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千葉市美浜区における液状化被害を受けた住民への健康障害とリスクコミュニケーションに関するヒアリング調査

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地域安全学会論文集 No.17, 2012.7

1

千葉市美浜区における液状化被害を受けた住民への

健康障害に関するヒアリング調査

Questionnaire Survey on Health Disturbance of Residents in Mihama Ward, Chiba City

who Suffered Housing Damage Due to Liquefaction

小檜山 雅之

1

,系野智奈美

2

,園部隆夫

3

Masayuki KOHIYAMA

1

, Chinami KEINO

2

, and Takao SONOBE

3 1 慶應義塾大学 理工学部

Department of System Design Engineering, Keio University

2 慶應義塾大学 理工学部(現,中日本エクシス(株) )

Department of System Design Engineering, Keio University (currently, Central Nippon Exis Co., Ltd.)

3 SPC設計

SPC Sekkei

The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake triggered liquefaction of soil in wide areas. In particular, a number of damaged houses were found in the land reclamation areas of the Kanto retion. Some residents living in houses tilted by liqufaction complained of health disorders. We report the result of questionnaire survey of residents in Mihama Ward, Chiba City, about the characteristics of their house, earthquake damage, health disturbances, and so on. Based on the survey data, we construct probability models of health disturbance with respect to house tilt angle investigated by the local government for the certificate of damage. The probability of health disturbance exceeded 50% when the tilt angle was larger than approximately 0.013 rad.

Keywords: liquefaction, the Great East Japan Earthquake Disaster, health disturbance, detached house

1.はじめに 1964年6月16日に発生した新潟地震以降,これまでに多 くの研究者が液状化被害について研究している.その中 で,液状化により傾斜した建物の居住者や利用者の健康 障害や傾斜に対する感覚を研究しているものがいくつか ある.北原・宇野1)は1964年新潟地震で傾斜した建物に 居住や勤務する人を対象に,同年11月に面接調査を行い, めまいが発生する原因を考察している.宇野・遠藤2)は, 床を傾けた装置を使った被験者実験と,1964年新潟地震 で傾いた住宅に住む女性42名に対し1981年10月に面接調 査を行っている.また,傾斜した室内に被験者を案内し, 窓枠が傾斜していることを認知するか分析を行い3),体 勢や傾斜した方向に対する感覚4)に関しても研究を行っ ている.藤井ら5)は,1995年兵庫県南部地震で液状化被 害が発生した芦屋市の住宅約100棟に対して調査を行い, その結果等から,傾斜角と機能上の障害についてまとめ ている.また,安田・橋本6), 7)は2000年鳥取県西部地震で 液状化被害が発生した米子市安倍彦名団地で調査を行い, その結果より,10/1000 rad程度が住宅としての許容でき る限界の傾斜角であると考察している. 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では, 広域で地盤の液状化が発生した8).特に関東地域では, 埋立地で戸建住宅の被害が多く生じ,住宅の傾斜に伴い, 健康障害を訴える住民も多数あった.このような被害の 実態を踏まえ,災害による住家被害認定(自治体による 罹災証明の発行のための調査の基準)が一部見直しされ た9).具体的には,基礎と柱が一体的に傾いたとき(不 同沈下)の判定基準は,従来,全壊に対してしかなかっ た(四隅の傾斜の平均1/20 rad以上)が,新たに大規模半 壊と半壊に対して追加された(それぞれ,1/60 rad 以上 1/20 rad未満,ならびに1/100 rad 以上1/60 rad未満).加 えて,基礎等が地盤面下へ潜り込んだときの判定も新た に追加された.ここで,不同沈下の半壊の判定閾値1/100 radは,医療関係者等にヒアリングを行い居住者が苦痛を 感じるとされている値として設定された10) 本論では,千葉市美浜区で液状化被害を受けた戸建住 宅の住民に対し,建物被害,健康障害等についてヒアリ ング調査を行った結果を報告する.そして,自治体の罹 災証明発行のための調査による住宅の傾斜データをもと に,液状化による住宅の傾斜に伴う健康障害の発生確率 のモデルを評価した結果とその分析結果について述べる. 2.調査の概要 千葉市美浜区では,臨海部の埋立地で液状化が発生し, 多くの建物が被災した(写真1).本調査は,2011年8月

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2 に千葉市美浜区役所で行われた,液状化被害を受けた戸 建住宅の改修に関する相談会(申込み予約制,開催日:8 月13, 14, 20, 21, 27, 28日)に来訪した相談者に対し,相談 会会場にて面接により行った. 8月20日:26世帯,21日:12世帯,27日:17世帯,28 日:13世帯に対して調査を行い,計68世帯の調査結果を 得た.うち1世帯は液状化被害を受けていなかったため, 分析対象は67世帯,男性42名,女性38名の計80名とした. 調査対象者の年齢と性別の分布については,後述する健 康障害の分析結果の節で詳しく述べるが,60代女性の比 率が高かった. ヒアリングは,以下の5つの項目に関して行った. (1) 建物の特徴 (2) 地震被害 (3) 健康障害 (4) 防災意識とリスクコミュニケーション (5) 制度や政策に関する要望 本論では項目(1)~(3)の分析結果について述べる. 回答者の多くは,設計図書や被害状況の写真等,相談 に必要な資料を持参しており,建物の特徴や地震被害の 聞き取りでは,必要に応じこれらの資料を確認した. 地震被害の聞き取りにおいて,液状化による住宅の傾 斜角を回答してもらったところ,67棟中,43棟について 自治体の罹災証明発行のための調査結果を得た.このほ か,保険会社や住宅を建設した業者による調査結果が回 答された住宅もあったが,調査方法が同一ではないため, 本論では自治体の罹災証明発行のための調査による傾斜 角(1)(以下,傾斜角)のデータを用いて分析を行う. 写真1 液状化により傾斜した検見川浜駅前交番 3.調査結果と考察 (1) 建物の特徴について 建物の構造種別の分布を図 1 に示す.木造在来軸組構 法が 61%,次いで軽量鉄骨造が 19%を占めている. 続いて,建築時期の分布を図 2 に示す. 1981~1990 年 の年代区分が 45%(30 棟)と最も多い.建物の老朽化に よる建て替えや,中古住宅で購入後に建て替えをし,築 年が比較的浅い建物もあった.また,1981 年より前に建 てられた旧耐震基準の建物が 22%(15 棟)あった.増改 築を行ったことがある住宅は 36%(24 棟)であった. 階数については,66棟が2階建てで,1棟が3階建てであ った.建物用途については,66棟が専用住宅,1棟が事務 所兼用住宅であった.また,所有形態は全棟とも個人住 宅であった. 基礎種別の分布を図3に示す.布基礎の割合が70%を占 めていて非常に大きい.また,建設形態は建売が36棟 (54%),注文が31棟(46%)で,べた基礎や杭基礎を 採用する例は注文住宅のほうが多かった. 図4に地盤調査と地盤改良の有無を示す.地盤改良が行 われた住宅は3棟のみであった.図5に建築年と地盤調査 の有無の関係を示す.1991年以降に建てられた建物は地 盤調査を行っている割合が大きい.カイ二乗検定を行っ たところ,p値は0.00637と有意であった.なお,千葉市 美浜区の埋立地の分譲は,千葉県都市公社では1972年度 から,千葉県住宅供給公社では1974年度から行われてお り,建築年1971年の1棟はそれよりも古く整合しない.こ れは,「建築時期は40年前」との回答から算出した建築 年をそのまま用いているためである. 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の耐 震等級(等級1,等級2,等級3など)については,1棟 が設計住宅性能評価書の等級3,3棟が住宅性能評価を受 けているが等級が不明との回答であった. 建築基準法上の地盤の種類(第一種,第二種,第三種) に関しては,全棟で不明との回答であった. 図1 建物の構造種別の分布(N = 67棟) 図2 建築時期の分布(N = 67棟) 図3 基礎種別の分布(N = 67棟) 図4 地盤調査と地盤改良の有無(N = 67棟) 図5 建築年と地盤調査の有無の関係(N = 67棟) 41 8 3 13 2 0% 20% 40% 60% 80% 100% 木造在来軸組構法 木造2×4/木質パネル工法 RC造 軽量鉄骨造 その他 15 30 13 9 0% 10% 20% 30% 40% 50% 1971–1980 1981–1990 1991–2000 2001–2010 建築年 8 4 12 18 29 47 2 1 3 3 1 4 0 1 1 0% 20% 40% 60% 80% 100% 注文住宅 建売住宅 全体 べた基礎 布基礎 杭基礎 不明 その他 23 3 12 37 32 27 0% 20% 40% 60% 80% 100% 地盤調査 地盤改良 有 無 不明 0 1 2 3 4 5 6 7 8 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 棟数 建築年 不明 なし あり

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3 (2) 地震被害について 調査対象者の住宅の地震被害の状況について述べる. まず,図6に罹災証明の被害区分を示す.今回の調査対象 世帯のうち,56%が半壊と判定された.また,全壊と判 定されたものはなかった.次に,図7に地震保険の被害区 分を示す.加入世帯の割合は55%であった.全損と判定 された住宅が1棟あった. 被害状況について,まず敷地内の被害状況を図8に示す. 64%の住宅で噴砂が確認された.続いて,外壁と基礎の 亀裂の有無を図9に示す.基礎と外壁の亀裂の割合を比べ ると基礎のほうが多い.基礎は液状化による地盤の支持 力分布の変化で大きな応力を生じやすい.一方,地盤の 液状化が起きると地震動が長周期化し,地震動の卓越周 期と建物の固有周期がずれることで建物の上部構造の層 間変形が小さくなりうる.そのため,上記のような分布 となったことが示唆される. 図10に建築年と建物の傾斜角との関係を示す.べた基 礎は比較的新しい住宅で多く採用されている.布基礎で は大規模半壊の閾値である1/60 (≒ 0.017) radを超える大 きな傾斜が存在するが,べた基礎ではほとんどみられな い. 図11に建て付けの不良を示す.ドアの建て付け不良は 85%あり,自動的に開閉してしまう状況となっているこ とが多かった.図12にボール等の転がり,機密性の損失, 床下浸水の有無を示す.気密性の損失については,夏季 に調査を行ったため,窓を開けたままにしている状態が 多く,気付かない場合もあったと考えられる.冬季に調 査を行うと結果が変わる可能性がある.また,5棟に全体 的な建物の沈下が確認された. 図6 罹災証明の被害区分(N = 67棟) 図7 地震保険の被害区分(N = 67棟) 図8 敷地内の被害状況(N = 67棟) 図9 外壁と基礎亀裂の有無(N = 67棟) 図10 建築年と建物の傾斜角との関係(N = 自治体調査 による傾斜角が明らかな43棟) 図11 建て付けの不良の被害状況(N = 67棟) 図12 その他の被害の状況(N = 67棟) (3) 健康障害について 調査対象者の健康障害の状況について述べる.まず, 図 13 に調査対象者の年齢と性別の分布を示す.60 歳以 上の割合が多く,特に 60 代女性の比率が高い. 図 14 に調査実施時における傾斜に対する感覚を示す. 女性や 60 歳以上の年齢層で多くの住民が傾きを強く感じ ていた.在宅率が高いことや家事等の作業を行う時間が 長いことが傾きの知覚と関係していると考えられる. 図 15 は傾斜角と傾斜に慣れるまでに要した日数の両方 の回答があった 15 人について,それらの関係を示したも のである.両者の間に相関関係はほとんどみられない (決定係数 R2 = 0.0047).傾斜への慣れは個人差が大き いことも考えられる. 図 16 に地震後からヒアリング調査時までに生じた健康 障害の自覚症状を示す.ここで,自覚症状の項目は文献 1), 2)を参考にし,「牽引感(引っ張られる),ふらふら 感,浮動感(ふわふわ),回転感(ぐるぐる),疲労感, 頭痛,腰痛,耳鳴,めまい,吐き気,食欲不振,不眠・ 睡眠障害,その他」の項目を提示し,該当するものを回 答してもらった.牽引感についてどのような症状か質問 があった際は「何かに引っ張られる感じ」との説明を補 った.図 16 より,不眠・睡眠障害といった症状が 2 割程 度の回答者に現れていることがわかる.また,図 16 の項 目の他に,肩こりや足の痛みを訴える住民もあった. 1 0 1 4 3 10 28 7 37 10 2 15 4 0 4 0% 20% 40% 60% 80% 100% 布基礎 べた基礎 全体 被害なし 一部損壊 半壊 大規模半壊 未調査 3 0 4 15 4 22 8 1 10 1 0 1 20 7 30 0% 20% 40% 60% 80% 100% 布基礎 べた基礎 全体 一部損 半損 全損 未調査 非加入 5 26 5 36 43 0% 20% 40% 60% 80% 100% 異状なし 塀の傾斜 塀の倒壊 地面の亀裂 噴砂 40 28 27 39 0% 20% 40% 60% 80% 100% 外壁亀裂 基礎亀裂 なし あり 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 1970 1980 1990 2000 2010 建物 傾斜 角 (rad) 建築年(西暦) 布基礎 べた基礎 杭基礎 不明 その他 地盤改良あり 大規模半壊の閾値 地盤改良あり 4 57 28 15 8 38 0% 20% 40% 60% 80% 100% なし ドア 戸 ふすま 障子 窓のサッシ 4 57 40 59 61 5 24 8 2 5 3 0 0% 20% 40% 60% 80% 100% ボール等の転がり 均等な沈下 気密性の損失 床下浸水 なし あり 不明

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4 図13 年齢と性別の分布(N = 80人) 図14 調査実施時における傾斜に対する感覚(N = 80人) 図15 傾斜に対し慣れるの要した日数(N = 傾斜角と慣 れるまでに要した日数両方の回答があった15人) 図16 地震後から調査時までに生じた健康障害の自覚症 状(傾斜角の回答なしを含む:80人,回答あり: 54人) なお,症状の原因として,建物の傾斜だけではなく余 震の影響も考えられるので注意が必要である.また,も ともとあった症状が悪化した住民もあった. 傾斜を強く意識した住民(図 14 で「気にならない」以 外を回答した住民)は 80 名中 55 名(男性 27 名,女性 28名)であった.この 55 名について,健康障害の自覚 症状の変遷を図 17 に示す.症状の変遷は多様であり,個 人差もあると考えられる. 外出に伴うめまい等の自覚症状の有無を図 18 に示す. 女性や 60 歳以上の年齢層で多くの回答者に自覚症状が見 られた.周りの建物や電柱等が傾いており,視覚から得 る情報で症状が悪化する住民や,住宅の傾斜に慣れ,屋 外が逆に傾いているように感じる住民もあった. 傾きをもっとも強く感じる姿勢を図19に示す.立ってい るときに傾きをもっとも強く感じると回答した住民が多 かった.また,立ち上がるときや,傾斜に向かって歩く, 図17 健康障害の自覚症状の変遷 (N = 傾斜を強く意識した55人) 図18 外出に伴うめまい等の自覚症状 (N = 傾斜を強く意識した55人) 図19 傾きをもっとも強く感じる姿勢 (N = 傾斜を強く意識した55人) 階段を上るというような動作と関連して自覚症状を感じ る住民があった. めまい等の自覚症状は加齢に伴っても現れる.そこで, まず,傾斜角が健康障害の原因となりうるか,同一の年 齢層の回答者データを用いて分析を行った.傾斜角が明 らかな回答者のデータを年齢層別に集計したところ,60 代が 22 人,次いで 50 代:13 人,70 代:11 人,他の年齢 層は 5 人以下であった.最も人数が多い 60 代の回答者の データについて,傾斜角が 0.128 rad 以上か未満か,図 16 に示す牽引感以外の項目の健康障害の自覚症状があるか ないかの 4 通りで分類集計したところ,表 1 の結果とな った.ここで,傾斜角 0.128 rad は後述する対数プロビッ トモデルの中央値である.また,図 16 に示す項目で牽引 感を除外したのは,単純に床の傾斜を知覚して牽引感あ りと回答している場合がありうるためである. 表 2 について,カイ二乗検定を行ったところ,p 値 0.0348の有意差が確認された.したがって,大きな傾斜 により健康障害が現れることが統計的に示されたといえ る. 本研究では傾斜角に関する健康障害の発生モデルの構 築を行う.もし回答者の年齢と傾斜角の間に強い相関が あると,健康障害の発生確率の変化が傾斜角によるもの なのか年齢によるものなのか判別するのが難しくなる. そこで,自治体調査による傾斜角の回答があった 43 世帯 54人のデータについて,傾斜角と回答者の年齢層の相関 2 1 1 6 4 2 17 8 9 34 13 21 18 14 4 3 2 1 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 男 女 30代 40代 50代 60代 70代 80代~ 25 15 10 8 17 34 18 16 12 22 10 6 4 4 6 11 3 8 1 10 0% 20% 40% 60% 80% 100% 男 女 ~59 60~ 性別 年齢 気にならない 傾きを感じるが慣れた 傾きを感じる かなりひどい傾きを感じる 性別 年齢 全体 R² = 0.0047 0 30 60 90 120 150 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 慣 れるま でに 要 し た 日 数 傾斜角 (rad) 24 23 11 2 11 7 4 3 12 7 3 17 14 19 8 1 8 3 3 3 9 6 3 10 0 10 20 30 傾斜角の回答なしを含む 傾斜角の回答ありのみ 20 11 9 8 12 14 6 8 5 9 18 9 9 4 14 3 1 2 0 3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 男 女 ~59 60~ 性別 年齢 変わらない 改善した 慣れた 悪化した 性別 年齢 全体 37 22 15 14 23 25 6 6 18 5 13 3 15 9 4 5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 男 女 ~59 60~ 傾きを感じるが慣れた 傾きを感じる かなりひどい傾きを感じる 性別 年齢 傾斜に対す る なし あり 性別 年齢 傾きに 対する 感覚 35 16 19 10 25 4 1 3 2 4 8 3 5 4 2 8 7 1 1 7 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 男 女 ~59 60~ 性別 年齢 立っているとき 座っているとき 寝ているとき その他 性別 年齢 全体

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5 関係を分析した結果を図 20 に示す.ここで,横軸は傾斜 角の自然対数としているが,これは健康障害の発生モデ ルとして対数プロビットモデルを採用するためである. 図 20 より,傾斜角と回答者の年齢層の間に弱い正の相関 が見られるものの,決定係数 R2は 0.1019 と大きくない ことが確認できる.したがって,高い年齢層のデータは 傾斜角の広い範囲で分散しており,健康障害の発生モデ ルにおける傾斜角中央値の算出に大きな影響を与えない ものと考えられる. 文献 1)では,1°以内の傾斜で訴えられる浮動感,回 転感といった違和感は,広い意味でめまいとよんで差し 支えないと思われるとの記述があり,また,牽引感は別 個に訴えられる傾向があるとの記述も存在する.そこで, 回答者のふらふら感,浮動感,回転感,めまいの自覚症 状を「広義のめまい」として集計し,分析を行う. 傾斜角の回答があった 54 人中,広義のめまいの自覚症 状があったのは 22 人,図 16 に示す牽引感以外の項目の 健康障害の自覚症状があったのは 27 人であった.傾斜角 と各自覚症状の発生の有無の関係をそれぞれ図 21, 22 に 示す.ここで,症状ありを 100%, なしを 0%の線上に示 している.本調査結果から,傾斜角が 1/100 rad を超える と次第にめまいなどが多く発生し,文献 2)では調査が行 われなかった傾斜角 1/50 rad 以下でも健康障害が見られ ることが確認できる. 次に,傾斜角を説明変数とした各自覚症状の発生確率 の対数プロビットモデルを最尤法により求めた.ここで は,健康障害が発生する閾値が,独立に同一の確率分布 に従う諸因子の掛け合わせでランダムに変動するものと し,中心極限定理により発生閾値が対数正規分布に従う ものと仮定している11) 求めた健康障害の発生確率モデルについて,広義のめ まいと牽引感を除く健康障害の自覚症状の評価結果をそ れぞれ図21, 22に重ねて示す.表2に曲線のパラメータを 示す.得られた健康障害の発生確率モデルの曲線は,あ る閾値で急激に立ち上がらず,緩やかに上昇している. これは,傾斜角が大きいにもかかわらず健康障害がない データがあることに起因している. 本研究の調査データでは,布基礎の割合が70%と高い. したがって,基礎が折損し,建物の一部の床で傾斜角が 大きくなっているケースがあると推測される.もし,居 住者が普段使用しない部屋で局部的に傾斜角が大きくな っているとすれば,健康に大きな影響を与えないことも 考えられる.したがって,本研究で評価した発生確率モ デルはこのような変動要因を含んだモデルであることに 注意が必要である. 表1 傾斜角大小別に集計した健康障害(牽引感を除く) の有無(N = 60代で傾斜角の回答があった22人) 健康障害 合計 あり なし 傾斜角 0.128 rad以上 9 3 12 0.128 rad未満 3 7 10 合計 12 10 22 図20 傾きをもっとも強く感じる姿勢 (N = 傾斜を強く意識した住民55人) 図 21 広義のめまいが発生した傾斜角とその発生確率モデル(N = 傾斜角の回答があった 54 人) y = 6.5317x + 86.575 R² = 0.1019 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 -6 -5.5 -5 -4.5 -4 -3.5 -3 年齢層 y 傾斜角(rad)の自然対数 x 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03 0.035 0.04 0.045 0.05 発生 確率 傾斜角 (rad) めまいの発生確率 めまいの有無(あり: 100%,なし:0%) 1/100 1/60 1/20 半壊 大規模半壊 全壊

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6 図 22 健康障害(牽引感を除く)が発生した傾斜角とその発生確率モデル(N = 傾斜角の回答があった 54 人) 表2 最尤法により求めた健康障害発生確率の 対数プロビットモデルのパラメータ 症状 平均値 対数 中央値 対数 標準偏差 広義のめまい −4.14 0.0159 rad (=1/62.8) 0.997 健康障害(牽引 感を除く) −4.36 0.0128 rad (=1/77.9) 0.842 4. 結論と今後の課題 2011 年東北地方太平洋沖地震による千葉市美浜区の液 状化被災者に対しヒアリング調査を行い,自治体の罹災 証明発行のための調査による傾斜角を説明変数とする健 康障害の発生確率モデルを評価した.傾斜角が増すと次 第に健康障害を訴える人が増えることが確認され,得ら れた対数プロビットモデルから,中央値約 0.013 rad を超 えると健康障害の発生確率が 50%を超えることが明らか となった.健康障害の発生の傾向には個人差があるが, 住宅の傾斜は健康的な生活の妨げになりうるので注意す る必要がある. 今後の課題として,健康障害の発生確率のモデルの信 頼性を高めるため,データを拡充し評価することが挙げ られる.文献 1)では数例の乳幼児の事例,文献 2)では 18 ~27 歳,本研究では 30 歳以上の住民への調査であった. そのため,特に 17 歳以下の若年層に対し,床の傾斜が健 康障害に与える影響について詳しく調査を行うことが望 まれる. 謝辞 調査にご協力頂いた千葉市美浜区民の方々にお礼申し 上げます.また,千葉市都市局建築部建築保全課,社団 法人日本建築構造技術者協会関東甲信越支部サテライト JSCA 千葉ならびに住宅改修相談会の相談員の方々の協 力を得ました.朝日新聞京葉支局永井啓子記者からは調 査データに関し貴重なご指摘を頂きました.記して謝意 を表します. 補注 (1) 傾斜角の計測方法について 東日本大震災では,基礎と柱が一体的に傾く不同沈下の場合 の傾斜による判定が見直しされた 9), 10).傾斜による判定は以下 のように行われる12) まず,住家に不同沈下があるかどうかを外観目視調査により 把握するとともに,外壁または柱の傾斜を下げ振り等により測 定し,判定を行う.傾斜は原則として住家の 1 階部分の外壁の 四隅または四隅の柱を計測して単純平均したものとする. 第1次調査では,平均により求めた傾斜から,住家の主要な 構成要素の経済的被害を住家全体に占める割合で表す損害割合 を算定し,住家の被害の程度を判定する. 第1次調査を実施した住家の被災者から申請があった場合, 第2次調査を実施する.第2次調査では,各部位の損傷率を把 握し,それに部位別の構成比を乗じたものの合計で住家の損害 割合を算定することも行う. 第2次調査実施後,被災者から再調査の申請があった場合に は,再調査に至る事情を聴取し,再調査が必要と考えられる点 があれば,その点について再調査を行う. 本研究で用いた自治体の罹災証明発行のための調査による傾 斜角データは,上記の調査過程を経ることから,被災者により 調査時期が異なりうる.また,余震の影響や,液状化により生 じた地盤の空隙が時間がたってから崩壊することなどにより, 傾斜角が変動しうるため, 注意が必要である. 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03 0.035 0.04 0.045 0.05 発生 確率 傾斜角 (rad) 健康障害の発生確率 健康障害の有無(あり: 100%,なし:0%) 1/100 1/60 1/20 半壊 大規模半壊 全壊

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7 参考文献 1) 北原正章, 宇野良二:傾斜室における眩暈と平衡-新潟地震 による傾斜ビルの調査研究, 耳鼻咽喉科臨床, Vol. 58, No. 3, pp. 145-151, 1965.3 2) 宇野英隆, 遠藤佳宏:人の平衡感覚に関する研究-傾いた床 での生活の限界,日本建築学会計画系論文集, No. 490, pp. 119-125, 1996.12 3) 遠藤佳宏, 宇野英隆:ヒトの平衡感覚に関する研究-床が傾 斜している場合,日本建築学会大会学術講演梗概集, 計画系, pp. 1237-1238, 1981.9 4) 遠藤佳宏, 宇野英隆:ヒトの平衡感覚に関する研究-窓枠が 傾斜している場合,日本建築学会大会学術講演梗概集, 計画 系, pp. 1465-1466, 1982.10 5) 藤井衛, 伊集院博, 田村昌仁, 伊奈潔:兵庫県南部地震の液状 化地帯における戸建住宅の基礎の被害と修復-戸建住宅の基 礎の修復に対する考え方, 土と基礎, Vol. 46, No. 7, pp. 9-12, 1998.7 6) 安田進, 橋本隆雄:鳥取県西部地震における住宅の液状化に よる沈下について,土木学会第 57 回年次学術講演会, pp. 1029-1030, 2002.9 7) 安田進:鳥取県西部地震による団地の被害, 日本建築学会総 合論文誌, No. 2, pp. 45-46, 2004.2 8) 国土交通省関東地方整備局・公益社団法人地盤工学会:東北 太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明 報告書, 2011.8 9) 内閣府:防災情報のページ 災害に係る住家の被害認定, http://bousai.go.jp/hou/unyou.html, 2011.5 10) 内閣府(防災担当):地盤に係る住家被害認定の運用見直し について,http://bousai.go.jp/hou/pdf/jiban_unyou.pdf, 2011.5 11) 日本建築学会:Excel で学ぶ地震リスク評価,技報堂出版, 2011.8 12) 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(災害復旧・復興担 当):地盤に係る住家被害認定の調査・判定方法について, 別 紙 地 盤 に 係 る 住 家 被 害 認 定 の 調 査 ・ 判 定 方 法 http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/20110502-jimu.pdf, 2011.5 (原稿受付 2012.1.6) (登載決定 2012.7.9)

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