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Title
クィアなヴァンパイアたち : 現代アメリカにおけるヴァンパイアの
孤独
Author(s)
中川, 千帆
Citation
中川千帆: 奈良女子大学文学部研究教育年報, 第8号, pp.43-56
Issue Date
2011-12-31
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/3045
Textversion
publisher
Nara Women's University Digital Information Repository
奈良女子大学研究教育年報 第8号 43
ク ィ ア な ヴ ァ ンパ イ ア た ち
現 代 ア メ リカ にお け る ヴ ァ ンパ イ アの孤 独
中
川
千
帆
ヴ ァ ンパ イ ア物 語 と性 的 な 冒 険 や逸 脱 は絶 えず 関 連 づ け られ て きた。 吸 血 行 為 は性 的 な イ メ ー ジ を持 つ だ けで な く、 同性 愛 行 為 を想 起 させ るの で あ る。皮 膚 を 破 り、 貫 通 させ て 体 液 を 吸 う とい う行 為 に は 、 ジ ェ ン ダ ー 差 は 存 在 しな い 。 ク リス トフ ァー ・ク ラ フ ト (ChristopherCraft)は 、 ヴ ァ ンパ イ ア の行 為 は 「突 き刺 す もの と受 容 す る もの とい うジ ェ ンダ ー に基 づ い た カ テ ゴ リー を混 乱 させ る もの」(261)で あ り、 そ の 口 は わ れ わ れ の平 静 を乱 す 問 い を投 げか け る と指 摘 す る。 我 々は 男 な の か 、 女 なの か?我 々 は 突 き刺 す も の な の か 、 開 口 部 な の か?そ して 、両 方 で あ り 得 る とす る な ら、 そ れ は ど うい うこ とな の か? そ して 、我 々 の体 液 は何 な の か?白 い もの と赤 い もの一 血 と精 液 、 乳 と血 は?お ま け に この 口、 明 快 で 安 定 した ジ ェ ン ダ ー の違 い の 転 覆 を表 す 、 この ロ は ヴ ァ ンパ イ ア た ちの 口 なの だ 。 男 で あ れ 、 女 で あ れ 。(ク ラ フ ト、261-62) ヴ ァ ン パ イ ア の 吸 血 行 為 は 、 互 い を補 完 す る も の と し て 、 従 来 、 」 は さ れ て き た 二 つ の ジ ェ ン ダ ー の 差 異 を 混 乱 さ せ る 。 キ ャ サ リ ン ・ケ イ ン(KathrynKane) は 「ヴ ァ ンパ イ ア は カ テ ゴ リ ー を 打 ち 砕 き、 境 界 を 越 え 、 ノ ー マ ル で あ る こ と の 土 台 と な っ て い る 前 提 を 乱 す 」(103)と 指 摘 す る 。 ヴ ァ ン パ イ ア の 「平 等 性 」 が 結 果 と して 、 同 性 愛 行 為 の 連 想 を 呼 ぶ の で あ る 。 ヴ ァ ン パ イ ア と 同 性 愛 と い う テ ー マ は 、 ジ ョ ン ・ ポ リ ド リ の 「ヴ ァ ン パ イ ア 」(JohnPolidori , "V ampyre,"1819)の ロ ー ド ・ル ー ス ヴ ェ ン と オ ー ブ リ ー の 関 係 、 い や 、 ま た そ の 背 景 に あ る ポ リ ド リ と バ イ ロ ン の 関 係 、 シ ェ リ ダ ン ・レ フ ァ ニ ュ の 『カ ミ ー ラ 』(SheridanLeFanu,(盆7η 抽,1872)の 中 の カ ミ ー ラ と ロ ー ラ の 関 係 に 遡 る こ と が で き る が 、 近 年 、 特 に この 連 想 を一 般 的 に した もの と して、 ア ン ・ラ イ ス 原 作 の 同 名小 説 を映 画化 した 『イ ン タ ビ ュー ・ウ ィ ズ ・ ヴ ァ ン パ イ ア 』(血 なノ幅θ確 幅 訪 訪θ1覆躍 艶 1994)を 挙 げ る こ とが で きる だ ろ う。 当 時 、一 世 を風 靡 す る美 形 俳 優 で あ っ た(そ して今 で もあ る程 度 は そ うで あ る)レ ス タ トを演 じる トム ・ク ル ーズ とル イ を 演 じる ブ ラ ッ ド ・ピ ッ トは、 女 性 フ ァ ンた ち に二 人 の 同性 愛 関 係 を夢 想 させ る に十 分 な魅 力 を振 りまい て い た。 実 はゲ イ なの で は な い か 、 とい う評 判 が い つ まで もつ い て 回 り、 必 死 で 否 定 し続 け る トム ・ク ル ー ズ が 、 敢 えて この役 を演 じる こ と に した の はい さ さか 謎 で あ る に して も。 この お な じみ に な りす ぎた ゲ イ=ヴ ァ ンパ イ ァ とい う連想 は 、現 在 も息 づ い て い る 。個 々 の作 品 に よ っ て そ の連 想 に込 め られ た意 味 に違 い が あ る の は もち ろ ん だが 、 時 代 に よ って 描 か れ 方 、 捉 え方 が 変 化 し、 そ れ ぞ れ の時 代 や 政 治 性 を反 映 す る もの とな っ て もい る。 現 代 ア メ リ カ を舞 台 に しな が ら一 人 もゲ イ の 登 場 人 物 ・ヴ ァ ンパ イ ア が登 場 し ない 、 超 保 守 ヴ ァ ンパ イ ア 物 語 『トワ イ ラ イ ト』 サ ー ガ(7■ 晦 力の が世 の 中 の 話 題 を さ ら う中 で、 同 時 に 生 産 され 、 消 費 され続 け る そ の他 の ヴ ァ ンパ イ ア物 語 の 多 くは 、今 や 当然 の よ う に ゲ イ と して の ア イ デ ン テ ィテ ィや ク ィア な セ ク シ ュ ア リテ ィ の可 能 性 を模 索 す る モ チ ー フ と して ヴ ァ ンパ イ ア を描 い てい る。 ア メ リ カ の連 邦 レベ ル に お け るゲ イ差 別 の最 後 の 砦 で あ っ た、 ア メ リカ合 衆 国軍 隊 にお け る"DontAsk,Don'tTell"(ゲ イや レズ ビ ア ン と公 言 す る者 は軍 隊 に属 す る こ と はで きな いが 、 公 言 す る こ とが ない 限 り、差 別 され て は な ら ない)ポ リシ ー が 今 年 、2011年 、9月20日 に正 式 に撤 廃 され た 現在 、 ゲ イ ・レズ ビア ンの存 在 は よ り 目 に見 え る もの とな っ て きて い る。 こ の よ う な現 在 の ア メ リカ にお け る ゲ イ、 そ して ま た は ク ィ アの 形 が 、 ヴ ァ ンパ イ ア 表象 の なか に も反 映 され て い る。 ヴ ァ ンパ イ ア 映 画 や小 説 の なか44 ク ィ ア な ヴ ァ ン パ イ ァ た ち に描 か れ る社 会 と異 性 愛 規 範 か らの 逸 脱 者 の 物 語 は 、 多 くの 場 合 、 彼 らの 孤 独 を 中心 に展 開す る。 そ の 際 、 家 族 とい う概 念 は彼 らの 願 望 と絶 望 を浮 か び 上 が らせ る もの と な って い る。 本 論 文 は、 近 年 ポ ピュ ラー カ ル チ ャー の なか で ヴ ァ ンパ イ ア を ク ィ ア と して 描 い た 重 要 作 品一1980、90年 代 の 『ハ ンガ ー』(窃 θ」勉 騨 1983)と 『イ ン タ ビ ュ ー ・ウ ィズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』、 そ して よ りカル ト的 な人 気 を博 した 小 説 『ロス ト ・ソ ウル ズ』 ¢o訂5bα な1992)と 現 在 、 『トワイ ライ ト』 と並 ん で 人気 を博 す 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア ・ミス テ リー ズ』(7乃 θ5b〃∠カθz刀吻 即z兜 ノ鵬 飴z∼㊨52001∼) (『トゥル ー ・ブ ラ ッ ド』 シ リー ズ と も呼 ば れ る)一 一 を取 り上 げ、 これ らの作 品 の ヴ ァ ンパ イ ア の あ り方 を分析 す る こ とに よ り、 道 徳 的 な タブ ー と され な が ら も、 特権 階級 の背 徳 の 一 つ と して 描 か れ て い た ヴ ァ ン パ イ ア=ク ィア な セ ク シ ュ ア リテ ィ とい う時代 か ら、 道徳 的 に は もは や否 定 され ず 、 一 つ の 選択 と して 受 け 入 れ られ て い る よ うに 見 え る現代 へ の移 行 を見 る こ と が で きる こ と、 そ して そ の 上 で 、 現代 で は この 問題 を よ り複 雑 な 問 題 と し て 描 い て い る こ と を明 らか にす る 。一 つ の重 要 な論 点 は 自分 た ち の ク ィア で あ る こ と の、 ま た は ヴ ァ ンパ イ ア で あ る こ と の一 差 異 を 本 質 的 な もの とみ る か ど うか とい う問 題 で あ る。 ニ ー ナ ・ア ウ エ ル バ ッハ(NinaAuerbach)は 「どの 時代 に もそ れぞ れ に必 要 な ヴ ァ ンパ イ ア た ちが い る」 (145)と 指 摘 す るが 、 そ れ ぞ れ の 時 代 の ヴ ァ ンパ イ ァ た ち はそ れ ぞ れ の時 代 の ク ィア を表 現 して い る と も 言 っ てい い だ ろ う。 ク ィ ア な ヴ ァ ンパ イ ア た ち の物 語 に は、 異 質 な存 在 と して の孤 独 や疎 外 感 、 家 族 とい う 形 態 に対 す る疑 問 と そ の可 能性 、 そ して分 離 主 義 か 同 化 主 義 か とい う選 択 につ い て の考 察 が 描 か れ て い る の だ。 孤 独 な 貴 族 た ち一 『イ ン タ ビ ュー ・ウ ィズ ・ヴ ァ ンパ イ ア 』 と 「ヴ ァン パ イ ア=ゲ イ 」 の 公 式 近 年 の ヴ ァ ンパ イ ア物 語 の 流 行 の 一 端 は、 『イ ン タ ヴ ュ ー ・ウ ィズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』 に辿 る こ とが で き る。19世 紀 の 古 典 作 品 や20世 紀 前 半 の 古 典 映 画 に 親 しむ こ と の な い 若 者 た ち が ヴ ァ ンパ イ ア の 明 確 な イ メー ジ を持 ち 、 お な じみ の 「キ ャ ラ ク ター 」 と感 じて い る の は、 ア ン ・ラ イ ス の お か げ と も言 え る。 しか し、 この小 説 は1974年 に発 表 され た もの の 、 映 画 化 は 1994年 で あ り、 そ の 前 に 映 画 化 さ れ て ポ ピ ュ ラ ー カ ル チ ャ ー の な か で ヴ ァ ン パ イ ア の 一 つ の 典 型 を 描 い た 作 品 と し て 、 ま ず1983年 の 『ハ ン ガ ー 』 を 見 て み た い(原 作 小 説 は1981年 発 表)。 後 に 映 画 化 さ れ た 『イ ン タ ビ ュ ー ・ウ ィ ズ ・ヴ ァ ン パ イ ア 』 と違 い 、 『ハ ン ガ ー 』 は 同 性 愛 行 為 を あ か ら さ ま に 描 写 し て お り、 「ゲ イ=ヴ ァ ンパ イ ア 」 の 公 式 を よ り明 快 に 示 し て い る 。 しか し、 興 味 深 い こ と に 、 し ば し ば 『ハ ン ガ ー 』 を 語 る と き に は 、 同 性 愛 カ ッ プ ル を 演 じ た カ ト リ ー ヌ ・ ドヌ ー ブ と ス ー ザ ン ・サ ラ ン ド ン よ り も 、 ヴ ァ ン パ イ ア 異 性 愛 カ ッ プ ル の 一 人 を演 じ た(し か も 途 中 で 画 面 か ら は 姿 を消 し て し ま う)デ イ ヴ ィ ッ ド ・ボ ウ イ に 言 及 さ れ る 機 会 の ほ う が 多 い 。 女 装 や 中 性 的 な 姿 で の パ フ ォ ー マ ン ス や ア ル バ ム ジ ャ ケ ッ ト で 知 ら れ 、 ジ ェ ン ダ ー の 境 目 を 揺 る が し て い た デ イ ヴ ィ ッ ド ・ボ ウ イ の イ メ ー ジ が 、 実 際 の 映 画 の 中 で 彼 が 演 じ た キ ャ ラ ク タ ー 以 上 に ク ィ ア=ヴ ァ ンパ イ ア の イ メ ー ジ を 印 象 づ け る こ と に 貢 献 し て い た と言 え る だ ろ う 。 『ハ ン ガ ー 』 の ヴ ァ ンパ イ ア は 、 謎 め い た 他 者 で あ る 。 映 画 の 前 半 部 分 で は 、 カ ト リ ー ヌ ・ ドヌ ー ブ 演 じ る ミ リ ア ム ・ブ レ イ ロ ッ ク は デ イ ヴ ィ ッ ド ・ボ ウ イ 演 じ る ジ ョ ン と の 美 し い 異 性 愛 ヴ ァ ンパ イ ァ カ ッ プ ル と し て 登 場 す る 。 ニ ュ ー ヨ ー ク の ナ イ トク ラ ブ で 獲i物 を 狩 り、 瀟 洒 な 屋 敷 で ピ ア ノ と チ ェ ロ を 演 奏 す る 二 人 は 、 物 質 的 に 裕 福 な だ け で な く 、 教 養 を も有 す る 上 流 階 級 に 属 す る も の と し て 描 か れ る 。 ミ リ ア ム の 財 産 や 屋 敷 ・調 度 は 、 ヴ ァ ン パ イ ア と ヨ ー ロ ッパ 的 な 貴 族 の 連 想 を 印 象 づ け 、 ミ リ ア ム(ま た は ドヌ ー ブ)の フ ラ ン ス 語 説 り と ジ ョ ン(ボ ウ イ)の イ ギ リ ス 説 り は 、 ア メ リ カ の 地 に お い て エ キ ゾ チ シ ズ ム を 感 じ さ せ る も の と な っ て い る1。 こ こ に 見 ら れ る の は 、 『ド ラ キ ュ ラ 』 な ど の 伝 統 に 基 づ い た 貴 族 、 特 権 的 な 階 級 に 属 す る も の と し て の ヴ ァ ン パ イ ア で あ る 。 主 人 公 ミ リ ア ム は 、 ク ィ ア で あ る と は 言 え て も 、 「ゲ イ 」 で は な い 。 彼 女 は 男 性 と女 性 双 方 を 性 の パ ー ト ナ ー と す る こ と が で き る 女 性 ヴ ァ ン パ イ ア で あ る 。 こ の 描 か れ 方 は ポ ー リ ー ナ ・パ ー マ ー(Paulina Palmer)も 論 じ る よ う に 、 モ ン ス タ ー と し て の 女 性 性 の 典 型 で あ る 。 パ ー マ ー は 女 性 の ヴ ァ ンパ イ ア は 、 し ば し ば 女 性 嫌 悪 に 基 づ く悪 評 を 誇 っ て き た と 指 摘 す る 。 「19世 紀 の ア ー テ ィ ス トや 作 家 た ち は 、 こ の モ チ ー フ を セ ッ ク ス に 過 剰 な 快 楽 を 得 る 女 性 を 描 く 方 法
奈良女子大学研究教育年報 第8号 45 と して 、 また彼 女 た ち の尋 常 で は な い要 求 が もた らす 破 壊 的 な 影 響 を描 くた め に 利 用 し て き た 」(100)と パ ーマ ーが 言 う通 り、20世 紀 後 半 を舞 台 と は して い る が 、 ミ リ ア ム は ジ ェ ン ダ ー を超 えた 性 的 欲 求 が破 壊 的 な結 果 を も た らす 典 型 で あ る。 そ の 点 か ら言 う な ら ば 、 この 映 画 も女性 の セ ク シ ュ ア リテ ィ を脅 威 と して 描 くフ ァム ・フ ァ ター ル 映 画 で あ る とい う こ とが で き る だ ろ う。彼 女 は 、 自信 に あ ふ れ る魅 力 的 な女 性 で あ り、家 父 長 制 の な か で は受 け入 れ られ な い女 性 性 の 在 り方 の一 つ を提 示 して い る。 ミ リア ム は、 他 者 を捕 食 す る ヴ ァ ンパ イ ア、 モ ンス タ ー なの だ。 この 映 画 の 一 つ の 大 きな テ ー マ は 、 不 死 と老 い で あ る。 だ が 、 こ の 映 画 は ヴ ァ ンパ イ ア に つ き も の の 二 つ の 概 念 に対 し て独 特 の は 釈 を提 示 して もお り、 また そ れ が サ ブ カ ル チ ャー 的 な 言及 に よっ て 強調 され て い る 。 映 画 の 冒頭 、 ミ リア ム とジ ョ ンが狩 りをす る ク ラ ブ の場 面 で は、 最 初 の ゴ ス ・バ ン ドと言 わ れ るバ ウハ ウス が 「ベ ラ ・ル ゴ ー シ は死 ん だ」 を演 奏 してい る2。 バ ウハ ウ ス の 歌 う 「不 死 だ 、不 死 だ、 不 死 だ 」 とい う歌 詞 が 吸 血 行 為 を行 う ミ リ アム と ジ ョンの 姿 に オ ー バ ー ラ ッ プす る こ と に よ って 、彼 らが不 死 で あ る こ と を 印 象 づ け る。 だ が 、 皮 肉 な こ と に こ の 「不 死 性 」 は この 映 画 の な か で は永 遠 の若 さ を意 味す る の で は な い 。 映 画 で は 明 らか に され な い 何 らか の 」 由3で ミ リ ア ム の み が 永 遠 の 若 さ と不 死 とい う特 性 を 持 つ ヴ ァ ンパ イ アで あ り、 ミ リア ム に よ っ て ヴ ァンパ イ ア と され た もの た ち は長 い 若 さ を享 受 したの ち、 突 然 、 老 い を経 験 し、 そ して そ の ま ま不 死 と な るの で あ る。 不 死 とい う死 を生 き る彼 ら は、 バ ウ ハ ウ ス が 「死 ん だ 、 い や不 死 だ 」 とそ の あ い まい さ を歌 う よ うに 、死 よ り も惨 め な不 死 を生 き続 け な くて は な らな い の だ 。 『消 費 す る 若 者 』(α 辺5㎜ ㎏ 】防〃訪)で ロ ブ ・レ イサ ム(RobLatham)は 、 ポ ピ ュ ラ ー カ ル チ ャ ー と ヴ ァ ンパ イ ア とい うテ ー マ に お い て重 要 な の は デ イ ヴ ィ ッ ド ・ボ ウ イの 起 用 で あ っ た と指 摘 す る。 だが 、 同 時 に不 死 で あ る と信 じて い た に も関 わ らず 突 然 老 い を経 験 す る こ と にな る ボ ウイ は 、 そ の 中性 的 な美 の 崩 壊 を こ の 映 画 の な か で さ らす こ とに な るの で あ り、若 さ を称 え 、 若 さ に耽 溺 す る ロ ッ ク/ポ ッ プ ・ミ ュ ー ジ ックの 成 長 ・成 熟 に対 す る抵 抗 の空 し さ を物 語 っ て もい る。 映 画 が 公 開 され た 当時 は、21世 紀 の現 在 の よ うに 、 ロー リ ン グ ・ス トー ンズ や イギ ー ・ポ ップ、 そ して 当 然 、 ボ ウ イ 自 身 を含 め た 「老 い た ロ ッ クス タ ー た ち」 が メ デ ィ ア に登 場 し続 け 、 ロ ッ クは も はや 若 者 の もの で は な い とい う こ と を 目の前 に 突 き付 け て い る 時代 で は な か った 。従 って 、 ロ ック ス ター で あ る彼 が 若 い ま ま滅 び る もの で もな く、醜 く老 い た体 で生 き続 け る とい う結 末 は 、 ロ ック ミュ ー ジ ック そ の もの の 美 学 、 ま た は ボ ウ イ 自身 の イ メ ー ジ を真 っ 向 か ら崩 す も ので あ り、21世 紀 ロ ック ミュ ー ジ ックの 状 況 を予 告 す るか の よ うで あ っ た と言 え る。 この 無 残 な ボ ウ イ の姿 は、 老 い の 残 酷 さ を 一 層 、 強 調 す る もの とな っ て い る。 一 方、 バ ウハ ウ ス が 歌 う 「ベ ラ ・ル ゴ ー シ は死 ん だ 」 は 、 ドラキ ュ ラ伯 爵 を演 じた俳 優 ベ ラ ・ル ゴ ー シ が死 ん だ 、 い や彼 は不 死 で あ る 、 と リ フ レイ ンす る歌 で あ り、 ル ゴ ー シ が彼 の演 じた役 柄 と混 同 され る こ と に よ っ て 、 フ ィ ク シ ョ ン と現 実 の境 目が 揺 らい で い る こ とを も示 唆 す る。 ル ゴ ー シ は彼 の ドラ キ ュ ラ ま た は ヴ ァ ンパ イ ア の演 技 に よ っ て もっ と も記 憶 さ れ る俳 優 で あ り、 したが っ て映 画 化 に よ って 、 初 期 段 階 の ヴ ァ ンパ イ アの ポ ピ ュ ラ ー カ ルチ ャー 化 に貢 献 した代 表 的 な俳優 で あ る。 そ の こ と につ い て 歌 うバ ウハ ウス の 曲 は 、 そ の事 実 を も う一 度 、 ポ ピュ ラー カ ル チ ャー の場 に 引 き出す もの で あ り、 そ の 曲 が ヴ ァ ンパ イ ア 映 画 の な か で演 奏 され る こ とは 、何 重 に もヴ ァ ンパ イ ア の ポ ピュ ラ ー カ ルチ ャー化 が ル ー プ し続 け る こ と を物 語 っ て い る。 バ ウハ ウ ス の歌 う 「ベ ラ ・ル ゴ ー シ は 死 ん だ」 は、 ル ゴ ー シ とい う俳 優 とル ゴ ー シが 演 じた ヴ ァ ンパ イ アが 混 同 され 、 す で に故 人 で あ るル ゴ ー シが 彼 が 演 じた ヴ ァ ンパ イ ア と同様 に不 死 で あ る と歌 う。 こ の 歌 詞 は ヴ ァ ンパ イ ア俳 優 と して 忘 れ られ る こ と の な い 「不 死 」 の存 在 と な った 俳 優 ル ゴー シ を称 えて い る と もは 釈 で き、最 終 的 には この 曲 自体 もル ゴー シ の 名 声 を不 滅 の も の とす る(=immortalize:「 不 死 」 の 存 在 とす る)役 割 の 一 端 を担 っ て い る と言 え る の で あ る。 不 老 不 死 とい う運 命 こ そ 、 ヴ ァ ンパ イ ア の孤 独 の 原 因で あ る。 表 面 的 な ゴ ス 的美 学 、 レズ ビ ア ン ・ヴ ァ ン パ イ ァ とい う(現 在 で は)使 い古 され たス テ レオ タイ プ を展 開 す る映 画 で は あ るが 、 永 遠 に生 き続 け、 美 し い ま まで あ る ミ リ ア ム は、 男 女 問 わ ず パ ー トナ ー を 求 め続 け る 。彼 女 の物 語 は、 異 質 な もの 、 阻 害 され る も の の孤 独 の物 語 で あ る。 ミ リ アム が 次 か ら次 へ とパ ー
46 ク ィ ア な ヴ ァ ンパ イ ァ た ち トナ ー と な る ヴ ァ ンパ イ ア を生 産 ・創 造 し続 け る の は 、彼 女 の み に課 せ られ た(若 い ま まの)永 遠 の命 と い う運命 を生 き抜 くた め で もあ る。 パ ー マ ー は ヴ ァ ン パ イ ァ と レズ ビア ンの共 通 点 は、 双 方 と も 「独 立 し、 孤 立 した 存 在 で あ る一 方 、 ゆ る い ネ ッ トワ ー ク の グ ル ー プ に存 在 す るメ ンバ ー で あ る とい う二 重 の存 在 」 (102)と い う点 に あ る と言 う。 だ が 、 ミ リア ム は こ の ゆ る い ネ ッ トワー ク を持 た な い。 敢 え て 言 う な ら ば 、彼 女 が生 み 出 して しま っ た無 数 の棺 の な か に 眠 る 不 死 の老 い た ヴ ァ ンパ イ ア た ちが 、 彼 女 の ゆ る い ネ ッ トワー ク と言 え よ う。 彼 女 の性 的 狩 猟 行 動 は単 な る捕 食 行 動 で は な く、 つ なが りへ の希 求 を示 す 行 動 で もあ る 。 しか し、 そ れ で も結 局 、 彼 女 と同 じ運 命 を持 つ も の は誰 もい な い 。彼 女 は異 種 の 存 在 で あ り、 人 間 は も ち ろ ん、 彼 女 が 誘 惑 して ヴ ァンパ イ ア に変 え た者 た ち もいず れ は醜 く老 い てい く。 老 い さ らば え るが 死 ぬ こ との で きな い過 去 の恋 人 た ちの 棺 を階 上 の 部 屋 に置 き 続 け る彼 女 は 、 彼 ら ・彼 女 た ち に 復 讐 さ れ る前 に、 「み ん な 愛 して い る の よ」 と言 う4。 この 言 葉 は あ な が ち 嘘 で は な い 。 自分 が 老 い て い くこ と を 認 識 した ジ ョンが 必 死 の抵 抗 を行 う と きに も ミ リア ム は協 力 的 で あ り、 気 ま ま にパ ー トナ ー を使 い 捨 て て きた と は言 え な い5。 た だ、 彼 女 に は 、 決 して永 遠 の パ ー トナ ー は見 つ か ら ない の だ。 身勝 手 な捕 食 者 で あ る ミ リア ム に は、 ネ ッ トワー ク をつ くろ う と しな が ら絶 え ず 失敗 し続 け る宿 命 の 空 しさ を見 る こ とが で きる 。彼 女 が 長 年 続 け て きた 捕 食 行 動 は 、 同類 の存 在 に対 す る希 求 か ら発 す る孤 独 の 表 現 で もあ る 。 こ の 孤 独 に 対 す る 一 つ の 答 え と し て 、 『イ ン タ ビュ ー ・ウ ィズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』 に お い て ア ン ・ラ イ ス(AnneRice)は ヴ ァ ンパ イ ア の家 族 とい う保 守 的 な価 値 観 を提 示 して い る 。 こ の作 品 に お い て もヴ ァ ン パ イ ア た ち の仲 間 ・パ ー トナ ー探 しへ の欲 求 は大 変 強 い 。 フ ラ ンス か らや っ て きた レス タ トが ニ ュ ー オ ー リ ンズ近 郊 の プ ラ ンテ ー シ ョ ン農 場 主 、 ル イ を ヴ ァ ンパ イ ア にす る の は 自分 の相 棒 をつ くる た め で あ る し、 ペ ス トで親 を失 い レス タ トとル イ の 「子 供 」 とな っ た ク ロ ー デ ィ アが 、 レス タ トを置 い て ル イ と ヨー ロ ッパ に 出発 す る の は 、 自分 た ち の 仲 間 を見 つ け る た め で あ る。 パ ー マ ー は 「ヴ ァ ンパ イ アの 死 と不 毛 性(非 生 産 性)と い う イ メ ー ジ は、 ホモ フ ォ ビ ア的 な レズ ビ ア ン 像 に もあ て はめ られ る」(102)と 指 摘 す るが 、 同様 に 男 性 の ゲ イ に もあ て は め られ る イ メー ジで あ り、 そ れ はゲ イが 家 族 とい う価 値 観 か ら真 っ向 か ら対 抗 す る存 在 と して 考 え られ て きた こ と と も関 係 す る。 だ が 、 こ の 作 品 に お い て 、 ラ イ ス は 子 供 の い る 家 庭 とい う形 を、 異 性 愛 の 夫 婦 だ け で は な くヴ ァ ンパ イ ア/ゲ イの カ ップル にお い て も可 能 性 が あ る もの と して 提 示 した の で あ る。 上 記 の 『ハ ン ガ ー 』 と同様 、 『イ ン タ ビ ュ ー ・ウ ィ ズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』 は貴 族 的 ・上 流 階級 的 な存 在 と し て の 、 従 って 中流 階 級 的 道 徳 か ら逸脱 した 過剰 を体 現 す る もの と して の ヴ ァ ンパ イ ア とい うイ メ ー ジ を踏 襲 す る もの で あ る。 だ が 、 この ヴ ァ ンパ イ ア フ ァ ミ リー の 形 成 は 、 ま るで 後 に見 られ る よ うに な る 中流 階級 的 ゲ イ核 家 族 の 形 成 同 じパ ー トナ ー と長 年 を過 ご し、 家 族 と して 養 子 と した 子 供 を育 て る を 思 わ せ る もの とな って い る。 自分 た ち が何 者 な の か 、 自分 た ち は ど こか ら来 た の か 、 を知 りた い と願 うル イ の欲 求 は 強 く、 そ の 答 え を与 えて くれ な い 自分 の創 造 主 、 レ ス タ トに対 し彼 は不 満 を募 らせ て い く。 同類 で あ る は ず の レス タ トとの 共 生 は 、 ル イ に とっ て は満 足 の で き る もの で は な い 。社 会 か らの 逸脱 者 で あ る ク ィ ア な 二 人 き りで は 、心 に 平 安 を与 え て くれ る共 同体 とは な ら な い の だ 。 ル イ が レス タ トの 元 を去 る と 宣 言 す る と き、 レス タ トは ク ロ ー デ ィア を ヴ ァンパ イ ア に し、家 族 とな る こ とに よっ て彼 を引 き留 め よ う とす る。 二 人 き りで は不 満 だ と言 わ れ た レス タ トは、 子 供 を迎 え入 れ る こ とに よっ て そ の危 機 を脱 しよ う とす る の だ。 初 め か ら レス タ トは 、 ク ロ ー デ ィ ァ の こ とを 「わ た した ち の 娘 だ 」(93)と 言 い 、 ま る で養 子 に した子 供 に話 しか け る よ うに 彼 女 に こ う言 う。 「君 の マ マ は わ た し た ち の とこ ろ に君 を預 け て い っ た ん だ よ。 マ マ は君 に 幸 せ に な っ て ほ しい ん だ っ て」(94)。 ク ロ ー デ ィ ア は 一 人 の生 物 学 的(彼 女 を ヴ ァ ンパ イ ア と した と い う意 味 で)父 親 とそ のパ ー トナ ー で あ る男 性 に よ っ て養 子 に さ れ た娘 な の で あ る 。 レス タ トは従 来 の ヴ ァ ンパ イ ア の イ メ ー ジ を踏 襲 し、欲 望 の ま ま に生 き る奔 放 で貧 欲 な生 活 を送 りなが ら、孤 独 な ヴ ァ ンパ イ ア た ちが す が る もの と して家 族 を提 案 す る。 そ の 意 味 で は、 ゲ イ の 人 々の 多 様 化 ・主 流 化 を あ る意 味 で 予 測 した もの だ と言 え る だ ろ う。 近 年 にお け る、 ヴ ァ ンパ イ ア 瓢ゲ イの 代 表 作 品 と言 え る この作 品 で は、 そ の他 の作 品 にお い て 議 論 され る
奈良女子大学研究教育 年報 第8号 こ と が あ ま りな い 、 作 家 と作 品 の 内 容 に対 す る 疑 問 が 呈 さ れ る こ と が し ば し ば あ る 。 ケ ン ・ゲ ル ダ ー(Ken Gelder)は 「異 性 愛 の 妻 で あ り 母 で あ る ラ イ ス が 、 ヘ ヘ ヘ ク ィ ア の男 性 ヴ ァ ンパ イ ア と して書 くこ と」(109)は 一 考 を要 す る こ とで あ る と し、 ま た ジ ョー ジ ・E.ハ ガ テ ィ(GeorgeE.Haggerty)は ル イ と レス タ トの 問 の 関 係 が バ イ ロ ン と ポ リ ドリの 間 の ホモ エ ロテ ィ ッ ク な絆 へ の 回 帰 で あ る と して、 そ の事 実 が ライ ス に 「ホ モ エ ロテ ィシ ズ ム に対 す る覗 き見 嗜 好 とい う答 か らは 放 す る 」(186)と 主 張 す る。 覗 き見 的 な視 点 で は な い と言 い切 れ る か ど うか は と もか く、 異性 愛 の女 性 に よ る男 性 の ホ モ エ ロ テ ィ ッ ク な 関 係 の 想 像 とい う点 で は、 こ の作 品 も70年 代 の 日本 の少 女 マ ンガ、 ア メ リカ にお け る主 にSF作 品 を題 材 と した ス ラ ッシ ュ ・フ ィ ク シ ョンの 流 れ に位 置 づ け られ る と言 え るだ ろ う。 だ が 、 ライ ス の作 品 の 特 徴 は、 自分 た ち に踏 み 入 る こ と の で き な い 世 界 を想 像 し なが ら、 そ の世 界 の 住 人 に (妻 で あ り母 で あ る)自 分 に もっ と も身 近 な もの を模 倣 させ て い る こ とに あ る 。 この模 倣 と真 実 とい う関係 は 、 こ の 『イ ン タ ビ ュ ー ・ウ ィズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』 に お い て ヴ ァ ンパ イ ア の本 質 とい う問題 に 関 して追 及 さ れ る問 題 で もあ る。 ゲ ル ダー も指 摘 す る よ う に、 『イ ン タ ビ ュ ー ・ウ ィ ズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』 の 一 つ の ク ラ イマ ッ クス は19世 紀 末 の パ リで ア ル マ ン を リ ー ダ ー とす る劇 団/団 体 、 テ ア トル ・デ ・ヴ ァ ン ピー ル との 出会 い にあ る 。 自分 た ち の ル ー ッ を求 め て トラ ン シル ヴ ァニ ア に行 き、幻 滅 した ル イ とク ロ ー デ ィア が 次 に出 会 うの は 、真 実性 を 永 遠 に は ぐ らか す 演 技 と して の 、真 実性 を排 除す る記 号 と して の ヴ ァ ン パ イ ア で あ っ た。 テ ア トル ・デ ・ ヴ ァ ン ピー ル は本 当 の ヴ ァ ンパ イ ア た ちが 人 間 た ち を 観 衆 と して ヴ ァ ンパ イ ア を演 じる劇 団 で あ り、 共 同体 で あ る。 「ヴ ァ ンパ イ ア で あ る こ と に現 実 は な く、 演 技 す る こ と とそ れ 自体 で あ る こ と はお 互 い の なか に崩 壊 す る」(ll2)と ゲ ル ダー が 主 張 す る よ うに 、 テ ア ト ル ・デ ・ヴ ァ ン ピー ル は ヴ ァ ンパ イ アで あ る こ との 本 質 を求 め る ル イ とク ロ ー デ ィ ア に、 そ ん な もの は存 在 しな い こ と を冷 酷 に 忠 告 す る。 疑 似 家 族 を形 成 す る ヴ ァ ンパ イ アた ち も こ の論 」 に従 え ば 、読 者 た ち に 、 真 の 、 また は 正 統 性 を持 つ 家 族 な ど存 在 しない こ とを 突 き付 け て い る とい う こ とが で きる。 本 物 と フ ィ ク シ ョ ン の 境 い 目の 曖 昧 さ は、 『ハ ン 47 ガー』 の な か で も示 唆 さ れ て い る こ とで あ る。 映画 の な か で流 れ る 「ベ ラ ・ル ゴ ー シ は死 ん だ」 は 、 ヴ ァ ン パ イ ァ とヴ ァ ンパ イ ア を演 じる 、 つ ま り模 倣 す る俳 優i の あ い だ の違 い を否 定 す る。 同様 に ミ リア ムが 作 り出 す ヴ ァ ンパ イ ア た ち を ミ リ ア ム の模 倣 で あ る と考 え る な ら、 彼 らの 間 に は ほ と ん ど差 が な い よ う に見 え る。 この 二 作 品 は、 ク ィ アで あ る こ とが 本 質 的 な違 い なの か とい う 点 に疑 問 を呈 して い る と言 う こ とが で き よ う。 『イ ン タ ビュ ー ・ウ ィズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』 は 、南 北 戦争 前 の ニ ュ ー オ ー リ ンズ か ら幕 を開 け る。 ア メ リ カ 人 に とっ て ア メ リカ 国 内 に お い て も っ と もエ キ ゾ チ ッ ク な 舞 台 で、 ヴ ァ ンパ イ ア の 物 語 は 展 開す る。 『ハ ン ガ ー』 と 同 じ く、 『イ ン タ ビ ュ ー』 の ヴ ァ ンパ イ ア は ヨー ロ ッパ 産 だが 、 ミ リ ア ムが ア メ リカ にお いて ヴ ァ ンパ イ ア を生 産 す る よ う に、 レス タ ト も まず ニ ュ ー オ ー リ ンズ で 純 ア メ リ カ産 の ヴ ァ ンパ イ ア を生 産 す る。 この 影 響 は 、 後 の 『ロス ト ・ソ ウ ルズ 』 や 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア ・ミス テ リー ズ 』 に見 る こ とが で き る 。 そ の 意 味 で 『イ ン タ ビ ュ ー ・ウ ィ ズ ・ヴ ァ ンパ イ ア』 は ヴ ァ ンパ イ ア もア メ リカ に 生 息 す る こ とが 可 能 で あ る とい う こ とを 印象 づ け た重 要 な作 品 で あ る 。 と は言 い なが ら、 物 語 の後 半 は大 部分 を ヨー ロ ッパ に移 し、 ヴ ァ ンパ イ ア た ち は 自分 た ち の ル ー ツ を探 す 旅 に 出か け る。 だが 、 自分 た ち の本 質 を求 め て ヨー ロ ッパ へ 行 く彼 らが 発 見 す る結 論 は、 真 実 性 や 正 統 性 な ど存 在 しない とい う もの で あ る。 自分 た ち の差 異 は本 質 的 で 、 決 して 普 通 の 人 間 た ち と は交 わ る こ との で き ない もの だ とい う認 識 は 、 自 ら を模 倣 す る ヴ ァ ンパ イ アの 存 在 に よっ て否 定 され 、 そ の 上 、 普 通 の 人 間 た ち を模 倣 して 自分 た ち も家 族 を形 成 す る こ と に よ って 差 異 か ら生 じた孤 独 も癒 さ れ る こ とに よ り、 彼 らの 差異 は ま す ます 曖 昧 な もの とな る の で あ る 。 社 会 の 周 縁 を 放 浪 し 続 け る テ ィ ー ン エ イ ジ ・ヴ ァ ン パ イ ア た ち ポ ピ ー ・Z.ブ ラ イ ト(PoppyZ.Brite)の 『ロ ス ト ・ソ ウ ル ズ 』 は 、 ロ ブ ・ レ イ サ ム に よ れ ば ジ ョ ー ジ ・ロ メ ロ 監 督 の 『マ ー テ ィ ン 』 と 同 じ ス ラ ッ カ ー (無 気 力 な 若 者)・ ヴ ァ ン パ イ ア の グ ル ー プ に 分 け ら れ る 。 レ イ サ ム の 論 じ る も う 一 つ の グ ル ー プ は 、 『イ
48 ク ィ ア な ヴ ァ ンパ イ ア た ち ン タ ビ ュ ー ・ウ ィ ズ ・ヴ ァ ン パ イ ア 』 や 『ハ ン ガ ー 』 も 属 す る ヤ ッ ピ ー ・ヴ ァ ン パ イ ア で あ る 。19世 紀 か ら の ヴ ァ ン パ イ ア 表 象 の 伝 統 に 則 る の は 、 ヤ ッ ピ ー ・ ヴ ァ ン パ イ ア で あ り、 「ドラ キ ュ ラ 伯 爵 」 と い う な じ み の 名 前 を 出 す ま で も な く 、 ヴ ァ ンパ イ ア た ち は19世 紀 に 書 か れ た 小 説 の な か で は 貴 族 や 上 流 階 級 と 結 び 付 け ら れ て き た し 、 彼 ら の 存 在 定 義 そ の も の が 他 者 の 犠 牲(「 生 き 血 を 吸 う 」)の も と に あ る と い う こ と か ら し て も 、 ヴ ァ ン パ イ ア と 特 権 階 級 の 連 想 は 分 か ち が た い も の が あ る 。 そ れ が 現 代 の 消 費 社 会 構 造 の な か で 「ヤ ッ ピ ー 」 と い う グ ル ー プ ・階 級 に 引 き継 が れ た と 見 る の は 、 的 外 れ だ と は 言 え な い だ ろ う 。 一・方 、 ジ ョ ー ジ ・ロ メ ロ の 『マ ー テ ィ ン 』 か ら 発 し た と 言 え る ス ラ ッ カ ー ・ヴ ァ ン パ イ ア ・フ ィ ク シ ョ ン は 、 テ ィ ー ン エ イ ジ ャ ー た ち の 大 人 社 会 へ の 反 抗 で あ る社 会 現 象 、 ゴ ス の 一 つ の 形 と し て 、20世 紀 後 半 に 出 現 し た もの で あ り、 そ の 代 表 的 な も の と して 挙 げ ら れ る の が 『ロ ス ト ・ソ ウ ル ズ 』 で あ る 。 そ の 点 か ら す る と 、 21世 紀 初 頭 の ア メ リ カ で の 圧 倒 的 な 流 行 を生 ん だ 『ト ワ イ ラ イ ト』 サ ー ガ な ど の テ ィ ー ン ・ヴ ァ ンパ イ ア 小 説 へ の 出 発 点 で あ る と も 言 え る 。 ま た 同 時 に 、 こ の 作 品 で は ラ イ ス が 打 ち 立 て た 伝 統 に基 づ き 、 ニ ュ ー オ ー リ ン ズ が ヴ ァ ンパ イ ア の 聖 地 と し て 描 か れ て い る 。 フ ラ ン ス 系 移 民 と カ ト リ ッ ク 教 徒 が 多 く 、 マ ル デ ィ ・グ ラ で 知 ら れ る こ の 街 は 、 ア ル コ ー ル の 酩 酊 状 態 の な か で の 性 的 過 剰 が 似 合 う場 所 と し て 、 従 っ て ヴ ァ ンパ イ ア の は び こ る 場 所 に う っ て つ け の 場 所 と し て 定 着 し た の で あ る 。 サ ブ カ ル チ ャ ー と し て の ヴ ァ ンパ イ ア 幻 想 を 『ロ ス ト ・ソ ウ ル ズ 』 が 最 も如 実 に 表 し て い る の は 、 ヴ ァ ン パ イ ァ とポ ピ ュ ラ ー カ ル チ ャ ー 、 特 に ロ ッ ク ・ポ ッ プ ミ ュ ー ジ ッ ク と の 結 び つ きが 強 い 点 に あ る 。 こ の 小 説 の な か で も 意 識 的 に バ ウ ハ ウ ス の 「ベ ラ ・ル ゴ ー シ は 死 ん だ 」 は 言 及 さ れ る 。 『ハ ン ガ ー 』 と 同 じ く 、 ヴ ァ ン パ イ ア の ク リ ス チ ャ ン が 獲 物 の 少 年 を 探 す ク ラ ブ で は 、 バ ウ ハ ウ ス が 流 れ 、 「白 さ の 限 り 白 い 」 肌 を 持 ち 、 ア イ ラ イ ナ ー で 「黒 く に じん だ 」 眼 を した 子 供 た ち が 幽 霊 た ち の よ う に 揺 れ て い る(63)。 今 ま で に 取 り上 げ た 作 品 が 、 ゴ ス の サ ブ カ ル チ ャ ー に 影 響 を 与 え た テ キ ス ト と な っ て い る と す れ ば 、 こ の 小 説 は そ の 文 化 現 象 そ の も の を 描 い て も い る こ と が 特 徴 で あ る 。 主 人 公 ナ ッ シ ン グ/ジ ェ イ ソ ン は 自分 の 思 い を 」 は し て くれ る、 ま た は代 弁 して くれ る もの と して、 「ロ ス ト ・ソ ウ ル ズ?」 とい うバ ン ドに 傾 倒 して い る。 メ リー ラ ン ド州 に育 っ た ナ ッ シ ン グ は 、行 っ た こ と もな い ノ ー ス ・キ ャ ロ ラ イ ナ州 で 活 動 す る イ ン デ ィ ・ロ ッ クバ ン ドに強 い 共 感 を抱 く。 彼 らは ゴ ス の若 者 た ちが 憧 れ を抱 くよ う な成 功 した有 名 なバ ン ドで もな く、 ゴ ス ・バ ン ドで さ え な い 。 だ が 、 主 人 公 ナ ッ シ ング/ ジ ェ イ ソ ン は、 「夜 の 子 供 」 で あ り、 「黒 い 洋 服 を着 て、 コ ー ル墨 で 眼 の縁 を なぞ り、 太 陽 が 沈 むの を じっ と待 っ てい る」 よ う な少 年 で あ り(218)、 自分 の 居 場 所 につ いて 思 い悩 む 少 年 が ロ ッ クバ ン ドにそ の 助 け を 求 め る とい う点 で 、 サ ブ カル チ ャ ー と して の ゴス 、 ま た は ヴ ァ ンパ イア 嗜 好 の 一 つ の 典 型 と言 え よ う。 この 作 品 は、前 述 の作 品 と違 い 、 主 人 公 が少 年 で あ る上 、 物 質 的 な 豊 か さや 特権 と は無 縁 の 貧 し さ を背 景 と して 展 開 す る 。 思春 期 特 有 の 疎 外 感 が 性 的 な 逸 脱 者 で あ る こ とに よっ て 一層 切 迫 感 を持 ち、 自己 の存 在 意 義 と居 場 所 の 探 求 が 展 開 され て い る 。 ウ ィ リ ア ム ・ ヒ ュ ー ズ(WilliamHughes)は 「ゲ イ の ラ イ フ ス タ イ ル にお け る快 楽 、 フ ラス トレー シ ョン、 そ して 実 際 の と こ ろ、危 険 を表 現 す る の に」想 的 な もの」(142) と して作 家 た ちが ヴ ァ ンパ イ ァ とい うテ ー マ を 選 ん で きた と指摘 す る。 こ の作 品 の 中心 が居 場 所 を求 め て 安 全 な家 庭 を捨 て 、 放 浪 す る 家 出 少 年 で あ る と 言 う 点 で 、上 に論 じた作 品以 上 に危 険 が 強調 され 、 ヴ ァ ンパ イ ア生 活 を支 配 す る原 」 が 快 楽 よ りも暴 力 で あ る こ と に焦 点 が移 っ てい る。 ヒュ ー ズ に よれ ば、 こ の作 品 は 「異 性 愛 世 界 か ら文 化 的 な分 離 を主 張 す るゲ イ と、共 存 を主張 す る ゲ イ た ち の揺 れ動 く一 致 点 」(145)に 対 す る コメ ンタ リー と して 見 る こ とが で き る。 そ の 一 つ の 特 徴 と して 、 こ の作 品 に お い て は ヴ ァ ン パ イ ア は不 死 の存 在 で は な く、 人 間 とは別 種 の 生 き物 と して描 か れ て い る こ と を ヒ ュ ーズ は挙 げて い る。 彼 らは よみが え っ た死 者 で は な く、 異 性 間 の 性 交 渉 に よ っ て生 を受 け た生 ま れつ き の ヴ ァ ンパ イ アで あ る。 つ ま り、 ゲ イ の メ タ フ ァー と して 考 え る な らば 、 ゲ イで あ る こ とは生 まれ つ きの セ ク シ ュ ア リテ ィな の だ とい う考 え を表 現 してい る。 元 か ら異 質 で あ る ヴ ァ ンパ イ ア た ち は、 内在 的 な異 質 性 が 受 けい れ られ る 場 所 を求 め て旅 をす る。 そ の 結 果 と して 、 この 少 年 の 物 語 は 共 存 主 義 よ りは分 離 主 義 を選 ぶ こ と に な る。
奈良女子大学研究教育年報 第8号 49 主 人 公 ナ ッ シ ン グ(無)は 、 超 越 的 な 美 し さ を持 つ 、 サ デ ィス テ ィ ッ ク な ヴ ァ ンパ イ ア、 ジ ラ ー と人 間 の 女 性 の 子 供 で あ り、 赤 ん坊 の と き に ヴ ァ ンパ イ ア で あ る ク リス チ ャ ンの手 に よ って 密 か に人 間の 夫 婦 に預 け られ た 。 ク リス チ ャ ン に よ っ て 名 づ け られ た 「ナ ッシ ン グ」 とい う名 は、 普 通 の 人 間 の 夫 婦 に よっ て 「ジ ェ イ ソ ン」 と変 え られ 、彼 は 自分 が ヴ ァ ンパ イ ァで あ る こ と を知 る こ とな く14歳 まで 成 長 す る 。 しか し、 毎 日の 生 活 の なか に不 満 と疎 外 感 を感 じる彼 は 、 ロ ッ クバ ン ド、 「ロス ト ・ソ ウル ズ?」 に会 い に行 く た め に家 出 をす る こ とに な る。 ナ ッシ ング/ジ ェ イ ソ ンの疎 外 感 は 、 思春 期 特 有 の もの に加 え 、 自分 の両 親 を知 らな い こ と、 セ ク シ ュ ア リ テ ィ に対 す る不 安 か ら 自分 の居 場 所 を見 つ け られ ない とい う要 因か ら発 して い る。 ナ ッ シ ン グ/ジ ェ イ ソ ン は 自分 が ヴ ァ ンパ イ ア で あ る こ と を 知 らな か っ た と きか ら、超 自然 の存 在 を信 じて い た 。 そ うで な け れ ば 、 「希 望 な んか な か っ た 。 現 実 世 界 で 彼 が 人 生 を生 き抜 く こ とな どで きな い と、 ず っ と思 っ て い た か らだ」(156)。 ナ ッ シ ン グ/ ジ ェ イ ソ ンの 自分 の居 場 所 を 求 め る気 持 ち が 、現 実世 界 の外 に希 望 を見 出 させ ざ る を得 な く して い た の だ。 ナ ッシ ング/ジ ェ イ ソ ンの そ の不 安 が は 消 さ れ 、渇 望 が 満 た さ れ る の は 、 ジ ラ ー と トウ ィ グ、 モ ロ カ イ た ち に拾 われ 、 人 間 の血 を飲 む と きで あ る。 こ の三 人 に 出 会 っ て す ぐ彼 らの こ と を 「今 ま で に 出会 っ た 誰 よ り も刺 激 的 」 で 、 「彼 ら と一 緒 に い る の と夢 見 心 地 に な る」 と彼 は 感 じる。 そ れ は彼 らが 「なぜ か彼 自身 と似 て い る」 か らで あ る(152)。 三 人 は彼 を 「受 け 入 れ て くれ る 」 と ナ ッ シ ン グ/ジ ェ イ ソ ン は感 じる の で あ り、 そ れ こ そが 「指 の 問 でお 香 の灰 を摺 合 せ 、 天井 の 星 の あ い だ に 心 を彷 復 わ せ 、 手 首 や ず っ と深 い と こ ろ か ら血 を流 しな が ら、 自分 の 部 屋 で 一 人 き りで 過 ご し」 て い た 夜 に 望 ん で い た こ と だ と 思 う(152)。 だが 、 実 際 に彼 らの 仲 間 に な る た め に は、 シ ャ ル ト リ ュ ー ズ を飲 み 、 大 量 の 麻 薬 を摂 取 す る だ け で は な く、 同郷 の 友 人 、 レイ ンの 血 を飲 み 尽 くす 饗 宴 に参 加 す る こ とが 必 要 だ っ た 。 ヴ ァ ンパ イ ア と して の 吸 血 行 動 は 、仲 間 を得 る た め の残 酷 な 通 過儀 礼 で あ った の で あ る。 そ の結 果 、 ナ ッシ ング/ジ ェ イ ソ ンは 「血 の 味 は孤 独 の終 焉 を意 味 して い た」 と語 る(158)。 そ の孤 独 が は 消 さ れ る と き、 彼 は他 者 を残 酷 に傷 つ け 、弄 ぶ ジ ラー と、 トウ ィ グ、 モ ロ カ イ の グ ル ー プ に仲 間入 り す る こ と に な り、 また 父 親 との 近 親相 姦 を犯 す こ と に な る。彼 の 孤独 を癒 す もの は 、 反社 会 的 な行 為 を行 う こ とに よっ て しか 手 に 入 れ られ ず 、 そ の結 果 と して 生 まれ る 心 の葛 藤 は そ う簡 単 に は 決 で きる も の で は な いo 一 方 、悩 める少 年ではな く、年老 いたヴ ァンパ イァ で あ る ク リス チ ャ ンは 、す で に血 の味 が 決 して孤 独 を 終 わ らせ る もの で は な い こ とを知 っ て い る。 名 前 とは 反 対 に非 キ リス ト教 的 な生 き方 をす る しか な い彼 は 、 孤 独 な テ ィ ー ンエ イ ジ ャ ー の 捕 食 者 で もあ る と同 時 に、 自分 も ほ と ん どの時 間 を周 りの 人 間 か ら孤 立 して 過 ごす 孤 独 な存 在 で あ る。 ジ ラー や トウ ィ グ、 モ ロ カ イ とは 違 う世 代 に属 す る ヴ ァ ンパ イ ア の ク リス チ ャ ン は 、 通 常 の 食 物 を受 け付 け ず 、 人 間 の 血 を飲 む こ と に よ っ て生 き延 び る こ とが で きる383歳 の ヴ ァ ンパ イ ア だ か らだ 。 享 楽 的 に吸 血 と殺 鐵 を繰 り返 す ジ ラー た ち と違 い 、 彼 は 注 意 深 く人 の 眼 を忍 ん で 行 動 す る。 だ が 、 『ハ ンガ ー 』 の ミ リ ア ム と同様 に、 彼 も孤 独 に 苛 ま れ て い る 。 そ の た め に 、彼 は最 終 的 に は ジ ラ ー た ち と行 動 を共 にす る こ とを選 ぶ の だ。 ク リ ス チ ャ ン は、 孤 独 な テ ィ ー ン エ イ ジ ャ ー た ち を ター ゲ ッ トとす る孤 独 な 性 的 逸 脱 者 の姿 と も考 え ら れ る。 彼 は 吸 血 せ ず に は 生 きて い け な い 。 ク リ ス チ ャ ン 自身 は良 心 を持 つ 、 共 感 可 能 な登 場 人 物 と して 描 か れ 、特 にナ ッ シ ン グ/ジ ェ イ ソ ン に対 して は庇 護 者 と して の 立 場 を と ろ う とす る。 しか し、 実 際 の と こ ろ 、彼 が ター ゲ ッ トとす るの は居 所 を誰 も把 握 して い な い家 出少 年 の ナ ッシ ン グ/ジ ェ イ ソ ンの よ うな 少 年 た ち で あ る。 あ る 少 年 は 自分 の 居 場 所 を求 め て 、 ク リス チ ャ ン に ヴ ァ ンパ イ ア に して くれ と頼 む 。 「お 願 い、 僕 も仲 間 に な りた い ん だ。 あ な た と一 緒 に夜 を さ ま よい 、 恋 に落 ち て、 血 を飲 み たい ん だ。 殺 して よ。 ヴ ァ ンパ イ ア に して。 噛 ん で。 一 緒 に連 れ て行 っ て」 (66)と 懇 願 す る少 年 に対 して、 ヴ ァ ンパ イ ア に対 す る誤 は を正 す こ と な く、 ク リス チ ャ ン は彼 の 命 を奪 う。 『ハ ン ガ ー』 の ミ リ ア ム の 捕 食 行 為 が 自分 の 仲 間 を作 り出 す 行 為 で もあ るの に対 し、 この 作 品 で は相 手 が そ う願 っ て もそ の 願 い は 決 して 叶 え られ る こ と は な い 。模 倣 者 は模 倣 者 の ま ま死 ぬ だ け で あ る。 他 方 、 一 見 、共 感 可 能 な ク リス チ ャ ンは 、捕 食者 で あ る こ とか ら抜 け 出せ な い 。 ク リス チ ャ ンの 人物 造 形 は 、男 性 の ゲ イ と連 続 殺 人犯 を 同 一視 す る安 易 な議 論 を肯 定 して
50 ク ィ ア な ヴ ァ ンパ イ ァ た ち しま う可 能性 の あ る危 険 な もの で あ る。 注 目を集 め な い よ うに、 探 す 人 もい な い よ う な家 出少 年 や 放 浪 少 年 を犠 牲 者 と して選 ぶ ク リスチ ャ ン は、 ま るで 衝動 を コ ン トロ ー ル で きな い幼 児 性 愛 者 が もっ と も無 力 で 目立 た な い タ ー ゲ ッ トを探 す の と似 てい る。 彼 の 捕 食 行 動 は、1960年 代 に ア メ リ カ を騒 が せ た 家 出 少 年 と男 娼 を タ ー ゲ ッ トに し、 少 な く と も33人 を殺 した と され る 連 続 殺 人 犯 、 ジ ョ ン ・ウ ェ イ ン ・ゲ イ シ ー(John WayneGacy,1942-1994)や 、1980年 代 に同 じよ う に 17人 を殺 した ジ ェ フ リ ー ・ダマ ー(JeffreyDahrner, 1960-1994)を 想 起 させ る 。 ク リス チ ャ ン は結 局 の と こ ろ、 冷 酷 な捕 食 者 なの だ 。従 って 、周 縁 に存 在 し続 け な くて は な ら ない とい う こ と は、 犠 牲 者 で あ る だ け で な く、加 害 者 と な る可 能性 も高 い こ と を彼 の 例 は示 して い る。 彼 は他 者 を傷 つ け ず には 生 きて は い け ない 存 在 で あ り、 孤独 と不 満 の 日々 か ら抜 け 出 そ う とす る 少 年 た ち の ま さ に敵 で もあ る の で あ る 。 物 語 の結 論 で は、 ナ ッシ ング が ジ ラー亡 き後 、彼 の 代 わ り に トウ ィ グ とモ ロ カ イ の 三 人 グ ル ー プ の リー ダー とな っ て い る。 エ ピロ ー グ で は 、 ロ ックバ ン ドを 形 成 した彼 らが ニ ュ ー オ ー リ ンズ で の ライ ブ を終 えた 後 の様 子 が 描 か れ る。 ナ ッシ ング は 「自分 の家 族 」 と 呼 ぶ 、 トウ ィグ とモ ロ カ イ と と もに永 遠 の放 浪 の旅 を して い る。 父 親 を失 い は し、 社 会 の周 縁 に位 置 し続 け る こ とに な る が 、 ナ ッシ ング は 同質 の もの の共 同体 の な か で生 活 し続 け る こ とに な る。 こ の結 論 につ い て 、 ヒュ ーズ は彼 ら三 人が 異 質 な もの を排 除 して、 同性 愛 的 な多 婚 状 態 の共 同体 を維 持 し続 け る もの で あ る と指 摘 す る。 従 っ て 、 ゲ イ ・ヴ ァ ンパ イ ア ・フ ィ ク シ ョ ン の20世 紀 の 一 つ の 「頂 点 」 で あ り、 迫 害 倫 」 を 拒 絶 し、 自分 た ち の差 異 を 自分 た ちで 維 持 しなが ら肯 定 的 に表 現 す る もの で あ る と結 論 づ け る。 放 浪 す る共 同体 を率 い るナ ッ シ ン グ は、 ク リス チ ャ ンが 今 の 自分 を誇 りに思 うだ ろ う と考 え る。 彼 は半 世 紀 問、 「しっ か り手 綱 を引 き締 め 、彼 ら を生 か し、 十 分 に食 料 を与 え 、 満 腹 に させ て きた 」(354)。 彼 の 自 己 評価 と ラ イ ブの 後 に注 射 器 か ら血 を飲 む ナ ッシ ング の 姿 か らす る と、 彼 はジ ラー た ち の よ う な過 剰 な暴 力 や殺 鐵 、 過剰 な麻 薬 や 飲 酒 とセ ッ クス とい う生 活 形 態 を避 け て きた よ う に見 える 。 だ が 、 ナ ッ シ ン グ は周 縁 の 共 同体 を 無 事 に保 ち 続 け る こ とが で き る の だ ろ う か?ク リス チ ャ ンは ジ ラー た ち の グ ル ー プ に属 す る こ と に な っ た ナ ッ シ ン グ を心 配 して い た。 そ れ は、 ジ ラ ーが 「正 気 を失 っ て」 い るか らで あ る。 ジ ラ ー が 次 第 に暴 力 と痛 み に対 して貧 欲 に な った こ と を、 ク リス チ ャ ン は 当 然 の 帰 結 で あ っ た と考 え て い た 。 そ れ は 「世 界 の 周縁 に何 年 も何 年 も生 き る こ と に よ っ て 、 ど ん な人 で も正 気 を失 っ て しま う だ ろ う」 か らで あ り、 「ジ ラ ー と仲 間 た ち 彼 らの狂 気 は 、 放 浪 者 と し て 、 無 法 者 と して、 殺 人 者 た ち と して 生 き る う ち に愛 す る よ う に な っ た もの だ。 狂 気 が 彼 ら を幸 せ にす る」 と観 察 す る(230-31)。 た と え孤 独 で は な く、 仲 間 が い て も、社 会 の 周 縁 に生 き続 け る こ と は精神 に影 響 を 及 ぼ す こ と に な る、 と こ こで は示 唆 され て い る。 家 族 とイ中問 を希 求 す る痛 々 しい社 会 的 、 性 的 、 種 的 逸脱 者 の ナ ッ シ ン グ は、 安 定 した 「家 族 」 を手 に入 れ た よ うに 見 え る。 彼 ら は人 間 の社 会 か ら決 定 的 に異 質 の 共 同体 を形 成 し、 社 会 の 周縁 で 生 活 す る こ と を選 ん だ 。 だ が 、 この 分 離 主 義 的 結 論 が危 うい バ ラ ンス の上 に 立 っ て い る こ と も示 唆 され て お り、 冷酷 で快 楽 主 義 的 な ジ ラー の跡 を継 い で 、 放 浪 者 と無 法者 の グ ル ー プ の リー ダー とな った ナ ッ シ ン グが 「家族 」 を無 事 に維 持 し続 け る こ とが で き るか ど うか に は 、 す で に大 きな 疑 問符 が つ い て い るの で あ る。 階級 と家 族 一 ヴ ァンパ イ ア と豹 人 間 の あ い だ の 大 き な階 級 差 ヴ ァ ンパ イ ア物 語 が 富裕 階級 で は な い 人 々 を(犠 牲 者 以 外 の存 在 と して)描 くよ うに な り、行 き場 所 の な い テ ィー ンエ イ ジ ャー の怒 りの 表現 と して の ヴ ァ ンパ イ ァ模 倣 とい う文化 が根 付 い た21世 紀 初 頭 の ア メ リ カ に お い て、 ヴ ァ ンパ イ ア物 語 は 非常 な 人気 を博 す こ と に な っ た。 映 画 も小 説 も大 ヒ ッ トとな っ た 、 も っ と も 保 守 的 で(従 っ て よ り大 き な 問 題 を提 示 して い る) 『トワイ ラ イ ト』 サ ー ガ6、 ネ ッ トワ ー ク 局 よ り も過 激 な暴 力 ・性 描 写 を特 徴 とす る プ レ ミア ム ・ケ ー ブ ル 局 のHBOに よ る テ レ ビ ドラマ 化 で 人気 を爆 発 的 な も の と した 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア ・ミス テ リー ズ 』/ 『トゥル ー ・ブ ラ ッ ド』 シ リー ズ 、 や は りテ ィー ンエ イ ジ ャー 向 け の テ レ ビ ドラ マ と して人 気 を博 して い る 『ヴ ァンパ イ ア ・ダ イ ア リー ズ』 な ど、 ア メ リ カで は 多 くの ヴ ァンパ イ ア をテ ー マ と した小 説 や 映 画 、 テ レ ビ ドラマ が 生 産 され て い る。 これ らの一 つ の特 徴 は、 ヴ ァ ンパ イ ア を 中心 とす る もの の、 そ の他 の超 自然 的
奈良女子大学研究教育年報 第8号 51 な登 場 人 物 も登 場 し、 そ の際 に階 級 差 とい う問 題 を も 描 い て い る こ とで あ る。 『トワ イ ラ イ ト』 で は 、抜 け る よ うに 白 い肌 の ヴ ァ ンパ イ アた ち は ワ シ ン トン州 の 小 さな 町 で 新 車 の メ ル セ デ ス ・ベ ンッ やBMW、 ポ ル シ ェ を乗 り回 す 富裕 層 で あ り、狼 人 間 た ち は保 留 地 に 住 む褐 色 の肌 の ネ イ テ ィブ ・ア メ リカ ンた ち と して描 か れ る7。 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア ・ミス テ リ ー ズ 』 にお い て も、 ヴ ァ ンパ イ ア とそ の他 の超 自然 的 生 物 の あ い だ に 同様 な階 級 差 が 見 られ、 その 階 級 差 が 異 性 愛 規 範 の 持 つ 意 味 にお い て大 きな要 素 と な って い る。 こ の 点 に注 目す る と、 階 級 差 が 「家 族 」 と共 同 体 とい う 概 念 に お い て 、 大 き な違 い を生 み 出 す 要 素 とな る こ と が 浮 か び 上 が っ て くる。 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア ・ミス テ リ ー ズ 』 で は 、 ヴ ァ ンパ イ ア や 狼 人 間 た ち が マ イ ノ リ テ ィ の比 喩 で あ る こ と を作 者 が 意 識 して い る こ とが うか が え る 。 ヴ ァンパ イ ア た ち に 次 ぎ、狼 人 間 や シ ェ イ プ シ フ タ ー た ち は シ リー ズ9作 目の 『デ ッ ド ・ア ン ド ・ゴ ー ン』 の θヨゴ紐 げ6切 θ)に お い て 「カ ミ ン グ ア ウ ト」 す る。 ヴ ァ ンパ イ アた ち の市 民 権 問 題 に も言 及 して き た この作 品 で は あ るが 、 狼 人 間や シ ェ イ プ シ フ ター た ち の市 民 権 の 問題 は よ り深 刻 で あ る。 なぜ な ら彼 らは 一 度 死 ん だ ヴ ァ ンパ イ ア た ち と は違 っ て 、 ア メ リカ の 土 地 に生 ま れ た(ま だ一 度 も死 ん で い な い)生 まれ な が らの ア メ リカ人 で あ り、彼 らの生 得 の権 利 につ い て 制 限 を受 け る こ とは、 ア メ リカ合 衆 国憲 法 に 関 わ る 問題 で あ るか らだ 。 作 家 シ ャー レイ ン ・ハ リス が ヴ ァ ンパ イ ア、 そ して これ らの 超 自然 の存 在 に、 ア メ リ カ 国 内 にお け る マ イ ノ リテ ィの 問 題 を意 識 的 に重 ね て い る こ とは 明 らか で あ る 。 だ が 、 テ レパ ス で は あ るが バ ー の ウェ イ トレス を主 人公 と し、舞 台 は ル イ ジ ァナ 州 だ が ニ ュ ー オ ー リ ンズ で は な く小 さ な ボ ン ・トン とい う街 で あ る この ヴ ァ ン パ イ ア物 語 は、 ユ ー トピア 物 語 で もデ ィス トピア物 語 で もな く、 現 実 の ア メ リカ に 近 い舞 台 の 中 で展 開 され て い く。 そ れ が 特 に顕 著 に見 て とれ る の は、 性 的 マ イ ノ リテ ィ を迫 害 す る者 た ち に対 す る描 写 で あ る。 小 説 中 には ヴ ァ ンパ イ アや 狼 人 間 た ち を迫 害 す る 団体 と し て 、過 激 な レ トリ ッ ク を展 開す る 「太 陽 の 信 徒 た ち」 とい う キ リス ト教 団体 が 登 場 す る。 「太 陽 」 とい う言 葉 か ら推 測 で きる よ う に最 初 は ヴ ァ ンパ イ ア に対 す る 危 機 感 か ら結 成 され た グル ー プで あ る が 、彼 らは シ ェ イ プ シ フ ター た ち に も同 じよ う に不 寛 容 の レ トリ ッ ク を展 開 す る 。 こ れ は超 保 守 主 義 の キ リス ト教 グ ル ー プ が 、性 的 マ イ ノ リテ ィ を糾 弾 す る 様 子 を容 易 に想 起 さ せ る もの で あ る。 シ リー ズ を通 して 、 も しか して ヴ ァ ンパ イ ア や シ ェ イ プ シ フ タ ー な の で は な い か 、 と問 い か け られ る と、 主 人 公 た ち は 「ま さか 、 わ た しは キ リ ス ト教 徒 よ」 とい う 回答 をす る。 ヴ ァ ンパ イ アや シ ェ イ プ シ フ ター た ちが 、 キ リ ス ト教 的価 値 観 か ら逸 脱 し た価 値 観 を標榜 す る存 在 で あ る とい う考 え を無 意 識 の う ち に反 映 した 回 答 で あ り、 ヴ ァ ンパ イ アや シ ェ イ プ シ フ ター た ち に 性 的 マ イ ノ リ テ ィが 投 影 され て い る こ と も容 易 に うか が え る回 答 で あ る。 また 特 に 南 部 の 風 土 の な か で は 、 「キ リス ト教 価 値 観 」 が そ こか ら逸 脱 す る 者 を糾 弾 し よ う とす る 人 々 の 根 拠 と して機 能 す る こ と を示 して い る。 こ の よ うに性 的 マ イ ノ リテ ィ を巡 る 政 治 的状 況 に敏 感 な 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア ・ミス テ リーズ 』 は 、 さ ま ざ ま な性 の 在 り方 が 描 か れ て い る と い う評 価 を受 け、 小 説 中 に は 「オ ム ニ セ ク シ ュ ア ル 」(ジ ェ ン ダ ー だ けで な く、 人 間 や ヴ ァ ンパ イ ア とい う種 等 も超 え た 性)と い う言 葉 も登 場 す る。 だが 、 こ の ク ィ ア ・ヴ ァ ンパ イ ア物 語 が規 範 に制 限 され ない 、 つ ま りク ィ ア な 性 を 自由 に 享 受 す る こ とが で きる 世 界 観 を展 開 して い るか 、 とい う とそ れ は ま た別 の 問 題 で あ る 。 「オ ム ニ セ クシ ュ ア ル」 な性 の在 り方 を享 受 す る こ とが で き る の は 、主 に ヴ ァ ンパ イ ア と一 部 の 人 間 の み で あ る 。 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア』 シ リー ズ の な か で 、 ヴ ァ ン パ イ ァ た ち は人 工 血 液 の発 明 を きっ か け と して人 間 の 世 界 に 「カ ミ ン グ ア ウ ト」 し、人 間世 界 と共 生 し よ う とす る 。 「メ イ ンス トリー ム 」 す る(=人 間世 界 と共 生 す る)ヴ ァ ンパ イ アた ち を 中心 に描 くこの 小 説 は、 『ロス ト ・ソ ウル ズ』 の 結 論 で あ る分 離 主 義 的 生 き方 とは 反対 の 可 能性 を描 い て い る よ う に見 え る。 だ が 、 同 じ く南 部 ル イ ジ ア ナ 州 を 舞 台 とす る こ の作 品 は、 ヴ ァ ンパ イ ア や ヴ ァ ンパ イ ァ との 交 友 を持 つ もの 、 そ して そ の他 の超 自然 の存 在 に 対 す る迫 害 を 日常 的 な 危 険 と して も描 い て い る 。 さ ま ざ まな セ クシ ュ ア リテ ィ の在 り方 は」 は さ れ るべ きで あ り、 受 け入 れ られ るべ きで あ る とい う リベ ラ ル な立 場 に 立 ち な が ら も、 現 実 は、 そ して特 に限 られ た環 境 に あ る 人 々 は 、 そ の」 想 に近 づ くこ とが極 め て 難 しい とい う認識 が こ の作 品 で は示 され て い る の だ 。
52 ク ィ ア な ヴ ァ ン パ イ ア た ち 『サ ザ ン ・ヴ ァ ンパ イ ア』 シ リー ズ で もっ と も印 象 に残 る ゲ イ の 登 場 人 物 は、 ス ー キ ー の い と こ で あ る、 妖 精 の ク ロ ー ドで あ る 。 「妖 精 」("fairy")と い う言 葉 が ス ラ ン グ と して ゲ イの 男 性 を示 す よ うに 、 ほ とん どジ ョー クの よ う な この 登 場 人 物 は 、 あ る種 の ス テ レオ タイ プ と して の ゲ イの 造 形 か ら外 れ る こ とが ほ とん どな い 。 茶 色 の 眼 に長 身 で 黒 髪 、鍛 え られ た ほ ぼ 完壁 な 身体 を持 つ 彼 は、 男 性 ス トリ ッパ ー で あ り、 ス トリ ップ ク ラブ の オ ー ナ ー で あ り、 や が て は ロ マ ンス 小 説 の カ バ ー モ デ ル で もあ る。 彼 は 欲 望 の対 象 と して 「見 られ る 」存 在 で は あ るが 、 他 者 に は全 く興 味 を持 た ず 、 自分 の 美 に 耽 溺 す るだ け の ナ ル シ シ ス テ ィ ック な男 性 で あ る 。従 っ て 、 彼 には 肉体 関係 よ り深 い 関係 を持 つ相 手 が い る様 子 は な く、 ひ た す ら 自分 の外 見 を 愛 す る浅 薄 な 人物 で あ る 。 だ が 、 人 間 で は な く、 しか も資産 階級 に属 す る ク ロ ー ドは 、全 く迫 害 を受 け る こ とは な く、 セ ク シ ュ ア リテ ィや ア イ デ ンテ ィ テ ィ に思 い悩 む こ とは一 切 な い8。 妖 精 と同様 に 、 ヴ ァ ンパ イ ア た ち も既 存 の異 性 愛 規 範 か ら逸 脱 す る こ とに全 く問題 が な い。 こ の小 説 世 界 の な か で は、 ヴ ァ ンパ イ ア世 界 独 特 の政 治 構 造 が 存 在 し、 ア メ リ カ を数 か所 の地 域 に分 け て統 治 す る 「王 」 や 「女 王 」 が 登 場 す る。 従 っ て 、 ヴ ァンパ イ ア た ち の なか で も下 層 階 級 に属 す る もの た ち は存 在 す る はず だ が 、 主 人 公 と接 す る こ との あ る ヴ ァンパ イ ア た ちの 多 くは 富 裕 な貴 族 階 級 で あ る。 しか し、 そ の 貴 族 的 な ヴ ァ ンパ イ ァ た ち は 、 特 権 と 自由 を持 つ だ け で は な く、 慣 習 や ル ー ル に縛 られ る もの と して も描 か れ る。 彼 ら は 自分 を ヴ ァ ンパ イ ア と した者 との あ い だ に性 関 係 を結 ぶ こ と を儀 式 と して い る。 比 喩 的 に は親 子 で あ る ヴ ァ ンパ イ アた ちの 近 親 相 姦 的 な関 係 は、 異 性 間 だ けで な く同 性 間 で 結 ばれ る こ と も多 く、 例 えば 、 主 人 公 ス ー キ ー の 二 番 目の ヴ ァ ンパ イ アの 恋 人 、 エ リ ッ ク は 自己 の 意 思 の 範 囲 で は ほ ぼ女 性 を相 手 とす る に も関 わ らず 、創 造 主 の ア ッ ピ アス ・リ ヴ ィ ウス ・オ ケ ラ と の 同性 愛 関係 を持 っ た 過 去 を持 つ 。 自分 の 「親 」 に は 彼 らは抵 抗 す る こ とが で き ない 。 彼 らは 特権 的 な 階級 と して過 剰 な性 的 自由 を謳 歌 す る こ とが で きる に も関 わ らず 、彼 らは 「家 族 」 の つ なが りには 縛 られ る の で あ る 。 ヴ ァ ンパ イ ア の性 関係 は 、 この小 説 世界 で は 生殖 を 伴 わ な いが 、 関係 性 の構 築 とい う点 で重 要 な 意 味 を占 め る行 為 と して 描 か れ て お り、 「結 婚 」 が ヴ ァ ンパ イ ア た ち に とっ て所 属 と財 産 の 共有 を意 味 す る こ と と同 様 に、性 行 為 に重 い 意 味 を持 た せ る伝 統 的 な価 値 観 が 奔 放 な 性 行 為 に お け る 自 由 と と も に共 存 して い る 。 従 っ て 、上 に述 べ た よ うな ヴ ァ ンパ イ ア た ち の ク ィア な 性行 為 の結 果 は 、 自由 と伝 統 が 同 時 に存 在 す る現 代 社 会 の あ る種 の縮 図 と も言 え な くもな い だ ろ う。 そ の特 徴 が よ り顕 著 に 表 れ る の が 、 ヴ ァ ンパ イ ア の よ うな特 権 階級 を構 成 しな い超 自然 の存 在 と して 描 か れ る シ ェ イ プ シ フ タ ー や 狼 人 間 や豹 人 間 た ち(「 ウ ェ ァ 」 とこ の小 説 で は総 称 され る)の 社 会 で あ る 。 シ ェ イ プ シ フ タ ー や ウ ェ ア た ち は 、動 物 に姿 を変 え る もの で あ る こ とか ら、 よ り 「動 物 と して の原 」 」 に 支 配 さ れ る もの と して描 か れ る 。 ヴ ァ ンパ イ ア た ち に とっ て 性 行 為 が 関係 性 の構 築 の基 礎 を なす もの で あ る とす る な ら ば、 豹 人 間 た ち に とっ て は 性 行 為 は生 殖 の た め の 、種 の存 続 の た め の行 為 で あ り、 そ の た め に シ ェ イ プ シ フ タ ーや ウ ェ アが 「オ ム ニ セ ク シ ュ ア ル」 で あ る こ とは許 さ れ ない こ とに な る9。 先 に も述 べ た よ う に 、 ヴ ァ ンパ イ ア た ちが よ り富 裕 層 の 存 在 と して 描 か れ る こ と に対 し、 シ ェ イ プ シ フ タ ー た ち は と もか く、 ウ ェ ア た ち は下 層 階 級 の住 人 と して 描 か れ る。 『トワ イ ラ イ ト』 の よ う に お もむ う な 人 種 的 な 線 引 き は な い が 、 階 級 的 な差 は 明 ら か で あ る10。狼 人 間 た ち は 、 ア ル シ ー ドを初 め と して 都 市 部 に住 むが 、 大 半 が 自動 車 修 」 工 や 大 工 な どの ブ ル ー カ ラ ー の 労 働 者 た ち で あ る 。 そ の 中 で も よ り顕 著 な の は、 カル ヴ ァ ン ・ノ リス 率 い る豹 人 間た ちで あ る。 彼 ら は 、 主 人 公 が 住 む 町 、 ボ ン ・ トン の 郊 外 の ホ ッ ト シ ョッ トに住 む 。 ホ ッ トシ ョッ トは他 者 が 踏 み 入 れ る こ とが で き ない 、 そ して通 常 の ア メ リ カ連 邦 の ル ー ル が 適 用 され ない 、 実 質 的 な 自治 区で あ り、 貧 し く くず れ か か っ た 家 が 並 ぶ 、 う ら寂 しい 地 域 で あ る。 ネ イ テ ィ ブ ・アメ リ カ ンの 居 留 地 や 南 部 の 貧 しい 村 を想 起 させ るホ ッ トシ ョッ トの 人 間 は、 近 親 婚 が 多 く、 誰 も が 二 つ の うち の どち らか の 苗 字 を持 つ 。 カル ヴ ァン は リー ダー と して 動 物 の 群 れ の リー ダー の よ う に絶 対 の 権 力 を誇 って お り、 豹 人 間 た ち に は個 人 の 自由 は ほ ぼ ない に等 しい 。 もっ と も悲 劇 的 な物 語 と して 語 られ る の が 、 カ ル ヴ ァ ン率 い る豹 人 間 の 共 同 体 、 ホ ッ トシ ョッ トを脱 出 して ボ ン ・トンに居 住 す る メル ・ハ ー トの ケ ー ス で あ