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事前調査を踏まえた大学における金融教育の実践とその効果測定

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Academic year: 2021

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全文

(1)

要旨

 金融教育が徐々に普及してきた現在,これからの金融教育は更なる実効性を求められることになる。具体

的には,教える相手の金融リテラシーの現状を把握し,その実状に沿った教育を実施する必要がある。さら

に重要となるのが,実施した教育はどの程度の効果をもたらすのか,という教育効果の測定である。そこで

筆者の所属大学において,全 15 回を使った金融教育をプランニングし,その実施と,それがどのような効

果を持つか,効果測定を行った。本論文は[Ⅰ]実際に大学で行った授業,[Ⅱ]その授業の内容を決定づ

ける事前調査,[Ⅲ]その授業の効果,の 3 点について整理,分析を行った。

キーワード:金融教育,金融リテラシー,効果測定

Ⅰ.はじめに

 現在,世界的な潮流とも相まって,わが国では社会

に出るまでに一定程度の金融教育を行う必要があると

いう認識が高まっている。その一つの動きが金融経済

教育推進会議による「金融リテラシー・マップ」の作

成であり,幼稚園段階から社会人まで,包括的かつ体

系的なリテラシー目標が立てられている。さらに,新

しい学習指導要領においても金融や経済に関しての言

及が増えている。そうした社会的要請を受けて,現在

では様々な場面で金融教育が実施されている。

 しかし,これまでのわが国での金融教育への取り組

みは,試行錯誤を繰り返しながら行われてきたと言え

る。そして「金融リテラシー・マップ」の登場によっ

て,各段階が身につけるべきリテラシー水準が示され,

「金融リテラシー調査」の発表によって,現時点での

金融リテラシーの現状と課題が幾ばくかは明らかに

なった以上,これからの金融教育は更なる実効性を求

められることになる。

 具体的には,教える相手の金融リテラシーの現状を

把握し,その実状に沿った教育を実施する必要がある。

家計管理能力を向上するべきなのか,経済や金融の基

礎知識を教えるべきなのか,あるいはそれ以前の問題

で,計算能力の向上が必要なのか,持っている能力を

経済の理解と結び付けるための応用力・想像力を鍛え

るべきなのか。つまり対象への調査に基づいた授業プ

ランの構築が必要となる。誤解を恐れずに言えば,こ

れまでの教育は「教えるべきこと」が先に立つ形で発

展してきており,相手に合わせた教育パッケージの提

供という点では未だ試行錯誤を繰り返しているところ

であろう。この点は,学校の先生が実施する場合は自

分たちが日ごろ接している子供たちが相手であるため,

性格や基礎能力などの把握がなされているという形で

カバーされてきたが,外部の知見を利用した授業など

ではどうしても限界があった。

 さらに重要となるのが,実施した教育はどの程度の

効果をもたらすのか,という教育効果の測定である。

どのような授業を行えば,実際にどの程度リテラシー

が向上するのか。到達目標の設定や基礎調査などが充

実してきたことで,エビデンスに基づいた授業構築が

できる基礎が整ってきたため,今後は教育の効果測定

が必要になる。そしてその測定結果を基に,再度授業

プランの見直しを行い,授業の質的向上を図るという

形で PDCA サイクルを回せるような教育プログラム

の構築がなされるべきである。

事前調査を踏まえた

大学における金融教育の実践と

その効果測定

1)

The Journal of

Economic Education

No.38, September, 2019

The practice of financial education at

university based on preliminary survey and

measurement of its effectiveness

NISHIO, Keiichiro

西尾 圭一郎(愛知教育大学教育学部)

(2)

 そのような問題意識から筆者は,所属する愛知教育

大学において,全 15 回を使った金融教育の実施と,

それがどのような効果を持つか,効果測定を行った。

本稿は[Ⅰ]実際に大学で行った授業,[Ⅱ]その授

業の内容を決定づける事前調査,[Ⅲ]その授業の効

果,の 3 点について報告し,今後の提言を行う。以下,

第 2 節では事前の調査について述べ,第 3 節では調査

をもとに構築された授業の内容と特徴について説明す

る。そして第 4 節では授業の効果について論じ,最後

に今後の金融教育への提言を行う。

Ⅱ.調査に基づいた授業プランの構築

 日本における金融リテラシーの現状把握という点で

は,金融広報中央委員会によって発表された『平成

28 年(2016 年)金融リテラシー調査』は非常に重要

な情報をもたらした。金融広報中央委員会の調査から

は,学生は金融行動を取る人の比率も金融知識に関し

ても他の世代よりも不十分な能力を持つことがわかっ

た。そして,金融教育を受けた人は,そうでない人よ

りも望ましい行動を取れ,正しい知識を持ち合わせて

いることも明らかになった。

 大学生に関しては,金融知識・判断力に関する調査

から,調査対象全体と比較して正答率が 15%以上低

かった分野として「生活設計」「保険」「ローン・クレ

ジット」「資産形成」の分野があげられる。「家計管

理」や「金融取引の基本」といった分野のスコアは上

記 4 分野と比較するとそれほど大きな差があったわけ

ではないことを考えれば,学生は長期の視点や判断と

いった点が不足している,ということが特徴として浮

かび上がってくる

2)

。そのため大学ではそういった苦

手分野を補う形での教育が必要であることが指摘でき,

それを念頭に置いた授業構築が必要と考えられる。

 とはいえ本稿を執筆している時点でこそ,金融広報

中央委員会の金融リテラシー調査の実施を受けて様々

な情報を得ることができるが,『平成 28 年(2016 年)

金融リテラシー調査』発行以前の段階ではわが国の金

融リテラシーの現状については断片的な情報しか得ら

れていなかった。我々教員も,授業を構築するにあ

たって,実際に相対する学生の金融リテラシーの現状

把握ができていなかったことについて,何らかの対応

の必要性を感じていた。そこで筆者が所属する研究グ

ループは,全国複数の国公立大学生を対象とした大規

模調査を行い,国立大学生の金融リテラシーについて

現状把握と分析を試みた

3)

。その調査は,アメリカの

NPO である Jump$tart が行った全国調査を元にして

おり,知識を問う問題は全 42 問設けていた。そして,

その問を金融リテラシー・マップと照らし合わせて全

分野のリテラシーを測れるように整理している。その

問題と分類については表 1 に示している。また,その

正答率は 2015 国公立の欄に示している。

 その調査において正解率が低かった設問(正解率

50% 未満)は,問 3 信用リスク(30.6%),問 5 国民基

礎年金(10.4%),問 13 購買力と運用(34.7%),問 14

債務の活用方法(48.8%),問 15 信用情報(33.7%),

問 16 給与と手取り(48.8%),問 20 長期運用(11.6%),

問 22 所得税(31.3%)問 32 リスクと利率(46.8%),

問 33 生涯賃金(32.7%),問 39 金利(32.8%),問 40 利

息にかかる税金(15.5%)であった。つまり一般に,

経済の基本的知識,消費税や支出と貯蓄や身近なこと

についての正解率は高いが,年金に関すること,運用

に関すること,預金の利息の税金に関すること等,長

期的な生活設計に大きくかかわる部分についての正解

率が低い。つまり社会での生活に関わる点や将来的な

見通し等について弱いという傾向が見て取れた。傾向

的には金融広報中央委員会による金融リテラシー調査

と独自の調査の結果は似通っており,学生は長期の

キャリアや保険,年金,長期資産運用などの長期的視

点・判断といった点で弱みを持っていると考えられた。

Ⅲ.授業の特徴

 筆者は前述したような実情を踏まえたうえで,2016

年度,2017 年度に受講者の全体的な金融リテラシー向

上を目的とした授業を実施した。科目名称は「市民リ

テラシー(経済と金融のリテラシー)」といい,全学の

選択必修である教養科目として位置づけられている

4)

 2016 年度の内容は,図 1 の通りである。授業では,

大学の教員では教えにくい事例を含めた実体経済の臨

場感を感じてもらうべく 4 か所から外部講師を招いた。

また,なかなか現実感を得ることのできない金融につ

いて肌で感じてもらうべく,証券取引所の見学も行っ

た。なお,2016 年度の実施を踏まえて 2017 年度には

金融広報中央委員会との連携講座として 6 か所(金融

広報中央委員会,日本証券業協会,全国銀行協会,信

託協会,生命保険文化センター,損保協会)から,連

携事業外として消費者金融業者(SMBC コンシュー

マーファイナンス株式会社)1 社の合計 7 か所より講

師を招いた。証券取引所の見学も継続して行った。

 2016 年度の授業を企画したのは 2015 年度であった

(3)

ことと,教養科目であるため教員志望の学生が多い本

学の学生が身につけるべき素養は何か,という事も考

慮 し た 結 果,2016 年 度 の 授 業 で は, 金 融 リ テ ラ

シー・マップの全てのカテゴリーを提供しつつ,「経

済と金融リテラシー」というサブタイトルに祖語の無

いプランを提供することを考えた。その結果,生活設

計分野と金融取引の基本としての素養をカバーする内

容が多くなった。結果的に事前調査で大学生に不足す

ると考えられる能力の一つである長期視点での金融リ

テラシーの向上に寄与することが予想されたが,他の

不足する能力と考えられる保険や債務との関わりに関

する教育は十分に提供できない形となってしまった。

2017 年度の授業では保険や信託,銀行分野からも外

部講師を呼び,その点の不足を補うことを試みた。

 2016 年度の履修登録者は 33 名おり,専攻は多分野

に渡っていた(英語,日本語教育,養護教諭,情報,

幼児教育,国際文化といった専攻の学生が受講した)。

そのため,授業は特定分野に偏らない,幅広い教養と

して実施することとなった。2017 年度においても 49

名の受講者があったが,その専門には幅があり,2016

年度と同様の授業方針となった。

Ⅳ.効果測定と今後の課題

 それでは,教員志望の学生への金融・経済のリテラ

シーの向上を目的として実施した授業の効果について

みてみよう。こういった授業の効果としては 2 種類の

ものが考えられる。1 つは金融に対する考え方や意欲

など,マインドセットに与える影響である。もう一つ

は金融・経済知識や判断力といった金融に関する様々

な事態に対処するための能力の向上である。マインド

セットについては,授業中に提出してもらった感想等

を利用し,感想や具体的な考え方に対する言及から定

性的な把握を行う。能力の向上については,初回の授

業に実施したテストと最終回に実施したテストを比較

し,そのスコアから検討する。前出の表1の2016年度,

2017 年度の欄がそのスコアを示している。

 まず,定量的な側面から効果について検討する。ま

ずは 2016 年度からみてみよう。2016 年度,受講学生

自体は 33 名いたものの,初回と最終回のテストの両

方を受けた学生は 26 名であったため,比較可能な学

生のみをピックアップし,学生のスコアの変化と各問

題における正答率の変化をみる。

 初回授業時に実施したテストからは,受講生の金融

リテラシーに関する得意分野,不得意分野の傾向が見

て取れる。本授業の受講生のうち 26 名のスコアの平

均値は 59.1%であった。小山内・西尾・北野(2016)

の調査では,調査した国公立大学の平均が 60.7%で

あったことを考えると,若干低い

5)

。全国調査と比較

して正解率の低い個所が同じというわけではないが,

出所:金融経済教育を推進する研究会編(2017),p.16。

図 1 2016 年度「市民リテラシー」講義概要

(4)

スコアの低い分野についてはかなりの部分が重複して

いた。全国調査では見られなかった弱点として,複利

計算に関する問 8(39.4%),長期の資産運用に関する

問 9(33.3%),信用リスクに関する問 21(39.4%),ク

レジットカードに関する問 24(45.5%),自動車保険に

関 す る 問 31(45.5 %), 利 回 り 計 算 に 関 す る 問 37

(48.5%)などが弱い点としてみられた。その一方で

全国調査で正解率の低かった債務の活用方法に関する

問 14,リスクと利率に関する問 32 などは苦手分野と

しては浮かび上がってこなかった。

 そのような状況は,受講を経て改善されたのだろう

か。最終回の平均スコアを見ると 65.3%となっており

6%以上のスコアの改善がみられた。改善がみられた

項目は 26,悪化した項目が 11,変わらなかった項目

は 5 であった。個人ではスコアの改善がみられたのが

18 名,スコアの悪化が見られたのが 7 名,変わらな

かったのが 1 名であった。

 10%以上のスコア改善が見られたのは問 2,5,9,

12,20,24,25,27,31,34,36,37,39,42 で

あった。分野で見ると,家計管理が 1(10 問中),生活

設計が 2(5 問中),金融取引の基本としての素養が 0

(1 問中),金融分野共通が 2(7 問中),保険商品が 2

(4 問中),ローン・クレジットが 3(10 問中),資産形

成商品が 3(4 問中),外部の知見の適切な活用が 1(1

問中)であった。ここから,リテラシーとしては全体

的に幅広い向上がみられることと,特に資産形成商品

の分野や保険商品,外部の知見の適切な活用といった

分野への正の影響が強いことが想像できる。基本的な

素養については既にある程度確立されているため,学

生であるため実感の持てなかった部分について,理解

が進んだと考えられる。これには,興味関心を引き起

こすために実施した証券取引所への施設見学も効果を

発揮した可能性がある。

 次に 2017 年度である。2017 年度,受講者は 49 名い

たものの初回と最終回のテストの両方を受けた学生は

44 名であった。なお初回の正答率が 57.7%であり,15

年調査や 2016 年度と比較して低いスコアであり,リ

ターンを問う問 2 や福利に関する問 8,インフレに関

する問 13,手取り収入に関する問 16,長期資産形成

の問 20,ローンに関する問 39 などが,より弱い点と

して浮かび上がるが,傾向的には前年度と似ており,

やはり同じような弱点を持っていた。そして,全体の

授業後にはトータルスコア(正答率)の平均値が

7.9%向上しており,13 項目(問 2,8,9,15,17,18,

20,21,25,34,36,37,38)で 10%以上のスコア向

上,苦手分野も 5 項目解消,著しく不足している領域

(20%以下の正答率)も 3 分野改善されることになっ

た。

 2017 年度は,様々な調査の知見や前年度の反省を

生かし,幅広い分野をカバーできるように外部講師を

増加したことで,苦手分野も広く覆うことができ,

トータルでのスコア上昇率は前年度よりも大きくなっ

た。また初期のスコアは 2017 の方が低いのに,最終

的には逆転した。その意味では,実態に合わせ教育範

囲を拡大することで,より効果のある授業となった,

ということもできる。ただし,外部講師を増やすこと

によって,担当教員による体系的,包括的な教育時間

は減ることになってしまい,本質的な理解という部分

がどのようになったかはわからないということは留意

しておく必要がある。また,授業を経ることで全体的

にスコアの改善がみられたが,なぜかスコアが悪化し

た項目(2016 年度の問 3,10,14,18,19,28,30,

32,35,38,41 および 2017 年度の問 1,3,26,28,

32,42)もあった。こういった点は今後研究していく

必要がある。

 そういった不明瞭・不可解な部分を明らかにしてい

く手がかりとして,授業への感想等の定性的な情報の

一部を見ておきたい。ここでは一例として 2016 年度

に日本証券業協会の講師による授業を受けた学生の感

想から,その反応を見てみよう。全体的には授業に満

足いった旨のコメントが多く見られたが,「投資をす

る意義やコツは理解できたが仕組みは難しいと感じた。

リスクとリターンを考えることが不可欠だと思った」

というコメントがあったが,ここからは,投資につい

て一部の理解はできたが,同時に不明瞭な場所が残っ

た状態になった学生がいたこともわかる。また,「世

の中の出来事を経済としてみるのか,私たちの暮らし

からみるのか,企業から見るのかで全くプラス・マイ

ナスが変わってくるところも面白い」というコメント

もあった。このコメントからは,視野が広がったこと

で経済現象の判断に対して,長期的には良い影響を与

えるだろうが,一時的には混乱をもたらす可能性も感

じた。こういった理解の場合,当初は直感で正解を選

べたが,学習後には迷いから正解とは異なる解答を選

んでしまう可能性を秘めている。もっとも,このよう

なネガティブ情報こそが授業改善に役立って行くと考

えられる。スコアの変化と学生の反応から,よりよい

授業構築を目指して行きたい。

 とはいえ受講者のコメントからは,全般的には「リ

スク=不確実性という話が面白かった,考えが変わっ

(5)

正解率 NO. 問 分野 国公立2015 2016 初愛教大 2016 終愛教大 変化率 2017 初愛教大 2017 終愛教大 変化率 1 インフレーション(インフレ)についての説明で正しいものは次のうちどれか。 金融分野共通 83.2% 80.8% 80.8% 0.0% 72.7% 70.5% -2.3% 2 定期預金,個人向け国債,社債,株式について,収益(リターン)が見込める順に並んでいるのは次のうちどれか。 資産形成商品 57.8% 57.7% 80.8% 23.1% 47.7% 68.2% 20.5% 3 定期預金,個人向け国債,社債,株式について,危険性(信用リスク)が低い順に並んでいるのは次のうちどれか。 資産形成商品 30.6% 23.1% 11.5% -11.5% 31.8% 29.5% -2.3% 4 金融機関における信用情報について正しいものは次のうちどれか。 ローン・クレジット 83.3% 88.5% 92.3% 3.8% 88.6% 88.6% 0.0% 5 国民年金(基礎年金)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。 生活設計 10.4% 7.7% 19.2% 11.5% 9.1% 15.9% 6.8% 6 所得税に関する次の記述のうち正しいものはどれか。 家計管理 70.2% 73.1% 80.8% 7.7% 72.7% 75.0% 2.3% 7 家計簿をつける目的に合致しないものは次のうちどれか。 家計管理 93.9% 100.0% 100.0% 0.0% 95.5% 97.7% 2.3% 8 10,000 円を 1 年複利・年利率 1%で預けた時,2 年後に受け取る金額は次のうちどれか。 金融分野共通 50.9% 34.6% 42.3% 7.7% 18.2% 36.4% 18.2% 9 現在 50 歳の鈴木さんは,現在手持ちの 300 万円を老後の資金として使う予定である。できるだけ増やしたいが,万が一の場合に大きく減るのは困ると考えている。この資金をとっておく手段として最も適切なものは次のうちどれか。 資産形成商品 52.9% 30.8% 53.8% 23.1% 43.2% 65.9% 22.7% 10 インフレ率が高い期間に最も大きな問題を抱えるのは次のうちどのグループか。 金融分野共通 80.6% 80.8% 76.9% -3.8% 68.2% 77.3% 9.1% 11 消費税に関して正しいのは次のうちどれか。 家計管理 95.6% 92.3% 100.0% 7.7% 97.7% 97.7% 0.0% 12 鈴木さんは大学生活のためにアルバイトで 100 万円を貯蓄してきた。翌年には入学予定であり,貯蓄したお金はすべて学費に必要である。彼女のお金をとっておくのに最も安全な方法は次のうちどれか。 金融分野共通 76.2% 61.5% 76.9% 15.4% 72.7% 79.5% 6.8% 13 インフレ率の上昇に対して自分の保有しているお金の価値(購買力)を目減りさせない最も良い方法は次のうちどれか。 金融分野共通 34.7% 42.3% 50.0% 7.7% 27.3% 34.1% 6.8% 14 お金を借りて何かに支出する際,経済的に最も有益なのは次のうちどの状況か。 ローン・クレジット 48.8% 53.8% 50.0% -3.8% 45.5% 50.0% 4.5% 15 金融機関の信用情報に関する個人の権利について,正しいのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 33.7% 38.5% 42.3% 3.8% 36.4% 50.0% 13.6% 16 手取り収入は額面給与よりも少ない。額面給与から差し引かれるものとして正しいのは次のうちどれか。 家計管理 48.8% 42.3% 42.3% 0.0% 31.8% 36.4% 4.5% 17 国民年金について正しいものは次のうちどれか。 生活設計 79.3% 88.5% 96.2% 7.7% 84.1% 97.7% 13.6% 18 緊急時に,最も現金化しにくいものは次のうちどれか。 金融分野共通 61.1% 73.1% 53.8% -19.2% 52.3% 68.2% 15.9% 19 田中くんは手取り収入が月額 20 万円の職を得た。彼は毎月 9 万円の家賃と 1 万 5,000 円の食費を支払っている。また交通費として毎月 2 万 5,000 円を支出している。もし彼が毎月衣服に 1 万円,外食に 2 万円,その他に 2 万 5,000 円の予算を計上する ならば,6 万円を貯蓄するまでにどれだけかかるか。 家計管理 87.4% 84.6% 76.9% -7.7% 84.1% 90.9% 6.8% 20 佐藤夫妻の間には赤ちゃんが生まれたばかりである。彼らは出産祝いとしてお金を受け取り,それを赤ちゃんの教育費として運用したい。18 年の長期にわたって運用する場合最も高い運用益を見込めるのは次のうちどれか。 資産形成商品 11.6% 15.4% 26.9% 11.5% 4.5% 36.4% 31.8% 21 高橋さんはクレジットカードを申し込んだばかりである。彼女は財産をほとんどもたず借り入れの経験もない高卒の 18 歳である。クレジットカード会社がリスクを削減するために行っているのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 51.4% 42.3% 46.2% 3.8% 40.9% 52.3% 11.4% 22 渡辺さんは大学の在学期間中にアルバイトをして年間 150 万円を稼いでいた。卒業後の就職先での年収は 300 万円である。彼女が就職後に支払う所得税はいくらか。 家計管理 31.3% 30.8% 38.5% 7.7% 25.0% 31.8% 6.8% 23 年齢が 20 ~ 35 歳である多くの人にとっての主要な収入源として最も適当なものは次のうちどれか。 家計管理 93.7% 100.0% 100.0% 0.0% 95.5% 100.0% 4.5% 24 クレジットカードの返済が滞りそうなとき,もっとも適切なのは,次のうちどれか。 ローン・クレジット 52.7% 38.5% 61.5% 23.1% 40.9% 45.5% 4.5% 25 山本くんと中村さんは今年 65 歳である。中村さんは老後資金のために,現在まで 40 年間にわたり毎年 20 万円の貯蓄をしてきた。山本くんは,同じ目的で現在まで 20 年間にわたり毎年 40 万円の貯蓄をしてきた。どちらの方がより多く貯蓄している か。 金融分野共通 68.7% 69.2% 84.6% 15.4% 70.5% 86.4% 15.9% 26 通常,若者は保護者の被扶養者として健康保険の給付を受ける。健康保険について正しいものは次のうちどれか。 保険商品 68.5% 69.2% 76.9% 7.7% 79.5% 77.3% -2.3% 27 小林くんと斉藤くんは同じ会社の財務部門でともに働き,同じ給与を受け取っている。小林くんは自由な時間に業務に関するスキルを磨けるように友人たちと仕事に関連した講座を受けているが,斉藤くんは自由な時間に友人と楽しい時間を過ごした り,フィットネスクラブで運動したりしている。5 年後,もっともあり得そうなのは次のうちどれか。 生活設計 75.5% 73.1% 84.6% 11.5% 72.7% 81.8% 9.1% 28 クレジットカードの紛失に気づいた時点でとるべき行動として正しいのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 96.4% 100.0% 96.2% -3.8% 97.7% 95.5% -2.3% 29 キャッシュカードについて正しくない文章は次のうちどれか。 家計管理 79.9% 84.6% 92.3% 7.7% 84.1% 93.2% 9.1% 30 伊藤さんは地元の企業に良い就職ができた。過去 2 年ほど,伊藤さんの住む県では近隣の県よりも企業に対する税金の税率がかなり高くなってきた。このことは伊藤さんの仕事にどのような影響を及ぼすか。 生活設計 69.2% 69.2% 65.4% -3.8% 61.4% 70.5% 9.1% 31 自動車保険について述べた文章で正しくないものは次のうちどれか。 保険商品 56.6% 42.3% 57.7% 15.4% 59.1% 61.4% 2.3% 32 鈴木くんと斎藤くんは若者であり,これまでの借り入れに対する返済もきちんとなされている。彼らは同じ企業で働き,また給与も同額である。鈴木くんは海外に旅行するために 60 万円を,斎藤くんは自動車を買うために 60 万円を,それぞれ同じ銀 行から借り入れた。利率に関して正しいものは次のうちどれか。 ローン・クレジット 46.8% 53.8% 50.0% -3.8% 50.0% 47.7% -2.3% 33 終身雇用を前提としたとき,大卒の男性と高卒の男性との生涯賃金の差はおよそいくらか。 生活設計 32.7% 30.8% 38.5% 7.7% 29.5% 29.5% 0.0% 34 預金は預金保険によって保護されているが,預金保険の対象に含まれないのは次のうちどれか。 保険商品 78.7% 65.4% 84.6% 19.2% 75.0% 88.6% 13.6% 35 同額の手取り収入があるとすれば,もっとも生命保険を必要とするのは次のうちどれか。 保険商品 63.6% 57.7% 53.8% -3.8% 65.9% 70.5% 4.5% 36 次のうち買い物に利用した時点で,銀行口座から即座に利用金額が引き落とされるものは次のうちどれか。 家計管理 61.9% 73.1% 92.3% 19.2% 79.5% 93.2% 13.6% 37 2000 万円を年利率 2.5% で 30 年の住宅ローンとして借り入れて返済が完了した。もっとも少なく金額を支払ったのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 66.5% 42.3% 73.1% 30.8% 56.8% 70.5% 13.6% 38 信用情報に関する次の文章のうち正しいのはどれか。 ローン・クレジット 63.6% 80.8% 73.1% -7.7% 61.4% 86.4% 25.0% 39 入学した大学の授業料支払いのためお金を借りるとき,金利を低く抑える要因にならないものは次のうちどれか。 ローン・クレジット 32.8% 34.6% 50.0% 15.4% 18.2% 25.0% 6.8% 40 銀行の預金から得られる利息に関して正しいものは次のうちどれか。 家計管理 15.5% 15.4% 15.4% 0.0% 15.9% 18.2% 2.3% 41 金融商品に関する次の選択肢のうち正しいのはどれか。 金融取引の基本としての素養 83.2% 80.8% 76.9% -3.8% 81.8% 88.6% 6.8% 42 株式や金融商品を購入するにあたり,最も適切なものは次のうちどれか。 外部の知見の適切な活用 67.9% 57.7% 76.9% 19.2% 79.5% 77.3% -2.3% 平均値 60.7% 59.1% 65.3% 6.2% 57.7% 65.6% 7.9% サンプル数 588 26 44

表 1 独自の金融リテラシー調査とその結果

選択肢は省略 出所:小山内,西尾,北野(2016),p.142 をもとにマップの分野を追記して作成。

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正解率 NO. 問 分野 国公立2015 2016 初愛教大 2016 終愛教大 変化率 2017 初愛教大 2017 終愛教大 変化率 1 インフレーション(インフレ)についての説明で正しいものは次のうちどれか。 金融分野共通 83.2% 80.8% 80.8% 0.0% 72.7% 70.5% -2.3% 2 定期預金,個人向け国債,社債,株式について,収益(リターン)が見込める順に並んでいるのは次のうちどれか。 資産形成商品 57.8% 57.7% 80.8% 23.1% 47.7% 68.2% 20.5% 3 定期預金,個人向け国債,社債,株式について,危険性(信用リスク)が低い順に並んでいるのは次のうちどれか。 資産形成商品 30.6% 23.1% 11.5% -11.5% 31.8% 29.5% -2.3% 4 金融機関における信用情報について正しいものは次のうちどれか。 ローン・クレジット 83.3% 88.5% 92.3% 3.8% 88.6% 88.6% 0.0% 5 国民年金(基礎年金)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。 生活設計 10.4% 7.7% 19.2% 11.5% 9.1% 15.9% 6.8% 6 所得税に関する次の記述のうち正しいものはどれか。 家計管理 70.2% 73.1% 80.8% 7.7% 72.7% 75.0% 2.3% 7 家計簿をつける目的に合致しないものは次のうちどれか。 家計管理 93.9% 100.0% 100.0% 0.0% 95.5% 97.7% 2.3% 8 10,000 円を 1 年複利・年利率 1%で預けた時,2 年後に受け取る金額は次のうちどれか。 金融分野共通 50.9% 34.6% 42.3% 7.7% 18.2% 36.4% 18.2% 9 現在 50 歳の鈴木さんは,現在手持ちの 300 万円を老後の資金として使う予定である。できるだけ増やしたいが,万が一の場合に大きく減るのは困ると考えている。この資金をとっておく手段として最も適切なものは次のうちどれか。 資産形成商品 52.9% 30.8% 53.8% 23.1% 43.2% 65.9% 22.7% 10 インフレ率が高い期間に最も大きな問題を抱えるのは次のうちどのグループか。 金融分野共通 80.6% 80.8% 76.9% -3.8% 68.2% 77.3% 9.1% 11 消費税に関して正しいのは次のうちどれか。 家計管理 95.6% 92.3% 100.0% 7.7% 97.7% 97.7% 0.0% 12 鈴木さんは大学生活のためにアルバイトで 100 万円を貯蓄してきた。翌年には入学予定であり,貯蓄したお金はすべて学費に必要である。彼女のお金をとっておくのに最も安全な方法は次のうちどれか。 金融分野共通 76.2% 61.5% 76.9% 15.4% 72.7% 79.5% 6.8% 13 インフレ率の上昇に対して自分の保有しているお金の価値(購買力)を目減りさせない最も良い方法は次のうちどれか。 金融分野共通 34.7% 42.3% 50.0% 7.7% 27.3% 34.1% 6.8% 14 お金を借りて何かに支出する際,経済的に最も有益なのは次のうちどの状況か。 ローン・クレジット 48.8% 53.8% 50.0% -3.8% 45.5% 50.0% 4.5% 15 金融機関の信用情報に関する個人の権利について,正しいのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 33.7% 38.5% 42.3% 3.8% 36.4% 50.0% 13.6% 16 手取り収入は額面給与よりも少ない。額面給与から差し引かれるものとして正しいのは次のうちどれか。 家計管理 48.8% 42.3% 42.3% 0.0% 31.8% 36.4% 4.5% 17 国民年金について正しいものは次のうちどれか。 生活設計 79.3% 88.5% 96.2% 7.7% 84.1% 97.7% 13.6% 18 緊急時に,最も現金化しにくいものは次のうちどれか。 金融分野共通 61.1% 73.1% 53.8% -19.2% 52.3% 68.2% 15.9% 19 田中くんは手取り収入が月額 20 万円の職を得た。彼は毎月 9 万円の家賃と 1 万 5,000 円の食費を支払っている。また交通費として毎月 2 万 5,000 円を支出している。もし彼が毎月衣服に 1 万円,外食に 2 万円,その他に 2 万 5,000 円の予算を計上する ならば,6 万円を貯蓄するまでにどれだけかかるか。 家計管理 87.4% 84.6% 76.9% -7.7% 84.1% 90.9% 6.8% 20 佐藤夫妻の間には赤ちゃんが生まれたばかりである。彼らは出産祝いとしてお金を受け取り,それを赤ちゃんの教育費として運用したい。18 年の長期にわたって運用する場合最も高い運用益を見込めるのは次のうちどれか。 資産形成商品 11.6% 15.4% 26.9% 11.5% 4.5% 36.4% 31.8% 21 高橋さんはクレジットカードを申し込んだばかりである。彼女は財産をほとんどもたず借り入れの経験もない高卒の 18 歳である。クレジットカード会社がリスクを削減するために行っているのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 51.4% 42.3% 46.2% 3.8% 40.9% 52.3% 11.4% 22 渡辺さんは大学の在学期間中にアルバイトをして年間 150 万円を稼いでいた。卒業後の就職先での年収は 300 万円である。彼女が就職後に支払う所得税はいくらか。 家計管理 31.3% 30.8% 38.5% 7.7% 25.0% 31.8% 6.8% 23 年齢が 20 ~ 35 歳である多くの人にとっての主要な収入源として最も適当なものは次のうちどれか。 家計管理 93.7% 100.0% 100.0% 0.0% 95.5% 100.0% 4.5% 24 クレジットカードの返済が滞りそうなとき,もっとも適切なのは,次のうちどれか。 ローン・クレジット 52.7% 38.5% 61.5% 23.1% 40.9% 45.5% 4.5% 25 山本くんと中村さんは今年 65 歳である。中村さんは老後資金のために,現在まで 40 年間にわたり毎年 20 万円の貯蓄をしてきた。山本くんは,同じ目的で現在まで 20 年間にわたり毎年 40 万円の貯蓄をしてきた。どちらの方がより多く貯蓄している か。 金融分野共通 68.7% 69.2% 84.6% 15.4% 70.5% 86.4% 15.9% 26 通常,若者は保護者の被扶養者として健康保険の給付を受ける。健康保険について正しいものは次のうちどれか。 保険商品 68.5% 69.2% 76.9% 7.7% 79.5% 77.3% -2.3% 27 小林くんと斉藤くんは同じ会社の財務部門でともに働き,同じ給与を受け取っている。小林くんは自由な時間に業務に関するスキルを磨けるように友人たちと仕事に関連した講座を受けているが,斉藤くんは自由な時間に友人と楽しい時間を過ごした り,フィットネスクラブで運動したりしている。5 年後,もっともあり得そうなのは次のうちどれか。 生活設計 75.5% 73.1% 84.6% 11.5% 72.7% 81.8% 9.1% 28 クレジットカードの紛失に気づいた時点でとるべき行動として正しいのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 96.4% 100.0% 96.2% -3.8% 97.7% 95.5% -2.3% 29 キャッシュカードについて正しくない文章は次のうちどれか。 家計管理 79.9% 84.6% 92.3% 7.7% 84.1% 93.2% 9.1% 30 伊藤さんは地元の企業に良い就職ができた。過去 2 年ほど,伊藤さんの住む県では近隣の県よりも企業に対する税金の税率がかなり高くなってきた。このことは伊藤さんの仕事にどのような影響を及ぼすか。 生活設計 69.2% 69.2% 65.4% -3.8% 61.4% 70.5% 9.1% 31 自動車保険について述べた文章で正しくないものは次のうちどれか。 保険商品 56.6% 42.3% 57.7% 15.4% 59.1% 61.4% 2.3% 32 鈴木くんと斎藤くんは若者であり,これまでの借り入れに対する返済もきちんとなされている。彼らは同じ企業で働き,また給与も同額である。鈴木くんは海外に旅行するために 60 万円を,斎藤くんは自動車を買うために 60 万円を,それぞれ同じ銀 行から借り入れた。利率に関して正しいものは次のうちどれか。 ローン・クレジット 46.8% 53.8% 50.0% -3.8% 50.0% 47.7% -2.3% 33 終身雇用を前提としたとき,大卒の男性と高卒の男性との生涯賃金の差はおよそいくらか。 生活設計 32.7% 30.8% 38.5% 7.7% 29.5% 29.5% 0.0% 34 預金は預金保険によって保護されているが,預金保険の対象に含まれないのは次のうちどれか。 保険商品 78.7% 65.4% 84.6% 19.2% 75.0% 88.6% 13.6% 35 同額の手取り収入があるとすれば,もっとも生命保険を必要とするのは次のうちどれか。 保険商品 63.6% 57.7% 53.8% -3.8% 65.9% 70.5% 4.5% 36 次のうち買い物に利用した時点で,銀行口座から即座に利用金額が引き落とされるものは次のうちどれか。 家計管理 61.9% 73.1% 92.3% 19.2% 79.5% 93.2% 13.6% 37 2000 万円を年利率 2.5% で 30 年の住宅ローンとして借り入れて返済が完了した。もっとも少なく金額を支払ったのは次のうちどれか。 ローン・クレジット 66.5% 42.3% 73.1% 30.8% 56.8% 70.5% 13.6% 38 信用情報に関する次の文章のうち正しいのはどれか。 ローン・クレジット 63.6% 80.8% 73.1% -7.7% 61.4% 86.4% 25.0% 39 入学した大学の授業料支払いのためお金を借りるとき,金利を低く抑える要因にならないものは次のうちどれか。 ローン・クレジット 32.8% 34.6% 50.0% 15.4% 18.2% 25.0% 6.8% 40 銀行の預金から得られる利息に関して正しいものは次のうちどれか。 家計管理 15.5% 15.4% 15.4% 0.0% 15.9% 18.2% 2.3% 41 金融商品に関する次の選択肢のうち正しいのはどれか。 金融取引の基本としての素養 83.2% 80.8% 76.9% -3.8% 81.8% 88.6% 6.8% 42 株式や金融商品を購入するにあたり,最も適切なものは次のうちどれか。 外部の知見の適切な活用 67.9% 57.7% 76.9% 19.2% 79.5% 77.3% -2.3% 平均値 60.7% 59.1% 65.3% 6.2% 57.7% 65.6% 7.9% サンプル数 588 26 44

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た」「リスクについての話がわかりやすかった」「安定

が一番大事だと思っていたが,リスク・リターンにつ

いて考え方が変わった」というように,弱い部分の補

強が狙い通りできていたことも確認できた。そして

「詳しい説明を受けても,知識がないのでまだ難しい

まま」という意見や「証券取引所に見学に行けたので

イメージがつかめた」という意見もあり,金融教育と

いう視点からの授業だけでは十分理解してもらうのが

難しい分野もあることがわかった。定性的な分析から

は,これまで十分に経済や金融の教育を受けていない

学生に対して金融教育を行う事で,十分に気づきをも

たらすことができたが,今回実施した施設訪問など,

体験型学習等を使うことで知識の定着をはかることも

有効だという事がわかる。ただし,やはり個々のテー

マへの言及が本質的なリテラシーの向上につながって

いるかどうかは,さらなる検討が必要ではあろう。

Ⅴ.まとめ

 最後になるが,本稿で提言したいことはシンプルで

ある。現在,金融リテラシー向上の必要性は広範囲に

わたって意識されるようになった。そのために必要と

なる,金融リテラシー概念についても研究が進み,共

通的な目標(リテラシー・マップ)が提供されるよう

にもなった。また,実態調査についても,その重要性

は理解されており,今後情報の蓄積や精緻な分析が必

要であるものの,わが国全体として,その輪郭は見え

るようになってきた。

 その次の段階として,全国民的な広い範囲ではなく,

具体的な教育対象に絞った深いリテラシーの調査と,

それを踏まえた授業構築,そしてその授業やプログラ

ムが,対象に対してどのような効果を持つのか,と

いった検証が必要である。本稿で実施した例を示せば,

「地方国立大学・文系・経済学を学んでいない・2 年

生・長期的視点での金融や保険,リスク,債務等に関

する弱みを持った学生」という対象に,長期的視野を

持てるようになることに重点を置きつつ網羅的な知識

を得られるプログラムを実施した結果,全体的なスコ

ア向上と気づきをもたらすことができた。もちろんこ

の授業プログラムの実施と効果測定はサンプル数も少

なく,まだまだ統計的には不十分な傾向しか導き出せ

ないだろう。またスコアの低下が生じるといった,ど

のように解釈すべきか難しい問題も残っている。包括

性と体系性のトレードオフという問題もある。しかし,

こういった地道な調査と試行錯誤を続けていき,効果

の高い教育を探していく段階に,わが国の金融教育は

入っていると考えられる。本稿はそういった問題意識

から一つの事例を提示し,調査に基づくプログラム構

築と効果測定の必要性を主張するものである。

註 1) 本稿は,「第 14 回金融教育に関する小論文・実践報告コ ンクール(2017 年)」(主催者:金融広報中央委員会)の 小論文部門 奨励賞受賞作品(筆者執筆)をもとにさらに 改善を加えたものである。また,JSPS 科研費(課題番号 17K03822,18K02690 および 19H01474)と愛知教育大学 教職実践力向上重点研究費による研究成果の一部でもあ る。 2) 金融広報中央委員会(2016),pp.7-20。 3) 詳しくは小山内・西尾・北野(2016)を参照。 4) 本学の学生は卒業までに「市民」「多文化」「科学」「もの づくり」の 4 つの領域から 2 つの授業を選んで単位取得 する必要がある。実施した授業は教員志望の学生が大半 となる本学において,教師であると同時に社会人ともな る学生に対して,最低限身につけてほしいリテラシーを 提供することを目的として開講している。なお,当該科 目は本稿執筆時点(2018 年 12 月)においても 2018 年度 の授業として実施している。 5) 小山内・西尾・北野(2016),p.141。 参考文献 [1] 小山内幸治・西尾圭一郎・北野友士(2016)「大学生を対 象とした金融リテラシー調査票の作成と調査結果につい て」『経済教育』第 35 号,pp.136-148。 [2] 金融経済教育推進会議(2016)『金融リテラシー・マッ プ 』(http://www.shiruporuto.jp/public/document/con-tainer/literacy/pdf/map.pdf)。 [3] 金融経済教育を推進する研究会編(2017)『金融リテラ シー教育 全国 10 大学の実践事例集』日本証券業協会 (http://www.jsda.or.jp/manabu/kenkyukai/content/zire-isyu2.pdf)。 [4] 金融広報中央委員会(2016)『平成 28 年(2016 年) 金融 リテラシー調査』金融広報中央委員会。 [5] Atkinson, A. and F. A. Messy (2012), “Measuring Finan- cial Literacy: Results of the OECD / International Net-work on Financial Education (INFE) Pilot Study,” OECD Working Papers on Finance, Insurance and Private Pen-sions, No. 15, OECD Publishing.

参照

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