時間研究における代表値に関する一考察

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愛知工業大学研究報告

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-時間研究における代表値に関する一考察

大杉直幹

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1n determining a standard tim巳byway of direct tim巴studymethod, on observed

operation should be carried out in a stabled manner, i.e, with minimum variation. 1n order to meet this requirment, any values of extraodinal nature should be omitted in calcula -tion. However in r巴ality,penatration of various factors which makes an operation be

unstable is unevitable, and segration of such data is beyond a practice.

This paper suggests a practical approch by plotting accumulated me呂nvalues for a

certain period of time, and then select a range of such values when a curve comes to be stablized. There are several different patterns in an accumulated mean values and different treaments are suggested accordingly 1.まえがき 2.実験内容 2 ・l 観測対象作業 39 生産方式の合理化,省人化の重要性は今更述べる までもなく,特に人件費の増大,品質の均一化等に 対処するため,自動化は急ピッチで進められている。 その際,標準作業方法の決定,標準時間の算定等, 作業研究は忽せに出来ない事項であるが,その基本 事項のーっとして時間研究があり,その方法として は甲斐1)が述べているように,ストップ・ウォッチ 法, ワーク@サンプリング法,

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法および標準 時間資料法等種々の方法があるが,一般的にその手 軽さと実用性から企業において多く用いられている ストップ・ウォッチ法を用いる場合,観測値の取ま とめに当っては,代表値の決定を行わねばならない。 観測値は作業者の心理的影響や,作業ペース等によ ってパラツキの出ることは避けられない。従って9 代表値の選び方にも,算術平均法,指定選択法,最 大頻度法等2)あり,又中央値3)を用いることもある。 然し,一般的には簡便性から算術平均法が多く用い られている。この場合,橋本4)も述べているように, 作業条件が不安定てあったりすると,正しい代表値 とは言えない結果となる危険がある。そこで今回, 算術平均法を用いる場合, どんな考慮をすべきかに ついて実験を試みた。 小物部品の加工並びに組立作業について,手作業 と機械作業とを区分して,手作業時間を対象として 測定した。 2

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1 スポット 部品を取上げ,スポット機にセットし,足踏レパ ーでスポット熔接し,取出す。 2・1・2 カシメ 部品を取上げ,カシメ機にセットし,作動ボタン を押し,カシメ後,取出す。 2・1・3 組立て ケースに部品を取付け, ビス締めする。 2 • 2 測定方法 測定方法は2つの方法を利用した。カシメ,スポ ットは, プリンター付ストップ@ウォッチを用い, 観測者は2人ぺアで、行った。組立てはストップ@ウ ォッチとVTR録画を併用した。

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測定値及び代表値 代表値を求めるに当っては,一般によく算術平均 法が利用されるが, この場合,異常値を除去する必 要がある。異常値の除去方法には,メリックの方法 や 2σの限界を用いた X

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2R/d2 の算式を利

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40 愛知工業大学研究報告, 第

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用する方法5)等があるが,ここでは,

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で用いてい るX-R管理図と同じやり方で, X土A2R の管理 限界を用いた。 3・1・1 スポット 100田づっ 2度別々の臼に測定を行った測定値を グラフ化8)したものが,図l及び図3である。このデ ー タ の 変 動 係 数 標 準 偏 差

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平均値X を計算す ると,それぞれ0.26,0.24で一応安定状態7)とみられ るが,図に示された分布状態からみて,かなりバラ ツキが見られる。そので累計平均工数を計算し, こ れをグラフ化した9)1九 図1に対応するものが図 2 で,図3に対応するものが図4である。 DM 平 均 値 10.146 標 準 偏 差 2.68 変 動 部 盟 0.26 回 図 1 スポット観測値 DM 12.00 11 .20. 10.4-0 / /→ 9.601 ー../-"ノ 〆 / 〆 8 . 8 Oj 1¥ _~____ 〆ノー..-./ '11¥ノv""〆 レ ヘ j

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8.00ム「一一二 SEQ NO. 12 23 34 45 56 67 78 89 100 回 図2 スポット累計平均工数 DM 21.80 18.84' 0 0 1 9 8 8 7 7 6 6 5 5 A 守 4 3 3 R 4 2 1 ! 1 D 0 0 7 N G E S 平 均 値 10.525標 埠 幅 差 2.53変 動 幅 数 0.24 回 図3 スポット観測イ直(再測定〉 D門 12.0 11.20 10.40 9.60 8.80 SEa NO. 12 宅3 34- 45 S6 67 78 89 100 回 図4 スポット累計平均工数(再測定〕 図2についてみると,累計平均工数は次第に大き くなり,グラフは右上り傾向を示し,測定の終り頃 に水平に近くなり,安定状態になってくる。これは 測定の始めには,作業者が緊張し,かなり早いベー スで作業を行い,次第に心の緊張が緩んで,平常状 態になっていったものと思われる。一方,図4につ いてみると,前とは逆に,次第に右下りとなってい る。これは,測定の始めには,いわゆる調子が整は ず,次第に安定したものと思われる。何れも測定は 作業開始後暫くしてから測定を開始したが,観測さ れているという事に対する心理的影響と思われ,安 定状態に至るまでにはかなりの時聞を要し,しかも, 時によって逆の傾向を辿ることがある。 この測定結果より代表値を選ぶ場合,図lの場合, 測定開始後11-20番目の測定値に基き,限界値を計 算し,異常値とみなした値を除外して算術平均した 値は8.75となる。即ち,右上り傾向の場合,当然, 高い値が除去される率が高いからである。次に,最 終の10個の観測値を基に異常値を除去して平均工数 を算出すると10.4となる。この場合,低い値が除去 される率が高いからである。 図3再演定の場合について前途と同様の方法で平 均債を算出してみると,観測始めの観測値を基準に した場合の平均値は10.2となり,観測終りの観測値 を基準にした場合, 10.0であまり差はない。この場 合,累計平均工数は右下り傾向ではあるが,傾斜が ゆるやかであるためであり,又図 1初回観測の最終 観測値を基準にした場合とほぼ一致する。又この値 比観測値のメジアン(中央値〉とも大体一致して いる。 3・1・2 カシメ 100田及び126回の 2度別々の日に観測を行った。 再測定のときは, 130回測定したが,内 4回は例外的 作業を含んでトいたので、除外した。その結果をグラフ 化11)したものが,図5及び図 7である。この測定値の

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時間研究における代表値に関する一考察

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DM 14..20 6.70~ SEa NO. 12 23 34. 4.5 56 67 78 89 10'0 平 均 憧 8.786標 準 偏 差 1.31 藍 動 晶 融 0.15 回 図5 カシメ観測値 D門 8.00 SEQ NO. 12 23 34- 4.5 56 67 78 89 100 国 図6 カシメ観測平均工数 D門 15.20' SEQ NO. 15 29 43 57 71 113 126 回 平 均 値 9.199標 準 偏 差 し46 変 動 晶 数 0.16 図7 カシメ観測値(再測定〉 DM 11山

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8.6 8.00 SEQ NO. 15 29 43 57 71 85 99 113 126 回 図8 カシメ累計平均工数 変動係数は,それぞれ0.15,0.16であった。この累 計平均工数をみると,図5に対応したものが図 6で あり,図7に対応したものが図 8で,何れも右下り であるが,概ね安定状態を示してをり,図5につい て,測定開始後11~12番目の測定値を基準に,異常 債を除去した平均値と,最後の10個を基準にし,た 場合とは共に8.7と同じ値となり,メジアンともほぼ 一致する。 図7再測定についても同様の算定をすると, 9.02 及 び9.0となり,これもほぼ同じ値となり,メジアン ともほぼ一致する。何れも測定開始時のデータを除 けば,累計平均工数のグラフはほぼ水平となり,こ の様な場合は平均値は,ほぼ同じ値となる。 3・1・3 組立て 63屈の測定を行った結果は,図9のようになった。 変動係数は0.15で,波形となって周期的に変動して 。 門

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4 4 4 4 0 6 4 0 4 3 2 2 SEQ ND. 1 7 13 19 25 31 37 B 49 62 回 平 均 瞳 27.416 標 準 偏 差 4.18 変 動 品 数 0.15 図9 組立観測値 DM 50.00-4 .2.00. 34.00

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-26. 0 a~ "--. ./--...' 18.00 10.0口 SEa NO. 7 13 19 25 31 37 4.3 49 62 回 図10 組立累計平均工数 いる。累計平均工数をとり,グラフ化すると図10の ように水平となり,安定した状態を示すが,異常値 除去の際,基準とする債が波形の頂部に概当した場 合と,谷部に概当した場合とでは当然差がでる。こ の例では,最初の10個を基準として場合, 28.1とな り,最後の10個を基準とした場合, 27.2となる。

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まとめ 時間研究に際しては,作業が安定状態にあること が必要であることは言うまでもないが,種々の条件

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42 愛知工業大学研究報告, 第28号B, 平成5年 VoI.28-B, Mar.1993 表 1 代表値算出事例 初 回 測 定 再 リ狽 定 作 業 名 A B 変 動 データ A B 変 動 データ 係 数 傾 向 係 数 傾 向 スポット 8.75 10.4 0.26 F 10.2 10.0 0.24

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カ シ メ 8.7 8.7 0.15

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9.02 9.0 0.16

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組 立 28.1 27.2 0.15 A:観測値の最初のデータを異常値の基準とした場合の平均値 B:観測値の最後のデータを基準とした場合 から,測定値はかなりバラツキを生ずる。従って, 測定値を直接観察しても,安定状態かどうか判断し 難い場合がある。又変動係数だけに依存することも 困難である。このようなとき,累計平均工数をグラ フ化してみると,データの傾向として,

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右上り, (2)右下り, (3)水平, (4)波形等様々の形状となる。 代表{直を算定するに当って,一般的によく使われ る算術平均法を利用する場合,異常値を除去せねば ならないが,その際,表 Iの事例のように,データ の形態

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異常値判定の基準となる測定値のとり方 によって異なった代表値となる。従って,累計平均 工数がほぼ一定になる点で異常値判定の基準測定値 をとり,それ以降のデータにより平均値を出すよう にした方が9 安定した値を得ることができる。この ためには,必要観測回数の2倍位の観測を行ってを き,安定状態になってから以降のデータ数が,必要 データ数になるようにするとよい。又データの傾向 が波形の場合は,中間的位置から基準値を選ぶ、よう にする必要がある。 時間研究は極めて基本的な研究であるが, FA化 や,

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研究の基準として,その活用が益々重要とな ってきているが,実際,作業現場において直面する 現象の一端に対して9 若干のデータに基いて考察し たもので,ごく限られた事例で、あり,不十分な点は 多々あるが,何らかの参考に供し得れば幸である。 謝 辞 本研究に際し,観測現場の提供をして載いた企業 には,一方ならぬ御協力を賜わり,深く謝意を表し ます。 参考文献 1)甲斐章人 1 E基礎要論, 145,税務経理協会, 東京, 1985. 2 )日本能率協会 作業測定の技術, 141,日本能率 協会,東京, 1980. 3) 石川 馨'品質管理入門, 78,日本科学技術連 盟,東京, 1968. 4)橋本義継時間分析と研究, 178,工業調査会, 東京, 1964. 5)池永謹一,秋庭雅夫,師岡孝次 1 E演習問題 集, 60, 61, 臼科技連出版社,東京, 1977固 6)池永謹一:現場の1

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手法, 193, 194, 日科技 連出版社, 1979. 7) 黒田 充.ラインーバランシングとその応用, 93, 日刊工業新聞社,東京, 1984. 8) 10)11) 日本科学技術研修所.品質管理支援シ ステム

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, 日本電気ソフトウ エア,東京, 1990. 9 )津村豊治,佐久間章行:作業研究, 176,丸善, 東京, 1980. ( 受 理 平 成5年 3月19日〕

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