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分子を識別する周波数コム利用のラマン分光法

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Academic year: 2021

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2014.3 Laser Focus World Japan

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 無標識の実時間分子イメージングは、 2台のレーザ周波数コムを使って顕微鏡 下の分子種を迅速に識別するコヒーレ ントラマン分光イメージング法が開発さ れ、大きな一歩を踏み出した(1)。この技 術は独マックス・プランク量子光学研究 所、独ルートヴィヒ・マクシミリアン大 学ミュンヘン校、仏パリ第11大学の研究 チームのコラボレーションの成果である。  この技術、いわゆるデュアルコムコ ヒーレント反ストークスラマン分光法 (CARS)は繰り返し周波数(約100Hz) はわずかに異なる2台のフェムト秒レ ーザを使って顕微鏡下の分子混合物を プローブする。CARS 法は、1 つの超 短パルスレーザをパルス成形器または 干渉計と組み合わせて使うことによっ て分子をプローブするが、この組み合 わせは混合物中の異なる分子を識別す るだけのスペクトルバンド幅または解 像度をもっていない。しかし、2台の フェムト秒レーザを使えば、フェムト 秒パルス幅の逆数と同程度に広いスペ クトルバンド幅をもつ全ラマンスペク トルがマイクロ秒のスケールで、画素 ごとに、しかもたった1台の光検出器 を使って記録することができる。

固定周波数コム

 この実験装置では、20fsパルス幅、 最高13nJのエネルギー、100MHzのパ ルス繰返し周波数をもつ2台のTi:サ ファイアフェムト秒周波数コムをビー ムスプリッタで結合させている。チャ ープミラー圧縮器を使って装置内の光 学部品によって誘起された2次分散を

分子を識別する

周波数コム利用のラマン分光法

分子イメージング

world

news

図1 ハイパースペクトルキューブの2025個の 各画素は固定空間位置で12μs内に測定された 試料のスペクトルに対応し、その分子のスペクト ル・シグネチャを提供する。中央に示されたスペク トルは画素(21、16)に対応し、そのキューブの 各スペクトル要素を固定波数の画像としてプロッ トすれば、その波数での一定分子の定量的な空間 分布が得られる。 (資料提供:マックス・プランク量子光学研究所) 10 µm Pixel (21,16) 15 15 30 ヘキサフルイリベンゼン 45 30 45 15 15 30 ニトロメタン 45 30 45 15 15 600 800 1000 1200 画素 波数〔cm−1 〕 30 バックグラウンド 45 30 45 15 15 画素 30 トルエン 45 30 45 画素 画素

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Laser Focus World Japan 2014.3

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補償し、スペクトルフィルタリングを 使って信号/バックグラウンド比を高 め、試料の前に置かれた低周波バンド パスフィルタと試料後に置かれた高周 波バンドパスフィルタを使って集光試 料が発生したCARS信号を分離する。 前方収集された反ストークス放射はシ リコンフォトダイオード(100MHzの周 波数域幅)に集められ、解析用に増幅 およびデジタル化される。  CARS の非線形 4 光波混合過程は、 ポンプレーザとストークスレーザのエ ネルギー差がラマン分子遷移と共鳴し たとき、本質的にコヒーレントである。 プローブビーム散乱は周波数シフトし た反ストークス信号を発生する。時間 領域解析の結果、第1レーザからの1つ のパルスが分子の振動(そのパルス幅 よりも長い)を励起し、その振動振幅 が増加または減少(パルスが到達した ときに依存)すると同時に、第2のパル スがより高い(反ストークス)またはよ り低い(ストークス)周波数にシフトす るので、この分子の振動が第2のレー ザパルスによってプローブされる。  青方偏移した反ストークス光の振幅 変調対時間を監視することで、励起さ れた振動準位の周波数にアクセスする ことができる。(異なる分子による)い くつかの振動準位を励起すると、合成 信号が得られ、青方偏移した光の強度 対時間をフーリエ変換することによっ てラマンスペクトルが現れる。  この周波数領域において、これらの 2つのレーザはラマン様の2光子励起に よって分子レベルを共鳴励起する。こ の励起過程はそれぞれ100MHzと100 MHz+100Hzの線間隔をもつ2つの差 周波数コムによって各コムの周波数差 の結果として起きるとみなせる。これ は分子振動と2つのコムの周波数差に 依存するビートノート周波数での励起 振幅を変調する。結果として生じる干 渉が生成された反ストークス光の強度 に反映される。  デュアコムCARS技術は1000倍短 い取得時間と、使用したフェムト秒レ ーザ光源の測定時間とスペクトルバン ド幅によってだけ制限されたスペクト ル分解能とスペクトルバンド幅をもつ。 上記のセットアップでのスペクトル分 解能は約120GHz(4 cm−1)である。  ヘキサフルオロベンゼン、ニトロベ ンゼン、ニトロメタン、トルエンの混合 物のデュアルコムCARS法を使った解 析は、様々な分子存在の明瞭なスペク トルを発生した。キャピラリープレー ト内の穴に混合物を充填すると、カラ ーコード化された画素毎のスペクトル 画像が存在する様々な分子を識別する 12μsのインターフェログラムによって 現れる(図1)。  「この技術は生体イメージング用と しても非常に興味深い。システム開発 をさらに進めれば、多種類の分子種を 絶えず生み出し、あるいは壊している、 細胞内の実時間動力学プロセスの監視 も可能になるだろう」と井手口拓郎氏 (マックス・プランク量子光学研究所博 士課程学生)は語っている。サイモン・ ホルツナー氏(Simon Holzner;マック ス・プランク量子光学研究所博士課程 学生)は、「エキサイティングなことは、 われわれの新たに開発した技術の多く の専門分野にわたるアプリケーション を想像できることだ。例えば、われわ れはマイクロフルイディクスシステム 内で化学反応を監視し、それらの時間 分解CARSシグネチャからそれらの速 度論について学ぶこともできる」と付 け加えた。 (Gail Overton) 参考文献

(1) T. Ideguchi et al., Nature, 502, 355‐358

(October 17, 2013)。

参照

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