近代 日本 にお ける植民地体育政策 の研究
(第
4報
)一帝政下 における新学制 と植民地体育・ スポーツ政策 の構想―
保健体育教室 入 江 克 己
A Study of the Colonial PoLcy of Physical FduCatiOn
by the Pre―
War Japanese Authorities(Part4)
―
Formation of New Educational System and Working over the Colonial Pohcy
of Physical Educational ldeas under lmperial Government of h/1anchukuo―
Katsumi IRIE*
は じめ に 執政か ら帝政 に移行す ることによって日満のフアッシズム教育 な らびに体育 の体制が,さ
らに強 化 されてい くことになるが,本
稿 で は,(第
3報
)に引 き続いて帝政下 における植民地体育政策 に関 して以下 の点 について考察す る。(D
帝政実施後 における日本 の治外法権 の撤廃 と満鉄付属地の行政権 の委譲以後 における行政機構 の再編 鬱)教
育 の日満 ファシズム体制への組 み込み と建 国精神お よび薄儀 の訪 日宣詔 の趣 旨である日満一 体,五
族協和 にもとづいた植民地教育制度 の再編 の過程 131 帝政下 における植民地体育・ スポーツ政策理念 と制度的な構想 と整備 の過程1.教
育 行 政 機 構 の 再 編 と薄 儀 の 再 訪 日(1)治
外法権撤廃 と行政権の委譲 1934年 3月 の帝政実施 に伴 つて行政機構 の一部改正が行 なわれたが,1937(昭
和12
康徳4)年
に日本 の治外法権撤廃お よび満鉄付属地行政権 の移譲 に対応す るために同年5月 8日に満州国政治 行政機構改革大綱 を発表す るとともに, 6月
5日 に組織法の一部改正 と国務院官制 。国務院各部官 制 を公布 し, 7月
1日 に実施 した。その改正 の観点 は以下の点 にあった。(1)行
政機構 を簡素化 し,政
府各部 の企画,執
行 の一元化 をはか り,運
営の効率化 をはか る。 鬱)対
内外政策 を国務総理 の権 限下 にお き,政
治の分立化 を防 ぐ。 131 関係機構 を一元的に統合,強
化 し,地
方軍警 と一般行政 を密 にす ることによって,治
安対策 を 期す る。(4)経
済開発の体制 を整備 し,重
要産業 に対す る統制機能 を強化す る。 みDepartment of the Method of Health and Physical Education入江克己 :近代 日本における植民地体育政策の研究 (第4報)
(5)民
心の作興 と民力の涵養 をはか り,農
村 の振興 を期する。(0
中央・ 地方の連携 を強化す る一方,地
方行政 の機能 を拡充 し,画
―主義 を改 める。(7)地
方 自治 を育成 し,行
政・ 文化・ 経済等 にわたる有機的な総合組織体 として充実 させ る。その結果
,具
体的には①従来の国務院 9部 を治安
,民
生
,司
法の行政 3部 と産業
,経
済
,交
通の
3部 とし
,国
務院内局に外務・ 内務・興安の3局 を設け
,②
民生部を新設し
,教
育
,社
会
,保
健
に関する行政を統合するとともに
,③
文教部を廃止し
,民
生部の所管とする, こととなったが
,その主な内容は
,次
のようであつた。
(1)民 生部の新設一教育・社会・保健等民心の作興 と民生の安定に関する行政を所掌。民政部は廃
止す る。(2)治
安部の新設―治安対策 として関東軍 との合議 によ り治安警察,す
なわち治安部 を新設す る。0)文
教部 の廃止一教育行政 を民政部 に移管 し,文
教部 を廃止す る (後に復活 す る)。(4)外
交部の廃止一 日満一体化 を強化す るため満州国の外交 を国務総理 に主管 とす る (以上,資
料-1参
照)。 資料-1 1937年
7月 1日 新行政機構の概要一覧 皇 帝 議 府 F 秘 書 局暮
二
巨
員務 局市
韓朝幹
内 務 局‰
名 察 別 署 署市 *『満州国史 総論』 574ページ12)国
本真定詔書の澳発 と進国神廟の創建 「暴支麿懲」のための「聖戦」と称 す る日中戦争 は,次
第 に泥沼化 していった。近衛 内閣 は,1937(昭 和12)年
7月11日に「重大決意」 を発表 し,挙
国一致の体制づ くりを旗 あげす る とともに, 8月
14 日には「挙国一致・ 尽忠報国・ 堅忍持久」 をスローガンとす る国民精神総動員運動 を展開す ること を閣議決定 し,10月
12日には有馬良橘海軍大将 を会長 (明治神宮体育会長)と
す る国民精神総動員 運動中央連盟が結成 された。 務 庁 刑 民 官罰 雷房
曾葺旨目
首 部 警 察 庁範
設
酪
興 安 各 省 公 署鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
1号
(1995) その結果,思
想教化運動 と第1, 2次
人民戦線事件 に対す る思想弾圧が強化 され,米
内内閣 を後 継 した近衛内閣 は,1940(昭
和15)年
7月17日に「八紘一宇」を根本理念 とし,「皇国」を核 とす る 日満華 の「大東亜新秩序建設」 をめざす「根本方針」 を掲 げ,ま
た外相 に就任 した松 岡洋右 も, 8
月 1日 に大東亜共栄圏の確立 を叫び,米
英 を牽制す るため 9月27日,日
独伊 の三国同盟条約 に調 印 する。 そうしたなか皇帝薄儀 は,日
本 の紀元二千六百年 を慶祝す るため,熙
治宮内府大臣,星
野直 樹総務長官,御
用係吉岡中将等 とともに1940(昭
和15
康徳7)年
6月22日か ら19日間 にわたって 再度訪 日す ることになる。6月22日,新
京 を出発 し,大
連か ら軍艦 日向で横浜 に到着。26日上京 し て,天
皇,皇
后 に対面す るとともに, 7月
2日には京都 に滞在。伊勢神宮等 を参拝 し,同
6日に同 じ日向で大阪港 を出発 し,10日
大連港か ら帰着 している。 この伊勢神宮参拝 の際,薄
儀 は「日本 の肇国精神 の由来 に思いを致 し,満
州国の今 日までの発展 は,一
に天照大神 ……天皇陛下の保祐 によることを感得 し,帰
国後,神
廟 を建 て,天
照大 臣 を奉祀 する決心 を固めた(lLとい う。また吉岡中将 は,帰
京 の翌 日,関
東軍司令官に薄儀が伊勢神宮参拝 の 後,建
国神廟 の祭神 として天照大神 を奉祀す ることを表明 した旨を伝 え,早
くも同■ 日の臨時国務 院会議で建 国廟創建案が上程 されている。 もともと「建 国の神」 を崇敬 の中心 として祀 り,国
民精 神の拠 りどころとす る,
とい う考 え方 は,1937(昭
和12
康徳4)年
頃か ら関東軍な どか ら出 はじ め,政
府,協
和会 の間で論議がかわ されていた ものであった。 この臨時国務院会議で,(1)天照大神 を皇帝が奉祀 す ること,(2)そのため建国廟 を建立す ること, 0)国本箕定 に関す る詔書 を澳発す ること,他
)摂廟 として建 国忠霊廟 を創建 し,建
国に殉 じた忠霊 を 祀 ること,(5)組織法 を改正 し,皇
帝の祭祀 に関す る条文 を加 えること等が審議 され,翌
12日の参議 府会議 において創建 の決定がなされている。その後, 7月
15日付で組織法が改正 され,同
法第9条
に「皇帝ハ国ノ祭祀 ヲ行 フ」が加わ り,同
日宵 に建 国廟鎮座祭が行 なわれたのである。 その鎮座 際 の模様 を『満州国史』 は,
こう伝 えている。 「 この払暁,万
物寂 として森厳 の気 に満 ちた帝宮内庭 の祭場 に,午
前一時五〇分張国務総理 ほか, 文武顕官,飯
村関東軍参課長以下幕僚,こ
れに続 いて祭祀府 の橋本総裁,沈
副総裁,そ
の他奉祀官, 奉祀官佐,伶
官が拝殿下段 に威儀 を正 して居並ぶ うち,梅
津関東軍司令官の参進 に次いで,二
時三 〇分陸軍装 に身 を固めた皇帝が拝殿上段 に着床 された。 まもな く笏拍子の音 を合図に殿 内外 の灯燎 が一せいにか き消 され,神
秘幽玄の浄間の中に,厳
粛 な神降 ろしの儀が皇帝 により執 り行 われ,
こ の一瞬 『建 国元神天照大神』が天降 りになった。再 び灯火が点ぜ られて もとの清明に代わ り,…
… 皇帝が五彩幣 を捧 げて拝礼 を行 ない,・ ―・橋本総裁が 日文の告文 をかたわ らで代読 した。次いで梅 津司令官以下参列員一同拝礼 を行ない,・―・盛儀 を終 えた。時に午前三時五〇分であった。9ち この建 国廟 の創建 と同時 に,同
15日の年前11時に薄儀 によって「国本箕定詔書」が澳発 されてい る。 この「国本隻定詔書」は,要
するに「天照大神 ……,天
皇陛下 の保祐 に頼 らさるはな し」,つ
ま り満州国の今 日あるは,天
照大神 の庇護 と天皇 の援助 によるものであ り,「朕饗に窮 ら日本皇室 を訪 ひ,誠
梱謝 を致 し」,「爾衆庶 に詔 して訓ふ るに一徳一心の儀 を以てす」 と日満一体不可分 の関係 を 強調す る とともに,「庶 幾 くは国本惟神 の道 に隻 り,国
綱忠孝の教 に張 り,仁
愛安 んず るところ協和 化する。ち と皇道主義の浸透 と民族協和 を唱和 している。入江克己 :近代 日本 における植民地体育政策の研究 (第4報)
2.満
州 国 に お け る植 民 地 教 育 制 度 の 確 立(1)帝
政下学制の教育理念 満州国が新 たな教育制度 を樹立す るまでに6年
を要 している。すなわち1937(康
徳4
昭和12) 年12月,満
州国への行政権 の移譲 を前 に, 5月
に新学制 を公布 した。 その根本 は,「回蟄訓民詔書」 の趣 旨に基づ き,「日満一徳一心」を前提 として,日
本が親であ り,満
州が子であるとして,日
本語 を満州国の共通語 とし,式
日も日本 の紀元節,天
長節,明
治節 を加 え,そ
の日には君が代 を斉唱 さ せ,宮
城・ 帝宮追拝等天皇制 その ものの移植であった。1932年 6月 以来,新
学制 の研究 に着手 して いたが,1937(康
徳4)年
4月10日,そ
の原案が学術調査委員会 に諮 られ,国
務院会議,参
議府 の 審議 を経て,同
年 5月 2日,執
政薄儀 の訪 日3周年 を期 して新学制 として公布 されたのである。 「我国の教育 は建 国以来一貫 して建国精神 に基づ く国家国民教育である。即ち建国当初 にあって は 建国宣言,執
政宣言,満
日議定書,即
位詔書 に基 いて建 国精神 を徹底せ しむることを主眼 とし,特
に建国前の旧政権下 に於 ける排外民主の思想 を一掃 し,民
族協和 にもづ く新国家の固成 に挺身,翼
賛すべ き満州国国民 の錬成 を根本 目的 としたのである。此の根本精神 はその後,回
攀訓民詔書 によ り,更
に康徳七年七月,日
本隻定詔書の御下賜 によ り怠々確固たるものになったが,我
国教育 の根 本方針 は此の建 国の精神 に基づいて大体次の三箇条 に要約せ られ る。 一,建
国精神 に基づ く国民精神 の徹底である。即 ち一億一心,日
満不可分 の関係 を体得せ しめ,且
は忠孝 の大儀 を明 らか にし,旺
盛 なる国民精神 を涵養せ しむること。 二,実
学お よび勤労 を尊尚す ること。実学お よび勤労尊 尚の根本方針 もまた建 国草創の際,既
に要 路の間 に決定せ られたのであるが,特
に康徳4年公布 の新学制 は,こ
れ をもって根本特色 とす る。 ……国民の各々がその職務 その生活 を通 じて真 に国民 としての本務 を果 し得 るが如 き実践的知識 と技能 の習得 を根本 目標 としたのである。 この ことは王道楽土,安
居落業 を標榜す る満州建 国の 理想 に相応 じ,爾
来 その方針 を一貫 して今 日に及ぶ。 三,身
体健康 の保護・ 増進である。即ち,如
上 の建 国理想実現 に挺身,翼
賛すべ き国民 は健全 な る 身体 の所持者 たる事 を前提 とす るが故 に,而
も満州の風土 は亜寒帯気候圏に属 して健康上必 ず し も良好 な らざるが故 に,特
に身体 の保護,体
力 の増進 を強調す るのである。 以上の三箇条 を以て我国教育 の根本方針 とし,之
に基 いて新学制 は制定せ られた。(り」 この新学制 の精神 に関 して皆川豊治 とともに新学制 の立案 と造出に中心的な役割 を果た した一条 林治 (満州国師道大学教授・建 国大学教授)は
,そ
れ は建国宣言,執
政宣言,日
満議定書,皇
帝即 位詔書,国
家組織法 に基づいた「道義の確立 。日満一体・ 民業確立・ 民族協和。満邦協和」の5項
目によるものであると言い,そ
の基本的な道義(=精
神)に
ついて次のように述べてい る。 「吾々 は建 国の必然性 に立 ちかへ り,満
州国 は日本国 を本源 として建設 された ところの生命一体 の 国家 にして,飽
くまで も日本国を本源 とし,模
型 としてその大本 を樹 てるべ きもの とした。 日本 国 は天照大神 の宏大無辺なる御仁愛 とその御仁愛 に感激する国民の忠誠 とに依 つて出来た国家 なれば, 満州国にあって もこの仁愛忠誠 に依 つて君民一体,億
兆一心の天壌無窮の国家 を造 ることを以 って 根本道義 としなければな らない。而 して之 に基づ くところの人倫 の大道 は日本の教育勅語 に明示 さ れて居 る,さ
れば満州国における所謂王道主義 も,亦
この根本精神 に基づいて こそ始 めて国家 の指 導原理 としての価値 あるものである。9L
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第
1号
(1995) 45
偉)植
民地教育政策機構 と教育制度の再編 また同年 7月 1日,行
政機構 の改正 によって教育行政 は民生部 の所管 にな り,そ
れ まで民生部, 文教部,蒙
政部が所管 していた教育,保
健,衛
生,労
務,宗
教,そ
の他国民生活 に関係 のある政務, 興安各省の蒙古人教育 も民生部 に移管 し,教
育行政 を一元化 し,学
校教育,学
芸,教
科書の編纂等 は,教
育司が所掌す ることになった。 民生部の設置 とともに,省
お よび県,旗
の行政機構 も漸次改正 され,省
民生行政機関 として民生 庁,県
・旗行政機関 として教育科が設置 された。(1)省 (特別市)新
京特別市 は行政処教育科,黒
河 省,興
安北省 は省長官房民生科,そ
の他 の省 は民生庁文教科。(2)県・ 市・ 旗 教育科,た
だ し教育 科のない県・ 旗 は行政科教育股。●)蒙古地域 (興安北省)蒙
古地方 に関係 のあるものは興安総庁で 所管 し,教
育行政機関 として は,政
務処 に文教科 を置 き,康
徳2年
蒙政部 と改称 し,康
徳4年
,行
政機構 の改正で廃止 され る。 そして同年10月 1日,新
学制 の施行規則「学校規定」が公布 され,1938
年 1月 1日 より実施 された (資料-2を
参照)。 資料-2
教育行政機構図 さらに同年12月 1日 の治外法権 の撤廃お よび満鉄付属地行 政権 の移譲 に伴い,日
本 内地人教育 と旧満鉄付属地内の朝鮮 人教育 をのぞ く教育機関 は,全
て満州国の管轄下 におかれる ことになったのである。だが,満
鉄付属地内の在満 日本人 の 教育行政権 は,依然 として 日本側(満州国 駐 利特命全権大使) にあったのである (昭和12年「勅令」第680号,681号
)。 在満 大使館 に教務部 (庶務課,教
務課,保
健・体育課)を
設 けて, その事務 を処理す ることにな り,大
使館教務部長官に全権大 使,補
助機関 として教務事務官,視
学官,技
師以下 を置 き, 上席教務事務官が教務部長 となった。 「満州国政府 は日満両国間の協定 に依 り,当
分 の間満州国領 内に於て 日本国又 イエその臣民が 日本法令 によ り学校其他の教 育施設 を開設,経
営又 は管理す ること,且
日本政府が 日本国 臣民 の教育行政 を行ふ ことを承認す ることにな り,駐
満帝国 大使館 に教務部が設 けられて,そ
の事務 を処理す ることにな つた。即 ち在満 日本人教育行政権 は治外法権撤廃 の保留条項 とな り,満
州国駐剖特命全権大使 に依 り統一管理せ られるに 至 ったのである。 この所以 は固 よ り日本独 自の教育精神の真 髄 を一層徹底,拡
充す る要あるに起 因することは申す迄 もな いが,又
一面行政の本質上,日
本 の国民教育 と密接不可分の 関係 を有 し,他
面満州 日本人教育 の一元化 を図 り,且
学校経 営の適性,合
理化 を期 し,以
て治外法権撤廃後 に於 ける新事 *『満川建国十年史」 715ページ 態 に即応せ しめようとした結果 によるのである。 …… 従 って教育の根本精神 も,我
が 日本 の確固不動の教育方針たる教育 に関す る勅語 を大本 とし,日
本精神 を涵養,振
作 し,満
州建 国の精神 を体得 し,以
って満州国構成分子 として皇道宣布 の使命 を 達成すべ き忠良なる大 日本帝国臣民 を育成す るを以 って本 旨とした。大使館教務部新設労頭示 され た教育綱領 には,こ
の根本精神が明 らかに表 されている。 一,日
本精神 を涵養,振
作 し,蓋
忠の赤誠 に徹せ しむるを以て教育 の基調 とすべ し 囲 務 院 ・ ︱ 細 務 聴︱
民
生
部
上
︱ 努 務 司 ︱ 専 門 教 育 科 ︱ 編 審 官 室 一︱ 保 健 司 ︱ 禁 煙 細 局 學 官 室 ︱ 大 臣 官 房 直 轄 學 校 ・ 教 育 開 係 機 開 學 務 科 師 道 教 育 科入江克己 :近代 日本における植民地体育政策の研究 (第4報) 二
,満
州建国の精神 を体得せ しめ,満
州国構成分子たるの責務 を遂行 す るの志操 を涵養すべ し 三,他
民族 よ り信頼 を受 くるに足 る品位 と実力 を涵養すべ し 四,心
身 を鍛練 し,質
実剛健 の気象 と堅忍不抜 の実行力 とを養成すべ し 五,勤
労愛好 の性格 を陶冶 し,大
いに実用,厚
生 の知識,技
能 を啓培 すへ し0」 その教務部 も,そ
の機構 を強化す るため,1940(昭
和15
康徳7)年
4月15日,勅
令 によって関 東局 に移譲 したのである(勅令268号第1条
満州帝国において行 う神社お よび教育 に関す る事務 を 掌 らしむるため,関
東局 に在満教務部 を置 く)。 その機構 は,専
任 の教務部長以下,在
満教務事務 官,在
満教務視学官,在
満教務編修官,在
満教 務技師,在
満教務属,職
員 を置 くとともに,そ
れ までの大使館教務部 の3課
のほか に編修課 を加 え,4課
としてい る。そして,そ
の教育理念 は,建
国精神 と訪 日宣詔の趣 旨にもとづいて「―,教
育方 針 建 国精神及訪 日宣詔 の趣 旨に基 き,日満一徳一心不可分 の関係及民族協和 の精神 を体認せ しめ, 東方道徳特 に忠孝の大儀 を明 にして,旺
盛 なる国民精神 を涵養 し,徳
性 を陶冶す ると共 に国民生活 の安定 に必要なる実学 を基調 として知識技能 を授 け,身
体健康 の保護増進 を図 り,以
て忠良なる国 民 を養成するを教育 の方針 とす」 とされ,こ
の方針の もとに「学校教育要綱」 として次の事項 を掲 げている。 「教育方針 は有効適切 なる具体的方法 に依 りて之 を徹底せ しめ,抽
象的 にして迂遠 なる方法 は之 を 排す。(―)精神教育 を基調 として人格 の陶冶,徳
性の涵養 を図 り,国
民精神 の昂揚,顕
現 に努めん ことを期す。(二)労作教育 を重 ん じて勤労愛好 の精神 を養ひ,偏
知教育 の弊 に陥 るなか らしめんこ とを期す。(三)予備教育 の思潮 を排 し,学
校体系の各段階に於 ける教育 をして完成教育 た らしめん ことを期す。(四)実業教育又 は実務教育 を重視 し,初
等教育 は之 と密接 なる関連 に置 き,中
等及高 等教育 は主 として之 に依 らしむ。(五)体育 に関 しては其の精神的意義 をも了得せ しむると共 に,衛
生方面 と相倹 て国民健康 の保護増進 に努 む。(六)幼
少年の国民教育 に重点 を置 く。(七)中
等程度 以上 の教育 に付ては社会 の需要,供
給 を考慮 して之 を施 し,所
謂学問遊民 の輩出を防止す。(八)女 子教育 に於ては婦徳 の涵養 に努 め,良
妻賢母 たるの使命 を果 し得 る如 く,特
に実務的訓練 を施す。 (九)教
師の素質改善 と実力向上 とに力 を用ひ,設
備,其
の他 の物的要素 を第二義 とす。(十)社
会 の文化,民
度,財
政等 を考慮 し,之
と隔絶す るが如 きこと無か らしむ。(十一)教育 の国家的統制 を 期す ると共 に,地
方の実情 に適応せ しめん ことを努む。(十二)学
校 と社会 の連絡 を緊密な らしめ, 学校 をして社会教化 の中心た らしめん ことを期す。(十三)私人 の学校経営 は認 めざることな しと雖 も,其
の経費,教
育方針,教
師の任免等 に付,厳
重 に之 を監督す。14j」 これ らの要綱 には,例
えば主文や (四)等
に見 られるように,部
分的には大正 自由教育 の成果 を 吸収 しようとす る姿勢が うかがわれ るが,そ
の点 に関 しては,前
出の一条林治の方法理念 に も見て とることがで きる。 「従来 の日 と耳 との教育 を改善 して体験 の教育,『行』の教育 と為 し,学
校 といぶ特殊社会的に籠城 す ることをやめて,実
社会,実
生活 と手 を握 る教育 とし,暗
誦的,形
式的の教育 より創造の教育, 発明,発
見の教育へ,独
善主義,利
己的 自由主義 の教育 より協和主義的,国
家主義的の教育へ,遊
戯的,模
型的教育 より実際的,大
自然的教育へ導 き,試
験や筆答 によって結果競 はしめる教育 よ り も陶冶の過程 を尊重する教育 に,断
片的,部
分的の偏知教育 よ りも生命躍動 の教育 に,命
令的,強
制的の教育 よりも自発的,良
心的に,外
形的,仮
定的教育 よりも信仰 的,情
操的教育 に導 き,か
く て旧来の教育 に一大方向転換 を命ぜん と致 したので ございます。 か く『行』の教育,汗
の教育,実
行 の教育 に依 つて国民の性格及び生活 の改善 を図 り,之
に依 つ菫
胞一
嬢
ム
日
※
ぷ
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第1号
(1995) て新国家 を双肩 に負ふて立つべ き知識,技
能,識
見,信
念,品
格,熱
誠等 を有す る忠良 なる国民 を 養成せん とし,その確信 の下 に細 かい色々の学校教育 の要項,学
制立案上の条項等 も割 り出 されて, いよい よ新学制 の出現 となったのであ ります。k5j」 そ して満州国にお ける「学制立案上 ノ要点」 として■点 ほ どあげている。 「(―)学校体系 に於 て は教育 の就業年限を可 な り短縮 して民度,文
化 に適応せ しむ ると共 に教育 内 容 を充実せ しめん ことを期す。(二)教育 の機会均等 を重ん じ,上
級学校への連絡関係 を円滑な らし めん ことを期す。(三)設置主題 は学校 の種類 と程度 とに応 じて之 を統一 し,多
面経費負担 の公平 な らしめん ことを期す。(四)学
科 日に関 して は有機的に之 を統合 し,其
の数 を調整せん ことを期す。 (五)教
育内容 は一般的には実業科 日に重点 を置 きた りと雖 も,他
面普通科 目をも課 して円満 なる 国民性 の涵養 を期す。(六)日
本語 は日満一徳一心の精神 に基 き,国
語の一 として重視す。(七)道
徳教育,特に国民精神 を根基 とす る精神教育 は総 ゆる学科 日に於 て普遍的に之 を施 さん ことを期す。 (八)学制全般 の体系 を素 さざる限度 に於 て外国留学 との連繋 に支障なか らしめん ことを期す。(九) 学校 の名称 は旧来 の呼称 に拘泥す ることな く適切 なる名称 を用ふ。(十)学術 の蘊奥 を究 め しむる為 の研究機関 は将来必要 に応 じて之 を設置す。(十一)在満 日本人教育 に関 しては別途に之 を考慮す。0」 この行政機構 の改正 によって満州国における教育政策 は,国
務院民生部大臣な らびに教育司が担 当す ることになるが,「国務院各部官制」(1937年 康徳4年
9月 勅令第275号)の
「民生部」によ 資料-3
新学校制度図 れば次のように規程 されている。 「第二十条 民生部大臣は教育,礼
教,社
会,保
健,其
の他民心作興及民生安定 に関す る事項 を掌 理す」「第二十二条 民生部 に左 の三司 を置 く 教 育司 社会司 保健司 第二十四条 教育司 は左 の事項 を掌管す ―,学
校教育 に関す る事項 二, 学芸 に関す る事項 三,教
科書の編纂及審査 に関 す る事項 第二十五条 社会司 は左 の事項 を管掌 す ―,国
民思想 に関する件二
,社
会教育 に関 す る件 三,民
生の改善 に関す る件 四,労
働 に 関す る件 五,宗
教及礼俗 に関す る件 六,賑
tlL, 救済及免囚保護 に関す る件 第二十六条 保健司 は左 の事項 を管掌す ―,国
民 の体育及健康増進 に関す る件 二,防
疫及公衆衛 生 に関 す る件 三,医
薬行政 に関する件 ④」 こうして満州 には国民学舎,国
民義塾,国
民学 校,国
民優級学校,国
民高等学校,女
子国民高等 学校,大
学,師
道学校,師
道高等学校,職
業学校 等が設立 されたが(資料-3参
照),そ
れぞれの学 校 の目的,就
学年限,教
科 目等 は次 の ようであっ た。 は)「
初等教育 は一般国民 としての基礎教育及実 務教育 を施 し,以
て忠良なる国民たるの性格 を 涵養 し,其
の資質を向上せしむるを其の本 旨と ヽぎ喬
昌補
*皆川豊治。)『満州国の教育J(満州帝国教育会 1939年 ) 423ページ 校 學 叔 優 民 囲被 學 民 國
入江克己 :近代 日本 における植民地体育政策の研究 (第4報) す」 とされ
,そ
のために国民学舎 (国民義塾),国
民学校,国
民優級学校が設置 されたのである。 それぞれの目的 について は1937(康
徳4)年
5月 2日に発布 された勅令 によるものである。 国民学舎 は,「国民学校 の設置困難 なる地域又 は適当な らざる地域 に於て簡易なる国民教育 を施 す を以て其の目的」(「国民学舎及国民義塾二関スル件」勅令70号)と
し,就
学年限 は1年
ない し3年
で,教
科 は国民科,算
術,作
業 の3教
科 のほか,「地方 ノ事情 二依 り此 ノ外音楽及体育 ヲ課ス ル事」がで きるとしている。また国民義塾 は,「私立の国民学合 に該当するものを国民義塾 として, 現存在 の私塾中優良なるものを改編 して之 に充て」ようとす るものであった。国民学校 は,「学生 の心身の発達 に留意 して国民道徳 の基礎並 に国民 の日常生活 に必須 なる普通の知識,技能 を授 け, 労作 の習慣 を養ひ,以
て忠良なる国民 たるの性格 を育成す るを其 の目的 とす」(「国民学校令」勅 令69号)も
のであ り,就
学年限 は4年
間で,教
科 は国民科,算
術,作
業,音
楽,体
育 の4教
科で ある。(2)国
民優級学校 とは,「学生の心身の発達 に留意 して国民道徳 を涵養 し,主
として実務 に関す る普 通 の知識技能 を授 け,労
作 の習慣 を養ひ,以
て忠良なる国民 たるの資質 を向上せ しむるを其 の日 的」(「国民優級学校令」勅令71号)と
して設置 され,入
学資格 は,国
民学校 の卒業者 また は11才 以上で同等の実力 をもった者であつた。就学年限 は2年
で,教
科 は国民科,算
術,実
務,図
画, 音楽,体
育 の5教
科 となっていた。(3)国
民高等学校 は,「国民道徳 を涵養 して国民精神 を修練 し,身
体 を鍛練 し,実
業教育 を基調 とし て国民必須 の知識技能 を授 け,労
作 の習慣 を養ひ,以
て国民 の中堅たるべ き男子 を養成す るを其 の目的」(「国民高等学校令」勅令72号)と
してお り,就
学年限 は4年
間,入
学資格 は国民優級学 校 の卒業者か13才以上で同等の実力 をもった者 となっている。教科 目は,国
民道徳,国
語,歴
史, 地理,数
学,理
科,実
業,図
書,音
楽,体
育 の10教科 となってお り,こ
のほか語学 を課 す ること がで きるとしている。(4)女
子国民高等学校 は,そ
の目的 に「国民道徳,特
に婦徳 の涵養 に努めて国民精神 を修練 し,身
体 を鍛練 し,女
子 に須要なる知識技能 を授 け,労
作 の習慣 を養ひ,以
て良妻賢母 た るべ き者 を養 成す る」(「女子国民高等学校令」勅令73号)こ
とを掲 げている。就学年限 は4年
だが,う
ち1年
間の師道科 を設置す ることがで きるとしてい る。学科 目は国民道徳,教
育,国
語,歴
史,地
理, 数学,理
科,実
業,家
事,裁
縫,手
芸,図
画,音
楽,体
育 の14科 目となっている。 また師道科 は 国民道徳,教
育,実
業,図
画,手
工,音
楽,体
育 の7教科である。 低)大
学 は,「輩固なる国民精神 を修練 し,高
等 の学術 の理論及実際 を習得せ しめ,以
て国家枢要の 人材 を養成す るを其 の目的」(「大学令」勅令74号)と
して設置 され,就
学年限 は3年
だが,必
要 に応 じて1年
以内の延長 を認 め,入学資格 は国民高等学校 もし くは女子国民高等学校 の卒業者か, 同等 の実力 を持 った者 となっている。師道学校 は,初
等教育 の教師養成 を目的 としたいわゆる師 範学校 であるが,そ
の目的について「師道教育 は実践,第
行 に留意 して堅固なる国民精神 の涵養, 知識す技能 の習得,身
体 の鍛練 に努 ましめ,以
て人格 を陶治 し,教
師たるへ き者 を養成 す るを其 の目的 とす」(「師道教育令」勅令75号)と
している。 就業年限 は2年
。 さらに2年
制 の特修科 を設置す ることがで き,入
学資格 は国民高等学校3学
年終了者か これ と同等の実力 を持 った者 となっている。特修科の入学資格 は,国
民優級学校 の卒 業者 もしくは14才以上で同等の実力 を持 った者 となっている。教科 目は国民道徳,教
育,国
語, 歴史,地
理,数
学,理
科,実
業,図
画,手
工,音
楽,体
育,特
修科 は国民道徳,教
育,国
語,歴
史,地
理,実
業,図
画,手
工,音
楽,体
育 となっている。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第
1号
(1995) そしてさらに中等教育 の教師養成 のための師道高等 学校 (男子部・ 女子部)が
設置 され,入
学資格 は師道 学校,国
民高等学校,女
子国民高等学校 の卒業者,あ
るいはこれ と同等の実力 を持 った者 となっている。学 科 目は男子部が国民道徳,法
政経済,教
育,国
語,実
業,歴
史,地
理,数
学,物
理,化
学,博
物,生
理衛生, 図画,手
工,書
道,音
楽,体
育,語
学,女
子部が国民 道徳,教
育,国
語,歴
史,地
理,数
学,理
科,生
理衛 生,家
事,裁
縫手芸,実
業,図
画,書
道,音
楽,体
育 である。最後 に就業年限が2年
ない しは3年
で,13才
以上で国民学校か国民優級学校 を卒業 した者,も
し く はこれ と同等の実力 を持 った者 を対象 にし,か
つ「国 民道徳ノ涵養二努メ,職業二関スル知識技能 ヲ授ケ,L/f9L (「職業学校令」勅令76号)職
業学校が設置 され,国
民 道徳,国
語,算
術,職
業が教授 されていた (体育 を加 えることがで きる)。 公私立小学校,児
童数等の年次推 移 は,(資
料-4)の
ようになってお り,1941(昭
和16 康徳8)年
の児童数 は,お
よそ200万人 に達 している。3.植
民地体育・スポーツ政策理念 と構想
(各年度 末 ただし1932,33年は 7月 現在) *F満州国史 各論」(1086ページ)よ り作成(1)体
育政策機構 と政策理念 満州国における体育政策 は,先
の国務院各部官制 のよれば「民生部保健司」 を中心 に実施 されて いる。保健司 には「四科 ヲ置 ク」(「民生部分科規程 第十六条」慶徳4年7月 1日 政府公報)と して 「保健体育科 医務科 防疫科 煙政科」が設置 され,さ
らに「保健体育科ハ左 ノ事項 ヲ掌ル」(同 前規程 第十七条)と
して「―,衛
生思想 の普及 に関す る事項 二,飲
食物,飲
料水及上水道 に関 する事項 三,下水道,汚物掃除其の他清潔保持 に関する事項 四,墓地及火葬場 に関す る事項 五, 移民衛生 に関す る事項 六,学
校衛生 に関する事項 七,体
育運動及体育団体 に関す る事項 八, 体育衛生 の調査,統
計 に関す る事項 九,他
科の主管 に属せざる事項(lL そして「保健司各科事務分掌規程」(康徳4年
7月 1日)で
は「保健体育科」に「保健股 移民衛 生股 学校衛生股 体育股 庶務股」が設置 され (第一条),「学校衛生股」は,「―,学
生及教員 の 健康増進 に関す る事項 二,学
生の身体検査 に関す る事項 三,学
校設備 の衛生 に関す る事項 四, 身体虚弱者の監督,養
護 に関す る事項 五,衛
生教育 に関する事項 六,学
校医及学校看護婦の指 導,監
督 に関す る事項 七,教
授衛生 に関す る事項 八,学
校診療 に関す る事項 九,学
校衛生の 調査,研
究 に関す る事項」(第4条
)を掌 り,「体育股」は,「―,体
育 の指導,奨
励 に関す る事項 二, 体育施設 に関す る事項 三,体
力 の測定 に関する事項 四,学
校体育教授要 目に関する事項 五, 体育運動諸団体 の統制 に関す る事項。も にあたるもの とされている (資料-5を
参照)。 惇)体
育・ スポーツの政策構想 そして1937(康徳4)年
7月 1日 の行政機構 の改正 によって保健体育科 に体育股が設置 されたが, 資料-4
公私立初等学校学年次比較表 年度 校 数 学級数 教師数 児童数 11 162、 T'5 502.223 830,'60 8'6、 054 1012、4,3 HT,、 '10 1114、357 19,2,146 1998,576入江克己 :近代 日本 における植民地体育政策の研究 (第4報) 資料
-5
体育行政機構図 その体育股 の所掌事項 を次のように規定 している。 「―,体
育 の指導,奨
励 に関す る事項 二,体
育 施設改良に関す る事項 三,体
力 の測定 に関す る 事項 四,学
校体育教授要 目の制定 に関する事項 五,体
育運動諸団体 (体育連盟,体
育保健協会, 武道会等)の
統制,指
導 に関す る事項 即ち学校 '体育,社
会体育両方面 に亘 り,国
民 の体育及健康 増進 に関す る事項 を管掌す 七月一 日新設以来の 処理事項遊 に本年の実施予定事項 の主なるもの左 の如 し ―,国内体育行政及体育運動普及及状況調査 二, 体育衛生講習会 に本部,体育連盟 よ り講師派遣三, 満州体育保健協会 の本部及支部 の組織及事業遂行 に関す る協定 四,満
鉄付属地 に於 ける体育施設 引継 に関す る打合 五,体
育連盟主催体育大会状 況視 察 六,本
年度実施体育週 間 に対 す る指示 七,青
年訓練所,民
衆学校 の体育教案作成 八, 学校体育教授要 目原案の作成 九,体
力測定器 の 地方配布 に対す る調査 十,体
育主任会議の開催 十一,事
項「将来 ノ方針」中に掲 ぐる各事項 の準 備0」 その「将来 ノ方針」 のなかで次のように述べて いる。 「保健国策上体育運動 の占める重要性 に就いては 贅説 を要せず,体
育運動 に依 る国民 の体位向上, 健康増進 は産業上,作
業能力 の増大 と優秀 なる技術 の源泉 な り,国
防上 は其の基礎 とな り,更
に不 健康 に原因す る国民生活 の生活不安,貧
困化 を除去 し得て,社
会政策上亦重要なる役割 を有す るも の とす,本
科 は体育運動 の重要性 と満州国の特殊事情 を考慮 の上,満
州国 に於 ける体育の指導方針 を次の如 く定 め,之
に基 いて諸種の具体的方策 を講ぜん とす ―,国
家観念 の涵養 体育 を通 じて堅忍不抜 の気象 と規律 を重んず るの習慣 を養ひ,併
せて協 同,団
結 の精神 を宣揚 し て国家観念の涵養 に努むること 二,品
性 の陶冶 体育 は身体 の修練 を通 じて健康 を増進 し,兼
ねて品性 を陶冶す るを以 て 目的 とし,体
育 にして同 時 に徳育,知
育たるべ き旨を強調 し,徹
底 を期すること 三,民
族 の協和 体育運動 を通 じて民族間の融和力 の習慣 を養ひ,五
族協和 の実 を挙 ぐること 四,青
少年の体力増進 青少年の体育,特
に学校体育 に重点 を置 き,国
民体力の根本的改善 を期すること ︱ 腱 育 ノ 指 導 災 励 學 校 腱 育 腱 育 指 導 者 ノ 錬 成 腔 育 囲 泄 泄 育 運 動 施 設 腔 育 運 動 用 具 武 ︼迎 公 園 泄 育 囲 腔 大 油 洲 一 帝 國 胆 育 聯 阻 浦 洲 一 帝 國 武 道 會 瀾 洲 艘 育 保 健 協 會・管
釧
ス
ル事
項
ヲ
貝會
一日卿
肺脚
枷脚
榊剃
齢膊
貝會
*F満州建国十年史』 885ページ鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
1号
(1995) 五,体
育,保
健思想 の徹底 国民全般 に知育偏重の弊 を知 らしめ,体
育 の重要性 を体せ しめ,国
民体育,保
健思想 の自発的興 起 を図 ること 右 の根本方針 に基 き,近
き将来 に於て本科 の実施せん とする具体的事項 の主要なる もの左記 の如 し 第一 体育行政機関の充実 (省,市 ,県
への体育官配置)
第二 学校体育対策 ―,学
校体育教 授要 目の制定 二,体
育督(視)学官の設置 三,屋
内体操場,其
の他 の体育施設 の新設,改
善 四, 体力測定 第二 体育指導者 の養成 ―,国
立体育学校及附属体育研究所の設置 二,体
育講習会 の実施 第四 社会体育対策 ―,国
民体育教範の編纂 二,総
合運動場 の建設 三,小
公園 (児 童遊園)の設置 四,体
力優秀章 の制定 五,建
国体操及国技的運動の普及 六,『正 しき姿勢保持』 の全国的普及 七,勤
労時間の短縮及制限 に関す る基本調査 第五,体
育運動団体 の統制第六,体
育運動 に関す る基本的調査ω」 そして,そ
れぞれについて具体 的に注釈 を加 えている。 「第一 体育行政機関充実 (省
,市 ,県
への体育官配置) 行政機構 の改革 に伴ひ,保
健体育科 にて体育行政 を管掌す ることとな り,中
央 に於 ける体育行政 機関 は漸次拡大,充
実の気運 に在 るも,其
の手足たるべ き地方の体育担当者 は未 だ専任 の体育官設 置せ られ居 らざる為,頗
る薄弱な り,省
並 に特別市 に於てす ら総て他 の教育事務 を看 るか,或
いは 体育連盟の主事 を兼務す る等煩雑 なる職務関係 に置かれ,伴
食的地位 と看 られ勝 なる為,其
の指導, 統制力充分 と称 じ難 く,中
央 との連絡,現
地 に於 ける指導,調
査等 に活動 し兼ね る状態な り 従 って中央 の方針 を体 し,各
省,市,県
に在 りて直接学校,其
の他一般民衆 に接 して其 の指導 に 当る (日本各府県に於 ける体育運動主事 に相 当す る)体
育官 (官吏)の
充実 は緊急事 にして,地
方 に於 ける体育施設 の整備及体育 の指導,奨
励,体
育官の配置 を倹 って綴めて期 し得 る もの とす …… 本科の方針 としては,先
づ第一次 として全国十六省及特別市 に体育官 を配 し,次
に市,県
に及 ぼす 計画な り,体
育官の担当すべ き主要事項左 の如 し 学校体育 の指導及査閲 学校体育施設 の改善 整備,学
生,児
童の体力測定,学
校体育教授要 目 に関す る指導 教員 に対する体育運動 の指導 社会体育 の指導,奨
励 都市総合運動場 の新設 青 年訓練所生徒,其
の他国民一般 の体力測定 国民体育教範及建国体操の普及 冬期 に於 ける体育及 体育施設の指導 第二 学校体育対策 満州国に於 ては其の特殊事情 に基 き,体
育 の普及,徹
底 を図 らんが為 には,第
二 の国民たる現在 の青少年,特
に学生,児
童 を対象 とす るを最 も効果多 く,且
根本的改善 を為 し得 る方針 とす,依
っ て学校体育 に重点 を置 き,之
が向上 を期せん とす ―,学
校体育教授要 目の制定 学校体育教授要 目制定の必要なる所以 は改めて説 くの必要な く,現
に其の制定 な き為,学
校教員 は体育科 として何 ら系統的なる順序 な く,極
めて単純 なる教授 をなし,体
育 の素養乏 しき地方の教 員 は体操 として は僅かに建 国体操 のみを児童 に教 え居 るが如 き例 も少か らず。各地 に実施せ る教員 に対す る体育衛生講習会の席上,常
に教員 よ り制定 の速かな らん ことを求め られた り 依 つて本科 は本年 より康徳五年初 めに亘 り之が制定 をな し,体
育教授 に基準 を示すべ き方針 を樹 て,其
の準備 中なるが,立
案 に当 りて は各国の例 を参照 し,且
満州の風土,人
種 的,体
質的特徴,入江克己 :近代 日本 における植民地体育政策の研究 (第4報) 教員
,其
の他指導者 の素養の程度 を考察 して,適
宜の取捨 を行 ひ,満
州 に於 ける諸権威者 を網羅す る体育衛生審議委員会 (新設の予定)の
審議 を経て制定 の予定 な り 二,体
育督 (視)学
官の設置 一般教科 目に対 し督学官の存す る如 く,体
育科 目の成績 を考査する督学官の必要 なることは云ふ を倹 たず,勿
論,従
来 と雖 も,体
育科 目は他 の教科 目と一様督学官 に依 りて査閲 を受 けたるも,体
育科 は科 目の有つ特hJFLに依 りて種々の技術 的考察 を要 し,且
進歩,発
達 に依 りて其 の研究,指
導 は督学官 をしてよ く他 の教科 目の視察 と兼行 はしむること不可能 な り 若 し体育科 目に充分理解,経
験 を有せ ざる督学官が一般教科 目の査閲の際,之
をも合せ行ふ とせ ば,党
には日本 に於て経験 されたる如 き知育編重,体
育軽視 の風潮 を招来すべ く,其
の結果,国
民 体力 の低下 を来すべ きは火 をみるよりも瞭かな り 依 つて本科 は学校体育 の円満 なる発達 を計 る見 地 よ り,体
育科 目専任 の督学官 を民生部 に設置 の方針 を有 し (漸次各省 に専任 の視学官 を置 く,之
を実施 の予定 な り 三,屋
内体操場,其
の他体育施設の新設改善 学校体育施設 として屋外運動場及屋内運動場,域
に其 の附属器具 を以て主要なるもの とす,世
界 各国に於 て も北欧諸国の如 く,寒
帯近 く位す る国には屋内体操場 の設備 よ く備 は り,な
ほ屋外 の運 動場 は一定面積 を有す る地面 を備ふ る ときは,其
の新設 に多額 の費用を要せず 満州国に於 ては施設充分 とは称 し難 き適 当なる屋外運動場 を有す るもの多 し,唯
屋 内運動場,体
操場 に至 って は建設費 と維持費 に多額 の支出を要す る為,都会地 に於 ける僅少 の新設各校 を除 けば, 其の設備 あるもの殆 どなし (……新京 に於 ける私立小学校二十校 中屋内体操場 を有す る もの一校 に 過 ぎざるを以 て,他
は推測 し)得
べ し,為
に雨天の際に於 ては冬季厳寒の候 に於て はスケー トの如 き特殊 の運動 を除 き,約
箇年間 は体操,運
動 を休止せ ざるを得 ない現状 にして,学
校体育上看過 し 得 ざる状況 にあ り,依
って本科 は地方 に対 し極力屋内体操場 の新設 を窓憑す ると共 に,積
極的 に之 を援助す るの方針 を樹てる予定 な り…… 四,体
力 測 定 従来全国に亘 り学校体育の基礎調査 たる精密なる体力測定 の行 はれざ りし為,学
生,児
童 の体力, 発育状態不明にして体育教授要 目の制定,其
の他根本的方策 の樹立 に甚 しき障害 とな りた り,…
… 地方の学校 に於て は体重計,其
の他 の身体検査器 を備へ ざるもの甚だ多 く,加
之教師の測定技術 の 未熟 なるの点 も力H担して,身
体検査又 は体力測定の遂行上一大支障 を来 しつつあ り ……尚当分 は集計,其
の他の関係 よ り身長,体
重,胸
囲及発育状況の四種 目の検査 に限 る現行 の身 体検査 を続行す るも,漸
次種 目を増加 して体力測定 を為すが如 し,児
童,学
生 の体力 を詳細,適
確 に測定 して,児
童,学
生 をして自己の体力 を自覚せ しめ,或
は欠陥の矯正 に役立た しめ,平
均以下 の者 に対 し,其
の救護 の基準 となす等,凡
ゆる対策 の基礎 た らしむる予定な り,体
力測定 を行ふ場 合の種 目の概略,次
の如 し ―,身
長,二
,体
重,三,胸
囲,四
,座
高,五
,比
胸囲,六,呼
吸縮張差,七
,肺
活量,八 ,運
動 に依 る脈拍数の変化,九,筋
力,十,走
力,十
一,跳
力,十
二,巧
緻力,十
三,投
郵力,十
四,懸
垂力鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第
1号
(1995) 第二 体育指導者 の養成 ―,国
立体育学校及附属体育研究所 の設置 日満両国を通 じ医育機関 として は幾多の官公立大学乃至専門学校 を有す るに拘 らず,保
健 の積極 的方面たる体育 に関 して は,其
の研究乃至指導者養成 の機関 として僅か に文部省 の体育研究所 と官 立学校 に附設せ られたる体育科 とあるのみにして,独
立せ る専門の体育学校 は国に於 て之 を設置せ ず,体
育 の指導者養成 は之 を二,三
私立の体操学校 に任せ居 る現状 な り 満州国 に於 て は此 の点全 く日本 の例 に倣 ひた りと云ぶべ く,指
導者の若干 を日本 に仰 ぎたる以外 は,従
来本国に於 て積極的に優秀 なる指導者 を養成す ることは,何
等考慮 を払われて居 らない,之
を欧米の諸国が何れ も多大 の国費 を投 じて,国
家 自ら程度高 き体育大学,或
は体育専門学校 を設立 し,優
秀且多数 の学校,社
会体育指導者 の養成 に努力 し居 るに比較 し,雲
泥 の差異 と称すべ く我国 将来の国力発展上多大 の不安 の念 を感ぜ ざるを得ず 瑞典体操の発祥地 たる瑞典 に於 ける国立中央体操学校が既 に百二十年前 に設立せ られたるを云ぶ は,稽
々比較不当の観 あるも,敗
戦国たる独逸 にして も,文
化精々低 き伊太利 に於て も,又
隣接 ソ 連 に於て も,何
れ も大戦後体育方面 には国力回復,国
力興隆の要用 として体育 を重視 し居 るに鑑 み る時,日
本及満州国に於て慎重考慮 を要する問題 と思慮せ らる中― 日本乃至満州国に於 ける知育偏重の弊 を打破 して,体
育 と人格的教育 を重視,尊
重の風 を将来す るの点 に於て,単
に体育 の点 に於 てのみならず,教
育全体 に対 し,も
た らす好影響 は特筆すべ きこ とな り,夏
に体育運動指導者 に優秀 なる人材 を集 め得 る点スポーツを一層精神的にし,生
活化 し得 る点 を考ふれば,独
立せ る国立体育学校 の設立 は目下緊急 なる問題 と云ふべ く,満
州国の全国的体 育の発達第一歩 は実 に比 の問題 の実現 に在 りと言ふ も過言 に非ず 本科 に於て は以上 の見地 よ り国民学校体育教員三千名,国
民高等学校配属専任体育教員三百名, 都市体育指導者六十名,官
庁,大
会社,銀
行配属担当者百四十名,計
三千五百名 の養成 を第一次 目 標 として養成機関 を設立せん とし,本
明年準備期間 として其 の程度,規
模,内
容,其
の他研究 し, 具体案 を得 次第設立せん とす 尚本科の方針 として体育運動 は単 に身体 の鍛練 に止 めず,体
育運動 を基礎 として従来文 に編 した る在住民族 の生活改善 を企図す るを以 て,右
の体育学校 には体育研究所 を附設 し,体
育及衛生 の見 地 より満州国の特殊事情,即
ち在住民族 の人種的,体
質的特徴 を始 め,衣
服,住
宅,風
俗,習
慣, 栄養,職
業等の生活様式及之 に適当せ る体育運動,其
の施設等 に就 き根本 的研究 をなし,合
理的, 科学的なる衣食住 の方法 の工夫 に努力せん とす るものな り 二,体
育講習会 の実施 右 の如 く本科 に於 て は国家百年の計 を以て,優
秀 なる人材 を集 め,之
に徹底せ る体育教育 を施 さ んが為,体
育学校設立案 を有す るが,一
方現在 の学校教員 に対 しては毎年実施 し居 る教員の体育衛 生講習会 を今後 も連年継続,補
習的教育 を計 る方針な り,地
方各省 の教員 に対する講習会 は毎年, 程度精々高 き指導的教員 に対 す る中央 の講習会 は隔年開 し居 るも,従
来 の実績良好 なるに鑑み,今
後 は雙方共 に毎年盛大,且
実質的に実施 の予定 な り 第四 社会体育対策 一般公衆への体育普及,体
位 の向上 に対 しては幾多の方法 あるも,従
来採用 されたる体育思想普及 の方法 は,講
演,映
画,ポ
スター等耳 目を通ず る体育 の重要性認識 を主 としたるが如 し,現
在 の民入江克己 :近代 日本 における植民地体育政策の研究 (第4報) 衆 の教育程度 を以 てすれば
,右
の如 き方法の併用 は勿論欠 くべか らざる処なるも,本
科今後 の方針 としては,更
に直接公衆一般 の自ら実行 し得 る諸種体育運動 を興へて,公
衆 に実践せ しめ,公
衆 を して体育 に親 ましめ,興
味 を有 た しめ,自
然的に国民の体位 向上,健
康増進 となる如 く仕向ける方 針な り,其
の方法 に就 いて は今後 の考案 に倹つ処な るも,現
在直 に実施せん とす る事項 は左の如 し ―,国
民教育教範 の編纂及其 の普及 最 も簡単 に国民が実践 し得 る体育運動 の数種 目に就 て,之
に明瞭なる解説 を附 して一般 の実行 に 便せ しめ,之
に国民 の遵守すべ き体育及衛生 に関す る注意事項 を力日へて,国
民の生活改善の一助 た らしめん とす る案 に して,之
が全国津々浦々 に於 て迄実行 さるる暁 に於て は,満
州国民の体位 は著 しき向上 を示す もの と思料 さる,但
し直接広 く一般公衆 を対象 とし,之
に呼掛 くるも,効
果 を充分 に挙 げ得 ざるを以 て,順
序 として は,先
ず毎年学校 の卒業生 に交付 して,永
く実行せ しむると協和 会 の青年訓練所雄 に各地 の民衆学校生徒 を中心 として普及す る予定 な り…… 二,総
合運動場 の建設 体育運動発達,助
成 の為 には総合運動場 の設置 を急務 とす,現
在新京 に国立総合運動場 ある以外 は,大
都市 に於て完備せ る総合運動場 の設備な き為,各
種運動 に優れたる者,運
動の希望 を有す る 者 も,多
くは充分 に嘆足 を伸 ばし得す,又
各種運動 も実施 し得 ざる状態な り 本科 に於て は第一期計画 として奉天 の如 く,満
鉄側 にて其 の施設 を有す るものは之 を除 き,人
口 五万以上 の都市十一,二
都市 に対 し,夫
々省,市
当局 を怨憑 し,且
国庫 よりも必要 なる補助 を支出 して,其
の建設 を促進す るの方針 にして,建
設費 を一箇所四十万 円乃至二十万円 とし,様
式 は概略 新京南嶺総合運動場 の例 に従 う予定 な り,尚
,今
後施設すべ き総合運動場 には必ず指導者 を置 き, 常時運動場 に在 りて指導 に当 らむ もの とす 三,小
公園 (児童遊園) 公衆一般,特
に都市の児童 に体育運動 を普及す る為 には,総
合運動場 の外 に,幼
児及少年,少
女 の遊戯運動 を主 としたる公園乃至児童遊園の各所 に数多 く設置せ らる ゝ要 あ り,総
合大運動場 は遠 距離居住者 の使用 に便 な らざる為,自
然,使
用者及使用制限せ らるる傾向あ り,児
童 の運動の為 に は,小
公園乃至児童遊園の数多 く配置せ らるること,健
康増進上望 ましきこととす,此
の種小公園 乃至児童遊園 は面積必ず しも広大 なるを要せず,一
箇所八,九
百坪程度 にて十分機能 を発揮す るこ とを得,児
童 の遊戯用 としては諸種 の運動器具,砂
場,広
場,緑
陰等 を,成
人 の為 には鉄棒,跳
箱 の如 き体操用具 を備へ,又
休息の為 にベ ンチを比較的多 く備ふ 而 も此の種 の公園 は,位
置 は市街 の裏通 りにて喧騒 を避 け得 る処 を可 とし,地
形 の不整,其
の他 の理 由に依 りて宅地 に不適当なるものを利用す るを得 るを以 て,都
市計画上 も利便多 く,且
非常の 際にては避難,其
の多の用 に供せ らる ゝを以て,之
が建設 は都市 に於 ては一石二鳥 の効 あるもの と す,依
って……小公園乃至児童遊園の一定の基準 を作成 し,現
に都市計画中の都市 には勿論,既
設 の都市 に於 て も出来 る丈多数,之
を介在せ しむる様奨励す る方針 な り,…
… 右の小公園,児
童遊園乃至森林造営等 は之 を地方行政機関 に委せ置 くも,実
現 は容易な らざるを 以て,地
方 に於て現在 の体育保健協会又 は児童愛護連盟の如 きものを設立せ しめて,之
をして側面 的援助 を為 さしむる予定な り鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
1号
(1995) 四,体
力章 の制定 国民体力発達 に就いて最 も留意すべ き国民 の個人個人 に付,自
己の身体,体
力 に充分 なる関心 を 有たしむることな り,其
の最良の方法 は体力優秀者 (一定の標準以上 の者)に
付,之
を表彰 し,体
力優秀者 をして名誉 と自信 とを有た しむ,普
通体力者 をして一層の努力 を以て優秀 なる体力の所有 者た らしめんがため,体
力章 を制定せん と 但 し本案の実施 に当 りて は,既
に列強 に於 て之 に類似せ る事項 を実施せ るもの一,二
,(ソ連 の百 五十万人 の価用者 を有す る『労働 と国防 に備へ よ』のゲ 。テ・ オ章の如 し)あ
るを以て,模
倣 に陥 らざる様,体
力優秀標準 の決定,其
の他 に関 し,慎
重なる考慮 を要す,表
彰 の標準,方
法種々あ ら ん も,標
準 は体力測定種 目に就 き一定 の標準 を設 け,毎
年国民体力検査 を行 ひ,此
の標準 に達 しる 者 は表彰 の意 を以て,一
定 のバ ッヂ を興へて常 に価用せ しめ,一
定 の特典 を興ふ る如 く考慮す るも の とす 五,建
国体操及国技的運動 の普及 建国体操 は康徳二年五月二 日,御
訪 日を記念 し奉 りて制定せ られたるものにして,其
の意義 の深 きこと,国
民 に相当の親 しみを有 たれ居 るとに鑑 み,一
層普及 を計 るの要ある と云ふべ く,又
各種 の体育運動 に就 ては国情 に適せ ざるの故 を以 て,特
に奨励 を行 はざるものを除 きて は,概
ね不偏的 に奨励す る方針なるが,過
去数箇年間の経過 よ り見て,ア
式足球 の如 き在住民族 の興味 を有するの 運動 も分明 し来 りたるを以て,之
等 に就 て は特 に重点 を置 き,普
及す るの予定 な り 六,正
しき姿勢保持 の全国的普及 『正 しき姿勢』の保持 は体育 の最初 の手段ふ して,且
最終の目標 の一 な り。体育思想低 き満州国 民 をして,体
育 に関心 を有 た しむる一法 として最 も単純 にして分 りよ く,而
も重要なる『正 しい姿 勢の保持』奨励 は,衛
生体育思想上好手段 たるを失 はない,毎
年実施せ らるる体育週間,其
の他凡 ゆる機会 に於 て『正 しき姿勢 の保持』 の観念 を培 ひて,数
年後 に於 ては一度足 を満州国 に踏 み入れ るる者 は,国
民の直姿堂歩 に驚 くが如 き状態 に達す る迄徹底せ しむる予定 な り 七,勤
労時間の短縮及制限 に関す る基本調査 体育運動 の発達 に伴ひ,如
何 に完備せ る体育運動施設 を設 け,其
の利用 を一般 に奨励 す るも,現
在 の如 く小工業者,又
は小会社,銀
行従事員 に見 るが如 く,勤
労時間長 きに失す るか,勤
労,休
息 時間の分岐不明確なるか,又
ハ休 日,休
暇の給与少 き状態 に於ては,決
して充分 なる成績 を収 め得 ず,且
国民 を過労 に陥れ る傾向あ りて,一
般国民 の体位 向上 を図ること困難 な り,依
って本科 は近 き将来,一
般特 に都市民の勤労時間 に就て は,其
の能率 と関係 を考察の上,適
当なる短縮乃至制限 を行ふべ き基本調査 を実施 し,以
て国民の健康増進 と休養,並
に体育 の向上 に資せん とす 第五 体育運動団体 の統制 体育行政機関が充実す ると共 に,体
育運動 に直接関与す る体育運動団体が健全 なる発達 を遂 ぐる ことは,体
育 の普及,発
達 の為 に必要なることにして,本
科 に於て此 の点,特
に留意す る方針 な り。 尚民間各種 団体 の体育運動 に関す る事業,諸
事業等 に対 しては,其
の円満 なる発達 を助長す る意味 に於て国 として も必要なる補助 をなす方針 を有す入江克己 :近代 日本 における植民地体育政策の研究 (第4報) 第六 体育運動 に関す る基本的調査 国内に於 ける体育 の普及状況