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カンキツの白かび病の発生防止に及ぼすパラヒドロキシ安息香酸ブチルの効果-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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(1)

カンキツの白かび病の発生防止に及ぼす

パラヒドロキシ安息香酸プチルの効果

川田和秀・北川博敏・松井年行

EFFECTOFBUTYLP−HYDROXYBENZOATE

ON THE CONTROL OF SOUR ROT OF CITRUS FRUITS

Kazuhide KAWADA,HirotoshiKITAGAWAandToshiyukiMATSUI

Effectofbutylp−hydroxybenzoate(butylpPHB)on thegrowth ofsourrot(Geotricum

candidum)isolatedfiIOmimportedlemonswasstudied

1)Tnagarculturetests,buty卜PHBwasmoreeffbctivebutpropyl−PHBwaslesseffectivethan sodiumo−phenylphenate(SOPP)andethyl−PHBwasnoteffectivetocontrolthegrowthofsour IOt 2)Butyl−PHBwasmuchmoreefftctivethanSOPPorsorbicacidtocontr・01thesporegerminationof SOurⅠOtひ 3)Two%butyl−PHBdissoIvedin40%alcohoIwasaseffectiveas2%SOPPtocontIOlthesouI rて)tinoculatedartificiallytolemons,butipjuredthepeel Keywords:Geo(ricumcandidum,butylp ̄hydroxybenzoate,Ci(rLESlemon 緒 カンキツの白かび病はカリフォルニアなどの乾燥地の病害で日本やフロリダのような多湿地での 発生は少なく,オレンジやグレープフノレーツなどにも発病するが特にレモンに多く発生する。病原 菌(G“招来〟〝l(β〃d励椚Lk…eXPers..)は土壌にいて,土と共に果実に付着して選果場に持ち込まれ る。それゆえ,地面近くに垂れ下がった枝の果実はこの菌の汚染度が大きい。病徴の初期は青かび ・緑かびによく似ている。菌は最初果実の中で発育し,ついでクリ−ム色の薄い水没状の層が果皮 に現れ,その部分がたやすく破れる。そして,果実全体がぐしゃぐしゃになり,その液汁によりど んどん伝染しついには段ボ1−ル箱が潰れてしまう。果実が水のように腐ることから,市場関係者は この病害を“水ぐされ”と呼んでいる。英語のSouf・ⅠOtは腐敗した果実がすっぱい臭いのするところ からきている(1)。 白かび病を防ぐ保存剤としてはオルトフェニリレフユノール(OPP)及びそのナトリュウム塩 SOPPが食品衛生法で認められ,輸入カンキツに使われている。しかしその効果は十分なものでは ないし,消費者の無農薬・安全性志向の高まりにより薬剤を使いにくい状況になって−いる。そこで 著者らは,わが国でも多くの食品に使われており安全性の高い保存剤であるソルビン酸がカンキツ の白かび病菌に対tても有効なことを報告した(2)。だが,ソルビン酸は食品衛生法でカンキツに使 用が許可されていないので実用化できない。 本研究は,安全性が高くかつ食品衛生法で果実にも使用が認められているパラヒドロキシン安息 香酸(PHB)ブナルの白かび病菌に対する効果を,培地試験と接種試験でSOPPと比較検討したも のである。

(2)

香川大学農学部学術報告 第47巻第1骨(1995) 42 材料及び方法 白かび病菌は,市販の輸入レモン果実から単離しジャガイモ・デキストロー・ス・寒天(PDA)培 地で継代したものを用いた。 培地試験は,1区5枚のシヤー・レに各種,各濃度の試薬を加えたPDA培地に菌叢先端部の菌糸片 を植えつけて25℃に保ち,4日後に菌叢の直径を測定し菌糸生長抑制率を算出して各試薬の効果を 比較した。 胞子発芽抑制試験は,PD液体培地で静地培養して形成させた胞子の懸濁液2mlに同量の試薬を 加えて−25℃に保ち,16時間後に調査し発芽抑制率を算出した。

接種試験は,市販の輸入レモンにくぎで深さ3mm,直径1.5mmの傷を1果当り9ケ所つけて

行った。まず各試薬に2分間浸漬後軽く水洗し,約1時間自然乾燥させた。次に胞子濃度が4∼7 ×102/mm3の懸濁液を1,2滴傷口に落し,傷口に滅菌水を含ませた脱脂綿を置いた。そして,25 ℃高湿条件下に置き24,48時間後の発病率を調べた。なお各区10果で,3反復した。 結 果

培地試験

PHBのプチル,プロピル,エチルの3エステルとSOPPの各200ppmを含むPDA培地で白かび病

菌を培養したところ,第1表の結果を得た。すなわち,pHBプチルは菌糸の生長を完全に阻止し, SOPPよりもそ・の効果が大きかった,pHBプロピルは効果が劣り,PHBエチルは全く効果がなかっ た。 Tablel..Efftctofbutyl,pIOpylandethylp−hydrDXyt光nZOateandsodium O−PhenylphenateonthegrowthofGeo(Ticumcandiduminagarclllture Tre餌mentZ) Rateoibition 100 38 0 79 Butyl−PHB P和pyl−PHB E血yl−PHB SOPP Z)200ppminPDA”

次に100,200,300ppmの濃度でSOPPとPHBナチルの効果を比較したところ,第1図の結果を得

た。すなわち,SOPPは300ppmにならないと菌糸の生長を完全に阻止できなかったが,PHBプチ

ルは200ppmで完全に阻止し,100ppmでも70%の抑制率を示した。

胞子発芽抑制試験は,PHBプチル,SOPPおよびソルビン酸について200と500ppmで行った。そ

の結果は第2表に示したように,PHBプチルでは200ppmでも95%と高い抑制率であったのに対七

て,SOPPは200ppmでは7%に過ぎず,500ppmでも61%に止まった。ソルビン酸も相当効果を示

しpHBプチルよりは低かったがSOPPよりは高かった。

接種試験

SOPPは通常2%水溶液で処理されている。ところが,PHBプチルは水に難溶性なので40%エチ ルアルコールに溶かして用いた。また,カンキツによく使われている市販の速乾性ワックスは30 ∼50%のアルコ−ルを含んでいるので,このワックスに2%になるようPHBプチルを溶解して用 いた。

(3)

0 0 0 4 2 6 ︵択︶uOコ握竜こ○ヤ扇出 0 100 200 300 Concn(ppm) Fig=1Effbctofbutylp−hydroxybenzoateandsodiumopphenylphenateonthegrowth OfGeot,icLLlt7(OndidLLminagaTぐulture

Table 2n E脆ct of butylp−hydroxybenzoate,SOrbic acid and sodium o− PhenylphenateonthesporegeminationofGeoけicumcandidum Rateofinhibition (%) TI℃如ment Concn.(ppm) 200 500 95 96 7 61 68 79 Butyl−PHB SOPP Sorbicasid その結果は第3表に示したように,PHBプチルのアルコール溶液はSOPP水溶液と同程度の効果 があったが,速乾性ワックスに溶解すると効果が少なくなった。なお,40%アルコールや速乾性 ワックスだけでも,わずかながらしかし有意に発病率を下げた。また,アルコ、−ル溶液の区では PHBプチルの薬害と思われる果皮の褐変が発生したが,速乾性ワックスに溶解した区では全く発生 しなかった。 考 察 PHBはかつてパラオキシ安息香酸と呼ばれた化合物で,PHBのイソプチル,イソプロピル,エ ◆●● チル,プチル,プロピルの5種のエステルは,醤油,果実ソ・−ス,酔および清涼飲料水など多くの 加工食品に使われている安全性の高い保存剤である(3)。これらのPHBエステルは,果実にも使用 が認められている。使用対象は「果実または果菜(表皮の部分に限る。)」,使用限度および使用 制限は「PHBとして12ppm以下」となっている。この使用制限は醤油の250ppmに比べると厳しい が,わが国の食品衛生法では全ての果実に使えるただ一つの保存剤である。ただし,その効果は大 きくなく,これらを果実自体に使っている国はない。わが国でも,これらは果実の保存剤というよ

(4)

香川大学農学部学術報告 第47巻第1骨(1995) Table3lE恥ctofbutylp−hydroxyt光nZOateandsodiumo−phenylphenateond−e COntrOlofGeotricumcandiduminoculatedtolemons 44 Rateofinhibition(%) T柁飢ment Hr afterinoc111ation 24 48 39 81 27 72 28 69 0

15Z)

4 31 0 13 WateI 40%e血ylalcohoI Wax(dcoholtype) 2%butyl−PHBin40%etOH 2%butyl−PHBinwax 2%SOPPinwateI

Z)DiscoloIationwasobservedonthepeelofthemostfluit

りは,果実の皮膜剤の腐敗を防ぐために使われているに過ぎない。

まず,培地試験でmプチル,プロピル,エチルの白かび病菌に対する生長抑制効果を調べたとこ

ろ,エステルの種類によって効果に大きな差があり,PHBプチルはSOPP以上の効果があったのに射

し,PHBプロピルはかなり劣り,PHB羊チルは仝ぐ効果がなかった(第1表)。今回は試薬が手に

入らなかったため比較できなかったが,pHBイソプチルとイソプロピルの効果に興味が持たれる。ま

た加工食品で行われているように,数種のPHBエステルの共融混合物についても調べる必要がある。

濃度試験においても,PHBプチルがSOPPよりも白かび病菌に対七て有効なことが確認できた

(第1図)。さらに,PHBプチルの有効性は胞子発芽抑制試験においで一層明らかとなった(第2

表)。この高い胞子発芽抑制能は,PHBプチルが白かび病菌に汚染された選果ラインや貯蔵庫の消

毒にSOPPよりも適している可能性を示している。

接種試験では,PHBプチルが水に雉溶性なことから40%アルコール溶液としたところ,SOPPと

同等の効果があったものの果皮に薬害が発生した(第3表)。今後この薬害発生条件を明らかにす

る必要がある。PHBプチルを速乾性ワックスに溶解すると,薬害は発生しなかったものの白かび病

に対する効果が低下した。1−・般に保存剤をワックスにまぜて処理すると,ワックスに保存剤が包み

込まれるのか効果が落ちる(1)。今後ワックスの組成の影響等を検討したい。また,温湯処理との併

用(2)や,他の化合物や植物抽出物との混用効果(4)についても調べてみるべきである。

白かび病は,わが国でも発病事例が報告されている(5)がまだ大きな問題にはなっていない。しか

し,著者らが愛媛および高知県産の日向夏について調査したところ,白かび病の発生がみとめられ

た。今後は国産カンキツの発病程度や,その発生防止についても検討したい。

摘 要 輸入レモン果実から単赦した白かび病の生長に及ぼすPHBプチルの抑制効果について 調べた。 1)培地試験において,PHBプチルはSOPP以上に抑制効果があったが,PHBプロピル は劣り,PHBエチルは効果がなかった。 2)pHBプチルはSOPP,ソルビン酸よりも胞子発芽抑制効果が大きかった。 3)接種試験において,2%PHBプチルの40%アルコ・−ル溶液は2%SOPPと同等の効 果があったが,果皮に薬害が発生した。

(5)

引 用 文 献

(1979).. (4)北川博敏,谷 利一・::カンキツの緑かび青かび 病の発病防止に及ぼすソルビン酸カリとチアベ ンダゾ・−ル混用の効果,園芸学会雑誌,52, 464−468(1984) (5)倉本 孟,山田唆一・:ウンシュウミカンにおけ る白かび病の発生,果樹試験場報告,B2, 87−95(1975ト、 (1994年11月30日受理) (1)北川博敏::柑橘の貯蔵・輸送における保存剤と その効果〔1〕,〔2〕,農業及び園芸, 54,1121−1127,1254−1260(1979ト (2)北川博敏,北畑良ニ,川田和秀:カンキツの白 かび病の発生防止に及ぼすソルビン酸及びソル ビン酸カリの効果,香川大農学報,36,13− 19(1984). (3)石館守三 監修:食品添加物公定昏解説昏,第 四版,B−736、rB−748,鹿川書店,東京,

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