡と工業専用地域  「固定資産評価の適正化」で,「農地と宅地の間 での課税の均衡」として導入された宅地並み課税 であるが,地価対策閣僚協議会決定にある「農地 と近傍宅地との課税の均衡」の観点から見ると, 問題が残っている。そのひとつが,住宅用地の課 税標準特例とのバランスである。  宅地並み課税が初めて審議された時は,住宅用 地の課税標準特例はなく,宅地の評価がそのまま 宅地並み課税の基礎とされた。自民党修正案で三 大都市圏特定市 A・B 農地に宅地並み課税が導入 された 1973 年度は,住宅用地課税標準の二分の 一特例が登場した年である。自民党修正案は,宅 地並み課税の対象農地に,住宅用地と同じ二分の 一特例を適用した。市街化農地の近傍宅地は住宅 用地が主体と思われるので,住宅用地とのバラン スを考えたものと思われる36)  翌 1974 年度に,住宅一戸あたり 200 m2以下の 用地で課税標準を四分の一にする「小規模住宅用 地の特例」が登場した。200 m2は都市部の住宅 の平均敷地面積なので,農地でも,都市農家の平 均耕地規模まで四分の一にする案や,小規模住宅 用地に該当する住宅用地比率をもとに調整するこ とが検討されても然るべきだったと思われる。し かし,そのような検討が行われた形跡はない。 1994年度に住宅用地の特例二分の一が三分の一 に強化された時は,農地の宅地並み評価も同じ三 分の一にされた。しかし,この時も,小規模住宅 用地特例との比較は議論されていない。  大都市圏の市街化区域にある住宅用地は,小規 模なものが多い。たとえば政令都市化で 2006 年 度から宅地並み課税が始まった静岡市の 2009 年 度データによると37),住宅用地計 4,166 ha のうち, 80%の 3,326 ha が小規模住宅用地で,市街化区 域は比率がさらに高いと思われる。仮に 20% が 住宅用地特例の三分の一,80% が小規模住宅用 地課税標準特例の六分の一とすると,課税標準の 平均は五分の一になる。農地は三分の一評価なの で,都市施設が完備してないにもかかわらず,周 辺住宅地の 7 割近く高い課税標準を基礎に税額が 算出されていることとなる。これは,宅地並み課 税が目ざした「課税の均衡」に反している。  もうひとつのアンバランスが,住宅建築が認め られない工業専用地域である。農地の周辺には特 例が適用される住宅用地がないので,農地は相対 的に優遇されている。しかし,宅地並み課税が目 ざしたのは住宅難の解決であり,住宅が許容され ない工業専用地域の農地課税を強化しても効果を 期待できない。問題は,この点にある  三大都市圏特定市の A・B 農地で宅地並み課税 が始まった 1973 年度には,同時に「特定市街化 区域農地の固定資産税の課税の適正化に伴う宅地 化促進臨時措置法」が制定され,土地区画整理事 業の施行を要請したり,住宅建築に住宅金融公庫 貸付けの特例を受けられるようになった。これを 背景に,国会で,「農家に対して,土地を持って 賃貸住宅をつくっていただくという転職を要請し ておるわけですね」と自治大臣が述べている38) この時に宅地並み課税の対象となった特定市街化 区域の A・B 農地には,工業専用地域はなかった

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かもしれない。しかし,3 年後の 1976 年度には, 地方で「農地に準じた課税」という形で宅地並み を目ざした負担調整が始まり39),工業専用地域で も年 2 割の増税が開始された。  課税対象の選定に柔軟性が期待できる空閑地税 と異なり,「農地と宅地の間での課税の均衡」と いうバランス論では,工業専用地域を宅地並み課 税の対象から除くことは望めない。ここには貸家 を建築できず,用地売却先も限定されるため,農 家が納税に利用できる方策は乏しい。工業専用地 域を宅地並み課税の対象とすることにつき,国会 では説明が行われていないが,課税が行き過ぎだ と思わせる発言はいくつかある。1982 年も,宅 地並み課税について,税務局長が「土地供給が非 常に少ない,そのために家を持ちたくても持てな いという現実」の中で,宅地供給という政策目的 と,現に農業を経営している人たちに対して直ち に生活の資を奪う手法はとれないという「二つの 要請をうまく調和できるところで制度を」つくる 責任が課せられている,と説明している40)  小規模住宅用地特例とのバランスも,工業専用 地域の扱いも,宅地並み課税に関する重要な論点 でありながら,国会審議に議論を見出すことはで きなかった。 5.  ドイツの財産税判決と固定資産税の視点 5-1. ドイツの財産税  1983 年のプロイセン補完税に起源を有すとさ れるドイツの財産税は,所有する全ての財産の評 価額から負債を差し引いた金額に課税する。一般 的な住宅価格に相当する額は基礎控除の対象とさ れ,高齢者や失業者には控除を追加し,庶民に課 税しないように配慮している。税率は自然人 0.5%,それ以外は 0.7% で,累進税率はない。また, 土地・建物には,市町村税である不動産税も課さ れている。税率は,0.3% 前後の課税指数を基本に, 市町村が条例でその何倍か(賦課率)を決める。 いくつかの都市を調べたところ,課税指数の 4 倍 前後,つまり評価額の 1∼1.5% の例が多かった。  表-1に,日本の租税との比較を示した。わが 国でも,シャウプ勧告によって 1950 年に富裕税 が導入され,1953 年に廃止されているが,ドイ ツの財産税は旧富裕税,不動産税は固定資産税と 類似点が多い。一方,高い税率で物納を認めた 1946年の財産税は,かなり性格が異なる。 5-2. 財産税課税に関する提訴内容と判決  ドイツにおける不動産への課税は,前提となる 表-1 ドイツと日本における主な保有税の比較 ドイツ 日 本 税 財産税 不動産税 旧・富裕税 固定資産税 財産税 性格(通説) 財産税 物税 財産税 収益税的財産税 財産税 課税回数 毎年 毎年 毎年 毎年 1946年の 1 回限り 同居親族の 扱い 夫婦と 18 歳以下の子どもは合算 個人別 課税価格を合算 個人別 個人別だが債務超過者は調整 税率 自然人 0.5%,その他0.7%の単一税率 市町村が定める 0.5∼3% の累進税率 1.4%を基本とするの単一税率 25∼90% の累進税率 基礎控除 ある なし ある なし ある 課税対象 全ての財産 土地と建物 全ての財産 土地,家屋,償却資産 全ての財産 債務の扱い 控除する 控除しない 控除する 控除しない 控除する 不動産の 評価 土地と建物をまとめて収益還元法 左と同じ 不明 地),家屋は再建築費土地は公示地価(更 賃貸価格に倍数を乗じる 物納 認めない 認めない 認めない 認めない 認める

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評価に大きな問題を有している。課税の基礎は統 一価格(Einheitswert)で,不動産の評価につい て定めた評価法(Bewertungsgesetz)によると, 土地と建物が経済単位としてまとめられ,原則と して収益還元法で評価される。ところが,旧西ド イツで最新の評価は 1964 年現在のもので,1974 年以降に関して 1.4 倍の割増が行われただけであ る。旧東ドイツではさらに問題が大きく,まだ 1935年現在の評価が使用されている。  連邦憲法裁判所が 1995 年 6 月 22 日に判決41) を示した財産税事件の原告は,1983∼1986 年に 関し,不動産,有価証券,現金,および息子への 債権を含む財産について財産税を求められた夫妻 である。原告は,現在の価値と比較して数分の一 にしか評価されない不動産に対し,他の財産と同 じ税率を定めている財産税法は,恣意的に不平等 な扱いを行っており,憲法の平等則に反すると主 張し,財政裁判所に提訴した。問題が憲法判断に あると考えた財政裁判所が,税率を定めた財産税 法第 10 条第 1 項が,憲法である基本法第 3 条第 1項の平等則に調和するかどうかの判断を求め, 手続きが連邦憲法裁判所に移された。  判決の主文は,価格の展開に適合しない過去の 統一価格に拘束される不動産所有と,現在の価格 で把握される財産に同じ税率で課税している点 で,現行の財産税法は基本法第 3 条第 1 項の平等 則に調和しないと示した。そして,遅くとも 1996年 12 月 31 日までに新規定を定めるように 義務づけ,それまでは現行規定の適用を認めた。 審理は 8 名の裁判官で進められ,この結論は全員 の一致である。  さらに,問題を「全ての考えられる憲法的な観 点」から審査できるとして,財産税の合憲性に関 する判断が,判決に直接は影響しないと思われる 観点を含めて判決理由に詳しく示された。一方, 判決には同意するが判決理由の大半に反対する ベッケンフェルデ(Böckenförde)裁判官は,補 足意見として反論を詳しく展開している。  判決を受け,財産税は,判決が許容した 1996 年末で課税が停止された。統一価格の再評価は, その後も行われないままになっている。 5-3. 財産税の性格と憲法的な限界  連邦憲法裁判所が示した判決理由には,わが国 の固定資産税を考える上で注目すべきポイントが ある。ひとつは「財産税は財産による収益への税 であるべき」であり,その結果として「課税は財 産による収益可能性によって限界づけられる」と いう点である。  税金は,「すべての国民に対して,その収入, 財産とその需要力に応じて課税を行う,共同の負 担」である。この負担に関し,平等則は「各国民 が,その財政的な能力に応じ,国家に課せられた 一般的任務の財源のために,平等に課税されるこ とを求める。」これが租税公平主義である。  財産に対する課税に関して,判決は,「所得税 と財産税によって財産に課税する際の憲法的な限 界は,課税による介入を,財産による収益能力に 限定する」と示し,これが「合憲性を検討するに あたっての根本的な基礎」だと述べている。その 根拠は,次のように説明される。  財産税は,「原則としてすでに課税された収入 によって形成されたストックである財産への,再 度の課税」であり,憲法が保障する財産への処分 と利用の自由に介入する。この保護対象となる自 由権の制限は,「獲得した財への基本的な私的利 用性と,創造した財産法的地位の基本的な処分権 の表現として,経済的な領域における自らの行為 の成果の核となる存在が納税者において維持され る」限りでしか許されない。現行の税法において, 「財産が,すでに収入と所得に対し課税されたも のであり,具体的な財産の対象はすでに間接税の 負担を負っていることが多いことを考えると,こ の各種の事前負担を有する財産への補完的な課税 には,憲法により,自由度は僅かしか残っていな い。財産税は,その他の税金との共同効果として, 財産の実体である財産の根幹に触れることなく, 普通一般に期待される,可能な収入(あるべき収 入)によって支払い可能なように査定されること しか許容されない。そうでない場合は,財産への

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課税が,結果的に段階的な没収となり,納税義務 者に過度の負担を課し,その財産関係を根本的に 侵害することとなるだろう。」  これに続き,判決は,あるべき収益に対する税 金全体の負担が「民間と公共に半々に近い分割と なる」まで,つまり,所得税と財産税を合計した 税率が 50% 程度に制限されると述べている。こ の部分には各方面から多くの疑問が出されてお り,ベッケンフェルデ裁判官が強く批判した点で あるが,本論の内容には関係しない。  但し,判決は,国家的な例外事情などの特別な 条件があれば,財産実体への侵害が許容されると 認めた。具体例として,第一次大戦後の高額な賠 償金支払いのためと,第二次大戦後の戦争による 犠牲をバランスさせる税制をあげている。 5-4. 不動産評価手法と税率の任務  以上の原則を述べた後,判決は,現行の財産税 法をプロイセンの時代に遡って歴史的に検討して いる。その結果,基礎となる収益への補充的な税 として妥当な低い税率しか求めていず,財産の実 体を侵害していないとして,課税を是認した。  「あるべき収益」が課税の基礎となるので,評 価では「課税を目的として,期待される収益を想 定しなければならない」。そのためには,経済財が, 「その収益力によって評価されるべきである」。し かし同時に,当該経済財に「典型的に期待される 収益に対し,単に取り分に応じた額を対象とする に過ぎないことが確保される限りにおいて,その 取引価格(Verkehrswert)に関連させることも許 される」。その場合は,税率に,「売却価格から導 き出されるあるべき収益につき,これに対する課 税という介入にふさわしく,平等性に適切なよう に限定する,という任務が与えられる」。固定資 産税に関連して判決に注目すべきもうひとつのポ イントが,この,税額が収益の一部に過ぎないこ とを確保すれば,収益への課税であっても取引価 格を基礎にして良い,という点である。  財産税は,住宅など,納税者とその家族の個人 的生活に利用されている経済財にも負担を課す。 この点につき,判決は,「この財産は,特別な保 護を享受」し,「納税者においてその個人的な生 活形成のためとされている財産に対し,さらに課 税を行うことによって減少させることは許されな い」と示した。また,農業や営業のために使用さ れている財産については,憲法による職業の自由 を視野に入れ,税金の影響を考慮して不動産の新 規評価を行わねばならないと述べている。 5-5. 財産税判決の視点による政府答弁の検討  ドイツ連邦憲法裁判所の判決のうち,本論で紹 介した範囲は,租税公平主義と私有財産の保障と いう,先進国に共通する憲法原理が中心となって いる。したがって,その法理で日本の固定資産税 を考えることは,意義が大きい。  表-1のように,ドイツ財産税は,日本の固定 資産税と比較し,課税対象と債務の扱いで「財産 税」としての性格が強い。したがって,ドイツ財 産税で許されない種類の財産への課税が,日本の 固定資産税で認められるとは考えにくい。判決は, 国家的な例外事情がある場合は財産実体への侵害 が許容されると述べているが,これに該当するの が表-1右端の財産税だと思われる。この課税目 的は,戦時利得を徴収して国の復興財源に充てる ことにあった42)。高い税率による 1 回限りの課税 が例外事情を示しており,物納を認めていること が財産実体への課税を暗示している。  固定資産税の性格に関し,国会における主な政 府答弁の変遷を表-2にまとめた。はじめて負担 調整が登場した 1964 年と,住宅用地の課税標準 特例が提案された 1973 年は「収益税」的な性格 と説明され,それ以外では収益とは無関係だとさ れており,僅かな期間で答弁内容が逆転を繰り返 している。1964 年と 1973 年は,改正案が認めら れると固定資産税の負担が軽減される状況にあっ た。したがって,負担軽減時は収益性を,それ以 外の時は財産実体への課税の性格を打ち出すこと で,地方税法改正案の円滑な国会通過が図られて いるのではないかと推測される。  収益性を認めた答弁のうち,1973 年の答弁は,

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ドイツ連邦憲法裁判所の財産税判決と同じ考えに 立っている。一方,1964 年の答弁は,収益性は 認めているが,前段で「個別財産税という考え方 に立つ」としている。固定資産税と共通点が多い ドイツの不動産税は「物税」とされているが,こ れは「財産税」とは範疇が異なる。財産税とされ ていない一因は,債務を無視している点にあると 思われる。固定資産税も,当該不動産購入のため の融資で抵当権が設定された不動産に関し,負債 を無視して課税している。1990 年代のバブル崩 壊により,大都市では「マイホームを売却しても ローン残額を支払えない」という含み損問題が多 数発生した。この種の「負の資産」に「正の資産」 と同じ課税を行っている固定資産税は,「個別財 産税」ではなく,「このような不動産を所有して いる人には,この程度の収入があるだろう」とい う外形標準課税だと理解される。  不動産が原則として収益還元法で評価されるド イツの判決を,日本の固定資産税に援用するのは 行き過ぎだ,という意見もあるだろう。しかし, 財産税判決が注目しているのは税額であり,取引 事例価格を基礎に課税しても良いと示している。 つまり,課税の性格は,課税標準が家賃か,収益 還元価格か,あるいは取引事例比較価格かでは決 まらないわけである。なお,現在,わが国の土地 の固定資産税評価は,公示地価を基礎としている。 地価公示法第 4 条は,公示地価に取引事例比較法, 収益還元法と原価法による額を勘案するよう義務 づけており,固定資産税額が取引事例価格だけで 決まっているわけではない。 6. お わ り に  日本の固定資産税への政府答弁と,ドイツの財 産税判決を,比較検討してきた。重要なのは,ド イツ財産税判決の法理で日本の固定資産税を見た 時に,課税の性格がどう理解され,何が是認され, 何について再検討が必要かである。  まず,シャウプ勧告で課税標準が家賃から資産 表-2 固定資産税の性格に関する政府答弁の変遷 年 主な改正点 政府答弁の要約 答弁の場(日付) 1950* 固定資産税の創設 a.b.財産課税の重課,すなわち固定資産税の創設である。直接の財産課税と,収益的な性格のものにわかち得るのでは ないかと思うが,さらに研究を進めたい。 衆議院地方行政委員会 (a. 1950 年 3 月 30 日) (b. 1950 年 7 月 22 日) 1964* 新評価実施に伴う負担調整の開始 個別財産税という考え方に立つが,どこから税金が払われるというと,収益を予想した財産所有という実態に課税する。 衆議院地方行政委員会(1964 年 3 月 17 日) 1970 評価替えに伴い負担調整による増税を強 化 財産マイナス負債という一般財産税的なものではないが,資産 が現に何に利用され,どれだけ収益を上げているかという観点 からは課税していない。 衆議院地方行政委員会 (1970 年 3 月 24 日) 1971* 市街化区域農地への宅地なみ課税 財産を所有している事実に着目してその資産価値に課税標準を求めて課税をするもので,もうけから払うものではない。 衆議院地方行政委員会(1971 年 3 月 5 日) 1973* 住宅用地への課税標準二分の一特例 通常現在の経済社会において有効に利用されている場合に生むであろう収益のうちから一部税負担をしてもらう趣旨の収益税 的な性格を持つ。 衆議院地方行政委員会 (1973 年 3 月 6 日) 1979 評価替えに伴い負担調整を継続 資産価値に着目する課税で,その他の収入がどうであろうかどうかということとは違う一種の財産税である。 衆議院地方行政委員会(1979 年 3 月 20 日) 1982 宅 地 な み 課 税 を C農地の一部に拡大 物税で,価値に着目して広く薄く税負担をするもので,その固定資産がどの程度の収益を現実に生むかということと一応切り 離して課税する。 参議院地方行政委員会 (1982 年 3 月 30 日) 1993* 固定資産税評価に公示地価を導入する準 備 収益的な課税と財産課税という両方の考え方が固定資産の評価 にある。家賃であると収益課税という要素が強くなるが,シャ ウプ博士が,資産価格にしなさいと念を押された。 参議院地方行政委員会 (1993 年 3 月 29 日) 注)  年の右肩に付した * は,本文において当該答弁を引用して説明していることを示す。但し,1993 年の答 弁については,注 9)において説明を行っている。

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価格に変化したが,「あるべき収益から支払う」 という課税の性格は変わっていないと考えられ る。また,住宅用地の課税標準特例は,判決の「納 税者の個人的な生活形成に利用されている財への 特別な扱い」として是認される。一方,農業収益 で支払えないので農地転用を確実に促進すると導 入された市街化区域農地への宅地並み課税は,違 憲と考えられる。財産税判決の法理によれば,問 題は不動産評価のバランスではなく,税額にある。 収益では支払い困難な課税を行うことは,財政能 力に応じた「平等」な課税を求める租税公平主義 に反し,結果的に財産の段階的没収となって「財 産権」を侵す,と考えられる。さらに,離農を強 制して「職業選択の自由」を侵害する恐れもある。 なお,「財産に金銭納付の義務を課すことは,基 本法の所有権の保障には原則として抵触しない」 と,連邦憲法裁判所の判決理由を批判したベッケ ンフェルデ裁判官も,「納税義務が納税者に過度 の負担をかけ,その所有関係を根本的に侵害する 場合」は違憲になると認めている。  実は,ドイツは,宅地供給を促進するため,住 宅が不足している地域に関し,建築が可能な空地 への税額を 5 倍程度にする不動産税 C を 1960 年 に導入した。しかし,導入当初から合憲性が問題 となって違憲訴訟が提起され,連邦憲法裁判所の 結論を待たずに課税が廃止された43)。日本の宅地 並み課税と比較し,不動産税 C は,都市施設の 整備が前提で,住宅建築が許容されない地区は対 象から外し,農林業経営のために不可欠な用地は 猶予する等,はるかに穏当なものであった。  わが国の固定資産税では,これまで主として評 価面が紛争となり,多くの裁判も提起されている。 今後は,ドイツ財産税判決を参考に,より広い視 野から検討していくことが必要である。 (2011 年 5 月 10 日受理) 注 1) 日本土地法学会『都市計画法・固定資産税制の再検討』 有斐閣,1975 年。 2) 谷口勢津夫「財産評価の不平等に関するドイツ連邦 憲法裁判所の 2 つの違憲決定」『税法学』535 号, pp. 153-174,1996 年,および中島茂樹・三木義一「所 有権の保障と課税権の限界−ドイツ連邦憲法裁判所 の財産税・相続税違憲決定」『法律時報』第 68 巻 9 号, pp. 47-55,1996 年。 3) 第 90 回帝国議会衆議院所得税法の一部を改正する等 の法律案外二件委員会議録,第 1 回,p. 3(1946 年 8月 2 日)。 4) 第 92 回帝国議会衆議院所得税法を改正する法律案外 六件委員会議録,第 1 回,p.4(1947 年 3 月 19 日)。 5) 第 2 回国会衆議院治安及び地方制度委員会議録第 41 号,p. 22(1948 年 6 月 22 日),および第 5 回国会衆 議院地方行政委員会議録第 18 号,p. 12(1949 年 5 月 7 日)。家主の立場で見ると,税率が 100% を超え ると家賃より税金が高くなり,貸家経営が赤字にな るように思える。しかし,実際には,台帳の賃貸価 格を 1936 年 4 月 1 日現在に固定したまま,増税に相 当する統制額の修正が行われている。シャウプ勧告 は,「法定地代家賃の平均は,1939 年当時の 15 倍に 過ぎない」と記している。 6) 第 2 回国会衆議院治安及び地方制度委員会議録第 43 号,p. 8 および p. 10(1948 年 6 月 24 日)。 7) 第 2 回国会参議院治安及び地方制度委員会議録第 27 号,p. 2,p. 7,pp. 9-10,および p. 11(1948 年 6 月 25日)。 8) 勧告の文言は,福田幸広監修『シャウプの税制勧告』 (霞出版社,1985 年)による。 9) 1993 年 3 月 29 日の参議院地方行政委員会でも,収 益と財産の両面を認めた参考人の意見を受け,自治 省税務局長が,家賃なら収益課税の要素が強くなっ てくるが,「シャウプ博士は,これは家賃ではありま せん,要するに資産価格ということにしなさいよと いうことを念を押して強調」されていて,当初から 財産税的な性格が強いと答弁している(第 126 国会 参議院地方行政委員会会議録第 4 号,p. 10)。 10) 勧告は,まずインフレーションに対応して台帳の賃 貸価格を 200 倍し,資本価格基準に置きかえるため さらに 5 倍にした上で,税率 1.75% を求めている。 賃貸価格に対する税率は 1,750% になる。実際には, 固定資産税は台帳価格を 900 倍して税率 1.6% と, 賃貸価格の 1,440% で出発した。一方,地代家賃統 制令は,1950 年 7 月から新築住宅と非住宅を,さら に 1956 年 7 月からは 100 m2以上の住宅を統制対象 からはずした。課税標準を賃貸価格にしていた場合, この種の統制対象の一部縮小は非常な困難を伴った と思われる。 11) 第 7 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 25 号, p. 10(1950 年 4 月 18 日)。なお,1950 年 4 月 11 日

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の衆議院地方行政委員会公聴会で,公述人が,予想 税額は農業収益の 1 割弱にあたると述べている(第 7回国会衆議院地方行政委員会公聴会議録第 2 号, p. 23)。 12) 第 7 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 10 号, p. 96(1950 年 3 月 25 日)。 13) 第 7 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 17 号,p. 5 (1950 年 4 月 5 日)。 14) 第 8 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 10 号,p. 7 (1950 年 7 月 22 日)。 15) 財産税であれば,高所得者が負担するという印象が 強まり,所得税の最高税率を 85% から 55% に低下 させたこととバランスがとれると思われる。1950 年 7月 19 日の衆議院地方行政委員会の参考人質疑から, 固定資産税は大衆に転嫁される税金だと反対してい た野党に対し,政府が,財産への重課なので価格料 金の値上げはないと説明していたことがわかる(第 8回国会衆議院地方行政委員会会議録第 7 号,p. 5)。 16) 第 10 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 21 号, p. 8(1951 年 3 月 8 日)。 17) たとえば 1958 年の評価替えでは,自治省は家屋の評 価を 5% 引下げて土地を 5% 引上げるように都道府 県に通達している(朝日新聞,1957 年 11 月 29 日)。 18) 税制調査会『昭和 39 年度の税制改正に関する臨時答 申』1963 年 12 月 18 日。 19) 第 46 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 22 号, p. 2(1964 年 3 月 16 日)。 20) 第 46 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 23 号, p. 21(1964 年 3 月 17 日)。 21) 税制調査会『今後におけるわが国の社会,経済の進 展に即応する基本的な租税制度のあり方』1964 年 12 月 12 日。 22) 第 71 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 13 号, p. 18(1973 年 4 月 6 日)。 23) 第 71 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 8 号, pp. 5-6(1973 年 3 月 6 日)。 24) 注 22)と同箇所。 25) 第 72 回国会参議院地方行政委員会会議録第 7 号, pp. 1-2(1974 年 3 月 28 日)。 26) 代表的な文献が,北野弘久「土地税制の課題と限界」 (『法社会学』No. 26,pp. 96-101,1973 年)である。 27) 税制調査会『土地税制のあり方についての答申』 1968年 7 月 26 日。 28) 東京問題専門委員会第五次助言『土地政策について』 1970年 2 月 6 日。 29) 地価対策閣僚協議会『地価対策について』1970 年 8 月 14 日決定,同 8 月 18 日閣議了承。 30) 第 65 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 8 号, pp. 11-12(1971 年 2 月 26 日)。 31) 第 65 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 11 号, pp. 14-15(1971 年 3 月 5 日)。 32) 第 65 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 10 号, pp. 30-31(1971 年 3 月 4 日)。 33) 第 65 回国会参議院地方行政委員会会議録第 13 号, p. 11(1971 年 3 月 23 日)。 34) 第 65 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 10 号, p. 12(1971 年 3 月 4 日)。 35) 第 71 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 19 号, p. 16(1973 年 4 月 20 日)。 36) この件に関する質疑はなく,自治省税務局長が,税 の公平に関連し,住宅用地の課税標準特例が鉄道軌 道用地や農地の課税標準と「大体見合う数字になる」 と発言しているだけである(第 71 回国会衆議院地方 行政委員会会議録第 17 号,p. 6)。 37) 静岡市『税務統計書』,平成 21 年度版。 38) 第 71 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 16 号, p. 22(1973 年 4 月 17 日)。 39) 阿部成治「線引きによる都市周辺部の発展と農地課 税のあり方」(学芸出版社『人口減少時代における土 地利用計画』,pp. 70-75,2010 年)。 40) 第 96 回国会衆議院地方行政委員会会議録第 7 号, p. 24(1982 年 3 月 23 日)。

41) BVerfG. Besch. vom 22. Juni 1995, BVerfGE93, S.121ff. 42) 官報号外,1946 年 10 月 1 日,pp. 809-810(第 90 回

帝国議会衆議院議事速記録第 49 号,1946 年 9 月 30 日)。

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Der Charakter der stationäre Besitzsteuer und die Diskussionen

in Parlament : Vergleich mit dem Vermögensteuerurteil

vom Bundesverfassungsgericht

ABE Joji

  Der gesetzlicher Charakter der stationäre Besitzsteuer, eine der wichtigste Steuern für japanische Ge-meinde, ist stark umstritten. Nach der geltender Ansicht, hat die stationäre Besitzsteuer beide Charaktere von Vermögensteuer und Ertragsteuer.

  Das Bundesverfassungsgericht entschied in 1995, die verfassungsrechtlichen Schranken der Besteue-rung des Vermögens begrenzen den steuerlichen Zugriff auf die Ertragsfähigkeit des Vermögens. Aber, in japanische Parlament, die Regierung antwortet immer wieder, dass der Zugriff auf die Vermögenssubstanz durch die stationäre Besitzsteuer wird erlaubt, vor allem bei der Einführung der Besteuerung städtisches Ackerland als Bauland. Nach Vermögensteuerurteil vom Bundesverfassungsgericht wird diese Besteuerung als verfassungswidrig eingestuft. Andererseits vertragen sich die steuerliche Vergünstigungen für die Wohnbaugelände mit der Verfassung.

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参照

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