Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Soolety for the Solenoe of Deslgn
多
様
性
に
対 応 す る
デ ザ
イ
ン
教 育
Design
Education
Corresponding
toMu
緡plidty
望月 史 郎 菓 享 家 政 掌 院 大 学 ■ 多 様 な学生像か ら
「プ レ ゼンテ
ー
ションでは 負 けたけ ど、
コ ン セ プ トで は勝 ち ま した」。
こ れは企 業 実習
に参加
した学
生 が、実習終
了後異
口同
音 に 述べた 感 想であ る。
筆 者は、
人 文 学部工芸 文 化 学科 と称 す る学 科 に 在 籍 してい る。
入学す る学 生 は、
すべ てが デザ イン関 係の仕事 を 目指 してい る訳 で はない。 文科 系 女子 大 の学
生によく見
ちれる (と言
われている )、
と りあ え ず 大学に入 り、
とりあ
えず就職す
る という意識
の学
生 がいること を否 定できない。
したがっ て、
冒 頭 に 述べた よ うに、
デザイナー
を志し て企業 実習
に参 加 す る学 生 は、
現状では残 念 な が らそ う多 くない。
そ れ で もデ ザイ ン に
興
昧を持ち、仕事
にす
べく情
熱
を傾
け、努力
を重 ね、就
職 してい く学 生がい る。
そして、
デ ザイン系学科
で より実践的な教育
を受
け、
巧みな 表示 技 術 を身 につ けた 学 生 に対 して、
少 な く と も「コ ンセ プ トで は勝っ た」と自負で き る学 生 が い ること も、
また事 実 で あ る。
つ ま り、
筆者の周 囲 には デ ザイ ナー
志望の学生 か ら、そ
れ を眼中
に入 れ ていない者 まで、
多 様 な学 生 が 在籍 している。
圏工莪文化という枠 組み の申で筆 者 は
デザ
イン学 を、
一
種
の 「問題解決学
」であ
る と認 識 している。
よ り良い社 会や 生活の実 現 を 目 指 して、
問 題 意識
を持
ち、
問題 を発見 ・
整理し、 よ り適 切 な解 答 を導 き出 すことであ る。
それ は計画に関
するすべて の分野
に通 じることであ るが、
その中 で もデ ザインは、
カ タチ あ るモ ノや カ タチに結び付 くコ トを主 に扱
い、
よ り良
いカタチ を生み出す
こと に力 点 が 置 かれている。
そのため、
問題に対 する解 答 を 「カ タチあ るモ ノに す る」 ことは、
デ ザ イン の真骨
頂といえ るが、
そ れ だけ でなく、
「カタチ にす ることができる」とい う段階 に到 達 す ること も重 要 視 してい る。
そ う考 えれ ば、
上 記のすべて が デザイ ンである とと もに、そ
の プロセ ス との整 合 性 がは か M◎chizukiShiro
Tokyo K8sei Ga 」ln Urwo囹守
れ れ ば
、
その一
部
を担当す
る こ とも、 デ ザ イン の概
念に含めることがで き る。
そのよ う
な認識
を蟇 に、
人 文学部
工芸 文化学
科 と い う枠 組みの中で 教 育 を行っ ている。
問 題 発 見 か ら 表示 にいた る まで、
ひと通
りの学 習 がで き る よ うな 科 目構 成 とは してい る もの の、
学 科の性 格 とス タッ フの構
成 上、
ど ち らか と いえば 歴史的
な認識
や、 社 会 生活にか かわ る文 化 的 な事
象の把握
など に重点
が 置かれている。
そこには、
カ タチ に 仕 上 げ る髄の背 景 や、
なぜ そ ういうカ タチ にす るのか を、
未 熟であ っ て も説明
できるよ うに したい という意
識 が働いて い る。
ひょっ とした ら冒
頭の 「プ レゼンテー
ショ ン では負
けたけ
ど、
コンセプ トでは 勝 ち ま した」 とい う発 言 は、
その成 果 なのか も しれない。
日 多 様 化 す るデ ザ イン の基 礎と は ? 生活
や社会
を取 り巻
くデ ザ イン の状 況 が、
今 後 ど の よ うに変 化していくの か、厳密
な予測
をす
る力
は筆者
にはな
い。 しか し、 デ ザ インの概 念 も、
社 会に おけるそれの受 け止 め方
も、
ますます広 くな
るこ と だ ろ う。
また、
デ ザ イン教 育 を受 けた 卒 業 生の進 路 や業 務 も、
ますます 多様化
する に違
いな
い 。数年前
、 土木構
造 物の1
つ であ る堰の、
景 観 に関 す る委 員 会 に 出席 した こ と がある。
その初期
の会合
に、堰柱
に屋 根 を付 けた り、
丸みを付 けた り、
窓の 形 を変え たりした、数多く
の アイ デアス ケッチ が、
唐突 に出 され たe それ を準 備 した人 た ちは、
「形を 考え る」こ とだ け をデ
ザ インだと認識
していた よ う であ
る。
今日
のデ ザイン教 育 を受 け た入 なら ば、
表 面的 な 形状
をあれこれ 検討 する前に、
堰 柱の高 さ、
太 さ、
凹 凸の程 度 な ど景 観 に 及 ぼ す要 因 を考え、
そ れ らを変 更す るために 必要 な 技 衛 的 条件の検 討 な ど に も、
考 えを 巡 らす だ ろ う。
また それ ら の間
に、
い か に して景 観との調 和 を図
る か の、 コンセプトも検 討す るに 違いない。
18 sPEcIAL IssuE oF JssD vol
,
5 No,
3 1998 デ ザ イ ン学 研 究 特集号「
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Soolety for the Solenoe of Deslgn
そのよ うなプロセ ス の必 要 性 を述べた とこ ろ
、
委 員諸 氏の賛 同が得ら れ、
堰の ゲー
トを駆動 させ る内 部機 構の技 術 的可 能 姓が検討され、従
来とは 大 幅に 異な る堰の基 本形 状モデルが提示
され た。
スタ イ リ ング はその モデル を基 本として、
検 討 すれ ばい い も ので あ り、
それな くしてい きな
り、
屋 根 だ とか 丸み だ とかを考 えれ ばい いという もので は ない。
制度
上の制 約 な ど経 緯の詳 細 は省 略 した が、
こ の よ うな分野
にもデザ インは求めちれてい る。
そ れに 対 応 するために、
土 木構 造 物のデザインまで個 別に 教 育 す る必 要がある の だ ろ うかeそ
れ を教 育 用 素材 の1
つと して 扱 うことは ある にせ よ、社
会の求
め る 多様 な デザイン像のすべて に、個
別 対 応 す る よ うに 細 分 化した教 育は、到底無
理であ る。
そこ で必 要な のは、
土木 技 術 者 と協 力 して、
デザインを応 用で き るよ うに教 育 す ることだ といえ よ う。 つ ま り、
種々 のデ ザ インに対 応 で きる基 礎 と、
それ を応
用 する力
の育 成 が重 要 にな る。
そこで 「基 礎 とは 何か」が 大 きな
問題
とな
る訳
で あ る が、
筆者は、
「形を考
え る」前
に、
「考 え を形 にす る」ための 「考 え」を、
ど の ように定
めるか、
それを どのよ うに 「形にする」かの 、 プm セ ス と方法
を教
育 す ることが 重 要 だ と認 識 している。
そ うす れば、多様な
個 別 事 例 に も対 応でき るはず だ と、
考 えているか らであ る。
顧 教 育 すべきこ と・
でき るこ と とは ?筆 者の前 任校で
、
指 導担 当教員
が 「プロの域に達 している」と太 鼓判
を押した、
CI
に関
す る卒業 制 作 が あっ た 。 デ ザイン事 務所
で経験
を積
んだという 巧みなプ レ ゼ ン テー
ショ ンを見 れ ば、
高 く評 価す る こと もできた。
しか し、
そ れ に対 して 筆 者 は、
い さ さか不満 な 点 が あっ た。
表 現 され たシンボルマー
ク や 色 彩 な どが、
なぜ 適 しているのか、
どのよ うに決
め ら れ たのか という、
プロ セスの説
明 が 十 分では な かったか ら である。
た しかに実 践の
現
場で は、
「結果
がす
べ て」とい う側 面があ り、
結果が よくな けれ ば何
の意
味 も持 たな
い こ とす らあ
る。
その観
点に立てば、
プロ と して 通 用 す る水 準の結 果 を 出すことは、
高 く評 価 すべき であ
る。
しか しそれ は 果 して教育の成 果だっ たのだ ろ うか、
学 生 個人の才 能や社 会経験
に依拠
したとは いえないだ ろ うか、
とい う疑 問 を抱いた の であ
る。情 報 が 氾 濫 す る今 日
、
学 外 活動
は時として、 学 内 にお け る教 育 を上 回る効果
を発揮
する。
しか しそれ を個 人 任せ にす
るだけ で は教
育 とはいえない。
そこ に は、学内
で実施
す ること といか に連 動 させ るか と いう、
プログラムが不 可 欠であ る。
ま た
、個人
の才能
を伸
ば すことは、
教 育の重要 な 側面であ る。
才 能や 感 性 が 不 足 している学生 より、
豊か な 学 生の方 が好 ま しい こ と も否定しな
い。 しか し、
才 能 や 感 性 が不 十 分な 学 生に対 しても しなけ
れ ば な らない のが、
教育のも う1
つ の側
面であ
る。 伝統
的な徒弟制度
や 継続 的な 個 人 指 導 な らば と もか く、
大 学に おいて感
性 は教 育でき るのだ ろ うか。
それ に ひ き かえ技
術 や 手 法 は、
か な りの程度 まで 教 育 可能 であ
る。
ただ しそこには、
系 統だっ た プロセス を持
つ プW グラムと、
教 育 資料 が 不 可 欠である。
翩 教 育資 料の充 奚 を 多様 化 す るデ ザ イン像の基 礎 とか、
系 統だっ た プ ロセ ス を持つプログラムと、
教 育 資 料 な どにつ いて、
各 大 学や担当教員
の 頭 の中に において、
経 験 的 な蓄 積がなされ ている こ とだ ろ う。
そ して、
よ り良い教育方法
を探
る試行
錯 誤 が 続 け られ、
今 臼に 至っ てい るのだ ろ う。
しか しそ れ は、
将 来の社会が求
め るデ ザ イン の基礎 と して、
適 切な ものだ ろ うか。
多 様化 す る デザイン像 に共 通 する要 因と は何か、 社 会 が 求めている ものは 何か、
それ を どのよ うに教
育 すれ ばい い のか、な
ど に関す
る情 報 は まだ 不 十 分 である。
個人や各大学
が個
別 に蓄 積 している情 報の共
有化
も、同様
に不
十分
であ る。
まず は それらに関 する情 報の集積
と、体
系化
が 急 務であ る。
さ ちに それの活 用 を図 るには、
教 科 書、
事 例 集、
手 法 集 成、
資 料集 成 な ど、
活用
しやすい形式
に具現
化す る必 要 が あ る。
よ り創造 的 な デ ザイン活動
を実 践す るために は、
非 創 造 的業 務の効 率 化 が不 可欠
で あ る。
また、
各大 学に おいて、
それ ぞ れの個 性 を発 揮 す るため にも、
共 通 要 因を効率化
すべきであ る。
デザ イン学研 究 特集 号 SPECiAL ISSUE OF JSSD Vol