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はじめに 現在 岐阜県内には 約 300 名の日常的 応急的に医療的ケアを必要とする児童生徒が学校生活を送っています 医療的ケアの第 1の目標は 障がいのある児童生徒たちによりよい教育を行うことにあります 県では 岐阜県立特別支援学校における医療的ケア実施要項 に則り 医療的ケア専門協議会をとおして

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(1)

岐阜県教育委員会

医療的ケアにおける

事故を未然に防ぐための

ハンドブック

(2)

【 は じ め に 】

現在、岐阜県内には、約300名の日常的・応急的に医療的ケアを必要とす

る児童生徒が学校生活を送っています。

医療的ケアの第1の目標は、障がいのある児童生徒たちによりよい教育を行

うことにあります。県では「岐阜県立特別支援学校における医療的ケア実施要

項」に則り、医療的ケア専門協議会をとおして、各特別支援学校と連絡・連携

を図りながら、学校における医療的ケアを適切に進めております。

学校における医療的ケアの実施は、「主治医や指導医の指示書」に基づくも

のの、病院での行為とは違い、十分な医療設備も整っていない状況、つまり必

要最低限の医療機器や医療環境の中で、医療的ケアを行っていただいており、

戸惑いや不安を感じながらの実施ではないかと推察しています。

このたび、各学校から提出していただいたヒヤリハットを集積し、分析し、

具体的な場面を想定しながら脚色したものを『医療的ケアにおける事故を未然

に防ぐためのハンドブック』として編集しました。これを活用していただくこ

とで、同じような出来事を未然に防いだり、対処法を参考にしたりすることが

でき、より安全で確実な医療的ケアの実施が県内で行えるようになるものと期

待しております。

また、各学校でのヒヤリハットの報告の在り方を今一度、見直していただき、

重大事故を防止するだけでなく、よりよい医療的配慮の実践につながるものに

なることを願っております。

結びになりますが、このハンドブックを作成するにあたり、平成25年度医

療的ケア専門協議会の先生方に大変ご尽力をいただき、また、福富医院の福富

悌院長に丁寧なご指導ご助言いただきましたことを、深く感謝申し上げます。

(3)

はじめに

1 吸引関係の事例

2 経管栄養関係の事例

3 人工呼吸器関係の事例

4 酸素ボンベ関係の事例

5 その他の事例

ヒヤリハットの捉え方

おわりに

様式例:ヒヤリハット・インシデント報告書(個表)

(集約表)

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・・・・・・・・・・ 4

・・・・・・・・・・ 13

・・・・・・・・・・ 14

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・・・・・・・・・・ 29

~ 目 次 ~

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始業式後の休み時間、自力で移動できる児童が近づいていることに気がつかず、気管 カニューレを挿入している児童を車いすから降ろし寝かせたところ、自力移動中の児童 の手が気管カニューレに引っかかり、抜管した。 保護者が来校し、気管カニューレの再挿入を行った。 その間、バイタルチェック、特に呼吸、SpO2 に変化 がないか観察をした。切開部を消毒ガーゼで保護し、清潔 保持に努めた。 児童を抱えた状態では、足下の状況把握がしづらかったことがあげられる。自力で移 動できる児童との距離が十分に取れていなかった。 ・スカーフを巻き、気管カニューレ部を見えないように覆う。 ・自力で移動できる児童との距離を十分に取るようにする。特に、教員の人数が少なく なるときには、自力で移動できる児童と寝たきりの児童の位置関係に配慮をする。 ○何らかの原因で気管カニューレが抜けてしまい、緊急と考えられる場合には、慌て ずに新しい気管カニューレを挿入しましょう。 ○挿入した後は、医師に確認してもらいましょう。 発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点

1 吸引関係の事例 ~気管カニューレの抜去~

気管カニューレ 一般的な 気管カニューレ

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給食後、普段使用するトイレとは違うトイレへ行ったところ、洗濯機が動いており、 児童が見とれてしまった。トイレに向かうように促すと、座り込んだりひっくり返った りして抵抗した。その際、着ている服を引っ張ることになり、服が気管カニューレに強 く引っかかって外れた。 看護講師による状況の確認と同時に、母親に連絡した。 母親が気管カニューレの再挿入を試みたが挿入できず、 学校近くの救急指定病院へ母親が連れて行った。 救急指定病院でも挿入ができず、主治医のいる病院を すすめられたが、主治医のいる病院が休みだったため、 救急指定病院から別の病院を紹介してもらった。 紹介された病院では、通常使用するサイズの気管カニューレが入らなかったため、通 常より小さいサイズの気管カニューレで対応した。 ・気管カニューレ抜去に対する危機感が少なかった。 ・児童の行動を正確に見極め、対応できなかった。 ・気管カニューレについての理解を深める。 ・児童の気持ちにしっかり寄り添い、納得して活動ができるような支援をする。 ・抜去が起きる場面を想定し、未然防止に努めるとともに、抜去の際の対応を保護者・ 主治医に確認しておく。 ○気管カニューレが抜けた時の対応を事前に保護者や主治医に確認をしておく必要 があります。 ○気管カニューレについて、職員間で共通理解をしておきましょう。 ○スピーチバルブタイプの気管カニューレは、アンビューバックが装着できない場合 があるので、注意しましょう。

1 吸引関係の事例 ~気管カニューレの抜去~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 スピーチバルブタイプの 気管カニューレ

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自己排痰した痰を吸引する際、児童が嫌がり開口しなか ったため、口腔内を観察できない状態で吸引チューブを動 かして吸引した。その結果、チューブの先端が咽頭付近を 刺激して、嘔吐反射を誘発させた。 吸引チューブを抜き、誤嚥をしない体勢をとり、嘔吐反 射が収まるまで経過観察した。 ・児童は身体の緊張が強く喘鳴が続きがちで、自己排痰するとすぐに嚥下し、一部誤嚥 してしまう。すると、喘鳴が増強し、全身の緊張も強くなるというように悪循環につ ながりやすい。 ・「何とか吸引したい」と焦ってしまった。 ・安全を第一に考える。 ・自己排痰後、体位変換をするなどして誤嚥防止を工夫する。 ・素早く側臥位・半腹臥位にし、児童が開口するのを待って吸引する。 ・体調が悪い時は、体位を変えながら自己排痰するまで待つ。 ・強引な吸引は痰が多くなって悪循環なので、表情や顔色をみながら行う。 ・SpO2 低下など吸引が早急に必要な場合、児童に言葉かけをしながら吸引を行い、 改善しない場合は、処置について保護者に確認する。

1 吸引関係の事例 ~咽頭刺激による嘔吐反射~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 手動式吸引器 ○吸引時間が長くなりすぎないように、適度に休憩を入れましょう。 ○吸引をする時は、言葉かけをしながら顔色や表情をよく観察しましょう。 ○チューブの先端が咽頭付近を刺激しないよう、注意して吸引しましょう。

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(7)

注入を始めようとしたら、いつもより3.5cm、チューブが鼻腔から外に出ていた。 来校時に位置を確認していなかった。 *いつもは印が鼻腔のところにあることを確認して注入を始めるが、今日は鼻腔から 3.5cm 出た所に印があった。 保護者に電話で説明すると、「看護講師にいつ もの所までチューブを入れてもらいたい」と依頼 された。抜けていたのが3.5cm と短く、チュー ブの先端が胃内にあると考えられたため、看護講 師が十分注意して、チューブを挿入した。 この日は病院でチューブ交換をしてから登校してきた。保護者の話では、「病院で、 挿入したチューブを固定する時に抵抗していたので、いつもよりチューブが外に出たと ころで固定されたのではないか」とのことだった。 ・毎朝、登校時にチューブの位置を確認し、異変があれば保護者に対応してもらう。 ・病院でチューブ交換後も保護者に確認してもらうようにする。

2 経管栄養関係の事例 ~経鼻胃管チューブのずれ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○経鼻胃管チューブが胃に入っていない状態で注入することは危険です。鼻に固定し ている位置を確認、胃内容物を引いて確認、空気を入れて確認等、できれば2人で 一緒に確認しましょう。 経鼻胃管チューブの 長さの目安

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(8)

着替えの際、経鼻胃管チューブが服にひっかかり、10㎝ほど抜けた。いつも着替え る時は注意しており、着替え後も頬についているテープがとれていないことを確認した が、その時はチューブの印がずれていることに気がつかず、注入時に気がついた。 抜けた長さが10㎝と長く、チューブが胃から抜けている 可能性が高いと考えられたため、すぐに保護者に連絡をし、 来校してもらい、チューブを定位置まで挿入してもらった。 その後の注入は十分注意して行った。 チューブは頬に固定用テープでとめていたが、テープは 頬についたまま、チューブだけがテープからはずれて動いてしまった。着替えの際、チ ューブの引っかかりに注意し、テープがはずれていないか確認したが、チューブだけが 動くことを想定していなかったため、チューブの印を確認することが不十分であった。 ・着替えや姿勢変換の時には、常にチューブ全体の位置を確認しながら行う。また、着 替えや姿勢変換後には、チューブにつけてある印が定位置にあるかを確認する。 ・保護者と相談し、チューブの固定は、常に服の同じ位置に安全ピンでとめるようにし て、チューブが固定されているか確認しやすくする。 ○着替えの手順を工夫しましょう。 ○チューブには印をつけて、ずれが分かるようにしましょう。

2 経管栄養関係の事例 ~経鼻胃管チューブのずれ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 経鼻胃管チューブ

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注射器と栄養接続チューブ 昼の注入開始時に胃の内容量を確認した後、胃の内容物を充分に戻しきらずに、さら にすぐに栄養剤を注入せずに、栄養剤の準備をしていたため、チューブ内で内容物が詰 まってしまった。 何度か注射器を動かし、ゆっくりと圧をかけると、 詰まりが解消した。 未消化物がチューブ内に残ると、細いチューブの 先端が詰まりやすい。 ・短い時間であっても、注射器内やチューブ内に、未消化物や薬剤などを留置させない ようにする。 ・胃の内容量を調べるのは、栄養剤の準備をしてから行うようにする。

2 経管栄養関係の事例 ~経鼻胃管チューブ内での詰まり~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○胃の内容量を調べるのは、栄養剤の準備をしてから行うようにしましょう。 ○未消化物がチューブ内にこびりつくと、チューブが詰まります。白湯を通すとよい でしょう。白湯の量は、個別に決めておきましょう。 ○チューブで吸引できたものでも、未消化物等があると、栄養剤を挿入する時に、詰 まることがあるということを認識しましょう。

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昼の注入開始時に胃ろうチューブの側管のふたが開いており、少量がもれて介助者の 衣服が濡れて、ふたが開いていることに気がついた。 少量がもれた時点で気がついたため、側管のふたを 閉じて注入できた。 確認不足で側管のふたが閉じていなかったため、注入物がもれた。 ・チューブのクレンメや接続チューブの側管のふたが閉まっているかなど、栄養剤の準 備時や注入時に確認する。 ・体動が激しい児童生徒の場合には、注入中にも再確認する。

2 経管栄養関係の事例 ~胃ろうチューブのもれ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 接続チューブ側管のふた ○チューブには、側管があるもの・ないもの等、いろいろな種類があるので、そのチ ューブの特徴を確認して使用しましょう。

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注入開始から10分後に胃ろうボタンとチューブの接続部を確認したところ、問題な く注入できていた。注入開始から30分後、内服薬の注入が終わり、胃ろうボタンから チューブを外そうとした際、胃ろう部のガーゼがべたべたに濡れていることに気がつい た。よく見ると、おむつ内、車椅子まで濡れていた。 注入すべき量が注入できなかったことによる水分不足が心配されたので、保護者に状 況を伝えたところ、白湯50ml を追加して注入してほしいと依頼があり、そのように注 入した。 ・胃ろうボタンとチューブはロックできず、少しの力で接 続部分が外れたり、はまったりする状態であった。その ことを把握しておらず、注入中の確認が不十分だった。 ・生徒は注入中に手を動かしたり、緊張が強くて体が動い たりすることがよくあるので、接続部分に負荷がかから ないようにチューブを固定するなどの対応が必要だった。 ・注入中は胃ろうボタンとチューブの接続部分が外れやすいことを考慮して、確認回数 を増やす。 ・胃ろうボタンとチューブの接続部分に負荷がかかりにくいようにチューブを固定して 注入する。 ・注入中は、生徒の手がチューブに触れないようにする。

2 経管栄養関係の事例 ~胃ろうチューブ接続部の外れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 胃ろうボタン ○チューブの接続部分は、ロック式とロック式でないものがあります。ロック式でな いものは、接続部分が外れやすいことを認識しておきましょう

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延長チューブ 給食時、胃ろうからの注入中、延長チューブとの接 続部分が外れ、栄養剤がもれた。 保護者にすぐに連絡し、保護者の指示にて胃の 内容量を確認し、残りの経管栄養剤50mlを注入 し、午後の水分注入時に75mlを注入した。 生徒の体調の変化がみられないことを確認した。 ・胃ろう注入のため延長チューブを使用しているが、外れにくいタイプであり、これま でに外れたことがなかったことから、注意していなかった。 ・注入前の吸引で胃の内容量を確認し、接続部分が多少濡れていたことが、抜けやすい 状態を引き起こした可能性があった。 ・教員は、外れにくいチューブであると思い込んでいたので、接続部分の確認が不十分 だった。 ・前吸引で胃の内容物が引けた場合は、接続部分を拭いてから接続する。 ・外れやすい場合は、接続部分をガムテープで固定して外れにくくする。 ・見守りの教員はチューブが抜ける可能性があることを再認識して、接続部分を注意深 くチェックする。

2 経管栄養関係の事例 ~延長チューブの接続~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○チューブはつながっているように見えても、緩んだり、もれたりすることもあると いうことを認識しましょう。 ○接続部分にアダプタを装着することで外れにくくすることができるチューブもあ ります。

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給食時、保護者の指示は、「前吸引60ml の場合、全てを戻し、電解質補充液70ml を注入」であったが、実際は、前吸引30ml を胃に戻し、30ml 破棄し、電解質補充 液を100ml 注入してしまった。 胃の内容量は通常通りなので、そのまま様子を観察した。保護者に口頭と健康カード の紙面で説明した。 ・保護者の指示表(保護者と看護講師の連絡ノート)を1人で確認し、実行した。 ・前吸引の量や性状などがいつもと違うかどうかは、2人の看護講師で判断し、いつも と違う場合には保護者に確認してから実施する。 ・健康状態に異常がない場合でも指示書を確認する。

2 経管栄養関係の事例 ~注入量の誤り~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○指示書や保護者の指示表はきちんと確認しましょう。 ○前吸引では、胃の内容物を確認しましょう。赤色は出血、濃い緑色は腸閉塞の可能 性があります。ミルクなど栄養剤がそのまま多量に引ける時は、消化されず、前回 分が貯まったままになっています。

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午前10時の水分注入について、保護者から注入することを引き継いだ看護講師から の伝達が担当看護講師にしっかりと伝わっておらず、水分注入を忘れた。 注入していないことに看護講師が気がつき、保護者に連絡した。 ・保護者から注入することを引き継いだ看護講師が、担当看護講師に口頭で注入するよ う伝達したが、正しく伝わらなかった。 ・担当看護講師は、注入が終わっているものと思い込んでいたため、健康カードの記入 に気がつかなかった。 ・看護講師同士が情報を伝達する際、実際の物を提示したり、健康カードを見せたりし て勘違いしないように正確に伝える。 ・健康カードにある保護者からの医療的ケア依頼の欄について、担当看護講師はきちん と確認し、実施したものにはチェックをし、見落としがないようにする。 ・学級担任は、常に担当児童生徒の医療的ケアについて注意を払い、実施されたか否か を忘れずに確認する。

2 経管栄養関係の事例 ~水分注入忘れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○口頭での指示は十分に伝わらないことがあるので、伝達したかどうかを確認する方 法を決めておきましょう。

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昼の栄養準備時、イルリガ―トルに経腸栄養剤を入れチューブ内を満たし、金属容器 にお湯(90℃)を入れて湯せんした。点滴棒に容器から取り出したイルリガ―トルを セットして栄養カテーテルに接続し、クレンメを開放するが落下しなかった。 経鼻胃管チューブの胃内への留置は確認できており、薬 も注入できていたため、経鼻胃管チューブ内の詰まりとは 考えにくかったので、イルリガ―トルを点検した。チュー ブの折れはなく、クレンメをずらしてみたところ、クレン メの部位5~8㎜の部分のチューブが圧縮された状態で閉 塞していた。イルリガ―トルを交換するとスムーズに流れ るようになった。 ・保護者に確認すると、自宅で行う湯せんの温度は60℃であるため、この様な状況は 一度も起きたことはないとのことだったが、引継ぎの時点では確認できていなかった。 ・湯せん時、チューブを浸す場合、外からは見えない部分で閉塞の原因を作っていた。 ・イルリガ―トルの材質は熱湯には不適であることの確認を怠った。 ・ ・保護者から手順等を引き継ぐ時は、詳しく聞く必要がある。 ・経腸栄養剤の容器を適温に温めてからイルリガ―トルに入れるよう改善する。

2 経管栄養関係の事例 ~イルリガートルの閉塞~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 イルリガ―トルの クレンメ ○栄養剤の温度は、一般的には人肌程度がよいでしょう。冷たいと下痢や腹痛の原因 になることがあり、熱すぎるとやけどしたり、栄養酵素が壊れたりします。 ○チューブなどの材質は熱に弱く、変化する可能性があることを認識しましょう。

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人工呼吸器回路 3 自発呼吸がわずかにあり、主治医の説明では、20秒から30秒なら呼吸器離脱可能 な児童において、姿勢変換のため、普段通りコネクター部分で回路を外して再接続した。 普段は接続すればアラームは鳴り止むが、今回は鳴り止まなかった。顔面蒼白となり、 胸郭の動きが弱くなる。 (SpO2 値93%から76%に低下、脈拍110/分から146/分に上昇) 呼吸器回路の接続を確認する。気管カニューレ内の痰の垂 れ込みを考えて吸引するが、吸引物はない。看護講師、養護 教諭を応援要請する。担任が呼気バクテリアフィルタと本体 の接続外れを発見し、直ちに接続すると、普段の状態に戻る。 ・患者側の回路ではないため、盲点となりやすい箇所だった。 (抜けやすいという意識がなかった) ・母親の話によると、よく外れる箇所だということが分かった。 ・今回は、担任が回路外れ部を発見したが、日頃から教室にいる職員が呼吸器について 知っていると早く異常に気がつくので、教室内の職員に呼吸器について説明する。 ・母親から呼吸器トラブル箇所や事例を聞いておく。 ・登校時、接続する時に抜けやすい箇所を母親に確認してもらう。 ・手動換気のタイミングに迷ったが、児童の状態を観察し、胸郭の動きが弱い時やない 時は、速やかに手動換気を行うこととする。

3 人工呼吸器関係の事例 ~呼吸器回路外れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○普段の児童や人工呼吸器の状態を教室内の多くの職員に把握してもらうことで、 早く異常に気がつくことができます。 ○点検の箇所や手順をあらかじめ決めておきましょう ○原因が分からない場合は、児童の命を優先し、速やかに手動換気をしましょう。

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胃ろうによる注入中、気道の分泌物が多くなり、咳き込みや喘鳴があり、血中酸素飽 和度SpO2 値が88%に下がった。指示書に従って酸素投与3L/分を開始した。酸 素投与するとSpO2 値が94~97%になったが、酸素マスクを外すとSpO2 値が 90%を切るというように、安定しない状態が続いた。酸素投与を始めて50分間過ぎ たところで酸素ボンベの残量がなくなり、保護者の到着を待てる状態ではなくなり、救 急車を要請した。 経過に伴い、保護者に連絡し、次のことを確認した。 ・SpO2 値が低下し、酸素投与を開始すること。 ・SpO2 値が安定しないこと、迎えの確認。 ・酸素ボンベの残量がわずかで、保護者の到着を待たず救急車を要請すること。 生徒が動揺しないよう担任と看護講師がかかわり、救急車到着後は、酸素投与を継続 しつつ、担任と養護教諭の付き添いで病院に向った。病院では各種検査をしたが検査結 果に異常はなく、呼吸やSpO2 値が安定したところで保護者と帰宅した。 ・在宅酸素を導入したばかりで、学校での使用経験が少なく、家庭での使用状況も十分 に把握していなかった。 ・長時間使用することを想定していなかった。SpO2値が低下したときの対応につい て、酸素投与しても回復しない場合の予見が不足していた。 ・酸素ボンベの使用可能時間、当日の酸素ボンベの残量の確認が不十分であった。 ・ ・登校時に酸素ボンベの残量、使用可能時間の確認をする。 ・登校時に保護者に確認する事項を表にまとめ、確認もれのないようにする。 ・自宅での酸素使用状況、酸素ボンベの管理状況について確認する。 ・SpO2 値が低下して回復しないときの対応について、主治医へ再度確認する。

4 酸素ボンベ関係の事例 ~酸素ボンベの残量切れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○登校時に酸素ボンベの残量、使用可能時間の確認をしましょう。 ○事前に対応を決めておきましょう。

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保護者との引き継ぎでは、酸素の残量はまだあるはずだったが、残量計の目盛が「0」 になっていた。バルブの開閉を何回か行ったが「0」から動かなかった。 同調器は作動しており、酸素は流れていたため使用することはできたので、そのまま、 酸素療法を行い、しばらくその状態で様子をみた。 約30分後、バルブの開閉をしてみると目盛が動き、正常に作動した。 看護講師2人で確認し、対応した。 残量計の一時的なトラブルが考えられる。 ・登校時に保護者より酸素ボンベの引き渡しを受けた後、酸素ボンベの作動チェックや 安全確認を行う。 酸素ボンベ残量計 再発防止に向けた対策・改善点

4 酸素ボンベ関係の事例 ~残量計の不具合~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 残量計 バルブ元栓 ○機械はうまく作動しないこともあるということを認識しておきましょう。 ○酸素ボンベの安全確認では、チェックを忘れずに行いましょう。 ・バルブ(元栓)は開栓されているか。 ・残量計の目盛は正しく作動しているか。 ・延長チューブはしっかり接続されているか。チューブや鼻腔カニューレのねじれは ないか。 ・酸素ボンベの残量は十分あるか。 ・同調器の流量ダイヤルが正しく設定されているか。 ・電池の残量はあるか。

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酸素ボンベを使う状況になったため、取付けハンドル(写真①)を強く閉めて、元栓 (写真②)を緩めると、酸素がもれた。 再度、取付けハンドルをカチッと音がするまで強く 閉め、酸素を開始すると問題なく流れた。 ・毎日の送迎時に車に積み込み運搬しているため、振動で酸素ボンベが揺れて取付けハ ンドル(写真①)が緩んだためと思われる。 ・酸素ボンベ使用前に取り付けハンドル(写真①)を強く閉めたつもりだったが、 それでも閉め方が足りなかった。 ・家庭でも同様に、固くてなかなか閉まらなかったので、はじめから緩んでいるという 前提で強く閉める必要がある。

4 酸素ボンベ関係の事例 ~酸素もれ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 酸素ボンベ 1 ○バルブ等は緩むことがあるので、使用前に確認しましょう。

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活動中に顔色が悪くなったため活動を中止する。SpO2値が不安定なため、保健室 へ行く。 酸素流量を確認すると、活動前は流量ダイヤルの目盛が0.75L/分であったが、 0.25L/分になっていることに気がつき、指示量の0.75L/分に戻す。 酸素ボンベはケースに入れて使用しており、流量 ダイヤル側からO2ラインを出していた。 保健室に来た時には、ダイヤル側のチャックが開 いており、ダイヤルそのものが外の何かと接触した のか、目盛が0.75L/分から0.25L/分に動い ていた。 ・O2ラインを出す場所をダイヤル側とは反対側に変 え、ケースが開いてしまっても、外部とダイヤル が直接接触しないようにした。

4 酸素ボンベ関係の事例 ~酸素流量ダイヤルのずれ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 酸素ボンベ ○酸素流量・残量、ボンベの交換時間、O2ラインの屈曲の有無等を看護講師と担任 で確認しましょう。活動時やボンベ交換時・吸引時にも確認します。 ○酸素を使用しながら身体を大きく動かす活動では、機器の設定が変わったり、児童 のバイタルサインが変化したりするというリスクがあることを認識しましょう。

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午後1時、酸素ボンベの残量が登校時から減っていないことに気がつく。 急いで酸素ボンベが開栓しているか確認すると、完全に閉まっている状態ではないも のの、開き方が不十分であったので全開にした。流量ダイヤルが指示量の0.5L/分 になっているかを確認したが間違いはなかった。 ・登校時に元栓が開栓してあることを確認したが、開栓の仕方が不完全だった。 ・流量ダイヤルが指示量の0.5L/分になっているかを確認する時、表示が酸素ボン ベの下側にあり、確認しづらく、酸素ボンベを車いすから出して確認した。その際、 元栓を持って出したために閉まった。 ・元栓を開栓する時は、一度全開にしてから少し戻す。 ・酸素チューブをはずして酸素が流れているかを確認する。 ・登校時、呼吸器のチェック項目に「酸素が流れているか確認する」を追加する。 ・酸素ボンベの残量を時間を決めて確認する。

4 酸素ボンベ関係の事例 ~元栓の開栓不足~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○酸素ボンベの確認項目を見ながらチェックしましょう。 ○看護講師も担任も酸素が流れていると思い込まずに、残量計の目盛もチェックしま しょう。 ○元栓が全開か、流量ダイヤルの目盛は正しいか、チューブの接続部分が離脱してい ないかを確認した上で、酸素の残量とボンベ交換時刻の計算を行いましょう。

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4時間目の授業を終え移動教室より帰室後、児童2人に酸素ボンベから酸素濃縮装置 への切り替えを行った。1人は酸素の流量が1.0L/分、もう1人は0.5L/分。 教室内を移動する際、いつも届いている場所に届かなかったことで、チューブのつけ 間違いに気がつき、すぐに相互のチューブをつけかえた。 看護講師がすぐに酸素チューブをつけかえた。 その後、バイタルサインを測定し、SpO2値や 全身状態ともに安定し、変化のないことを確認 した。 酸素チューブの色や素材が同じものを使用し、 また長さもそれぞれ10m、6mと長かった。 看護講師がしっかり確認せず、机近くに置か れていた酸素チューブをその児童のものと思い込んで、装着した。 ・酸素カニューレは、色別のテープを貼付し、分かりやすくした。 ・業者に依頼し、色の違う酸素チューブを用意してもらい、チューブの長さを3mの短 いものに交換した。 ・酸素濃縮装置は教室の両サイドへ設置し、チューブを外した際はそれぞれの酸素濃縮 装置の上に置くことにした。

4 酸素ボンベ関係の事例 ~チューブのつけ間違い~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 酸素濃縮装置 ○同じ教室内に酸素吸入をする児童が複数いる場合、一目で各々のものが確認できる ように印をつけましょう。色の違う酸素チューブや短いものに交換できるかどう か、業者に相談するのも一つの方法です。また、チューブが交差しないような機器 の配置も考慮しましょう。

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酸素療法を一時中止して、授業に参加していた時に、教室に置いておいた酸素ボンベ を他学級の児童が触り、同調器の流量ダイヤルや電源スイッチを動かしたことを自分か ら看護講師に伝えてきた。 酸素ボンベの元栓には触れておらず、酸素の流出はなかった。 児童から聞いた後、同調器や酸素 ボンベに異常がないかを確認した。 酸素療法を一時中止して授業に参加する場合は、すぐ再開できるように教室の隅や カーテンの陰に置いていた。触った児童は、日頃から酸素ボンベや同調器に興味や関心 があり、酸素療法をしている児童の教室に出入りしていた。 ・酸素ボンベや同調器に布をかぶせて目立たないようにし、児童生徒が出入りしない所 に置くようにする。 酸素呼吸同調器 流量ダイヤル 電源スイッチ 再発防止に向けた対策・改善点

4 酸素ボンベ関係の事例 ~ボンベの置き場所~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 ○医療機器等は珍しく、他の児童生徒が関心を持つことが多いです。適切な保管場所 を確保し、安全に酸素療法が実施できるようにしましょう。 ○酸素ボンベや同調器等に布をかぶせた時には流量ダイヤルやスイッチに注意しま しょう。 ○予備の酸素ボンベは保健室等、常時、人がいる場所での保管がよいでしょう。

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昼休み、携帯酸素ボンベを使用している児童が廊下を歩いていたとき、近くにいた児 童が同調器に接続されている延長チューブに引っかかり、抜けてしまった。一緒にいた 教員が、すぐに外れた延長チューブを同調器に接続した。酸素は流出したが、同調器内 に貯留していたわずかな量だったため、児童の様子に変化は見られなかった。 看護講師が同調器の作動状態、 延長チューブの接続状況や漏れの 有無などを確認した。 ・歩行中は、児童や鼻腔カニューレに対して注意を払うようにしていたが、酸素ボンベ に設置されている同調器への注意が足りなかった。 ・鼻腔カニューレと同じように酸素ボンベ付近の付属物(同調器、延長チューブ等)に 対しても注意を払うようにする。 ・携帯酸素ボンベの取り扱いについて、共通理解を図る。 酸素呼吸同調器 延長チューブ 接続部

4 酸素ボンベ関係の事例 ~同調器接続部抜去~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 ○チューブが抜けるなどのアクシデントが起きたときは、速やかに対処しましょう。 ○同調器は、児童生徒の呼吸に合わせて、必要な酸素を流したり切ったりしています。 酸素ボンベ付近に設置され、延長チューブや鼻腔カニューレとつながっています。 ○不具合の原因が分からない場合は、そのままの状態で看護講師を呼び、接続状態や 機器類の破損や故障がないかなどを確認してもらいましょう。 再発防止に向けた対策・改善点

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飲み薬 通常、下校時に注入により服薬する薬(1包)を、昼食後に服用する薬(3包)と併 せて服用した。 児童の体調に変わりがないことを確認した。保護者から薬を併せて服用しても問題が ないので、午後の授業も通常通り過ごすよう依頼を受けた。様子を見守りながら授業に 参加した。 ・看護講師は、4包のうちの1包が下校時に服用する 薬であることに気がつかずに注入した。 ・見守りの教員は、昼食時に服用する薬が3包という ことを知らず、投薬のチェックだけ行った。 ・保護者には、「健康カード」の服薬の欄に薬剤名だ けでなく、包数も毎日記入していただく。 ・看護講師は、「健康カード」に記入してある包数と実際の薬の包数を確認してから投 薬する。 ・見守りの教員は、「注入チェックカード」の投薬の欄に明記してある包数と実際に投 薬する薬の包数を確認して、間違いがないかチェックする。

5 その他の事例(薬関係) ~服薬の間違い~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○薬剤名や包数の確認に合わせて、服用時間も確認しましょう。 ○薬の確認は、2人以上で確実に行うようにしましょう。

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グレープフルーツにより作用が強くなることがある薬剤を服用している児童の給食 にグレープフルーツが配膳されていた。 食べる前に担任が気がつき、グレープ フルーツとオレンジを取り換え、グレー プフルーツを食べないようにした。 ワゴンには、一人分ずつトレーにセッ トされた状態で給食が準備されており、 本人用としてグレープフルーツの代わり にオレンジがのったトレーが用意されて いた。しかし、メニューにグレープフルー ツがあることを意識せずに配膳してしまったため、他児童にオレンジがのったトレーが 配膳された。 ・みんなと違うメニューのトレーは、ワゴンの別の段に置いてもらうようにする。 ・給食時には、禁忌の食物が入っていないか食前に確認を行う。 再発防止に向けた対策・改善点

5 その他の事例(薬関係) ~薬の飲み合わせ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 ○薬と薬がお互い作用しあって、効果が低下する場合や飲み合わせや食物によって重 篤な副作用が出る場合があります。特に、グレープフルーツは、薬の作用を増強さ せたり、効果をなくしたりすることがあるので、注意しましょう。 ○複数の医療機関から処方されている場合は、薬の飲み合わせの確認が必要です。 ○薬が追加、変更になる際、従来服用していた薬と影響し合い血中濃度が上がる場合 や代謝が早まり血中濃度が下がる場合があるので注意が必要です。 相互作用を起こす組み合わせ例 「お薬を知ろう」日本調剤HPより

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軟膏容器 オムツかぶれ予防の軟膏を塗布している児童が学級に2人いる状況の中で、塗布する 軟膏を取り違えて使用した。 担当教員が間違いに気がつき、看護講師に伝え、看護講師が塗布した軟膏を拭き取り、 本人用の軟膏を塗布し直した。軟膏の種類は違っていたが、成分は同じおむつかぶれ予 防の軟膏であったため皮膚状態に変わりがないことを確認し、その後の様子についても 観察を行った。 ・児童は休日中にオムツかぶれになり、月曜日の登校時に、保護者より臨時薬として軟 膏塗布の依頼があった。容器(他児童の軟膏とサイズ違いの同じ容器)には記名がな いままの状態で預かり、個人ロッカーに保管していた。 ・看護講師が軟膏容器の名前を確認せず、そのまま塗布した。 ・学校で預かる薬には、保護者に容器や袋への 記名を依頼し、使用前には看護講師と教員が 2人で氏名を確認する。

5 その他の事例(薬関係) ~軟膏の取り違え~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○同じような外用剤であっても作用が違うこともあるので、注意しましょう。

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生徒の登校時、看護講師が生徒に体育の有無を確認 すると、「体育はない」と返答があった。 その後、体育館へ様子を見に行くと、ダンスをして いた。ダンス中に呼吸苦や喘鳴はなかった。 すぐにダンスを中断させ、運動前に気管支喘息吸 入剤を施行し、ダンスを再開する。 「体育」という看護講師の問いかけに対して、「ダンス」という生徒が思っている授 業内容の理解が異なっていた。 ・担任は1週間のスケジュールを保健室に出し、体育の授業の有無を共有できるように する。 ・継続的に生徒に活動内容や場所を聞くようにし、体を動かす活動かどうかの確認をす る。

5 その他の事例(吸入関係) ~運動前の吸入忘れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 エアロゾルタイプの 気管支喘息吸入剤 ○「体育」のみが運動ではないということを認識しましょう。 ○どのような活動の前に吸入するのか確認しておきましょう。

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人工呼吸器を装着している生徒が車いすに 移乗し、下校するときに人工鼻をつけ忘れて 自宅へ帰った。 翌日に保護者から指摘されて気がつく。 母親から、痰の状態など特に問題はなかった ことを聞く。 カニューレの紐の結び方や締める加減やコードの巻き方などに注意が向き、人工鼻を つけ忘れてしまった。 ・車いすへ移動した時は、人工呼吸器周辺の確認をする。 ・下校時は看護講師と担任が一緒に確認する。 ・確認項目を箇条書きにした書面でチェックしながら確実に行う。

5 その他の事例(人工鼻関係) ~人工鼻装置忘れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 人工鼻 ○人工鼻は、空気(吸気)を加温・加湿したり、空気中のほこりや菌などの異物の侵 入を防いだりする役割があります。 ○下校時にも、児童生徒の状態確認や持ち帰る物の確認を十分に行いましょう。

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昼の注入時になって栄養剤注入用接続チューブがないことに気がついた。 ストックしてあった栄養剤注入用接続チューブ を使用して注入した。保護者からも入れ忘れたと 連絡があったが、ストックしてあった物品を使用 したことを伝えた。 登校時の確認不足である。栄養剤注入用チューブの入れ物があったため、入っている と思い込み、入れ物の中まで確認していなかった。 ・登校時、教員が物品の有無を点検、看護講師が朝の健康チェック時に物品点検をする ことを再確認する。物品に不備がないことを毎日のショートカンファレンス時に報告 することで確認もれを防止する。 ・全員に対して、ストックの再確認を行い、保護者へ予備について依頼をする。学校で 医療的ケアができない状況を作らず、万一の事態に備えるよう物品を整える。 ・物品のストックについて、「氏名」「物品名」「数」の一覧を作成し、常に充足してい る状態が確認できるようにする。 ・物品不足については家庭に連絡をし、持参を依頼する。できる限り、児童生徒の登校 時、保護者が来校している間に確認する。

5 その他の事例

(物品関係)~栄養剤注入用接続チューブ忘れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 栄養剤注入用接続チューブ ○登校時には、物品に不備がないことを確認しましょう。

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金曜日の下校時にネブライザーを返却するのを忘れ、翌日の午前中に母親から担任に ネブライザーが見あたらないとの連絡があった。普段、ネブライザーは部品を洗って(水 洗いのみ、消毒は自宅)から返却をしており、この日は窓辺で乾燥をさせていたところ、 荷物の中に入れるのを忘れた。看護講師も担任もそのことに気がつかなかった。 自宅に以前使用していたものがあり、それを使用しても問題ないとのことだったため、 土・日曜日はそれで対応をしていただき、月曜日に返却した。 ・普段は、医療的ケアに関わる主な物品は、個々にひとまとめにしてあるが、その日は ネブライザーの部品を窓辺で乾燥させていたため、荷物に入れるのを忘れてしまった。 ・教員と看護講師ともに、最後に忘れ物がないか、確認できていなかった。 ・物品は教室内に点在させるのではなく、できるだけひとまとめにしておく。 ・下校前に持ち帰る物の確認を十分に行う。 ・教員と看護講師がお互いに確認をし合うなどしてダブルチェックをする。

5 その他の事例(物品関係) ~返却忘れ~

発生時の状況と経過 発生時の対応と処置 考えられる原因や背景 再発防止に向けた対策・改善点 ○下校前に持ち帰る物の確認を十分に行いましょう。

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【ヒヤリハットの捉え方】

ヒヤリハット事例の分析は事故発生防止の対策作りには欠かせません。重大事故の発 生の前には、多くのヒヤリハットが潜んでいるとされていますが、結果として事故に至 らず、「ああよかった」とすぐに忘れがちになってしまいます。それを事故防止対策へ とつなげることが大切です。ヒヤリハット事例の分析は、事故に至らなかった小さな問 題状況に対して予防対策をとり、事故を未然に防ぐためのものであり、ミスをした人を 責めるような始末書的な意味は全くないという認識をもつことが大切です。 蓄積すべきヒヤリハット事例には、 ① 適切でないと考えられることが児童生徒に行われる前に気がついた事例 ② 結果的には児童生徒に影響はなかったが適切ではなかったと考えられる事例 ③ 適切ではない状況が起こったが、少しの対応ですぐに問題が解決した事例 等が入ります。 ヒヤリハットへの向きあい方として、 ① ヒヤリハット事例を蓄積することの目的、意味・意義を十分に認識する。 ② 誰でも起こりうることとして、ヒヤリハットに遭遇した人を責めない体質を学校 内に作る。=この次は自身にも起こりうることだと認識する。 ③ 分析の結果、どのような予防対策をとりうるかを学校全体で検討し、学校のシス テムとして検討する。 ④ 所定の用紙に記入して蓄積し、起こりやすい傾向等を把握することで、事故を予 防する。 ⑤ 1つの学校での発生は多くない可能性もあるので、医療的ケア専門協議会等で共 有する。 といったことがあげられます。 各学校でのヒヤリハットの報告の在り方を今一度、見直していただき、重大事故を防 止するだけでなく、よりよい医療的配慮の実践につなげていただきますようよろしくお 願いいたします。 《参考文献》日本小児看護学会:特別支援学校看護師のためのガイドライン(改訂版)2010

安全への意識の向上 ⇒ ヒヤリハット事例を蓄積する

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【お わ り に】

岐阜県医療的ケア専門協議会オブザーバー

福富医院 院長 福富悌

特別支援学校における医療的ケアは、大切な役割を担った制度となってきま

した。岐阜県での医療的ケアは平成 10 年頃から一部の学校で試みが始まり、平

成 18 年から県下で本格的に運用されました。最初の頃は、看護師が学校で医療

を行うことの戸惑いや、保護者の期待に対する制度の内容の違い、さらに制度

そのものや学校の体制について多くの話し合いがされました。その後も重症心

身障害児の処置や、医師の指示の内容等から、要綱の見直しへと続きました。

このような話し合いの趣旨は、どのように医療的ケアの制度を特別支援学校で

運用していくかということでした。しかしながら、この医療的ケアを運用する

にあたり、基本として忘れてはいけないことは、児童生徒が安全に授業を受け

られることです。そのためには、児童生徒に対して指示に従ったことが適切に

行われることは勿論のこと、人工呼吸器や体に挿入されているチューブ等の管

理などが行われることが大切です。

誰しも業務はしっかりと行いたいと思って従事されていると思います。しか

しながら、ハインリッヒの法則で

1 つの重大事故の背後には 29 の軽微な事故が

あり、その背景には 300 の異常が存在すると言われているように、

重大な事故

は起こさないようにいくら注意していても、気を引き締め業務への意識を高め

ていても無くなるわけではありません。そこで、大切なのは誰でもミスをする

ことがある、誰でも事故に遭遇することがあると、考え方を変えることです。

そのため、たとえ事故やミスに遭遇した時も自分の落ち度からでなく、自分で

なくても誰かが遭遇したとして、そのミスや事故が繰り返し発生しないように

多くの人に伝えることが大切です。さらに、その改善方法については、精神的

な意識改革ではなく、具体的な方法で解決することが必要です。そして、この

ような報告書は各学校で作られていると思いますが、これは医療的ケアにとっ

ても大切な資料だと考えられます。

そもそも医学そのものが経験によって発展してきました。かつての花岡青洲

も失敗の中から麻酔薬を見つけ、乳がんの手術も行いました。失敗を生かすこ

とに因って初めて技術の進歩が生まれてきます。

今回、岐阜県の医療的ケアにおける事例集が医療的ケア専門協議会の先生方

のご尽力によりできましたことは、医療的ケアが進歩する大きな礎となると思

います。今後とも医療的ケアが多くの皆様の役に立ち、特別支援学校の教育が

安全に行われていくことを願っています。

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参照

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