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自閉症青年の不適切行動の変容―報告を媒介した間接強化の効果の検討―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-26 172

-自閉症青年の不適切行動の変容―報告を媒介した間接強化の効果の検討―

○塩崎 智美1)、渡部 和樹2) 1 )広島国際大学大学院心理科学研究科実践臨床心理学専攻、 2 )あかつき心理相談研究所 1 .問題と目的 行動変容において,問題行動の減少を図る際には一 般に分化強化手続きから順次行われる(Alberto & Troutman,2004)。半田(2014)は,対象児に対して 分化強化手続きを行った際にセルフモニタリングを導 入して,標的行動の般化や短期維持効果を示してい る。ある特定の場面でのみ生起する行動は場面特有の 随伴性や先行子を持つため,訓練場面で行動変容を行 うことが難しいが,このような場合にもセルフモニタ リングによるセルフ・コントロールが有効である可能 性がある。杉若・上里(1994)は,セルフ・コント ロールのうち,習慣行動をより望ましい行動へと変え るものを改良型セルフ・コントロールと定義してい る。そして,困難度が高くかつ行動結果が明確な場合 が,最も改良型セルフ・コントロールの実行度が高い ことが示されている。このことより,変容が困難な行 動であっても行動結果が明確に示される,あるいは予 期されているならば,訓練場面でなくとも行動変容す ることが期待される。 本事例では,不適切行動の変容を報告すると褒めら れるという分化強化によって,不適切行動への間接的 な介入を行い,考察することを目的とする。 2 .方法 【対象者と主訴】 A(19歳,男性,診断名:自閉症スペクトラム障害) を対象として, X 年 4 月より週 1 回 2 ヶ月半介入を 行った。 A は X -11年より親子で来談しており, X -1 年より現先生役(以下MT)とのプログラムを受けてい る。 両親からの主訴は,「ゲーム端末を終了する約束時 間を過ぎても続ける。それによって,就寝時間が遅れ る。」というものであった。 【機能分析】 ゲーム端末の主な使用法は,好みの動画や音源の一 定部分の再生であった。その頻度,持続時間が維持さ れていること,その間他者との関わりを必要としない ことから,自己刺激機能であると推測される。また, 数年間持続していることから,ルーティーン化した行 動であることが考えられる。Probeにおいて,A は「や められずに怒られる」「ゲーム端末を取り上げられる」 嫌悪統制では問題行動が減少しなかった。そこで, ゲーム端末による自己刺激の終了をコントロールでき たら翌週MTへ報告することを提案したところ,「でき たと報告したらMTさんに褒めてもらえる」と自発的に 結果を予期した。また,実際に# 1 で高い正反応率が 観察された。したがって,MTの条件性強化子は当該自 己刺激と同等の強化価を持つことが推測され,これに よる強化が A の不適切行動を改善することが考えられ る。 【手続き】 ゲーム端末の終了時間を守れたか否かについて, A 自身に日記への記録をHWとして教示した。時間までに 守れた場合を〇,守れなかった場合を△とした。次 セッションでは 1 週間のHW状況を,できたか否かと終 了時刻の報告を 1 日ずつ求めた。できた場合にはでき たことを賞賛し,できなかった場合には正直に報告し たことを承認して強化した。なお,上述のMTの条件性 強化子は,他のプログラムにおいて機能することが確 認されている。倫理的配慮として,本研究の参加・発 表については,介入を行った私設心理相談機関にて親 面接担当の臨床心理士より A 両親へ説明を行い,書面 にて同意を得ている。 【標的行動の定義】 定刻までにゲーム端末の電源を切ることを標的行動 とした。次セッションまでの 7 日分の,ゲーム端末を 時間までに終了した日数割合を正反応率とした。ま た,エラーについては,定刻を超過した時間の平均を エラー平均時間とし,正反応率と合わせて A が強化的 な遊びをコントロールできているかについて検討し た。 3 .結果 セッションまでの 1 週間の A の記録と報告を元にし て,各週の標的行動の正反応率とエラー平均時間の推 移をFigure 1に示した。# 2 ではProbeと同様の大幅な 終了時間の遅れが観察されたが,正直に報告したこと を賞賛すると,# 3 以降も正直に報告し,またエラー 平均時間も減少した。# 3 以降も時間の超過は見られ たが,エラー平均時間は10分以下となった。 4 .考察 本事例では,強化随伴性の設定により,不適切行動 への間接的な分化強化方法が確立するか検証すること を目的とした。結果より,「できたことを報告したら 褒めてもらえる。」という結果事象への予期を持つこ とができれば,不適切行動をコントロールすることが 可能であることが示された。また,特にエラー反応時 間が減少しており,このことから A が意識的に時間を

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-26 173 -確認してコントロールしていることが示唆される。さ らに,本事例は遅延強化条件であるが,結果事象の予 期が確立していること,実際に強化を受けることによ る新たな強化随伴性の学習をしたことによって,不適 切行動の変容が可能となったことが考えられる。 報告による間接的な賞賛・承認の随伴性は,家庭場 面に般化させやすいという利点がある。 A も報告をMT から両親へ移行させた際に,両親からの賞賛を得られ た。このことは,子どもの不適切行動の変容に報告の 強化という間接介入が有効である可能性を示唆する。 また,本事例の介入ではエラーについても,正直に報 告した場合は「正直に報告したこと」を承認して強化 した。このような方略は例えエラーが生じても強化随 伴性が存在し,最終目標である標的行動を妨害なく促 進する。このことは第 2 の利点として挙げられる。 今後の課題としては,第 1 に充分な強化履歴を持た せることが挙げられる。フォローアップ段階におい て, A の標的行動は減少し,エラー時間がProbe段階 の水準まで戻った。このことから, A の強化履歴が不 足していた可能性が推測される。MT強化,両親からの 般化訓練での強化が不足したままフォローアップに移 行すると,エラーにつながるため,介入期の充分な強 化経験が必要であると考えられる。第 2 に,他の自己 刺激行動が出現,増加する恐れを考慮する必要があ る。本事例においても,介入と並行して新たな自己刺 激行動が出現した。本人にとって機能的かつ,周囲に 許容される質あるいは強度の自己刺激行動について も,同時に検討することが求められる。 5 .引用・参考文献

Alberto, P. A., & Troutman, A. C. (著) 佐久間  徹・谷 晋二・大野 裕史(監訳) はじめての応用行 動分析 日本語版第 2 版 二瓶社 半田 健(2014). 発達障害児へのセルフモニタリン グを取り入れた社会的スキル訓練―短期維持効果の検 討― 行動療法研究, 40 ( 3 ), 177-187. 杉若 弘子・上里 一郎(1994). 調整型,改良型の セルフ・コントロールに影響する状況要因の検討―ス トレス状況下におけるセルフ・コントロール( 3 )―  日本行動療法学会大会発表論文集20 , 54-55.

参照

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