• 検索結果がありません。

拡大する理学療法部門における卒後教育の実際と課題

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "拡大する理学療法部門における卒後教育の実際と課題"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)理学療法学 第 710 42 巻第 8 号 710 ~ 711 頁(2015 年) 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 大会シンポジウム 5. 拡大する理学療法部門における卒後教育の実際と課題* ─組織マネジメントから考える理学療法士の卒後教育─ 大 塚 功 1) 青 木 啓 成 1). はじめに 国が推し進めている,医療・介護提供体制の改革と医療の機 能分化を背景に,我々理学療法士の職域も医療,介護,予防領. 験に乏しい理学療法士が部門管理者となることで,組織が組織 として十分に機能しないこともあり得る。. 相澤病院の取り組み. 域における専門分化と広がりを期待する。日本の理学療法士. 当院は 1999(平成 11)年当時理学療法士・作業療法士・言. は,現在の約 10 万人から 10 年後には,20 万人規模へ拡大す. 語聴覚士合わせて 25 名のリハ部門であったが,現在 200 名を. るものと予測される。多くの現場が求める人材も,量的な充足. 擁する組織に拡大してきた。当院のリハ専門職のうち理学療法. から質的向上へと転換している。当然臨床でも,組織マネジメ. 士は 115 名で,平均臨床経験年数は 8.2 年,臨床経験 3 年以下. ントにおいても卒後教育は重要課題のひとつである。さらに医. の理学療法士が,全体の 19.1%を占める。. 療・介護提供体制改革に理学療法士のスケールメリットを活か. 当院リハ部門は,院内リハ部門と在宅リハ部門からなり,院. すために,質の高い理学療法士を育成する仕組みづくりは喫緊. 内は脳卒中・脳神経リハセンター,運動器疾患リハセンター,. の課題といえる。本稿では,臨床経験が比較的浅い理学療法士. 心大血管リハセンター,呼吸器疾患リハセンター,救命救急リ. を多く抱える施設や組織の卒後教育の在り方について,相澤病. ハセンター,回復期リハセンター,スポーツリハセンターの各. 院における卒後教育の取り組みを紹介しながら提言する。. 専門領域別に構成している。個々の理学療法士は,入職から 6. 理学療法士の卒後教育における課題. ~ 7 年の間,各部門を 1 ~ 1 年半ごとにローテーションしなが ら臨床経験を積み,その後は自身で選択した領域でさらに専門. これまで各施設におけるリハビリテーション(以下,リハ). 性の高い知識・技術を習得する一方で,下級スタッフの教育担. 部門の課題のひとつに,理学療法士のマンパワーの不足があっ. 当者としての役割が求められる。つまり,良質な理学療法を提. た。一部の医療機関では徐々に充足しつつあるが,人員配置の. 供する臨床能力と教育の能力の 2 つの職能(職務遂行能力)を. 制限等により,少数精鋭の理学療法士で運営せざるを得ない施. 高める卒後教育体制の構築とその効果的な運用が必要となる。. 設もある。2012 年理学療法白書によると,理学療法士協会会 員が所属する施設のうち,37.6%が一人職場であり,10 人以上. 卒後教育体制の構築と組織マネジメント. の理学療法士が所属する職場は全体の 12.2%に過ぎない。しか. 卒後教育体制の構築と運用を進めるうえで組織が陥りやすい. し,近年理学療法士をはじめとするリハ専門職を多く採用して. 例として,教育の目的と目標が曖昧なまま,マニュアルなどの. きた組織においては,卒後教育に新たな課題を抱えている。前. 教育用ツールと規程などのルールづくりに多くの労力と時間を. 出の同白書によると,理学療法士協会の 31.3%が臨床経験 3 年. 費やすものの,その運用が定着せず次第に形骸化していくこと. 以下会員で占めているという現状からも,卒後教育の必要性が. が挙げられる。卒後教育は組織マネジメントの手段であり,そ. 増す一方で,臨床の現場では,「一定の臨床経験を有する理学. の目的は組織のミッションを果たし,ビジョンを達成すること. 療法士が少なく,多忙な臨床と教育の両立が難しい」,「臨床経. にある。さらに組織は「どのような理学療法士を育成したいの. 験が浅い理学療法士が多く,指導者としての能力が十分でな. か?」といった,教育の理念を提示し,個々の理学療法士は「こ. い」などの声も聞かれ,結果的に個々の経験側に頼る指導が続. の組織でどのような理学療法士をめざすのか?」を考えること. いている現場も少なくない。理学療法士の数は増えたが,マン. が重要であると感じている。つまり,職場での人材育成は,組. パワーの質は脆弱化し,組織が疲弊していくことも想像でき. 織のミッション・ビジョンの達成と,個々のキャリア・ビジョ. る。さらに,もうひとつの問題として,組織マネジメントの経. ンの実現の手段であり,臨床教育の仕組みづくりの前に,その 目的となる組織のミッション・ビジョンを明確化し共有するこ. *. Graduate Physical Therapist’s Education Consider from the Organizational Management 1) 社会医療法人財団慈泉会 相澤病院リハセラピスト部門 (〒 390–8510 長野県松本市本庄 2–5–1) Isao Otsuka, PT, Hironari Aoki, PT: Aizawa Hospital, Department of Rehabilitation キーワード:組織マネジメント,卒後教育,教育理念. とがもっとも重要となる。当院では組織のミッション・ビジョ ンだけでなく,すべてのリハ専門職によるグループワークを通 じて,「我々がめざす臨床教育はどうあるべきか?」「どのよう なセラピストをめざすのか?」についてディスカッションを行 い,リハ部門の教育理念を作成した。.

(2) 拡大する理学療法部門における卒後教育の実際と課題. 711. 図 相澤病院リハセラピスト部門の教育体制 相澤病院リハセラピスト部門教育理念. 割を担うこととなる。個々の理学療法士が描くキャリア・ビ. 1.私たちが求めるリハセラピストは,患者さんの視点に立つ. ジョンに向けて職能を高めるための臨床教育と評価の実際が. 人間性豊かなセラピストであり,その教育は人を育てるこ. On the Job Training(OJT)であり,当院では,e ラーンニン. とからはじまると心得ています。. グを組み合わせて運用している。まず,e ラーンニングにて基. 2.私たちは,急性期医療から地域医療にわたる幅広い実務経. 礎知識を確認し,その達成度に合わせて臨床現場で指導を行. 験を基に,全人的リハビリテーションを提供する臨床家を. う。また,昇格とは別に,2 名の上司および 3 名の下級スタッ. 育成します。. フからの 360 度評価(コンピテンシー評価)の結果を役職者(主. 3.私たちは,次世代のセラピストを育成するために,指導者 としての役割も担うリーダーを育成します。 4.私たちは,質の高い専門性と,主体性あるマネジメント能. 任・科長)の選定に反映させている。. おわりに. 力を有するじりつ(自立・自律)したセラピストをめざす. 厚生労働省は(2012(平成 24)年当時)2025 年に向けて,. 人材育成に取り組みます。. リハ専門職は医療領域で現在の 1.5 倍・介護領域で 2 倍必要に. 相澤病院リハ部門における教育体制. なると予想していた。つまり,理学療法士は 2012 年当時の 8 万 4,000 人から 2025 年には 15 万 5,000 人の需要が見こまれる. 当院リハ部門の教育体制およびその流れを図に示す。横軸. ことになる。しかし,理学療法士は毎年約 1 万人ずつ増加し,. は,時間軸と職務の遂行を示し,縦軸は職能を示している。職. 2025 年には 22 万人の供給体制が見こまれることから受給バラ. 務や業務を可視化するための文書として, 「組織管理規程」, 「業. ンスの不均衡が懸念される。一方で,理学療法士のスケールメ. 務基準書」,「職務記述書」がある。「組織管理規程」には組織. リットを活かし,国民の生涯に渡る健康増進,予防,医療,介. の管理責任と役割を明記し,「業務基準書」には理学療法士の. 護における社会のニーズに応えるための職域拡大を期待する。. 業務の手順,「職務記述書」には職員の権限・責務・必要な資. 各々の領域で理学療法士が必要とされ有益なものとなるため. 格を明記している。. に,より多様化した高い専門性を有する理学療法士の教育の在. また,スタッフが自身の将来像をイメージし,そこに向かう. り方について,養成校(卒前教育),各施設(卒後教育),そし. 過程を具体的に記すため「キャリア・デザインシート」を活用. て理学療法士協会が協同して教育体制を構築していくことが重. している。「職能要件書」は職能,つまり「職務」を遂行する. 要と考える。. 能力評価基準を示すものであり,入職時の 3 等級から最高位の 10 等級まで各等級レベルに対応して段階的に設定している。3 ~ 7 等級は「理学療法士職能要件書」,8 等級以降は「慈泉会. ま と め 1.理 学療法士が社会のニーズに応え貢献していくためには,. 共通職能要件書」を用いて評価している。また,入職後 2 また. より多様化した高い専門性が必要であり,卒後教育の在り. は 3 年間の 3 等級では,「コモンカリキュラム」を用いて社会. 方が問われている。. 人スキルの評価(情意評価)も行っている。 スタッフは入職後,各部署を 1 ~ 1 年半でローテーションし ながら,臨床経験を重ね基礎的スキルを習得しながら臨床家と. 2.卒後教育は組織マネジメントの一部であり,その目的は組 織のミッションを果たし,個々のキャリア・ビジョンを達 成することである。. して成長していく。入職から 7 ~ 9 年でローテーションが終了. 3.各臨床現場における卒後教育の仕組みづくりは,まず教育の. し,その後は専門領域を選択し,理学療法士としてより高度な. 理念を掲げ,そのうえで業務の手順,職能評価,個々の将来. 専門性を追求しながら,ローテーションスタッフを教育する役. 像などを可視化するための教育用ツールを作成し運用する。.

(3)

参照

関連したドキュメント

[r]

大曲 貴夫 国立国際医療研究センター病院 早川 佳代子 国立国際医療研究センター病院 松永 展明 国立国際医療研究センター病院 伊藤 雄介

「イランの宗教体制とリベラル秩序 ―― 異議申し立てと正当性」. 討論 山崎

一般社団法人 葛西臨海・環境教育フォーラム事務局作成 公益財団法人 日本財団

市民社会セクターの可能性 110年ぶりの大改革の成果と課題 岡本仁宏法学部教授共編著 関西学院大学出版会

高尾 陽介 一般財団法人日本海事協会 国際基準部主管 澤本 昴洋 一般財団法人日本海事協会 国際基準部 鈴木 翼

(第六回~) 一般社団法人 全国清涼飲料連合会 専務理事 小林 富雄 愛知工業大学 経営学部経営学科 教授 清水 きよみ

演題  介護報酬改定後の経営状況と社会福祉法人制度の改革について  講師