管理論としての経営経済学に関する考究
(
2・完)
一一ウェル十一・キルシュの見解を中心に一一
全休日次 I 序 II 管理論としての経営経済学の方法論的基礎渡 辺 敏 雄
III 管理の学問としての組織的管理システム論(以上前号-59巻1号ー掲載) IV組織変更をめぐる実証的研究 V 管理のための学問としての組織変更管理論 VI 管理論としての経営経済学の特質と問題点 VII 結 CIV以下VIIまで本号一59巻2号一掲載により完結〕I
V
組織変更をめぐる実証的研究 キノレシュは,組織変更に関する認識をかれの門下生と共に行った実証的研究 に負っている面がある。特に組織変更の認識に関する出発点となった研究を紹 介しておくことは以下の議論の必須の前提をなす。その研究とはマイヤー (G Mayer)とガーベル(EGabele)による『事業部制導入の過程一 13の大企業の 組織変更に関する調査的研究』である。 ( 1 ) G Mayer u. E Gabe!e, Der Prozes der Divisionalisierung - Eine explorative Studie uber seorganisationen von 13 Grossunternehmenー in:W Kirsch, CBorsig, R Dumont du Voitel, W.. -M.. Esser, E Gabele, R.. Knopf, G.. Mayer,
EmPirische Explorationen zu Reorganisationprozessen, Munchen 1978
マイヤーとガーベノレのこの研究は,当初は単行本としてミュンヘンにて1975年に刊行 されたが,その後にキノレシュとかれの共同研究者による上記の審物のなかの一編の長大 な論文として収録されることとなった。われわれは本稿ではこの収録された研究の方を 用いるので,引用頁数はもとよりキノレシュとかれの共同研究者による上記の書物のもの
マイヤーとガーベノレの研究は, ドイツ連邦の 13の大企業で, しかも 1963年 から 1972年のいずれかの年に事業部制の導入を開始したつまり薗ぐ後に述べ る大綱計画(Grobplan)を作った企業を研究対象とし,それらの企業の経験的調 査資料に基づきつつ,事態を分類し仮説(Hypothese)を示している。それ故こ の研究は,存在する仮説のテストを目ざした研究ではなく,仮説を発生させる 試みをなす研究である。かれらもこの分野で既存理論(Vortheorie)の無いこと を認めている。こうして既存理論が無いので,かれらは調査的方法(explorative Methodik)をとる,つまり,予め十全には体系化されていないインタビューの 形式をとって資料を得るという手段を採用する。 この分野での既存理論は無いとは言え,かれらは組織変更に関して次のいく つかの過程を予め区別してはいる。まず,事業部制にするという考えが出てき てから現状分析(1st-Anal yse)や新しい組織構想の彫琢をするよう組織内外の 個 人 に 命 令 が 発 せ ら れ る 迄 の 期 聞 を さ し 示 す 創 始 過 程(Initiierungsprozes)が ある。これに続いて組織変更の実質的部分としての対象過程(Objektprozes)が 始まり,この対象過程が,大綱解決(Grob
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o
sung)と詳細解決(Detai
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l
osung)の 計画(Planen),企画(Entwerfen),構想(Konzipieren)という第1次的問題(pri -mares Problem)の克服をめざす形成過程(Gestaltungsprozes)ならびに,変更 過 程 に て 生 ま れ る 様 々 な 人 的 な 抵 抗 の 克 服 と い う 第2次 的 問 題(sekundares Problem)の 解 決 を め ざ す 促 進 活 動 過 程(Promotionsprozes)という 2つ の 過 程に影響される。マイヤーとガーベノレの実証的研究においてキルシュの管理の ための学問の内容と特に深い関連があるのは対象過程と促進活動過程であるの でわれわれは以下でもこれら2
つ の 過 程 を 中 心 に か れ ら の 報 告 を 要 約 し て お く。 である。 さらに,キノレシュは,マイヤーとガーベノレの業績について「われわれは調査研究の枠内 で,リ",13の企業を研究したJ(WKirsch u a. , Das Management, S, 269,,) ["われわれ の調査的研究J(W Kirsch u" ,,.aa" a"0. , S, 270いずれも傍点は渡辺のもの)等と表現 している。 ( 2) G" Mayer u"E.Gabele, Der Prozes der Divisionalisierung, S"33 ( 3 ) V gl G, Mayer u, E.Gabele, a a"0.,SS 35-37249 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完) -115ー 何らかの要因で組織変更が触発され,このことによって創始過選が終わると, それに続いて,実際の事業部制組織導入の対象過程が始まる。対象過選を分類 して著者らは次の3つの局面にしている。新しい事業部制組織形態の大綱構想 (Grobkonzeption)を練る局面1,事業部内定着化(intradivisionaleVerfesti -gung)と事業部間定着化(interdivisionaleVerfestigung)の局面2,本部と事業 (6) 部 の 統 合(zentral・divisionaleIntegration)の局面
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がそれらである。マイ (4 ) 創始過程については次を参照のこと。 G Mayer u E.. Gabele, a. a.0 ,SS 38-59 創始過程について問題となるのは,組織を変更に駆りたてた要因であって,これは分 野別に2つあり,また徐々にあらわれるか突然あらわれるかによって2つあり,これら の基準の組み合わせで合計4つの要因がある。分野別の基準を適用すると,対象領域(Ob -jektbereich)における変化と人事領域(Personalber eich)における変化の2つの要因が 存在し,あらわれ方の基準を適用すると,漸次的変化(evolutionareV印 刷derung)と突 発的変化(sprunghafteVeranderung)の2つの要因が存在し,合計4つの要因に分類さ れるのだが,人事領域における漸次的変化は無いので,結局3つの要因が存在すること となるのである。かれらは,対象領域における漸次的変化(A.a 0, SS 46-51),対象領 域における突発的変化(Aa 0, SS 51-52),人事領域における突発的変化(Aα 0, SS. 53-56),に関して調査報告をなしているのである。 対 象 領 域 に お け る 漸 次 的 変 化 と し て 分 類 さ れ た 要 因 に は , 売 上 額 増 加(Umsatz -schub),売上額停滞(Umsatzstagnation),多角化(Diversifikation),管理階層の行き づまり (Verstopfungdes N adelohre der Geschaftsleitung)があり, 13企業のうち企業B
と企業K
を除く,企業A
,C
,D
,E
,F
,G
,H
,1
, J,L
,M
が対象領域にお ける漸次的変化を組織変更の要因としてあげた。次に,対象領域における突発的変化と して分類された要因には,他企業との合併(Fusion)(企業B)と親会社の管理構造の変 化(Wandelin der Fuhrungsstrukturen der Mutter)(企業K)が主として含まれる。 最後に,人事領域における突発的変化として分類された要因には,次のものが含まれる。 平常時には管理者の改革的行動はとかく党派の利益のためにするものだと勘ぐられがち なのであるが,近々企業を退職する故にそうした党派性を勘くいられない者が組織変更を 行う機会をつかんだ。〈企業A,D, E, 1)新しい企画をもった管理者が管理階層に入っ て組織変更を行う機会をつかんだ。(企業F,L, M)管理者の退職によって残された管 理者が組織変更を行う機会をつかんだ。(企業E, G) なお,われわれのこの要約には, 一部で,マイヤーとガーベルが組織変更の触発要因を詳しくあげ,各要因が妥当した企 業をあげている表(Aa. 0, SS. 42-45)を利用している。 (5 ) 対象過程については次を参照のこと。 G Mayer u.. E. Gabele, a.. a.0, SS 60-83 (6) 13の企業が対象過程の各局面まで達するのに必要とした年数の調査報告から,必ずし もすべての企業が局面3までを終えているわけではないことが解る。 (Aa.0, SS..61 -63)各企業における大綱構想の導入から調査時点までの期聞は次のとおりである。 A (9年), B (25年), C ( 3 -9年'), D (25年), E (3年), F (4 -5年), G (15年), H (2年), 1 (3年),J
(3年), K (0年), L (2年), M (0年)。期間的幅をもっヤーとガーベルはそれぞれの局面にはどのような決定ないし部分局面が含まれ なければならないのかを主に文献研究的に得たと解され,かれらはこうした部 分局面の論述にかれら自らが調査して得た若干の発見事項を加えつつ論じてい る。次にわれわれは著者らによる各局面の部分局面の解説を以下要約的に取り 上げよう。 まず局面lの大綱構想を練る局面には,企業政策的意思決定(unternehmens -politische Entscheidung),構成組織(Aufbauorganisation),経過組織(Ablauf -organisation),人事決定(Personalentscheidung)が含まれている。このうち第 lの企業政策的意思決定は, (a)製品と用役あるいはそれらのいずれかの種類と 量, (b)そのために選ばれた市場,地域,需要者集団, (c)諸市場への参加の各決 定をなさなければならない。第
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の構成組織の形成で意味されているのは,従 来の職能制組織にかえて,事業部を確定し,どの職能部がどの事業部に属する のかの決定である。第3
の経過組織の形成には,調整,チームワーク,計画, 過程,情報伝達過程,資料の流れと価値の流れの具体的手続きの決定が含まれ る。だが実際の調査ではごく一般的に保持された決算価格決定(Verrechnungs -preisfestigung)あるいは財産決済(Kapazitatausgleich)の手続きが述べられ たのみであった。第4
の人事決定についてであるが,職能制組織から事業部制 組織へ変更することがもたらす職能の再配分(Umverteilung)によって生まれ る重大な問題のひとつは,新しく作る各事業部の上から 2階層ないし 3階層 の管理階層に対する人の当てはめの問題なのである。ここで人事問題(Peroso -nalproblem)が生まれ,そうした問題は,支配的権力配分(herrschend eMacht-Stellung)をめぐるいくつかの考え方に妥協点が見出されねばならないし,ま て示された企業があるのは大綱構想を始めたのがいつであるかはっきりしなかったとい う事情によるものだと解される。これらの企業のうち,局面3の全部の部分局面,ある いはそれらのうちのいくつかを既に終え,事業部制の完成ないしそれに近い状態に達し ている企業は, A, B, C, D, F, Lである。 (Vg.lG. Mayer u..E..Gabele, a a.0, SS..61-62) ( 7 ) V gl G Mayer u.E..Gabele,αa..0, SS 64-68. ( 8 ) V gl G. Mayer u.E.Gabele, a a.0, S..65 ( 9 ) V gl G. Mayer u. E.. Gabele, a a.0, SS 65-66 (10) V gl.G..Mayer u.E.Gabele, a. a.0, S..66251 管理論としての経営経済学に関する考究 (2 ・完〉 -117ー た,事業部の管理者には一般的な管理者(generalmanager)がつかなければな らないという
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つの側面をもっ。しかし,一般的な管理者の育成とし、う側面の みに関して言えば1
3
の企業は,そうした管理者の養成を怠っていたことが報告 されているのである。 以上の部分局面を含む大綱構想が練られると,その次には,大綱構想が組織 構成員に周知されて大綱構想に沿いつつ組織変更が行われる過程が続く。大綱 構想が下方階層に示されても,当面はその構想が各部分にまでは十分喜多み通ら ず,旧来の手続きで組織は動き続ける。旧来の無効の組織的事態と新しい不完 全で有効な事態との聞には,組織的間隙(organisationaleLucke)があり,この 間際が閉じられなければならない。このために行われる行為が,事業部内定着 化と事業部間定着化を内容とする局面2
ならびに本部と事業部との統合を内容 にする局面3である。 局面2
のうちの事業部内定着化については次のように述べられる。事業部の 構成員は,思考をかえ(umdenken)なければならない。職能制組織から事業部制 組織へと組織変更が行われるに従って,従来敵対していた複数の職能部がひと つの事業部のもとにまとめられるのであるからここに統合問題(Integrations -problem)が出現する。事業部内定着化という行為は,ひとつの事業部内の個人 間の敵対反目の解消を目的とした行為で,用具的統合(instrumentalleIntegra -tion)と心理的統合 (p岬chologischeIntegration)を含む。用具的統合は,手続 用具,計画化用具,統制用具,情報用具を含み,公式的手続の明文化を通じて, 公式的規則による統合を図るのに対して,心理的統合は,新事業部への新しい 一体化(neueIdentitat)なし、し事業部単位の一体感 (Wir-Gefuhl)の形成を目指 す。だが著者らは一体化と一体感の形成の必要性を説くのみで何ら具体的施策 を言うわけではないことは,公式的手続きの明示と対照的である。 局面2の後半には,事業部間定着化の行為が出現する。マイヤーとガーベル (11) Vgl G.. Mayer u E..Gabele, a..a..0, SS.67-68 (12) Vgl G.. Mayer u E. Gabele, a.. a.. 0, SS.68-70 (13) Vgl G.. Mayer u. E. Gabele, a.. a..0., SS. 71-73 (14) Vgl. G.. Mayer u E Gabele, a.. a..0, SS. 73-74は事業部内定着化よりも事業部間定着化が企業特殊的である,つまり製品系列 や生産構造に依存していると見る。この事業部間定着化において問題となるこ ととして,事業部への帰属の不明な周辺製品(Randprodukt)をなくすための製 品画定,事業部相互間で半製品と製品構成単位の売買がなされる場合の供給契 約と購入契約の確立,以前の構造の下では同一の生産設備を用いる部分が別個 の事業部に属することから生まれる設備の権利主張・利用・譲渡の規則の確立, 半製品と製品構成単位の売買・設備の譲渡上の決済価格の決定があげられてい る。 最後に,局面
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としての本部と事業部の統合の局面がある。徐々に影響力を 増した事業部は企業の統一性(Einheitdes Unternehmens)を危険にさらすよ う に な る 。 こ の 危 険 を く い 止 め る た め に は 企 業 全 体 的 管 理 手 続 き(unter -nehmensweites Fuhrungsverfahren)の展開が要請され,企業全体的管理手続 で問題となるのは,統一的助言システムと情報システムの形成,事業部で使用 する統一的会計システムの形成,本部の計画システムと予告システムの形成, 調和のとれた本部と事業部間の投資統制のための投資委員会と投資手続の形 成,従来の失敗を責任者に教えるのみではなく,従来の失敗の回避の助力とな る統制システムと統制プログラムの形成である。またここでも事業部内定着化 で問題となったように,心理的統合が問題となる。しかしここでも根底的信頼 感(Vertrauensbasis)による本部と事業部との敵対感の除去が問題となると指 摘されるだけで当該の心理的統合の具体的施策は著者らによって述べられてい ない。 著者らは,対象過程が以上の様に経過すると考えているが,決して対象過程 が自動的に進行するとは考えてはおらず,過程を強制的に進行させることが必 要であると見て,ここに過程に関して促進活動(Promotion)が必要とされると (15) V gL G.. Mayer u.E..Gabele, a. a 0, SS.. 75-78川 (16) G. Mayer u E.Gabele, a.. a. 0, S..77 (17) G Mayer u..E..Gabele, a. a.0, S..84 (18) 促進活動過程については次を参照のこと。 G.. Mayer u..E..Gabele, a a.0, SS.84-108253 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完) -119-見る。促進活動についても,対象局面の区別に応じて,大綱構想の局面におけ る促進活動,事業部内定着化と事業部間定着化の局面における促進活動,本部 と事業部の統合の局面における促進活動が区別される。 まず大綱構想の局面における促進活動について次のような調査結果が報告さ れている。大綱構想の局面では
2
つの企業(企業H
,L)
を除き,企業コンサ ノレタント (Unternehmensberater)あるいは最高管理階層の個別の構成員(ein -zelnes Mitglieder der Geschaftsleitung)が促進活動を行った。そして,大綱構 想の局面でのすべての行為者は何程かの利害中立性(Neutralitat, Interessen -unabhangigkeit)をもったことが報告され,自らの製品に対して固有の利害を 伴った工場長何Terksleiter)は参加しなかった。このような事実から推論して マイヤーとガーベルは,大綱構想内では何程かの利害中立性が前提であるよう にみえる, としている。この局面では利害中立性という特性に加えて, どのよ うな権力の種類が支配的かに関して次のことがみられた。 7つの企業では,企 業内における承認された専門知識(Expertentum)と承認された権力(Macht) の存在がみられ,別の 3企業では,企業コンサルタントの構想売り込みの技量 (Verkaufsgeschick)がつけ加わり,さらに別の3つの企業では,構想売り込み の技量のみが特に重要となり,最高管理者の権力を代替する程だった。因に,1
3
の企業のうち6
つの企業が企業コンサルタントを雇った。このようなかたち で最高管理者と企業コンサルタントのみが行うとみられる大綱構想の練り上げ においてなされるべきことは,全体の最高管理者を含んだ大綱構想の長所と短 所の議論である。著者らは,ある企業コンサルタントの次の言葉を引用しいる。 「組織変更はこの局面においては,激論(knallhartesArgument)をもってしか 議論し尽くせない。」 事実,調査からも,この局面の葛藤処理は,対面解決(confrontation)が支配 (19) V gL G.. Mayer u..E Gabele, a. a. 0, 88..84-92 (20) G. Mayer u.E Gabele, a a 0, S.84. (21) G.. Mayer u.E.Gabele, a. a. 0, 8.. 85.. (22) G Mayer u.E..Gabele, a. a. 0, 8..88的であることがわかった。つまり,大綱構想の練り上げの局面では,そこに参 加した最高管理者や企業コンサルタントは葛藤をさらけ出し,共同行為によっ て受け入れうる解決に到達しようとする。ここまでが大綱構想の完成までの過 程の話であって,われわれの見るところ,この過程には,殊更促進活動と呼べ るものはみられないようである。その理由は,ここまでの過程に参加する人数 が限定されていて,過程を最後までもって行くことに殊更の努力は必要とされ なし、からであると解される。少数の参加者からなる集団でこうして完成された 大綱構想は,次に事業部内定着化と事業部間定着化に至るためには,そもそも 下方の階層に向かつて提示される必要がある。著者らの調査によると,
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3
の企 業すべては大綱構想を,全く秘密裡に(strenggeheim)練り上げた。「それ(大 綱構想一渡辺〉が決められた後は,人々はそれを下に向けて厳しく貫徹し,厳 しい権力投入も辞さない。」調査対象の企業で'fi.大綱構想、は階層の下方に向かつ ては押しつけられた (aufgepfropftwird)のである。著者らは,大綱構想を爆弾 (Bombe)に見立てて,大綱構想のこの貫徹のしかたを「爆弾投下」の戦略 (Stra -tegie des “Bombenwurfs")と称す。 1つの企業として下方の階層の参加を許 さず少数の人々によって大綱構想を完成させ「爆弾投下」的に貫徹しようとし たことには,次の理由がある。第lに,最高管理階層の内部で議論している限 りでは,事業部制導入のもたらす個人のもつ影響領域の得失両方があるが,下 方の階層の参加があると最高管理階層はその影響領域を失う可能性をもつのみ である。第2に,参加的方法をとると,集約不可能な多様な要求がでてきて, ひとつの大綱構想への合意は不可能となる。第3
に,参加によって,下方の階 層には組織変更に向かつての不安がつのるばかりで下方の階層の構成員は議論 ばかりして仕事をしなくなる。第4
に,参加によって,早期に既に構想が混乱 する。第5
に,参加によって,大綱構想をつくる際の葛藤がより下方の階層へ 持ち込まれ,そこで感情的対立(emotionaleVerfeindung)となってしまう。こ (23)G.. Mayer u. E. Gabele, a..a.. 0., S..88. (24)G.. Mayer u. E.. Gabele, a.. a.0., S.89 (25)G.. Mayer u..E.. Gabele, a.a.0., S..89 (26) V glG. Mayer u.. E Gabele, a.. a.. 0, SS..89-90255 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完) -121-れらの理由をあげた後著者らは,多くの企業コンサルタントや組織内専門家との 話し合いを通じて得た見解として,現状分析 (Ist-Analyse)を行うのみならいざ 知らず,ひとつの構想へ合意する必要性が高まると参加による開放性 (offen -heit)は狭まる,と L、う見解を記している。こうして大綱構成を秘密裡につくっ てしまうとこの局面から次の局面へ移る際の促進活動は爆弾投下の戦略をとら ざるをえないし,実際の
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3
の企業もそのようにしている,というのである。 次に,事業部内定着化と事業部間定着化の局面における促進活動に関する調 査をみよう。既に大綱構想、が手渡された下方階層がこの大綱構想に従いつつ定 着化を行うわけだが,ここでは, まず促進活動に関して調査から得られたと思 われる次の仮説が提示される。 「事業部の業績が良い程また他の事業部に対してより重要である程,またその 環境が安定的な程,事業部が内部において統合する気はなくなり,促進活動 がより困難となる。」 この仮説は条件部分で言われたことが逆であった場合(事業部の業績が悪く, 環境が不安定的で,重要性がない場合〉促進活動が不要で自由放任で定着化が できる, とし、う仮説と対で示されている。調査された企業のうち 1企業(企業 (30) 1)を除いてすべての企業には促進活動がみられたが,著者らはこの促進活動 について促進活動担当者 (Promotor)と促進活動戦略 (Promotionsstrategie) を中心に次のように報告する。事業部内定着化と事業部間定着化の局面は次の ような特質をもっ。第 Hこ,少数の人々だけではこの局面を乗り切れず,下方 の階層に存在する多くの特殊情報が必要となり,その階層の人々の参加が必要 となる。第 2に,この局面に至ってはじめて下方の階層の人々の抵抗 (Wider-stand)が生まれる。それではこの段階の促進活動担当者は誰かというと,それ (27) G Mayer u. E.. Gabele, a.. a.0, S 91 (~8) Vg.lG Mayer u. E.. Gabele, a.a.0, SS 92-100 (29) G Mayer u E. Gabele, a.. a 0, S 94 (30) G. Mayer u E. Gabele, a.. a 0, S 94. (31) Vg.lG. Mayel u. E.. Gabele, a..a.. 0., SS.95-96 (32) Vgl G. Mayer u.. E.. Gabele, a.. a.. 0, SS 96-98は新しい事業部長(Divisionsleiter)と本部の組織部(Organisationsabteilung) と計画部(Abteilungzentrale Planung)である。そして,最高管理者と企業コ ンサルタントは,問題が企業特殊的に詳細になっていくこの過程では重要性を 失う。次にこの局面の促進活動施策は,詳細構想(Detailkonzept)の押しつけ ないし爆弾投下のやり方ではうまくし、かず,人間関係構想(Human-Relations -Konzept)が中心となる。この人間関係構想は,動機づけを行い,教えこみ,学 習過程を導入し,新しい構想の正しさと筋の通っていることを当該者に説き, かれらの思考様式と行動様式を変えることを試みることを意味する。事実,調 査では,この局面の促進活動担当者の一類型たる事業部長には,協働的リーダー シ ッ プ(kooperativeFuhrungsstil)を身につけなければならないという要請が あったことがわかった。事業部内定着化と事業部間定着化の局面では,このよ うにして,一方で、大綱構想を具体化するためには下方の階層の構成員の具体的 知識を借りなければならないという目的をもってかれらの参加が求められたの であり,また他方で何程かの抵抗を克服するために参加が求められたのである。 最後に,本部と事業部の聞の統合の局面における促進活動について著者らは 次のように調査報告する。 事業部内定着化や事業部間定着化ではなく,事業部と本部との統合の局面で あることに対応して,促進者については,促進活動担当者は,本部の計画部門 ならびにその管理者であることが多かった。しかしまた企業コンサノレタントと
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つの企業では組織部が促進活動担当者として活躍した。この局面の成功を収 めたすべての促進活動担当者}は,権力に頼った。このことの理由として,事業 部と本部との統合を図るために投入される企業全体的管理手続のような葛藤を 担った対象領域では,権力は不可欠の前提(unabdingbareV oraussetzung)で ある。著者らはこの点に関して,この局面の抵抗の克服が,取締役による一貫 (33) VgL G..Mayer u..E. Gabele, a川a.0, SS..98-100 (34) G. Mayer u E. Gabele, a a. 0, S.98 (35) G.Mayer u E Gabele, a a. 0, S..99 (36) VgL G..Mayer u..E..Gabele, a.. a..0, SS.100-103 (37) G..Mayer u.E Gabele, a. a 0, SS..100-101257 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完〉 -123-した支持 (konsequenteUnterstutzung durch V orstand)によってしかなされ (38) えなかったとするある企業の本部の一管理者の証言を引用している。促進活動 の戦略の方については次のように著者らは報告する。この局面では,本部と事 業部との統合のための企業全体的システムがまず大綱的に構想され,次に拘束 力のあるものとして宣言され,その後,詳細に形づくられ定着される。企業全 体的システムの構想を行う場合には,事業部相互の間と,本部と事業部との聞 に生まれる激しい葛藤が克服されなければならず,ここに爆弾投下の施策と似 かよった促進活動の施策が必要とされる理由がある。しかし,反面,著者らは ここでは,全体の大綱構想の場合のような厳しい方法 (rigoroseMethode)は次 の理由で使用はできないと説く。第1に,本部と事業部の統合は,第1局面で あった全体の大綱構想のように最高管理者にとって可視的ではなく,組織内部 の専門家を含みこまなければならなし、。第
2
に,事業部が得た独立性によって 生まれたその事業部内の動機づけが無に帰されるべきではないなら,本部はあ る点までしか事業部を無視しえず,この構想の練り上げに事業部を含み込まな ければならない。第3
に,本部と事業部の統合の局面は,全体の大綱構想の練 り上げよりも多く時聞がかかる。これらの理由故に,本部と事業部の統合の局 面における大綱構想の促進活動は i穏健な (gmaβigt)J押しつけ施策によって 行われる。 この局面のなかで,本部と事業部との統合の段階が過ぎた後には,促進活動 は,全体の大綱構想が促進された後の段階がそうであったように穏健な押しつ けの施策から別の施策(参加的施策〉へと転じるのかどうかについては,事業 部制の導入企業の殆どでは,本部と事業部との統合の後の過程という導入過程 完了後の段階まで到達しておらず調べようがなかったのでマイヤーとガーベノレ は十分な成果をもたなし、。だが,穏健な押しつけの施策が行われた後には,協 (38) G.. Mayer u. E. Gabele, a“a 0, 5..101 (39) Vgl.G.. Mayer u E.. Gabele, a. a. 0, 55..101-103. (40) VgL G. Mayer u.. E. Gabele, a“a.0, 5 102 (41) G. Mayer u. E.Gabele, a. a.0, 5.102 (42) G.. Mayer u.. E.. Gabele, a a 0, 55. 102-103調を形づくり,人間関係論的接近法に似た施策がより成果を収める,とかれら は推論している。 促進過程に関する調査をとりまとめて次のように言われる。 「徹底的変更の対象(上述の局面のこと一渡辺〕が異なることは異なる促進活 動の施策を条件づける。」 「おそらくJ(wahrscheinlich)と付けながらも,この言明は,事業部制導入過 程のみではなく,その他の組織変更過程にも妥当する,とかれらは説く。 われわれは,マイヤーとガーベノレの実証的研究の要約を以上で終わる。要約 中にも指摘はしておいたが,かれらの研究は既存理論のない分野で、行われた調 査であるとかれら自身は言うものの,創始過程から対象過程を経て組織変更過 程が完成し,対象過程にはこれを強制的に前進せしめる促進過程が並行的に進 行する, とし、う過程の構成についての見方が予めあってこの見方に調査は規定 されているのである。そしてかれらの実証的研究の重点、はこれらの過程のうち 特に促進過程の実態調査にあったと解される。 つまり,かれらの研究の力点は何と言っても組織変更過程の促進活動過程の 局面別特徴の確定にあったことは疑いない。そこでは局面別に次の言明が形成 されたとみてよL、。大綱構想を形成する局面
1
では,最高管理者と企業コンサ ルタントからなる少数の人々が徹底的に議論し,出来上がった大綱構想を組織 階層の下方に向かつて突然示し権力投入も辞さなかった。この意思決定過程の 局面では過程を結論にまで持ち込むことに対しては小人数であるだけに殊更の 努力は要さなかった。促進活動を過程促進活動と成果促進活動に分割するキノレ シュの議論から見れば,この段階での過程促進活動はさほど必要とされず,そ れだけにこの過程の成果たるものを当該者に受け入れてもらうための努力とし ての成果促進活動はぜひとも必要となりこれが厳しい権力投入という形でなさ れた。次に事業部内定着化と事業部間定着化の局面2
では,最高管理者と企業 (43)G. Mayer u. E. Gabe!e, a. a. 0, S..103 (44)G.. Mayer u..E.. Gabe!e, a.. a..0, S.. 103 (45)G.. Mayer u..E. Gabe!e, a. a.0, S..103259 管理論としての経営経済学に関する考究 (2 ・完) -125-コンサルタントは促進活動担当者たりえず,新規事業部長,本部の組織部,計 画部が促進活動担当者となり,促進活動は権力投入型から協調的説得的な型へ と変化する。この段階では,参加者の数の飛躍的増大とともに過程促進活動が 投入されなければならず,この段階の協調的説得的な型の促進活動は過程促進 活動に相当する。しかし成果、へ導くまでの過程促進活動が十全になされなけれ ばならないだけ,この局面での成果促進活動は殊更なくともよし、。最後に,本 部と事業部との統合の局面3では,本部の組織部,計画部,企業コンサルタン トが促進活動の任に当たり,促進活動として第1局面と似た突然の提示と権力 投入がなされるが,局面lの大綱構想の押しつけほど強制的な操作はなされな い。この局面の後についてはかれらは経験的証拠をもっていないが,次には促 進活動として協調型の活動が続くであろうと推論している。こうして,大綱構 想の形成から大綱構想の提示,詳細企画の形成からまた大綱構想の形成へとい たる過程にて,支配的であった促進活動担当者は誰かということと成功を収め た促進活動がどのような特質をもつのかが確認されたわけである。以上のこと から考え, マイヤーとガーベルの実証的研究の本質的特徴を端的に表現するな らば,それは「事業部制導入過程の各局面における支配的な促進活動の確認」 であると言うことができるのである。 キルシュはマイヤーとガーベルのこうした実証的研究における発見事項に強 く影響されながら r組織的管理システム』において展開された管理の学問とし ての理論的枠組に内容を盛るかたちで、管理のための学聞を展開している。
V
管理のための学問としての組織変更管理論 (1) 過程分析の必要性 われわれは,キノレシュの管理論としての経営経済学が「管理の学問に基づく 管理のための学問」であることから管理論の基礎としての管理の学問の方につ いてまず跡づけてωきた。そこでは経験科学的分析と称しつつも組織に関する理 想像が「進歩能力のある組織」という形で展開されていた。進歩能力のある組 織 は r組織変更の手段についてより良く知りつつ,できる限り多くの当該者の価値を満たすように,実際に組織変更のできる組織」のことをさし示すのであ る。管理のための学問は,こうした進歩能力のある組織の理想像に導かれつつ, また進歩能力のある組織の理想像とともに管理の学問の一部であった意思決定 過程の見方に基づきつつ展開されることとなるのである。ここに進歩能力のあ る組織の理想像に導かれるという意味は,進歩能力のある組織の概念の構成要 素たる認識進歩能力,行為能力,感度能力のそれぞれを高度に達成するための 方途ないし政策が経験的研究や理論的研究に基づきつつ掲示されているという 意味である。管理のための学聞は,計画的組織変更(geplanter Wandel von Organisationen)の管理論として展開されて『計画的組織変更の管理』として 公刊されているので,われわれはこの書物を中心にかれによる管理のための学 問の内容を跡づけたい。 キノレシュは組織変更管理論を展開するにあたってかれ自らの研究対象の選択 に一応の論拠を与えようとする。かれは現代の組織論の有力な一潮流たる状況 理論(Situationstheorie)が組織変更の過程 (Prozes)を無視し,組織構造が文脈 (Kontext)に対して準自動的な適応 (quasiautomatische Anpassung)を果たす と考えているとして,状況理論が必ずしも組織展開の適切な理論たりえないと 考える。この不満に基づきかれは過程分析(Prozesanalyse)の必要性を説く。こ の過程分析の強調は,もちろん組織変更を完成に導く促進活動論を過程に則し つつ展開するということにあらわれている。 (46) この書物は本稿の前半部分である渡辺敏雄(稿),管理論としての経営経済学に関する 考究(1),香川大学経済論叢第59巻第1号,昭和61年6月 序 で も 示 し た よ う に 次 の も のである。 W. Kirsch, W. -M..Esser, E. Gabele, Das Management des geplanten Wandels von OrganisatiOnen, Stuttgart 1979 本稿でこの書物を引用する際には渡辺,前掲稿注(2)で、定めたようにそれをW Kirsch u a., Das Managementとする。 なおこの書物の前身は,次の書物であって内容上若干の相違がみられるのである。 W Kirsch, W. -M.. Esser, E Gabele, Reorganisation - -Theoretische Pers.ρek -tiven des g.ψゐ目tenorganisatoris.chen Wandels一一一,Munchen 1978. (47) VgL W Kirsch u a., Das Management, SS..152-155. (48)W Kirsch u a.., a. a 0., S.. 154.
261 管理論としての経営経済学に関する考究 (2 ・完)
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意思決定過程の見方と行為能力の確保政策 キルシュは,管理の学問を展開するなかで進歩能力のある組織のひとつの能 力である行為能力の確保のために行われる活動が促進活動であるとしていた。 管理の学問のコンテグストには次の言明がみられた。『行為能力の確保のため の活動には,過程促進活動,成果促進活動さらに一般的促進活動がある。』これ (50) らの促進活動は,意思決定過程の挿話構想(
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と関係している と考えられるので,まず意思決定過程に関するキルシュの見解を跡づけたいが, このことについても管理の学問のコンテグストにみられた次の言明に基づきこ れに追加的に解説を加えるかたちでキルシュは議論していると解される。『組織 には,挿話としての意思決定のみではなく,潜在的事象の望ましい方向への育 成をめざした一般的活動が存在する。』意思決定過程の見方と促進活動との関係 をここで先取りして示せば,具体的挿話としての意思決定過程と成果の促進活 動が過程促進活動と成果促進活動であって,これに対して挿話としての意思決 定過程に対して影響を与える枠組の促進的形成が一般的促進活動である。われ われはまず,かれの意思決定過程の見方を跡づけたい。 キルシュによる組織変更過程の把握は,穏健な主意主義(
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と呼ばれる。この見方に立っと, 組織の変更は自然になされるのであるから,変更の政策は完全な放任主義(
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とならざるをえない。集団主義の見方に対置させられ (49) 渡辺,前掲稿III(5)i管理の学問におけるコンテクストの画定と管理の学問の特質」を参 照のこと。 (50) 意思決定過程の挿話構想に関するキノレシュの見解については,渡辺,前掲稿III(4)1管理 システムにおける活動と意思決定過程」をも参照のこと。 (51) VgI W Kirsch u..R., a.. a 0., SS 232-233 (52) W Kirsch u.. a.., a.. a.0.,S 232るもう一方の極の見方として,主意主義
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oluntarismus)があり,この見方にし たがうと,意識的で,人的意思によって規定された変更の統制が強調され,極 端な主意、主義は,意思さえあればその意思の実現は可能であると考え rすべて の事は達成されうるJ(Erreichbar ist alles)と見るのである。この極端な主意 主義に対して,穏健な主意主義においては, より複雑なシステムをそもそも計 画し統制できるのか否かというこ分割的発想は問題とならず,問題となるのは, どのような手段によってどれ程多くのものを克服できるかである。極端な主意、 主義が,意思さえあれば現実はその意思通りになると考え,変更を極めて容易 なものと位置づけているのに対して,穏健な主意主義の含意、は,変更は計画し 管理されなければ完遂しないものと考え,この考えの下では変更は「計画され た変更J(geplanter Wandel), r管理された変更J(gefuhrter Wandel),より正 確には「管理によって統御された変更J(durch Fuhrung gestreuerter Wandel) である。穂健な主意主義によると,変更は常には成功するとは限らない異常管 理給付(ausergewohnlicheFuhrungsleistung)であり,このことは組織変更過 程が管理によって克服すべき障壁を伴う過程であることをあらわす。また,穏 健な主意主義は,組織変更過程がある枠組のなかで生起し,その枠組を少なく とも短い時間内においては与件とし制約的前提としながら組織変更が生起する ことをも示しているのである。枠組のなかで組織変更過程が生起することを強 調 す る こ う し た 意 志 決 定 過 程 の 見 方 は 意 思 決 定 過 程 の 挿 話 構 想(Episoden -konzept)であり,穏健な主意主義はこの構想をとることとなる。「われわれは, 組織的変更のひとつの理論の構築の際の(穏健な〉主意主義の事実上の実現と 密接に関連した方法上の立場を挿話構想と結びつけている。」それ故,われわれ は挿話構想の内容を見る必要があるが,この構想は既に『組織的管理システム』 で示された。『組織的管理システム』で、は,組織には,挿話としての意思決定の (53) W..Kirsch u. a.., a. a. 0, S 232. (54) Vgl W. Kirsch u. a.., a. a 0, S..232 (55) VgL W Kirsch u.. a , a a 0, S..233 (56) Vgl W Kirsch u.. a., a a..0, S 233 (57) W..Kirsch u. a.., a a 0, S 233263 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完〉 -129-みではなく,これとは一応別個の一般的活動があり,この一般的活動もまた管 理の対象として,すなわち管理システムにとって望ましい方向へ向かつて変え るべく育成されうる対象として把握されていたのであった。『計画的組織変更の 管理』ではこの見方に基本的に沿いつつ次のように考えられている。 意思決定過程の挿話構想にしたがうと,意思決定は構想的特質(struktuelles Merkmal)のなかで,ないし,構造的枠組 (struktuellerBezugsrahmen)のなか で行われる。構造的枠組は,人間の意識的な形成作用から離れ独自に展開して いるものと把握され,いわば集団主義的に展開するものと把握されているので ある。これに対して,挿話としてのある意思決定自体についてはその背後にい る人聞の意思の力を重視しつつ徴視的分析が行われる。それ故,キルシュによ れば rわれわれは,計画的変更の分析は,現象の複雑性を把握するために徴視 的な見方と巨視的な見方を結合するべきである,とし、う意見をもっている。」わ れわれはキノレシュの意見に沿いながら,意思決定過程の構造的枠組の存在を紹 介したのであるが,ここまでの紹介では,構造的枠組がその枠組のなかで行動 する人聞の行動を規定するということが理解され,その構造的枠組は絶対に変 更していくことのできない完全に不変の与件のような印象が生まれた。ところ がキルシュにしたがうと,構造的枠組もまた少なくとも部分的には意識的な変 更の対象たりうるのである。かれが構造的枠組を潜在的事象(Potential)と表現 するとき,そうした事情が念頭に置かれているものと解されるわけである。キ ルシュは潜在的事象を規定し次のように言っている。「単一あるいは複数の関心 のある挿話〈例えば組織変更挿話〉に対する行為者(個人,社会システム〉の 潜在的事象は,その挿話の分析にとって重要な関連をもっ社会経済的環境の構 造的特質の特定の組合せにあらわれるのであって,これは部分的には意識的に 形成せられ,その存在が活発化される場合(imFall einer Aktivierung)には, (58) Vgl
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Kirsch u.. a., a a.0, SS.234-237 (59) W Kirsch u.. a., a a.0, S.. 234 (60) 潜在的事象に関するキノレシュの見解については次を参照のこと。 W. Kirsch u.. a., a.. a. 0, SS..238-240関心のある挿話に対して作用をもっている。」この引用文からわれわれは,潜在 的事象が部分的には意識的な形成の対象であることを窺い知る。潜在的事象の この意識的な形成の行為こそ今迄何度も触れてきた一般的促進活動であるとい うことについてはもはや多言を要さないであろう。そして人閣の変更不可能な 与件と変更可能な潜在的事象のなかの挿話としての具体的意思決定過程の方の 促進を行う努力に相当するのが過程促進活動と成果促進活動である。キノレシュ は,枠組的には管理の学問で既に提示されていた以上の考え方に,実証的研究 や文献研究で得た一層具体的な認識を盛っていくのである。このことに関して, われわれは,過程促進活動と成果促進活動について,次に一般的促進活動につ いてキルシュの言うところを跡づけたい。かれはまず過程促進活動と成果促進 活動についてマイヤーとガーベノレの実証的研究から得た認識を普遍化するかた ちで以下のように言う。 大綱構想が練り上げられ,それが突然に下方の階層に向かつて丁度爆弾投下
(Bombenwur
f)のように提示され権力投入も辞さないかたちで出来上がった大 綱構想が貫徹される。この局面では参加人数が少数であって大綱構想を練り上 げる迄の過程を消失させない努力つまり過程促進活動は特に必要とされず,出 来上がった大綱構想としての成果をその他の当該者に貫徹する努力つまり 成果促進活動の方が必要となり,これが厳しく権力投入型で実行されている。 次に大綱構想が当該者に受け入れられると定着化を行う実行的局面が生まれて くるが,この局面では抽象的に練られた大綱構想、がより豊かな知識によって仕 上げられなければならず,またこの局面ではじめて当該者の組織変更に対する 恐怖が具体化するので,多数の当該者の参加のもとで過程が押し進められなけ ればならない。それ故,この局面では過程促進活動が特に必要とされ,この活動 は高度の動機づけ,啓蒙,ならびに説得(
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とL、う型になってあらわれる。この局面では当該者の 締め出しが行われないので結果の貫徹努力としての成果促進活動は特に必要と (61) W..Kirsch u a...a.. a. 0..S.. 238 (62) VgL W Kirsch u.a... a a O. SS 180】181u SS.. 267-272265 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完〉 -131-されないのである。その後の局面ではまた一種の大綱構想が形成され, 成果促進活動が必要とされ, さらにその後には実行的局面が続きここでは 過程促進活動が必要とされるというようにつながってし、く。問題の性質が大綱 的抽象的である時は少数の参加者で決定に持ち込む方が望ましく,その決定の 提示には権力投入型の成果促進活動が必要!となり,問題の性質が具体性を帯び てくると多数の参加者で解決に持ち込む方が望ましく,その場合には協調型の 過程促進活動が必要とされ,次にまた前ほどではない程度の抽象的な問題が出 てきて続いて具体性を帯びた実行的問題となっていく。このように,処理すべ き 問 題 の 特 質 が 抽 象 か ら 具 体 へ の 振 動 を 繰 り 返 す に つ れ て 権 力 投 入 型 の 成果促進活動と協調型の過程促進活動が繰り返されて組織変更は完遂されると キルシュは考えているのである。 以上が過程促進活動と成果促進活動に関するキルシュの見解である。意思決 定過程の挿話構想によると,具体的意思決定過程に影響を与える枠組的特性が あって,部分的には人為的な変更も可能であり,この促進育成策も論じられ, この促進育成策こそ一般的促進活動であり,われわれは,次にこの活動に関す るキルシュの見解を紹介したい。その議論は当然,一般的促進活動の対象とな る潜在的事象をめぐる議論となり,そうした潜在的事象に含まれる構造的枠組 と人的特性についてのかれの見解をわれわれはその順で紹介したい。 キルシュによると,潜在的事象のひとつとしての構造的枠組には,いくつか の組織構造上の特徴が含まれている。このことをかれは,文献研究によりなが ら次のように提示する。まずかれはへイグ(J引 Hage)とエイケン(Mれ Aiken) の研究を取り上げ,その研究における構造変数(Strukturvariable)とプログラ ム変更(Programmanderung)の頻度との関係に着目する。ここに構造変数と は,複雑性の程度(Gradder Komplexitat),集権化の程度(Gradder Zentra・ hation),形式化の程度(Gradder Forma
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sierung),成層化の程度(Gradder (63) VgL W. Kirsch u a., a. a..0, SS..199-205 (64)Vg W. l. Kirsch u. a , a.. a..0, SS.199-201 キノレ、ンュはへイグとエイケンの次の研究の参照を求めている。Stratifikation)であり,プログラムとはある組織が提供している製品ないし用 役の集まりをさし示し,プログラム変更とは,全体組織の変更とは区別される 組織内の変更のことをさし示す。それ故,キルシュの考える組織変更とは異な るものであり,かれは,へイグとエイケンの研究から直接そのまま認識を受け 取ろうとしたのではなく,一種の示唆を得ょうとしたのだと解される。信頼性 があり,根拠づけられているとされるかれらが示す仮説のうちキルシュの議論 に関連するのは次のものである。1)集権化の程度がより大きくなると,プログ ラム変更率がより低くなる。 2)形式化の程度がより大きくなると,プログラム 変更率がより低くなる。 3)成層化の程度がより大きくなると,プログラム変更 率がより低くなる。この成果を踏まえてキルシュは「集権イヒJ, r形式イヒJ,r成 層化」とし、う変数が,構造的特性としての弾力性(Flexibilitat)を構成し,それ がプログラム変更の創始と実行を促進ないし阻害すると見ている。ところがか れによれば,この研究は,プログラム変更の過程への弾力性の影響を考えてい るわけではなし、。この点,かれはウィノレソン(J..Q Wilson)の研究を次に引き 合いに出す。ウィルソンは,弾力性に相当する概念として組織的分化の程度 (Grad der organisatorischen Differenzierung)を考え,それを構造的相関つま りし、くつかの構造変数の特徴のまとまりとしてとらえた。相互に異なる誘因源 (Anreizquelle)の数がより多いほど,課題分割 (Aufgabenteilung)の程度がより 高いほど,プログラム化されていない課業(nichtprogrammierte Aufgabe)の 割合がより高いほど,組織はより多く分化している,つまりより弾力的である。 ウィルソンは,革新過程を革新の創始(lnitiierung)と革新の実行 (lmplemen-tierung)の 2段階に分割して,組織が弾力的なことは革新の創始を促進するが, 革新の実行の方を阻害することを示した。ところで,以上の研究では構造的枠 (65) VgL W.. Kirsch u.. a.., a..a.0, S. 200 (66) Vg.lW Kirsch u.. a , a.. a 0, S..20L キノレシュはウィノレゾンの次の研究の参照を求めている。
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Q Wilson, Innovation in Organization: Notes Toward a Theory, in:J
D Thompson(ed), Approωhes to Organizational Design, Pittsburgh1966 (67) W Kirsch u. a., a.. a. 0, S..201267 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完〉 -133-組が独立変数(unabhangigeVariable)としてのみ把握されていることに不十 分さを感じるキルシュは, さらにグビチェク (H Kubicek)の研究を紹介しつ つ , 構 造 的 枠 組 が 一 部 分 変 更 可 能 で あ り こ の 意 味 で は 従 属 変 数(abhangige Variable)として取り扱われなければならないことを印象づけようとする。 潜在的事象としての構造的枠組に関するキルシュの以上の論述からわれわれ は次のことを知る。第
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に,革新過程の創始と実行を促進するそれぞれの構造 変数の特性としての弾力性が考えられている。第2に,構造的枠組には変更可 能な部分があり,弾力性も少なくとも部分的な育成の対象ともなりうると解さ れる。 次に,以上の構造的枠組とともに潜在的事象に含まれる人的特性の方につい てキノレシュは,その変更技術を社会技術(Sozial-Technologie)と称し,ここで もまた若干の英米の研究とりわけ経験的研究を要約の上で紹介している。これ らの社会技術もまた管理の学問のなかで述べられた促進活動のうちの一般的促 進活動に含まれると解されるのである。 キルシュが取り入れる社会技術とは,チーム開発法(Teamentwicklung),実 験室訓練法(Laboratoriumstraining),調査フィードバック法 (Surrey Feed-back)である。それらの方法についての数多くの研究蓄積からかれが紹介する 研究を選抜する基準は,それぞれの社会技術の効果が経験的に確かめられてい るかどうか,であると解される。これらの社会技術のうちとくに組織変更とか かわりが意識されているのは実験室訓練法,調査フィードパック法の2つであ る。 (68) VgL W. Kirsch u. a.., a.. a.0, SS.203-204. キノレシュが参照を求めているクピチェクの研究は次のものである。 H Kubicek, Informationstechnologie und 0得。nisatonscheRegelung, Berlin 1975 (69) W. Kirsch u a.., a. a 0 , S 206. (70)例えばチーム開発法についてキノレシュは他と区別できる技術あるいは戦略の効果がテ ストされた少数の例外的研究のひとつとしてケガン(DL Kegan)とノレベンシュタイン (AH Rubenstein)の共同論文を紹介し,また実験室訓練法について,行動変更の戦略の 効果が明確に経験的に研究されている研究を選び出したい,と述べている。 (VgLW Kirsch u. a , a a 0., SS. 212-213u..S.. 214)実 験 室 訓 練 法 は , 最 も 学 習 し や す い よ う に 個 人 や 集 団 を 社 会 的 文 脈 の 中 で 助 け て い く べ き 訓 練 法 で あ る 。 キ ル シ ュ が 引 き 合 い に 出 し て い る ゴ レ ム ビ ュ ー ス キー
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Golembiewski)と キ ャ リ ガ ン(
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紅 rigan)の 研 究 定 お け る ケ ー ス ス タ デ ィ ー は , 新 し い 製 品 工 程 の 導 入 な ら び に そ れ と 結 び つ い た 昇 進 体 系 の 変 更 を 対 象 と し , そ の 場 合 の 経 営 風 土(Betriebsklima), 個 人 間 関 係(per -sonelle Beziehung), リ ー ダ ー シ ッ プ ス タ イ ル(Fuhrungsstil), 協 働 (Koopera-tion)の改善をめざして実験室訓練法が投入された。かれらは,実験室訓練法は, 態 度 と 行 動 様 式 の 変 更 を 創 始 し さ ら に そ れ を 継 続 中 の 組 織 に 定 着 す る こ と が で きる, と い う 仮 説 を テ ス ト し , そ の 肯 定 的 効 果 を 確 認 し 五 ? さ て , 今 一 つ の 社 会 技 術 は 調 査 フ ィ ー ド バ ッ ク 法 で あ る が , キ ル シ ュ は こ の 社 会 技 術 の 重 点 を 提 示 し な が ら 次 の よ う に 規 定 し て い る 。 調 査 フ ィ ー ド パy グ 法 に お い て 重 要 な こ と は , 組 織 外 部 の 専 門 家 と 組 織 の 構 成 員 が 共 同 で , 組 織 の 機 能 様 式 な ら び に 組 織 の 構 成 員 の 労 働 生 活 の 両 面 に わ た る 様 々 な 側 面 に 関 係 す る デ ー タ を 収 集 し 分 析 し て 解 釈 す る こ と で あ り , ま た そ れ ら の デ ー タ を 基 礎 に 置 き な が ら 組 織 の 構 造 と 構 成 員 の 労 働 条 件 を 改 善 し , 変 更 し て い く こ と な の で あ ぷ : そ し て こ の 社 (71)W. Kirsch u. a , a.. a. 0., S.. 214 因に,キーザー(AKieser)とクビチェク (HKubicek)によれば,実験室訓練法は,相 互作用する人々の感情,反応および観察を,これらを抑圧する社会的規範を除去しつつ 知りながら,自己の個性の分析に利用する訓練法であって,この訓練法においては,そ うした自己分析は誤った行動様式の解消と新しい行動様式の習得に導き,また,実験室 の集団において訓練された新しい行動様式は組織における社会的過程に移される。 Vgl A Kieser u“H. Kubicek, OrganisationstheorienII, Stuttgart 1978, SS. 36-37 田島 壮掌(監訳),r
組織理論の諸潮流II1.,千倉書房,昭和57年, 35ベージ。 (72) キノレシュが参照しているコ、レムビュースキーとキャリガンの研究は次のものである。 R T Golembiewski and S. B Carrigan, Planned Change in Organization Style Based on the LaboratoryApproach, in:Administrative ScienceQzωrter(y1970; The Per討stance of Laboratory -lnduced Changes in Organization Style, in: Administrative Science Quarter.か1970 (73) Vgl.W. Kirsch u.. a.. a.. a. 0. , SS..214-215 (74)w
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Kirsch u.. a • a.. a 0. , S..216 前述のキーザーとクビチェクは,調査フィードパック法に等しいと思しき調査一フィ ードパックー討論ー活動一計画法(Survey-Feedback -Discussion -Action -Planning) について次のような解説を加える。この方法の出発点は組織において経過する意思決定 過程および問題解決過程である。一定の時点で,助言者は,経過した討論の行動次元を269 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完〕 -135-会技術には,職務に対する構成員の関心のより強い育成,より増加した同調性, 役割の明確化,問題解決機構の教化,協働的問題解決行動の実践等に現れる組 織健康性(Organisationsgesundhei t)の確保が期待されるのである。キルシュ は,調査フィードパック法についてはボワーズ(D
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を目指すこととなる」と言う。 われわれは以上においてキルシュによる潜在的事象に関する論述を跡づけて きたが,そこにおいて理解されたことを若干の問題点とともに記しておくこと とする。まず,構造変数に関しては弾力性(
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がひとまとまりの特性 として重視されていたが,等しく革新とL、う変数への影響をみていたへイグと エイケンの研究とウィルソンの研究でもすでに弾力性の概念に差があったので あるから,まして組織変更の完成に導く「弾力性」の内容は何かを一層検討す べきであるし,その際,また F弾力性」と,大綱構想の練り上げ,事業部内定 着化と事業部間定着化,本部と事業部との関係形成の段階との関係がつけられ なければならなし、。また人的特性の育成をめざす社会技術の方についても,経 営風土という定義されない極めて漠然とした概念の改善を目指すということだ けではわれわれは満足でむきないし, また,実験室訓練法ならびに調査フィード パック法について,それらが羅列されたとし、う感が否めないのでその社会技術 の適用条件がより一層探られるべきである。 以上で要約してきた行為能力の確保の政策論としての促進活動論は組織変更 管理論のなかのひとつの重要部分なのであり,複数の人々の参加する意思決定 過程をおし進める過程促進活動にせよ,意思決定の結果を人々に貫徹しようと する成果促進活動にせよ,さらに人的特性を専ら内容とする思しき経営風土の 改善をめざす一般的促進活動にせよ,促進活動論は,これが基づく理論的枠組 の特質がそうであった故に当然主として対人的な技術論として展開されてい る。キルシュの管理論のもつ行動科学的特質のひとつに方法論的個人主義の立 場があげられ,その立場は,社会システムに関する言明を定式化するすべての (77) V gL W. Kirsch u. a., a.. a 0., S.. 217 (78) W Kirsch u. a.., a.. a..0., S.. 218271 管理論としての経営経済学に関する考究 (2・完) -137-概念は個人と個人間関係に関する言明を定式化する概念に還元することができ る, と説く。ところがキルシュの議論してきた促進活動論は既述のように主と して対人的な技術論であり,これは「社会システムに関する言明」というより もとより「個人と個人間関係に関する言明」の範障に入り,そもそもここには 還元の必要性は生じていないと解される。かれの議論のなかで社会システムに 関する言明を定式化する概念と思しきものは,一般的促進活動の対象のひとつ であった構造的枠組の特性としての「弾力性」であるが,こちらについては上 述でも指摘したとおり,それと組織変更との関係を明示する言明もなく r弾力 性」概念を「個人と個人間関係に関する言明を定式化する概念」に還元する努 力もこれからに倹たなければならない状況である。要するにキルシュの標梼す る方法論的個人主義の具体的あらわれ方は,弾力性とし、う主士会システムに関す る概念はみられるものの促進活動論の主たる部分が,そもそも個人と個人間関 係に関する言明で構成されている, というかたちをとっているのである。
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感度能力と認識進歩能力 管理の学問のなかで論じられた進歩能力のある組織の3つの能力のうち行為 能力の達成に関する認識が促進活動論としてあらわれたのだが3
つの能力の うち残りの2
つの能力すなわち認識進歩能力と感度能力についてもキルシュは 論じているので,われわれは感度能力についてのかれの論述から跡づけたし、。 感度能力との関連で問題となるのは参加(Partizipation)である。進歩能力 のある組織が rできる限り多くの当該者の価値を満たすように」組織変更ので、 きる組織であるので,新規の構想にできるだけ多くの当該者の価値を盛り込み この構想へ向かつて組織変更をなすことが問題となる。ここで問題となるのが, 当該者の参加である。キルシュは参加を4分類し,参加者(Partizipient)の価 値(Wert)ないし欲求(Bedurfnis)と知識(Wissen)の両方とも問題とされず, 参加は単に人間関係の改善(Verbesserungder zwischenmenschlichen Bezie・ (79) 参加についてのキノレシュの見解については次を参照のこと。 W Kirsch u.. a.., a. a O. , SS 298-311 (80) W Kirsch u a.., a.. a.. 0., S8..298-299hung)に役立つだけであるという場合の表面的参加(Pseudo-Partizipation), 参加者の知識を動員 (mobilisieren)しようとはするがかれらの価値ないし欲求 の方は取り上げようとしない人間資源戦略の意味における参加(Partizipation im Sinne einer Human-Resources-Strategie),参加者の価値ないし欲求は取
り上げるがかれらの知識の方は取り上げなし、L、わゆる社会価値戦略の意味にお ける参加(Partizipationim Sinne der sogennanten Social-Value-Strategie), 参加者の価値ないし欲求の考慮と知識の動員の両方の機会を聞こうと試みる真 の参加(authentische Partizipation)とする。そしてかれは,組織変更担当者 (Change Agent)向けの文献のなかで言われる参加、への要請は往々にして上記 のうちの人間資源戦略の意味における参加であると解釈されるとし,事実の問 題として,実践で活動する組織変更担当者は従来真の参加を実現できたのかど うか疑わしいとする。かれは,単に知識だけを吸収し利用しようとする型の参 加ではなく,参加者の価値ないし欲求を考庫する機会を開く参加つまり上記の 類型では社会価値戦略の意味における参加と真の参加を問題にしようとする。 かれの見解によると,参加は行為能力との関係では必ずしも促進的関係にはな くむしろ阻害的関係にある。なぜ、なら,まず参加によって意思決定過程へ含ま れる人の数が増えるとそれだけひとつの意思決定を結論へもち込むことが難し くなる。つまり参加によって過程促進活動が難しくなる。だからと言って参加 によって成果促進活動が容易になるかというと,このことも単純には言えない。 第