(別紙様式1)
平成20年度「きのかわ学力向上研究事業」事業報告書
1 学校の概要 学校名 紀の川市立 粉河小学校 学年等 1年 2年 3年 4年 5年 6年 特別支援 合計 教員数 学級数 2 2 2 2 3 3 2 16 児童生徒数 49 65 64 72 86 81 4 421 21 2 研究のねらい (1)研究主題 次代をになう地球っ子の育成をめざして ~コミュニケーション能力の向上から広がる学び~ (2)主題設定の理由等 21世紀社会では、環境問題をはじめとしたさまざまな問題が山積みとなっている。そうした社 会で必要となってくるのは、論理的な感性を働かせながら問題解決の方法を探り、自分の考えを自 分の言葉で表現する能力、すなわちコミュニケーション能力である。 本校では、平成 14 年度から「総合的な学習の時間」の理念に沿って、ALT を活用した楽しい英 語活動を創ってきた。さらに平成 17・18 年度は文部科学省指定「小学校英語活動地域サポート事 業」、平成 17 ~ 19 年度「6県共同開発モニター校事業」、平成 19 年度には県教育委員会指定「イ ングリッシュパワーアッププログラム事業」を受け、英語活動を通してコミュニケーション能力の 向上に努めてきた。 今年度は英語活動で培ってきたコミュニケーション能力をさらに他教科にも広げ言語活動の充実 を、確かな学力の構築・個に応じた指導へと展開させていきたいと考え、本主題を設定した。 研究体制としては、今年度は学力向上推進部を立ち上げ、さらに活動を具体的に進めるため、外 国語活動研究部・確かな学力研究部・個に応じた指導研究部のいずれかに全教員が所属する体制を とった。各部会が互いに連携しながら、校内研究を進めた。 3 研究の経過 4 月 職員英語研修(着任教員対象) 6県共通教材の活用方法・機械操作等 職員会議 各研究部会 指導体制の編成・年間計画の作成等 学年主任会・英語部会 コミュニケーション能力の評価規準作成 5 月 きのかわ学力向上研究事業交流会 6 月 職員英会話講座 7 月 外国語活動研究部会 指導案検討 授業研究 県、市教委学校訪問 第 6 学年〔外国語活動〕 学年部会 ・各研究部会・職員会議 1 学期のまとめ・成果と課題 8 月 確かな学力研究部・個に応じた指導研究部 全国学力診断テストの考察① 9 月 職員研修 外国語活動導入に向けて各研究部会 授業研究・指導案検討・算数科における教材研究 10 月 岡山県御南中学校区英語教育成果発表会に参加(1 名) 岡山市立西小学校 指導委員訪問 第 4 学年〔算数科〕 外国語活動研究部会・職員会議 英語アンケートの見直し 英語アンケート実施 第3~6学年 外国語活動研究部会・職員会議 英語アンケート集計・分析 各研究部会 授業研究・指導案検討・国語科における教材研究 校内授業研究 第2学年〔国語科〕 11 月 学年部会 ・各研究部会・職員会議 1 学期のまとめ・成果と課題 確かな学力研究部・個に応じた指導研究部 県学力診断テストの考察① 12 月 全国小学校英語活動実践研究大会に参加(2 名) 京都市立藤ノ森小学校・高倉小学校 1 月 学年部会 ・各研究部会・職員会議 研究のまとめ 外国語活動研究部会 来年度の方針について 学年部会・職員会議 全国・県学力診断テストの考察② 2 月 職員研修 講師…伊藤昭作先生「外国語活動必修に向けて」 3 月 学年部会 ・各研究部会・職員会議 総括 4 研究の具体例 〔外国語活動〕 (1)時間の設定 ・第1,2学年…学級活動の時間に位置づけて、月2回、年間17時間 JET派遣のALTとのTTによる活動 ・第3,4学年…総合的な学習の時間に位置づけて、毎週1時間、年間35時間 隔週ごとに、JET派遣のALTとのTT,本校JTEとのTTによる活動 ・第5,6学年…総合的な活動の時間に位置づけて、毎週1時間、年間35時間 JET派遣のALTとのTTによる活動 (2)研究内容 ①担任主導の授業 本校では、個に応じた指導を進めるため、全学年におい て担任主導の授業を行ってきた。年間指導計画に沿いなが らも、子どもの興味関心や実態に応じて、担任がアプロー チの仕方に工夫を持たせて授業を計画し、進めていく。 ただし、Native English をふんだんに聞かせることも重要で あるので、ALTとの多様な指導形態も取り入れた。担任の 計画立案した内容でズムーズに授業が進行できるよう、各学 年ごとのALTとの打合せの時間も、必ず週1回を確保した。 担任主導の TT 授業〔5 年〕
②教材教具の工夫 本校では、第3学年から第6学年まで、6県共同開発教材 を使用してる。ただし、全てをそのまま使用するのではなく、 子どもの興味関心や実態に応じてアレンジしたり、自作教材 を使用したりして授業を進めた。共通教材と自作教材の使用 は、中学年では5:5,高学年では2:8の割合であった。 前年度までに作成した自作教材もたくさんあるが、同じ学年 でも子どもの実態が違うので、今年度もアレンジを加えたり、 新たにたくさんの教材を工夫して作成した。 ③教員の英語力向上・教師力向上 教員の英語力向上を図る目的で、今年度も職員英会話講座を開催した。前年度までに習得し ている Classroom English を再度復習するだけでなく、教育現場以外でも使用できる英会話 も学習した。これは、教員の英語力向上につながるだけでなく、ALTとのコミュニケーショ ンを深めることにもつながった。 また、新学習指導要領の改訂により、平成23年度より外国語活動 が導入される。それに伴い、本校では来年度より先行実施することに し、全職員対象に外国語活動導入に向けての学習会もおこなった。あ わせて、元中学校教諭の伊藤昭作先生を講師に迎え、小学校における 外国語活動の在り方、今後の展開等についてご講義いただいた。 ④小中連携 今年度は粉河中学校の英語担当の先生方に第1学年・第6学年の授 業を参観していただき、交流することができた。 〔確かな学力〕 (1)研究内容 本校がこれまで取り組んできた外国語活動でのノウハウを他教科の授業や教材つくり、指導観に まで生かしていくことを目標とした。「書く能力」「読む能力」「科学的な思考」「観察・実験の技 能・表現」に見られたこれまでの課題を克服するためにも、まずは、長文を抵抗なく読んだり、自 分の考えを相手にわかるように書いたり、自分の言葉で説明したりする力を地道な指導でこつこつ 積み上げていこうとの共通理解のもと、全学年で取り組んだ。 コミュニケーション能力の向上を目指して、子どもの実態に応じて身に付けさせたい力を各学年 で1~2項目設定し、各教科や朝の会等学校生活のあらゆる機会を捉えて計画・立案し、実行して きた。また、学期ごとに成果と課題をチェックしながら修正し、指導の工夫・改善に努めた。主な 取組は以下の通りである。 ①国語科 ・漢字の博士試験を目標に …年2回実施。自分の選んだ級の合格を目指して、子ども達が積 極的に自分で学習を進められるよう、プリント作成等の支援を 行った。 ・1分間スピーチ・一言日記…朝・終わりの会を利用し、自分の想いや時事問題について発表 したり、毎日継続して一言日記を書いたりしてきた。
My birthday is…
ICT を活用した教材〔6 年〕 中学校教員も参加〔6 年〕・読書の継続 …朝の読書では、「みんなで・好きな本を・ただ読むだけでよい」 を原則とし、静かで落ち着いた雰囲気で一日が始められるよう に設定している。低学年では、担任以外の教員が読み聞かせを 実施する機会も多くとった。読み聞かせボランティアにも協力 してもらい、1 年から 6 年まで学年に応じた読み聞かせにも取 り組んだ。 ②社会科 総合的な学習の時間で取り組んできた学習形態の工夫を生かして、調べる段階から発表する段 階まで、一人ひとりが、またグループで協力して、責任を持って自分の考えをまとめ上げた。 第6学年では、各単元終了後に単元ごとの感想や学習したことに対する自分の考えを文章化し た。また、小学生新聞等を利用して「定額給付金」等の時事問題を取り上げ、自分の考えを明ら かにするなど、応用的な学習にも取り組んだ。 ③算数科 ・指導体制の工夫…第3、4学年において、加配教員と担任による TT 授業をおこなった。話 し合い活動を多く取り入れ、教員がそれぞれのグループの支援にあたった。 ・計算タイム …週1回程度、放課後など各学年に応じて計算を中心とした学力補充の時間 をとった。 ・学習感想 …各単元終了後に第6学年で実施。また、全国学力テストB問題的なオリジ ナルの発展問題を作成し、解き方・考え方を図などを用いて文章で説明す る活動を、継続して取り組んだ。 ④理科 第3,5,6学年において専科で指導した。ICT の活用を容易にするため、理科室にコンピュ ータを設置し、効果的に活用して学習の幅を広げた。 第 1 学年の実践例
〔個に応じた指導〕 (1)研究内容 日頃から担任がアンテナを高くし、子どもの様子、変容を見取っている。そのため、支援を要す る子どもに対しては、特別支援学級以外の子どもであっても、その都度必要に応じて部会を開いて 話し合い、1対1の個別指導をおこなうことができた。 ①指導体制の工夫 ・学習ボランティアとして、和歌山大学の学生が TT 要員 として指導補助にあたった。 ・ゲストティーチャーとして、地域の方々に協力を仰ぎ、 活動の幅を広げた。 ②夏休み学習サポートプラン 昨年度より、夏休みに入ってすぐの4日間、朝の涼し い時間帯に1~2時間設定し、学習会を開いている。参 加は自由(事前に申し込み)であるが、今年度は昨年度 より38名増え、のべ626名の参加でおこなった。夏休みの宿題の他、子どものつまずきに 合わせたプリントなどから課題を自由に選択し、少人数または個別指導の形態で指導した。各 教室には2~3名の指導者がついたが、それ以外にも子ども達同士の「教え合い」体制が自然 とでき、意欲的かつ和やかなムードで学習支援が行えた。 ③粉小タイム・フレキシブルタイムの活用 5 成果と課題 本校の外国語活動研究が始まって、今年度で 9 年を経ることとなった。外国語活動は指導要領がま だ確定していなかったことを考えると、他教科に比べ、指導体制の工夫や教材教具の工夫などに苦労 したが、手探り状態の段階から少しずつ実践を積み上げ、今では粉河小学校独自のカリキュラムや評 価規準が整ってきている。子ども達の関心も昨年同様に高い。 昨年度よりの課題に「ゲームが楽しいだけで終わっていないか」という点が挙げられていたため、 今年度は児童アンケートの設問を一部修正し、使用頻度の高い英語表現等の聞き取りを実施した。そ の結果、楽しく活動できている学年ほど定着が弱い事がわかった。(別紙資料1)この結果を踏まえ、 英語への興味関心を持続させながら定着を図る指導法の工夫改善が、今後も引き続き必要であるとい う事が明らかとなった。。 今年度は、コミュニケーション能力の向上を、他教科だけでなく朝の会等あらゆる活動に広げて取 り組んだ。「読むこと」「聞くこと」「話すこと」「書くこと」等を意識して指導した結果、県学力テ ストや全国学力テストでは昨年度よりもよい成果が出ている。第5学年における国語科2年間の変容 を見ると、「書く活動」が昨年度より定着しているという結果が出た。(別紙資料2)子ども達を目 の前にしても、人前で話すことや文章を書く事への抵抗が薄れてきているように思われる。ただし、 定着の弱いという結果の出た部分もあるので、今後も、題意を正確に読み取り、粘り強く考え、わか るように書くといった一連の思考の流れが定着するよう、手だてを修正・改善し、全職員共通理解の もと、指導を継続していく。 学習ボランティアと TT〔4 年〕