次世代エネルギー技術実証事業成果報告
【平成 26 年度(補正予算に係るもの)
】
事業者名 :学校法人早稲田大学 補助事業の名称:C-3.ネガワット取引に係る共通基盤システムの開発・調査・研究・接続実 証 マルチエリア対応大規模スケーラブル DR 共通基盤システムの研究 事業期間:平成 27 年 4 月から平成 28 年 3 月 複数の電力事業者、複数のアグリゲータが複数エリアの需要家にまたがって DR サービスを 行う環境下において、スケーラブルかつ効率的にアグリゲータや需要家を収容し、構成の変 更にも柔軟に対応し得るマルチエリア対応大規模スケーラブル DR 共通基盤技術を確立すると ともに、実際に本技術を適用した DR 共通基盤システムを構築し、C-1 事業で採択された電力 事業者とアグリゲータを収容することによって、フィージビリティとスケーラビリティの検 証を行う。また、このような大規模 DR 環境下で OpenADR2.0b 及び JSCA デマンドレスポンス・ インタフェース仕様書に則って、実サービスで想定されるレベルの運用性を実現し得ること を検証し、課題抽出することを目的とする。 実証事業の目的・目標 上記の目的・目標を具現化するにあたり、以下に示す事業内容を展開する。 ① 複数の電力事業者、複数のアグリゲータが存在する環境下で、スケーラブルかつ効率的 にアグリゲータを収容し、複数電力事業者と契約するアグリゲータがなるべく少ない設 備コストで各々の電力事業者からの DR メッセージを受信できるようにするとともに、 非常に多数のアグリゲータが参加する場合でも、スケーラブルかつ電力事業者側の負担 が少ない形で収容することを可能とするマルチエリア対応アーキテクチャの検討。 ② DR メッセージにエリアや電力事業者を識別する情報を付加し、DR メッセージを受信し たアグリゲータが適切に需要家を制御するためのエリア識別制御方式の検討。 ③ アグリゲータ側のマルチエリア対応方式や、希望する通信方式に応じて、効率的な収容 構成を実現するマルチエリア・アグリゲータ収容方式の検討。 ④ 以上のアーキテクチャ、実現方式を実装したマルチエリア対応大規模スケーラブル DR 共通基盤システムの構築及び、C-1 事業に採択された電力事業者及びアグリゲータの収 容による、フィージビリティ及びスケーラビリティの評価と課題抽出。 ⑤ C-1 事業採択事業者との連携による、上記 DR 共通基盤上での OpenADR2.0b 及び JSCA デ マンドレスポンス・インタフェース仕様書に則った DR サービス運用性の評価検証と課 題抽出。 実証事業の概要本事業で構築した、マルチエリア対応大規模スケーラブル DR 共通基盤システムの構成を図 1 に示す。なお、アグリゲータ(全 21 社)と需要家は数が多いため、省略して記載した。 図1 マルチエリア対応大規模スケーラブル DR 共通基盤システムの構成 電力事業者 収容ノード (NTTコム) 電力事業者 収容ノード (東芝) アグリゲータ 収容ノード (東芝) アグリゲータ 収容ノード (三菱電機) アグリゲータ 収容ノード (日立) 東京電力 需要家群 中部電力 需要家群 関西電力 需要家群 アグリゲータ L マルチエリア対応大規模スケーラブルDR共通基盤システム アグリゲータ M アグリゲータ N 東京電力 中部電力 関西電力 アグリゲータ 収容ノード (NTTコム) 実証事業のスケジュール 実証事業の成果
本事業の成果は下記の通り。 ① 一般電気事業者 3 社とアグリゲータ 21 社が参加し、アグリゲータが複数電力エリア の需要家にまたがって DR サービスを行うマルチエリア環境の C-1 事業において、ス ケーラブルかつ効率的にアグリゲータや需要家を収容し、構成の変更にも柔軟に対応 し得るマルチエリア対応大規模スケーラブル DR 共通基盤技術の設計と構築を行っ た。 具体的には、アーキテクチャ上の設計目標として下記の 4 点を定め、 マルチエリア対応とスケーラビリティの実現 アグリゲータ VEN における構成・通信方式の多様性の許容 DRAS 機能に対する機能制約の最小化 DR 共通基盤システム内オーバーヘッドの最小化 これらの目標を満たし得るアーキテクチャとして、電力事業者を収容し DR イベント の運用管理を行う複数の電力事業者収容ノードと、アグリゲータを収容し DR メッセ ージのルーティングとプロトコル変換を行う複数のアグリゲータ収容ノードを、XMPP 等の PUSH 型のトランスポートメカニズムによってメッシュ型にクロス接続する、2 階層のマルチエリア対応アーキテクチャを考案した。 また、本アーキテクチャを実現するために、下記の技術方式を考案した。 電力事業者収容ノードが DR イベントを実施する電力エリアを識別するためのエ リア識別子(eiTarget.resourceID)を DR メッセージに付加し、アグリゲータ 収容ノードとアグリゲータがエリア識別子に基づいて、DR メッセージのルーテ ィングを行うエリア識別制御方式。 アグリゲータ収容ノードが、配下のアグリゲータの採用する任意の VEN 構成と 任意の OpenADR2.0b トランスポートメカニズムを受容し、DR メッセージをプロ トコル変換し転送するマルチエリア・アグリゲータ収容方式。 以上のようなマルチエリア対応アーキテクチャ、エリア識別制御方式、マルチエリ ア・アグリゲータ収容方式を実装したマルチエリア大規模スケーラブル DR 共通基盤シ ステムを、2015 年 8 月開始の C-1 事業の実証に間に合うようスケジュール通り構築し た。 ② C-1 事業の実証開始に先立ち、2015 年 7 月第 1 週から C-1 事業の全電力事業者及び全 アグリゲータを DR 共通基盤システムに収容した上で、C-1 事業共通 DR メニューを用 いた機能試験(アグリゲータ接続試験)を行うことにより、DR 共通基盤システムの機 能評価を行った。 接続試験の結果、全電力事業者と全アグリゲータ(需要家までの通信確認含む)の 間で、全ての C-1 事業共通 DR メニューの DR 発動予告と DR 受諾応答の授受に成功し、
DR 共通基盤システムが C-1 事業に供せるレベルの機能及び性能を満たすことを確認 した。 マルチエリア対応については、マルチエリアで実証を行うアグリゲータ 10 社中、6 社が単一アグリゲータ VEN 上でエリア識別子(ただし 1 社は resourceID ではなく marketContext を使用)を採用し、マルチエリア識別制御方式が正しく機能すること を確認した。また、マルチエリア・アグリゲータ収容方式については、アグリゲータ 接続試験においてほぼ全ての VEN 構成とトランスポートメカニズムの組合せを試験 し、問題無く収容可能であることを確認した。 以上のように、DR 共通基盤システムのアーキテクチャの目標の内、マルチエリア 対応とスケーラビリティの実現、及びアグリゲータ VEN における構成・通信方式の多 様性の許容の 2 点について達成できたことが本評価によって確認できた。 ⑤ 前述の C-1 事業実証開始前のアグリゲータ接続試験において計測した計時データに 基づき、DR 共通基盤システムのノード間通信時間とノード内処理時間を算出した。 計測の結果、DR 共通基盤システム内のノード間通信時間については概ね 1 秒未満 であり、PUSH 型トランスポートメカニズムを採用した効果が確認できた。また、ア グリゲータ収容ノードとアグリゲータ VEN 間の通信時間についても、NTP による誤差 を除けば概ね 1 秒未満との結果が得られた。ただし、アグリゲータ VEN のトランスポ ートメカニズムが HTTP-PULL の場合は別途ポーリング時間が必要なことに留意が必 要である。 一方、アグリゲータ収容ノードの内部処理時間については、DR 発動予告の処理に おいて、アグリゲータ VEN のトランスポートメカニズムがポーリングを必要としない XMPP/HTTP-PUSH の場合で 6~11 秒、アグリゲータ VEN のトランスポートメカニズム の影響を受けない DR 受諾応答の処理で、1 秒未満~34 秒であった。DR 発動予告に関 する DR 共通基盤システムの内部オーバーヘッドを計算すると、最も条件の厳しい 10 分前予告 DR の反応時間に対しても概ね 1.2~2%程度の比率となり、本実証において は十分な性能と考えられる。 以上のように、DR 共通基盤システムのアーキテクチャの目標の内、内部オーバー ヘッドの最小化については、少なくとも本実証において要求される性能に比して十分 な結果が得られたと考えられる。本結果は現時点の asis の実装によるものであり、 アグリゲータ収容ノード内の内部的なポーリング周期等のチューニングにより、さら なる性能向上が可能と考えられる。 ④ C-1 事業の共通 DR メニューでは検証することができない、実サービスにおいて必要 になると想定されるより高度な DR 運用ユースケースを C-3 事業独自 DR メニューとし
て定義し、一般電気事業者及び一部アグリゲータの協力の下、C-1 事業共通 DR メニ ューの発動頻度の少ない 10~11 月期に実証を行った。 実証に先立ち、実サービスにおいて想定されるレベルの DR 運用ユースケースを明 確化するために、C-1 事業参加の一般電気事業者 3 社と議論を行い、削減容量指定 DR (LOAD_DISPATCH)、持続時間変更、削減容量変更、キャンセル、反応時間 2~3 分の FastDR の 5 つのユースケースを策定した。一般電気事業者がこれらのユースケース を組み合わせて作成した DR 運用シナリオの DR メッセージを、逐次アグリゲータに送 信することによって実証評価を行った。 実証スキームの制約により需要家の参加が得られなかったため、アグリゲータまで の機能試験には留まるが、シナリオは全て問題無く実行され、DR 共通基盤システム において実サービスを想定したレベルの DR 運用が可能であることを確認した。また、 これにより、DRAS 機能に対する機能制約を最小化するというアーキテクチャ設計上 の目標を達成したことが確認できた。 ⑤ DR 共通基盤システムのアーキテクチャ的な信頼性を評価するために、C-1 事業実証期 間中の運用実績に基づいて、可用性の評価を行った。DR 共通基盤システムは 2015 年 8 月 1 日~2016 年 1 月 31 日までの C-1 事業実証期間中に、3 電力事業者合わせて延 べ 1,109 回(アグリゲータ毎にカウント)の DR イベントを発動し、その内 DR 共通基 盤システムの原因によって正常に実施できなかった DR イベントは無かった。 ただし、ハードウェアやネットワークまで含めたシステム全体としての可用性の観 点で見ると、実証期間中に 3 件のノード障害と 2 件のネットワーク障害が発生し、そ の内 1 件のノード障害(ハードディスク障害)において、電力事業者が DR 発動計画 を変更する必要が生じた。実際に C-1 事業の実証に影響を与えた障害は本件のみであ るが、一時的に一部ノードが使用できなかった 4 件の復旧時間は計約 104 時間であり、 仮にお盆・年末年始や計画停電を除いた全実証期間の約 4,056 時間をサービス期間と 見なすと、稼働率は 97.4%になる。しかし、ネットワーク障害 2 件は DR 共通基盤シ ステム外の原因であり、またハードディスク障害によるノード障害 1 件を実証事業故 の特殊要因と見做して除外すると、稼働率は 99.5%ととなり、実証に供するための DR 共通基盤システム、或いはアーキテクチャ的な観点からは十分な信頼性を達成したと 考えられる。 今後の課題としては、PUSH 型トランスポートメカニズムにおける通信監視の問題 があり、商用時には何らかの自動監視の仕組みが必要と考える。特に XMPP について は汎用のツールが無いため、XMPP Ping 等を利用した通信監視の仕組みを開発し、DR 共通基盤システムのノード間とアグリゲータ間で共通化することが望ましいと考え る。