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妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての尿中バイオピリン

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Academic year: 2021

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(1)

原  著

妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての

尿中バイオピリン

Urinary biopyrrin as a possible oxidative

stress marker during pregnancy

松 崎 政 代(Masayo MATSUZAKI)

*1

春 名 めぐみ(Megumi HARUNA)

*1

大 田 えりか(Erika OTA)

*1

渡 辺 悦 子(Etsuko WATANABE)

*1

村 山 陵 子(Ryoko MURAYAMA)

*1

塚 本 浩 子(Hiroko TSUKAMOTO)

*2 抄  録 目 的  妊娠期の健康度や生活習慣を評価する客観的評価指標は少ない。そこで,妊娠期において酸化ストレ スマーカーの一つである尿中バイオピリンを測定し,妊娠期での値の特徴とその関連要因を明らかにし, その利用可能性を検討する。 方 法  2004年7月2日から8月31日までの調査期間中にNクリニックに来院した妊婦のうち594名を対象妊 婦群とし,妊娠初期・中期・末期に分類した。また,妊婦群の年齢にマッチングさせた,現病歴のな い,非妊娠女性35名をコントロール群とした。妊婦群とコントロール群に対し,調査票および診療記 録から基本情報,生活習慣,精神的ストレスとして精神的健康度(general health questionnaire: GHQ) の情報を得た。また午前中に採尿・採血を行い,尿中バイオピリン,血清中脂質代謝マーカー(アセト 酢酸・3­ヒドロキシ酪酸・トリグリセリド・総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステ ロール・遊離脂肪酸)と糖代謝マーカー(グルコース・グリコアルブミン)の測定を行った。 結 果  妊娠初期・中期・末期における妊婦の尿中バイオピリン値は非妊娠女性に比して有意に高値(p< 0.001)であった。妊娠末期の尿中バイオピリン値は,妊娠初期,中期の値に比して有意に高値(p<0.001) であった。  尿中バイオピリン値に関連する要因として,現病歴があること,高血圧や蛋白尿といった妊娠高血圧 症症状があること,グルコースおよび精神的健康度GHQ得点と正の関連,HDLコレステロールと遊離 脂肪酸と負の関連が明らかになった。尚,妊娠高血圧症症状は,3-ヒドロキシ酪酸などの脂質代謝と関 *1

東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 母性看護学・助産学分野(Department of Midwifery and Women s Health, Division of Health Science and Nursing, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo)

*2

東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻 発達医科学分野(Department of Developmental Medical Science, Division of International Health, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo)

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妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての尿中バイオピリン 連があった。 結 論  妊婦の尿中バイオピリン値は,妊娠末期に最も高値を示し,非妊娠女性よりも高値を示すという特徴 が明らかになった。また,脂質代謝と関連のある妊娠高血圧症症状や現病歴,糖代謝,精神的健康度と の関連が見出され,尿中バイオピリン値の妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての利用可能性が示唆さ れた。 キーワード:バイオピリン,酸化ストレス,妊娠,精神的健康度 Abstract Purpose

In this study, we focused on biopyrrin in urine as an oxidative stress maker due to ease of measurement, less invasive risk, and its comprehensiveness as a marker of stress. The aim of this study was to explore the possible use of biopyrrin as an objective indicator of stress during pregnancy.

Method

A cross-sectional study was conducted from July to August in 2005 on 594 pregnant women and 35 non-preg-nant women attending N clinic. The methods included self-reporting questionnaire, reviewing maternal records, and morning blood and urine sample collection. We measured biopyrrin in the urine and serum lipid metabolism makers such as acetoacetate, 3-hydroxybutyrate acid, triglyceride, total cholesterol, low density lipoprotein (LDL) and high density lipoprotein (HDL) cholesterol, and free fatty acid and glucose metabolism markers such as glu-cose and glycated albumin.

Results

Urinary biopyrrin levels in the first, second and third trimesters were significantly higher than in non-pregnant women (p<0.001). The urinary biopyrrin level in the third trimester was significantly higher than that in the first and second trimesters (p<0.001). Elevated urinary biopyrrin levels were related to disease and increased symptoms of pregnancy-induced hypertension such as hypertension, urinary protein, increasing 3-hydroxy butyric acid, glu-cose and GHQ score, as well as decreasing HDL and fatty acid.

Conclusions

We determined that urinary biopyrrin levels were higher during pregnancy than in non-pregnant women and that third trimester levels were significantly higher than those in first and second trimesters. Other markers of general health linked to increasing urinary biopyrrin levels included increasing 3-hydroxy butyric acid, glucose and GHQ scores, and decreasing HDL and fatty acid.

Key Words : biopyrrin, general health questionnaire (GHQ), oxidative stress, pregnancy

Ⅰ.緒   言

 酸化ストレスとは一般に,「生体の酸化反応と抗酸 化反応のバランスが崩れ,前者に傾いた状態」と定義 されている(山口, 2000)。酸化ストレスは,放射線な どの環境因子以外に喫煙や飲酒量,過度の運動,精 神的ストレスなどの生活習慣によっても惹起される (Moller, 1996;板倉, 2000;Yoshida, 2001)。また,心 血管疾患,糖尿病,がん,老化などの発症要因の一つ として多数の報告や解説がされている(野田, 2000; 平田, 2000)。このように,酸化ストレスマーカーが 疾患と生活習慣の双方に関連する事が明らかになり, これを疾病予防に活用する試みがされている(越智, 2003)。  妊娠期において,酸化ストレスのメカニズムを明ら かにする事は,妊娠高血圧症の病態解明や妊娠糖尿病 における生体内の血管内皮傷害の解明,更に日常生活 における妊娠合併症の予防という観点から重要であり, 多くの報告がみられる。妊娠高血圧症に関しては,酸 化ストレスの亢進が血管内皮を傷害し,妊娠高血圧 症を発症させるという病態解明の報告(Hubel, 1996; Barton, 1999)や,妊娠糖尿病妊婦に関しては,正常 妊婦よりも脂質代謝マーカーと酸化ストレスマーカー が高値を示すという報告(Toescu, 2004)がある。また, ランダム化臨床試験による抗酸化物質のビタミンEと ビタミンCの内服が妊娠高血圧症の発生を抑制したと いう報告(Chappell, 1999)がされており,日常の生活 において活性酸素を増やさない事は,妊娠合併症予防

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妊娠合併症などの指標として酸化ストレスマーカーを 活用するまでには至っていないのが現状である。  酸化ストレスマーカーの一つである尿中バイオピ リン(μmol/gCre)は,ビリルビンの酸化代謝産物で, 妊婦健診でも採取する尿での測定が可能であり,酵 素免疫測定法により簡便に,高い精度で測定するこ とができる(山口, 2003, 2004;原, 2002;高橋, 2003)。 Stockerら(1987)により,ビリルビンに,ビタミンE を凌ぐ抗酸化作用があることを見出された後,抗ビ リルビンモノクロナール抗体(24G7)が確認され,バ イオピリンの発見へとつながった(Shimizu, 1988; Yamaguchi, 1994, 1996)。その後,生体でのバイオピ リンの酸化ストレスマーカーとしての妥当性が報告 されている(Shimoharada, 1998;Shimomura, 2002)。 ラットの水浸しストレス(塩地, 1998)や肝臓の虚血再 灌流によって(Yamaguchi, 1996),ヒトではスピーチ ストレス(Yamaguchi, 2002)や手術ストレス(下原田, 1997)によってバイオピリンの上昇が示されている。 また,うつ病や統合失調症をもつ対象者での調査では, 簡易精神症状評価尺度のBrief Psychiatric Rating Scale やハミルトンうつ病評価尺度のHamilton Depression Rating Scaleと有意な正の相関をとることが報告され ており(Miyaoka, 2005),精神的ストレスに対して増 加することが示唆されている。  以上より,妊娠期での活用のしやすさや精確さ,精 神的ストレスを反映するという特異性から,尿中バイ オピリンに焦点を当て,妊婦の生活習慣や精神的健康 度の評価指標としての利用可能性を検討することとし た。

Ⅱ.目   的

 本研究では,妊娠期の尿中バイオピリン値を測定し, 妊娠各期での値の比較および,非妊娠女性との比較に よりその傾向を知る。さらに,以下の仮説を検証し, 尿中バイオピリンの利用可能性を検討することを目的 とした。  尿中バイオピリン値は,1)精神的ストレスの高い妊 婦ほど高値を示す,2)妊娠高血圧症症状と現病歴と関 連する,3)生活習慣と関連する。 1.調査対象  調査期間の2004年7月2日から8月31日に,N 産婦 人科クリニックに午前中に外来通院する妊婦で,研究 参加への同意が得られたものを対象とし妊婦群とした。 また,Nクリニックで働くスタッフで,1)妊娠してい ない,2)治療を伴う現病歴がない,3)妊娠群と年齢を マッチさせた20∼30歳代,という3つの条件を満たす 者に対し,調査協力の募集を行い,同意が得られたも のを対象としコントロール群とした。 2.調査方法  調査票,診療記録,サンプリングおよび測定により 横断的に情報を得た。調査票は,調査者が対象者に直 接配布,回収した。血液・尿の採取は,日内変動や生 活の影響を考慮し午前中に行った。血液サンプルは, 採取後すぐに遠心分離を行い,血清の状態で­45℃で 冷凍保存した。尿サンプルは,採取直後より遮光,攪 拌後分注し,­45℃にて冷凍保存して4ヶ月以内に測 定した。また,診療記録より病歴や治療内容などの情 報を収集した。 3.倫理的配慮  東京大学医学部研究倫理委員会の承認を得て実施し た。主治医および研究者から研究調査説明と協力依頼 について文書を用いて行い,書面による同意を得た。 4.調査内容 1 )個人の属性  診療記録より年齢,出産回数,非妊娠時のBody Mass Index(以下BMI),妊娠高血圧症症状,現病歴 についての基本情報を得た。なお,妊娠高血圧症症状 は血圧の収縮期血圧が140mmHg以上,若しくは拡張 期血圧が90mmHg以上,または尿蛋白がペーパーテ ストにて連続3+(300mg/dl)以上の陽性の状態を「有」 とし,現病歴は,妊娠高血圧症症状以外で調査時に医 療機関より診断を受けている,全ての疾病及び妊娠合 併症とした。  調査票より生活習慣として,朝食摂取・運動習慣(週 2回以上,1回30分以上)・飲酒習慣・喫煙・就労の各 項目の有無,及び喫煙指数(1日あたりの平均喫煙本 数×喫煙年数),夜間および昼間の睡眠時間について 情報を得た。

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妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての尿中バイオピリン 2 )精神的ストレス

 精神的健康度を表すGHQ(General Health Question-naire)12項目版(以下GHQ-12)を用いた。GHQ-12は, 精神医学的症状に関する12の質問項目について,以 前に比べて最近1か月間の症状の頻度を4段階から選 び回答する。各項目の得点化は,0, 0, 1, 1のGHQ採点 法(総得点0∼12点)を用いた(Goldberg, 1985, 1997; 新納, 2001;Doi, 2003;本田, 2001)。得点が高いほ ど精神的健康に問題があるとされる。本研究での Cronbach α係数は0.855であった。 3 )酸化ストレスマーカー  尿中バイオピリン値(μmol/gCr)を測定した。 4 )脂質代謝・糖代謝  脂質代謝として,ケトン体であるアセト酢酸(μmol/ l)・3- ヒ ド ロ キ シ 酪 酸(μmol/l), ト リ グ リ セ リ ド (mg/dl),総コレステロール(mg/dl),低比重リポタ ンパク(LDL)コレステロール(mg/dl),高比重リポタ ンパク(HDL)コレステロール(mg/dl),遊離脂肪酸 (mEq/l)を,糖代謝としてグルコース(mg/dl)および グリコアルブミン(%)を測定した。 5.生化学的指標の測定方法 1 )尿中バイオピリン  抗ビリルビンモノクロナール抗体(ALP標識24G7) を用いた非競合法(塩地, 2001)のバイオピリン EIA kit(株式会社シノテスト開発,同仁会)を使用し,マ イ ク ロ プ レ ー トELISA 自 動 測 定 器(Behring ELISA Processor II, Hoechst社製)にて405nmで吸光度を測 定した。サンプルはスポット尿であるため,酵素法(安 原, 1990;吉村, 1998)で測定した尿中クレアチニン値 で補正した。 2 )血中脂質および糖代謝マーカー  ケトン体であるアセト酢酸・3-ヒドロキシ酪酸(三 和化学研究所測定試薬),糖代謝マーカー(第一化学 薬品測定試薬),その他の脂質マーカー(和光純薬測 定試薬)を,自動分析装置(日立製作所製,日立7180形) にて測定した。 6.統計解析方法 1 )対象者の背景・尿中バイオピリン値の比較  対象者の背景は妊娠週数を日本産婦人科学会の基準 である初期(15週6日まで),中期(16週から27週6日 まで),末期(28週から41週6日まで)の3期で分類し, 妊娠初期・中期・末期の3群およびこれにコントロー ル群を加えた4群で,カテゴリカル変数ではχ2検定を, 連続変数では一元配置分散分析の後Tukey法による多 重比較にて検討した。妊娠高血圧症症状,現病歴の有 無と脂質,糖代謝の関連の検討として2群の差の検討 にMann-WhitneyのU検定をおこなった。 2 )バイオピリン値との関連要因の検討(表2) ①偏相関分析  妊娠週数を制御し,尿中バイオピリン値と重回帰分 析に用いた各変数の偏相関係数により関連を検討した。 ②重回帰分析  尿中バイオピリン値を従属変数とし,独立変数には, 偏相関分析で関連の示されたもの,先行研究で酸化ス トレスと関連の示されていた変数で,個人の基本情報, 生活習慣,脂質代謝,糖代謝,精神的ストレスとして 精神的健康度GHQにおける各変数を投入し,モデル に基づく階層的重回帰分析を行った。なお,独立変数 間の共線性を考慮し,VIFが6以上の変数は除外した。  独立変数は,モデル1で基本情報(妊娠週数・非妊 時BMI・初経産・調査時の妊娠高血圧症症状の有無・ 現病歴の有無),モデル2ではモデル1に生活習慣(朝 食摂取の有無・喫煙習慣の有無・飲酒の習慣の有無・ 運動習慣の有無・夜間の睡眠時間・昼間の睡眠時間・ 就労の有無)を追加し,モデル3では脂質代謝マーカー (3-ヒドロキシ酪酸・LDLコレステロール・HDLコレ ステロール・遊離脂肪酸)を追加し,モデル4で糖代 謝マーカー(グルコース・グリコアルブミン)を追加 し,モデル5で精神的ストレスとして精神的健康度 (GHQ-12:0-12点)を追加して投入し,関連を検討した。  解析には統計パッケージSPSS 11.5 for windowsを用 い,有意水準5%の両側検定とした。

Ⅳ.結   果

1.対象者の概要  妊婦681名に調査の説明を行い,承諾の得られた 613名(90.0%)から調査票および尿・血液サンプル採 取を行った。調査票の回答が不十分であったもの,採 血・採尿量が不足していたもの19名を除外し,594名 (87.2%)を分析対象の妊婦群とした。コントロール群 は,非妊娠女性35名の協力を得た。対象妊婦および

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コントロールの個人特性を表1に示した。妊婦群は年 齢30.5 4.2(mean SD)歳,非妊時BMIは21.8 3.8で あった。初産婦294名(49.5%),経産婦300名(50.5%) であった。調査時点で妊娠高血圧症症状を呈したもの は10名(1.7%)であった。妊娠高血圧症症状以外の現 病歴(糖尿病・甲状腺機能亢進症・切迫早産による子 宮頚管縫合術・双胎・前置胎盤・その他)がある者は 26名(4.4%)であった。  妊娠高血圧症症状の有無で脂質代謝マーカーを比較 したところ,測定マーカーのうち,アセト酢酸(z= 2.73, p<0.05),総コレステロール(z=2.46, p<0.05), LDLコレステロール(z=2.78, p<0.01),遊離脂肪酸(z =2.14, p<0.05),について妊娠高血圧症症状有で有 意に高値を示した。  現病歴の有無で脂質代謝および糖代謝マーカーを比 較したところ,測定マーカーのうち,HDLコレステ ロール(z=1.98, p<0.05)についてのみ,現病歴有の 方が有意に低値を示した。  生活習慣は,喫煙者有は57名(9.6%),そのうち一 日の平均喫煙本数は11.0 5.5本(range; 1.5-20),喫煙 指数は96.6 77.5であった。飲酒習慣有は53名8.9%, 就労中の妊婦は136名(22.9%)で,一日の平均労働時 間は6.8 2.0(range; 2.0-11.0)時間,1か月の平均就労 日数は,平均18.7 5.3(range; 4-26)日であった。  コントロール群の年齢は28.6 4.7歳,BMIは20.8 2.5kg/m2であり,属性において妊婦群との有意な差 はなかった。 2.妊娠期の尿中バイオピリン値  尿中バイオピリン値の測定変動係数は,intra-assay 3.2%,inter-assay6-21%であった。 1 )コントロール群と妊娠各期での比較(図1)  コントロール群の平均尿中バイオピリン値は1.7 0.9(mean SD)μmol/gCrで,妊娠初期・中期・末期, 各々と比較し,有意に低かった(p<0.001)。 p値 コントロール p値非妊婦n=35 全期間 n=594 n=130初期 n=201中期 n=263末期 個人特性 年齢(歳)a 30.5(4.5) 30.5(4.2) 31.0(4.3) 30.3(4.8) ns 28.6(4.7) ns 妊娠週数(週)b 24.8(9.2) 12.4(0.6) 21.2(3.6) 33.7(3.6) 非妊娠時BMI(kg/m2a 21.2(3.8) 21.2(3.4) 20.7(3.0) 21.5(4.5) ns 20.8(2.5) ns 出産回数b    初産婦 294(49.5%) 63(48.5%) 100(49.8%) 131(49.8%) 23(65.7%) ns    経産婦 300(50.5%) 67(51.5%) 101(50.2%) 132(50.2%) 12(34.3%)  子どもの人数(人)a 1.3(0.5) 1.2(0.4) 1.2(0.5) 1.3(0.6) ns 1.6(0.7) ** GHQ(0-12)b 2.3(2.73) 2.3(2.67) 2.0(2.55) 2.5(2.88) ns 産科的背景b 妊娠高血圧症症状有 10(1.7%) 0 3(1.5%) 7(2.7%) 現病歴有 (妊娠高血圧症以外) 26(4.4%) 4(3.1%) 10(5.0%) 12(4.6%) ns a:数字は平均値(SD)であり、分析には妊娠初期・中期・末期の3群およびコントロール群を加えた4群で一元配置分散 分析の後,Tukey法による多重比較を行った。 b:数字は該当人数(割合)であり,分析には妊娠初期・中期・末期の3群およびコントロール群を加えた4群でχ2検定を 行った。 1)妊娠初期・中期・末期の3群での検定結果を示した。 2)妊娠初期・中期・末期、コントロール群の4群での検定結果を示した。 ** : p<0.01, ns: nonsignificance 8 7 6 5 4 3 2 1 0 ( µm ol /g C r) コントロール n=35 n=130初期 n=201中期 n=263末期 *** *** *** ††† ††† 図1 非妊娠女性および妊婦の尿中バイオピリン値 ***:コントロールとの比較でp<0.001 †††:妊娠末期との比較でp<0.001(Mean+SD)

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妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての尿中バイオピリン 2 )妊娠期別尿中バイオピリン値  妊娠各期における尿中バイオピリン値は,初期が2.9 1.5μmol/gCr,中期は3.1 1.8μmol/gCr,末期は4.4 3.2μmol/gCrと初期および中期に比べ,末期に有意 に尿中バイオピリン値が高値を示した(p<0.001)。 3.バイオピリン値と関連要因の検討(表2) 週数を制御したバイオピリンと各変数との相関は, 尿中バイオピリン値は妊娠高血圧症症状があること, 現病歴があること,ヒドロキシ酪酸と精神的健康度と 正の相関関係を示した。  尿中バイオピリン値を従属変数とした重回帰分析の 結果,すべてのモデルで妊娠週数に正の関連が見られ た。モデル1と2では,妊娠高血圧症症状(p<0.01)と 現病歴(p<0.01)に関連がみられ,生活習慣とは統計 的に有意な関連はみられなかった。モデル3では,妊 娠高血圧症症状との関連が有意ではなくなり,現病歴 (p<0.05),3-ヒドロキシ酪酸(p<0.001)と正の相関 がみられ,HDLコレステロール(p<0.05)と遊離脂肪 酸(p<0.05)とは負の相関がみられた。モデル2に比 べモデル3では,説明力が有意に増加した(p<0.001)。 モデル3で有意な関連を示した変数に加えて,モデル 4は,グルコース(p<0.05)との関連がみられ,さらに, モデル5ではGHQ(p<0.05)との関連がみられ,調整 済み決定係数R2=0.23であり,もっとも説明力が高 かった。  尿中バイオピリン値の増加には,現病歴があること, 3-ヒドロキシ酪酸,グルコース,GHQ得点が高いこと, およびHDLコレステロール,遊離脂肪酸が低いこと が関連していた。

Ⅴ.考   察

1.妊娠期における尿中バイオピリン値  妊娠期における尿中バイオピリン値は,非妊娠女性 の値より高値で,妊娠末期では妊娠初期,中期より有 意に高値を示すという,妊婦特有の傾向を明らかにし た(図1)。   酸 化 ス ト レ ス マ ー カ ー で あ るMalondialdehyde (MDA)などの過酸化脂質においても妊娠中に高値を 示すという同様の報告(Toescu, 2002;Wang, 1998)や, 妊娠中は,胚発育や着床および胎盤形成などにより妊 表2 妊婦の尿中バイオピリン値の関連要因の検討─階層的重回帰分析・偏相関─(n=522) 従属変数:バイオピリン値 モデル1β モデル2β モデル3β モデル4β モデル5β 偏相関係数1) 個人特性  妊娠週数  非妊時BMI  初経産(1=経産,0=初産)  妊娠高血圧症症状の有無  (1=あり,0=なし)  現病歴の有無(1=あり,0=なし) 0.299 0.014 0.053 0.117 0.090 *** ** * 0.292 0.022 0.031 0.125 0.087 *** ** * 0.286 0.022 0.018 0.055 0.085 *** * 0.285 ­0.009 0.022 0.055 0.089 *** * 0.277 ­0.009 0.035 0.060 0.085 *** * 0.025 0.066 0.130 0.099 ** * 生活習慣  朝食摂取の有無(1=あり,0=なし)  喫煙の有無(1=あり,0=なし)  飲酒の有無(1=あり,0=なし)  運動習慣の有無(1=あり,0=なし)  夜間の睡眠時間  昼間の睡眠時間  就労の有無(1=あり,0=なし) 0.070 0.069 0.001 ­0.020 ­0.054 ­0.027 ­0.034 0.067 0.077 ­0.006 ­0.021 ­0.065 ­0.016 ­0.011 0.051 0.076 ­0.002 ­0.019 ­0.071 ­0.030 ­0.010 0.054 0.068 ­0.008 ­0.013 ­0.066 ­0.03 0.001 0.058 0.064 0.008 ­0.0143 ­0.044 ­0.024 ­0.053 脂質代謝  3-ヒドロキシ酪酸  LDLコレステロール  HDLコレステロール  遊離脂肪酸 0.337 0.023 ­0.085 ­0.098 *** * * 0.362 0.025 ­0.073 ­0.095 *** * * 0.367 0.026 ­0.075 ­0.099 *** * * 0.330 0.030 ­0.076 ­0.011 *** 糖代謝  グルコース  グリコアルブミン ­0.0190.136 * ­0.0280.123 * 0.0830.006 精神的健康度  GHQ(0-12) 0.104 * 0.092 * 調整済みR2 ⊿R2 0.113 0.1130.012 0.2120.103 *** 0.2260.016 ** 0.2350.010 * *p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001  β=標準偏回帰係数を示す  1)週数で制御した偏相関係数

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ドリアからは活性酸素が2∼3%漏れ出すため,胎盤 が形成される妊娠中は,非妊娠時に比較し,活性酸素 に暴露されている(Myatt, 2004)といわれている。こ うしたことから,胎盤が最も増大する妊娠末期に活性 酸素が増加し,それを捕捉,消去,酸化した結果の指 標である酸化ストレスマーカーも最も増加すると考え られる。以上より,本研究の妊娠期の尿中バイオピリ ン値の結果は,他の酸化ストレスマーカーでの報告を 支持する結果であり,妊娠期の尿中バイオピリン値の 傾向と特徴を国内外で初めて示し,今後の活用に当 たっての,基礎的データを提示できた。  今後さらに,他の酸化ストレスマーカーとの関連性 や胎児・胎盤系からの影響をふまえた研究も行なって いく必要がある。 2.仮説の検証 1 )精神的ストレスの高い妊婦ほど高値を示す  精神的ストレスは尿中バイオピリン値の説明因子と なりうる事,また妊娠週数を制御した場合においても, 尿中バイオピリン値との正の相関関係があることが明 らかになり(表2),精神的ストレスである精神的健康 度の悪化にともなう尿中バイオピリン値の増加が示さ れた。これは,1)精神的ストレスの高い妊婦ほど高値 を示す,という仮説を認め,尿中バイオピリン値は, 妊婦の精神的ストレスを反映するといえる。 2 )妊娠高血圧症症状,現病歴と関連する ①妊娠高血圧症症状との関連  妊娠高血圧症症状有とアセト酢酸,総コレステロー ル,LDLコレステロール,遊離脂肪酸の脂質代謝に 有意な関連が示された。また,表2の階層的重回帰分 析の結果,妊娠高血圧症症状は尿中バイオピリン値の 有意な説明変数であったが,脂質代謝を投入するこ とによってその有意な関連はなくなった。妊娠高血圧 症症状妊婦では,正常妊婦に比べHDLコレステロー ル値は有意に低く,遊離脂肪酸やトリグリセリドが 有意に高値を示すといわれている(望月, 2003)。本研 究でも妊娠高血圧症症状と脂質代謝との関連が明らか になり先行研究を支持する結果であった。また,妊娠 高血圧症症状発症機序として,活性酸素の産生と,消 去の不均衡による酸化ストレスの関与が指摘されてい る(Chappell, 1999;Hubel, 1996)。活性酸素による血 血(Barton, 1999),脂質代謝異常や糖代謝異常,生活 習慣などが関係するといわれている。以上より,2)① 妊娠高血圧症症状と関連する,という仮説は認められ, 尿中バイオピリン値は脂質代謝異常を背景に持つ妊娠 高血圧症症状を反映することが明らかになった。  尿中バイオピリン値は,脂質代謝の中で特にケトン 体である3-ヒドロキシ酪酸と強い正の相関関係があり, 遊離脂肪酸およびHDLコレステロールとは負の相関 関係がみられた。妊娠中は母体から胎児へ栄養素が取 り込まれるため,非妊娠時と異なり,母体での血糖の 低下,遊離脂肪酸の放出,ケトン体産生の亢進といっ た飢餓の代謝状態が生じている(谷川, 2003)。妊娠中 の血中3-ヒドロキシ酪酸と尿中バイオピリン値の相関 関係は,ケトン体産生時に活性酸素を生じ,酸化スト レスが増加することを反映している可能性が示唆され た。しかしながら,これまで妊娠中の血中ケトン体値 を詳細に示すデータはなく,妊娠高血圧症症状への直 接的な影響は明らかではない。今回の結果では妊娠高 血圧症症状と血中ケトン体との関連,さらに尿中バイ オピリン値との関連があったことから,酸化ストレス の亢進に関与している可能性が新たに発見された。 ②現病歴との関連  尿中バイオピリン値と現病歴に有意な関連が見出さ れ,成人だけでなく,妊婦においても疾患によって 活性酸素が多く発生している事が明らかになり(表2), 2)②現病歴と関連する,という仮説は認められた。ま た,切迫流産では,抗酸化物質であるCoenzymeQ10 の有意な減少が報告(Noia, 1996)されており,産科特 有の疾病に対しても酸化ストレスマーカーが増加する 可能性がある。しかしながら,今回現病歴の関連する 疾患を特定することはできなった。そのため,妊娠中 のどのような疾患と尿中バイオピリン値が関連するの か,また,病状や疾病の進行によって増加するのかと いった検討が必要である。  尿中バイオピリン値と糖代謝のグルコースと正の関 連があった(表2)。一般に,糖尿病のように血中で血 糖が増加している場合,ミトコンドリアでのATP産 生において,活性酸素が多く発生することが知られて いる。グルコース増加により活性酸素が増加するメカ ニズムとして考えられる。今回,糖代謝と現病歴との 関連は明らかではなかったが,糖代謝異常をもつ妊娠 糖尿病に焦点をあてて調査する事により関連を明らか

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妊娠中の酸化ストレスマーカーとしての尿中バイオピリン にできると考える。 3 )生活習慣と関連する  酸化ストレスは喫煙,偏った食事,過度の運動など の生活習慣による活性酸素の発生によって亢進するこ とが報告(Moller, 1996;今西, 2004)されている。し かしながら,今回の妊婦調査の生活習慣では,たばこ, 飲酒,運動習慣,睡眠,運動習慣・朝食摂取・就労の 有無などの酸化ストレスと関連があるといわれている 変数では尿中バイオピリン値の説明変数とはならない 事が明らかになり,3)生活習慣と関連する,という仮 説は立証されなかった。尿中バイオピリン値は,一般 集団において過度の飲酒で上昇し,中等度の量であれ ば増加しないことが報告(Yoshida, 2001)されている。 今回の対象集団は,妊娠中ということもあって,過度 の喫煙,重労働などがみられず,こうした妊婦の特有 の生活状況が活性酸素の過剰な発生を生じさせなかっ た可能性がある。 4.尿中バイオピリン値の酸化ストレスマーカーとし ての妥当性  酸化ストレスマーカーとして尿中バイオピリンのみ の測定であったが,先行研究の他のマーカーと同様の 結果を示した。また妊娠中の酸化ストレスの生じる状 況での関連が示された事から,今後の詳細な検討に値 する,有力な指標となりうる。  測定結果でinter assayが10%以上の変動係数であっ たことの統計的検討における影響は,サンプルサイズ を大きくする事により最小限にすることができた。  本調査は横断調査であるため,個人内での尿中バイ オピリン値の変動は明らかにできなかった。また,結 果における因果関係の説明は行えない。現在,本調査 の対象者において縦断調査を継続中であり,今回の結 果をもとに個人内の変化および変数間の因果関係を明 らかにしていく予定である。

Ⅵ.結   論

 妊婦の尿中バイオピリン値は, 1 .精神的ストレスの高い妊婦ほど高値を示した。 2 .妊娠高血圧症症状や現病歴と関連し,特に脂質代 謝に変化をもつ妊娠高血圧症症状との関連があった。 以上より,尿中バイオピリン値の妊娠中の酸化スト レスマーカーとしての利用可能性が示唆された。 謝 辞  本研究は,平成16年度日本助産学会奨励研究助成(研 究代表者:松崎政代)を受けた。また,文部科学省科 学研究費萌芽(課題番号:16659605)(研究代表者:春 名めぐみ),医療科学研究助成(春名めぐみ)の一部と しても行われた。  本研究に快くご協力を頂いた対象者の皆様,フィー ルド調査時のアドバイスと調査の協力をしてくださっ た永井クリニック永井泰院長,小笠原加代子看護師長 およびスタッフの皆様,マーカー測定・解析にご協力 頂いた皆様,論文執筆,御指導を頂いた東京大学大学 院医学系研究科 福岡秀興先生,村嶋幸代先生に深く 感謝いたします。 文 献

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