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ヒノキおよびヒノキアスナロの花粉発芽について

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ヒノキおよびヒノキアスナロの花粉発芽について

人 (鳥取大学農学部造林学研究室) On the PoUen Germination of Hinoki(0》5αηzαε卯α7‘3 0δ彦zz∫α ENDL.)and Hin・kiasunar・(Z吻’(痴∫吻励τ鋤SEIB. et Zucc. var.んoη磁MAKINO)

Bayato HASHIZUME

(1・aboratory of Si茎viculture, Faculty o£Agriculture, Tottori University)

       1967年9月30日受理

Synops《s  1) The optimum conditi◎n of the med三um for the artificial germination of po1丑en seemed to be pH 5,10%sucrose and 1%agar in Hinoki, and pH 5,5−7.5%sucrose and 1%∫agaτin Hino− aSunarO.  2) The optilnum tempera加re of po]1en gerlnination was 30°C in rlinoki and 25°C in Hinoki− asunaro.  3) There was some variance in pollen germination according to individuals. The variance was more remarkable in王linokias田aro than in Hinoki. ま え が き  林木の育種事業が進むにっれて人工交配の機会が多く なってきたが,交配にあたっては花粉の生死および受精 能力をあらかじめ知っておく必要がある。花粉の受精能 力は実際に交配をしてみなければわからないが,結果が でるまでにかなりの時閲がかかるので,普通発芽試験に よって大体の能力を判定している。  針葉樹の花粉の人工発芽はマツ科(1>やスギ科(2)の樹 種ではかなりくわしく研究されいるが,ヒノキ科の樹種 ではあまりなされていない。筆者は前報(3)でジベレリ ンによって着生したヒノキおよびローソンヒノキの花粉 発芽について報告したが,不明な点も多いので,今回さ らにヒノキとヒノキアスナロを用いてヒノキ科樹種の花 扮の発芽を再検討した。 材料および方法  発芽試験に用いた花粉は推定10年生ヒノキおよび4年 生ヒノキアスナロ(サシキ)から採取した。ヒノキは自 然着花のものであるが,ヒノキアスナロは前年の7,8 月にジベレリンA7500PPm溶液を散布して着ネEさせた ものである。鯛花期はヒノキアスナロは2月下旬∼3月 上旬,ヒノキは4月上旬であったが,花粉は散殆の直前 に雄花の着生した小枝をきりとり,室内で水ざしし,聞 花をまって技をかるくたたいて集めた。そして,5°Cの 冷蔵庫に貯蔵し,ずい時とりだして発芽試験に供した。  培養墓として,寒天による固体発芽床を用いた。すな わち,蒸留水をクエン酸とリン酸2カリウムで所定の pH}こ調節し,これに寒天と薦糖を加え加熱溶解させた

後,直径2.2Cm,高さ4cmの管ビンに2cc流しこみ

(厚さ2∼3mm),固まってからその上に花粉をうすく ∼様にまきつけた。管ビンはコルク栓でふたをし,暗黒 恒温器に入れた。所定の温度で3∼4日培養してとりだ し,発芽率ならびに花扮管長を測定した。発芽試験は 1サンプルにっいて3回繰り返した。各発芽床について 約200粒を数え,その平均をとった。花粉管の形成が認 められるものはすべて発芽とみなした。

鳥農学報,XX

1968

(2)

(32) 詰  隼  人

結果および考察

表一2.薦搭濃度の影琴

 花治の人工発芽に影響をおよぼす主な因子にっいて讃 べた結果は以下の如くである。 蕨 蕎 濃 度  (%) ヒ ノ

キヒノキアスナロ

発賛1花粉幣i発矯{櫛竃

 1. pH  寒天濃度1%,庶繕漫度5%でpl{3・◎∼8’0の培養 墓を調製し,pHの影響をしらべた。ヒノキは30°Cで 4目,ヒノキアスナロは25°Cで3日培餐した。結果は 表一1の如くである。

      表一ぶpRの影響

,∵

5.oi 7.5 1 10.0 15・O 20・Oi 58 79 86 86 85 85 28 162 174 191 173 175 51 60 69 68 68 68

U2

133 154 151 139 132 ヒ ノ キ ヒノキアスナロ

畑匡芽1踏籠這芽i油雛

(%)・ (μ)i (疹) (μ) 3.0 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 8.0

47 i 30

94i・39

97 i187

98}・・2

98  1 195 98    174 95    132     13194

64{60

   1 0 52 85 87 86 80 68 43 0  0 80 ヱ13 113 99 86 54 28  0  ヒノキの花扮はpH 3.0∼8.0のいずれでも発芽する

が,極端な低pHおよび高pHでは発芽率ならびに花

粉管の伸長が低下した。発芽率はpH 4.5∼6.0で高 く,その範鰯内では著しいちがいがみられない。しか し,花扮管の緯長はpH 5.0で鍛大である。 したがっ て,最適の水素イオン濃度はpH 5.0付近にあるもの と思われる。しかし,pH条件はそれほど厳密なもので はないようである。ヒノキアスナロの花扮はPH 3・0と pH 8.0では全然発芽しなかった。ヒノキ科の花粉はス ギ科のものと同檬に,置床後吸水によって花粉の外膜が 破れ,原形質縷の一端から花粉管がのびてくるが,pH 3.◎では殆んど脱皮しなかった。発芽率はヒノキと同様 にpH 4.5∼6.0で高かったが, PH 5・0で京もよい詰 果がられた。花貌管の伸長はρH4・5∼5・0で最大であ った。したがって,やはりヒノキと㎞じ様にPH 5.0付 近が最適であると思われる。  ヒノキでは蕪糖濃度0%は発芽が悪く,5%以上の濃 度でよい結果がえられた。5∼20%の濃度範囲では濃度 の菱異によって発芽率に大きなちがいはみられないが, 花涜管の伸長は10%区が最大であった。 ヒノキアスナ ロも同情に5%以上の濃度で高い発芽率を示したが,花 粉管の伸長は5∼7.5%区が最もよかった。 したがっ て,最適庶繕濃度はヒノキでは10%,ヒノキアスナロで は5∼7.5%とみて差支えない。

 3,寒天濃度

 p臼5.0,蕉糖濃度5%で寒天の濃度をかえて試験し た。ヒノキは30°C,ヒノキアスナロは25°Cでいずれ も4日培三した。実験の結果は表一3の如くである。

表一3.寒天濃度の影響

護,蓼、ド嶽鴫ド諭毒藷

0.5 1.0 2.0 3.0 84 86 80 78 163 174 148 132 60 69 61 53 137 148 125 126  2.蕪糖濃度  pH 5.0,寒天濃度1%で薦繕濃度を0から20%まで かえて試験した。ヒノキは3◎°Cで4日,ヒノキアスナ ロは25°Cで4日培麦した。認査結果は表一2の逓りで ある。  ヒノキ,ヒノキアスナロとも寒天濃度0.5∼3.0%の いずれでも発芽がみられるが,1%区が発芽率ならびに 花己管の伸長が最も大であった。

4.発芽温度

 函菊・0,蕪譜漫度5%,寒天濃度1%の培養基に花粉 をまき付け,20∼35°Cの範囲内で温度の影響を調べ た。4日後に調査した結果は表一4の如くである。  ヒノキの花扮は20∼35°Cのいずれの温度でも発芽す るが,発芽率ならびに花粉管の伸長は30°Cが最大であ った。20°Cでは花扮管の伸長が著しく劣る。ヒノキア

(3)

ヒノキおよびヒノキアスナロの花粉発芽にっいて (33)

表一4.漏度の影響

温 度  (°C) 20 25 30 35 ヒ ノ

パヒノキアスナ・

管列櫛幣

87 96 97 94 54 109 190 148

発芝劇花粉幣

57 90 71 37 114 55 スナロでは25°Cで発芽率ならびに花粉管の伸長が最大 であった。30°Cでは花粉が著しく膨脹し,花粉管が発 生しないものがあった。  5.花粉発芽の個体によるちがい  ヒノキ11本,ヒノキアスナロ5本から個体別に花粉を とり,個体による発芽のちがいを調べた(表一5∼6)。 表一5. ヒノキの花粉発芽の個体によるちがい 個 体 番 号 1 2 3 4 5 6 7 9 10 ヱ1 12 発 芽 率 (%)

25・Cい0・C

花粉管長(μ)

25・・1・… 96 95 97 96 80 49 92 81 98 92 66 97 98 94 94 98 81 96 98 92 95 67 ;;㍉

;li

128i

203 170 194 185 17ヱ 166 194 186 168 198 171 表一6. ヒノキアスナロの花粉発芽の個体による ちがい

曇奪瞬蓄1花糟戸

考 1 2

31

64 22 87 34 93

ll∴…

 ヒノキでは6号木と12号木はやや発芽が劣るが,他の 個体はいずれも30°Cで90%以上の高い発芽率を示し た。 他方花粉管の伸長についてみると,25°Cで発芽さ せた場合は伸長の悪い個体があったが,30°Cではよく 伸長し個体間に著しい差異がみられなかった。ヒノキア スナロでは個体により花粉発芽に著しいちがいがみられ た。2号木と4号木は発芽率が低く,花粉管の伸長も悪 かった。  岩川ら㊤・(2)の研究によると,マッ属花粉の人工発芽 床の条件は寒天濃度0.5∼1.0%,庶糖濃度0.1∼0.3 M,水索イオン濃度4.5∼6.5が適当であるという。ま たスギでは寒天濃度0・5∼1・0%,庶糖濃度5.0%,水 素イオン濃度7・5が最適であると報告している。本研究 の結果,寒天濃度はヒノキ,ヒノキアスナロとも1%が 最も良かった。0・5%は軟らかすぎて,調査のさい発芽 床がくずれる場合があり不便である。蕉糖濃度はヒノキ は10%,ヒノキアスナロは5.0∼7.5%が最適であるが, 5∼10%の範腿内では発芽率に著しいちがいがみられな いから,実用上はそれほど厳密に濃度を規定する必要は ない。水素イオン濃度はヒノキ,ヒノキアスナロともに pH 5.0付近が発芽に最も良いようであるが,薦糖濃度 と同様にそれ程厳密なものではない。ある程度の幅があ って,pH 4・5∼6.0で良好な発芽を示す。ガラス製の 蒸留装註で水を煮沸してえた蒸留水は普通弱酸性を示す から,実用上はそれをそのまま使用して差支えないもの と思われる。花粉の発芽に対するpHの条件はスギよ りもマツに類似している。発芽湿度は前述の岩川らの研 究によると,マツ属は27∼37°C,スギは22∼27°Cで最 良の結果がえられた。 ヒノキの最適発芽温度は30°C, ヒノキアスナロは25°Cである。したがって,前者はマ ツに,後者はスギに似ている。樹種による発芽温度のち がいはそれらの天然分布区域と関連して興味ある問題で ある。  個体による花粉の発芽のちがいは実際に交配を行なう 場合に玉要である。林木は他殖性植物であるから,1本 1本性質がことなる。したがって,花粉の発芽について も当然個体によるちがいが予想される。個体変異はヒノ キ,ヒノキアスナロいずれでも認められるが,ヒノキア スナロでとくに顕著であった。この理由は明らかでない が,ヒノキアスナロは幼齢木にジベレリンを散布して着 花させたために個体によっては花の発育の悪いものがあ った。したがって,幼齢木に無理に着花させたことがそ の一つの原因になっているのかも知れない。 総 括 1)花粉の人工発芽に用いる発芽床は,ヒノキでは

(4)

(34) 橋  詰  隼  人 pH5,薫糖濃度10%,寒天濃度1%が,ヒノキアスナロ ではpH5,庶糖濃度5∼7.5%,寒天濃度1%が最適と 思われる。  2)花粉発芽の最適温度はヒノキでは30°C,ヒノキ アスナロでは25°Cであった。  3) 個体によって花粉の発芽にちがいがみられた。個 体変異はヒノキよりもヒノキアスナロで顕著であった。 文 (1)岩州盈夫・渡辺操:林試研報,1?3,67(1965) (2)岩川盈夫・千葉茂・渡辺操:第3回林試研究発   表会言己録, 1 (1951) (3)橋詰隼人:日林誌,41,458(1959)

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