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海外ニュース 2019 年 213 号 ( 平成 31 年 4 月 11 日 ) 金子晃監修 内容 米国反トラスト法の最近の動向 1 連邦取引委員会 PET 樹脂製造のジョイント ベンチャーによる建設中の施設の買収を条件付きで承認 (2018 年 12 月 21 日 ) 2 司法省 電子商取引企業の

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海外ニュース

2019 年 213 号(平成 31 年 4 月 11 日)

金子 晃 監修

内 容

○ 米国反トラスト法の最近の動向

1 連邦取引委員会、PET 樹脂製造のジョイント・ベンチャーによる建設中の施設の買収 を条件付きで承認(2018 年 12 月 21 日) 2 司法省、電子商取引企業の元重役が価格カルテルに関与していたとして、有罪を認め たと公表(2019 年 1 月 28 日) 3 連邦取引委員会、ステープルズによるエッセンダントの買収を条件付きで容認(2019 年 1 月 28 日)

○ 欧州競争法の最近の動向

1 欧州委員会、マスターカードに対し、同社の加盟店によるより安価な越境サービスの 利用を妨げたとして、5 億 7000 万ユーロの制裁金を賦課(2019 年 1 月 22 日) 2 欧州委員会、Siemens による Alstom の買収を禁止(2019 年 2 月 6 日)

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米国反トラスト法の最近の動向

1 連邦取引委員会、PET 樹脂製造のジョイント・ベンチャーによる建設中の施設の買収 を条件付きで承認(2018 年 12 月 21 日)1 連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製造業者 3 社によるジョイント・ベンチャーが破産をした建設中の PET 製造施設を 11 億ドル(約 1210 億円、1 ドル=110 円換算)で買収する旨の計画について、本件が実施されれば、競争が減殺 されるおそれがあるとして、一定の行動的問題解消措置の実施を義務付けている同意命令 案を提示した。 PET はプラスチックポリマーであり、主としてボトル類及び食品その他の商品のための 容器の製造に使用されている。本件 PET 製造施設は、2017 年に同施設の所有者 M&G Chemicals S.A.(以下「M&G」という。)が破産申請をしたため、未完成のままである。メキシコ の会社 Alpek S.A.B. de C.V.(通称、DAK)、タイの会社 Indorama Ventures Plc(以下「Indorama」

という。)及び台湾の会社 Far Eastern New Century(通称、FENC)は、M&G の破綻手続におけ

る本件施設の売却に係る入札に参加するため、ジョイント・ベンチャーである Corpus Christi Polymers LLC(以下「CCP」という。)を結成した。破産裁判所は 2018 年 3 月、本件施 設の完成を目指している上記 3 社によって結成されたジョイント・ベンチャーへの同施設 の売却を承認した。 FTC の申立書によると、是正措置が講じられなければ、本買収計画は寡占化された北米 の PET 樹脂製品市場における競争の実質的減殺につながるおそれがある。同意命令案で定 められている条件に基づき、DAK、Indorama 及び FENC は、当該資産に対する共同所有権を 利用して市場支配力を単独で又は共同して行使しないよう、またジョイント・ベンチャー の正当な目的の達成のために必要である以上に競争上重要な情報を伝達しないよう義務付 けられた。 建設が終了したら、CCP の工場は PET のみならず、PET の生産に用いられる主要な投入材 である精製テレフタル酸(PTA)の生産にも使えるようになる。より効率的に設計されている 本件施設の完成は、北米における PET と PTA の生産能力と生産量の実質的な増大、ひいて は消費者利益の増進に繋がるであろう。 FTC は本件申立書を発出し、同意命令案を受け入れることを 5 対 0 で承認した。同意命 令案は、2019 年 1 月 22 日までの 30 日間のパブリックコメントを経て、FTC による確定命 令となる予定である。 2 司法省、電子商取引企業の元重役が価格カルテルに関与していたとして、有罪を認め たと公表(2019 年 1 月 28 日)2

1 Press Release, Federal Trade Commission, FTC Imposes Conditions in Joint Venture

among Three Producers of PET Resin, December 21, 2018.

2 Press Release, Department of Justice, Former E-Commerce Executive Pleads Guilty to

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司法省は本日、Daniel William Aston がオンライン上で販売されたポスターに係る価格 カルテルに関与していたとして、2019 年 1 月 17 日に有罪答弁を行ったと公表した。英国 の住民及び国民である Aston 氏は、2015 年 8 月 27 日にカリフォルニア州北部地区の大陪 審によって正式起訴された。Aston 氏は 2018 年 5 月にスペインで逮捕されるまで、逃亡し ていた。逮捕後、同氏は 5 か月間スペインで拘留され、その後に米国の管轄権に服し、起 訴状に記載されている事実に対する認否を行うことに合意した。

Aston 氏は、英国バーミンガムに本社を置く英国会社 Trod Ltd.(通称、Buy 4 Less、Buy For Less、Buy-For-Less-Online)の元役員であり、また同社の株式の一部を保有する出資者で もある。起訴状には、同氏のみならず同社も被告人として表示されている。Trod Ltd.は 2016 年 8 月 11 日に当該価格カルテルに関与していた旨の有罪答弁を行った。Aston 氏は、 遅くとも 2013 年 9 月から 2014 年 1 月にかけて、米国においてアマゾンのマーケットプレ イスで販売された一定のポスターの価格を決定していたと認めた。有罪答弁を行った後、 Aston 氏は判決で 6 か月の禁固刑の言い渡しを受けた。スペインでの拘留期間は当該刑期 に加算された。Aston 氏は釈放後、残りの刑期を監視下で過ごすこととなった。 司法省反トラスト局マキン・デルラヒム局長は以下の声明を発表した。 「本日の公表は、価格決定アルゴリズムを使用したインターネット取引業者に対する初 の摘発事案での成功例を示すものであり、また提訴を免れようとしている逃亡者に対し警 告を与えるものでもある。オンラインで買い物をするアメリカ人は、全ての一般消費者と 同様、共謀のない自由経済の恩恵を受けられるべきである。反トラスト局とその提携先の 法執行機関は、価格決定アルゴリズムを含め、新しい複雑な方法を用いて共謀に関与する 者について、その者がどこに居ようとも、捜査・訴追することを決意している。」 訴状によると、Aston 氏と仲間の共謀者たちは、米国においてアマゾンのマーケットプ レイスを通じて販売される一定のポスターの販売価格について話し合いを行い、また当該 ポスターの価格を決定、引上げ、維持また安定化することに合意した。当該協定を実施す るため、本件被告人と仲間の共謀者たちは、一定のポスターの販売価格を調整するため、 特定の価格決定アルゴリズムを導入することに合意した。 本件提訴は、オンラインウォールデコ産業における価格カルテルの反トラスト捜査から 生じたものであり、反トラスト局サンフランシスコ事務所によって、FBI(連邦捜査局)サン フランシスコ支局の協力を得た上で行われたものである。 3 連邦取引委員会、ステープルズによるエッセンダントの買収を条件付きで容認(2019 年 1 月 28 日)3 連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、オフィス用品供給者の Staples, Inc.(以下「ステ ープルズ」という。)が同業の Essendant Inc.(以下「エッセンダント」という。)を 4 億 8270 万 ドル(約 530 億 9700 万円)で買収する旨の計画について、本件が実施されると、中小企業向 けオフィス用品の供給市場における競争が減殺されるおそれがあるとして、ファイヤーウ

3 Press Release, Federal Trade Commission, FTC Imposes Conditions on Staples’

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- 3 - ォールの創設等を義務付けている同意命令案を提示した。 FTC との同意命令案の下、未公開株式投資企業 Sycamore Partners によって所有されて いるステープルズは、同社の法人向け販売部門とエッセンダントの卸売販売部門との間に ファイヤーウォールを設けなければならない。このファイヤーウォールの設置によって、 ステープルズは、エッセンダントの顧客などの競争上重要な情報にアクセスすることがで きないようになる。 ステープルズは米国における最大規模の垂直統合型のオフィス用品再販業者であり、米 国において 2 社しか存在しないオフィス用品のスーパーストアの中の一社である。エッセ ンダントは、米国における最大規模のオフィス用品の卸売業者であり、とりわけ事務用品、 清掃製品、休憩室用品、技術用品、オフィス家具、工業製品及び自動車の修理部品を販売 している。同社は事務用品の再販業者に対し一連のオフィス事務用品を販売しており、ま た流通センターとトラックのネットワークを所有している。 同意命令案と共に申請された申立書で、FTC は、ステープルズ、及びエッセンダントの 顧客である独立系再販業者が中堅企業向けオフィス用品の販売を巡り競争していると主張 した。申立書によると、本件買収案が実施されれば、ステープルズは、エッセンダントの 顧客である再販業者とまたその顧客である最終顧客の事業に関する情報へのアクセスを有 することになる。その結果として、ステープルズは、最終顧客が行う入札にライバルたる 同再販業者と共に参加をすれば、より高い落札価格を提示できるようになるとされている。 同意命令案は、エッセンダントの顧客である再販業者とまたその顧客である最終顧客の 事業に関する情報について、卸売機能を果たしているステープルズの従業員にのみそれに 対するアクセスを認めている。 FTC は本件申立書を発出し、同意命令案を受け入れることを 3 対 2 で承認した。Simon 委 員長、Phillips 委員及び Wilson 委員は声明を出した。Wilson 委員は別の声明も出し、ま た Chopra 委員と Slaughter 委員は反対声明を出した。同意命令案は、2019 年 2 月 27 日ま での 30 日間のパブリックコメントを経て、FTC による確定命令となる予定である。

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欧州競争法の最近の動向

1 欧州委員会、マスターカードに対し、同社の加盟店によるより安価な越境サービスの 利用を妨げたとして、5 億 7000 万ユーロの制裁金を賦課(2019 年 1 月 22 日)4 欧州委員会は、マスターカードの加盟店が単一市場内の他の加盟国に所在する銀行のよ り安いサービスを受けられないようにしていたとして、マスターカードに対し、5 億 7056 万 6000 ユーロ(約 713 億円、1 ユーロ=125 円換算)の制裁金を賦課した。 マスターカードは、発行カード数と取引価額の点で欧州経済領域(EEA)における二番手の カード運営事業者である。銀行は、マスターカードの仕組みの下、共通のカードブランド である Mastercard と Maestron の下で展開されているカード関連支払サービスを提供して いる。マスターカードは、カード発行銀行によるカード保有者へのカード提供、カードに よる支払取引の実行、また小売店側の銀行への資金の移動を行うためのプラットフォーム として機能している。 カードによる支払は、国内取引、及び越境取引又はインターネット取引の双方において、 重要な役割を担っている。欧州の消費者と事業者は、非現金決済の半分以上をカードで行 っている。 顧客がデビットカード又はクレジットカードを店舗又はオンラインで使用する場合、小 売店側の銀行(取引銀行)は、カード保有者側の銀行(発行銀行)に「インターチェンジ・フィ ー」と呼ばれる手数料を支払っている。小売店側の銀行は、当該手数料を小売店に転嫁し、 当該小売店は、カードを使用していない者を含む全ての顧客に向けられた最終価格に、他 の費用と同様に、当該費用を上乗せしている。 マスターカードの規則は、取引銀行に対して、小売店が所在する国のインターチェンジ・ フィーを適用することを強制していた。インターチェンジ・フィー規則において上限(訳注: インターチェンジ・フィーの上限は、デビットカードについては取引価額の 0.2%、クレジットカー ドについては同じく 0.3%)が導入された 2015 年 12 月 9 日の前、インターチェンジ・フィー は EEA 加盟国ごとに大きく異なっていた。その結果、インターチェンジ・フィーが高額の 国に立地する加盟店は、他の加盟国に立地する取引銀行のより安いサービスを利用するこ とができなかった。 欧州委員会は 2013 年 4 月に Mastercard に対する正式な反トラスト調査を開始し、国境 を越えた加盟店・取引銀行間取引に関する同社の規則が EU 競争法に違反しているか否か について、調査を開始した。欧州委員会は 2015 年 7 月に異議告知書を発出した。 欧州委員会の調査は、当該越境取引に関する規則が存在していため、小売店がカード支 払に対しより廉価なサービスを自由に探せた場合よりも、より高額な手数料を支払ってい たということを明らかにした。 上記に基づいて、欧州委員会は、マスターカードの規則が EU 競争法に違反して小売店に

4 Press Release, European Commission, Antitrust: Commission fines Mastercard 570

million euros for obstructing merchants’ access to cross-border card payment services, 22 January 2019.

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- 5 - よるより安い銀行サービスの利用を妨げ、また国境を越えた銀行間の競争を制限したとの 結論に至った。 よって、欧州委員会はマスターカードに対して制裁金を賦課することを決定した。 マスターカードの調査 マスターカードは、違反事実と EU 競争法違反を認めることにより、欧州委員会の調査に 協力した。欧州委員会は、上記協力を理由に同社の制裁金を 10%減額した。 制裁金 欧州委員会は、同委員会の 2006 年制裁金ガイドラインに基づいて制裁金を算出した。制 裁金の水準を決定するに際し、欧州委員会は、違反行為に関連する売上高、違反行為の重 大性及びその実施期間、並びに同社の当該調査への協力の事実を考慮した。 欧州委員会がマスターカードに賦課した制裁金の総額は、5 億 7056 万 6000 ユーロ(約 713 億円)である。 背景 欧州委員会は、マスターカードの規則が 2015 年 12 月 9 日までの間、EU 運営条約 101 条 に違反していたとの結論に至った。 欧州委員会は、マスターカードとそのライセンシー(カード保有者向けにマスターカードそ の他のブランドのカードを発行するか、あるいは加盟店業務を行うかの何れかに従事している者)が 一体となってジョイント・ベンチャーを形成しているとの判断を下している。 2 欧州委員会、Siemens による Alstom の買収を禁止(2019 年 2 月 6 日)5 欧州委員会は EU 合併規則に基づき、Siemens による Alstom の買収を禁止した。本件買 収計画が実施された場合、鉄道信号システムと超高速鉄道車両のそれぞれの市場において 競争が減少するおそれがあった。両当事会社からは、かかる懸念に応えるだけの十分な問 題解消措置の提案がなされなかった。 本日の決定は、Siemens と Alstom の交通設備とサービス事業を統合しようとしていた本 件買収計画に対し、欧州委員会が行った詳細調査を経たものである。本計画は、様々な種 類の鉄道と地下鉄信号システム、並びに鉄道車両の欧州での最大の供給者 2 社の経営統合 を図っていた。両当事会社はまた全世界においても主導的地位を有している。 本件買収計画は、複数の信号システム市場において明白な主導的事業者及び超高速鉄道 車両部門において支配的な事業者の創設につながる蓋然性があった。本計画は、両分野に おいて競争を著しく減少させ、鉄道事業者と鉄道運営会社を含む顧客から製品などの選択 肢を奪うものであった。 欧州委員会は、詳細調査の過程で顧客、競争者、事業者団体及び労働組合からの苦情の

5 Press Release, European Commission, Mergers: Commission prohibits Siemens’ proposed

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- 6 - 申立てを受けていた。また欧州委員会は、欧州経済領域(EEA)における複数の国の競争当局 からの否定的なコメントも受けていた。 利害関係者は、本買収計画が実施されれば、信号設備と超高速鉄道車両の両部門におけ る競争が著しく減少するとともに技術革新が低迷することで、小規模な競争者が市場から 排除され、なおかつ製品価格が上昇し、また顧客にとっての選択肢が減少するおそれがあ るとの懸念を有していた。両当事会社には、上記懸念に応えうる十分な問題解消措置を提 案するという意向がみられなかったため、欧州委員会は欧州の鉄道産業における競争を保 護すべく、本件買収を阻止することとした。 欧州委員会によれば、真の欧州鉄道市場の創設は、欧州鉄道列車統一制御システム

(European Train Control System、ETCS)の基準に合致した信号システムを競争価格で入手し うることに大きくかかっている。本基準に合致した信号システムへの投資により、列車は 加盟国間の国境を越えて安全かつ円滑に運行できるようになるだろう。かくして鉄道車両 への新たな投資は、より気候に配慮した、環境の点から持続可能な交通施設への移行の鍵 となる。 欧州委員会の懸念 欧州委員会は、本件買収案が実施されれば、2つの分野における有効競争が大きく阻害 されるおそれがあるとの懸念を有していた。それらは、(i)鉄道と地下鉄の安全運行の確保 に重要な衝突防止のための信号システム、及び(ⅱ)時速 300 キロ以上で運行する超高速鉄 道列車の分野である。 欧州委員会の調査は、次のことを明らかにした。 ― 信号システムについては、本件買収案が幹線と地下鉄用の複数の信号市場から有力な 競争者を排除するものであった。 ・ 統合後の企業は、幹線鉄道用の幾つかの信号市場、とりわけ EEA における ETCS 自動列 車保護システム(列車に装備されているシステムと軌道に設置されている地上装置の双方を含む) と、複数の加盟国に所在する独立のインターロッキング・システムにおいて、明白な主導 的事業者となっていたであろう。 ・ 地下鉄用の信号市場については、統合後の企業がコミュニケーションベースの列車制 御(Communication-Based Train Control、CBTC)装置(無線を用いた列車制御システム)を用いた最 新の地下鉄信号システムの主導的な事業者となっていたであろう。 ― 超高速鉄道車両については、本件買収案が EEA においてこの種の車両を製造する最大 規模の事業者 2 社のうちの 1 社を消滅させることにより、供給者数を減少させるものであ った。統合後の企業は、EEA 域内と、(開かれた競争が行われていない)韓国、日本及び中国を 除く国々から構成されるより大きな市場において極めて高い市場占拠率を有していたであ ろう。また、統合後の企業は、競争を大きく阻害し、また欧州の顧客を害していたであろ う。両当事会社は、本件取引が合併固有の効率性をもたらす蓋然性があるということを示 す具体的な根拠を示さなかった。 上記の全ての市場において、残存することとなっていた競争者からの競争圧力は、有効 競争を確保する上で十分なものとなるとは考えられていなかった。 欧州委員会は当該調査の一環として、世界における競争の状況についても慎重な検討を

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- 7 - 重ねた。とりわけ欧州委員会は、中国国内における供給者の母国市場外での将来における 国際的な潜在競争について、調査をした。その結果は以下のとおりである。 ・ 信号システムに関しては、欧州委員会の調査は、中国における競争者が現在 EEA 市場 に存在せず、当該競争者が今日まで入札に参加しようとしたことさえなく、その結果とし て、当該競争者が欧州の施設運営者にとって信頼性のある供給者となれるのに長時間かか るとのことを明らかにした。 ・ 超高速鉄道車両に関しては、欧州委員会は、中国からの新規参入者が予見可能な将来 において統合後の企業に対する競争的牽制力となるとは極めて考えにくいとの判断を下し た。 両当事会社の提案した問題解消措置 合併当事者が提案する問題解消措置は、欧州委員会の競争上の懸念に永続的に応えうる ものでなければならない。合併当事者間の直接競争の消失のために競争上の懸念が生じる 場合、構造上の売却措置を伴う問題解消措置はその他の措置より一般には望ましい。当事 会社によって提案され、欧州委員会によって容認されたこの種の構造上の措置としては、 BASF による Solvay のナイロン事業の買収、Gemalto による Thales の買収、Linde と Praxair との合併、GE による Alstom の発電と送電施設の買収、及び Holcim による Lafarge の買収 がある。 しかしながら、本件では、両当事会社から提案された問題解消措置は欧州委員会の競争 上の懸念に応えているものではなかった。すなわち、 ― 幹線鉄道用の信号システムについては、提案のあった問題解消措置は Siemens と Alstom の資産を複雑に混ぜ合わせたものを伴っていた。一部の資産は全体ないし部分的に 移転され、他の資産はライセンス又は複製されることとなっていた。事業と生産拠点が分 離されることとなっていたが、人員については移転される場合と移転されない場合があっ た。さらに、当該資産の購入先は、数多くのライセンスとサービス協定の実施・更新につ いて、統合後の企業に依存し続けなければならなかった。その結果、提案のあった問題解 消措置は、購入先が統合後の企業に対して有効かつ独立して競争しうるような将来性のあ る独立した事業の創設に繋がるものではなかった。 ― 超高速鉄道車両については、両当事会社は超高速では運行できない車両(Alstom の Pendolino)の売却、又は Siemens の Velaro 超高速技術のライセンス付与をする旨を申し出 た。本ライセンスは多くの制限的条項を含んでいた上、技術の切り出しを条件としていた が、それは実施権者に対し競合関係にある超高速鉄道車両を開発するという能力と動機を 与えるものではなかった。 欧州委員会は、提案のあった問題解消措置について市場参加者から意見の提出を求めた。 両分野についてのフィードバックは否定的であった。 これは、Siemens が提案した問題解消措置は深刻な競争上の懸念に十分応えられるもの でなく、また鉄道運行者と施設管理者にとっての価格の高額化と選択の狭まりを阻止する のに十分なものでもないという欧州委員会の見解を裏付けるものであった。 したがって、欧州委員会は提案された取引の実行を阻止した。

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- 8 - 当事会社と商品 Siemens はドイツを本拠に複数の産業分野において全世界的に事業を展開している。同 社の運輸部門のポートフォリオには鉄道車両、レール・オートメーションと信号システム、 鉄道電化システム、道路交通技術、情報技術ソリューションとともに、乗客と貨物の鉄道・ 道路による運送に関するその他の製品とサービスが含まれている。 Alstom はフランスを本拠に鉄道輸送事業を全世界的に展開している。同社は、幅広い交 通ソリューション(高速鉄道から地下鉄、トラムまた電気バスに至るまで)と関連サービス(維持 管理と近代化)とともに、信号ソリューション、乗客とインフラ、鉄道電化システム、及び デジタルモビリティに関する製品を提供している。 (お問い合わせは、多田 英明・東洋大学法学部教授 tada@toyo.jp、又は佐藤 潤・法学者/慶應義 塾 大 学 産 業 研 究 所 共 同 研 究 員 / ク レ ド 法 律 事 務 所 提 携 ニ ュ ー ヨ ー ク 州 弁 護 士 jun_sato02@yahoo.co.jp までお願いします。)

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