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基礎からのM&A 講座 第1 回 M&A(Merger & Acquisiton)のトレンド

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Academic year: 2021

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基礎からの M&A 講座 第 1 回

M&A(Merger & Acquisiton)のトレンド

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社 内山 晃一 「基礎からの M&A 講座」 この企画は、大学で授業を受けるような感覚で基礎から M&A を学んでいく、12 回完結の講座型連載記事となります。今更 聞けない M&A の基礎から、現場に近い筆者だから書ける事例を踏まえた解説など、より実践に役立つ内容となりますの で、是非気軽にお読みください。 はじめに

「基礎からの M&A 講座」第1回目は、「M&A のトレンド」として最近の日本の M&A の動向を見てみたい。

今や新聞紙上で M&A と言う言葉は毎日のように出てきている。2014 年 1 月にサントリーホールディングスは米国ビーム社 の発行済株式を総額で約 160 億ドルで買収すると発表した。そもそも M&A の市場はどうなっているのか、日本の M&A は どんな傾向にあるのだろうか。

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1. M&A とは M&A と一口にいってもその形態は様々である。サントリーホールディングスによるビーム社や丸紅による NEC モバイリン グのような買収(株式の買取)は分かりやすい M&A の形態である。同じサントリーグループでも、サントリー食品インターナ ショナルとグラクソ・スミスクラインの M&A は事業譲受という形態をとる。アプライドマテリアルズと東京エレクトロンの M&A は合併および持株会社設立という形態をとる。何が共通しているかと言えば、事業の持ち主が変わることだ。これを M&A と定義しているケースが多い。この他にも株式交換や資本参加などの形態がある。 図 1 M&A の形態 出典:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社が作成 マーケット

M&A のマーケットによる分類も有用だ。日本の企業同士の M&A を国内取引(IN-IN)と呼び、日本企業が海外企業を買収 する M&A をアウトバウンド取引(IN–OUT)、海外企業が日本企業を買収する M&A をインバウンド取引(OUT-IN)と呼ぶ。 上記の例であれば、丸紅と NEC モバイリングの M&A が IN-IN、サントリーの 2 つの M&A が IN-OUT、東京エレクトロンの M&A が OUT-IN ということになる。ただし、外国株主の割合が多くなっている日本企業も増えており、日本企業の定義にも 留意が必要だ。 業種・セクター どの業種で M&A が活発であるかは M&A のトレンドを見る上で重要である。なぜなら、当該業種の業界再編がどのくらい 起こっているか、プレーヤーの競合状況からして次に何が起こるかを予測するベースになるからである。 さらに、新しいビジネスモデルを構築するために業種を跨ぐ M&A も起こっている。その場合、買収会社の業種と対象会社 の業種のどちらで M&A 取引が集計されているかをしっかり把握する必要がある。 合 併 買 収 吸 収 合 併 新 設 合 併 様 式 取 得 事 業 譲 渡 株 式 譲 渡 新 株 取 引 株 式 交 換 資本主義提携 業 務 提 携 全 部 譲 渡 一 部 譲 渡 M & A 広 義 の M & A

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プレーヤー M&A のプレーヤーとして大きく分けて 2 種類ある。 自己の事業の拡大のための買収、グループ内事業の再編・ノンコア事業の売却など通じて全体の事業価値を高めていく 事業会社(Strategic Buyer)と、対象事業を定めて投資し、当該事業価値を高め、売却することによって収益を獲得する 投資ファンド(Financial Buyer)がある。 それぞれの活動は相互に関連しており、M&A の車の両輪である。特に、投資ファンドは未公開株式と公開株式の市場を つなぐ役割も果たしている。 タイミング 我々はいつ M&A が起こったとわかるのだろうか。勿論、M&A の当事会社が発表したときである。では、その発表のタイミ ングはいつか。 一般的には最終契約書に調印後の契約を履行するタイミングだと思われがちである。しかし実際には、株式譲渡契約、事 業譲渡契約などの最終契約が結ばれたタイミングや、更にその前の基本合意書(売り手と買い手との間で基本的な事項 について合意に達した際に交わされる書面)を交わしたタイミングで公表されるケースも多い。 上記のサントリーホールディングスの例でいえば、「(前略)サントリーがビーム社の全発行済株式を 1 株あたり 83.5 ドル、 総額 160 億ドルで取得し、買収することについて最終合意しました。 (後略;サントリー社 HP より)。」と最終合意のタイミ ングで発表されている。発表のタイミングは、各国の法規制等で詳細に定められている。 M&A 金額 M&A の公表金額はどうか。株式の買収であれば、買収に必要な資金総額だ。それでは、対象会社の株式を買収会社の 株式で買う株式交換や合併の場合はどうか。基本的には等価交換になるはずだから、どちらかの株式の公正価格(より 客観的にわかる方)の総額になる(プレミアムの議論は別の機会に解説する)。 一方で、対象会社が銀行から借入金がある場合、銀行としては株主やその信任を得た経営者の信用で金を貸してるので、 株主や経営者が変わってしまう M&A では、借入条件が変更になるケースが多い。そうなると買収会社としては自分の信 用で銀行から借入をした方が有利な場合があるので、既存の借入金の返済資金も含めて M&A の買収資金とする場合が ある。この場合の M&A の公表金額は株式買収資金総額に借入返済総額を足したものになるケースもある。

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2. 2013 年の日本の M&A の動向 それでは、2013 年の日本の M&A の動向を株式会社レコフ社の MARR から見てみよう。 概要 2013 年の日本企業の M&A 件数は 2012 年と比較して 200 件(10.8%)増加して、2,048 件となった(図 2)。IN-IN は 179 件 (14.7%)増加して 1400 件に、IN-OUT は 16 件(3.1%)減少して 499 件(前年から減少したが、過去最多を記録した 2012 年 の 515 件に次ぐ高水準)となった。また、OUT-IN は 37 件(33.0%)増加して 149 件になった。 一方、2013 年の日本企業の M&A 金額は 2012 年と比較して約 3 兆 5 千億円(29.3%)減少して 8 兆 4597 億円となった(図 3)。IN-IN は約 2 兆 850 億円(55.3%)減少して 1 兆 6879 億円に、IN-OUT も約 2 兆 4500 億円(32.1%)減少して 5 兆 1727 億円になった。なお、IN-OUT は、M&A 金額合計の 61.1%を占めている。OUT―IN は約 1 兆 310 億円(181.6%)増加して 1 兆 5989 億円になった。2013 年の金額トップ 20 案件のうち、クロスボーダー案件(海外企業との M&A)が 18 件占めた。た だし、1 兆円超の大型ディールはなく、金額トップは米アプライドマテリアルズと東京エレクトロンの持株会社設立による経 営統合(OUT-IN)で 9202 億円であった。 MARR では M&A を支配権の移転取引と定義し、資産・負債の移転を伴わない事業提携は除いている。また、案件の公表 ベースで集計している。日本企業は 50%以上が日本人の株主である会社としている。案件の最低金額基準は設けていな い。 図 2 M&A 件数の推移 出典:MARR よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社が作成 621 753 834 1,169 1,635 1,653 1,752 1,728 2,211 2,725 2,775 2,696 2,399 1,957 1,707 1,687 1,848 2,048 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 vol u m e Trend by volume

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図 3 M&A 金額の推移 出典:MARR よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社が作成 マーケット別 2013 年のマーケット別の M&A の動向は下記の通りである。 1. IN―IN 主に不動産業界と流通業界での再編や業容拡大の動きがあったと共に、投資ファンドによる投資案件も活発であった。 不動産業界では、東急不動産による上場子会社の東急コミュニティー、東急リバブル 2 社の経営統合等、流通業界で は、イオンによるダイエーやスーパーのピーコックストアの買収等があった。 2. IN-OUT 地域別では、アジア 202 件、北米 133 件、欧州 116 件、その他の地域が 48 件の合計 499 件であり、特にアジアへの M&A は過去最多であった。三菱東京 UFJ 銀行によるタイのアユタヤ銀行の買収(6760 億円)、LIXIL グループおよび日 本政策投資銀行による衛生陶器大手独グローエの買収(3816 億円)が主な案件であった。 3. OUT-IN 地域別では、アジア 70 件、北米 52 件、欧州 21 件、その他 6 件の合計 149 件であり、アジアが 2012 年比 62.8%増加し た。金額では米国からの投資が 1 兆 3329 億円と急拡大して、金額の 83.3%を占めた。上記のアプライドマテリアルズと 東京エレクトロンの経営統合は日本企業には珍しい株対価での経営統合となる。 17,82222,418 34,778 180,955 116,135 82,824 49,43058,007 121,522 117,637 151,262 124,936 126,118 79,807 67,697 109,043 119,633 84,597 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 200,000 JP Y 10 0m

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業種別

MARR のデータから 2013 年の業種・セクターごとの M&A の件数(図 4)、金額(図 5)を見ると下記の通りとなる。M&A 件数 でみるとコンシューマービジネス(CB)、製造業(MFG)、情報・メディア・通信(TMT)セクターが前年より M&A を牽引してい ることがわかる。 一方金額でみると、件数の製造業(MFG)に加えて金融(FS)セクターが M&A 金額を引き上げている。情報・メディア・通信 (TMT)セクターでは、2012 年のソフトバンクの米スプリント買収のような大型案件がなかったことが 2013 年の減少に繋が っている。 図 4 業種・セクターごとの M&A の件数 出典:MARR よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社が作成 39% 27% 5% 22% 4% 2% 1% Out-In 2013 30% 28% 6% 18% 10% 4% 4% In-Out 2013 製造 コンシューマービジネス 金融 情報・メディア・通信 資源エネルギー ライフサイエンス 不動産 454 461 716 800 105 78 341 454 79 85 46 57 107 113 0 200 400 600 800 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 製造 コンシューマービ ジネス 金融 情報・メディア・ 通信 資源エネルギー ライフサイエンス 不動産 vol u me IN-IN IN-OUT OUT-IN 18% 44% 3% 24% 2% 2% 7% In-In 2013

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図 5 業種・セクターごとの M&A の金額 出典:MARR よりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社が作成 投資ファンド 投資ファンドの M&A は 2013 年から 138 件(68.8%)増加して、233 件となった。ただし、金額は約 1000 億円(18.3%)減少し て 4700 億円となった。投資ファンドの日本の M&A 市場全体に対する割合は件数ベースで 11.3%、金額ベースで 5.5%であ る。産業革新機構(東京)の案件が 18 件あり、コーポレート・ベンチャー・キャピタルなとを通じてのベンチャー投資が活発 な動きをした。投資ファンドの金額トップ案件は KKR によるパナソニックヘルスケアの買収で 1650 億円であった。 おわりに 以上のように、2013 年の日本の M&A は件数は増えたが金額としては減少した。MARR の場合、金額が公表されていない M&A 案件も件数にはカウントしているので M&A の件数と金額が必ずしも対応していない。しかし、全体の傾向として 2013 年は案件規模が小規模になったと言える。 18,035 25,357 24,611 14,353 13,394 18,142 28,855 8,729 27,018 9,463 2,368 4,828 5,351 3,584 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 20 12 20 13 製造 コンシューマービ ジネス 金融 情報・メディア・ 通信 資源エネルギー ライフサイエンス 不動産 v alu e (JPY 100m) IN-IN IN-OUT OUT-IN 22% 11% 34% 7% 16% 9% 1% In-Out 2013 製造 コンシューマービジネス 金融 情報・メディア・通信 資源エネルギー ライフサイエンス 不動産 18% 44% 3% 24% 2% 2% 7% In-In 2013 70% 14% 1% 15% 0% 0% Out-In 2013

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2013 年 1 年間で 2048 件の M&A が起こっているということは、単純に 365 日で割ると 1 日辺り 5.6 件の M&A が成立して いることになる。これはまたすごい数だと思いきや、実は成立していない M&A の件数は意外と多い。売り手と買い手が相 対で交渉し、残念ながら成約にいたらなかったケースだけではない。売り手がオークションで買い手候補の何社かに声を 掛けて売却するケースでは最終的に買収できる会社は原則として 1 社だけだ。5 社手をあげれば、4 社は残念ながら買収 できないことになる。M&A の件数は潜在的なものも含めれば相当な数に上ることは容易に想像されよう。 日本企業は人口減少等による将来の国内市場縮小、潤沢な手持資金などにより、2012 年末からの円安が進んだにも拘 わらず、海外展開を図る M&A を継続している。また、安倍政権下でのデフレ脱却政策や、円安の進行で海外企業による 日本企業の買収も増加してきた。アプライドマテリアルズと東京エレクトロンの統合や KKRによるパナソニックヘルスケア の買収などはその一例と言えよう。このような海外企業との M&A(クロスボーダーM&A と呼ばれる)が増加してくると当然 日本の事業自体の再編も必要になり、国内企業同士の M&A も盛んになる。 それでは、そのような M&A の本質とは何なのかを次回解説する。 トーマツグループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそれらの 関係会社(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会社お よび税理士法人トーマツを含む)の総称です。トーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各社がそれぞ れの適用法令に従い、監査、税務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約 40 都市に約 7,100 名の専門 家(公認会計士、税理士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はトーマツグループ Web サイト (www.tohmatsu.com)をご覧ください。 Deloitte(デロイト)は、監査、税務、コンサルティングおよびファイナンシャル アドバイザリーサービスを、さまざまな業種にわたる上場・非上場のクラ イアントに提供しています。全世界 150 ヵ国を超えるメンバーファームのネットワークを通じ、デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクラ イアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています。デロイトの約 200,000 人におよぶ人材は、 “standard of excellence”となることを目指しています。 Deloitte(デロイト)とは、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)およびそのネットワーク組織を構成するメンバ ーファームのひとつあるいは複数を指します。デロイト トウシュ トーマツ リミテッドおよび各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織 体です。その法的な構成についての詳細は www.tohmatsu.com/deloitte/ をご覧ください。 本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対 応するものではありません。また、本資料の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあ ります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載 のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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