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クヌギ,コナラの果実の発育にともなう内生生長物質の変動

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Academic year: 2021

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広葉樹研究No 5 67∼71(1989) (67) 〈論文〉

クヌギ,コナラの果実の発育にともなう内生生長物質の変動

橋詰隼人*

Changes in Endogenous Growth Substances during Acom Development in       Quercαs∂cuf∫ss∫η7∂and q serraf∂ Hayato HASHIZUME*

Summary

 Changes in endogenous growth substances during the development of acorns of Qμθπμsα6μ加s‘勿αand Q sθγm彪were investigated by paper chrolnatography and bioassay.  Several auxins(Rfs O∼0.2,0.3∼0.4,0,4∼0.6 and O.7∼0.9), two gibberellin−like substances(Rfs O.2∼0.3 and O.5∼0.8), two cytokinins(Rfs O.4∼0.5 and O.6∼0.8)and two growth inhibitors(Rfs O.3∼0.4 and O.5∼0.8)were detected in the extracts of acoms. The activities of auxins, gibberellin−like substances and cytokinins were greatest in the acorns during the active growth period(from late August to early September)and decreased with acorn maturation. On the o出er hand, growth inhibitors tended to increse in mature acoms as compared with immature acorns.       1 緒       言  クヌギ,コナラはシイタケ原木に最も適した樹種で,最近人工造林の面積が急速に伸びている。造 林面積の増加にともなって苗木が不足し,必要本数を確保できない状況にある。クヌギ,コナラの苗 木は実生で養成するので種子を採集しなければならないが,その対策は不十分である。種子を安定的 に供給するためには採種園や採種林を設定して結実を促進し,大量に種子を生産する必要がある。筆 者は種子生産を円滑に行うためにクヌギ,コナラの開花・結実の習性,結実促進などについて研究し てきたがト5),今回基礎研究の一環として果実の発育と内生生長物質との関係について若干の研究を行 ったので報告する。

      II材料と方法

1.供試材料 クヌギ,コナラの果実を分析に用いた。これらの果実は鳥大樹木園(鳥取市湖山町)で8月下旬か 鳴取大学農学部農林総合科学科森林生産学講座:D吻伽吻げ伽θ蜘Sε吻ら花α吻㎡Ag励伽微        乃’τoγi仇あε短り

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(68) 橋 詰 隼 人 ら10月下旬の期間に採取した。採取した果実は殼斗を除き堅果を分析に用いた。ただし10月の供試材 料は果皮を除去して内部の胚の部分を分析に供した。 2.生長物資の分離・検定  試料609を細切し,80%冷メタノールで48時間抽出した。抽出液をろ別し,減圧下でメタノールを 除き,PVPを加えて吸着物質を除去した。ろ液は2N塩酸でpH 3に調節し,酢酸エチルで4回振出し て,酢酸エチル相(1)と水相(IDに分けた。1相は飽和炭酸水素ナトリウムで3回振出して,水 相を分別した。水相は2N塩酸でpH 3に調節し,酢酸エチルで4回振出して、酢酸エチル相を分別し、 減圧下で乾固して,分画1をえた。II相は減圧下で酢酸エチルを除き,イオン交換樹脂Dowex 50W −X8のカラムを通して吸着させた後,70%メタノールと蒸留水で順次洗じょうし、次いで2Nアン モニア水及び5Nアンモニア水で溶出し、これを減圧下で乾固して,分画IIをえた。分画1はオーキ シンとシベレリンの検定に,分画IIはサイトカイニンの検定に用いた。オーキシン,ジベレリン及び サイトカイニンの分離は,ペーパー・クロマトグラフィーによって行った。展開溶媒として,イソプ ロパノール:アンモニア:水(8:1:1,v/v/v)混液を用いた。生長物質の検定は生物試験によ って行った。オーキシンの検定は試料109相当分を用いてマツ胚軸試験法によって,シベレリンの検 定は試料30∼509相当分を用いてイネ検定法によって,サイトカイニンの検定は試料209相当分を用 いてダイズカルス検定法によって行った。

II 結 果 と 考 察

 クヌギ,コナラの果実の発達と成熟については前報剤で詳しく報告した。クヌギの果実は成熟に2年 を要し,受粉後1年目には殆ど生長せず休眠状態で停止している。2年目に入って7月から果実は生 長を始め,8月と9月に急速に生長して10月中旬頃成熟する(図1)。 (%)  100 80 堅 果60 の 生 長  40 20 0 7 8 9 10(月) (%) 50 4° 3。ζ  ζ ・・薯  率 10 0 図1 クヌギの堅果(2年果)の発育と全糖、   粗デンプン含有率との関係 (%) 100 80 量6・ 星 長40 20 0 7 8 9 10 (月) (%) 50 40全  糖 30デ  ち ,。苔  墓 10 0 図2 コナラの堅果の発育と全糖、粗デンプン   含有率との関係

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クヌギ,コナラの果実の発育にともなう内生生長物質の変動  コナラの果実はクヌギと違って開花後1年 で成熟する。すなわち,雌花は5月に開花し, 幼果実は7月まで徐々に成長するが、8月以 降急速に生長して10月上旬に成熟落下する(図 2)。堅果の落下時期はクヌギよりも少し早い。 このようにクヌギとコナラの果実の発育経過 は著しく異なるけれども,果実の発育の最も 盛んな時期は8月と9月の2カ月である。  9月上旬から10月上旬の堅果の生長・成熟 期に内生生長物質を分析した結果を図3∼4 に示した。クヌギについてみると,オーキシ ン様物質はRfO∼0.2,0.3∼0.4,0.7∼0.9に みられるが,9月26Elよりも9月6日の方が 活性が高かった。生長抑制物質はRfO.5∼0.7 で検出され,9月6日よりも9月26日の方が 活性が高かった。ジベレリン様物質はRfO. 5∼0.8で検出され,いずれの時期にも多く認 められた。サイトカイニン様物質はRfO.4∼0. (%) マ140 ツ 胚120 軸 切100 片 伸80 長 率 (mm) イ 40 ネ 第302 葉20 鞘 伸10 長 量 (mg) ダ80 イ ズ60 カ ル40 ス 生20 長 鐙 o オーキシン 9月6日 9月26日 ジベレリン 9月6日 サイトカイニン 9月6日 (69)   0     0.5    1.0 0     G.5    1.O Rf 図3 クヌギの堅果の生長期における内生生長物質の変動 (%) マ140 ツ 胚120 軸 切100 片 伸 80 長 率 (mm) イ30   第 25 2 葉 20 鞘 伸 15 長 量 10  (mg) Z・・ 秀1・ 《・ 養 オーキシン 9月6日 ジベレリン 9月6日 10月9日 サイトカイニン 9月6濁 9月26日 10月9日 0 0,5 1.0 0 0.5 1.0 0 0.5 1.oRf 図4 コナラの堅果の生長・成熟期における内生生長物質の変動

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(70) 柘 詰 隼 人 GA漉算 μ9/ 生重1009

  5

く4

 ζ

き3

墾, 1 8月20 309月10 20  3010月10 20  30(ED          測定月日 図5 クヌギとコナラの堅果の生長・成熟期における   ジベレリン様物質の変動 5と0.6∼0.8で検出され,9月6日,9月26日 ともに活性が高かった。  次にコナラについてみると,オーキシン様 物質はRfO∼0.3,0.4∼0.6,0.8∼1.0で検出 され,活性は9月6E}に最も高く,9月26日 と10月9日には減少した。生長抑制物質はRfO. 3∼0.4,0.5∼0.8で検出されたが,活性は9 月6日よりも9月26日と10月9日の方がやや 増加した。ジベレリン様物質(RfO.5∼0.7) は9月6日と9月26日に多く検出され,10月 9日には減少した。サイトカイニン様物質(RfO. 5∼0.6あるいはRfO.7∼0.8)は9月6日に最 も多く検出され,9月26日と10月9日には減 少した。次に別の年度にジベレリン様物質を 分析した結果を図5に示した。ジベレリン様物質はコナラよりもクヌギに多く含まれていた。両樹種 とも含有量は8月下旬に最も高く,漸次減少して10月の堅果の落下時期に最低になった。8月25日の 含有量はGA3換算で生重1009当たリクヌギで5.36μg,コナラで1.50μgであった。表1,2の堅果の生 長曲線と対比してみると,オーキシン,ジベレリン,サイトカイニンはいずれも堅果の生長期に多く, 成熟期に減少する傾向がみられるが,生長抑制物質は逆に堅果の成熟期に増加するようである。  果実の生長・成熟と内容成分との関係についてみると,クヌギ・コナラの堅果は8月上旬から9月 中旬の間に急速に生長して大きくなるが,乾重量は9月上旬から10月上旬にかけて増加し,大きさの 生長よりも少し遅れる。全糖の含有率はクヌギでは9月上,中旬に,コナラでは8月下旬∼9月上旬 に最高になり,堅果の成熟にともなって減少するが,粗デンプンの含有率は9月上旬から10月上旬に かけて急激に増加する。すなわち,8月下旬から9月中旬の時期は堅果の生長の最も盛んな時期で, 細胞分裂が活発に行われ,盛んにデンプンが合成される時期である。サイトカイニンは細胞分裂を, オーキシンは細胞分裂や細胞の伸長を促進し,ジベレリンもまたDNAの合成と細胞分裂を促進する。 これらの生長促進物質は一般に生長の盛んな部分に多く,特にジベレリンは未熟種子に大量に含まれ ている。,果実の生長・発育と植物ホルモンとの関係は果樹類でかなり詳しく研究されている瑚。植物ホ ルモンの時期別変動は果実の種類によって全く同じではないが,一般にオーキシン,ジベレリン,サ イトカイニンは果実の肥大期に多く,成熟にともなって減少するようである。他方アブシジン酸は果 実の発育の後期に増加する場合が多い。林木については例が少ないが,Michalski8)がイギリスナラ (Q%π泌励μγ)で種子の発育にともなうジベレリン様物質の変動を調べている。イギリスナラでは 発育中の種子に3種類のジベレリン様物質が認められたが,これらの物質は生長最盛期の未熟種子に 最も多く含まれており,種子が成熟するにつれて漸次減少した。筆者6)がトチノキで調査したところ, ジベレリン様物質は生長最盛期の堅果に最も多く含まれており,完熟期の堅果では著しく減少した。 このように内生生長物質は種子あるいは果実の発育・成熟と密接に関連して変動するが,林木ではこ

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クヌギ・コナラの果実の発育にともなう内生生長物質の変動 (71) れらの物質の役割についてあまり研究されていないので,今後更にくわしく研究する必要がある。       IV 摘       要  クヌギ・コナラの種子の発育にともなう内生生長物質の変動を調べた。  1.クヌギ・コナラの種子にはオーキシン,ジベレリン,サイトカイニン,生長抑制物質(おそら くアブシジン酸)が含まれていた。  2.オーキシン,ジベレリン,サイトカイニンは生長最盛期(8月下旬∼9月上旬)の未熟種子に 多く含まれており、種子の成熟にともなって減少した。他方生長抑制物質は未熟種子よりも成熟種子 に多いようであった。未熟種子におけるジベレリンの含有量は,GA3換算で生重1009当たりクヌギで 5.36μg,コナラで1.50μg含まれていた。 文 献 1)橋詰隼人:クヌギの着花促進試験.日林関西支講,30,141∼142(1979) 2)橋詰隼人:クヌギおよびコナラの果実の発育にともなう化学成分の変化.鳥大農演報,11,   71∼76 (1979) 3)橋詰隼人・尾崎栄一:クヌギおよびコナラの果実の発達と成熟鳥大農研報,31,189∼195(1979) 4)橋詰隼人:クヌギ採種林における種子生産.広葉樹研究,4,1∼18(1987) 5)橋詰隼人:コナラニ次林における種子生産.広葉樹研究,4,19∼27(1987) 6)橋詰隼人:トチノキの結実と果実の発達,成熟.広葉樹研究,4,29∼37(1987) 7)小西国義:植物の生長と発育.養賢堂,PP.160∼169(1982) 8)Michalski, Ll Content of plant growth regulators in the developing seeds of oak(Q%θγα益   γoψγL)1.Gibberellin−like substances. AcrαSoc毎α加Borα励coγμ勿Polo励α傷37,541∼546   (1968) 9)菅 洋:作物の発育生現.養賢堂,PP.319∼334(1979)

参照

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