香川県における水稲品種キヌヒカリの移植時期に関する研究--乾物生産と気象要因との関係---香川大学学術情報リポジトリ

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香川県における水稲品種キヌヒカリの移植時期に関する研究

一乾物生産と気象要因との関係一

上田一好・桶谷彰人・浅沼興一郎

EFFECTOFTRANSPLANTINGTIMEONGROWTHOFRICE

CULTIVAR“KINUHIKARI”INKAGAWAPREFECTURE

−MeteorologicalFactorsE飴ctonDryMatterProduction−

KazuyoshiUEDA,AkihitoKusuTANIandKoh−ichiroAsANUMA Thisexperimemtwasca汀iedoutinordertoexaminethein伽enceoftransplantlngtime onthedrymatterproductionofriceplantinKagawaprefbcture・AricecultivarKinuhikari wastransplantedat3−4di脆renttimes丘・Om1992to1995.Theearlier thetranSplanting timewas,theheavierthetopdryweightatheadingtendedtobe・Thedrymatterproduction innpenlngperioddidnotshowthecleartrendwithchangingtheplantlngtime・ThedIy matterproductionbefore heading time wasregulated bythelength ofthe period危om transplantingtoheading,andafterheadingtlmethatwasregulatedbythecIOpgrOWthrate・ ThecropgrowthratebeforeandafterheadingtlmeShowedasignificantpOSitivecorrelation withmeantemperatureandmeansolarradiation,reSpeCtively・Asaresultofthemultiple regressionanalysis,temperatureandsolarradiationcontributedtothecrOpgrOWthratein theratio3:1beforeheadingtime,Whereastheycontributedinl:2・5afterheadingtime・

The dry matter production,Calculatedwith the temperature and solar radiationin experimental period,agreed with the actualdry matter production・Therefore,by calculationofthedrymatterproductionwiththemeteorologicalvalueinnormalyear,We

estimatedthat the transplanting time which would gain highdIy matter prOduction was

befbrethesecond且vedaysofmay・ Keywords:Cropgrowthrate,Drymatterproduction,Headingtlme,Kinuhikari,Mean SOlarradiation,Meantemperature,Rice. 緒 水稲の移植時期に関する研究は,1949年に薦田ら‖〉が香川県で行った試験が契機となり,1950∼ 60年代にかけて全国的に広く実施された.薦田ら(l)はこの研究の中で,移植時期を早めることで従 来の普通期栽培よりも多収になることを明らかにしたが,これはそれまでの水稲の作期についての 常識を・一凌させるものであった.このため,移植時期の早進による増収は折からの食程不足に対処 する新しい技術として−注目を集め,そ・の増収機構の解明を目指した研究が相次いで行われた(23456) これらによって得られた成果は暖地における早期・早植栽培として普及し,米の増産に大きく貢献 したが,その後1960年代後半から米の生産過剰が顕在化するとともに,多収技術としての作期の研

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究は急速に減少していった.しかし,最近では息食味品種の安定栽培といった立場から,作期の移 動に閲した研究(7891011) が再び増加しつつある. 香川県では,1991年にキヌヒカリが新しい良食味品種として■奨励品種に採用された.キヌヒカリ はその後,束四国国体の香川県における国体米に指定されたこと等から急激に作付を伸ばし,1996 年の作付面積は2630ha(県全体の水稲作付面積の14.3%)に達した.このように,キヌヒカリは県 産米の評価向上に大きな役割を果たすと期待されているが,本県における栽培特性はまだ十分把撞 されていない.すなわち,キヌヒカリの良食味性を生かし,かつ増収をはかるための栽培法が確立 されているとは言い難い. 本研究はこうした背景の中で,キヌヒカリの移植時期が生育,収量,食味等に及ぼす影響につい て調査したものである.すなわち,本県における息食味米の安定生産に資する基礎的知見を得るた めに,キヌヒカリの増収とこ食味向上を両立させる栽培法について移植時期の面から検討を加えた. あわせて,気象要因との関係を計量的に解析し,キヌヒカリの移植,施肥,刈取り等に関する計画 栽培上の指針を得ようと/試みた.生育相,収量および食味との関係については他に報告(1012)したの で,本報では移植時期の違いが乾物生産に及ぼす影響について検討した結果を報告する. 材料 と方法 試験は,1992年から1995年にかけて香川県高松市の農家水田においてヰヌヒカリを供試して衝っ た. 育苗は,香川大学農学部のガラス室と網室内で行った.いずれの移植時期も育苗箱(60cmX30cm X3cm)あたり150gの乾燥籾を催芽させ,鳩胸状態になった時に播種したが,育苗期間は播種時 期により20∼30日の間で調整した.また,ヒ一夕一による加温,ビニールトンネルによる被覆,ガ ラス婁の窓の開閉等を通じて■育苗期間中の温度を調節した.各年次の移植時期は第1表に示したと おりである. 第1表 各年次の移植執 出穂期,成熟乳 出穂期における地上部乾物重(W−)と葉面積指数 (ul),成熟期における地上部乾物重(W2)および出穂期から成熟期までの乾物生産 量(』W). W ︵ − ′ ALm Lm Wlが g ︵ 期郎 ・ 成周 期鋸 穂・ 出川 期酎 直. 御用 区 次 年 363 6 434 7 4 54 4 6665 602 2 661 3 139 4 841 1 9 1 00 8 1 790 7 4 4 4 3 6743 1 1 1 1 9 127422 77︵‖凸二‖0 8999 262926 1864 32 2 2 3456 ⅠⅡⅢⅣ 年 2 9 9 1 3 2 5 0 7 5 410 1 1 1

63 4 1 1 00 4 4 4

7 91 8 5 7 9 7 5 5 43 5 55 5 03 02 119 0 9110 1232 889 2 4213 567 ⅠⅡⅢ 年 3 9 9 1 3688 08 1 7 43 4 3 4656 56 7 0 7 4 43 79 9 7 1 72 4 089 7 1 1 1 1 1 4 553 7 4 05 4330 1328143 7789 88910 1 2 1 1 1 540 2 718 1 12 1 4 567 ⅠⅡⅢⅣ 年 4 9 9 1 362 4 8606 5 5 5 4 6359 1 2 2 6 8642 1 1 1 1 3 73 5 3 52 0 2 098 1 1 54 43 4496 7 1 66 6866 2 2 1 1 88910 8 231185 7789 160︵︶0 1 1 2 1 4567 Ⅰ[こ山Ⅳ 年 5 9 9 1

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本田での栽植密度は30cmX15cmの22.2株m ̄2で,1株3本の苗(稚苗)を手植えした.肥料はく みあいコシカセイ10−10−10を用い,これを10aあたり基肥として60kg,追肥として出穂期前20日 日頃に30kg,出穂期に20kgを施与した. 出穂期および成熟期に9株を採取し,その生体垂により中庸な5株を選び,部位別に分けて80℃ で48時間通風乾燥させた後,それぞれの乾物畳を測定した.また,残りの4殊につき葉面積と葉部 乾物畳を測定して葉部乾物蛮/菓面積により比菓畳を求め,これとm鳩たり棄部乾物豊から東面 積指数を算出した. 気象要因は,試験水田より東北東に約3km離れた香川県農業試験場の測定値を使用した・ 結 果 1.気象経過 第1図に,気象条件の最も悪かった1993年と最も良かった1994年および平年における日平均気温 と日平均日射量の半句別平均値の推移を示した.平年値は,気温は1961∼1990年,日射量は1974∼ 1990年の平均値である.1993年の気温は,4月上旬に一博強く低下した後上昇し,6月下旬までほ ぼ平年並に経過したが,その後は7月上旬と9月上旬を除き10月まで一骨しで平年値を下回った. 日射量は,4月下旬から9月中旬にかけてほとんど平年値より低く推移した.1994年の気温は,4 月上旬から10月中旬まで平年値より低くなることはなかった.日射量は,4月から6月中旬までは 乱高下しながら推移したが,その後9月中旬までは,7月中旬を除いて平年値を大きく上回った・ また,1992年は1993年と平年の中間位で,1995年は1994年に近い形で推移した. 5 0 5 2 2 1⊥ 平均気温 ︵℃︶ 第1図 気象経過. :平年値,−−−−− :1993年, …−…−− :1994年.

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2.移植時期別乾物生産量 各試験年次の移植期,出穂期,成熟期,出穂期における地上部乾物豊(以下,乾物畳)と素面積 指数,成熟期における乾物畳および出穂期から成熟期までの乾物生産量を第1表に示した.出穂期 および成熟期は,1994年がいずれの移植区においても他の年次より早まったのに射し,1993年はと もに遅延した.こ.のため移植時期が早いほど出穂期までに要する日数(以下,出穂迄日数)は長く なったが,登熟に要する日数(以下,登熟日数)は短縮した. 出穂期の乾物塞(Wl)は早植区で重い傾向にあったが,1992年はⅡ期区が最も重く,1994年は Ⅱ期区よりもⅢ期区の方が塞かった.出穂期の葉面積指数(Leaf areaindex,LAI)にも概してこ の傾向は認められたが,Wlよりも年次間の変動が大きかった.成熟期における乾物患(W2)はWl と同様の傾向を示した.出穂期後成熟期までの乾物増加量(』W)には,明らかな傾向は認められ なかった. ある期間内における乾物生産量は,そ・の期間の長さと期間中の乾物生産効率を示す個体群生長速 度(Crop growth rate,CGR)との積で表される.そこで,第2図に出穂迄日数(tl)およびそ−の 間の平均個体群生長速度(CGRl)とW.との関係を示した.tlとWlとの間には0.1%水準で有意な 正の相関関係が認められたが,CGRlとWlとの相関関係は有意ではなかった.すなわち,移植時期 別CGRlは早植区で低く,塊根区で高い傾向にあったが,Wlとは直接結びついていなかった.なお, 図示しなかったが,出穂期のLAIとW−との間にはr・=0.691**の有意な正の相関関係が存在した. 第3図は,登熟日数(t2)およびその間の個体群生長速度(CGR2)とAWとの関係をみたもの である.CGR2は出穂期前とは異なり,早植区で高く,晩植区で低い傾向にあり,』Wと有意な正 の相関を示した.一・方,t2と』Wとの関係は有意ではなかった. r=−0..181

。 仝

▲ A ▲ 0 0 ● A 40 60 80 100 120 8 10 12 14 16 18 tl(日) cGRl(gm−2d−1) 第2図 出穂期乾物重(W,)と移植期から出穂期までの日数(t−)および同期間の 平均個体群生長速度(CGR−)との関係. 0:1992年,●:1993年,△:1994年,▲:1995年. ***:0.1%水準で有意.

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r=0‖817*** o A

O d

ムi O ▲ ● A O r=一0.413 0 企 ▲▲ム 0 600 600 500 8 12 16 20 24 CGR2(gm−2d・1) 25 30 35 40 45 50 t2(日) 第3図 出穂期から成熟期までの乾物生産量(』W)と同期間の個体群生長速度 (CGR,)および日数(t2)との関係. 0:1992年,●:1993年,△:1994年,▲:1995年. ***:0.1%水準で有意. 18 16 14 12 10 8 「=0615* ▲ ム ▲ 0 l O A ム 12 14 16 18 20 22 Sl(MJm・2) 18 20 22 24 26 28 30 Tl(Oc) 第4図 移植期から出穂期までの個体群生長速度(CGRl)と同期間の日平均気温(Tl) および日平均日射量(S,)との関係. 0:1992年,●:1993年,△:1994年,▲:1995年. *,***:5%,0.1%水準で有意. 3.乾物生産と気象要因 乾物生産と気象要因との関係を検討するために,第4図に,出穂期までの個体群生長速度

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(CGRl)とその間の日平均気温(Tl)および日平均日射量(Sl)との関係を示した.TlおよびSlと CGRlとの関係はともに有意であった.そこで,CGRlを目的変数,TlとSlとこを説明変数とする患回 帰分析を行ったところ, CGRl=0.541Tl十0.252Sl−4.380 ・…・(1) という有意(R=0.897***)な垂回帰式が得られた.すなわち,CGRlの変異の約81%がTlとこSlとに よって艶明され,Slが同じであればTlが高いほど,またTが同じであればSlが多いほど,CGRlは大 きくなることが知られた.なお,T.とSlの標準偏回帰係数比は74:26であり,CGRlの差にはTlとSl がほぼ3:1の割合で関与していると推察された. 第5図は,出穂期から成熟期までの日平均気温(T2)および日平均日射量(S2)とそ・の間の個体 群生長速度(CGR2)との関係を示したものである.相関係数はともに有意であったので,出穂期 前と同様CGR2を目的変数,T2とS2を説明変数とする重囲帰分析を行った.そ・の結果, CGR2=0.300Tz+0.667S2−2.709 という有意(R=0.853***)な垂回帰式が導かれ,CGR2の変異の約73%が式(2)によって説明され ることがわかった.しかし,TzとS2の標準偏回帰係数比は28:72で,乾物生産効率に及ぼす■気温と 日射量の影響は出穂期前とは逆転し,日射量の貢献割合が気温の約2.5倍と推定された. 4.全乾物生産量の推定 前述のように,ある期間内の乾物生産量はそ・の間の個体群生長速度と期間の長さの積によって−表 される.そこで,上で得られた式(1),(2)を用い,乾物生産量を推定した. 出穂期までの乾物生産量(Wl)はそ・の間の個体群生長速度(CGRl)と日数(tl)により次のよ うに示される. 24 22 20 18 0GR218 (gm■2d−1ろ4 12 10 8 r・=0‖821*** ▲ 20 ム 0 18 q− O

A 16

14 A O ▲ ● ● ● 18 21 24 27 30 10 13 16 19 22 T2(Oc) s2(MJm・2) 第5図 出穂期から成熟期までの個体群生長速度(CGR2)と同期間の日平均気温(T2) および日平均日射量(S2)との関係. 0:1992年,●:1993年,△:1994年,▲:1995年. ***:0.1%水準で有意.

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Wl=CGRlX tl =[0.541Tl+0.252Sl−4.386]×tl (Tl:出穂期までの日平均気温,S∴同日平均日射量) 同様に,出穂期後の乾物生産量(AW)と個体群生長速度(CGR2)および日数(t2)との間には 次式が成立する. AW=CGR2×t2 =[0.300T2+0.667S2−2.709]×t2 …… (4) (T2:出穂期彼の日平均気温,S2:同日平均日射量) したがって,移植期から成熟期までの全乾物生産量(W2)は次のように表される. W2=Wl+∠]W 第6図は,式(3),(4)に気温,日射量の実測値を代入してWlと』Wを求め,両者の和から算出し たWzの推定値と実際のW2との関係を示したものである.相関係数はT=0.864***と高く,W2の推定 値と実測値は近似した. 0 0 8 1 0 0 6 1 成熟期乾物重の 実1400 測 値 (gm−2) 1200 1000 1200 1400 1600 1800 2000 成熟期乾物重の推定値(gm−2) 第6図 成熟期乾物重の実測値と推定値の関係. ***:0.1%水準で有意.

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(g・m−2) 1800 第7図 平年の気象条件下での移植時期別の出穂期と成熟期の乾物重(W−,W2) および出穂期から成熟期までの乾物生産量(』W)の推定値の推移. 0:Wl,△:W2,ロ:』W. 4月1半句から7月4半句までの半句ごとに移植した場合の平年の気象条件下における出穂期と 成熟期を既敵12)において推定した.そこで,そ・の結果を基に平年における出穂期前後の気象億を求 め,式(3),(4),(5)に代人して平年の気象条件下での移植時期別乾物生産量を算出した・得られた 結果を第7図に示した.wlは4月1半句から4月6半句までの移植では1100gm ̄2前後で大差なく 推移するが,その後移植が遅れるほど次第に減少し,6月中旬の移植では900gm■2,7月中旬の移 植では750gm ̄2程度になると予想される.AWは,5月中旬までの移植では600gm ̄2前後で推移す るとみられ,その後の移植ではやや減少するもののあまり大きな変動はなく,7月4半句の移植で も520gm ̄2程度になるとみられる.W2は,全体的にWlと同様に推移し,5月中旬までの移植では 1650gm ̄2,6月中旬の移植では1500gm−2,7月中旬の移植では1250gm ̄2程度になると推測される・ ‘考 察 水稲の移植時期と乾物生産との関係を検討したこれまでの研究によれば,出穂期および成熟期に おける乾物生産量は移植時期が早いほど勝るとされていることが多い(23456) .本試験においてもそ の傾向は認められたが,年次により結果は必ずしも・一・致しなかった.これは,移植時期の早晩とい

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う相対性だけでは乾物生産の差を十分説明できないことを示唆している∴すなわち,早期移植の気 象上の特徴は出穂期までの低温と出穂期後の高温多日射にある(2り4−879) が,その程度は年次により変 化する.したがって,乾物生産の差を年次を含めて統・劇的に把握するためには,移植時期の遠いを 単なる暦日上の位置ではなく気象条件の差として具体化し,この数億に基づいて解析していく必要 がある.そこで,本報では移植時期別に出穂期前後の気象要因を抽出し,乾物生産との関係につい て検討した. 出穂期における乾物羞は,出穂迄日数および出穂期の葉面積指数と有意な正の相関関係を示した が,個体群生長速度との関係に有意性は認められなかった.−・方,出穂期後の乾物増加量は個体群 生長速度と有意な正の相関関係にあり,登熟日数との関係は有意ではなかった.すなわち,出穂期 前の乾物生産は乾物生産効率ではなく,その期間の長短に支配されていたのに対t,登熟期の乾物 生産は,出穂期前とこは逆に期間の長さよりも乾物生産効率の方に強く規制されていた.また,これ らと気象要因との関係を検討したところ,個体群生長速度は出穂期前,後とも平均気温および平均 日射量と有意な正の相関を示した(13】4).しかし,重回帰分析の結果から推定した気温と日射量の個 体群生長速度に対する貢献割合は,出穂期前は約3:1,出穂期後は約1:2.5であり,両者の影響 力は出穂期を境として逆転した(13).このように,乾物生産の様相は出穂期の前と後で対照的であった. 温度や日射は生育の各段階で植物体に強く作用し,乾物生産の基本方向を決定する.−・般に植物 は温度の上昇に伴い素面積を増加させる‖3141516) .したがって,温度はこの効果を通じて拡大再生 産の段階にある植物の生長を規制し,乾物生産に影響する.これに射し,日射は葉面積の拡大に対 して抑制的に働く面を持ち,拡大再生産の段階にある植物に対して顕著な促進効果を持つとは限ら ない(131617) .水稲も出穂期までは葉面構を拡大しつつ生長する.このため,出穂期前は葉面積の拡 大に凍い関わりを持つ温度の方が日射量よりも乾物生産効率を強く規制する.なお,移植時期が早 いほど出穂期までを概して低温に経過す−る(24679)ため,早植区はこの間の菓面積の展開速度が遅く, 個体群生長速度も低くなるり3).しかし,出穂迄日数が長いために,出穂細の葉面積は大きくなり, 総乾物生産量は多くなるのが−・般的である(34613).すなわち,出穂期前の乾物生産は乾物生産効率 よりも菓面積の大きさという量的要因の支配を強く受けると考えられる. これに対し,菓の形成が既に終了している出穂期以降は,菓面積の拡大による乾物生産量の増加 はあり得ない.したがって,登熟期においては限られた菓面積にいかに多くの日射エネルギーを取 り込み乾物に転換させるかという質的な問題が重要となってくる.このため,受光態勢や個葉の光 合成能力が強く関与するようになるが,同じ品種であれば移植時期を変えてもこれらが大きく変化 するとこは思われない.それ故,出穂期以降は乱射量の多寡そ・のものが大きな意味を持ち,乾物生産 にも強く影響するようになると考えられる.早樟区は登熟期の日射量が多く,このため出穂期後も 高い乾物生産効率が維持され,乾物生産が高まるものと推測される. 気温と日射量から推定した乾物生産量は実測値とよく一敦した.すなわち,気象要因から乾物生 産を高い精度で推測できることが判明した.そこでこれを基に,4月上旬から7月中旬までの半句 ごとに移植した場合を想定し,平年の気象条件下での乾物生産量を予測した.そ・の結果,乾物生産 量は5月2半句頃までの移植ではそれ程大きく変動しないが,移植がそれより後になるにつれて次 第に減少し,7月に移植した場合の乾物生産畳は5月中旬までに移植した場合の約75%にまで低下 するとみられた.これらより,乾物生産からみた本県におけるキヌヒカリの最適移植期は5月2半 句以前と判断された. 摘 要 香川県における水稲の移植時期が乾物生産に及ぼす影響を明らかにするために,1992年

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から1995年にかけてヰヌヒカリを3∼4回の異なる時期に移植し,乾物生産と気象要因と の関係を検討七た..出穂期の地上部乾物皇は早植区で重い傾向にあったが,豊熟期間の乾 物生産量には明らかな傾向は認められなかった.乾物生産は,出穂期前はそ・の期間の長短 に,出穂期後は個体群生長速度に強く規制されていた.個体群生長速度は,出穂期の前後 とも平均気温および平均日射量と有意な正の相関を示した.しかし,塞回帰分析の結果, 気温と日射量の個体群生長速度に対■する貢献割合は,出穂期前は約3:1,出穂期後は約 1:2小5であり,両者の影響力は出穂期を境として遡転した∴気温と日射量から推定した乾 物生産量は実測値とよく一一致し,気象要因から乾物生産を高い精度で推測できた.これを 基に,平年の気象条件下での乾物生産量を予測したところ,高い乾物生産をあげ得る移植 時期は5月2半句以前と判断された 謝 辞 高松市川部町の畠山清氏には,水田を拝借したうえ日常の管理についても多大な協力を いただいた.気象要因は香川県農業試験場の観測値を使わせていただいたい各位に射し, 心からお礼申し上げる. 引 用 文 献 10.上田−・好,桶谷彰人,浅沼興−・郎,−・井眞比古 :香川県における水稲品種キヌヒカリの移植時 期に関する研究一収量および食味と気象要因と の関係−‖ 日作紀 投稿中.. 11.普永情意,小林廣美:西南暖地水稲における作 期による玄米成分の変化と食味の関係..日作紀, 61(別2),41−42(1992). 12.上田−・好,桶谷彰人,浅沼興一・郎,−・井眞比古 :香川県における水稲品種キヌヒカリの移植時 期に関する研究一括着期・出穂期および成熟期 と気温との関係−..日作紀 投稿中.. 13..村田吉男二:作物生産と栽培環境.村田書男,玖 村敦彦,石井龍一・共著,作物の光合成と生態. pp…147−196.、農文協,東京(1976). 14一.鈴木守:暖地水稲の収量成立過程の物質生産的 特徴に関する研究..九州農試報,20,429−494 (1980)い 15.MrYASÅKA,Aり MuRATA,Y..,andIwATA,T∴:

Leaf Area Development andLeaf Senescencein

Relation to Climate and Other Factors.In Y..Murata

(eds.),Crop Productivity and Solar EneTgy UtilizationinVariousClimatesinJapan.pp..72−85” Univ。Of■TokyoPress,Tokyo(1975)..

16り 村田善男二太陽エネルギ・一利用効率と光合成‖

育種学最近の進歩,15,3−12(1974)い

17..KuMUR^,A∴LeafAreaDevelopmentandClimate”

In Y,Murata(eds.),Crop Productivity and Solar・ ljnergyUtilizationinVariousClimatesinJapan.・ppl 60−66。Univ..of■Tokyo Press,Tokyo(1975).. (1997年6月30日受理) 1.薦田快夫,未沢−・男,白井勇:水稲栽培期の可 動性と水田輪栽に就て.香川県農業改良課研報, 2,1−9(1949).. 2..小松良行,原板紀,川崎勇,石川越三::暖地水 稲における早棺多収栽培の実証とその要因解析. 四国農試報,10,1−38(1964).. 3.相田書男,長田明夫,猪山純一・郎::水稲収量と 光合成作用一早晩期栽培の場合を中心として−. 農及園,32,1292−1296(1957).. 4.佐本啓智:水稲早期,早植栽培の生態に関する 研免.とくに東海近畿地域における早期,早植 栽培の多収機構と栽培時期の移動について.東 海近畿農試研報,15,1−42(1966)い 5.山田登,太田保夫:早期及び晩期栽培水稲の生 育相.農及園,31,769−774(1956)り 6.山川寛:暖地における栽培時期の移動に伴う水 稲の生態変異に関する研究..佐賀大学農学彙報, 14,23−159(1962).. 7.楠谷彰人,浅沼興一・郎,木暮秩,関学,平田壮 太郎,柳原曹司:境地における早期栽培水稲品 種キヌヒカリの収量および食味..日作紀,61, 603−609(1992).. 8..松江勇次,水田−・枝,高野久美,青田智彦:北 部九州産米の食味に関する研究..第1報 移植 時期,倒伏の時期が米の食味および理化学的特 性に及ぼす影響一.日作紀,60,490−496(1991)い 9−.上田一好,岡田彰夫,佐野実,猿渡広和,楠谷 彰人,浅沼輿一郎,木暮秩::キヌヒカリの生育, 収量および食味特性に及ぼす移植時期の影瞥. 日作四国支紀,29,17−26(1992).

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