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Title リスクマネジメントの意思決定に反映させる多様な感性の研究 -Shakespeare 作品に基づく一考察 - Author(s) 大蔵, 直樹 Citation 商学研究論集, 52: URL Rights I

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Academic year: 2021

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(1)

Meiji University

Title

リスクマネジメントの意思決定に反映させる多様な感

性の研究 -Shakespeare

作品に基づく一考察-Author(s)

大蔵,直樹

Citation

商学研究論集, 52: 53-73

URL

http://hdl.handle.net/10291/20726

Rights

Issue Date

2020-02-28

Text version

publisher

Type

Departmental Bulletin Paper

DOI

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―  ― 研究論集委員会 受付日 2019年 9 月20日 承認日 2019年10月28日 1 著者によりテクストの異同が見られることから,引用部を除きShakespeare と表記する。 ―  ― 商学研究論集 第52号 2020. 2

リスクマネジメントの意思決定に反映させる

多様な感性の研究

―Shakespeare 作品に基づく一考察―

Study of diverse sensitivities which Risk Management re‰ects

in decision-making

―A consideration based on Shakespeare works―

博士後期課程 商学専攻 2018年度入学

OKURA Naoki 【論文要旨】 多様なリスク感性をリスクマネジメントに活かす先行研究はほとんど見当たらない。しかし本稿 は,◯望ましくない事象顕在化を防ぐうえで多様なリスク感性が重要な役割を果たす,◯多様なリ スク感性を意思決定に反映させることがリスクマネジメントのプロセスから排除(大蔵[2018], p.194)されている,との問題意識を持つ。そこで,多様なリスク感性を導きだせる特徴を持つ古 典文献を素材に選定し研究を重ねている。本稿は Shakespeare1作品より,◯望ましい事象と望ま しくない事象の「対比」,◯望ましくない事象顕在化を防ぐ「検証確認」,とのリスク感性を導きだ すことを研究の目的とする。第章と第章にて Shakespeare 作品を研究素材に選定した理由を 述べる。とりわけ第章の考察は,リスクマネジメントのプロセス管理の限界を補完する研究に結 び付くものである。第章と第章にて,対比と検証確認のリスク感性を導きだすべく考察を行 う。第章にて多様なリスク感性の意思決定への反映に係る具体例証を行い,第章にて,望まし くない事象顕在化を防ぐというリスクマネジメント実践に資するとの取り纏めも行う。 【キーワード】 Shakespeare,対比と検証確認,多様な感性,意思決定,リスクマネジメント

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―  ―

2 Shakespeare 作品の創作の正確な年代については諸説があるが,本稿はバダウィの著書(Badawi, M. M.

[1985],邦訳,pp.184185)に拠っている。

3『資本論』は,Shakespeare 作品を数多く引用している。

4 その治世は1558~1603年である。

5 An Acte concerning matters of Assurances amongste merchantes が1601年に制定(則定[1985],p.101)

されている。 6 武井は「気づき,働きかける」ことが,リスクマネジメントが発展する基礎と指摘(武井勲[1983],p.107) した。 ―  ― 【目次】 序章 研究の目的 第章 Shakespeare 作品を研究素材として選定した理由(その 1)商業・海運の発展を背景 第章 研究素材として選定した理由(その 2 および 3)プロセス管理の限界の補完 第章 Shakespeare 作品から導きだせるリスク感性(その 1)対比(Contrast) 第章 Shakespeare 作品から導きだせるリスク感性(その 2)検証確認(Veriˆcation) 第章 例証 第章 結論 参考文献 序章 研究の目的 Shakespeare 作品(創作159016132)は,経済学3あるいは確率論等の著書においても引用・考 察されている。保険学においても,先覚の師である木村が『ヴェニスの商人』にてシャイロックが 「アントニオの胸の肉 1 ポンドを切り取って返済に当てろ」と迫る争いに関して,「アントニオが 海上保険を利用していたなら,このような争い事は起こらなかったということで,後世,研究者の 間で,果たしてシェイクスピアは保険の存在を知っていた」(木村栄一[1995],p.195)のか論争 されたとする。ヴェニスでは「1468年に海上保険に関する保険法令」(小室金之助[1997],p.137) が制定され,イギリスでは「1568年には,王立取引所が設立され,海上保険取引」(木村栄一[前 掲書],p.196)もそこで行われていた。藤木は「エリザベス一世4の即位43年に当る1601年は英国 海上保険史上特筆さるべき年。海上保険法5が制定されている」こと,そして起草したフランシス ・ベーコンが同法前文に「英国においてかなりの長期間にわたり海上保険制度が定着していると示 唆」(藤木文雄[前掲書],p.23)していると述べる。実際に図表 1.の通り1553年には英国最古の 英文貨物海上保険証券の発行が確認されており,それ以降,英国海上保険マーケットは発展してい ったものと考える。 本稿は,木村の設問から二つの問題を措定する。それは,◯アントニオは誰から危険を避ける方 法を学んだのか,そして,◯アントニオは危険を避けるという感性を身に付け6ていたのか,とい

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―  ―

図表. イギリスで発行された初期の海上保険証券

年 船 名 内 容

1547 ``Santa Maria di Vinetia'' 英国最古の伊文貨物海上保険証券

1548 ``Santa Maria di Porto Salvo'' 本文は伊文,引受欄は英文

1553 ``San Antonio'' 英国最古の英文貨物海上保険証券 1557 ``Ele'' 英国最古の船舶・貨物海上保険証券 1558 ``Marye Rose'' スペインで発行の英文貨物海上保険証券 1562 ``St. John Baptist'' 英国最古の船舶海上保険証券 (出典木村栄一[前掲書],pp. 292334,より筆者作成) 7 大蔵[2019b]は『君主論』,大蔵[2019a]は『論語』,大蔵[2018]は『徒然草』を研究素材とした。 8 本稿は,防ぐための意思決定プロセスそのものの考察を研究目的とするものではない。 ―  ― う問題である。いずれも Shakespeare は明記はしていないが,◯については,「学者で軍人」の親 友パサーニオとアントニオが危険回避方法を教えあうシーン(Shakespeare[1960]『ヴェニスの 商人』,邦訳,p.15)が解答になるだろう。◯については,アントニオが「ぼくの投資は,なにも 一つの船にかかつてゐるわけではない」「取引先も一箇處だけではない」(Shakespeare[1960] 『ヴェニスの商人』,邦訳,p.11)と語るセリフが解答になるだろう。 ◯ に関して述べる。筆者は,防ぐための意思決定に反映させるリスク感性に着目し,リスク感性 を能力,すなわち磨き上げ学ばなければ身に付けることができないものと捉える。そして,望まし くない事象の顕在化の予兆に気づき防ぐには多様なリスク感性が重要な役割を果たすという貫串す る問題意識から,多様な感性を導きだせる特徴を持つ古典文献を素材7として選定し研究を重ねて きた。本稿は,大蔵[2018],大蔵[2019a]および大蔵[2019b]に引き続くものである。 ◯ の問題に関しては,本稿の研究の目的および本稿の構成全体が係わりを持つ。 「リスク感性とリスクマネジメント論を結び付けた先行研究はほとんど見当たらない」(大蔵 [2019b],p.133)中で,本稿は,Shakespeare 作品より,(ア)望ましい事象と望ましくない事象 の「対比」,および(イ)望ましくない事象の顕在化を防ぐため意思決定に反映させる「検証確認」, というリスク感性を導きだすことを研究の目的8とし,多様なリスク感性を意思決定に反映させ, 望ましくない事象顕在化を防ぐというリスクマネジメント実践に資する狙いを根底におく。 本稿の構成は以下の通りである。第章と第章にて Shakespeare 作品を研究素材として選定 した理由を述べる。第章にて,当時の英国の社会経済発展状況が作品の背景となっていることを 定量的ならびに定性的に論証する。第章の考察は,行為主体者一人ひとりの多様なリスク感性を 意思決定に反映させる研究に繋がり,防ぐことを目的とするリスクマネジメントのプロセス管理の 限界を補完する研究に結び付くものである。さらに行為主体者一人ひとりの与件の改善という主体 性を活かすという点についても考察を行う。第章と第章にて,対比と検証確認のリスク感性を

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―  ―

9『ヴェニスの商人』の中では,噂を撒き散らす「情報というお喋り婆さん」(Shakespeare[1960],邦訳,

p.70)と表現される。

10 詩集である『ソネット集(The Sonnets )』を除く。

11 2 作品名は,『ヴェニスの商人(The Merchant of Venice )』(喜劇創作159697年)と『オセロー(Othello)』

(4 大悲劇創作160405年)である。 図表. Shakespeare 作品とその舞台 Shakespeare (作品数) 舞台英国以外 (作品数) 舞台イタリア (作品数) 舞台ヴェニス (作品数) 37 22(59.5) 12(32.4) 2(5.4) (出典出口典雄[2000]より,筆者作成) ―  ― Shakespeare 作品から導き出すべく考察を行う。第章にて多様なリスク感性の意思決定への反映 に係る具体例証を行い,第章にて,防ぐというリスクマネジメント実践に資するとの取り纏めも 行う。 第章 Shakespeare 作品を研究素材として選定した理由(その)商業・海運の発 展を背景 Shakespeare 作品を研究素材として選定した理由の第一は,古典文献に現れるリスク感性がその 時代の社会経済状況を背景にするとの大蔵[2019b]の含意に基づき,Shakespeare 作品からも時 代背景を導きだせる,と考えられるからである。 フィッシャーはイギリスの「1450年から1750年」までの間につき「経済史の暗黒時代」(Fisher, F. J.[1969],邦訳,p.164)と述べる。16世紀初頭には「新しい行政組織の導入により中世から の歴史的記録の全カテゴリーが改変」(船山栄一[1967],p.219)され,各種統計データ欠如とい う状況が生じていた。しかし「外国貿易については,この分野は統計がかなり豊富」(船山栄一 [前掲書],p.231)とされる。そこで,本章では貿易に焦点を置き考察する。貿易による取引拡大 につき井上は「商品と一緒にいろいろな情報が伝わっていく」「貨幣(為替),物品,人の移動にく っついて情報9が移動し」「諸国の噂をみんなが知りたがる」(井上ひさし[1995],p.181),とそ の本質について意味付けを行った。本稿は,Shakespeare 作品には人びとが「知りたがった」情報 があふれ,「海外取引の規模と速度を拡大」(後藤伸[2001],p.3)させることに寄与したと考え る。 . 年頃,ヴェニスはイギリスにとって目標都市 図表 2.のとおり Shakespeare37作品10には,イタリアを舞台にするものが12作,ヴェニスを舞 台にするものが 2 作11ある。『リチャード二世』(創作15951596)の中に「誇り高いイタリアの

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―  ― 図表.年頃ピークのヴェニスの繊維製品 (出典Rapp, R. T.[1976],p.101) 12 原書を筆者試訳。 13 玉木は「イギリスはヴェツィアにキャッチアップ」するために「非常に安い値段で商品=毛織物を販売する 必要があり,そのため品質を落とした」(玉木俊明[2008],p.76)と記述する。 ―  ― 流儀を物まねして追いかけている後進国である我々イギリス国民12」(Gurr, A.[2001],line. 21 22)とのセリフが現れる。エリザベス朝時代(15581603年)のイギリス国民にとり,「ヴェニス は魅惑的」(Kermode, F.[2008],邦訳,p.189)であり,『ヴェニスの商人』は「ヴェニスの現実 ではなく,当時のイングランド人の抱く海外貿易への夢であり,世界貿易への覇権をかけたイング ランド人の野心の表れ」(勝山貴之[2009],pp.2627)であった。ヴェニスには「商業の都とし ての長い歴史」があり,イギリスの「商業の発達や新たな繁栄など遠く及ばない」(Kermode, F. [前掲書],邦訳,p.189)状況であった。図表 3.は,ヴェニスの繊維製品生産量が1600年頃がピー クであったことを示す。当時のイギリス国民にとって,ヴェニスはキャッチアップすべき目標13 市であった。 . 世紀から世紀イギリス商業の発展の契機 図表 4.にて,イギリスを始め欧州各国の1500年から1700年までの人口と GDP の推移を見てみ よう。人口は,イギリスが1500年からの100年間に1.57倍と,イタリアの1.25倍に比し大きな伸び を示す。さらにイギリスは1700年にかけ2.17倍と欧州各国に比し,大きな伸びを示す。GDP は, イギリスが1500年からの100年間に2.13倍の伸びを示す。イタリアは人口と同じ1.25倍の伸びに留 まる。さらにイギリスは1700年にかけ3.8倍と,大きな伸びを示す。GNP 額では,イギリスは 1700年時点においても欧州各国にキャッチアップできていないが,一人当たり GNP 額では,イギ リスが1700年時点において欧州各国を引き離している。以上から,イギリスは,1500年から1600 年,そして1700年にかけ,国全体として飛躍的な発展を達成していたと言える。

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―  ― 図表. 人口および GDP の年~年の欧州各国の推移 イギリス(※14) イタリア(※) フランス(※) ドイツ(※) 人口(千人) 1500年 3,942(100) 10,500(100) 15,000(100) 12,000(100) 1600年 6,170(157) 13,100(125) 18,500(123) 16,000(133) 1700年 8,565(217) 13,300(127) 21,471(143) 15,000(125) GDP(百万ドル) 1500年 2,815(100) 11,550(100) 10,912(100) 8,112(100) 1600年 6,007(213) 14,410(125) 15,559(143) 12,432(153) 1700年 10,709(380) 14,630(127) 21,180(194) 13,410(165) 一人当たりGDP(百万ドル) 1500年 0.71(100) 1.1(100) 0.72(100) 0.67(100) 1600年 0.97(137) 1.1(100) 0.84(117) 0.78(116) 1700年 1.25(176) 1.1(100) 0.98(136) 0.89(133) (出典Maddison, A.[2004],邦訳,pp. 271308,を一部引用し筆者加工作成) 図表. イギリスの船舶トン当たりの生産性 年 船員数(人) 総トン数 Ratio 1582 16,119 68,433 4.53 1686 50,000 350,000 7 (出典Lucassen, J. [2000], p. 130) 14(※)の中は,人口の場合はイギリスを始め各国の1500年を100としたときの1600年および1700年の数値で ある。GDP の場合も同じく,イギリスを始め各国の1500年を100としたときの1600年および1700年の数値 である。 15 当時のイギリスの帆船造船能力ならびにその船舶の概要については,1600年 4 月19日に日本の「豊後佐志生 に到着した」(鈴木かほる[2010],p.37)ウィリアム・アダムス(日本名三浦按針)が,「家康にとにか く造れと言われ,伊東伊豆で建造することになった,我が国では嚆矢ともいうべき80トンを,次いで120ト ンという2 隻の英風小型帆船を建造」し,のちに120トン船は「幕府船として初めて太平洋を横断」(鈴木か ほる[2010],p.54)していることからも,その性能ならびに能力は実証されている。三浦按針は,青年時 代に英国にて造船所にて働き,造船術,航海術その他外国語も習得したと言われる。 ―  ― . 海上輸送用具の進化 ()イギリスの通商と海運の進歩 マートンは「イギリスの通商と海運が16世紀末から17世紀前半にかけて大きく進歩した」とし, イギリス海運は「1580年から1640年までに,5 倍とまではいかなくとも 4 倍にのびた」と記述す る(Merton, R. K.[1961],邦訳,p.560)。図表 5.のとおり,イギリスの船舶151 トン当たりの 生産性は,約100年間のうちに1.5倍程度(7÷4.53≒1.55)上昇する。人口と GDP の図表 4.の数 値とほぼ同様の傾向を示す。

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―  ― 図表. Shakespeare 作品に現れる海事用語 (筆者作成19) 作 品 名 海事用語(p 数) テンペスト (あらし) 船長(p. 9),水夫長(p. 10),水夫(p. 10),大砲係(p. 62),上の帆(p. 9),上の帆柱 (p. 11),帆柱(p. 23),大帆(p. 11),帆桁(p. 23),舷側(p. 12),甲板(p. 10),中 甲板(p. 23),船底(p. 116),舳(p. 11),艫(p. 23),船尾の舵(p. 9),舳の遣出(p. 23),船室(p. 10),帆綱(p. 10),錨綱(p. 11),水量を測る鉛(p. 89),僚船(p. 120) ヴェニスの商人 桟橋(p. 10),船着き場(p. 10),船荷(p. 10),難破(p. 70),暗礁(p. 10) じゃじゃ馬ならし 大型ガレー船20(p. 72) シンベリン 船足(p. 25),転覆(p. 89),メーン・マスト(p. 164),艦船(p. 165) 16「イスパニア・ヴェネチア・教皇の艦隊,連合してトルコ海軍を破った」(亀井高孝他[1990],pp.1617)。 17 原書を筆者試訳。 18 図表6.は,誌的余裕から一部のみの記載としている。 19 Shakespeare 作品から目視にて海事用語を抽出した。抽出した海事用語が先に参照した作品に現れていた場 合には,重複記載は行わなかった。 20 ガレー船は「古代から地中海沿岸諸国の軍船として発達したオールで漕ぐことを主推進力とする細長い船。 大型ガレー船では数百人の漕手を必要としたので,人手不足に困る」(鈴木昭典[2010],p.243)こともあ った。1588年にスペインの無敵艦隊がイギリスに敗北を喫して以降,オールで漕ぐ船から,帆船へと移行が 加速した。 ―  ― ()Shakespeare 作品に現れる海事用語と海上輸送技術の進化 「ヴェネチアの歴史の最後を飾る海戦」(Schmitt, C,[2018],邦訳,p.62)となった1571年のレ パントの海戦16から17年後の1588年にイギリスの小型の帆船群に「スペインの無敵艦隊が敗北」 (Schmitt, C,[前掲書],邦訳,p.63)した。商業でイタリアを,軍事でスペインを目標にしてき たイギリスは,軍事面で先行し目標達成を果たした。それは海上輸送技術の進化を背景にしている ことはいうまでもない。その進化に関し,Shakespeare 作品に現れる海事用語について,ラフトン が「海事用語の引用が,ほとんど例外なく,正確であることは認められている17」(Laughton [1916],p.141)とその精度(precision)を評価する。観客一人ひとりが Shakespeare 作品に現れ る海事用語を耳にすることで,輸送用具の進化状況を身に付けていったと考えられる。 図表 6.に Shakespeare 作品に現れる18海事用語につき定性的取り纏めを行った。 . 小括 英国は1500年からの100年間に,イタリアを始めフランスおよびドイツを大きく上回る成長を達 成したことを定量的に確認した。その商業の発展が Shakespeare 作品の背景となって現れている と考える。また,スペインに対して軍事面で優位にたつため海上輸送技術革新も進み,それが作品 に現れていることも定性的に確認した。観客一人ひとりが英国の確実な幸福の獲得への着実な歩み を予見的に実感したと考えることに合理性があるだろう。

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―  ― 図表. 「多様なリスク感性」の視座一覧 (筆者作成) 項番 研究素材 リスク感性の多様性 視 座 1 『徒然草』 因果論的感性 為政者 2 『論語』 先々を見据える感性 為政者 3 『君主論』 トラストによる調和 為政者・民衆 4 「Shakespeare 作品」 対比と検証確認の感性 観客一人ひとり ―  ― 第章 研究素材として選定した理由(そのおよび)プロセス管理の限界の補完 本章の考察は,望ましくない事象顕在化を防ぐことを目的とするリスクマネジメントにおいて, 多様なリスク感性を意思決定に反映させることを排除せざるを得ないという限界がプロセス管理に 存在する,と筆者が重ねてきた研究に結び付くものである。 . プロセス管理の限界の補完(素材選定理由その) 外山は「シェイクスピアの作品はもともと舞台上演用台本であった。それが十八世紀になると, 読者のためのテクストへと性格を変えた」(外山滋比古[2002],p.5)と述べる。しかし,舞台を 見るということだけについて言うなら,何も18世紀を待つまでもない。「観客たちを楽しませるこ とは不可欠」(Kermode, F.[2008],邦訳,p.93)であり,観客は楽しみながら Shakespeare 作品 の中に現れる時代背景,商業の発展,を実感していたと考える。 さて,筆者が重ねてきた多様なリスク感性の研究については,図表 7.に示すとおり項番 3.ま では,「為政者」あるいは「為政者・民衆」の視座を通したものであった。しかし,Shakespeare 劇を見るのは観客であり,観客一人ひとりが自らの視座を通して Shakespeare 劇より感じ取った ものを,自分の人生に,そして家族や企業のため,さらに国づくりに活かす,というよう鎖が繋が れば,為政者による国づくりの努力と国民一人ひとりの国づくりの努力が協創し,国全体が大きく 繁栄することになるであろう。Shakespeare 作品を研究素材として選定した第二の理由は,行為主 体者に相当する観客の視座を補完する形にするには,最適の古典文献であると考えられるからであ る。「いつ,どこで,何が起きても不思議ではない」との観点から考察する場合,これまでの経験 済みの事象に対応するリスクマネジメントの意思決定プロセス管理に加え,図表 8.に示すよう に,行為主体者の視座を補完的に設置し考察を行うことにより,望ましくない事象顕在化を防ぐこ とに繋がるのである。

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―  ―

図表.「一人ひとりの視座」による補完(筆者作成)

21 Helder(1963)“Shakespeare”“Bl äattern von deutscher Art und Kunst”(1773)“Herders Werke in f äunf

Banden”Volksverlag Weiner SS.237260 ―  ― . 気づき,働きかける(素材選定理由その) Shakespeare の作品には,劇を見た観客にとり,古代ギリシャ以来の「運命は必然のもの」との パラダイムから「自分の未来は自らの力で切り拓くもの」との捉え方にシフトする,との効果があ ると考えられる。それが Shakespeare 作品を研究素材として選定した第三の理由である。 ()運命の捉え方古代ギリシャ悲劇とShakespeare 悲劇の形式(フォーマット)の違い ヘルダーは1773年に発表した論文21に「ギリシア悲劇とシェイクスピア劇とを全く異質のもの」 (鈴木邦武[1960],p.61)と双方を対比(Helder[1963],S.237)する。古代ギリシャ以来「運 命は必然のもの」と考えられていた。それに対し,Shakespeare の劇を見た観客は「自らの将来は 運命として措定されているものではなく,自らの力で切り拓くもの」との考え方を感じとり,それ が,時代を進め発展させる力となったことは言うまでもない。運命は必然のものとする古代ギリシ ャ悲劇と Shakespeare 悲劇を対比し定性的論考を行う。 ◯ 古代ギリシャ悲劇の形式 植島が「ギリシア悲劇の形式は運命は決められていた」(植島啓司([2007],p.49)と述べる。 丹下も,ギリシア悲劇の場合「悲劇の素材が観客には既知」,すなわち「必然(アナンケー)」であ るとの捉え方(丹下和彦[2009],p.65)を示す。ギリシャ悲劇においては「運命は変えることの できないもの」であった。具体的にいくつか例を挙げてみよう。 (ア)アイスキュロス著『ペルシャ人』無抵抗のまま「鷲わしが鷹たか」に追われる「情景」(丹下和彦 [前掲書,p.26])は,定まった「ペルシャの運命」を予兆する。(イ)アイスキュロス著『オレス テイア』トロイア戦争「ギリシア軍の総大将」アガメムノンが「内紛」の結果として殺害されたこ とは「宿命」(丹下和彦[前掲書],p.55)と描かれる。(ウ)ソポクレス著『オイディプス王』オ イディプスが「父親を殺す運命にある」との神託は「彼が生まれる以前から下されていた」(丹下 和彦[前掲書],p.169),と力説される。(エ)エウリピデス著『メデイア』メデイアは「母性愛と の相克」に悩みながら「我が子殺し」(丹下和彦[前掲書],p.180)の実行という運命にあったと

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―  ― 22 武井が事象を「望ましくない偶然の出来事(unfavorable contingency)」および「望ましい結果(favorable outcome)」(武井[1982],p.29)と分けて捉えているがリスクマネジメントに適用しているわけではない。 またトベルスキーは,価格や賃金を決定する意思決定に関し「望ましい変化」あるいは「望ましくない変化」 と対比的な反応があると述べている(Tversky[1991],p.1056)。しかし対比の考え方に言及したリスクマ ネジメントの先行研究は見当たらない。 23 検証確認は,PDCA サイクルの P(対策立案)に相当する。しかしながら,PDCA サイクルは感性に基づく 発案を想定していない。 ―  ― 力説される。 ◯ Shakespeare の悲劇の形式 Shakespeare はギリシア悲劇にはない,運命を自らの力で切り拓こうとする姿勢,すなわち与件 に働きかけようとするシーンを観客にみせる。具体的に見てみよう。 (ア)ロミオとジュリエット(創作159495年)「二人の運命の歯車を狂わせて」いく。しかし ロミオとジュリエットは「最後まで運命に屈することなく敢然」(Burdett[2007b],邦訳,p.66) と立ち向かう。(イ)ハムレット(創作160001年)前国王を殺害し王になったクローディアス により,ハムレットが殺害されるという「運命」が措定される。しかし「運命」を怖れないハムレ ットが「国王を突き刺し」(Burdett[2007a],邦訳,p.56)復讐という形で運命への抗いを達成す る。(ウ)マクベス(創作160506年)マクベスが「運命め,さあ,姿を現せ,おれと勝負しろ, 最後の決着をつけてやる」(Shakespeare[1965],邦訳,p.57)と叫ぶ。(エ)テンペスト(あら し)(創作161112年)弟の陰謀により荒海に流され,孤島に漂着したプロスペローに12年後, 復讐のチャンスが到来する(Burdett[2007c],邦訳,p.68)。しかし結局,弟を赦し自らもミラノ 大公として再出発をする。リスクを冒すわずかばかりの勇気により未来を切り拓くことができると 示した。 . 小括 ギリシャ悲劇では,運命は必然であり抗うことは許されない。大蔵[2019b]にて研究素材とした 『君主論』にも,運命ではなく君主の力量が問題であるとの記述が登場するが,困難を切り拓くとい う記述は見当たらない。Shakespeare は,古代ギリシャ以来のパラダイムである必然という考え方に 対し,望ましい事象に向け自らの力で切り拓きコントロールすることを観客に示したのである。 第章 Shakespeare作品から導きだせるリスク感性(その)対比(Contrast) クーンツが「どんなリスクが含まれているか」との問題と「これらのリスクにわれわれはいかに 反応したいか」(Koontz, H.,[1968],邦訳,p.104)との問題は分離すべきと主張する。本稿は, 前者を,望ましい事象と望ましくない事象との対比22(Contrast)というリスク感性と捉え,第 章にて考察する。そして,後者を検証確認23(Veriˆcation)というリスク感性と捉え,第章にて 考察する。

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―  ―

図表.『ハムレット』“to be or not to be”

(出典Arimas, arimasen, are wa nan deska,およびイラストは,(Wingman, C.[1975],p.57))

図表.漱石が書き入れた対比構図

(出典夏目漱石[1957],p.16)

24 原書の趣旨を踏まえ筆者意訳した。

―  ―

. 『ハムレット』に現れる典型的な対比“to be or not to be”

“to be or not to be”というセリフが典型的な対比であることは言うまでもない。『ハムレット』 においては,対比対象が役者により舞台上にて表現され(図表 9.の Image 1 と Image 2),観客 は知らずのうちに対比という感性を受け止め「自分ならどちらを選択するか」(図表 9.の Image 3)という意思決定をおこなう。舞台上にて進行していく結果と,自らの選択とが同時進行し,対 比効果によて良い意思決定に導かれることになる。 . 夏目漱石([],p.16)が自らの蔵書の余白に書き入れた対比(Contrast) 漱石が自らの蔵書の余白に書き入れた対比の構図を示すもの(夏目漱石[1957],p.16)が図表 10.である。蔵書ダイトンの『研究ノート』は,◯「スコットランド王ダンカンと魔女にあやつ られた運命にしたがってダンカンを暗殺するマクベス24」(Deighton, K.[1957],p.193)という 対比,◯「晴れた日と嵐の日」という対比(Deighton, K.[前掲書],p.211),を述べる。漱石は ◯のコンセプトを基に「魔女の世界と人間の世界」との対比構図を余白に書き入れ,運命を操る魔 女と措定された運命に抗う人間を対比した。◯のコンセプトにつき,福田も著書(福田陸太郎 [1988])の中で数多くの対比構図を示す。さらに「トゥモロウ・スピーチ」(福田陸太郎[1988],

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―  ― 25「あすが来」が望ましい事象で,「昨日までは死ぬ道筋」は望ましくない事象である。 26 ローマ神話において,物事の内と外の両面を同時に見ることのできる神とされている。 27「検証確認」には,確率やオッズの考え方も含まれてくる。 28 高校のチアダンスで全米五連覇を果たした福井商業高校の指導者である五十嵐は「目の前にないものを見る 力」は「変革を起こすために必要」(五十嵐裕子[2018],p.26)と語っている。 29 中距離核戦力廃棄条約は「射程500~5500キロメートルの核を含む地上発射型の中・短距離ミサイルの開発 や配備を禁止する」(日本経済新聞 2019年 7 月17日 夕刊 3 面)ものである。しかし,2019年 8 月 2 日に廃 棄条約は失効してしまった。「条約の当事国ではない中国は多くの中距離ミサイルを実践配備」(日本経済新 図表. 目の前に現れる「望ましい事象」と「望ましくない事象」 (筆者作成) 項番 目の前に現れている事象 直観にて再現する事象28 検証確認対策 1 「望ましい事象」(◯)の場合 「望ましくない事象」(◯) ◯ vs ◯ 何もしない 2 「望ましくない事象」(◯)の場合 「望ましい事象」(◯) ◯ vs ◯ 安全確保の対策 ―  ― p.176)として知られる「あすが来25」vs「昨日までは死ぬ道筋」(Shakespeare[1961]『マクベス』, 邦訳,p.118)の対比,「天国の門番ジェイナス神26」(Shakespeare[1960]『ヴェニスの商人』,邦 訳,p.11)の対比を挙げることができる。 . 小括 対比について宮崎は「優劣の判断」を下すことではなく,「あるがままの実態を精確に把握する こと」(宮崎荘平[1993],p.2)と述べる。また,対比効果(Contrast eŠects)は「認知や判断に ともない,いつでも現れる」(Simonson & Tversky[1992],p.281)とされ,Shakespeare 劇を 見た観客は,ダイトンが指摘(Deighton, K.[前掲書],p.211)するように,劇中に示される望ま しい事象と望ましくない事象を,自ら対比していたことであろう。以上のとおり,第一に, Shakespeare 作品から対比というリスク感性を定性的に導きだすことができたと考える。 第章 Shakespeare 作品から導きだせるリスク感性(その)検証確認(Veriˆca-tion) 望ましい事象と望ましくない事象を対比し,両者の検証確認を行う,という意思決定プロセス概 要は図表11.に示すとおりである。さて,本章においては,対比(Contrast)に引き続き検証確 認27(Veriˆcation)というリスク感性の Shakespeare 作品からの導きだしを考察する。 . 検証確認(Veriˆcation)の意味

()米レーガン大統領が語る“Trust but Verify”世界平和の危機的状況の打破

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―  ― 聞 2019年 7 月17日 夕刊 3 面)するなど,1987年の全廃条約当時の“Trust”の枠組みが該当しない状況 が生まれたからである。 30 動画にて確認した(www.youtube.com/watch?v=22Lr4fgSFAY,search on 2019/07/12)。 31『ヴェニスの商人』の中では,シャイロックがアントニオは4 隻の船を所有していると語る(Shakespeare [1960],邦訳,p.25)。ただし,パサーニオは 6 隻の船を所有していると語る(Shakespeare[1960],邦訳, p.90)。ここは野口の説明にフォローし 2 隻と仮定した。 32 図表13.と14.に記す保険料は明確な算出根拠に基づくものではない。また保険の引受けも,船が無事戻っ てくるか,船が沈没してしまうか,といういわば「航洋本船の沈没のみカバー」というような保険条件を想 定して作表した。本来であれば地中海における航海と大西洋における航海では帰還する割合が異なると考え

図表. ライオンの“Trust but Verify”の考え

(筆者作成)

両雄 “Trust” 豹の提案 ライオンの“Verify”

豹 私を信じてくれ。 きみは驢馬を任命したまえ。

ライオン 豹の考えを認める。 驢馬 と 狐 を対比し,狐を任命。

―  ―

諺を援用し“Trust but Verify”と語り30,ソ連ゴルバチョフ書記長がそれに笑顔で応える。本来,

信頼と検証確認は矛盾する。しかし,1987年当時の米ソの対立による世界平和の危機的状況を打 破する決め手ともいえる対応となったのが,ロシアの諺の対立用語の援用であった。 ()ロシア寓話から Verify の意味を読みとる レーガン大統領が援用したロシアの諺の出典は明確ではない。しかし,本稿は一つの根拠として クルイロフの『ライオンと豹』の寓話をレビューする(Kr[LOV[1993],邦訳,pp.4950)。 ライオンと豹が長い戦争の決着に向け,平和条約を結ぶこととし,豹が「双方から全権委員を 任命しよう。わたしは猫を選ぶ。きみは驢馬を任命してはどうか。きみのところの驢馬は素晴 らしい。私を信じてくれ」と提案した。ライオンは豹の考えを認めたが,狐を任命した。ライ オンは「敵が褒める者は,役に立たない」とつぶやいた。

この寓話から,“Trust but Verify”,とりわけ“Verify”の意味を読みとることができる。 図表12.のとおりライオンは,豹の提案する驢馬を受け入れることはせず,自らが適任と考え る狐との対比を行い,検証確認を行い,狐を任命したのである。 . 『ヴェニスの商人』に現れる検証確認(Veriˆcation) 『ヴェニスの商人』の第一幕第一場においてアントニオが「ぼくの投資は,なにも一つの船にか かってゐるわけではない。取引先も一箇處だけではない。それに全財産が今年の商ひの運不運に左 右されるわけでもない」(Shakespeare[1960],邦訳,p.11)と語る。野口は「アントニオが述べ ていることは,当時のヴェネツィアの貿易商の一般的行為原理」(野口悠紀雄[2004],p.27)と し,アントニオが 2 隻31の船を所有していると仮定し,その戦略を図表13.と14.のように説明32

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―  ― ◯ 第一の戦略隻の所有船舶を,共に地中海にて運航集中投資 図表. 隻とも地中海にて運航 (筆者作成) 項番 航海の結果 確率 収入 保険を付保していれば 保険料 保険金 収入計 1 2 隻とも帰港 1/2 2 1.1 0 0.9 2 2 隻とも沈没 1/2 0 1.1 2 0.9 期待収入 1 期待収入 0.9 ◯ 第二の戦略地中海と大西洋に隻ずつ運航分散投資 図表. 地中海と大西洋に隻ずつ運航 (筆者作成) 項番 航海の結果 確率 収入 保険を付保していれば 保険料 保険金 収入計 1 2 隻とも帰港 1/4 2 1.1 0 0.9 2 地中海帰港 1/4 1 1.1 0.9 0.9 3 大西洋帰港 1/4 1 1.1 0.9 0.9 4 2 隻とも沈没 1/4 0 1.1 0 0.9 期待収入 1 期待収入 0.9 られることから,損害額を反映した保険料算出ではなく賭け事におけるオッズ的な考え方に依拠したとして も,図表13.と図表14.の保険料は異なるのが普通と考えるが,この項は戦略評価が目的のため,同一保険 料とした。 33『ヴェニスの商人』には保険付保に関して明記はされていないが,渡辺は「ヴェニスの商人くらいの豪商で 手広く貿易をやり,商船隊を中近東に送り出していたというから,海上保険は無論掛けていた」(渡辺紳一 郎[1963],p.204)と推論を述べる。 34『ヴェニスの商人』の中では,4 隻の船を,トリポリス,西インド,メキシコそしてイングランドに配船所有 していると語る(Shakespeare[1960],邦訳,p.25)。本稿の第二の戦略よりも,はるかに分散投資を行っ ていることになる。 35『ヴェニスの商人』の大団円において,ポーシャがアントニオに「あなたのお船が三艙,一杯船荷を積んで, ひよつこり港に歸つてきた」(Shakespeare[1960],邦訳,p.140)と語る。 ―  ― する(野口悠紀雄[2004],pp.2932)。 2 隻を共に地中海に配船(集中投資)する場合,保険付保しなければ,2 隻とも沈没すると収入 はゼロである。保険付保33すれば,期待収入は0.9と減少するが,収入の平準化を図ることができ る。2 隻を地中海と大西洋34に 1 隻ずつ配船(分散投資)する場合には,保険付保しないければ, 2 隻とも沈没35し収入がゼロとなる確率は 4 分の 1 となる。保険付保すれば,期待収入は0.9と減 少するが,◯と同様に収入の平準化を図ることができる。以上より,保険付保>分散投資>集中投 資の順に合理的であると言える。

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―  ― 36 誌的余裕の関係から2 事例とした。別稿にてより豊富な事例をとりあげる予定である。 図表. 戦略の検証確認 (筆者作成) 戦 略 第一の戦略 第二の戦略 第三の戦略 第四の戦略 期待値 1.0 0.9 1.0 0.9 確率 0.25 0.25 0.5 0.5 戦略の危険 0.25 0.225 0.5 0.45 ―  ― . 小括 ラストリーギンの「最良の(最適の)戦略は最小の危険を伴う戦略である」(Rastrigen, L. A. [1972],邦訳,p.108)との考え方を援用し,図表15.にて戦略評価を行ってみよう。◯第一の戦 略地中海と大西洋に 1 隻ずつ配船(保険なし),◯第二の戦略地中海と大西洋に 1 隻ずつ配船 (保険あり),◯第三の戦略地中海に 2 隻とも配船(保険なし),◯第四の戦略地中海に 2 隻と も配船(保険あり),との四つの戦略である。戦略の検証確認の結果は,危険の低い順に,第二の 戦略<第一の戦略<第四の戦略<第三の戦略,となる。アントニオが保険付保を行っていたかどう かは定かではないが,劇中のアントニオのセリフから分散投資という意思決定を行っていたものと 判断する。Shakespeare『ヴェニスの商人』の劇をみた観客は,船が沈むか,無事に帰還するか, という対比の構図を観て取り,次にアントニオが分散投資という検証確認のリスク感性にて「船が 沈む」ことに備える意思決定を行っていることを観て取るのである。 第章 例証 多様なリスク感性を意思決定に反映させ,望ましくない事象顕在化を防ぐリスクマネジメント実 践に援用できることを 2 つ事例36をとりあげ例証してみよう。1 つは,通常であれば問題点指摘が されることのないお巡りさんの児童警護の事例,次に多くの事故対応経験をもつ NASA の事例で ある。 . 事例()お巡りさんの視線に現れる問題点対比と検証確認,および限界と補完 2019年 5 月28日,安全とされてきたスクールバスを利用する登校中の学童らが殺傷された事件 を踏まえ,警察もパトロールの強化等を図っている。図表16.のイラストは,スクールバスに乗 るため横断歩道を渡ろうとする学童を見守るお巡りさん,とのモチイフから描いたものである。お 巡りさんの学童を見守る視線からは,学童に安心感を与えようとする気配りを窺うことができる。 しかし,昨今多発する無謀運転のようなケースや,通り魔乱入による殺傷事件に関して,果たして 防ぐ効果を十分発揮しているのかという点では問題点を指摘せざるをえない。学童に対する安全対

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―  ― 図表.スクールバスに乗る学童を見守るお巡りさん(illustrated by Okura) 37 人命が犠牲になったのはチャレンジャー号(1986年,打ち上げから73秒後に分解し 7 名の乗組員が死亡)と コロンビア号(2003年,大気圏に再突入する際,空中分解し,7 名が死亡)の二つの事故だけである。アポ ロ13号の爆発事故(1970年)では,乗組員は無事帰還した。 ―  ― 策の視点から,図表16.のお巡りさんの問題点を指摘してみよう。 (ア)お巡りさんの後方から乱入してくる通り魔や走行してくる自動車をお巡りさんは視認する ことができない。(イ)通り魔や後方から走行してくる自動車を視認できるよう,お巡りさんは学 童に正対(スクールバスを背にする)して構え,万が一にもイラスト右方から進行してくる車が減 速せず停車もしないようであれば,お巡りさんは直ちに学童を保護すべく行為できるように備える べきである。通り魔の乱入についても阻止すべく行為できるよう備えておくべきである。(ウ)そ のため,学童に対して安心感を与えようとする気配りにとどまらず,望ましくない事象と望ましい 事象とを対比させ,望ましくない事象の顕在化の予兆が見られるなら,防ぐという意思決定を行い 行為に繋げるべきである。(エ)学童が横断歩道を半分以上渡ったなら,イラスト左方から走行し てくる車や乱入してくる通り魔を視認できるよう,お巡りさんはスクールバスに正対し,対比そし て検証確認の感性を研ぎ澄まし,防ぐ行為に備えるべきである。 そして何より,(ア)から(エ)の問題点には,お巡りさんに対する指導・教育プログラムにお いて克服すべき限界が存在する可能性があり,見直しの検討が望まれる。 . 事例()NASA が大切にする多様なリスク感性,および限界と補完 NASA は「最先端科学の輝かしき成功を担ってきたが,その間に,少数ながら,痛ましい事故37 (Davenport, T. H.[2013],邦訳,pp.4548)も経験している。 ()チャレンジャー号の事故(年)の後の因果論的解明 事故後の調査委員会により,チャレンジャー号爆発は「リングのひとつが低温化で破損したこと が原因」(Bazerman[2015],邦訳,p.25)と結論づけられた。爆発という結果に時間的に先行す

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―  ― ―  ― る原因があり,その対策を怠っていたのである。 ()コロンビア号の事故(年)の後の先々を見る対応 調査委員会により「コミュニケーション不備」が指摘され,「仕事の進め方の欠陥に対処しよう という NASA の決意」(Davenport, T. H.[前掲書],邦訳,p.49)が強固なものとなり,ようや く先々を見る対応が開始されることになる。 ()両事故を踏まえ,関係者の調和を重視する対応 打ち上げ前の最終確認会議は遠隔会議にて行われていた。遠隔会議では,参加者一人ひとりが不 安を表現する「身振り手振りを見逃して」(Davenport, T. H.[前掲書],邦訳,p.48)しまいがち である。そこで「同じ場所に人々を集めて,直接顔を合わせ」討議するという対応に変更した。 ()NASA が現在大切にしている一人ひとりの主体性対比そして確認検証 NASA では「だれでも,何かかが変だと思ったら,それを指摘する責任があるし,指摘してか まわない」(Davenport, T. H.[前掲書],邦訳,p.50)と語る。 . 小括 数多くの事故を経験した NASA の取り組みには,筆者が考察を重ねてきた点が潜在する。第一 に「何かが変だ」と,リスク感性にて目の前の事象から顕在化の予兆を捉えることである。本稿が 指摘した対比に相当する。第二に「指摘する」との点である。指摘するには,本稿にて考察した評 価確認が必要である。第三に「指摘してかまわない」という点である。筆者は,現在のリスクマネ ジメントのプロセス管理の限界について指摘している。「一人ひとりの感性を主体的に活かす」と いうことは,リスクマネジメント意思決定プロセス管理の補完との考え方に繋がるものである。 第章 結論 . 本稿のまとめ 本稿の意義は,第一に,Shakespeare 作品にエリザベス朝時代の商業の発展および海運の発展が 背景として描かれていることを明確にしたことにある。Shakespeare 作品は戯曲である故,「観客 たちを楽しませることは不可欠」(Kermode, F.[前掲書],邦訳,p.93)であり,劇をみた観客一 人ひとりは楽しみながら,背景となる英国の発展と自分の今後の幸福とを重ね合わせたことを意味 する。そこで,Shakespeare の時代の商業発展について,シュンペーターの提起を援用してみよ う。大蔵[2019b]において『君主論』時代の商業発展につき,シュンぺーターの“経済”を“商 業”に置換し考察を行った。下記図表17.のとおり,シュンぺーターの提起する経済発展の 5 つ の要素が万遍なく Shakespeare 作品に現れる状況を確認することができる。 意義の第二は,筆者の一連の研究にて導きだした多様な感性をリスクマネジメントの意思決定に 反映させることについて,リスクマネジメントのプロセス管理の限界を補うもの,すなわち望まし くない事象顕在化を防ぐための補完的な役割を果たす位置づけを明確にできたことにある。

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―  ―

図表. シュンペーターの経済発展のつの要素と Shakespeare 時代

(筆者作成38)

項番 シュンペーター経済発展の5 つの要素 Shakespeare 作品に現れる記載状況(出典39,p. 数)

1 新しい財貨の登場

投資(Merch., p. 11),信用(Merch., p. 17),利子(Merch., p. 25),負債

(Merch., p. 116),譲渡(Merch., p. 121),版権独占(Shrew., p. 127),手形

(Err., p. 48),金の延べ棒(Meas., p. 84),エンジェル金貨(2H4, p. 250)

2 新しい技術の導入

大型ガリー船(Shrew, p. 72),形而上学(Shrew, p. 25),法学博士(H8, p. 94),砂時計(Cym., p. 98),戦車隊(Cym., p. 120),帳簿(Cym., p. 200), 金庫(TGV, p. 14),鍍金(3H6, p. 69),委任状(Meas., p. 11)

3 新しい販路の開拓 バーミューダ(Temp., p. 27),西インド(Merch., p. 25),メキシコ(Merch.,

p. 25),インド(Merch., p. 90),アメリカ(Err., p. 63) 4 新しい供給源40の獲得 バジリスク砲41(1H4, p. 69),砲弾(Cym., p. 28),火薬(2H4, p. 235),ピス トル(MWW, p. 119),胡椒42(MWW, p. 111),イギリス・ラシャ43(Meas., p. 16),香水(Shrew, p. 44),ダイヤモンド(Cym., p. 16),屑鉄(3H6, p. 69) 5 新しい組織の登場 枢密院44(H8, p. 18),大法官(H8, p. 143),大蔵省(TGV, p. 50),保証人 (Merch., p. 21),同業組合(Troil., p. 42),市場(LLL, p. 141),公証人 (Merch., p. 31),取引所(Merch., p. 25) 38 5 つの要素は,(Shumpeter, J. A.,[1977],邦訳,p.183)より引用。記載状況は,筆者調査。

39 作品の略表記はブルック(Brook, G. L.[1998],邦訳,pp.ivv)に拠った。Temp. は『あらし(The

Tempest)』,Merch. は『ヴェニスの商人』,Shrew は『じゃじゃ馬ならし』,Cym. は『シンベリン』,H8 は 『ヘンリー八世』,TGV は『ヴェローナの二紳士』,Err. は『間違い喜劇』,TN は『十二夜』,Meas. は『尺 には尺を』,Troil. は『トロイラスとクレシダ』,WT は『冬物語』,LLL は『恋の骨折り損』,MWW は 『ウィンザーの陽気な女房たち』,AW は『終わりよければすべてよし』,Tim. は『アテネのタイモン』, Per. は『ペリクルーズ』,Cor. は『コリオレーナス』,3H6 は『ヘンリー六世第三部』,1H4 は『ヘンリー四 世第1 部』,2H4 は『ヘンリー四世第 2 部』。 40 商品のことである。出口が「世界商品」すなわち「世界中の人々が欲しがる,あるいは必要とする商品」 (出口治明[2018],p.247)と呼んだものに相当する。 41『ヘンリー四世第 1 部』(1H4,p.69)には,最大の砲(バジリスク砲)から最小の砲(カルヴァソン砲)へ と大きさの順に名を挙げている。 42 この当時,「コショウ1 グラムが,銀 1 グラムという時代」(杉浦昭典[2010],p.39)であった。 43 三浦按針(ウィリアム・アダムス)が日本に漂着したときの帆船“リーフデ”号の積荷として「粗羅紗,珊 瑚樹,着色した硝子玉,鏡,青銅の大型大砲,小型大砲,砲弾,火薬」(鈴木かほる[2010],p.46)等が確 認されている。 44 ヘンリー8 世(14911547)の治世にトマス・クロムウェルが国の最高統治機関として枢密院を設置した。 エリザベス女王もそれを踏襲(荒井他[2000],p.214)した。大法官は枢密院第 1 位の官僚で,大蔵省(財 務府)長官は枢密院第2 位の官僚であった。 ―  ― 本稿の意義の第三は,Shakespeare 作品から対比と検証確認というリスク感性を導きだしたこと にある。望ましい事象と望ましくない事象の対比により,望ましくない事象顕在化の予兆を感じ取 り,防ぐという意思決定に反映させるため,検証確認というリスク感性により評価を行うことにつ いて,第章にて例証も行った。事例として取り挙げた NASA において,「何かが変だ」と対比し,

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―  ― 図表.商業の発展と多様なリスク感性の発展の態様(筆者作成) 45 キェルケゴールは,グリム童話を引用し,不安,すなわち感性は学ばなければ身につかない,と述べた (Kierkegaard, S. A[1951],邦訳,p.278)。 ―  ― 「指摘する」ため評価確認し,その結果は誰が「指摘してもかまわない」という仕組みが作り上げ られたことを例証した。 . これまでの多様なリスク感性の研究について 商業の発展および輸送用具の進化と多様なリスク感性について,上山の考え方(上山春平 [1972],p.82)を援用し図表18.に示す。この図表は,大蔵[2019b]にて第フェーズから第 フェーズのリスク感性を図表化したものに,第フェーズ「対比と検証確認」のリスク感性を付加 したものである。第のフェーズに「対比と検証確認」のリスク感性が現れるが,第から第フ ェーズのリスク感性も現れ,積層状態を示すのである。 さて序章にて,リスク感性は能力である,と述べた。逆に言えば,訓練し習得しなければ身につ かない45ものである。例えば,望ましくない事象をリアルに捉えることも能力の一つである。特徴 ある古典文献より導きだした多様なリスク感性を磨き上げ,望ましくない事象の顕在化を防ぐた め,意思決定に反映させることを,リスクマネジメントのプロセス管理の補完として活用すること により,より高いパフォーマンスの達成に資する,との含意を筆者の今後の研究への橋渡しとする。 参考文献 〈邦文文献〉 荒井良雄,大場建治,川崎淳之助(2000)『シェイクスピア大事典』日本図書センター 五十嵐裕子(2018)「チアダンス全米五連覇への道はこうして始まった」『到知』通巻第517号 井上ひさし(1995)『樋口一葉に聞く』こまつ座編,ネスコ Wingman, C.,(1975)『復刻版ジャパン・パンチ』18731874 第 4 巻,雄松堂書店 植島啓司(2007)『偶然のチカラ』集英社 上山春平(1972)『神々の体系』中央公論社 大蔵直樹(2018)「『徒然草』のマネジメント論的研究」『商学研究論集』第49号,明治大学大学院 大蔵直樹(2019a)「『論語』のリスクマネジメント論的研究」『商学研究論集』第50号,明治大学大学院 大蔵直樹(2019b)「多様な感性を意思決定に反映させるリスクマネジメントの研究『君主論』に基づく一考

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女房たち」(“The Merry Wives of Windsor”),「終わりよければすべてよし」(“All's Well That Ends Well”),

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参照

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